IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2023-167166多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法
<>
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図1
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図2
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図3
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図4
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図5
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図6
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図7
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図8
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図9
  • 特開-多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167166
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/46 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
F04D29/46 J
F04D29/46 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078130
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神坂 直志
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
(72)【発明者】
【氏名】末光 亮介
(72)【発明者】
【氏名】横山 明正
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB47
3H130AB62
3H130BA72A
3H130BA72B
3H130CA07
3H130CA08
3H130DA02Z
3H130EA02A
3H130EA02B
3H130EA04A
3H130EA04B
3H130EA07A
3H130EA07B
3H130EB01A
3H130EB01B
3H130ED02A
3H130ED02B
3H130ED03A
3H130ED03B
(57)【要約】
【課題】インペラの外径を容易に変更することができる多段遠心圧縮機を提供する。
【解決手段】多段遠心圧縮機は、複数段のインペラとケーシングとを備える多段遠心圧縮機であって、複数段のインペラは、第1インペラと、第1インペラの次の段に位置する第2インペラと、を含み、ケーシングは、第1インペラを出た流体を回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路と、ディフューザ流路の下流側に接続する折り返し流路と、折り返し流路の下流側に接続するリターン流路とを形成しており、ケーシングは、ディフューザ流路とリターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材と、ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうちハブ側の壁面を仕切壁部材とともに形成するリング状部材と、を含み、仕切壁部材とリング状部材とは別体で構成される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と
前記回転軸に設けられた複数段のインペラと、
前記複数段のインペラを収容するケーシングと、
を備える多段遠心圧縮機であって、
前記複数段のインペラは、第1インペラと、前記第1インペラの次の段に位置する第2インペラと、を含み、
前記ケーシングは、前記第1インペラを出た流体を前記回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路と、前記ディフューザ流路の下流側に接続し、前記ディフューザ流路を通過した前記流体の流れる方向を前記径方向における内向きに転向させる折り返し流路と、前記折り返し流路の下流側に接続し、前記折り返し流路を通過した前記流体を前記径方向における内側に導くリターン流路とを形成しており、
前記ケーシングは、
ケーシング本体と、
前記ディフューザ流路と前記リターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材と、
前記第1インペラのハブにおける前記径方向の外側の端面と前記仕切壁部材との間に前記端面に対向するように設けられ、前記ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうち前記ハブ側の壁面を前記仕切壁部材とともに形成するリング状部材と、
を含み、
前記仕切壁部材と前記リング状部材とは別体で構成された、多段遠心圧縮機。
【請求項2】
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルトを更に備える、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項3】
前記リターン流路に設けられたリターンベーンを更に備え、
前記径方向における前記リング状部材の外側端は、前記リターンベーンの前縁よりも前記径方向における内側に位置する、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項4】
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルトと、
前記リターンベーンを前記ケーシング本体に固定するベーン固定ボルトと、を更に備え、
前記リング状部材固定ボルトは、前記ベーン固定ボルトよりも前記径方向における内側に位置する、請求項3に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項5】
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルトと、
前記リターン流路に設けられたリターンベーンと、を更に備え、
前記リング状部材固定ボルトは、前記リング状部材と前記仕切壁部材とを貫通して前記リターンベーンの内部に達している、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項6】
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルトを更に備え、
前記リング状部材固定ボルトの頂面と、前記リング状部材における前記ディフューザ流路側の面とが面一である、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項7】
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルトを更に備え、
前記リング状部材における前記ディフューザ流路側の面と前記リング状部材固定ボルトの頂面との間には段差が形成されており、
前記多段遠心圧縮機は、前記段差の少なくとも一部を埋めるように前記頂面を覆うカバー部を備える、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項8】
前記リング状部材における前記ディフューザ流路と反対側の面は、前記径方向への前記リング状部材の移動を規制するように前記仕切壁部材に係合する係合部を含む、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項9】
前記仕切壁部材における前記ディフューザ流路側の面は凹部を含み、
前記係合部は、前記凹部に嵌合する凸部である、請求項8に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項10】
前記凹部及び前記凸部の各々は、前記回転軸の周方向に沿って延在するように環状に形成されている、請求項9に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項11】
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルトを備え、
前記リング状部材固定ボルトは、前記凸部を前記回転軸の軸方向に貫通している、請求項9又は10に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項12】
前記径方向において、前記インペラの最も外側の位置は、前記リング状部材の最も内側の位置よりも外側に位置する、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項13】
前記リング状部材における前記端面に対向する面は、前記リターン流路に近づくにつれて前記径方向における内側に向かうように傾斜している、請求項12に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項14】
前記回転軸の周方向に間隔を空けて設けられ、前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定する複数のリング状部材固定ボルトと、
前記リターン流路に前記周方向に間隔をあけて設けられた複数のリターンベーンと、
前記複数のリターンベーンを前記ケーシング本体に固定するための複数のベーン固定ボルトと、
を備え、
前記複数のリング状部材固定ボルトの各々は、前記仕切壁部材を貫通しており、前記複数のリターンベーンのうち前記複数のベーン固定ボルトが設けられていない前記リターンベーンの内部に達している、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項15】
前記リング状部材は前記回転軸の周方向に分割された複数の分割体を含む、請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項16】
多段遠心圧縮機の調整方法であって、
前記多段遠心圧縮機は、
回転軸と
前記回転軸に設けられた複数段のインペラと、
前記複数段のインペラを収容するケーシングと、
を備える多段遠心圧縮機であって、
前記複数段のインペラは、第1インペラと、前記第1インペラの次の段に位置する第2インペラと、を含み、
前記ケーシングは、前記第1インペラを出た流体を前記回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路と、前記ディフューザ流路の下流側に接続し、前記ディフューザ流路を通過した前記流体の流れる方向を前記径方向における内向きに転向させる折り返し流路と、前記折り返し流路の下流側に接続し、前記折り返し流路を通過した前記流体を前記径方向における内側に導くリターン流路とを形成しており、
前記ケーシングは、
ケーシング本体と、
前記ディフューザ流路と前記リターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材と、
前記第1インペラのハブにおける前記径方向の外側の端面と前記仕切壁部材との間に前記端面に対向するように設けられ、前記ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうち前記ハブ側の壁面を前記仕切壁部材とともに形成するリング状部材と、
を含み、
前記仕切壁部材と前記リング状部材とは別体で構成され
前記調整方法は、
前記第1インペラの外径を変更するステップと、
前記リング状部材の内径を変更するステップと、
を含む、多段遠心圧縮機の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸と回転軸に設けられた複数段のインペラと、複数段のインペラを収容するケーシングとを備える多段遠心圧縮機が開示されている。
【0003】
多段遠心圧縮機のケーシングは、インペラを出た流体を回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路と、ディフューザ流路の下流側に接続し、ディフューザ流路を通過した流体の流れる方向を径方向における内向きに転向させる折り返し流路と、折り返し流路の下流側に接続し、折り返し流路を通過した流体を径方向における内側に導くリターン流路と、リターン流路の下流側に接続し、リターン流路を通過した流体を次の段のインペラに導入する導入流路とを形成している。また、ケーシングは、ディフューザ流路とリターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3488718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧縮機の圧力ヘッドは、圧縮機の使用条件(例えば圧縮機が設置される地域及び温度等)によって変化する。圧縮機の使用条件下で所望の圧力ヘッドを実現する方法の1つとして、インペラの外径を変更することが考えられるが、従来の多段遠心圧縮機では、インペラの外径を変更する場合、ハブにおける径方向の外側の端面と上述の環状の仕切部材との間に適切な大きさの隙間が形成されるように環状の仕切壁部材を加工又は交換する必要がある。この環状の仕切壁部材は大型の構造物であるため、圧縮機の使用条件毎に環状の仕切壁部材を加工又は交換することは多大な労力を要する。このため、従来の多段遠心圧縮機では、インペラの外径を変更することは容易ではなかった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、インペラの外径を容易に変更することができる多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る多段遠心圧縮機は、
回転軸と
前記回転軸に設けられた複数段のインペラと、
前記複数段のインペラを収容するケーシングと、
を備える多段遠心圧縮機であって、
前記複数段のインペラは、第1インペラと、前記第1インペラの次の段に位置する第2インペラと、を含み、
前記ケーシングは、前記第1インペラを出た流体を前記回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路と、前記ディフューザ流路の下流側に接続し、前記ディフューザ流路を通過した前記流体の流れる方向を前記径方向における内向きに転向させる折り返し流路と、前記折り返し流路の下流側に接続し、前記折り返し流路を通過した前記流体を前記径方向における内側に導くリターン流路とを形成しており、
前記ケーシングは、
ケーシング本体と、
前記ディフューザ流路と前記リターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材と、
前記第1インペラのハブにおける前記径方向の外側の端面と前記仕切壁部材との間に前記端面に対向するように設けられ、前記ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうち前記ハブ側の壁面を前記仕切壁部材とともに形成するリング状部材と、
を含み、
前記仕切壁部材と前記リング状部材とは別体で構成される。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る多段遠心圧縮機の調整方法において、
前記多段遠心圧縮機は、
回転軸と
前記回転軸に設けられた複数段のインペラと、
前記複数段のインペラを収容するケーシングと、
を備える多段遠心圧縮機であって、
前記複数段のインペラは、第1インペラと、前記第1インペラの次の段に位置する第2インペラと、を含み、
前記ケーシングは、前記第1インペラを出た流体を前記回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路と、前記ディフューザ流路の下流側に接続し、前記ディフューザ流路を通過した前記流体の流れる方向を前記径方向における内向きに転向させる折り返し流路と、前記折り返し流路の下流側に接続し、前記折り返し流路を通過した前記流体を前記径方向における内側に導くリターン流路とを形成しており、
前記ケーシングは、
ケーシング本体と、
前記ディフューザ流路と前記リターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材と、
前記第1インペラのハブにおける前記径方向の外側の端面と前記仕切壁部材との間に前記端面に対向するように設けられ、前記ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうち前記ハブ側の壁面を前記仕切壁部材とともに形成するリング状部材と、
を含み、
前記仕切壁部材と前記リング状部材とは別体で構成され
前記調整方法は、
前記第1インペラの外径を変更するステップと、
前記リング状部材の内径を変更するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、インペラの外径を容易に変更することができる多段遠心圧縮機及び多段遠心圧縮機の調整方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る多段遠心圧縮機2の回転軸線Oを含む概略断面図である。
図2図1に示した多段遠心圧縮機2の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
図3図1に示した多段遠心圧縮機2の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
図4】上記多段遠心圧縮機2における圧力ヘッドの調整方法の一例を示すフロー図である。
図5】一実施形態に係る多段遠心圧縮機2の回転軸線Oを含む概略断面図である。
図6】一実施形態に係る多段遠心圧縮機2の回転軸線Oを含む概略断面図である。
図7】多段遠心圧縮機2における圧力ヘッドと体積流量との関係を示す圧力ヘッド-流量特性図である。
図8】周方向におけるリング状部材固定ボルト36とベーン固定ボルト42と配置の一例を示す図である。
図9図1に示した多段遠心圧縮機2の詳細構成の他の一例を示す拡大断面図である。
図10】周方向に分割された複数の分割体の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(多段遠心圧縮機の構成)
図1は、一実施形態に係る多段遠心圧縮機2の回転軸線Oを含む概略断面図である。多段圧縮機2の用途は特に限定されないが、例えばターボ冷凍機等に適用されてもよい。
図1に示すように、多段遠心圧縮機2は、回転軸4(シャフト)と、回転軸4に設けられた複数段のインペラ6と、複数段のインペラ6を収容するケーシング8と、を備える。以下、「軸方向」とは、特記しない限り回転軸4の軸方向すなわちインペラ6の軸方向を意味し、「径方向」とは、特記しない限り回転軸4の径方向すなわちインペラ6の径方向を意味し、「周方向」とは、特記しない限り回転軸4の周方向すなわちインペラ6の周方向を意味する。また、「流体」とは、特記しない限り多段遠心圧縮機2による圧縮(昇圧)の対象である流体を意味する。
【0013】
複数段のインペラ6は、軸方向に沿って並んでおり、インペラ6A(第1インペラ)と、インペラ6Aの次の段に位置するインペラ6B(第2インペラ)と、を含む。なお、図1では説明を容易にするために2段のインペラのみ示しているが、多段遠心圧縮機2が備えるインペラ6の数は2段に限らず3段以上であってもよい。また、インペラ6Aは、初段のインペラであってもよいし、2段目以降のインペラであってもよい。
【0014】
インペラ6Aは、ハブ22と、ハブ22の外周面24に周方向に間隔を空けて設けられた複数の翼26とを含む。ハブ22は、外周面24と、軸方向におけるインペラ6B側を向く背面28とを含む。外周面24は、軸方向において下流側に向かうにつれて回転軸4の回転軸線Oとの距離が大きくなるハブ面30と、径方向におけるハブ22の外側の端面32とを含む。複数の翼26はハブ面30に設けられており、端面32は、径方向における外側を向いており、ハブ面30と背面28とを接続するように環状に形成されている。
【0015】
ケーシング8(静止部材)は、インペラ6Aのハブ面30との間に圧縮流路9を形成する。また、ケーシング8は、インペラ6Aを出た流体を径方向における外側に導くディフューザ流路10と、ディフューザ流路10の下流側に接続し、ディフューザ流路10を通過した流体の流れる方向を径方向における内向きに転向させる折り返し流路12と、折り返し流路12の下流側に接続し、折り返し流路12を通過した流体を径方向における内側に導くリターン流路14とを形成する。リターン流路14を通った流体は、軸方向における下流側に転向されてインペラ6Bに流入し、さらに昇圧される。
【0016】
図示する例では、ケーシング8は、ケーシング本体16と、仕切壁部材18と、リング状部材20と、複数のリターンベーン23と含む。
【0017】
ケーシング本体16は、複数段のインペラ6と、仕切壁部材18と、リング状部材20と、複数のリターンベーン23とを収容する。ケーシング本体16は、ハブ面30に対向するシュラウド21を形成し、ディフューザ流路10を形成する一対の壁面33,34のうちシュラウド21側の壁面33(ディフューザ流路10を形成する壁面のうち後段のインペラ6Bから遠い側の壁面)を形成する。
【0018】
仕切壁部材18は、回転軸4の周りに環状に構成されており、ディフューザ流路10とリターン流路14とを仕切っている。仕切壁部材18は、ケーシング本体16との間にディフューザ流路10、折り返し流路12及びリターン流路14を形成する。仕切壁部材18と回転軸4との間の隙間は流体の漏れ流れを抑制するためのシール部材19よって封止されている。
【0019】
リング状部材20は、インペラ6Aのハブ22の端面32と仕切壁部材18との間に位置し、端面32と対向するようにハブ22の端面32の周りに周方向に沿って設けられる。リング状部材20は、ディフューザ流路10を形成する一対の壁面33,34のうちハブ22側の壁面34(ディフューザ流路10を形成する一対の壁面33,34のうち後段のインペラ6Bに近い側の壁面)を仕切壁部材18とともに形成する。仕切壁部材18とリング状部材20とは別体で構成されている。すなわち、仕切壁部材18とリング状部材20とは相互に分離可能な別部品として成形されている。図示する例では、リング状部材20の外径は仕切壁部材18の外径よりも小さく、リング状部材20の内径は仕切壁部材18の内径よりも大きい。
【0020】
仕切壁部材18は、壁面34のうち外周側の壁面部34aを形成し、リング状部材20は、壁面34のうち内周側の壁面部34bを形成する。壁面部34bは、壁面部34aよりも径方向における内側に位置し、壁面部34aに径方向に隣り合っている。
【0021】
複数のリターンベーン23は、リターン流路14に周方向に間隔を空けて設けられている。複数のリターンベーン23の各々は、軸方向における一方側(下流側)をケーシング本体16に支持され、軸方向における他方側(上流側)を仕切壁部材18に支持されている。複数のリターンベーン23は、例えば仕切壁部材18と一体で構成されていてもよい。すなわち、複数のリターンベーン23と仕切壁部材18とは、全体で一部品として構成されていてもよく、一体成形されていてもよい。複数のリターンベーン23は、例えば相互に同一の形状を有していて回転軸線Oの周りに回転対称に配置されていてもよい。なお、図示する例では、軸方向におけるリターン流路14の流路幅は、リターン流路14におけるリターンベーン23の前縁38から後縁40までの区間において、径方向における内側に向かうにつれて小さくなっている。
【0022】
図2は、図1に示した多段遠心圧縮機2の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
図2に示す例では、多段遠心圧縮機2は、リング状部材20を仕切壁部材18に固定するための複数のリング状部材固定ボルト36を備える。リング状部材固定ボルト36の各々は、各リターンベーン23の前縁38よりも径方向における内側に位置し、各リターンベーン23の後縁40よりも径方向における外側に位置する。また、リング状部材固定ボルト36の各々は、リング状部材20及び仕切壁部材18を貫通しており、対応するリターンベーン23の内部に達している。また、径方向におけるリング状部材20の外側端25(リング状部材20の外周面)は、各リターンベーン23の前縁38よりも径方向における内側に位置し、各リターンベーン23の後縁40よりも径方向における外側に位置する。
【0023】
また、図2に示す例では、多段遠心圧縮機2は、複数のリターンベーン23をケーシング本体16に固定するための複数のベーン固定ボルト42を備える。リング状部材固定ボルト36の各々は、ベーン固定ボルト42の各々よりも径方向における内側に位置する。また、リング状部材固定ボルト36とベーン固定ボルト42とが同一のリターンベーン23に固定されている。また、径方向におけるリング状部材20の外側端25(リング状部材20の外周面)は、ベーン固定ボルト42の各々よりも径方向における内側に位置する。
【0024】
また、図2に示す例では、リング状部材固定ボルト36の頂面36aと、リング状部材20におけるディフューザ流路10側の面34bとが面一となっている。
【0025】
また、図2に示す例では、仕切壁部材18におけるディフューザ流路10側の面44は、リターン流路14側(軸方向における下流側)に凹む凹部46を含む。リング状部材20におけるディフューザ流路10と反対側の面49は、仕切壁部材18に係合する係合部としての凸部50を含む。凸部50は、凹部46に嵌合しており、径方向へのリング状部材20の移動を規制する。リング状部材20は、面44に沿って設けられたリング状のプレート部48を含み、凸部50は、リング状のプレート部48からリターン流路14側(軸方向における下流側)に向けて突出している。凹部46及び凸部50の各々は周方向に沿って延在するように環状に形成されていてもよく、この場合、凹部46と凸部50とがインロー構造を構成してもよい。リング状部材固定ボルト36の各々は、凸部50を軸方向に貫通しており、仕切壁部材18及び対応するリターンベーン23に固定されている。
【0026】
図3は、図1に示した多段遠心圧縮機2の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
図3に示す例では、インペラ6Aの翼26の後縁52は、ハブ22から離れるにつれて(シュラウド21に近づくにつれて)径方向における外側に向かうように傾斜している。また、ハブ22の端面32は、後縁52の傾斜方向に沿って傾斜しており、リターン流路14(図1又は図2参照)に近づくにつれて径方向における内側に向かうように傾斜している。また、リング状部材20におけるハブ22の端面32と対向する面54は、リターン流路14に近づくにつれて径方向における内側に向かうように傾斜している。端面32と面54とは平行であってもよい。
【0027】
図3に示す例では、径方向において、インペラ6Aの最も外側の位置P1は、リング状部材20の最も内側の位置P2よりも外側に位置する。また、リング状部材20におけるハブ22の端面32に対向する面54と上記壁面34bとが接続する位置をP3とすると、径方向において、インペラ6Aの最も外側の位置P1は位置P3よりも径方向における外側に位置する。なお、図示する例では、後縁52の先端56の位置が径方向におけるインペラ6Aの最も外側の位置P1であり、上記面54における最もリターン流路14に近い位置が径方向におけるリング状部材20の最も内側の位置P2である。
【0028】
(多段遠心圧縮機の調整方法)
図4は、上記多段遠心圧縮機2における圧力ヘッドの調整方法の一例を示すフロー図である。この調整方法は、例えば多段遠心圧縮機2を新規に製造する際に実施されてもよいし、既に運用を開始している多段遠心圧縮機2の分解後に実施されてもよい。
【0029】
図4に示すように、S11において、インペラ6Aの外径を変更する。S11では、例えばインペラ6Aの外径が大きくなるようにインペラ6Aを交換してもよいし、例えばインペラ6Aの外径が小さくなるようにインペラ6Aを加工(例えば切削加工等)又は交換してもよい。
【0030】
S12において、リング状部材20の内径を変更する。具体的には、インペラ6Aのハブ22における径方向の外側の端面32とリング状部材20の内周面54との間に適切な隙間が形成されるように、S11で変更された後のインペラ6Aの外径に応じて、リング状部材20の内径を変更する。例えばS11でインペラ6Aの外径を大きくする場合には、S12では、リング状部材20の内径が大きくなるようにリング状部材20の内周面54を加工(例えば切削加工等)してもよいし、リング状部材20の内径が大きくなるようにリング状部材20を交換してもよい(図5においてインペラ6Aの出口部53とリング状部材20の内周面54とを実線の位置から破線の位置に変更することに相当)。また、S12でインペラ6Bの外径を小さくする場合には、リング状部材20の内径が小さくなるようにリング状部材20を交換してもよい(図6においてインペラ6Aの出口部53とリング状部材20の内周面54とを実線の位置から破線の位置に変更することに相当)。
【0031】
S13において、S11における外径の変更後のインペラ6AとS12における内径の変更後のリング状部材20とを含む多段遠心圧縮機2を組み立てる。
【0032】
(多段遠心圧縮機が奏する効果)
以下、上記多段遠心圧縮機2が奏する効果について説明する。
図1等を用いて説明したように、上記多段遠心圧縮機2は、ディフューザ流路10を形成する一対の壁面33,34のうちインペラ6Aのハブ22側の壁面34がリング状部材20と環状の仕切壁部材18とによって形成されており、ハブ22における径方向の外側の端面32に対向するリング状部材20が仕切壁部材18とは別体で構成されている。このため、インペラ6Aの外径を変更するためにインペラ6Aを加工又は交換する場合に、インペラ6Aのハブ22における径方向の外側の端面32とリング状部材20の内周面54との間に適切な隙間が形成されるように、インペラ6Aのハブ22の外径に応じてリング状部材20を加工又は交換することができる。このため、ディフューザ流路10のうちハブ22側の壁面34が環状の仕切壁部材18のみによって形成されている場合と比較して、インペラ6Aの外径の変更のために仕切壁部材18を加工又は交換する必要が無く、仕切壁部材18よりも外径の小さなリング状部材20の加工又は交換で済むため、インペラ6Aの外径を容易に変更することが可能となる。したがって、多段遠心圧縮機2の圧力ヘッドを多段遠心圧縮機2の使用条件(地域及び温度等)に応じて所望の圧力ヘッドに容易に変更することができる。
【0033】
図7は、多段遠心圧縮機2における圧力ヘッドと体積流量との関係を示す圧力ヘッド-流量特性図である。図7において、破線のグラフはインペラ6Aの外径Dを一定値Dに維持しつつ多段遠心圧縮機2の回転数を増速ギアによってα倍、β倍、γ倍に変更した場合を示しており、実線のグラフは、多段遠心圧縮機2の回転数Nを一定値Nに維持しつつインペラ6Aの外径DをDからD,D,Dに変更した場合を示している。なお、D~Dは、D<D<D<Dを満たす。なお、図示する例ではα<1<β<γを満たしている。
【0034】
図7に示すように、インペラ6Aの外径Dを変更することによって、増速ギアを用いて多段遠心圧縮機2の回転数Nを変更する場合と同様に圧力特性を変化させることができる。また、多段遠心圧縮機2の回転数を変更するための増速ギアを調達しなくても多段遠心圧縮機2の使用条件(地域及び温度等)に応じて所望の圧力ヘッドを速やかに実現することができ、増速ギアの調達に起因するコスト増加や納期の長期化等を回避することができる。
【0035】
また、図2等を用いて説明したように、多段遠心圧縮機2は、リング状部材20を仕切壁部材18に固定するリング状部材固定ボルト36を備えるため、仕切壁部材18に対してリング状部材20が軸方向にずれることを抑制することができる。これにより、ディフューザ流路10のうちハブ22側の壁面34に段差が生じることを抑制し、該段差に起因する圧力損失を抑制することができる。
【0036】
また、図2等を用いて説明したように、上記多段遠心圧縮機2では、径方向におけるリング状部材20の外側端25がリターンベーン23の前縁38よりも径方向における内側に位置することにより、径方向におけるリング状部材20の外側端25がリターンベーン23の前縁38よりも径方向における外側に位置する場合と比較して、リング状部材20の外径が小さいため、リング状部材20の加工又は交換を容易に行うことができる。
【0037】
また、図2等を用いて説明したように、リング状部材固定ボルト36を用いてリング状部材20を仕切壁部材18に適切に固定するために仕切壁部材18の肉厚が十分に大きくない場合であっても、リング状部材固定ボルト36がリターンベーン23の内部に達しているため、リング状部材20を仕切壁部材18及びリターンベーン23に強固に固定することができ、リング状部材20のずれ及び脱落を抑制することができる。
【0038】
また、図2等を用いて説明したように、リング状部材20におけるディフューザ流路10側の面34bとリング状部材固定ボルト36の頂面36aとが面一であるため、リング状部材20におけるディフューザ流路10側の面34bとリング状部材固定ボルト36の頂面36aとに段差が設けられている場合と比較して、該段差に起因する圧力損失を低減することができる。
【0039】
また、図2等を用いて説明したように、リング状部材20におけるディフューザ流路10と反対側の面49に形成された凸部50が、仕切壁部材18におけるディフューザ流路10側の面44に形成された凹部46に係合することにより、径方向へのリング状部材20の移動が規制されるため、径方向におけるリング状部材の位置決めを可能にするとともにリング状部材20が仕切壁部材18からずれること及び脱落することを抑制することができる。
【0040】
また、図2等を用いて説明したように、リング状部材20において比較的大きな肉厚を確保しやすい凸部50を軸方向に貫通するようにリング状部材固定ボルト36を設けることにより、リング状部材固定ボルト36に起因するリング状部材20の破損を抑制することができる。
【0041】
また、図3等を用いて説明したように、リング状部材20におけるハブ22の端面32に対向する面54と、ハブ22の端面32とは、リターン流路14に近づくにつれて径方向における内側に向かうように傾斜しているため、面54と端面32との間隔を軸方向の各位置で小さくすることができ、ハブ22とリング状部材20との隙間からの漏れ流れに起因する圧力損失の増大を抑制することができる。
【0042】
(変形例)
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、図2等に示した例では、リング状部材固定ボルト36とベーン固定ボルト42とが同一のリターンベーン23に固定された構成を示したが、リング状部材固定ボルト36の各々は、複数のリターンベーン23のうちベーン固定ボルト42が設けられていないリターンベーン23に固定されてもよい。この場合、図2に示すケーシング8において、リング状部材固定ボルト36の各々は、リング状部材20及び仕切壁部材18の各々を貫通し、複数のリターンベーン23のうち複数のベーン固定ボルト42が設けられていないリターンベーン23の内部に達していてもよい。例えば図8に示すように、リング状部材固定ボルト36とベーン固定ボルト42とが複数のリターンベーン23に周方向に交互に設けられていてもよい。これにより、リング状部材固定ボルト36とベーン固定ボルト42とが同一のリターンベーン23に設けられている場合と比較して、リング状部材固定ボルト36及びベーン固定ボルト42の各々の周囲に各ボルト36,42を固定するための肉厚を確保することが容易となる。
【0043】
また、図2等に示した例では、リング状部材固定ボルト36の頂面36aと、リング状部材20におけるディフューザ流路10側の面34bとが面一となっている構成を示したが、例えば図9に示すように、リング状部材固定ボルト36の頂面36aとリング状部材20におけるディフューザ流路10側の面34bとの間には段差gが形成されていてもよい。この場合、多段遠心圧縮機2は、段差gの少なくとも一部を埋めるように頂面36aを覆うカバー部58を備えていてもよい。また、カバー部58におけるディフューザ流路10側の面60とリング状部材20におけるディフューザ流路10側の面34bとが面一となっていてもよい。カバー部58は、例えば、リング状部材固定ボルト36の頂面36aを覆うキャップ又はパテ等であってもよい。
【0044】
また、ケーシング本体16、仕切壁部材18及びリング状部材20の各々は、周方向に分割された複数の分割体(周方向に分割された複数の部品)によって構成されていてもよい。例えば図10に示すように、ケーシング本体16は、周方向に分割された複数の分割体(図示する例では周方向に2分割された2つの分割体16A,16B)を連結することによって構成されていてもよい。また、例えば図10に示すように、仕切壁部材18は、周方向に分割された複数の分割体(図示する例では周方向に2分割された2つの分割体18A,18B)を連結することによって構成されていてもよい。また、例えば図10に示すように、リング状部材20は、周方向に分割された複数の分割体(図示する例では周方向に2分割された2つの分割体20A,20B)を連結することによって構成されていてもよい。なお、ケーシング本体16、仕切壁部材18及びリング状部材20の各々は、任意の方向及び任意の数に分割され得る。
【0045】
また、図2等に示した構成ではリング状部材におけるディフューザ流路10と反対側の面49に凸部50が設けられ、仕切壁部材18におけるディフューザ流路10側の面44に凸部50と係合する凹部46が設けられていたが、これらの凹凸の関係は逆であってもよい。すなわち、リング状部材におけるディフューザ流路10と反対側の面49に凹部が設けられ、仕切壁部材18におけるディフューザ流路10側の面44に該凹部と係合(嵌合)する凸部が設けられていてもよい。これにより、径方向へのリング状部材20の移動を規制し、径方向におけるリング状部材の位置決めを可能にするとともにリング状部材20が仕切壁部材18からずれること及び脱落することを抑制することができる。
【0046】
また、図2等に示した構成では、リング状部材20が複数のリング状部材固定ボルト36によって仕切壁部材18に固定されていたが、リング状部材固定ボルト36の数は1つであってもよく、好ましくは2以上であってもよい。多段遠心圧縮機2は、リング状部材固定ボルト36を備えていなくてもよく、リング状部材20はボルト以外の固定手段(例えば溶接又は圧入等)によって仕切壁部材18に固定されていてもよい。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る多段遠心圧縮機(例えば上述の多段遠心圧縮機2)は、
回転軸(例えば上述の回転軸4)と
前記回転軸に設けられた複数段のインペラ(例えば上述の複数段のインペラ6)と、
前記複数段のインペラを収容するケーシング(例えば上述のケーシング8)と、
を備える多段遠心圧縮機であって、
前記複数段のインペラは、第1インペラ(例えば上述のインペラ6A)と、前記第1インペラの次の段に位置する第2インペラ(例えば上述のインペラ6B)と、を含み、
前記ケーシングは、前記第1インペラを出た流体を前記回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路(例えば上述のディフューザ流路10)と、前記ディフューザ流路の下流側に接続し、前記ディフューザ流路を通過した前記流体の流れる方向を前記径方向における内向きに転向させる折り返し流路(例えば上述の折り返し流路12)と、前記折り返し流路の下流側に接続し、前記折り返し流路を通過した前記流体を前記径方向における内側に導くリターン流路(例えば上述のリターン流路14)とを形成しており、
前記ケーシングは、
ケーシング本体(例えば上述のケーシング本体16)と、
前記ディフューザ流路と前記リターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材(例えば上述の仕切壁部材18)と、
前記第1インペラのハブ(例えば上述のハブ22)における前記径方向の外側の端面(例えば上述の端面32)と前記仕切壁部材との間に前記端面に対向するように設けられ、前記ディフューザ流路を形成する一対の壁面(例えば上述の一対の壁面33,34)のうち前記ハブ側の壁面(例えば上述の壁面34)を前記仕切壁部材とともに形成するリング状部材(例えば上述のリング状部材20)と、
を含み、
前記仕切壁部材と前記リング状部材とは別体で構成される。
【0049】
上記(1)に記載の多段遠心圧縮機によれば、ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうち第1インペラのハブ側の壁面がリング状部材と環状の仕切壁部材とによって形成されており、ハブにおける径方向の外側の端面に対向するリング状部材が仕切壁部材とは別体で構成されている。このため、第1インペラの外径を変更するために第1インペラを加工又は交換する場合に、第1インペラのハブにおける径方向の外側の端面とリング状部材の内周面との間に適切な隙間が形成されるように、第1インペラのハブの外径に応じてリング状部材を加工又は交換することができる。このため、ディフューザ流路のうちハブ側の壁面が環状の仕切壁部材のみによって形成されている場合と比較して、第1インペラの外径の変更のために仕切壁部材を加工又は交換する必要が無く、仕切壁部材よりも外径の小さなリング状部材の加工又は交換で済むため、インペラの外径を容易に変更することが可能となる。したがって、多段遠心圧縮機の圧力ヘッドを多段遠心圧縮機の使用条件(地域及び温度等)に応じて所望の圧力ヘッドに容易に変更することができる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルト(例えば上述のリング状部材固定ボルト36)を更に備える。
【0051】
上記(2)に記載の多段遠心圧縮機によれば、仕切壁部材に対してリング状部材が回転軸の軸方向にずれることを抑制することができる。これにより、ディフューザ流路のうちハブ側の壁面に段差が生じることを抑制し、該段差に起因する圧力損失を抑制することができる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の多段遠心圧縮機において、
前記リターン流路に設けられたリターンベーン(例えば上述のリターンベーン23)を更に備え、
前記径方向における前記リング状部材の外側端(例えば上述の外側端25)は、前記リターンベーンの前縁(例えば上述の前縁38)よりも前記径方向における内側に位置する。
【0053】
上記(3)に記載の多段遠心圧縮機によれば、径方向におけるリング状部材の外側端がリターンベーンの前縁よりも径方向における内側に位置することにより、径方向におけるリング状部材の外側端がリターンベーンの前縁よりも径方向における外側に位置する場合と比較して、リング状部材の外径を小さくすることが可能となるため、リング状部材の加工又は交換を容易に行うことができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルト(例えば上述のリング状部材固定ボルト36)と、
前記リターンベーンを前記ケーシング本体に固定するベーン固定ボルト(例えば上述のベーン固定ボルト42)と、を備え、
前記リング状部材固定ボルトは、前記ベーン固定ボルトよりも前記径方向における内側に位置する。
【0055】
上記(4)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材の加工又は交換を容易に行うことができるとともに、リング状部材固定ボルトとベーン固定ボルトとの干渉を回避することができる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルト(例えば上述のリング状部材固定ボルト36)と、
前記リターン流路に設けられたリターンベーン(例えば上述のリターンベーン23)と、を備え、
前記リング状部材固定ボルトは、前記リング状部材と前記仕切壁部材とを貫通して前記リターンベーンの内部に達している。
【0057】
上記(5)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材を適切に固定するために仕切壁部材の肉厚が不足している場合であっても、リング状部材固定ボルトがリターンベーンの内部に達しているため、リング状部材を仕切壁部材及びリターンベーンに強固に固定することができ、リング状部材の脱落を抑制することができる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルト(例えば上述のリング状部材固定ボルト36)を備え、
前記リング状部材における前記ディフューザ流路側の面(例えば上述の面34b)と前記リング状部材固定ボルトの頂面(例えば上述の頂面36a)とが面一である。
【0059】
上記(6)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材におけるディフューザ流路側の面とリング状部材固定ボルトの頂面とに段差が設けられている場合と比較して、該段差に起因する圧力損失を低減することができる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルト(例えば上述のリング状部材固定ボルト36)を備え、
前記リング状部材における前記ディフューザ流路側の面(例えば上述の面34b)と前記リング状部材固定ボルトの頂面(例えば上述の頂面36a)との間には段差(例えば上述の段差g)が形成されており、
前記多段遠心圧縮機は、前記段差の少なくとも一部を埋めるように前記頂面を覆うカバー部(例えば上述のカバー部58)を備える。
【0061】
上記(7)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材におけるディフューザ流路側の面とリング状部材固定ボルトの頂面との段差の少なくとも一部を埋めるようにカバー部が設けられているため、該段差に起因する圧力損失を低減することができる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材における前記ディフューザ流路と反対側の面(例えば上述の面49)は、前記径方向への前記リング状部材の移動を規制するように前記仕切壁部材に係合する係合部(例えば上述の凸部50)を含む。
【0063】
上記(8)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材の係合部が仕切壁部材に係合することにより、径方向におけるリング状部材の位置決めを可能にするとともにリング状部材が仕切壁部材から脱落することを抑制することができる。
【0064】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の多段遠心圧縮機において、
前記仕切壁部材における前記ディフューザ流路側の面(例えば上述の面44)は凹部(例えば上述の凹部46)を含み、
前記係合部は、前記凹部に嵌合する凸部(例えば上述の凸部50)である。
【0065】
上記(9)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材における前記ディフューザ流路と反対側の面に形成された凸部が、仕切壁部材におけるディフューザ流路側の面に形成された凹部に嵌合することにより、リング状部材が仕切壁部材から脱落することを抑制することができる。
【0066】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の多段遠心圧縮機において、
前記凹部及び前記凸部の各々は、前記回転軸の周方向に沿って延在するように環状に形成されている。
【0067】
上記(10)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材における前記ディフューザ流路と反対側の面に形成された環状の凸部が、仕切壁部材におけるディフューザ流路側の面に形成された環状の凹部に嵌合することにより、リング状部材が仕切壁部材から脱落することを効果的に抑制することができる。
【0068】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定するリング状部材固定ボルト(例えば上述のリング状部材固定ボルト36)を備え、
前記リング状部材固定ボルトは、前記凸部を前記回転軸の軸方向に貫通している。
【0069】
上記(11)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材において比較的大きな肉厚を確保しやすい凸部を軸方向に貫通するようにリング状部材固定ボルトを設けることにより、リング状部材固定ボルトに起因するリング状部材の破損を抑制することができる。
【0070】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記径方向において、前記インペラの翼(例えば上述の翼26)における最も外側の位置(例えば上述の位置P1)は、前記リング状部材の最も内側の位置(例えば上述の位置P2)よりも外側に位置する。
【0071】
上記(12)に記載の多段遠心圧縮機によれば、インペラの径方向における翼の最も外側の位置がリング状部材の最も内側の位置よりも径方向内側に位置する場合と比較して、インペラの出口圧力を高めることができる。
【0072】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材における前記端面に対向する面(例えば上述の内周面54)は、前記リターン流路に近づくにつれて前記径方向における内側に向かうように傾斜している。
【0073】
上記(13)に記載の多段遠心圧縮機によれば、ハブにおける径方向の外側の端面が同様に傾斜している場合(リターン流路に近づくにつれて径方向における内側に向かうように傾斜している場合)に、上記端面と端面に対向する面との隙間を軸方向の各位置で小さくすることができ、該隙間からの漏れ流れに起因する圧力損失の増大を抑制することができる。
【0074】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(13)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記回転軸の周方向に間隔を空けて設けられ、前記リング状部材を前記仕切壁部材に固定する複数のリング状部材固定ボルト(例えば上述の複数のリング状部材固定ボルト36)と、
前記リターン流路に前記周方向に間隔をあけて設けられた複数のリターンベーン(例えば上述の複数のリターンベーン23)と、
前記複数のリターンベーンを前記ケーシング本体に固定するための複数のベーン固定ボルト(例えば上述の複数のベーン固定ボルト42)と、
を備え、
前記複数のリング状部材固定ボルトの各々は、前記仕切壁部材を貫通しており、前記複数のリターンベーンのうち前記複数のベーン固定ボルトが設けられていない前記リターンベーンの内部に達している。
【0075】
上記(14)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材固定ボルトとベーン固定ボルトとが同一のリターンベーンに設けられている場合と比較して、リング状部材固定ボルト及びベーン固定ボルトの各々の周囲に各ボルトを固定するための肉厚を確保することが容易となる。
【0076】
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(14)の何れかに記載の多段遠心圧縮機において、
前記リング状部材は前記回転軸の周方向に分割された複数の分割体(例えば上述の複数の分割体(例えば上述の複数の分割体20A,20B)を含む。
【0077】
上記(15)に記載の多段遠心圧縮機によれば、リング状部材が一体で(一部品で)構成されている場合と比較して、リング状部材の部品の大きさを小さくすることができるため、仕切壁部材へのリング状部材の取り付け作業及び仕切壁部材からリング状部材の取り外し作業が容易となる。
【0078】
(16)本開示の少なくとも一実施形態に係る多段遠心圧縮機(例えば上述の多段遠心圧縮機2)の調整方法において、
前記多段遠心圧縮機は、
回転軸(例えば上述の回転軸4)と
前記回転軸に設けられた複数段のインペラ(例えば上述の複数段のインペラ6)と、
前記複数段のインペラを収容するケーシング(例えば上述のケーシング8)と、
を備える多段遠心圧縮機であって、
前記複数段のインペラは、第1インペラ(例えば上述のインペラ6A)と、前記第1インペラの次の段に位置する第2インペラ(例えば上述のインペラ6B)と、を含み、
前記ケーシングは、前記第1インペラを出た流体を前記回転軸の径方向における外側に導くディフューザ流路(例えば上述のディフューザ流路10)と、前記ディフューザ流路の下流側に接続し、前記ディフューザ流路を通過した前記流体の流れる方向を前記径方向における内向きに転向させる折り返し流路(例えば上述の折り返し流路12)と、前記折り返し流路の下流側に接続し、前記折り返し流路を通過した前記流体を前記径方向における内側に導くリターン流路(例えば上述のリターン流路14)とを形成しており、
前記ケーシングは、
ケーシング本体(例えば上述のケーシング本体16)と、
前記ディフューザ流路と前記リターン流路とを仕切る環状の仕切壁部材(例えば上述の仕切壁部材18)と、
前記第1インペラのハブ(例えば上述のハブ22)における前記径方向の外側の端面(例えば上述の端面32)と前記仕切壁部材との間に前記端面に対向するように設けられ、前記ディフューザ流路を形成する一対の壁面(例えば上述の一対の壁面33,34)のうち前記ハブ側の壁面(例えば上述の壁面34)を前記仕切壁部材とともに形成するリング状部材(例えば上述のリング状部材20)と、
を含み、
前記仕切壁部材と前記リング状部材とは別体で構成され
前記調整方法は、
前記第1インペラの外径を変更するステップと、
前記リング状部材の内径を変更するステップと、
を含む。
【0079】
上記(16)に記載の多段遠心圧縮機の調整方法が適用される多段遠心圧縮機では、ディフューザ流路を形成する一対の壁面のうち第1インペラのハブ側の壁面がリング状部材と環状の仕切壁部材とによって形成されており、ハブにおける径方向の外側の端面に対向するリング状部材が仕切壁部材とは別体で構成されている。このため、第1インペラを加工又は交換することで第1インペラの外径を変更する場合に、リング状部材を加工又は交換することでリング状部材の内径を第1インペラの外径に応じて変更することにより、第1インペラのハブにおける径方向の外側の端面とリング状部材の内周面との間に適切な隙間が形成することができる。このため、仕切壁部材よりも外径の小さなリング状部材の加工又は交換で済むため、ディフューザ流路のうちハブ側の壁面が環状の仕切壁部材のみによって形成されている場合と比較して、インペラの外径を容易に変更することが可能となる。したがって、多段遠心圧縮機の圧力ヘッドを多段遠心圧縮機の使用条件(地域及び温度等)に応じて所望の圧力ヘッドに容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0080】
2 多段遠心圧縮機
4 回転軸
6(6A,6B) インペラ
8 ケーシング
9 圧縮流路
10 ディフューザ流路
12 折り返し流路
14 リターン流路
16 ケーシング本体
16A,16B,18A,18B,20A,20B 分割体
18 仕切壁部材
19 シール部材
20 リング状部材
21 シュラウド
22 ハブ
23 リターンベーン
24 外周面
25 外側端
26 翼
28 背面
30 ハブ面
32 端面
33,34,34b 壁面
34a,34b 壁面部
44,49,54,60 面
36 リング状部材固定ボルト
36a 頂面
38 前縁
42 ベーン固定ボルト
46 凹部
48 プレート部
50 凸部
52 後縁
53 出口部
54 内周面
56 先端
58 カバー部材
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10