(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167176
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】鋼管と継手の接続機構
(51)【国際特許分類】
F16L 19/03 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
F16L19/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078146
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】391057627
【氏名又は名称】オーエヌ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】坂田 実
(72)【発明者】
【氏名】清水 道行
(72)【発明者】
【氏名】大賀 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山島 護
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014DA01
3H014DA04
(57)【要約】
【課題】
継手本体とロックリングホルダー(ナット)との接続時において相互に接近させる直線方向と回転方向の力との異なる2方向への作業が必要であること、経年により接続が緩み易くなる課題がある。
【解決手段】
端部側が山型に拡管された山型突部21を有する鋼管2と継手3とを接続する鋼管と継手の接続機構1において、前記継手3は、ナット4と接続する外周の中央部に環状のリング係合溝35を形成した接続用筒部32を具備し、前記ナット4は、内周に前記接続用筒部32の外周を外嵌する環状外筒部41と、前記環状外筒部41の内周には前記リング係合用溝35と対になって接続時に同心円上に形成されるリング溝44を有し、弾性体からなるバネリング7の内周輪側がリング係合溝35内に嵌まり込みバネリンク7の外周輪側がリング溝44に嵌まり込むことによって、接続される鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部側が山型に拡管された山型突部を有する鋼管と継手とを接続する鋼管と継手の接続機構であって、
前記継手は、内部に鋼管の内径と略等しい内径の流体通路を有する円筒部の端部に形成されて内周側に前記鋼管の端部側の外周を挿通する前記流体通路より径の大きい中拡径部を有し、外周の中央部には環状のリング係合溝を形成した前記ナットと接続する接続用筒部を具備し、該接続用筒部は先端側の内部には前記中拡径部よりも大径の大拡径部を形成し、
前記ナットは、内周に前記接続用筒部の外周を外嵌する環状外筒部と、該環状外筒部の一端側において前記鋼管を挿通する管挿通孔を中央に形成した鋼管押圧部とを有し、前記環状外筒部内周には前記リング係合用溝と対になって接続時に同心円上に形成されるリング溝を有し、更に、前記鋼管押圧部の鋼管挿通孔の内周面の角部には傾斜押圧面を有し、
前記リング溝には、弾性体材料からなるバネリングの少なくとも外周輪部が嵌め込まれており、
前記大拡径部の内周面と前記大拡径部と前記中拡径部の径の差によって生じる差壁面とによって直角に形成された部分を有する空間内部に嵌め込まれたパッキンを有し、
前記筒先部が前記環状外筒部内へ前記バネリングの内周方向への付勢力に抗して径を拡大してバネリングの内周輪側がリング係合溝内にはまり込みバネリンクの外周輪側がリング溝に嵌まり込むことによって、
前記鋼管の山型突部の端部側の傾斜面は前記差壁面と中拡径孔が形成する角部に当接すると共に前記パッキンと密着し、前記山型突部の内部側の傾斜面が前記鋼管押圧部の前記傾斜押圧面によって押圧されることによって、山型突部の双方の傾斜面が挟み込み押圧されて、気密を保たれつつ接続されることを特徴とする鋼管と継手の接続機構。
【請求項2】
前記鋼管押圧部の鋼管挿通孔の内面側の角部の傾斜押圧面は、前記鋼管を拡管して2つの傾斜面を有する山型突部を形成する際に使用したナットの傾斜押圧面であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項3】
前記ナットの環状外筒部の一部を切り欠いて円周切欠部を形成することを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項4】
前記バネリングが輪の一部を切断した開口部を有するC字型形状を形成し前記開口部で向い合う先端部を互いの反対側へ直角に折り曲げた折り曲げ片を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項5】
前記折り曲げ片に鋼管の軸心方向への穴を形成したことを特徴とする請求項4に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項6】
前記接続用筒部は先端側の外周が先細りとなるテーパー状に縮径された筒先部であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項7】
前記継手の接続用円筒部の円筒部側外周に外周方向へ突出した鍔部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項8】
前記パッキンの前記鋼管の端部側の傾斜面に当接する面に2つの突部を形成し前記外大拡径部内周面に当接する側にテーパー面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項9】
前記継手の接続用筒部の外周に設けたリング係合溝の深さがバネリングの太さの直径の約半分の長さで、前記ナットの環状外筒部の内周に設けたリング溝の深さがバネリングの太さの約直径の長さであることを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物の屋内配管などで主に使用される鋼管と継手の接続機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の鋼管と継手の接続機構の従来技術としては、出願人らが先に提案した特許文献1に示される接続機構がある。この接続機構は、被係合部を端部に設けた継手本体と、該被係合部を内側に挿入して係合する係合環部を端部に有するロックリングホルダーとを、前記被係合部の外周に設けた係合突起を前記ロックリングホルダーの内周に設けた開口切欠部を通じて内周の奥へと押し込み挿入してから該開口切欠部と連通している内周に設けてある係合穴へ回転させて挿入して、ロックリングホルダーと継手とに引き抜き方向の力が作用した場合であっても抜け出ないように確固に接続できる構造の接続機構である。そして、常時はロックリングホルダーは鋼管を抜け方向への移動を阻止すると共に自身はロックリングによって引き抜き方向へ付勢されているので前記被係合部と係合穴内面との摩擦が大となり円周方向への回転が阻止され緩むことはない。
【0003】
また、特許文献2の鋼管と継手の接続機構は、端部外周に接合用の雄ねじを形成した継手と、該継手を内側に挿入して係合するための雌ねじを形成したナットとを、前記継手の端部を前記ナットの内側に挿入しつつ前記雄ねじに雌ねじを螺合させるためにナットを回転させて接続するものである。この際に、山型突起の端部側の傾斜面は継手の角部によって押圧され反対側の傾斜面はナットの傾斜角部によって押圧されることで、山型突起を有する鋼管が軸心方向への移動が阻止されて接続が完了する。このナットの傾斜角部は、鋼管の端部を山型に拡管する際に使用した拡管機の部材をそのまま使用することから、山型突起の傾斜面と傾斜角部は傾斜角度や表面形状が完全一致しているので密着が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4352434号公報
【特許文献2】WO2009/050823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術によれば、継手本体とロックリングホルダーとの接続時において継手本体とロックリングホルダーを相互に接近させる直線方向の力を付与する作業と係合突起を係合穴へ挿入するための回転方向の力を付与する異なる2方向への作業が必要となるので、作業能率が悪くなるという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2の従来技術によれば、雄ねじに対して雌ねじを螺合させるためにナットを工具を用いて回転し締付けさせなければならないので、軸心方向へ鋼管と同時にナットを移動させる工程とナットを回転させる工程が必要となる特許文献1と同様の問題点がある。加えて、ナットを締め込むと山型突起の傾斜面と傾斜角部との面摩擦力が大きくなり締め込みのための力もそれに伴って大きくなるという問題点がある。更に、経年によって継手とナットの接続が緩むという問題点がある。
【0007】
この発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであって、その手段とするところは以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
端部側が山型に拡管された山型突部を有する鋼管と継手とを接続する鋼管と継手の接続機構であって、
前記継手は、内部に鋼管の内径と略等しい内径の流体通路を有する円筒部の端部に形成されて内周側に前記鋼管の端部側の外周を挿通する前記流体通路より径の大きい中拡径部を有し、外周の中央部には環状のリング係合溝を形成した前記ナットと接続する接続用筒部を具備し、該接続用筒部は先端側の内部には前記中拡径部よりも大径の大拡径部を形成し、
前記ナットは、内周に前記接続用筒部の外周を外嵌する環状外筒部と、該環状外筒部の一端側において前記鋼管を挿通する管挿通孔を中央に形成した鋼管押圧部とを有し、前記環状外筒部内周には前記リング係合用溝と対になって接続時に同心円上に形成されるリング溝を有し、更に、前記鋼管押圧部の鋼管挿通孔の内周面の角部には傾斜押圧面を有し、
前記リング溝には、弾性体材料からなるバネリングの少なくとも外周輪部が嵌め込まれており、
前記大拡径部の内周面と前記大拡径部と前記中拡径部の径の差によって生じる差壁面とによって直角に形成された部分を有する空間内部に嵌め込まれたパッキンを有し、
前記筒先部が前記環状外筒部内へ前記バネリングの内周方向への付勢力に抗して径を拡大してバネリングの内周輪側がリング係合溝内にはまり込みバネリンクの外周輪側がリング溝に嵌まり込むことによって、
前記鋼管の山型突部の端部側の傾斜面は前記差壁面と中拡径孔が形成する角部に当接すると共に前記パッキンと密着し、前記山型突部の内部側の傾斜面が前記鋼管押圧部の前記傾斜押圧面によって押圧されることによって、山型突部の双方の傾斜面が挟み込み押圧されて、気密を保たれつつ接続される鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0009】
前記鋼管押圧部の鋼管挿通孔の内面側の角部の傾斜押圧面は、前記鋼管を拡管して2つの傾斜面を有する山型突起を形成する際に使用したナットの傾斜押圧面であることにある。
【0010】
前記ナットの環状外筒部の一部を切り欠いて環状切欠部を形成することにある。
【0011】
前記バネリングが輪の一部を切断した開口部を有するC字型形状を形成し前記開口部で向い合う先端部を互いの反対側へ直角に折り曲げた折り曲げ片を有することにある。
【0012】
前記折り曲げ片に鋼管の軸心方向への穴を形成したことにある。
【0013】
前記接続用筒部は先端側の外周が先細りとなるテーパー状に縮径された筒先部であることにある。
【0014】
前記継手の接続用円筒部の円筒部側外周に外周方向へ突出した鍔部を設けたことにある。
【0015】
前記パッキンの前記鋼管の端部側の傾斜面に当接する面に2つの突部を形成し前記外大拡径部内周面に当接する側にテーパー面を形成したことにある。
【0016】
前記継手の接続用筒部の外周に設けたリング係合用溝の深さがバネリングの直径の約半分の長さで、前記ナットの環状外筒部の内周に設けたリング溝の深さがバネリングの太さの約直径の長さであることにある。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、端部側が山型に拡管された山型突部を有する鋼管と継手とを接続する際に、ナットの管挿通孔に挿入されている鋼管の2つの山型突部のうちの内側の傾斜面をナットの傾斜押圧面を当ててナットを継手方向に近づける操作でだけで鋼管と継手が接続されるので、簡単な操作で素早く接続できる利点がある。このナットを継手方向に近づける操作は、ナットと継手を人手又は工具を使用して互いに接近させるだけでよく、これによって予めナットの環状外筒部内周のリング溝にその外周輪部が嵌め込まれたバネリングの輪の内部に接続用筒部が入り込み、バネリングの輪が一旦拡大して接続用筒部の周面を摺動しつつ接続用筒部の外周のリング係合溝内にバネリングの内周輪側が嵌り込む。これによって、継手とナットはバネリングを介して鋼管の軸心方向である相互の引っ張り方向に対しては位置ずれをすることなく確固に接続される。又、山型突部の端部側の傾斜面は、継手の角部とパッキンに押される。これによって、鋼管の端部側の外周面と中拡径部内周面の隙間からの鋼管内を流れる流体の漏れを防止できると共に、山型突部の2つの傾斜面をナットの傾斜押圧面と継手の角部・パッキンで挟んで互いに接近する方向へ圧をかけることになって、鋼管の継手及びナットからの抜けを防止できる。継手とナットの接続は、相互の回転を伴わなく、継手とナットを相互に軸心方向に接近させるだけでよいので、接続作業が簡単に行い得る。又、回転締付による部材間の摩擦抵抗もなくなり部材の損傷も軽減される。更に加えて、パッキンが押圧によって圧縮されるので、シール性が向上し、結果として継手の寿命が延びる。
【0018】
前記鋼管押圧部の鋼管挿通孔の内面側の角部の傾斜押圧面が、前記鋼管を拡管して2つの傾斜面からなる山型突部の一つの傾斜面を形成するのに使用したナットの傾斜押圧面である場合には、鋼管の山型突部の傾斜角度及び傾斜面形状が同じであるので、ナットの傾斜押圧面と鋼管の山型突部の傾斜面とがより緊密に密着出来て接続強度を向上させることが出来る。更に加えて、パッキンを押圧して圧縮するのでシール性が向上し、その結果として継手自体の寿命も延びる
【0019】
前記ナットの環状外筒部の一部を切り欠いて環状切欠部を形成すれば、前記継手の接続用筒部の外周の一部が該環状切欠部から露出するので、鋼管と継手の接続を解除する際には、ナットのリング溝及び継手のリング係合溝に嵌っているバネリングの開口部をその環状切欠部の位置へ回転させて移動させ、工具を用いてリングの輪を付勢力に抗して拡大するようにしてバネリングをナットの環状外筒部に内周に形成したリング溝内へ収納することで、バネリングの内周輪側がリング係合溝から出るので、継手とナットとの接続を解除出来る。これにより、磨耗し或いは経年退化したパッキンの交換、鋼管の取替え交換などのメンテナンス作業が容易になる。
【0020】
前記バネリングが輪の一部を切断した開口部の相向い合う先端部を互いの反対側へ直角に折り曲げた折り曲げ片を有する構造とした場合には、この折り曲げ片を工具を用いるなどして輪を拡大させることが出来るので、前記したパッキンや鋼管の交換作業などのメンテナンスの作業能率が向上する。
【0021】
前記折り曲げ片に鋼管の軸心方向への穴を形成した場合には、この穴に工具の先端部分を挿入して開口部を広げる方向に力を加えることが出来易くなってメンテナンス等の作業能率がより一層向上する。
【0022】
前記継手の接続用筒部は先端側の外周が先細りとなるテーパー状に縮径された筒先部とした場合には、継手とナットを接近させた際に、バネリングの輪内に接続用筒部が入り易く、しかも筒先部がテーパー状に形成されていることからバネリンクは徐々に拡径して行くので接近させるに際して加える力が徐々に大きくなり、作業がし易くなる。
【0023】
前記継手の接続用円筒部の円筒部側外周に外周方向へ突出した鍔部を設けた場合には、この鍔部とナットの相対向する面の間に生ずる隙間の有無を外部から観察することによって、継手とナットの接合が確実に行われているか否かを知ることができる利点がある。又、接続時に継手とナットの相接近が過度に行われることを、ナットの先端面が鍔部に当接することによって防止出来る。
【0024】
前記パッキンの前記鋼管の端部側の傾斜面に当接する面に2つの突部を形成し大拡径部内周面に当接する面にテーパー面を形成した場合には、この突部の先端側の断面積の少ない側が先に傾斜面や差壁面に当接するので、徐々にパッキンの部材が潰れて行き面に密着し易くなり流体漏れを有効に防ぐことが出来る。加えて、テーパー面としたことにより大拡径部内周面との密着度が高まり止水効果が向上する。
【0025】
前記継手の接続用筒部の外周に設けたリング係合用溝の深さがバネリングの直径の約半分の長さであるので、リング係合溝にバネリングが嵌り込んでも直径の約半分の長さのリング外周輪だけで、残りの直径の約半分の長さのリング外周輪はリング溝に嵌り込むので、バネリングが継手とナットを鋼管の軸心の長手方向へのずれや移動を阻止し得る。また、リング溝は深さがバネリングの約直径の長さであるので、バネリングはこのリング溝内でリング溝の直径方向でバネリンクの直径の長さ分の遊びの空間を有している。このことからバネリンクが接続用筒部の内周空間内に侵入して行き拡径してリング係合用溝に嵌り込む迄の間でも拡大を続けて行くことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明の実施形態の鋼管と継手の接続状態の断面図
【
図2】左半分が継手とナットの接続状態、右半分が接続直前状態を示す斜視図
【
図3】左半分が継手とナットの接続状態、右半分が接続直前状態を示す正面図
【
図4】左半分が継手とナットの接続状態、右半分が接続前の分解斜視図を示す説明図
【
図5】接続機構に嵌め込んだ状態の
図4のパッキンのA-A線断面図
【
図7】鋼管端部側で山型突部を拡管後の拡管機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の鋼管と継手の接続機構の最良の実施形態について、以下図を参考にしつつ説明する。
図1~4に示すように、この鋼管と継手の接続機構1は、鋼管2の先端を継手3の端部に差し込んで鋼管2の端部に形成している山型突部21の2つの端部側の傾斜面21aと内部側の傾斜面21bを連結された継手3とナット4で挟み込んで固定することにより接続する接続機構である。
【0028】
前記鋼管2は、前記のように端部に2つの傾斜面21aと傾斜面21bからなる山型突部21を有するステンレス、鉄、金属合金などからなる厚さが薄肉の長尺な管体が一般的に用いられ、内部には令温水、水道水などの液体や蒸気、ガス、空気などの気体の流体が通過搬送される。これらの鋼管2は主として建造物の屋内配管に用いられるが、この配管工事は狭い空間内の施工現場が多いので、長尺な鋼管2を搬入して必要な長さに切断し難い時には予め工場で切断された鋼管2や、更には、目的に応じて選択されてこれら切断された鋼管2に接続された継手3と共に施工現場まで搬送されて、或いは現場で接続され組み立てられて敷設されてゆく。
【0029】
前記継手3は、L字形状のエルボ、T字形状のテイー、三方に分岐するクロス、両端の径の長さが異なるレジューサなどの構造形状から施工現場に応じて選択される円筒部31と、この円筒部31の端部に設けている接続用筒部32を有する。この実施形態では、円筒部31としては、短い直線状の円筒を示している。
【0030】
前記円筒部31は、内部に鋼管2の内径と略等しい内径の流体通路33を有し一方又は両端部に形成されて内側に前記鋼管2の端部側の外周を挿通する前記流体通路33より径の大きい中拡径部34を有している、そして、外周の中央部には環状のリング係合溝35を形成した前記ナット4と接続する前記円筒部31の外径より大きい外径の前記接続用筒部32を具備している。該接続用筒部32は先端側の内部に前記中拡径部34よりも大径の大拡径部36を形成している。この実施形態では、先端側の外周が先細りとなるテーパー状に縮径された筒先部37としてナット4との接続が容易となるようにしているが、同じ太さの接続用筒部32であっても良く、この場合には接続用筒部32の外周全体が前記ナット4の内周に密着して接続される。
【0031】
そして、前記大拡径部36と中拡径部34との段差が形成する差壁面38と前記大拡径部36の内周面が形成する円周直角空間には、輪状のパッキン5が挿入されており、
図5に示すように、このパッキン5の山型突部21の傾斜面21aに当接する側には2つの突部5a、5bが形成される。これらの突起5a、5bは、傾斜面21aに沿って包むようにしているために形状が異なっている。又、大拡径部36の内周面に当接する当接面5cが、
図5の下方がテーパー状に外側に反って反発力を大きくして水漏れの防止を図っている。
【0032】
尚、前記継手3の円筒部31と接続用円筒部32の境界付近の円筒部側外周に外周方向へ突出した鍔部6を設けてナット4との当接を外部から視認可能とし、接続が完了していることが確認できるようにしている。しかし、設けなくても継手3とナット4との接続には直接の支障は生じない。
【0033】
前記ナット4は、内周に前記接続用筒部32の外周の中央部を外嵌する環状外筒部41と、該環状外筒部41の一端側において、前記鋼管2を挿通する管挿通孔42を中央に形成した鋼管押圧部43が直角方向に形成されており、前記環状外筒部41の内周面には接続時に前記リング係合溝35と対になって同心円上に形成されるリング溝44を有し、更に、前記鋼管押圧部43の内側面45をと鋼管挿通孔42の内側端が形成する円周角部には傾斜押圧面46が形成されている。この傾斜押圧面46は、鋼管2に山型突部21の内部側の傾斜面21bを形成する際に後述する拡管機の一部としても使用するものである。又、
図2~4に良く現れているように、前記環状外筒部41の端縁側の一部を円周方向に且つリング溝44を横切って鋼管押圧部43方向へ切欠いた円周切欠部47が設けられている。
【0034】
前記リング溝44の溝の深さ及び横幅は、該リング溝44に収納されるバネリング7の素材の線材の直径と略同じである。対応するリング係合溝35の溝の深さは、バネリング7の素材の線材の直径の約半分で、横幅はバネリング7の直径と略同じである。バネリング7は弾力性のある断面円形の金属線材を円形の輪にして一箇所に開口部7aを設けたC字型形状であるもので、輪の直径を拡大する方向に広げると収縮する方向に付勢される性質を有する。そして、前記開口部7aで向い合う先端部を互いの反対側へ直角に折り曲げた折り曲げ片7bを形成しておくと、この折り曲げ片7bを工具で掴むことが出来、バネリング7を取り外す際に輪を広げるのに利用できる。この折り曲げ片7aの高さは特に限定されるものではないが、環状外筒部41の厚さからバネリング7の直径の長さを差し引いた長さ以下とすれば環状外筒部41の外周面から突出することがないので安全である。更にこの折り曲げ片7bに鋼管2の軸心方向への穴7cを形成しておくと、輪拡大工具の先端を差込みしてバネリング7の輪を広げる際の作業が楽になる。このような折り曲げ片7bを使用するときには、
図2,3に示すように、ナット4の環状外筒部41に形成した円周切欠部47の位置に納まるようにしておく。
【0035】
このようなバネリング7を予めリング溝44に嵌め込んでおく。この時に、リング溝44の深さはバネリング7の輪の太さと略同じとしておけば、バネリング7の外周輪部分がリング溝44に嵌まり込んで外れ落ちることはない。又、バネリング7の内径とリング係合溝35の溝底の直径が略等しくし、リング係合溝35の深さはバネリング7の輪の太さの約半分とし、バネリング7の内周輪部分がリング係合溝35に嵌め込まれた時にバネリング7の輪の太さの約半分の外周輪部分が外側へ突出している状態になり、リング溝44にその外周輪部分が収納される。
【0036】
鋼管2の端部の2つの向きの異なる傾斜面21a、21bからなる山型突部21は、
図7に示すような拡管機8を用いて形成される。この拡管機8は、図示していない取付枠体に拡管ヘッド81及び該拡管ヘッド81内で連結管82を軸心方向へ押引きする図外の駆動ピストンなどの駆動源が取付取外し自在に固定されている。前記拡管ヘッド81の中心部には加圧ロッド83の先端の連結棒84の挿通用の挿通穴81aが設けられ、この挿通穴81aの外周囲から連結管82と反対方向に先端内周に傾斜形成面46を有する鋼管嵌入筒部81bが設けられている。そして、この鋼管嵌入筒部81bの先端内周には山型突部21の端部側傾斜面21aを形成するための傾斜形成面81dが設けられている。前記連結棒84の先端部は前記連結管82とねじ結合されているので、前記連結棒84と加圧ロッド83との径の差によって生じる段差面83aに当接する拡管ゴム85及び該拡管ゴム85と前記挿通穴81aの外周方向の拡管ヘッド81の端面81cに当接するガイドリング86がそれぞれ連結棒84に移動自在に外嵌されている。前記鋼管嵌込筒部81bの外周にはナット4の環状外筒部41が外嵌されて、鋼管押圧部43の内面に鋼管嵌込筒部81bの先端が当接するようになっている。前記拡管ガイド81の端面81cには、前記ナット4の外側面48を拡管時に移動しないように係止する係止具87が回転軸87aに自在に複数設けられている。
【0037】
上記構成からなるこの拡管機8を用いて鋼管2を拡管する場合には、
図7に示すように、鋼管2の一端を加圧ロッド83の端部からナット4の管挿通孔42を通過するように差し込んで、拡管ヘッド81の前面に当接するまで押し込む。この際に、図示のように、予め環状外筒部41のリング溝44にバネリング7を挿入しておいても良い。これによって鋼管2の端部側は、拡管ヘッド81の端面81cに当たって係止すると共に、先端の外周部はガイドリンク86と拡管ゴム85の内周側に入る。この時点で、係止具87を回転軸87aを中心に回転させてナット4の外側面48に当ててナット4が拡管ヘッド81と反対方向に移動しないように係止する。その後、図外の駆動源を作動させて且つ加圧ロッド83を拡管ヘッド81方向に引くと、ガイドリング86によって拡管ヘッド81方向への移動を阻止されている拡管ゴム85が段差面83aによって軸心方向への力が作用することで、収縮した体積分が外周方向へ膨張して鋼管2の直径を膨らませる。鋼管2の端部の外周にはナット4の傾斜押圧面46と拡管ヘッド81の鋼管嵌込筒部81bの傾斜形成面81dがあるので、これらによって端部の外周は2つの傾斜面21a、21bからなる山型突部21が形成される。
【0038】
この状態で駆動源を停止すると図外の弾性体の弾力によって連結管84及び加圧ロッド83は
図7の状態に戻る。このようにして、鋼管2の端部外周に山型突部21が形成されると、係止具87を回転軸87aを中心に回転させてナット4の外側面48から外す。そして、鋼管2を加圧ロッド83から引き抜くと、ナット4はその傾斜押圧面46を新たに形成された山型突部21の傾斜面21bに押されて鋼管2の端部外周に嵌め込まれたまま同時に引き抜かれる。尚、この実施形態の拡管機8以外の形態の拡管機を使用して山型突部21を形成しても良く、
図7に示す拡管機8限定されるものではないが、当該拡管機8を用いれば、ナット4の傾斜押圧面46と鋼管2の山型突起21の傾斜面21bが一致するため、密着度の高い接続が可能となる利点がある。
【0039】
次に、この鋼管2の端部外周に嵌め込まれているナット4と継手3との接続作業について、接続の施工手順と共に説明する。
前記した鋼管と継手の接続機構1を配管の施工現場或いは工場で接合する場合には、
図1に示すように、山型突起21の異なる方向の2つの傾斜面21a、21bをナット4の傾斜押圧面46及び継手3の差壁面38と中拡径部34の内周面の交差部分である円周角部39によって両方向から押圧することで接続される。そのために、前記拡管機8による拡管時に用いた前記ナット4の管挿入孔42に鋼管2が挿入されたままの状態で、端部を継手3の中拡径部34に挿入する。差壁面38と大拡径部36が形成する円周直角空間には、予めパッキン5が嵌め込まれているので、
図5に示すように、このパッキン5の2つの突起5a、5bが傾斜面21aに押圧され当接し、且つ、パッキン5の側面及び外周面はそれぞれ差壁面38及び大拡径部36の内周面に密着して、気密が保持され流体漏れを防ぐ。この継手3とナット4を互いに接近する方向に押圧するには、ナット4のリング溝44に嵌入していて内側輪郭部をリング溝44から露出しているバネリング7の輪の内側方向への付勢力に抗して外側方向へ拡大する方向に押圧しなければならない。この時、
図1に良く現れているように、接続用円筒部32の筒先部37がテーパー状に先細りに形成されていれば、バネリング7の輪の中に挿入し易く、挿入後においても輪の拡径が徐々に行われるのでスムーズに接続が行える。
【0040】
このようにして、バネリング7が筒先部37を通過して接続用円筒部32の中央部分に達すると外周に形成しているリング係合溝35に達してバネリング7の内側輪郭部が自身の内側方向への付勢力によって嵌まり込む。前記のようにリング係合溝35の溝の深さは概ねバネリング7の直径の半分程度が好ましく、このようにすることによりバネリング7の内側輪郭部がリング係合溝35に嵌まり込み、外側輪郭部がリング溝44に嵌まり込むことになって、バネリング7の中央部分がその境界に位置することになる。このバネリング7がリング溝44及びリング係合溝35に夫々嵌ることで接続が完了する。この時に、接続用円筒部32と円筒部31の中間位置の円周方向に鍔部6を形成しておくと、鍔部6とナット4の互いに相面する個所に隙間があれば接続が不完全であることが外から認識できる利点がある。尚、接続用円筒部32の長さと、ナット4の環状円筒部41内の軸心方向の長さとを等しくしておけば、接続完了時に接続用円筒部32の先端が鋼管押圧部43の内側面45に当接するので、鍔部6がなくても過締付を防止できる。このような接続作業を繰り返し行うことで配管が行われる。以上の説明においては、継手3の一方の端部における鋼管2のナット4による接続について説明したが、他方の端部においても同様に接続作業を行うことにより、連続した配管が敷設される。
【0041】
次に、配管のメンテナンス時等において接続を解除しなければならない場合について説明する。ナット4の環状外筒部41に円周切欠部47を形成している場合には、
図2に示すように、バネリング7に形成してある開口部7aが円周切欠部47に位置するように回転させてから、工具などを用いて輪を付勢力に抗して広げてバネリング7の内側輪郭部をリング係合溝35から脱出させつつナッ4と継手3を相互に離反させる方向へ移動させるとバネリング7は接続用筒部32の外周に乗りそのまま更に離反する方向へ移動させると接続が解除される。この時、リング溝44の深さがバネリング7の線材の輪の直径相当分あればこのリング溝44の内部にバネリング7が納まり容易に分離できる。この時に、バネリング7の開口部7aの両端に折り曲げ片7bが形成されて入れば工具で端部を掴みやすくなるので、作業能率が向上する。更に、折り曲げ片7bに孔7cを設けておけば、
図8に示すように、Cリングプライヤー9の先細先端を挿入して容易に拡径でき取り外し作業が楽に行える。
【0042】
尚、円周切欠部47や折り曲げ片7bもない場合の接続であっても、ナット4と継手3を離反する方向に強い力を作用させることによっても可能である。この場合にもバネリング7は外側輪郭部がリング係合溝35を乗り越えて脱出して、ナット4と継手3の分離が可能となるが、この場合に備えてバネ係合溝35の深さを輪の太さの半径以下にしておくことが望ましい。
【産業上の利用分野】
【0043】
この鋼管と継手の接続機構は、建造物の大きさ如何に拘わらず、又、建造物の種類や建造物の内外を問わずに、更には、気候の変化に影響を受けることなく、比較的薄肉の鋼管を使用できる全ての水道配管、ガス配管、下水配管など日常的に必須な鋼管に好適に適用可能なために、その利用範囲は広大で、世界中で多くの需要が見込まれるものと期待される。
【符号の説明】
【0044】
1 鋼管と継手の接続機構
2 鋼管
21 山型突部
21a 端部側傾斜部
21b 内部側傾斜部
3 継手
31 円筒接続用筒部
32 接続用筒部
33 流体通路
34 中拡径部
35 リング係合溝
36 大拡径部
37 筒先部
38 差壁面
39 円周角部
4 ナット
41 環状外筒部
42 管挿通孔
43 鋼管押圧部
44 リンク溝
45 内側面
46 傾斜押圧面
47 円周切欠部
48 外側面
5 パッキン
5a、5b 突起
5c 当接面
6 鍔部
7 バネリング
7a 開口部
7b 折り曲げ片
7c 穴
8 拡管機