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特開2023-167158レーザ加工機、及び、レーザ加工機用のノズルユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167158
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】レーザ加工機、及び、レーザ加工機用のノズルユニット
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/14 20140101AFI20231116BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23K26/14
B23K26/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078114
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山口 義博
(72)【発明者】
【氏名】高田 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】儲 仁才
(72)【発明者】
【氏名】齋尾 克男
(72)【発明者】
【氏名】新谷 俊哉
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CA16
4E168CB03
4E168CB15
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4E168EA17
4E168FB02
4E168FB03
4E168FB04
4E168HA08
4E168JA02
4E168KA16
(57)【要約】
【課題】レーザ加工機において、ワークの加工範囲への遮光液の浸入を効果的に抑えることにある。
【解決手段】ノズルユニットは、第1ノズルと、第2ノズルと、第2吹出口と、第3ノズルと、第3吹出口とを備える。第1ノズルは、第1吹出口を含む。第1吹出口は、アシストガスをワークへ向けて吹き出す。第2吹出口は、第1ノズルとワークとの間から遮光液を除去するためにワークに向けてインナーシールドガスを吹き出す。第3吹出口は、第1ノズルとワークとの間から遮光液を除去するためにワークに向けてアウターシールドガスを吹き出す。ワークに対する第3吹出口の高さは、ワークに対する第2吹出口の高さより高い。ワークに対する第2吹出口の高さは、ワークに対する第1吹出口の高さより高い。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性を有する遮光液中に配置されたワークをレーザ光により加工するレーザ加工機用のノズルユニットであって、
前記レーザ光とアシストガスとが通る第1通路と、前記第1通路に接続され前記アシストガスを前記ワークへ向けて吹き出す第1吹出口と含む第1ノズルと、
前記第1ノズルの外側に配置される第2ノズルと、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間に設けられ、インナーシールドガスが通る第2通路と、
前記第2通路に接続され、前記第1ノズルと前記ワークとの間から前記遮光液を除去するために前記ワークに向けて前記インナーシールドガスを吹き出す第2吹出口と、
前記第2ノズルの外側に配置される第3ノズルと、
前記第2ノズルと前記第3ノズルとの間に設けられ、アウターシールドガスが通る第3通路と、
前記第3通路に接続され、前記第1ノズルと前記ワークとの間から前記遮光液を除去するために前記ワークに向けて前記アウターシールドガスを吹き出す第3吹出口と、
を備え、
前記ワークに対する前記第3吹出口の高さは、前記ワークに対する前記第2吹出口の高さより高く、
前記ワークに対する前記第2吹出口の高さは、前記ワークに対する前記第1吹出口の高さより高い、
ノズルユニット。
【請求項2】
前記第2ノズルは、絶縁体である、
請求項1に記載のノズルユニット。
【請求項3】
前記第3ノズルは、
導電性のシールドと、
前記シールドを覆う絶縁体と、
を含む、
請求項1に記載のノズルユニット。
【請求項4】
前記第1通路は、前記第1吹出口に向かって径方向に拡大するように傾斜した第1出口部を含む、
請求項1に記載のノズルユニット。
【請求項5】
前記第2通路は、前記第2吹出口に向かって径方向に拡大するように傾斜した第2出口部を含む、
請求項1に記載のノズルユニット。
【請求項6】
前記第3通路は、前記第2吹出口に向かって径方向に拡大するように傾斜した第3出口部を含む、
請求項1に記載のノズルユニット。
【請求項7】
前記第1通路は、前記第1吹出口に向かって径方向に拡大するように傾斜した第1出口部を含み、
前記第2通路は、前記第2吹出口に向かって径方向に拡大するように傾斜した第2出口部を含み、
前記第1ノズルの軸線方向に対する前記第2出口部の傾斜角度は、前記軸線方向に対する前記第1出口部の傾斜角度よりも大きい、
請求項1に記載のノズルユニット。
【請求項8】
前記遮光液を貯留する貯液槽と、
前記貯液槽内に配置され、前記ワークが置かれる載置台と、
前記レーザ光を発生させるレーザ発生器と、
前記レーザ発生器に接続され、前記載置台の上方に配置されたレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを移動させる駆動装置と、
前記レーザヘッドに取り付けられる請求項1から7のいずれかに記載のノズルユニットと、
を備えるレーザ加工機。
【請求項9】
前記第1ノズルと前記ワークとの間の静電容量を検出するセンサと、
前記静電容量によって前記ワークに対する前記第1ノズルの高さを算出し、前記駆動装置を制御して前記レーザヘッドを高さ方向に移動させるコントローラと、
をさらに備える請求項8に記載のレーザ加工機。
【請求項10】
前記第2吹出口からの前記インナーシールドガスの流速は、前記第3吹出口からの前記アウターシールドガスの流速よりも速い、
請求項8に記載のレーザ加工機。
【請求項11】
前記第1吹出口からの前記アシストガスの流速は、前記第2吹出口からの前記インナーシールドガスの流速よりも速い、
請求項8に記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機、及び、レーザ加工機用のノズルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機は、ノズルからレーザ光をワークに照射することで、ワークに対して切断などの加工を行う。ワークに照射されたレーザ光は、大部分はワークに吸収されてワークを溶融させる。しかし、レーザ光の一部は、ワークにおいて反射して、周辺に散乱する。そのため、例えば特許文献1のレーザ加工機では、レーザ光の散乱を抑えるためのカバーが設けられている。カバーは、ノズルの移動範囲を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5940582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のレーザ加工機では、カバーはノズルの移動範囲を覆う。そのため、レーザ加工機が大型化してしまう。また、レーザ光がワークを貫通し、ワークの下方において反射することで、レーザ光が外部へ漏れる可能性がある。そのようなレーザ光の漏洩を防ぐためにワークの下方にまでカバーが設けられると、レーザ加工機の構造が複雑化してしまう。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、遮光性を有する液体(以下、「遮光液」と呼ぶ)内にワークを配置するレーザ加工機を案出した。遮光液は、例えば光を吸収する炭素などの添加剤を含む水溶液である。ワークは、遮光液の液面のわずかに下方に配置される。そのため、ワークの表面は、遮光液に覆われている。
【0006】
当該レーザ加工機は、加工時には、ノズルからガスをワークに向けて吹き付ける。それにより、レーザ加工機は、ワークの表面から遮光液を除去すると共に、レーザ光によりワークを加工する。その際、ワークの表面においてガスが吹き付けられている範囲(以下、「加工範囲」と呼ぶ)以外の部分は、遮光液によって覆われている。そのため、簡易な構造でレーザ光の漏れが防止される。
【0007】
一方、上記のレーザ加工機において、ワークの加工範囲に遮光液が浸入すると、ワークの加工品質が低下してしまう。従って、ワークの加工範囲への遮光液の浸入を効果的に抑えることが望まれる。本発明の目的は、レーザ加工機において、ワークの加工範囲への遮光液の浸入を効果的に抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るノズルユニットは、遮光性を有する遮光液中に配置されたワークをレーザ光により加工するレーザ加工機用のノズルユニットである。ノズルユニットは、第1ノズルと、第2ノズルと、第2通路と、第2吹出口と、第3ノズルと、第3通路と、第3吹出口とを備える。第1ノズルは、第1通路と第1吹出口とを含む。第1通路には、レーザ光とアシストガスとが通る。第1吹出口は、第1通路に接続される。第1吹出口は、アシストガスをワークへ向けて吹き出す。第2ノズルは、第1ノズルの外側に配置される。第2通路は、第1ノズルと第2ノズルとの間に設けられる。第2通路には、インナーシールドガスが通る。第2吹出口は、第2通路に接続される。第2吹出口は、第1ノズルとワークとの間から遮光液を除去するためにワークに向けてインナーシールドガスを吹き出す。第3ノズルは、第2ノズルの外側に配置される。第3通路は、第2ノズルと第3ノズルとの間に設けられる。第3通路には、アウターシールドガスが通る。第3吹出口は、第3通路に接続される。第3吹出口は、第1ノズルとワークとの間から遮光液を除去するためにワークに向けてアウターシールドガスを吹き出す。ワークに対する第3吹出口の高さは、ワークに対する第2吹出口の高さより高い。ワークに対する第2吹出口の高さは、ワークに対する第1吹出口の高さより高い。
【0009】
本態様に係るノズルユニットでは、第1~第3吹出口から吹き出されるガスが、ワークとノズルユニットとの間を通って、ノズルユニットの径方向における外側へ向けて流れる。それにより、ワークの加工範囲への遮光液の浸入が効果的に抑えられる。また、ワークに対する第1~第3吹出口の高さは、第1~第3吹出口の順に高い。このように、ワークに対する第1~第3吹出口の位置が段階的に高くなることで、ガスが、ノズルユニットの中心から外側へ向けて、スムーズに流れる。それにより、ノズルユニットの直下に液滴が存在しても、スムーズに流れるガスによって、液滴を外側へ追い出し易い。その結果、ワークの加工範囲への遮光液の浸入が効果的に抑えられる。
【0010】
本発明の他の態様に係るレーザ加工機は、貯液槽と、載置台と、レーザ発生器と、レーザヘッドと、駆動装置と、上述したノズルユニットとを備える。貯液槽は、遮光液を貯留する。載置台は、貯液槽内に配置される。載置台には、ワークが置かれる。レーザ発生器は、レーザ光を発生させる。レーザヘッドは、レーザ発生器に接続される。レーザヘッドは、載置台の上方に配置される。駆動装置は、レーザヘッドを移動させる。ノズルユニットは、レーザヘッドに取り付けられる。
【0011】
本態様に係るレーザ加工機では、遮光液によってレーザ光の漏れが防止される。また、ノズルユニットによって、ワークの加工範囲への遮光液の浸入が効果的に抑えられる。それにより、ワークの加工品質が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザ加工機において、ワークの加工範囲への遮光液の浸入が効果的に抑えられる。それにより、ワークの加工品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るレーザ加工機の斜視図である。
図2】レーザ加工機の構成を示す模式図である。
図3】レーザ加工機の構成を示す模式図である。
図4】ワークを切断中のレーザヘッドの側面図である。
図5】レーザヘッドの断面図である。
図6】ノズルユニットの断面図である。
図7】ノズルユニットの拡大断面図である。
図8】第1ノズルの断面図である。
図9】第2ノズルの断面図である。
図10】第2ノズルの斜視図である。
図11図7におけるノズルユニットのXI-XI断面図である。
図12】第2ノズルを先端側から見た図である。
図13】第3ノズルの断面図である。
図14】ワーク切断時のワークとノズルユニットとを示す断面図である。
図15】ノズルユニットの第1~第3吹出口近傍の拡大断面図である。
図16】ノズルユニットの第1~第3吹出口近傍の拡大断面図である。
図17】ワークを切断中のレーザヘッドの断面図である。
図18】第1変形例に係るノズルユニットの第1~第3吹出口近傍の拡大断面図である。
図19】第2変形例に係るノズルユニットの第1~第3吹出口近傍の拡大断面図である。
図20】第3変形例に係るノズルユニットの第1~第3吹出口近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態にかかるレーザ加工機について説明する。図1は、実施形態に係るレーザ加工機1の斜視図である。図2は、レーザ加工機1の構成を示す模式図である。レーザ加工機1は、ワークW1をレーザ光により加工する装置である。図1に示すように、レーザ加工機1は、貯液槽2と、レーザヘッド3と、駆動装置4とを備える。
【0015】
貯液槽2は、遮光性を有する遮光液L1を貯留する。貯液槽2は、上方へ向けて開口した箱型の形状を有している。図2に示すように、貯液槽2内には、載置台11とスラッジトレイ12とが配置されている。載置台11上には、ワークW1が配置される。載置台11は、例えば格子状に互いに連結された複数の板部材を含む。スラッジトレイ12は、載置台11の下方に配置されている。スラッジトレイ12は、レーザ光によりワークW1が加工される際に生じるスラッジを受ける。
【0016】
駆動装置4は、レーザヘッド3を載置台11の上方で移動させる。駆動装置4は、レーザヘッド3を、縦方向(X)と、横方向(Y)と、上下方向(Z)とに移動させる。駆動装置4は、第1可動台13と、第2可動台14と、支持台15とを含む。第1可動台13は、第2可動台14に対して横方向(Y)に移動可能に支持されている。レーザヘッド3は、第1可動台13に対して上下方向(Z)に移動可能に支持されている。第2可動台14は、支持台15に対して縦方向(X)に移動可能に支持されている。第1可動台13は、図2に示す第1モータ16によって横方向(Y)に駆動される。レーザヘッド3は、第2モータ17によって上下方向(Z)に駆動される。第2可動台14は、第3モータ18によって縦方向(X)に駆動される。
【0017】
図2に示すように、レーザ加工機1は、レーザ発生器19を備えている。レーザ発生器19は、レーザ光を発生させる。レーザヘッド3は、レーザ発生器19に接続されている。レーザ発生器19は、例えばファイバレーザによるレーザ光を発生させる。レーザ光は、例えば0.7μm以上、10μm以下の波長を有する。図2に示すように、レーザヘッド3は、ファイバケーブル21を介して、レーザ発生器19に接続されている。レーザヘッド3は、集光レンズ22を含む。レーザヘッド3は、レーザ発生器19からのレーザ光を、集光レンズ22によってワークW1上に集光させる。
【0018】
図2に示すように、レーザ加工機1は、液位調整装置5を備えている。液位調整装置5は、貯液槽2内の遮光液L1の液面の高さ(以下、単に「液位」と記載する)を変更する。液位調整装置5は、図2に示すワークW1よりも下方の位置と、図3に示すワークW1よりも上方の位置との間で、液位を変更可能である。
【0019】
液位調整装置5は、供給配管23と供給バルブ24とを含む。供給配管23は、外部タンク25と貯液槽2とに接続されている。外部タンク25は、貯液槽2の外部に配置されている。供給バルブ24は、供給配管23に接続されている。供給バルブ24が開かれることで、外部タンク25から貯液槽2に遮光液L1が供給される。
【0020】
液位調整装置5は、調整タンク26と、ガス配管27と、加圧バルブ28と、減圧バルブ29とを含む。調整タンク26内は、貯液槽2内に連通している。遮光液L1は、調整タンク26内から貯液槽2内へ流入可能である。また、遮光液L1は、貯液槽2内から調整タンク26内へ流入可能である。ガス配管27は、調整タンク26と、図示しないガス供給源とを接続している。加圧バルブ28と減圧バルブ29とは、ガス配管27に接続されている。
【0021】
加圧バルブ28が開かれることで、ガスが、調整タンク26内に供給される。それにより、図3に示すように、遮光液L1が、調整タンク26内から押し出されて、貯液槽2内へ流入する。それにより、貯液槽2での液位が上昇する。また、減圧バルブ29が開かれることで、ガスが、調整タンク26内から外部に排出される。それにより、図2に示すように、遮光液L1が、貯液相内から調整タンク26内へ流入する。それにより、貯液槽2での液位が下降する。
【0022】
液位調整装置5は、オーバーフロー配管31を含む。オーバーフロー配管31は、貯液槽2と外部タンク25とに接続されている。貯液槽2内の液位が所定の上限高さ以上になった場合に、貯液槽2内の遮光液L1が、オーバーフロー配管31を通して、外部タンク25へ排出される。
【0023】
液位調整装置5は、排出配管32と排出バルブ33とを含む。排出配管32は、貯液槽2と外部タンク25とに接続されている。排出バルブ33は、排出配管32に接続されている。排出バルブ33が開かれることで、遮光液L1が、貯液槽2から排出配管32を通って外部タンク25へ排出される。
【0024】
遮光液L1は、上述したレーザ光の透過を抑制する。遮光液L1における0.7μm以上、10μm以下の波長域における光の透過率は、例えば10%/cm以下である。好ましくは、遮光液L1における0.7μm以上、10μm以下の波長域における光の透過率は、5%/cm以下である。より好ましくは、遮光液L1における0.7μm以上、10μm以下の波長域における光の透過率は、3%/cm以下である。
【0025】
本実施形態において、遮光液L1は、遮光性を有する添加剤を水溶液中に分散させたものである。添加剤は、例えばカーボンブラックを含む。ただし、添加剤は、レーザ光に対して高い遮光性を有する他の物質であってもよい。カーボンブラックの濃度は、例えば4.0~20.0重量%である。好ましくは、カーボンブラックの濃度は、5.0~10.0重量%である。
【0026】
レーザ加工機1は、液位センサ34と透過率センサ35とを備えている。液位センサ34は、貯液槽2内の遮光液L1の液位を検出する。液位センサ34は、液位を示す信号を出力する。透過率センサ35は、貯液槽2内の遮光液L1のレーザ光に対する透過率を検出する。透過率センサ35は、透過率を示す信号を出力する。
【0027】
レーザ加工機1は、コントローラ36と入力装置37とを備えている。コントローラ36は、CPUなどのプロセッサとメモリとを含む。コントローラ36は、レーザ加工機1を制御するためのプログラムとデータとを記憶している。駆動装置4とレーザ発生器19とは、コントローラ36からの信号によって制御される。供給バルブ24と、加圧バルブ28と、減圧バルブ29とは、コントローラ36からの信号によって制御される。コントローラ36は、液位センサ34と透過率センサ35とからの信号を受信する。
【0028】
入力装置37は、レーザ加工機1のオペレータによって操作可能である。入力装置37は、例えばスイッチを含む。入力装置37は、タッチパネルを含んでもよい。入力装置37は、外部の記録媒体の接続ポートを含んでもよい。入力装置37は、外部のコンピュータであってもよい。オペレータは、入力装置37を用いて加工条件を入力することができる。加工条件は、ワークW1の板厚、材質、加工速度、設計形状などを含む。入力装置37は、加工条件を示す信号をコントローラ36に出力する。
【0029】
コントローラ36は、プログラム及び加工条件に従いレーザ加工機1を制御することで、ワークW1を所望の形状に切断する。コントローラ36は、液位調整装置5を制御して、貯液槽2内の遮光液L1の液位を変更する。コントローラ36は、レーザ発生器19を制御して、レーザヘッド3からレーザ光をワークW1に照射する。コントローラ36は、駆動装置4を制御して、レーザヘッド3をワークW1の上方で移動させる。
【0030】
本実施形態に係るレーザ加工機1は、図3に示すように、遮光液L1の液位がワークW1の上方に位置している状態で、ワークW1の加工を行う。図4に示すように、レーザヘッド3にはノズルユニット6が取り付けられている。レーザヘッド3は、ノズルユニット6からレーザ光L2をワークW1に照射する。
【0031】
また、レーザヘッド3は、ノズルユニット6から、ガスをワークW1に向けて吹き付ける。それにより、ワークW1の表面から遮光液L1を除去すると共に、レーザ光L2によりワークW1を加工する。その際、ワークW1の表面の加工範囲以外の部分は、遮光液L1によって覆われている。また、図2に示すように、レーザヘッド3には、遮光カバー38が取り付けられている。加工範囲から上方へのレーザ光の漏れは、遮光カバー38によって防止される。加工範囲は、ワークW1の表面において、ガスが吹き付けられている範囲である。加工範囲は、ワークW1の表面でのレーザ光L2の照射点を含む。加工範囲は、少なくともノズルユニット6が向かい合う範囲を含む。
【0032】
以下、レーザヘッド3及びノズルユニット6の構造について詳細に説明する。ノズルユニット6は、レーザヘッド3の先端に取り付けられる。図5は、レーザヘッド3の断面図である。図5に示すように、レーザヘッド3は、ノズル台座41と、第1ガスポート42と、第2ガスポート43と、第3ガスポート44とを含む。
【0033】
ノズル台座41には、ノズルユニット6が着脱可能に取り付けられる。ノズル台座41は、取付孔45を含む。取付孔45は、ノズル台座41の先端面46から上方に延びている。ノズルユニット6の一部は、取付孔45内に配置される。ノズル台座41は、レーザ通路47とガス通路48とを含む。レーザ通路47は、軸線方向に延びている。
【0034】
なお、以下の説明において、「軸線方向」は、ノズルユニット6の軸線方向、及び、ノズルユニット6の軸線方向に平行な方向を意味する。「径方向」は、ノズルユニット6の径方向、及びノズルユニット6の径方向に平行な方向を意味する。レーザ通路47には、レーザ発生器19からのレーザ光L2が通る。ガス通路48は、レーザ通路47から区画されている。ガス通路48は、レーザ通路47の径方向における外方に配置されている。
【0035】
第1ガスポート42と第2ガスポート43と第3ガスポート44とは、ノズル台座41に接続されている。第1ガスポート42と第2ガスポート43とは、ノズル台座41内のガス通路48に連通している。第1ガスポート42には、第1ガス配管51が接続される。第2ガスポート43には、第2ガス配管52が接続される。第3ガスポート44は、ノズル台座41内のレーザ通路47に連通している。第3ガスポート44には、図2に示す第3ガス配管53が接続される。
【0036】
図2に示すように、レーザ加工機1は、ガス制御装置7を備えている。ガス制御装置7は、レーザヘッド3から吹き出されるガスを制御する。ガス制御装置7は、第1ガスバルブ54と第2ガスバルブ55とを含む。第1ガスバルブ54と第2ガスバルブ55とは、コントローラ36からの信号によって制御される。第1ガス配管51と第2ガス配管52とは、第1ガスバルブ54を介して、図示しないガス供給源に接続される。第1ガス配管51と第2ガス配管52とを通って、シールドガスが、レーザヘッド3に供給される。第3ガス配管53は、第2ガスバルブ55を介して、図示しないガス供給源に接続される。第3ガス配管53を通って、アシストガスがレーザヘッド3に供給される。
【0037】
軟鋼あるいは低炭素鋼の加工の場合には、酸化還元反応を利用するために、アシストガスとして、例えば酸素が使用される。ステンレス鋼の加工の場合には、酸化還元反応が利用できないため、切断面での酸化物発生を防止するために、アシストガスとして、例えば窒素が使用される。シールドガスについては、ワークW1の表面から遮光液L1を除去するために用いられるため、例えば安価な圧縮空気が使用される。
【0038】
ノズルユニット6は、レーザヘッド3に対して着脱可能に取り付けられる。すなわち、ノズルユニット6は、レーザヘッド3に対して交換可能に取り付けられる。なお、以下のノズルユニット6についての説明では、ノズルユニット6の基端から先端に向かう方向が、下方と定義される。また、ノズルユニット6の先端から基端に向かう方向が、上方と定義される。
【0039】
ノズルユニット6の先端は、ノズルユニット6の軸線方向における端部のうちワークW1と向かい合う方を意味する。ノズルユニット6の基端は、ノズルユニット6の軸線方向において、ノズルユニット6の先端の反対に位置する。図6は、ノズルユニット6の断面図である。図7は、ノズルユニット6の拡大断面図である。ノズルユニット6は、第1ノズル61と、第2ノズル62と、第3ノズル63とを含む。
【0040】
図8は、第1ノズル61の断面図である。第1ノズル61は、導電性を有する金属製である。例えば、第1ノズル61は、銅製である。ただし、第1ノズル61は、銅以外の金属製であってもよい。第1ノズル61は、第1貫通孔64を含む。第1貫通孔64は、軸線方向に第1ノズル61を貫通している。
【0041】
第1貫通孔64は、本体孔部65と第1ラバルノズル部66とを含む。本体孔部65は、第1ノズル61の基端610から下方へ延びている。本体孔部65は、軸線方向に直線状に延びている。第1ラバルノズル部66は、第1ノズル61の先端611から上方へ延びている。第1ラバルノズル部66は、第1入口部661と、第1中間部662と、第1出口部663とを含む。第1ラバルノズル部66は、第1中間部662において狭まった形状を有している。
【0042】
第1入口部661は、本体孔部65に接続されている。第1入口部661の内径は、本体孔部65の内径よりも小さい。第1入口部661は、第1ノズル61の先端611に向かって径方向に縮小するように傾斜している。第1中間部662は、第1入口部661と第1出口部663との間に位置する。第1出口部663は、第1ノズル61の先端611に接続されている。第1出口部663は、第1ノズル61の先端611に向かって径方向に拡大するように傾斜している。
【0043】
第1ノズル61の外面は、第1本体部67と、第1先端部68と、第1段部69とを含む。第1本体部67は、第1先端部68の外径よりも大きな外径を有する。第1本体部67は、第1ノズル61の基端610から下方に延びている。第1先端部68は、第1本体部67から下方へ突出している。第1先端部68は、第1ノズル61の先端611から上方へ延びている。第1段部69は、第1本体部67と第1先端部68との間に設けられている。
【0044】
第2ノズル62は、第1ノズル61の外側に配置される。第2ノズル62は、絶縁体製である。例えば、第2ノズル62は、セラミック製である。或いは、第2ノズル62は、樹脂などの他の絶縁体製であってもよい。図9は、第2ノズル62の断面図である。図10は、第2ノズル62の斜視図である。
【0045】
第2ノズル62は、第2貫通孔71を含む。第2貫通孔71は、軸線方向において第2ノズル62を貫通している。第2貫通孔71内には、第1ノズル61の第1先端部68が配置される。図9に示すように、第2貫通孔71は、ノズル連結部72と第2ラバルノズル部73とを含む。
【0046】
ノズル連結部72は、第2ノズル62の基端620から下方に延びる。ノズル連結部72の縁は、面取りされている。ノズル連結部72は、第1ノズル61の第1先端部68に固定される。ノズル連結部72は、例えば圧入により、第1先端部68に固定される。或いは、ノズル連結部72は、ネジの螺合などの他の固定手段により、第1先端部68に固定されてもよい。ノズル連結部72は、第1先端部68と接触している。それにより、第1先端部68とノズル連結部72との間が封止される。
【0047】
第2ラバルノズル部73は、ノズル連結部72に接続されている。第2ラバルノズル部73は、第2ノズル62の先端621から上方へ延びている。第2ラバルノズル部73は、第2入口部731と、第2中間部732と、第2出口部733とを含む。第2ラバルノズル部73は、第2中間部732において狭まった形状を有している。
【0048】
第2入口部731は、ノズル連結部72に接続されている。第2入口部731は、ノズル連結部72の内径よりも大きな内径を有している。第2中間部732は、第2入口部731に接続されている。第2中間部732は、第2入口部731の内径よりも小さな内径を有している。第2出口部733は、第2中間部732に接続されている。第2出口部733は、第2ノズル62の先端621から上方に延びている。第2出口部733は、第2ノズル62の先端621に向かって径方向に拡大するように傾斜している。
【0049】
第2ノズル62の外面は、第2本体部74と、第2先端部75と、第2段部76とを含む。第2本体部74は、第2ノズル62の基端620から下方に延びている。図10に示すように、第2本体部74は、角柱部77と筒状部78とを含む。角柱部77は、多角柱状の形状を有している。角柱部77の角は、面取りされている。本実施形態において、角柱部77は、6角柱状の形状を有している。ただし、角柱部77は、他の角柱状の形状を有してもよい。
【0050】
図11は、図7におけるXI-XI断面図である。筒状部78の外径は、角柱部77の対角長よりも小さい。筒状部78の外径は、角柱部77の対辺の距離と同じである。ただし、筒状部78の外径は、角柱部77の対辺の距離より小さくてもよい。筒状部78は、第2先端部75の外径よりも大きな外径を有する。第2先端部75は、筒状部78から下方へ突出している。第2先端部75は、第2ノズル62の先端621から上方へ延びている。第2段部76は、第2本体部74と第2先端部75との間に設けられている。
【0051】
第2ノズル62は、複数の孔780を含む。複数の孔780は、第2ノズル62の第2貫通孔71から第2ノズル62の外面まで、径方向に延びている。複数の孔780は、第2ノズル62の第2貫通孔71から、放射状に延びている。詳細には、複数の孔780は、第2ノズル62の第2入口部731から筒状部78まで延びている。複数の孔780は、第2ノズル62の中心からオフセットして配置されている。或いは、複数の孔780は、径方向に対して傾斜していてもよい。なお、図面においては、複数の孔780の一部のみに符号780が付されており、他の複数の孔780の符号は省略されている。
【0052】
図12は、第2ノズル62を先端側から見た図である。図12に示すように、第2ノズル62は、環状溝760と複数の溝761とを含む。環状溝760と複数の溝761とは、第2段部76上に設けられている。環状溝760は、第2先端部75の周囲に配置される。複数の溝761は、環状溝760から第2ノズル62の外面まで、径方向に延びている。複数の溝761は、環状溝760から、放射状に延びている。詳細には、複数の溝761は、環状溝760から筒状部78まで延びている。複数の溝761は、第2ノズル62の中心からオフセットして配置されている。或いは、複数の溝761は、径方向に対して傾斜していてもよい。なお、図面においては、複数の溝761の一部のみに符号761が付されており、他の複数の溝761の符号は省略されている。
【0053】
第3ノズル63は、第2ノズル62の外側に配置される。図13は、第3ノズル63の断面図である。図13に示すように、第3ノズル63は、第3貫通孔79を含む。第3貫通孔79は、軸線方向において第3ノズル63を貫通している。第3貫通孔79内に、第1ノズル61と第2ノズル62とが配置される。第3貫通孔79は、第3入口部81と、第3出口部82と、第3段部83とを含む。第3入口部81は、第3ノズル63の基端630から下方へ延びている。第3出口部82は、第3ノズル63の先端631から上方に延びている。第3出口部82は、第3入口部81の内径よりも小さな内径を有している。第3段部83は、第3入口部81と第3出口部82との間に設けられる。
【0054】
第3ノズル63は、アウターキャップ84と、シールド85と、絶縁ガイド86とを含む。シールド85とアウターキャップ84と絶縁ガイド86とは、一体化されている。シールド85とアウターキャップ84と絶縁ガイド86とは、例えば圧入、或いは接着により、互いに接合されている。或いは、シールド85とアウターキャップ84と絶縁ガイド86とは、ネジの螺合によって、互いに接合されてもよい。
【0055】
アウターキャップ84は、セラミックなどの絶縁体製である。ただし、アウターキャップ84は、樹脂などの他の絶縁体製であってもよい。アウターキャップ84は、キャップ本体部840と、キャップ先端部841とを含む。キャップ本体部840は、筒状の形状を有している。キャップ本体部840の一部は、ノズル台座41の取付孔45内に配置される。
【0056】
キャップ本体部840は、第1凹溝842を含む。第1凹溝842は、キャップ本体部840の外周面において周方向に延びている。第1凹溝842には、図5に示す第1Oリング56が配置される。第1Oリング56によって、キャップ本体部840と取付孔45との間がシールされる。第1Oリング56によって、レーザヘッド3の内部への遮光液L1の浸入が防止される。
【0057】
キャップ先端部841は、先端631に向かって径方向に縮小するように傾斜したテーパ面843を含む。テーパ面843と先端631との間の角は、丸められて円滑化されている。キャップ先端部841は、レーザヘッド3の外部に露出している。キャップ先端部841は、第2ノズル62の第2先端部75の外周に配置される。
【0058】
シールド85は、アウターキャップ84の内側に配置される。シールド85は、導電性を有する金属製である。例えば、シールド85は、真鍮製である。ただし、シールド85は、真鍮以外の金属製であってもよい。
【0059】
シールド85は、シールド本体部851とユニット連結部852を含む。シールド本体部851は、アウターキャップ84内に配置される。ユニット連結部852は、アウターキャップ84から上方へ突出している。ユニット連結部852は、ノズルユニット6の外部に露出して配置される。ノズルユニット6は、ユニット連結部852においてノズル台座41に取り付けられる。例えば、ユニット連結部852に雄ネジが設けられ、取付孔45に雌ネジが設けられる。ユニット連結部852の雄ネジが、取付孔45の雌ネジに螺合する。それにより、ノズルユニット6がノズル台座41に固定される。
【0060】
絶縁ガイド86は、シールド85の内側に配置される。絶縁ガイド86は、第1ノズル61及び第2ノズル62とシールド85との間に配置される。絶縁ガイド86は、第1ノズル61及び第2ノズル62の外側に配置される。シールド85は、アウターキャップ84と絶縁ガイド86とによって覆われている。絶縁ガイド86は、樹脂などの電気絶縁性を有する材料製である。或いは、絶縁ガイド86は、セラミックなどの他の絶縁材料製であってもよい。
【0061】
絶縁ガイド86は、ガイド本体部861とガイドシール部862とを含む。ガイド本体部861は、シールド85内に配置される。ガイドシール部862は、シールド85から上方に突出している。ガイドシール部862は、ノズルユニット6の外部に露出して配置される。ガイドシール部862の外周面は、第2凹溝863を含む。第2凹溝863は、ガイドシール部862の外周面において周方向に延びている。第2凹溝863には、図5に示す第2Oリング57が配置される。第2Oリング57によって、第3ノズル63と取付孔45との間がシールされる。第2Oリング57によって、シールドガスの漏れが防止される。
【0062】
図6及び図7に示すように、ノズルユニット6は、第1通路91と第1吹出口92とを含む。第1通路91は、第1ノズル61の第1貫通孔64によって形成される。図5に示すように、第1通路91は、ノズル台座41内のレーザ通路47に接続される。第1吹出口92は、第1通路91に接続されている。第1吹出口92は、第1ノズル61の先端611に設けられる。
【0063】
ノズルユニット6は、第2通路93と第2吹出口94とを含む。第2通路93は、第1ノズル61と第2ノズル62との間に設けられる。詳細には、第2通路93は、第1ノズル61の第1先端部68と、第2ノズル62の第2入口部731と第2中間部732と第2出口部733との間に設けられる。第2通路93は、環状の形状を有している。第2吹出口94は、第2通路93に接続されている。第2吹出口94は、第2ノズル62の先端621に設けられる。
【0064】
ノズルユニット6は、第3通路95と第3吹出口96とを含む。第3通路95は、第1ノズル61と第3ノズル63との間と、第2ノズル62と第3ノズル63との間とに設けられる。第3通路95は、環状の形状を有している。詳細には、第3通路95は、第1ノズル61の第1本体部67と、第3ノズル63の第3入口部81との間に設けられる。第3通路95は、第2本体部74と第3入口部81との間に設けられる。図11に示すように、角柱部77の角は、第3入口部81に接触している。第3通路95は、角柱部77の側面と第3入口部81との間の隙間に設けられる。第3通路95は、第2ノズル62の複数の溝761と、第3段部83との間に設けられる。第3通路95は、第2先端部75と第3出口部82との間に設けられる。第3吹出口96は、第3通路95に接続されている。第3吹出口96は、第3ノズル63の先端631に設けられる。第2通路93は、第2ノズル62の複数の孔780を通って、第3通路95に連通している。
【0065】
第1吹出口92は、第2吹出口94よりも下方へ突出している。第2吹出口94は、第3吹出口96よりも下方へ突出している。図14は、ワークW1切断時のワークW1とノズルユニット6とを示す図である。図14に示すように、ワークW1に対する第3吹出口96の高さH3は、ワークW1に対する第2吹出口94の高さH2より高い。ワークW1に対する第2吹出口94の高さH2は、ワークW1に対する第1吹出口92の高さH1より高い。
【0066】
図15は、ノズルユニット6の第1~第3吹出口92,94,96近傍の拡大断面図である。図15に示すように、軸線方向に対する第2出口部733の傾斜角度θ2は、軸線方向に対する第1出口部663の傾斜角度θ1よりも大きい。第3出口部82は、軸線方向に直線状に延びている。すなわち、第3出口部82の傾斜角度は0度である。
【0067】
レーザ発生器19からのレーザ光L2は、レーザ通路47から第1通路91内へ入る。レーザ光L2は、第1通路91を通り、第1吹出口92からワークW1へ向けて照射される。また、アシストガスは、レーザ通路47から第1通路91内へ入る。図7に示すように、アシストガスG1は、第1通路91を通り、第1吹出口92からワークW1へ向けて吹き出される。
【0068】
シールドガスは、ガス通路48から第3通路95内へ入る。シールドガスの一部は、第3通路95から第2ノズル62の複数の孔780を通って、インナーシールドガスG2として、第2通路93内へ入る。インナーシールドガスG2は、複数の孔780を通ることで、旋回流となる。インナーシールドガスG2は、第2通路93を通り、第2吹出口94からワークW1へ向けて吹き出される。残りのシールドガスは、アウターシールドガスG3として、第3通路95を通る。アウターシールドガスG3は、複数の溝761を通ることで、旋回流となる。アウターシールドガスG3は、第3吹出口96からワークW1へ向けて吹き出される。
【0069】
図2に示すように、レーザ加工機1は、ノズルセンサ20を備えている。ノズルセンサ20は、ワークW1に対する第1ノズル61の高さを検出する。詳細には、ノズルセンサ20は、第1ノズル61とワークW1との間の静電容量を検出する。コントローラ36は、静電容量によってワークW1に対する第1ノズル61の高さを、算出する。 コントローラ36は、駆動装置4を制御して、第1ノズル61の高さに基づいて、レーザヘッド3を高さ方向に移動させる。以下、コントローラ36によるレーザ加工機1の制御について説明する。
【0070】
まず、図2に示すように、遮光液L1の液位が載置台11より下方である状態で、ワークW1が載置台11に設置される。コントローラ36は、入力装置37から加工の開始指令を受信すると、液位調整装置5を制御して、遮光液L1の液位を上昇させる。コントローラ36は、図3に示すように、ワークW1の上方の所定位置まで、液位を上昇させる。それにより、ワークW1が、遮光液L1中に沈められる。例えば、加工時の液位は、ワークW1から上方に数mm~十数mmの位置である。なお、コントローラ36は、液位センサ34からの信号に基づいて、液位を取得する。コントローラ36は、透過率センサ35からの信号に基づいて、遮光液L1の透過率を検出する。
【0071】
次に、コントローラ36は、駆動装置4を制御して、レーザヘッド3を、ワークW1の加工開始位置の上方へ移動させる。レーザヘッド3が加工開始位置の上方に到着すると、コントローラ36は、レーザヘッド3をワークW1へ向けて下降させながら、ガス制御装置7を制御して、ノズルユニット6からアシストガスG1とインナーシールドガスG2とアウターシールドガスG3とを吹き出させる。それにより、アシストガスG1とシールドガスG2,G3とがワークW1の表面に吹き付けられ、図4に示すように、ワークW1の表面の加工範囲から遮光液L1が除去される。
【0072】
その際、第2吹出口94からのインナーシールドガスG2の流速は、第3吹出口96からのアウターシールドガスG3の流速よりも速い。また、第1吹出口92からのアシストガスG1の流速は、第2吹出口94からのインナーシールドガスG2の流速よりも速い。
【0073】
コントローラ36は、ノズルセンサ20からの信号に基づいて、ワークW1からの第1ノズル61の高さを取得する。コントローラ36は、ワークW1の上方の所定の高さ位置まで第1ノズル61を下降させる。コントローラ36は、加工条件に従って、レーザ光L2によるワークW1の加工を開始する。コントローラ36は、レーザ発生器19を制御して、レーザヘッド3からワークW1へレーザ光L2を照射し、ワークW1を切断する。コントローラ36は、駆動装置4を制御して、レーザヘッド3を縦方向(X)及び横方向(Y)に移動させる。それにより、ワークW1が加工条件に従った形状に切断される。なお、遮光液L1の透過率が所定の閾値以上であるときには、コントローラ36は、開始指令を受けても、加工を開始させずに、警報を発してもよい。
【0074】
ワークW1の加工が完了すると、コントローラ36は、レーザ光L2の照射とガスの吹出とを停止させる。また、コントローラ36は、レーザヘッド3を上昇させ、所定の待機位置へ移動させる。コントローラ36は、遮光液L1の液位を、ワークW1よりも下方の位置まで下降させる。それにより、切断されたワークW1が載置台11から搬送可能となる。
【0075】
以上説明した本実施形態に係るレーザ加工機1では、第1~第3吹出口92,94,96から吹き出されるガスが、ワークW1とノズルユニット6との間を通って、ノズルユニット6の径方向における外側へ向けて流れる。それにより、ワークW1の加工範囲への遮光液の浸入が効果的に抑えられる。
【0076】
図14に示すように、ワークW1に対する第1~第3吹出口92,94,96の高さH3は、第1~第3吹出口92,94,96の順に高い。すなわち、ワークW1に対する第1~第3吹出口92,94,96の位置が段階的に高くなっている。そのため、アシストガスG1とシールドガスG2,G3とによって、ワークW1に沿ってノズルユニット6の中心から外側へ向けてスムーズに流れるガス流F1が生成される。それにより、ノズルユニット6の直下に液滴が存在しても、ガス流F1によって、液滴を外側へ追い出し易い。それにより、液滴が第1ノズル61に付着することが抑えられる。その結果、液滴の付着によって第1ノズル61の静電容量が変化することが抑えられ、第1ノズル61の高さの誤検出が抑えられる。
【0077】
第1出口部663は、軸線方向に対して傾斜している。それにより、図16に示すように、アシストガスG1が第1出口部663に沿って流れることで、アシストガスG1が第1出口部663から剥離し難い。第2出口部733は、軸線方向に対して傾斜している。それにより、インナーシールドガスG2が第2出口部733に沿って流れることで、インナーシールドガスG2が第2出口部733から剥離し難い。
【0078】
また、軸線方向に対する第2出口部733の傾斜角度θ2は、軸線方向に対する第1出口部663の傾斜角度θ1よりも大きい。それにより、図14に示すように、ガス流F1は、ノズルユニット6の中心から外側へ向けて、スムーズに流れる。それにより、ノズルユニット6の直下に液滴が存在しても、ガス流F1によって、液滴を外側へ追い出し易い。また、ノズルユニット6の直下では、アシストガスG1とシールドガスG2,G3とによって、渦が発生しやすい。この渦は、ワークW1の表面上でノズルユニット6の内周側から外周側へ向かおうとする液滴を、上方に持ち上げてノズルユニット6の内周側へと戻すように流れる。しかし、本実施形態に係るレーザ加工機1では、ノズルユニット6の直下において、アシストガスG1とシールドガスG2,G3とによる渦の発生が抑えられる。それにより、ノズルユニット6の直下に液滴が侵入しにくい。例えば、第1出口部663の軸線方向に対する傾斜角度θ1は、3度より小さい。第2出口部733の軸線方向に対する傾斜角度θ2は、9度より小さい。
【0079】
第2吹出口94からのインナーシールドガスG2の流速は、第3吹出口96からのアウターシールドガスG3の流速よりも速い。また、第1吹出口92からのアシストガスG1の流速は、第2吹出口94からのインナーシールドガスG2の流速よりも速い。例えば、アウターシールドガスG3の流速は120m/sであり、インナーシールドガスG2の流速は75m/sであり、アウターシールドガスG3の流速は50m/sである。それにより、例えば、切断後のワークW1の縁の近傍における液滴の巻き上がりが抑えられる。
【0080】
第3ノズル63は、テーパ面843を含む。そのため、テーパ面843が無い場合と比べて、第3ノズル63の直下の空間が拡大する。例えば、テーパ面843の水平方向に対する傾斜角度は、45度より大きい。それにより、図14に示すように、第3ノズル63の表面に沿って逆流するガス流F2の速度が低減される。その結果、逆流するガス流F2によって液滴がノズルユニット6の直下に侵入することが抑えられる。
【0081】
第3ノズル63において、テーパ面843と第3ノズル63の先端631との間の角にはアールが設けられている。例えば、アールの半径は、1mmより大きい。それにより、テーパ面843と第3ノズル63の先端631との間の角において、逆流するガス流F2の速度の急変が抑えられる。その結果、逆流するガス流F2によって液滴がノズルユニット6の直下に侵入することが抑えられる。
【0082】
第3ノズル63は、アウターキャップ84と、シールド85と、絶縁ガイド86との3重構造を有している。シールド85により、図17に示すように、遮光液L1の位置の変化による静電容量C2の変化を、第1ノズル61とワークW1との間の静電容量C1の変化として誤検知することが抑えられる。また、シールド85が、絶縁体であるアウターキャップ84と絶縁ガイド86とによって覆われている。それにより、シールド85への液滴の付着が抑えられる。その結果、第1ノズル61の高さの誤検出が抑えられる。
【0083】
また、アウターキャップ84がセラミック製であることで、レーザによる切断時に発生するスパッタへの耐性が向上する。絶縁ガイド86が樹脂製であることで、ノズル台座41との密着性が向上する。それにより、シールドガスの漏れが抑えられる。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0085】
レーザ加工機1の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上記の実施形態では、レーザ加工機1はレーザ光によってワークW1を切断している。しかし、レーザ加工機1はレーザ光によってワークW1を溶接してもよい。
【0086】
レーザ発生器19は、ファイバレーザに限らず、YAGレーザなどの固体レーザ、或いは炭酸ガスレーザなどの他の種類のレーザであってもよい。液位調整装置5の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、液位調整装置5は、貯液槽2への遮光液L1の供給量を制御することで、液位を変更してもよい。
【0087】
ノズルユニット6の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上述したノズルユニット6の各部分の寸法は、例示であって、それらに限定されるものではない。
【0088】
上記の実施形態では、第3通路95の第3出口部82の傾斜角は0度である。しかし、図18に示す第1変形例のように、第3出口部82は、軸線方向に対して傾斜していてもよい。例えば、第3出口部82の軸線方向に対する傾斜角度θ3は、9度より小さくてもよい。
【0089】
上記の実施形態では、第1ノズル61の第1先端部68の外周側は、軸線方向に直線状に延びている。しかし、図19に示す第2変形例のように、第1先端部68は、軸線方向に対して傾斜していてもよい。第1先端部68は、第1ノズル61の先端611に向かって径方向に拡大するように傾斜していてもよい。それにより、インナーシールドガスG2が第1先端部68に沿って流れることで、インナーシールドガスG2が第1先端部68から剥離し難い。例えば、第1先端部68の傾斜角度は、第2出口部733の傾斜角度と同じであってもよい。
【0090】
上記の実施形態では、第2ノズル62の第2先端部75は、軸線方向に直線状に延びている。しかし、図19に示すように、第2先端部75は、軸線方向に対して傾斜していてもよい。第2先端部75は、第2ノズル62の先端621に向かって径方向に拡大するように傾斜していてもよい。それにより、アウターシールドガスG3が第2先端部75に沿って流れることで、アウターシールドガスG3が第2先端部75から剥離し難い。例えば、第2先端部75の傾斜角度は、第3出口部82の傾斜角度と同じであってもよい。
【0091】
第1~第3通路91,93,95の形状は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、図20に示す第3変形例のように、第2吹出口94が径方向における外方を向くように、第2通路93が湾曲した形状であってもよい。第3吹出口96が径方向における外方を向くように、第3通路95が湾曲した形状であってもよい。この場合、ノズルユニット6へ向かってガスが逆流する空間が低減される。それにより、ノズルユニット6直下への液滴の侵入がさらに抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、レーザ加工機において、ワークの加工範囲への遮光液の浸入が効果的に抑えられる。それにより、ワークの加工品質が向上する。
【符号の説明】
【0093】
2:貯液槽、 6:ノズルユニット、 3:レーザヘッド、 4:駆動装置、 11:載置台、 19:レーザ発生器、 20:ノズルセンサ、 36:コントローラ、 61:第1ノズル、 62:第2ノズル、 63:第3ノズル、 82:第3出口部、 91:第1通路、 92:第1吹出口、 93:第2通路、 94:第2吹出口、 95:第3通路、 96:第3吹出口、 663:第1出口部、 733:第2出口部、 L1:遮光液
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