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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167174
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】光学素子の成形装置および成形方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/16 20060101AFI20231116BHJP
   C03B 11/00 20060101ALI20231116BHJP
   C03B 11/12 20060101ALI20231116BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C03B11/16
C03B11/00 A
C03B11/12
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078143
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正行
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 有斗
(72)【発明者】
【氏名】和田 紀彦
(57)【要約】
【課題】光学素子の成形時の形状精度を向上させる。
【解決手段】一対の成形型である第1成形型および第2成形型を加熱しながら、第1成形型および第2成形型を相対移動させて、第1成形型と第2成形型との間に収容された光学材料を加圧して、所定形状の光学素子を成形する方法であって、第1成形型と第2成形型との相対移動の過程において、第1成形型と第2成形型との間の距離情報を取得して、取得された距離情報と、予め設定された基準距離情報とに基づいて、第1成形型および第2成形型の加熱温度を制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の成形型である第1成形型および第2成形型を加熱しながら、前記第1成形型および前記第2成形型を相対移動させて、前記第1成形型と前記第2成形型との間に収容された前記光学材料を加圧して、所定形状の光学素子を成形する方法であって、
前記第1成形型と前記第2成形型との相対移動の過程において、前記第1成形型と前記第2成形型との間の距離情報を取得して、取得された前記距離情報と、予め設定された基準距離情報とに基づいて、前記第1成形型および前記第2成形型の加熱温度を制御する、光学素子の成形方法。
【請求項2】
前記基準距離情報は、前記第1成形型と前記第2成形型との相対移動の過程における前記第1成形型と前記第2成形型との間の距離の時間的な変化を示す基準情報であり、前記取得された距離情報と、前記距離情報を取得した時刻情報と、前記基準距離情報とに基づいて、前記加熱温度を制御する、請求項1に記載の光学素子の成形方法。
【請求項3】
前記取得された距離情報と前記基準距離情報とを比較し、前記距離情報が前記基準距離情報より大きい場合には前記加熱温度を高くし、前記距離情報が前記基準距離情報より小さい場合には前記加熱温度を低くするように制御を行う、請求項2に記載の光学素子の成形方法。
【請求項4】
前記取得された距離情報に基づいて前記相対移動における移動速度を算出し、前記算出された移動速度と前記基準距離情報における基準速度とを比較し、前記移動速度が前記基準速度より低い場合には前記加熱温度を高くし、前記移動速度が前記基準速度より高い場合には前記加熱温度を低くするように制御する、請求項2に記載の光学素子の成形方法。
【請求項5】
一対の成形型である第1成形型および第2成形型と、
前記第1成形型および前記第2成形型を相対移動させて、前記第1成形型と前記第2成形型との間に収容された光学材料を加圧する加圧装置と、
前記第1成形型および前記第2成形型を加熱する加熱装置と、
前記第1成形型と前記第2成形型との間の距離情報を取得する距離センサと、
前記加熱装置による前記第1成形型および前記第2成形型の加熱温度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、予め設定された基準距離情報と、前記距離センサにより取得された前記距離情報とに基づいて、前記加熱装置による加熱温度を制御する、光学素子の成形装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第1成形型と前記第2成形型との相対移動の過程における前記第1成形型と前記第2成形型との間の距離の時間的な変化を示す基準情報として前記基準距離情報を記憶する記憶部と、
前記取得された距離情報と、前記距離情報を取得した時刻情報と、前記記憶部に記憶された前記基準距離情報とに基づいて、前記加熱装置による前記加熱温度を制御するための制御値を算出する演算部と、を備える、請求項5に記載の光学素子の成形装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記取得された距離情報と前記基準距離情報とを比較し、前記距離情報が前記基準距離情報より大きい場合には前記加熱温度を高くし、前記距離情報が前記基準距離情報より小さい場合には前記加熱温度を低くするように前記制御値の算出を行う、請求項6に記載の光学素子の成形装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記取得された距離情報に基づいて前記相対移動における移動速度を算出し、前記算出された移動速度と前記基準距離情報における基準速度とを比較し、前記移動速度が前記基準速度より低い場合には前記加熱温度を高くし、前記移動速度が前記基準速度より高い場合には前記加熱温度を低くするように前記制御値の算出を行う、請求項6に記載の光学素子の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱軟化した光学素材(光学材料)を、一対の金型に挟持してプレス成形することによって得られる光学素子、並びに光学素子の成形装置および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高精度で歪の少ない光学素子を得るために、成形中の温度制御が重要であることは勿論であるが、冷却する過程に対しても温度制御する場合がある。
【0003】
このような光学素子として例えばガラスレンズを成形するガラス成形を例として説明する。ガラス成形は対向する金型内にガラス素材を挟持して、ガラス素材が軟化する所定の温度まで昇温した後、金型に荷重を加えガラス素材をレンズ形状に成形し、その後取出可能な温度まで冷却し、ガラスレンズ成形する工程がある。
【0004】
ガラスレンズ成形時における温度制御および圧力(荷重)制御については、例えば特許文献1の図6にて説明されている。最初、金型を開きガラス素材を型内に設置して、型を閉じる。この時の型温度は室温に近い温度である。ガラスは常温では脆性を示すので、この状態では荷重(圧力)は掛っていない。その後、所定の温度T1まで昇温し、荷重P1となるように下軸位置を調整し加圧することでガラス素材をレンズ形状に成形する。更にその後、取出温度まで降温する。このように特許文献1などに示されるような従来例においてはガラスをプレスする時は基より、冷却過程においても温度制御することで、高品質なガラス成形ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-1802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、金型温度を一定に制御し、降温時においてはその降温曲線を制御しているとあるが、真のガラスの温度を測定している訳では無い。よって温度制御している金型と、ガラスの真の温度とが異なっている場合、ガラスの変形抵抗は成形毎に変わることとなる。そのため、ガラスレンズを高精度に、再現性良く製造することが難しいという課題を有している。また、このような課題は、ガラスレンズの成形だけでなく光学素子の成形において共通する課題でもある。
【0007】
本開示は、前記従来の課題を解決するもので、光学素子の成形において、成形される光学素子の形状精度のバラツキを小さくして、再現性良く成形することができる光学素子の成形装置および成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様にかかる光学素子の成形方法は、一対の成形型である第1成形型および第2成形型を加熱しながら、第1成形型および第2成形型を相対移動させて、第1成形型と第2成形型との間に収容された光学材料を加圧して、所定形状の光学素子を成形する方法である。第1成形型と第2成形型との相対移動の過程において、第1成形型と第2成形型との間の距離情報を取得して、取得された距離情報と、予め設定された基準距離情報とに基づいて、第1成形型および第2成形型の加熱温度を制御するものである。
【0009】
本開示の一の態様にかかる光学素子の成形装置は、一対の成形型である第1成形型および第2成形型と、第1成形型および第2成形型を相対移動させて、第1成形型と第2成形型との間に収容された光学材料を加圧する加圧装置と、第1成形型および第2成形型を加熱する加熱装置と、第1成形型と第2成形型との間の距離情報を取得する距離センサと、加熱装置による第1成形型および第2成形型の加熱温度を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、予め設定された基準距離情報と、距離センサにより取得された距離情報とに基づいて、加熱装置による加熱温度を制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光学素子の成形において、成形される光学素子の形状精度のバラツキを小さくして、再現性良く成形することができる光学素子の成形装置および成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガラスレンズのプレス成形の工程を分割して生産が可能なガラスレンズ成形装置の一例を示す図
図2】押切時間の推移の一例
図3】押切時間が変動する理由を説明する図
図4】押切時間と補正温度の関係を示す図(一例)
図5】本実施の形態におけるガラスレンズのリファレンスデータをつくるフローを説明する図
図6】本実施の形態におけるガラスレンズの量産成形時のフローを説明する図
図7】本実施の形態におけるプレス中のガラスの変形曲線を,リファレンス曲線と一致させる方法について説明する図
図8】本実施の形態におけるガラスレンズ成形装置のプレス部の主要な構成
図9】本実施の形態における変形速度から温度フィードバックする例を説明する図
図10】本実施の形態におけるガラスレンズ成形装置の設定画面の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1態様にかかる光学素子の成形方法は、一対の成形型である第1成形型および第2成形型を加熱しながら、第1成形型および第2成形型を相対移動させて、第1成形型と第2成形型との間に収容された光学材料を加圧して、所定形状の光学素子を成形する方法であって、第1成形型と第2成形型との相対移動の過程において、第1成形型と第2成形型との間の距離情報を取得して、取得された距離情報と、予め設定された基準距離情報とに基づいて、第1成形型および第2成形型の加熱温度を制御するものである。
【0013】
本開示の第2態様にかかる光学素子の成形方法は、第1態様において、基準距離情報は、第1成形型と第2成形型との相対移動の過程における第1成形型と第2成形型との間の距離の時間的な変化を示す基準情報であり、取得された距離情報と、距離情報を取得した時刻情報と、基準距離情報とに基づいて、加熱温度を制御するものである。
【0014】
本開示の第3態様にかかる光学素子の成形方法は、第2態様において、取得された距離情報と基準距離情報とを比較し、距離情報が基準距離情報より大きい場合には加熱温度を高くし、距離情報が基準距離情報より小さい場合には加熱温度を低くするように制御を行うものである。
【0015】
本開示の第4態様にかかる光学素子の成形方法は、第2態様において、取得された距離情報に基づいて相対移動における移動速度を算出し、算出された移動速度と基準距離情報における基準速度とを比較し、移動速度が基準速度より低い場合には加熱温度を高くし、移動速度が基準速度より高い場合には加熱温度を低くするように制御するものである。
【0016】
本開示の第5態様にかかる光学素子の成形装置は、一対の成形型である第1成形型および第2成形型と、第1成形型および第2成形型を相対移動させて、第1成形型と第2成形型との間に収容された光学材料を加圧する加圧装置と、第1成形型および第2成形型を加熱する加熱装置と、第1成形型と第2成形型との間の距離情報を取得する距離センサと、加熱装置による第1成形型および第2成形型の加熱温度を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、予め設定された基準距離情報と、距離センサにより取得された距離情報とに基づいて、加熱装置による加熱温度を制御するものである。
【0017】
本開示の第6態様にかかる光学素子の成形装置は、第5態様において、制御装置は、第1成形型と第2成形型との相対移動の過程における第1成形型と第2成形型との間の距離の時間的な変化を示す基準情報として基準距離情報を記憶する記憶部と、取得された距離情報と、距離情報を取得した時刻情報と、記憶部に記憶された基準距離情報とに基づいて、加熱装置による加熱温度を制御するための制御値を算出する演算部と、を備えるものである。
【0018】
本開示の第7態様にかかる光学素子の成形装置は、第6態様において、演算部は、取得された距離情報と基準距離情報とを比較し、距離情報が基準距離情報より大きい場合には加熱温度を高くし、距離情報が基準距離情報より小さい場合には加熱温度を低くするように制御値の算出を行うものである。
【0019】
本開示の第8態様にかかる光学素子の成形装置は、第6態様において、演算部は、取得された距離情報に基づいて相対移動における移動速度を算出し、算出された移動速度と基準距離情報における基準速度とを比較し、移動速度が基準速度より低い場合には加熱温度を高くし、移動速度が基準速度より高い場合には加熱温度を低くするように制御値の算出を行うものである。
【0020】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態)
本開示の実施の形態に係る光学素子の成形装置の一例として、光学素子としてガラスレンズを成形するガラスレンズ成形装置50を図1に示す。図1に示すガラスレンズ成形装置50は、ガラスレンズの成形プロセスを多段階に分割し、かつ複数の金型1を使って生産性を高めたガラスレンズ成形装置である。ガラスレンズ成形装置50は、加圧装置の加圧源として、例えば、エアシリンダを使用した装置である。
【0022】
図1に示すように、ガラスレンズ成形装置50では、右側から左側にかけて金型1が搬送されながら、金型1に対して複数の工程が順次行われる。具体的には、ガラスレンズ成形装置50では、図示右側から左側にかけて、金型1のそれぞれの搬送位置において、レンズ投入工程、加熱工程、プレス成形工程、冷却1工程、冷却2工程、レンズ取出工程が順次行われることで成形工程が行われる。なお、以降の説明では、それぞれの工程が行われる成形装置50内の位置を「~部」(例えば、加熱工程であれば加熱部)と称する。図では省略しているが、ガラスレンズ成形装置50は、金型1を順次一定間隔のサイクルタイム(例えば、10分毎)で送る機構(金型さお送り機構、図3にて56で図示)を備えている。また、金型1は一対の金型で構成されており、上型(上パンチ(第1金型に対応))2と下型(下パンチ(第2金型に対応))3とを備えている。
【0023】
レンズ投入工程では、金型1から上型2を取り外して、光学材料であるガラス素材5a下型3上に置く。その後、上型2を胴型4に挿入し、ガラス素材5aを下型3と上型2の間で挟持し、ガラス素材5aが一対の金型1内に収容された状態とする。一定時間後、投入部シャッター11aが開き、送り機構により横滑りするかの如く加工室内55に金型1が搬送され、加熱部のヒータブロック7の中央付近に金型1が配置される。加工室55は、金型1の酸化防止の目的で、真空もしくは窒素等の不活性ガス雰囲気に保たれている。
【0024】
加熱部のヒータブロック7には、例えば複数の棒状のカートリッジヒータ6が挿入されており、更にその上に硬い硬度を有するヒータプレート8を取付け、所定の温度を維持するように制御されている。この加熱部のヒータプレート8上に置かれた直後の金型1は、加熱部のヒータプレート8の設定温度より低いので、この工程ではプレス軸10により金型1に対して荷重を掛けることはほとんど無い。何故ならば、ガラス素材5aの温度が低い状態で荷重を掛けた場合、ガラス素材5aが割れたり、上型2や下型3のガラス素材5aとの接触面が傷ついたりするからである。上型2においても所定の温度まで所定の時間で加熱する必要があるので、上側2のヒータプレート8は、上型2と接するように設けられている。この加熱工程での後半において、ガラス素材5aは、十分に熱変形が可能な温度に達する。所定時間の経過後、金型1はヒータプレート8の上を横滑りしながら成形部に搬送され、プレス成形部において加熱される。
【0025】
プレス成形部のヒータプレート8上に金型1が置かれると、プレス軸10が下降して上型2を押し下げてガラス素材5aを押しつぶし、ガラス素材5aに対して金型形状を転写する。所定時間の経過後、金型1は冷却1部に搬送され、プレス成形部には次の金型1が配置されて、次の金型1に対してプレス成型工程が行われる。
【0026】
冷却1部のヒータプレート8上に金型1が配置されると、プレス軸10が下降し、レンズ形状に変形したガラス素材5bは、上型2と下型3とに挟持される。冷却1部のヒータプレート8の設定温度は、成形部のヒータプレート8の温度よりわずかに低く設定されている。そのため、温度が下がることでガラス素材5bは収縮し、収縮することで上型2および下型3による形状の転写が完全になされる。所定時間の経過後、金型1は冷却2部に搬送され、冷却1部には次の金型1がプレス成形部より搬送される。
【0027】
冷却2部のヒータプレート8上に金型1が配置されると、プレス軸10が下降し、冷却1部と同様に、レンズ形状に変形したガラス素材5bは、上型2と下型3とに挟持される。冷却2部のヒータプレート8の設定温度は、金型1の取出温度に設定されており、急速に金型温度が下がる。所定時間の経過後、取出部シャッター11bが開き、加工室55外にある取出部に金型1が搬送され、冷却2部には次の金型1が冷却1部より搬送される。
【0028】
取出部に移動した金型1は上型2が取り外されて、下型3から成形されたガラス素材5b、すなわち成形レンズ5bが取出される。更に金型1は、レンズ投入部に移動し、次の新しいガラス素材5aが収容されて、同様の工程が繰り返して行われる。
【0029】
図1を用いて、ガラスレンズ成形装置50におけるプロセス概要を説明したが、プロセス時間(サイクルタイム)に合わせて、加熱工程を2段階に分けて加熱したり、冷却工程を更に多段階に分けたりしてもよい。ヒータプレート8の設定温度(加熱温度)は、工程毎に異なることは言うまでもないが、概ね加熱工程と成工程の温度が他の工程よりも高くなっている。具体的には成形工程の場合、成形するガラス素材5aの特性によってヒータプレート8の設定温度が異なることは言うまでもないが、ガラス転移点を超えて屈伏点付近の温度が必要なことから600℃前後に達することもある。成形工程に続く冷却1工程での設定温度は成形工程より低く、冷却2部の設定温度は取出温度なので冷却1部より低い。
【0030】
また、金型1から上型2を取り外して成形されたガラスレンズ5bを取出す工程や、新たなガラス素材5aを挿入し組立てたりする工程を自動化してもよい。これにより生産性を高めることができる。
【0031】
図1のガラスレンズ成形装置のプレス部において、プレス軸10が下降して、上型2が下型3に対して押し下げられ、加熱軟化したガラス素材5aがレンズ形状に成形される。上型2は例えばストッパに当たることで上型2のそれ以上の下降が規制され、上型2と下型3との間にレンズ形状に対応する所定空間が形成される。ガラス素材に対するプレス開始から上型がストッパに当たる(この状態を「押切」と称する)までに要する時間(「押切時間」と称する)を図2に示す。図2は、本実施の形態の比較例にかかるガラスレンズ成形装置において、ガラスレンズの連続生産中の押切時間の推移の一例を示している。縦軸に押切時間(sec)、横軸に連続生産時のガラスレンズの個数(N)を示している。押切時間は概ね272秒であるが、わずか60個あまりのデータにおいても30秒近いバラつきが生じていることがわかる。また、隣接するデータの中でも大きく変化することから、経時的な傾向を読み取ることができない。なお、この比較例にかかるガラスレンズ成形装置は、本実施の形態のガラスレンズ成形装置50と同様な装置構成を有しているが、後述するリファレンスである変形曲線を用いた加熱温度制御を採用していない装置である。
【0032】
ガラスレンズ成形装置は、複数の金型を使って生産性良くガラスレンズを成形する装置である。具体的にはサイクルタイム毎に金型が移動してそれぞれの工程が順次行われていくものである。例えばプレス部においては、複数個の金型が順次搬送されてプレス工程が行われるため、金型毎に設置状態が異なり、その結果、金型に対する伝熱状態が変わるという問題が生じる。具体的に図3を使って説明すると、金型1がプレス軸に横滑りするかの如く移動し運ばれるが、ヒータプレート8が所定の温度であったとしても、下型3の底面とヒータプレート8との接触状態は毎回異なる。即ち金型1が横滑りして運ばれることに起因して、ダストが発生したり、ヒータプレート8の接触面が摩耗したりする。そのため、ヒータプレート8から下型3への伝熱状態が異なり、金型1や金型1内に収容されたガラス素材5aが毎回同じ温度にならないという問題が生じる。
【0033】
次に上記の問題を確かめるために、プレス部(プレス成形部)の設定温度を変更して、これによりどの程度押切時間が増減するかを評価した結果を図4に示す。図4では、縦軸にプレス部の設定温度の増減温度を補正温度(℃)として示し、横軸に押切時間の増減時間(sec)を示している。1回だけの実験では実験は、バラツキが大きくなるので複数回実施した。このガラスレンズの場合、標準押切時間272秒に対して、設定温度(標準設定温度:605℃)が±2℃変わると、押切時間が約30秒増減することがわかった。このことから通常の生産の中で押切時間が変化する理由は、上述したように金型内に収容されたガラス素材の実温度がバラツクことによるものと考えられる。これらの具体的な成形温度(プレス部の設定温度)とレンズ形状の関係は、レンズの設計形状、ガラスの硝材種、または成形条件などによって変わることは言うまでもないが、量産成形する中では重要な管理事項となる。
【0034】
これまで説明した量産上の課題を踏まえると、プレス成形工程での押切時間を安定化することが、高精度なレンズ形状を歩留まり良く生産する上で重要であるといえる。そこで、初めにガラスレンズの成形条件を確立するための試験成形を実施して、リファレンスとなる試験条件を確立する。次にそこで確立したリファレンスとなる試験条件を再現良く繰り返すように量産すれば、高精度なレンズ形状を歩留まり良く生産することができる。本実施の形態のガラスレンズ成形装置および成形方法における基本的なプロセス・フローを、図5および図6のフローチャートを使って説明する。
【0035】
図5に本実施の形態におけるガラスレンズ成形のリファレンスデータを作成するフローチャートを示す。初めにガラスレンズ成形する上で金型等を準備するとともに、ガラス素材種やレンズ形状から初期条件をつくり、実際のガラスレンズ成形中の変形プロファイルや押切時間等のデータを収集する(ステップS1)。その後成形されたレンズの形状を測定し、形状の良否を判定する(ステップS2)。成形条件を順次見直しながら(ステップS3)、これらのステップS1~S3を繰り返す中で、レンズ性能や生産性を勘案し最適条件とする。その最適条件で、再現性の確認(必要回数の実験)をして(ステップS4)、リファレンス条件を決定し、その時得られたガラス素材の変形曲線や押切時間をリファレンスデータとする(ステップS5)。
【0036】
次の段階で、ガラスレンズ成形の量産を開始する。図6に、本実施の形態におけるガラスレンズの量産成形時のフローチャートを示す。最初に、図5のフローで得られたリファレンスデータ(プレス成形時の変形曲線)を入力する(ステップS11:具体的方法は後述する)。次に、図5で得られた条件でガラスレンズの量産成形を開始する(ステップS12)。プレス成形工程でプレスする毎にリファレンス曲線と比較しながら、変形曲線がリファレンスの曲線からズレが生じた場合、ガラスレンズ成形装置50のヒータプレート8などの加熱装置に加熱温度としてフィードバックし、リファレンス曲線から変形曲線が極力ズレない様に制御する(ステップS13)。そのようにすることで押切時間のバラツキが減少する。そのようにして生産された成形レンズのレンズ形状の再現性は高く、高品質な生産と可能となる。
【0037】
本実施の形態におけるガラスレンズ成形装置50におけるプレス成形工程中のガラス素材の変形曲線を、リファレンス曲線と一致させる方法について詳細に説明する。図7には、ガラスレンズ成形装置50におけるプレス部のプレス開始(プレス前)から押切完了(プレス後)までのプロセス状態を横軸にプロセス時間としてグラフ化したものである。上段よりプレス圧力(MPa)、中段にヒータプレート8の温度、下段に変形曲線(プレス軸10の位置変化)を示す。
【0038】
ここで図7の下段に示す変形曲線は、上型2と下型3との間の距離がプロセス時間によってどのように変化するのかを示すものであり、上型2と下型3との間の距離としてプレス軸10の高さ位置の情報を用いたものである。本開示では、上型2と下型3との相対移動の過程において、上型2と下型3との間の距離がどのように変化するのかという距離の時間的な変化を示す基準情報を基準距離情報としている。このような基準距離情報の一例が図7に示すリファレンス曲線(リファレンス)である。
【0039】
本実施の形態のガラスレンズ成形装置50は、成形時の荷重を加圧装置の加圧源としてエアシリンダで付与するタイプであり、図7に示すように一定圧力(荷重)が金型1に対して付与される。但し、このようなエアシリンダは一例であり、加圧装置として電空レギュレータなどを使って荷重を可変してもよい。また図7の下段に示した変形曲線は、プレス軸位置(プレス軸10の高さ位置)がプラス(+)位置からマイナス(―)方向に移動し、押切位置でゼロ(0)となるように設定している。
【0040】
上述した比較例にかかるガラスレンズ成形装置では、圧力一定、加熱装置の温度一定であり、エアシリンダの圧力が上昇するとプレス軸が下降し、上型がガラス素材に接触(プレス軸位置:Z0mm)する。その後時間の経過とともに、プレス軸が下降し押切位置(プレス軸位置:0mm)まで下降する動作となる。この時、図2で説明したように押切時間が変化するので、プレス軸が0mmに到達する時間が成形毎に異なることになる。
【0041】
本実施の形態のガラスレンズ成形装置50では、図6で説明したフローに従ってリファレンスとなる変形曲線が予め入力されている。プレス工程が開始されると、上型2とガラス素材5aとが接触した位置(プレス軸位置:Z0)を起点にリファレンスとなる変形曲線と、今まさにプレスしているガラス素材5aの変形曲線とがリアルタイムに比較演算される。具体的には、プレス軸位置:Z0を時刻ゼロとして、ある時刻tnのリファレンスとなる変形曲線のプレス軸位置Zrnより現在の変形曲線のプレス軸位置Znが小さい場合(Zrn>Zn)、現在プレス中のガラス素材5aの方がより変形が進んでいることがわかる。これは実ガラス素材の温度で比較すると、リファレンス成形時のガラス素材より実際のガラス素材5aの温度が高くなっていることが推定できる。この場合、ヒータプレート8の温度(プレス温度)を設定値trよりΔtだけ低く設定するように制御する。そうすると変形中のガラス素材5aの実温度が低下し、変形抵抗が増加することで、変形曲線が変化する。その結果、リファレンスとなる変形曲線とプレス中のガラス素材5aの変形曲線が揃うように動作することで、プレス軸位置がゼロとなる押切時間をリファレンスと合わせること、あるいは近づけることが可能となる。押切時間が一致すると、形状精度のバラツキが小さくなる効果が得られる。反対に、時刻tnのとき、Zrn<Znならば、成形中のガラス素材5aの実温度がリファレンス時のそれと比較して低いと考えられる。したがって、ヒータプレート8の設定温度をΔtだけ高くなるように制御すればよいことがわかる。これらの制御のタイミングのデフォルト値は、所定の時間間隔とすればよく、例えば1秒間隔で、温度は0.1℃単位ぐらいでよい。制御方式としてはPID制御などを採用してもよい。
【0042】
リファレンスの変形曲線と現在プレス中の変形曲線の差分からヒータプレート8の温度をリアルタイムに制御することを説明したが、レンズの形状ならびに硝材種、金型サイズによって温度制御の応答特性が変わることは言うまでもない。そこで再度図6に示した量産時のフローを使って説明すると、デフォルト値で温度の制御を試みても押切時間のバラツキが思ったほど改善されない場合、温度制御の最適化を実施する必要がある。具体的には、図6のフローチャートにおいて、押切時間のバラツキが閾値を超えているかどうかを判断し(ステップS14)、バラツキが閾値よりも大きいと判断される場合には、温度制御の最適化、例えば、制御タイミング、制御単位、またはPIDの各値を見直す(ステップS15)。押切時間のバラツキが閾値よりも小さい場合には成形されたレンズの形状を測定し(ステップS16)、形状精度の歩留まりを判断する(ステップS17)。歩留まりが不良であると判断される場合には、成形条件の見直しを行い(ステップS18)、必要に応じてリファレンスデータの作り直しを行ってもよい(ステップS19)。
【0043】
図7に示したガラスレンズの成形プロセスを実現できる本実施の形態におけるガラスレンズ成形装置50のプレス部の主要な構成を図8に示す。図8(a)はプレス前の状態を示し、図8(b)はプレス後の状態を示す。
【0044】
金型1は、上型2と下型3と胴型4とを備え、ガラス素材5aは上型2と下型3との間に挟持される。加熱装置は、複数本のカードリッジヒータ6を入れたヒータブロック7と、ヒータブロック7と上型2および下型3の間に配置されて、ヒータブロック7からの熱をそれぞれの金型1に伝達するヒータプレート8とを備える。ヒータブロック7とヒータプレート8の間には温度センサ21が配置される。ヒータブロック7で発生した熱が装置本体に伝熱しにくいように、ヒータブロック7の装置側には断熱材9が配置されている。この加熱装置におけるヒータプレート8の面における中央部分に金型1が設置され、上方および下方ともに同構造の加熱装置が対称に設置されている。上方の加熱装置には加工室52の壁(上壁)を上下方向に貫通するようにプレス軸10が設けられており、プレス軸10の上端側には加圧源となるエアシリンダ22が設けられている。図8(b)に示すように、エアシリンダ22に所定のエア圧が供給されるとプレス軸10が降下して金型1を加圧する、具体的には上型2を加圧する仕組みである。装置本体、例えば加工室52には距離センサ23が固定されている。距離センサ23は、エアシリンダ22により駆動されるプレス軸10に途中に取り付けたセンサターゲット24との間の距離を計測することで、このプレス軸10の動作距離(下降距離)を計測する。すなわち、距離センサ23は、プレス軸10により加圧により変化する上型2と下型3との間の距離情報を取得するセンサとして機能する。
【0045】
ガラスレンズ成形装置50(図8および図1参照)は、ガラスレンズ成形装置50の各構成部の動作を制御する制御装置30によって動作するが、装置全体の動作については詳細を省く。本実施の形態の主要な動作について、以下説明する。制御装置30は、演算部31と、ヒータ制御部32と、アンプ33と、記憶部34とを備える。プレス軸10の動作距離を計測するための距離センサ23の信号は、アンプ33を介して演算部31に入力される。温度制御するためのヒータ制御部32は、演算部31からの指令と温度センサ21からの温度に基づいてカートリッジヒータ6を駆動し、加熱装置の加熱温度を制御する。記憶部34には、上述したリファレンスが記憶されている。
【0046】
演算部31およびヒータ制御部32は、プログラムを実行することにより所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算部31およびヒータ制御部32は、メモリに格納された制御プログラムを呼び出して実行することにより、加熱装置の温度制御に関する制御を実現する。演算部31およびヒータ制御部32は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。例えば、CPU、MPU、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現することができる。
【0047】
記憶部34は種々の情報を記録する記録媒体である。記憶部34は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Device)、ハードディスク、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。
【0048】
ここで再び図8を用いて説明する。ガラスレンズ成形装置50の加熱部からプレス部に金型1が横送りされた状態が、図8(a)に示すプレス前の状態である。次にガラスレンズ成形装置50全体の制御シーケンスに基づいて、エアシリンダ22にエアが供給されるとプレス軸10が降下して、上部のヒータプレート8が金型1の上型2に接する。この時の距離センサ23で計測される距離がZ0となる(図7参照)。プレス荷重に加え、ヒータプレート8から金型1を介してガラス素材5aに伝熱するので、ガラス素材5aは軟化して変形を開始する。ガラス素材5aの変形量は、距離センサ23の計測値として演算部31に入力される。演算部31では、記憶部34に記憶されているリファレンスとなるデータの変形曲線と、距離センサ23の計測値とが比較される。この比較は、距離センサ23により計測が行われた時刻情報に基づいて行われ、時刻情報は図示しないタイマーなどの時刻計測手段を用いて取得される。演算部31は、この比較によりリファレンスの変形曲線に対する遅れ、または進みを判断し、リファレンスに対する差分に合わせて加熱装置を制御するための制御値を算出する。ヒータ制御部32はこの制御値に基づいて加熱装置の加熱量を変更する。その結果、量産するガラス素材5aの変形曲線は、リファレンスの変形曲線と揃うが如く動作するので、押切時間のバラツキも小さくなる。
【0049】
図7および図8では、リファレンスとなる変形曲線と成形時のリアルな変形曲線とを比較して温度制御する場合を例として説明したが、本開示の成形方法はこのような場合に限定されない。図9に本実施の形態の変形例として、ガラス素材の変形速度(すなわちプレス軸10の移動速度)から温度フィードバック制御する例について説明する。ガラス素材の変形速度Vnは、図9図中に示すようにVn=(Zn-Zn+1)/Δtとしてリアルタイムに求めることができる。リファレンスとなるデータについても同様に算出できるので、変形速度でリファレンスとリアルタイムの変形速度とを比較することができる。図7で説明したようにリファレンスの変形位置(プレス軸位置)Zrnにおける変形速度Vrnに対して、ガラス素材の実温度が高い場合はプレス軸位置Znにおける変形速度Vnとなる。これらを変形速度で比較すると、Vrn<Vnとなる。リファレンスとリアルな変形曲線が離れることになるので、ヒータの温度を制御して変形曲線を一致あるいは近づけるためには、一時的にVrn>Vnの関係を作る必要がある。その後一定時間m経過後にZrn+m=Zn+mとなった場合には、Vrn+m=Vn+mとなるように制御することで、リファレンスとリアルタイムの変形曲線を再度一致するようにできる。
【0050】
本実施の形態におけるガラスレンズ成形装置50の設定画面の例を図10に示す。本実施の形態を実現するには、リファンレンスとなるデータをつくり、保持する必要がある。そのデータは、生産するガラスレンズの機種に合わせて変更できることが望ましい。そのために、図8に示したガラスレンズ成形装置50の制御装置30には、リファレンスとなるデータを保存したり、呼び出したりするためのインターフェース機能が設けられているとよい。例えば、図10に示すインターフェースがあれば便利である。図10のインターフェースでは、予め保存されている複数種類のリファレンス曲線から、生産で使用するリファレンス曲線を選択することができる。また、生産で使用される制御方法としても、プレス軸位置の制御または速度制御のいずれかを選択することもできる。
【0051】
本実施の形態のガラスレンズ成形装置50は、金型1と、加圧装置と、加熱装置と、距離センサ23と、制御装置30とを備える。金型1は、一対の金型1である上型2および下型3を備える。加圧装置は、プレス軸10およびエアシリンダ22を含み、上型2および下型3を相対移動させて、上型2と下型3との間に収容されたガラス素材を加圧する。加熱装置は、カートリッジヒータ6、ヒータブロック7およびヒータプレート8を備え、上型2および下型3を加熱する。距離センサ23は、プレス軸10に固定されたセンサターゲット24との間の距離情報を、上型2と下型3との間の距離情報として取得する。制御装置30は、加熱装置による上型2および下型3の加熱温度を制御する。制御装置30は、予め設定された基準距離情報であるリファレンスと、距離センサ23により取得された距離情報とに基づいて、加熱装置による加熱温度を制御する。
【0052】
制御装置30は、記憶部34と演算部31とを備える。記憶部34は、上型2と下型3との相対移動の過程における上型2と下型3との間の距離の時間的な変化を示す基準情報としてリファレンスを記憶する。演算部31は、取得された距離情報と、この距離情報を取得した時刻情報と、記憶部34に記憶されたリファレンスとに基づいて、加熱装置による加熱温度を制御するための制御値を算出する。
【0053】
上型2と下型3との間の距離情報は、距離の時間的な変化量である速度情報として用いられてもよい。
【0054】
上述の説明では、光学素子としてレンズを成形する場合を例としたが、成形される対象はレンズに限られず、レンズ以外の光学素子であってもよい。また、光学材料としてガラス素材を例として説明したが、成形できる材料であればガラス素材以外の材料を採用してもよい。
【0055】
また、距離センサは、上型2と下型3との間の距離を検出できるものであればよく、例えば光学式の距離センサを用いてもよい。
【0056】
また、プレス軸10を降下させることで、下型3に対して上型2を押し下げる場合を例としたが、下型3が上型2に対して押し上げられる構成でもよい。上型2と下型3とが互いに近づくように相対的な移動を行うような構成であればよい。
【0057】
また、制御装置30において記憶部34に予めリファレンスデータが記憶されている場合を例としたが、サーバなど制御装置30以外よりリファレンスデータが取得されるような場合であってもよい。
【0058】
また、リファレンスが変形曲線などの曲線データである場合を例として説明したが、このような場合のみに限られない。例えば、リファレンスが複数の時刻におけるプレス軸位置の情報である場合であってもよい。リファレンスは、時間的な変化を示す基準距離情報であればよい。
【0059】
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の光学素子の成形装置および成形方法は、光学素子成形時の押切時間を安定させることができ、形状精度を高めて再現性を向上させることができる。また、樹脂部品のリヒート成形の用途においても適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1.金型
2.上型(上パンチ)
3.下型(下パンチ)
4.胴型
5.ガラス,(5a ガラス素材,5b 成形レンズ)
6.カートリッジヒータ
7.ヒータブロック(HB)
8.ヒータプレート
9.断熱材
10.プレス軸(荷重軸)
11.シャッター(11a 入口,11b 出口)
21.温度センサ(例えば熱電対)
22.エアシリンダ
23.距離センサ
24.センサターゲット
30.制御装置
31.演算部
32.ヒータ制御部
33.距離センサアンプ
34.記憶部
50.ガラスレンズ成形装置(全体)
51.ベース
52.加工室
55.加工室内(チャンバー)
56.金型さお送り機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10