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特開2023-167152スイッチ回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167152
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】スイッチ回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078104
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730AS13
5H730BB03
5H730DD04
5H730FD01
5H730FF01
5H730FG01
5H730XX04
5H730XX12
5H730XX24
5H730XX32
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子の破壊を防止することができるスイッチ回路を提供する。
【解決手段】スイッチ回路は、少なくとも一つのスイッチング素子(M2)を含むスイッチ部と、前記スイッチ部に対して設けられるバランス回路(1)と、を有する。前記バランス回路は、前記スイッチ部の両端電位差が閾値を超えることを抑制するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのスイッチング素子を含むスイッチ部と、
前記スイッチ部に対して設けられるバランス回路と、
を有し、
前記バランス回路は、前記スイッチ部の両端電位差が閾値を超えることを抑制するように構成される、スイッチ回路。
【請求項2】
前記バランス回路は、
前記スイッチ部の両端電位差を分圧するように構成される分圧回路と、
基準電圧と前記分圧回路から出力される第1分圧とを比較するように構成されるコンパレータと、
前記コンパレータによって制御されるように構成される第1スイッチと、
電流源と、を有し、
前記第1スイッチ及び前記電流源の直流回路が前記スイッチ部に並列接続される、請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項3】
前記分圧回路から出力される第2分圧によって制御されるように構成される第2スイッチを有し、
前記第2分圧は前記第1分圧より大きく、
前記第2スイッチから出力される電圧は前記コンパレータの電源電圧として用いられる、請求項2に記載のスイッチ回路。
【請求項4】
前記スイッチ部を制御するための制御信号を用いてイネーブル信号を生成するように構成されるイネーブル信号生成回路を有し、
前記イネーブル信号に基づき前記バランス回路のイネーブルとディセーブルとを切り替える、請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項5】
前記イネーブル信号生成回路は、電荷貯蔵部を有し、前記スイッチ部のスイッチング停止により前記電荷貯蔵部のディスチャージが停止される、請求項4に記載のスイッチ回路。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のスイッチ回路を少なくとも一つ有し、
コンデンサを少なくとも一つ有する、スイッチドキャパシタコンバータ。
【請求項7】
前記スイッチ回路を複数有し、
複数の前記バランス回路は同一回路構成であり、
複数の前記スイッチ回路それぞれにおいて、前記バランス回路の回路定数は前記少なくとも一つのスイッチング素子の耐圧に応じて設定される、請求項6に記載のスイッチドキャパシタコンバータ。
【請求項8】
請求項6に記載のスイッチドキャパシタコンバータを有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、スイッチ回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチドキャパシタコンバータが電源として利用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
スイッチドキャパシタコンバータは、スイッチング素子間接続ノードを複数有し、当該接続ノード間に適切にコンデンサを接続する構成であり、入力電圧をDC/DC変換して出力電圧を生成する。
【0004】
入力電圧が出力電圧より大きいスイッチドキャパシタコンバータでは、入力電圧より小さいスイッチング電圧が発生する接続ノードが存在するため、入力電圧よりも低い耐圧のスイッチング素子の使用が可能となる。一方、出力電圧が入力電圧より大きいスイッチドキャパシタコンバータでは、出力電圧より小さいスイッチング電圧が発生する接続ノードが存在するため、出力電圧よりも低い耐圧のスイッチング素子の使用が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-54955号公報(段落0047)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スイッチング動作が停止するスタンバイ時において、各スイッチング素子のリーク電流にばらつきがあるため、接続ノードの電圧が保持できず、スイッチング素子に印加される電圧がスイッチング素子の耐圧を超えてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているスイッチ回路は、少なくとも一つのスイッチング素子を含むスイッチ部と、前記スイッチ部に対して設けられるバランス回路と、を有し、前記バランス回路は、前記スイッチ部の両端電位差が閾値を超えることを抑制するように構成される。
【0008】
本明細書中に開示されているスイッチドキャパシタコンバータは、上記構成のスイッチ回路を少なくとも一つ有し、コンデンサを少なくとも一つ有する。
【0009】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成のスイッチドキャパシタコンバータを有する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書中に開示されている発明によれば、スイッチング素子の破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、スイッチドキャパシタコンバータの比較例を示す図である。
図2図2は、図1に示すスイッチドキャパシタコンバータの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
図3図3は、スイッチドキャパシタコンバータの実施形態を示す図である。
図4図4は、第1スイッチ回路の一構成例を示す図である。
図5図5は、図3に示すスイッチドキャパシタコンバータの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
図6図6は、第1スイッチ回路の他の構成例を示す図である。
図7図7は、車両の外観図である。
図8図8は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第1例を示す図である。
図9図9は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第2例を示す図である。
図10図10は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第3例を示す図である。
図11図11は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0013】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0014】
本明細書において、定電流とは、理想的な状態において一定である電流を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電流である。
【0015】
<スイッチドキャパシタコンバータ(比較例)>
図1は、スイッチドキャパシタコンバータの比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。本比較例のスイッチドキャパシタコンバータSCC1のトポロジーは、ディクソン型トポロジーである。図2は、スイッチドキャパシタコンバータSCC1の各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【0016】
スイッチドキャパシタコンバータSCC1は、スイッチング素子M1~M8と、コンデンサC1~C3と、制御部CNT1と、を有する。
【0017】
スイッチング素子M1の第1端は、直流電圧源VS1の正極に接続される。直流電圧源VS1の負極は、グラウンド電位に接続される。直流電圧源VS1は、スイッチング素子M1の第1端に入力電圧Vinを供給する。
【0018】
スイッチング素子M1の第2端は、スイッチング素子M2の第1端と、コンデンサC3の第1端と、に接続される。スイッチング素子M2の第2端は、スイッチング素子M3の第1端と、コンデンサC2の第1端と、に接続される。スイッチング素子M3の第2端は、スイッチング素子M4の第1端と、コンデンサC1の第1端と、に接続される。
【0019】
スイッチング素子M4の第2端は、スイッチング素子M7の第1端と、負荷LD1の第1端と、スイッチング素子M6の第1端と、に接続される。スイッチング素子M7の第2端は、スイッチング素子M8の第1端と、コンデンサC1の第2端と、コンデンサC3の第2端と、に接続される。スイッチング素子M6の第2端は、スイッチング素子M5の第1端と、コンデンサC2の第2端と、に接続される。スイッチング素子M8の第2端、負荷LD1の第2端、及びスイッチング素子M5の第2端は、グラウンド電位に接続される。
【0020】
制御部CNT1は、第1制御信号Φ1によってスイッチング素子M1、M3、M5、及びM7を制御し、第2制御信号Φ2によってスイッチング素子M2、M4、M6、及びM8を制御する。
【0021】
制御部CNT1にはイネーブル信号ENが供給される。イネーブル信号ENがHIGHレベルであるとき、制御部CNT1は、スイッチング素子M1、M3、M5、及びM7と、スイッチング素子M2、M4、M6、及びM8と、を相補的にオン/オフ制御する。
【0022】
スイッチング電圧VSW1は、Vinの値とVin×3/4の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW1は、スイッチング素子M1とスイッチング素子M2との接続ノードに発生する。
【0023】
スイッチング電圧VSW2は、Vin×3/4の値とVin/2の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW2は、スイッチング素子M2とスイッチング素子M3との接続ノードに発生する。
【0024】
スイッチング電圧VSW3は、Vin/2の値とVin/4の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW3は、スイッチング素子M3とスイッチング素子M4との接続ノードに発生する。
【0025】
スイッチング電圧VSW6は、Vin/4の値と0(グラウンド電位)とで切り替わる。スイッチング電圧VSW6は、スイッチング素子M5とスイッチング素子M6との接続ノードに発生する。
【0026】
スイッチング電圧VSW7は、Vin/4の値と0(グラウンド電位)とで切り替わる。スイッチング電圧VSW7は、スイッチング素子M7とスイッチング素子M8との接続ノードに発生する。
【0027】
出力電圧Voutは、Vin/4の値になる。出力電圧Voutは、スイッチング素子M4とスイッチング素子M6とスイッチング素子M7との接続ノードに発生する。出力電圧Voutは、負荷LD1に供給される。
【0028】
スイッチング素子M1の両端電位差は、スイッチドキャパシタコンバータSCC1が起動するときに最大となり、Vinの値となる。このため、スイッチング素子M1としては、Vinの値の耐圧を有する素子が用いられる。
【0029】
スイッチング素子M2の両端電位差の最大値は、Vin/2(=Vin-Vin/2)の値となる。スイッチング素子M3の両端電位差の最大値は、Vin/2(=Vin×3/4-Vin/4)の値となる。このため、スイッチング素子M2及びM3としては、Vin/2の値の耐圧を有する素子が用いられる。
【0030】
スイッチング素子M4の両端電位差の最大値は、Vin/4(=Vin/2-Vin/4)の値となる。スイッチング素子M5の両端電位差の最大値は、Vin/4(=Vin/4-0)の値となる。スイッチング素子M5~M8の両端電位差の最大値は、Vin/4(=Vin/4-0)の値となる。このため、スイッチング素子M4~M8としては、Vin/4の値の耐圧を有する素子が用いられる。
【0031】
一方、イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、制御部CNT1は、スイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を停止し、スイッチング素子M1~M8をオフにする。これにより、スイッチドキャパシタコンバータSCC1はスタンバイ状態となる。イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、スイッチング素子M1~M8のリーク電流が同一であれば、スイッチング電圧VSW1はVinの値を維持し、スイッチング電圧VSW2及びSW3はVin/2の値を維持し、スイッチング電圧VSW7及び出力電圧VoutはVin/4の値を維持し、スイッチング電圧VSW6は0を維持する。
【0032】
しかしながら、実際にはスイッチング素子M1~M8のリーク電流にばらつきがある。図2は、スイッチング素子M1及びM2がスイッチング素子M3~M8よりもリーク電流が大きい場合の例が図示されている。
【0033】
イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、スイッチング電圧VSW2は、スイッチング素子M1及びM2から流れるリーク電流によって上昇し、徐々にVinの値に近づいていく。
【0034】
イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、スイッチング電圧VSW3は、スイッチング素子M4のボディダイオードを通して出力電圧Voutと同じ変化をする。
【0035】
イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、スイッチング電圧VSW6は、コンデンサC2を通してスイッチング電圧VSW2と同じ変化をする。
【0036】
イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、スイッチング電圧VSW7は、コンデンサC1を通してスイッチング電圧VSW3と同じ変化をする。
【0037】
イネーブル信号ENがLOWレベルであるとき、出力電圧Voutは、スイッチング素子M6のボディダイオードを通してスイッチング電圧VSW6と同じ変化をする。
【0038】
図2に示す例では、スイッチドキャパシタコンバータSCC1がスタンバイ状態である期間が長くなった場合に、スイッチング電圧VSW6の上昇によって、スイッチング素子M5の両端電位差がスイッチング素子M5の耐圧を超えてしまう。
【0039】
図2に示す例はスイッチング素子M1及びM2がスイッチング素子M3~M8よりもリーク電流が大きい場合の例であったが、スイッチング素子M1~M8のリーク電流のばらつき具合によって図2に示す例以外の多数の状況が想定される。そのため、スイッチング素子M2~M4及びM6~M8についても、スイッチング素子M2~M4及びM6~M8の両端電位差がスイッチング素子M5の耐圧を超えてしまうおそれがある。
【0040】
上記の考察に鑑み、以下では、スイッチング素子の破壊を防止することのできる新規な実施形態を提案する。
【0041】
<スイッチドキャパシタコンバータ(実施形態)>
図3は、スイッチドキャパシタコンバータの実施形態を示す図である。本実施形態のスイッチドキャパシタコンバータSCC2は、バランス回路1~4を有する点で上述したスイッチドキャパシタコンバータSCC1と異なり、それ以外の点で上述したスイッチドキャパシタコンバータSCC1と基本的に同様である。
【0042】
スイッチドキャパシタコンバータSCC2は、第1~第4スイッチ回路を有する。
【0043】
第1スイッチ回路は、スイッチング素子M2及びバランス回路1を有する。バランス回路1は、スイッチング素子M2の両端電位差が閾値を超えることを抑制する。バランス回路1は、スイッチング素子M2の破壊を防止する。
【0044】
第2スイッチ回路は、スイッチング素子M3及びバランス回路2を有する。バランス回路2は、スイッチング素子M3の両端電位差が閾値を超えることを抑制する。バランス回路2は、スイッチング素子M3の破壊を防止する。
【0045】
第3スイッチ回路は、スイッチング素子M4及びバランス回路3を有する。バランス回路3は、スイッチング素子M4の両端電位差が閾値を超えることを抑制する。バランス回路3は、スイッチング素子M4の破壊を防止する。
【0046】
第4スイッチ回路は、スイッチング素子M5~M8及びバランス回路4を有する。バランス回路4は、スイッチ部の両端電位差が閾値を超えることを抑制する。当該スイッチ部は、スイッチング素子M5及びM6の直列回路とスイッチング素子M7及びM8の直列回路との並列回路である。バランス回路4は、スイッチング素子M5~M8の破壊を防止する。
【0047】
図4は、第1スイッチ回路の一構成例を示す図である。図4に示す構成例では、スイッチング素子M2は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタである。また、図4に示す構成例では、バランス回路1は、抵抗R1及びR2と、基準電圧源REF1と、コンパレータCOMP1と、スイッチSW1と、電流源IS1と、を有する。電流源IS1は、定電流を出力する定電流源であることが望ましい。
【0048】
スイッチング素子M2のドレインにはスイッチング電圧VSW1が印加され、スイッチング素子M2のソースにはスイッチング電圧VSW2が印加される。
【0049】
スイッチング素子M2のドレインは、抵抗R1の第1端と、スイッチSW1の第1端と、に接続される。抵抗R1の第2端は、抵抗R2の第1端と、コンパレータCOMP1の非反転入力端子と、に接続される。スイッチSW1の第2端は、電流源IS1の第1端に接続される。基準電圧源REF1の正極は、コンパレータCOMP1の反転入力端子に接続される。スイッチング素子M2のソースは、抵抗R2の第2端と、基準電圧源REF1の負極と、電流源IS1の第2端と、に接続される。
【0050】
抵抗R1及びR2を有する分圧回路は、スイッチング素子M2の両端電位差(VSW1-VSW2)を分圧する。
【0051】
コンパレータCOMP1は、基準電圧源REF1から出力される基準電圧VREFと、上記の分圧回路から出力される分圧VDIVと、を比較する。
【0052】
スイッチSW1は、コンパレータCOMP1によって制御される。分圧VDIVが基準電圧VREFより大きいとき、つまりコンパレータCOMP1の出力がHIGHレベルであるとき、スイッチSW1はオンになる。スイッチSW1がオンになると、スイッチング素子M2のドレインからスイッチSW1及び電流源IS1を経由してスイッチング素子M2のソースに電流が流れ、スイッチング素子M2の両端電位差が低下する。スイッチ部の両端電位差が閾値になるときに分圧VDIVと基準電圧VREFとが一致するように、抵抗R1及びR2の各抵抗値と基準電圧VREFの値とが設定される。一方、分圧VDIVが基準電圧VREFより小さいとき、つまりコンパレータCOMP1の出力がLOWレベルであるとき、スイッチSW1はオフになる。
【0053】
バランス回路2~4は、バランス回路1と同一の回路構成である。バランス回路2の回路定数はスイッチング素子M3の耐圧に応じて設定される。バランス回路3の回路定数はスイッチング素子M4の耐圧に応じて設定される。バランス回路4の回路定数はスイッチング素子M5~M8の耐圧に応じて設定される。
【0054】
バランス回路1~4は、スイッチング電圧VSW2、VSW3、VSW6、及びVSW7並びに出力電圧Voutをそれぞれクランプする複数のクランプ素子と比較して、低コスト及び小面積でスイッチング素子M5~M8の破壊を防止することができる。
【0055】
図5は、スイッチドキャパシタコンバータSCC2の各部電圧等を示すタイミングチャートである。図5は、スイッチング素子M1及びM2がスイッチング素子M3~M8よりもリーク電流が大きい場合の例が図示されている。
【0056】
図5に示す例では、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のスタンバイ時に出力電圧Voutが上昇する。そして、出力電圧Voutが閾値になると、バランス回路4での電流引き抜きが開始されて出力電圧Voutが低下する。その後、バランス回路4での電流引き抜きが停止すると出力電圧Voutが再度上昇する。バランス回路4での電流引き抜き開始後において、スイッチング電圧VSW6及びVSW7は出力電圧Voutと同じ変化をする。
【0057】
上述したバランス回路1~4はスイッチング素子M5~M8の破壊防止に有効であるものの、バランス回路1~4の消費電流はスイッチドキャパシタコンバータSCC2の効率低下の要因となる。バランス回路1~4の消費電流を抑えるためには、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のスイッチング動作時にバランス回路1~4をディセーブル状態にすればよい。そして、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のスタンバイ時にバランス回路1~4をイネーブル状態にすればよい。
【0058】
しかしながら、バランス回路1~3はグラウンド電位基準の回路ではないため、バランス回路1~3のイネーブル機能を実装すると、レベルシフタが必要となる。レベルシフタは、誤動作の可能性があり、回路面積も大きいため、レベルシフタが不要な回路構成が望まれる。
【0059】
図6は、第1スイッチ回路の他の構成例を示す図である。図6に示す第1スイッチ回路は、レベルシフタが不要な回路構成である。
【0060】
図6に示す第1スイッチ回路は、スイッチング素子M2及びバランス回路1に加えて、電源電圧生成回路5と、イネーブル信号生成回路6と、を有する。
【0061】
図6に示すバランス回路1における抵抗R1A及びR1Bの直列回路は、図4に示すバランス回路1における抵抗R1と等価である。
【0062】
電源電圧生成回路5は、スイッチM9によって構成される。スイッチM9は、抵抗R1A、R1B、及びR2を有する分圧回路から出力される分圧VD(>分圧VDIV)によって制御される。図6に示す構成例では、スイッチM9はNチャネル型MOS電界効果トランジスタであり、電源電圧生成回路5はソースフォロワ回路である。電源電圧生成回路5はから出力される電圧VREGは、コンパレータCOM1の電源電圧として用いられる。これにより、コンパレータCOMP1の耐圧を、スイッチM9から出力される電圧に抑えることができる。
【0063】
イネーブル信号生成回路6は、スイッチング素子M2を制御するための第2制御信号Φ2を用いてイネーブル信号EN1を生成する。イネーブル信号生成回路6は、抵抗R3と、コンデンサC4と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタであるスイッチM10と、シュミットバッファSB1と、を有する。
【0064】
抵抗R3の第1端には電源電圧VREGが印加される。抵抗R3の第2端は、スイッチM10の第1端(ドレイン)と、コンデンサC4の第1端と、シュミットバッファSB1の入力端子と、に接続される。スイッチM10の第2端(ソース)及びコンデンサC4の第2には、スイッチング電圧VSB2が印加される。シュミットバッファSB1の出力端子からイネーブル信号EN1が出力される。
【0065】
スイッチドキャパシタコンバータSCC2がスイッチング動作を行っているときには、スイッチM10はオンとオフとを繰り返すためコンデンサC4は充電と放電とを繰り返す。これにより、シュミットバッファSB1から出力されるイネーブル信号EN1はLOWレベルを維持する。イネーブル信号EN1がLOWレベルであるとき、コンパレータCOM1ひいてはバランス回路1がディセーブルになる。これにより、バランス回路1の消費電流を抑えることができる。
【0066】
一方、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のスタンバイ時には、スイッチM10はオフのままになるため、コンデンサC4の放電が止まる。これにより、シュミットバッファSB1から出力されるイネーブル信号EN1はHIGHレベルになる。イネーブル信号EN1がHIGHレベルであるとき、コンパレータCOM1ひいてはバランス回路1がイネーブルになる。
【0067】
<適用例>
図7は、車両Xの外観図である。本構成例の車両Xは、不図示のバッテリから出力される電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18を搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置は、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0068】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0069】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0070】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0071】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0072】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0073】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0074】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0075】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0076】
なお、先に説明したスイッチドキャパシタコンバータSCC2は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。また、先に説明したスイッチドキャパシタコンバータSCC2の用途としては、車両Xに搭載される電源に限定されず、例えば産業機器に搭載される電源であってもよい。
【0077】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0078】
例えば、スイッチドキャパシタコンバータSCC2において、直流電圧源VS1と負荷LD1との配置を入れ替えてもよい。直流電圧源VS1と負荷LD1との配置を入れ替えた場合、スイッチドキャパシタコンバータSCC2から負荷LD1に供給される電圧(スイッチドキャパシタコンバータSCC2の出力電圧)は、直流電圧源VS1からスイッチドキャパシタコンバータSCC2に供給される電圧(スイッチドキャパシタコンバータSCC2の入力電圧)より大きくなる。
【0079】
上述したスイッチ回路(第1~第4スイッチ回路)は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータにも適用することができる。ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータとしては、例えば図8図11に示すスイッチドキャパシタコンバータを挙げることができる。
【0080】
以上説明したスイッチ回路は、少なくとも一つのスイッチング素子(M2)を含むスイッチ部と、前記スイッチ部に対して設けられるバランス回路(1)と、を有し、前記バランス回路は、前記スイッチ部の両端電位差が閾値を超えることを抑制するように構成される構成(第1の構成)である。
【0081】
上記第1の構成のスイッチ回路は、スイッチング素子の破壊を防止することができる。
【0082】
上記第1の構成のスイッチ回路において、前記バランス回路は、前記スイッチ部の両端電位差を分圧するように構成される分圧回路(R1、R2)と、基準電圧と前記分圧回路から出力される第1分圧とを比較するように構成されるコンパレータ(COMP1)と、前記コンパレータによって制御されるように構成される第1スイッチ(SW1)と、電流源(IS1)と、を有し、前記第1スイッチ及び前記電流源の直流回路が前記スイッチ部に並列接続される構成(第2の構成)であってもよい。
【0083】
上記第2の構成のスイッチ回路は、バランス回路をクランプ素子と比較して低コスト及び小面積で実現することができる。
【0084】
上記第2の構成のスイッチ回路において、前記分圧回路から出力される第2分圧によって制御されるように構成される第2スイッチ(M9)を有し、前記第2分圧は前記第1分圧より大きく、前記第2スイッチから出力される電圧は前記コンパレータの電源電圧として用いられる構成(第3の構成)であってもよい。
【0085】
上記第3の構成のスイッチ回路は、コンパレータの耐圧を、前記第2スイッチから出力される電圧に抑えることができる。
【0086】
上記第1~第3いずれかの構成のスイッチ回路において、前記スイッチ部を制御するための制御信号を用いてイネーブル信号を生成するように構成されるイネーブル信号生成回路(6)を有し、前記イネーブル信号に基づき前記バランス回路のイネーブルとディセーブルとを切り替える構成(第4の構成)であってもよい。
【0087】
上記第4の構成のスイッチ回路は、レベルシフタを設けることなく、バランス回路の消費電流低減を図ることができる。
【0088】
上記第4の構成のスイッチ回路において、前記イネーブル信号生成回路は、電荷貯蔵部(C4)を有し、前記スイッチ部のスイッチング停止により前記電荷貯蔵部のディスチャージが停止される構成(第5の構成)であってもよい。
【0089】
上記第5の構成のスイッチ回路は、イネーブル信号生成回路の回路構成を簡素化できる。
【0090】
以上説明したスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)は、上記第1~第5いずれかの構成のスイッチ回路を少なくとも一つ有し、コンデンサ(C1~C3)を少なくとも一つ有する構成(第6の構成)である。
【0091】
上記第6の構成のスイッチドキャパシタコンバータは、スイッチング素子の破壊を防止することができる。
【0092】
上記第6の構成のスイッチドキャパシタコンバータにおいて、前記スイッチ回路を複数有し、複数の前記バランス回路は同一回路構成であり、複数の前記スイッチ回路それぞれにおいて、前記バランス回路の回路定数は前記少なくとも一つのスイッチング素子の耐圧に応じて設定される構成(第7の構成)であってもよい。
【0093】
上記第7の構成のスイッチドキャパシタコンバータは、複数のバランス回路が同一回路構成であるため、スイッチドキャパシタコンバータ全体の回路構成の簡素化を図ることができる。
【0094】
以上説明した車両(X)は、上記第6又は第7の構成のスイッチドキャパシタコンバータを有する構成(第8の構成)である。
【0095】
上記第8の構成の車両は、スイッチング素子の破壊を防止することができる。
【符号の説明】
【0096】
1~4 バランス回路
5 電源電圧生成回路
6 イネーブル信号生成回路
C1~C4 コンデンサ
CNT1 制御部
COMP1 コンパレータ
IS1 電流源
LD1 負荷
M1~M8 スイッチング素子
M9、M10 スイッチ
R1、R1A、R1B、R2、R3 抵抗
REF1 基準電圧源
SB1 シュミットバッファ
SCC1、SCC2 スイッチドキャパシタコンバータ
SW1 スイッチ
VS1 直流電圧源
X 車両
X11~X18 電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11