(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167178
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電極材料及びそれを用いた全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20231116BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231116BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20231116BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M10/0562
H01M10/0525
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078154
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 友博
(72)【発明者】
【氏名】向原 彪亮
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AM12
5H029HJ05
5H029HJ13
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050DA13
5H050HA05
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】酸化チタンを固体電解質又はその前駆体で被覆する工程を要さず、600℃よりも高温で焼結を行った場合でも副反応を抑制することができる酸化チタンを用いた電極材料を提供する。
【解決手段】酸化チタン粒子を含む電極材料であって、該酸化チタン粒子は、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子を含み、電子顕微鏡にて定方向径を計測することによる平均一次粒子径が300nm~1500nmであり、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である、電極材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子を含む電極材料であって、
該酸化チタン粒子は、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子を含み、電子顕微鏡にて定方向径を計測することによる平均一次粒子径が300nm~1500nmであり、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である、電極材料。
【請求項2】
前記電極材料は、XRD測定におけるルチル型酸化チタンの回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRと、アナタース型酸化チタンの回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAにおいて、(IR×1.32/(IA+IR×1.32))×100の値が50.0未満である、請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記電極材料は、全固体電池に用いられる、請求項1又は2に記載の電極材料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電極材料を備える全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料及びそれを用いた全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境問題への関心の高まりを背景に、様々な産業分野で石油や石炭から電気へとエネルギー源の転換が進んでおり、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等の分野をはじめ、様々な分野で電池やキャパシタ等の蓄電装置の使用が広がりをみせている。蓄電装置としては現在、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質を用いた二次電池が広く利用されている。非水電解質を用いた二次電池としては電極に様々な材料を用いたものが提案されており、例えば負極としてチタン酸化物を用いたもの等が知られている(特許文献1参照)。なおチタン酸化物の一種である酸化チタンは電池の電極活物質以外の用途でも幅広く利用されており、例えば樹脂膜の屈折率調整等にも使用される(特許文献2参照)。このような非水電解質を用いた電池では、電解質に可燃性の有機溶媒を使用することから発火や爆発の危険性があり、また極低温環境下では電解質が凍結して電池として機能しなくなるという欠点がある。このため近年、固体電解質を用いる全固体電池が注目されており、研究開発が活発に行われている。
【0003】
全固体電池に用いられる固体電解質のうち無機材料からなる固体電解質は酸化物系のものと硫化物系のものに大別される。このうち酸化物系の固体電解質は一般的に固い材料であり粒界抵抗が大きいため、電極活物質の粉末と混合するだけでは十分な性能が得られない。このため電極活物質と固体電解質とを接合させるための焼結が行われるが、焼結時には界面で電池の性能低下の原因となる望ましくない反応が進行する場合がある。例えば、負極活物質として酸化チタンを用い、リン酸化物系の固体電解質を用いる全固体電池では焼結により副反応相が形成され、負極作動電位が高電位化してしまう不具合がある。この不具合に対し、酸化チタンの表面に固体電解質をコーティングすることで低温での焼結を可能とし、副反応相の形成を抑制する方法が提案されている(特許文献3、4参照)。また正極活物質であるLi2CoP2O7と固体電解質の界面反応を抑制することを目的として、Li2CoP2O7にLi4P2O7を被覆する方法(特許文献5参照)や、負極活物質であるLi4Ti5O12と固体電解質との界面反応を抑制するためにリチウムリン酸塩、リチウムニオブ酸塩、及びリチウムケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を固体電解質として用いる方法(特許文献6参照)が提案されている。また電極活物質を固体電解質の被膜で覆うことで焼結時の正極活物質の酸化を抑制したり、電池の安定性を改善する方法(特許文献7、8参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-168265号公報
【特許文献2】特開2011-136871号公報
【特許文献3】特開2019-050083号公報
【特許文献4】特開2019-179669号公報
【特許文献5】特開2020-113376号公報
【特許文献6】特開2018-125286号公報
【特許文献7】特開2018-120724号公報
【特許文献8】特開2013-125750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電極活物質と固体電解質とを接合させるための焼結時の不具合を抑制する種々の技術のうち、電極活物質として酸化チタンを用いた特許文献3、4には酸化チタンを固体電解質で被覆し、焼結温度を600℃にすることで副反応が起こらないことが確認されたと記載されているが、全固体電池の緻密性を向上させる観点からはより高温で焼結することが望ましい。また特許文献3、4の技術では酸化チタンを固体電解質又はその前駆体で被覆する工程を要するため、工程数削減の観点から改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、酸化チタンを固体電解質又はその前駆体で被覆する工程を要さず、600℃よりも高温で焼結を行った場合でも副反応を抑制することができる酸化チタンを用いた電極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、酸化チタンを固体電解質又はその前駆体で被覆する工程を要さず、600℃よりも高温で焼結を行った場合でも副反応を抑制することができる酸化チタンを用いた電極材料について種々検討したところ、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子を含み、所定の測定方法による平均一次粒子径が300nm~1500nmであり、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である酸化チタン粒子を電極材料として用いると、固体電解質又はその前駆体で被覆する工程を行うことなく600℃よりも高温で焼結を行った場合でも副反応を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の電極材料等を包含する。
〔1〕酸化チタン粒子を含む電極材料であって、該酸化チタン粒子は、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子を含み、電子顕微鏡にて定方向径を計測することによる平均一次粒子径が300nm~1500nmであり、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である、電極材料。
〔2〕前記電極材料は、XRD測定におけるルチル型酸化チタンの回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRと、アナタース型酸化チタンの回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAにおいて、(IR×1.32/(IA+IR×1.32))×100の値が50.0未満である、〔1〕に記載の電極材料。
〔3〕前記電極材料は、全固体電池に用いられる、〔1〕又は〔2〕に記載の電極材料。
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の電極材料を備える全固体電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極材料は、酸化チタンを固体電解質又はその前駆体で被覆する工程を要さず、600℃よりも高温で焼結を行った場合でも副反応を抑制することができるため、全固体電池の電極材料として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1、2のTiO
2粒子1、2、比較例1、2の比較TiO
2粒子1、2を用いて作製した電極を備える電池の充電開始からの電圧と容量との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0012】
1.電極材料
本発明の電極材料に含まれる酸化チタン粒子は、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子を含み、電子顕微鏡にて定方向径を計測することによる平均一次粒子径が300nm~1500nmであり、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である。
ここで「一次粒子」とは、粉末を構成する最も小さい粒子のことをいう。また2以上の一次粒子が凝集した状態の粒子を「凝集粒子」といい、一次粒子とは区別する。
酸化チタン粒子の上記平均一次粒子径が300nm以上であって、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満であることにより、酸化チタン粒子の表面積が小さくなり、固体電解質との接触面積が小さくなることで固体電解質との副反応を充分に抑制することができる。
また、上記平均一次粒子径が1500nm以下であることにより、電極反応の際のLi+等のイオンの挿入サイトを充分に確保することができ、Li+等のイオンが酸化チタン粒子の内部まで充分に拡散し、酸化チタン粒子は内部まで充放電に寄与することができるため、十分な充放電容量を確保することができる。
上記平均一次粒子径として好ましくは、300~1300nmであり、より好ましくは、300~1100nmであり、更に好ましくは、600~1100nmであり、特に好ましくは、800~1100nmである。
【0013】
一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM、特に限定されないが、例えばJSM-7000F、日本電子社製等)により、写真の1万倍視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔)で定義される粒子径(nm)を計測する。定方向径は、SEM写真内の一次粒子150~1000個程度について計測を行い、その累積分布の平均値を平均一次粒子径とする。凝集粒子に関しては、その粒子を一次粒子に分割して定方向径を計測する。
【0014】
本発明の電極材料に含まれる酸化チタン粒子は、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である。これにより、600℃よりも高温で焼結を行った場合でも固体電解質との副反応を充分に抑制することができる。
一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比として好ましくは11%未満であり、より好ましくは10%未満である。
【0015】
上記電極材料は、XRD測定におけるルチル型酸化チタンの回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRと、アナタース型酸化チタンの回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAにおいて、IR×1.32/(IA+IR×1.32)×100により表される値(ルチル化率)が50.0未満であることが好ましい。
アナタース型酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAは、ルチル型酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRよりも1.32倍大きい値として検出されるため、上記計算式では1.32の係数を乗じる。
IR×1.32/(IA+IR×1.32)×100により表される値(ルチル化率)が50.0未満のようにルチル型酸化チタンの含有率が少ないものであると、酸化チタンを含む電極材料を用いて作製した全固体電池が充放電特性により優れたものとなる。
上記ルチル化率は、より好ましくは40以下であり、更に好ましくは20以下であり、一層好ましくは10以下であり、特に好ましくは5.0以下である。
ルチル化率の値は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
上記酸化チタン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、0.8~7.0m2/gであることが好ましい。より好ましくは、1.0~5.0m2/gであり、更に好ましくは1.3~4.5m2/gである。
上記BET比表面積は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
上記酸化チタン粒子は、酸化チタン以外のその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては特に制限されないが、リン酸、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、リン酸塩、無水リン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸塩、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩リン酸、五酸化二リン等のリン化合物、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素を含む化合物、Al、Si、Fe、Zr、Nbを含む金属酸化物及びこれらの硫酸塩、S、Clを含む化合物が挙げられる。
【0018】
上記酸化チタン粒子における上記その他の成分の含有量としては、特に制限されないが、酸化チタン粒子100質量部に対して、0~10質量部であることが好ましい。より好ましくは、0~5.0質量部である。
【0019】
上記酸化チタン粒子において、リンの含有量としては特に制限されないが、酸化チタン粒子100質量部に対して、P2O5換算で0~8.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0~5.0質量部である。
【0020】
上記酸化チタン粒子において、アルカリ金属塩の含有量としては特に制限されないが、酸化チタン粒子100質量部に対して、アルカリ金属酸化物換算で0~8.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0~5.0質量部である。
【0021】
2.電極材料に含まれる酸化チタン粒子の製造方法
本発明の電極材料に含まれる酸化チタン粒子の製造方法は、特に制限されないが、水酸化チタンと、アルカリ金属塩及び/又はリン化合物とを混合する工程(a)と、該混合工程(a)で得られた混合物を焼成する工程(b)とを行って製造することが好ましい。
【0022】
上記工程(a)で用いられる水酸化チタンは、一般的に、組成式:H2TiO3やH4TiO4で表される化合物である。「メタチタン酸」、または単に「チタン酸」と呼ばれることもあり、化学式では、TiO(OH)2、Ti(OH)4等のようにも表される公知の化合物である。
【0023】
上記工程(a)において、アルカリ金属塩を用いる場合、アルカリ金属塩は、酸化チタンを焼成するときに、融剤として作用し、一次粒子の成長を促進させると考えられる。
上記アルカリ金属塩として具体的には、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、チオ硫酸リチウム、クエン酸リチウム、シュウ酸リチウム、グルタミン酸リチウム、アスコルビン酸リチウム、リン酸リチウム、酸化リチウム等のリチウム塩;水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のナトリウム塩;水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム塩;水酸化セシウム、塩化セシウム、硫酸セシウム、硝酸セシウム、炭酸セシウム、リン酸セシウム等のセシウム塩が挙げられる。
これらの中でも、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム等の硫酸塩、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム等の塩化物、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸セシウム等のリン酸塩等が好ましい。
【0024】
上記工程(a)において、アルカリ金属塩を用いる場合、アルカリ金属塩の添加量は、アルカリ金属酸化物として、即ちアルカリ金属の酸化物に換算した質量として、TiO2として100質量部の水酸化チタンに対して総量で1.0~11.0質量部であることが好ましい。上記添加量は、より好ましくは、1.0~5.0質量部であり、更に好ましくは、1.0~3.0質量部である。
【0025】
上記工程(a)において、用いることができるリン化合物としては上述のリン化合物が挙げられる。
【0026】
上記工程(a)におけるリン化合物の添加量は、TiO2として100質量部の水酸化チタンに対してP2O5として0~10.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0~5.0質量部であり、更に好ましくは、0~3.0質量部である。
上記アルカリ金属塩がリン酸塩である場合、アルカリ金属のリン酸塩は、リン化合物でもある。
【0027】
工程(a)は、無溶媒で行ってもよく、溶媒存在下で行ってもよい。使用できる溶媒としては、特に限定されないが、純水、イオン交換水等の水、及び水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N-メチルピロリドン等のピロリドン系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒等が挙げられる。中でも、塩の溶解性が高いことや、水酸化チタンの水スラリーは市場に流通しており、安価であることから水が好ましい。
【0028】
工程(a)における混合方法は特に限定されず、例えば回転翼や回転槽、ミキサー、ボールミル等の公知の混合機を用いて、乾式又は湿式で混合すればよい。
【0029】
上記工程(a)においては、必要に応じて各種添加剤を更に添加してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、酸性硫酸アンモニウム((NH4)HSO4)等が挙げられる。これらの成分を添加することにより、均等に粒成長が進行し、得られる酸化チタンの粒度分布がより整うことが期待できる。
【0030】
上記工程(a)の後に、工程(a)で得られた混合物を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。乾燥工程を行う場合、乾燥温度は、酸化チタンが十分に乾燥される限り特に制限されないが、80~200℃であることが好ましい。より好ましくは、90~150℃であり、更に好ましくは、100~120℃である。
【0031】
上記工程(b)における焼成温度は、750~1200℃である。焼成温度の下限は、好ましくは800℃、より好ましくは850℃である。また上限は好ましくは1100℃、より好ましくは1000℃である。
【0032】
上記酸化チタン粒子の製造方法において、焼成した粉末を必要に応じて解砕を行ってもよい。解砕の方法は特に限定されず、自動乳鉢解砕、ハンマーミル解砕、流体エネルギーミル解砕、媒体にリパルプしてのビーズミル解砕等が挙げられる。
【0033】
3.全固体電池用電極
本発明の電極材料は、固体電解質との副反応を充分に抑制できるものであり、かつ、充放電特性に優れるため、全固体電池に好適に用いられる。
本発明はまた、本発明の電極材料を用いて構成されてなる全固体電池用電極でもある。
本発明の全固体電池用電極は、本発明の電極材料を用いて構成されるものであるが、更に固体電解質を含むことが好ましい。固体電解質を含むものであると全固体電池における電極活物質に効率的にリチウムイオンが拡散し、その授受が円滑に行わるようになる。
本発明の全固体電池用電極が固体電解質を含む場合、固体電解質の含有割合は、電極に含まれる酸化チタンに対して1~70質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~60質量%であり、更に好ましくは、1~50質量%である。
【0034】
本発明の全固体電池用電極は、更に固体電解質以外のその他の成分を含むものであってもよい。その他の成分としては、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック等の導電助剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の全固体電池用電極が導電助剤を含む場合、導電助剤の含有割合は電極に含まれる酸化チタンに対して1~60質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~40質量%であり、更に好ましくは、1~30質量%である。
【0036】
本発明の全固体電池用電極は、本発明の電極材料、固体電解質、導電助剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、バインダー等が挙げられる。
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、アクリルポリマー等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明の全固体電池用電極における、本発明の電極材料、固体電解質、導電助剤以外のその他の成分の割合は、全固体電池用電極100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、35質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以下である。全固体電池用電極の質量は、後述する電極材料組成物において、揮発成分を除いた成分の質量を意味する。
【0038】
4.全固体電池用電極の作製方法
本発明の全固体電池用電極を作製する方法は特に制限されないが、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物を調製する工程、得られた電極材料組成物からなる膜を固体電解質上に形成する工程、該電極材料組成物からなる膜を有する固体電解質を焼成して電極と固体電解質とを焼結して複合化させる工程を含む方法等を用いることができる。
【0039】
上記方法において、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物は、更に固体電解質を含むものであることが好ましい。固体電解質を含む場合、固体電解質の割合は、電極材料組成物に含まれる酸化チタンに対する固体電解質の割合が上記本発明の全固体電池用電極が固体電解質を含む場合と同様であることが好ましい。
【0040】
上記方法において、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物は、更に導電助剤を含むものであることが好ましい。導電助剤を含む場合、導電助剤の割合は、電極材料組成物に含まれる酸化チタンに対する導電助剤の割合が上記本発明の全固体電池用電極が導電助剤を含む場合と同様であることが好ましい。
【0041】
上記方法において、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物が含むバインダーは、バインダーとして機能するものである限り特に制限されず、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0042】
上記方法において、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物が含むバインダーの割合は、電極材料組成物100質量%に対して、0~60質量%であることが好ましい。より好ましくは、0~40質量%であり、更に好ましくは、0~30質量%である。
【0043】
上記方法において、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物は、本発明の電極材料、バインダー、固体電解質、導電助剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、溶媒等が挙げられる。
【0044】
上記溶媒としては、水、メタノール、エタノール、テ(タ)ーピネオール等のアルコール;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族溶媒等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
上記溶媒等のその他の成分の含有量は、電極材料組成物100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以下である。
【0046】
上記方法の、電極材料組成物からなる膜を固体電解質上に形成する工程において、電極材料組成物からなる膜を固体電解質上に形成する方法は特に制限されず、電極材料組成物を固体電解質上に塗布し、乾燥する方法等を用いることができる。
【0047】
上記方法の、電極材料組成物からなる膜を有する固体電解質を焼結して電極と固体電解質を複合化させる工程における焼結温度は、電極と固体電解質とが十分に複合化される限り特に制限されないが、500~800℃であることが好ましい。より好ましくは、550~700℃であり、更に好ましくは、600~650℃である。
また焼成する時間も電極と固体電解質との複合化が十分に行われる限り特に制限されないが、1~24時間であることが好ましい。より好ましくは、2~12時間であり、更に好ましくは、4~8時間である。
また導電助剤であるカーボン類の燃焼を防止する点から、焼成は、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は、真空下で行うことが好ましい。
【0048】
上記方法は、本発明の電極材料とバインダーとを含む電極材料組成物を調製する工程、得られた電極材料組成物からなる膜を固体電解質上に形成する工程、及び、該電極材料組成物からなる膜を有する固体電解質を焼成して電極と固体電解質とを焼結して複合化させる工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、電極材料組成物からなる膜を有する固体電解質に対して、その焼成前に加圧プレスや冷間等方圧加圧処理を行う工程等が挙げられる。
【0049】
本発明において用いる固体電解質は、酸化物系のものであれば特に制限されず、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3、Li7+xLa3Zr2-yAyO12(AはSc、Ti、V、Y、Nb、Hf、Ta、Al、Si、Ga及びGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素を表す。)、Li5La3Nb2O12、LixLa(1-x)/3NbO3、Li3PO4とLi4SiO4及びこれらの固溶体、Li2SiO3、Li6SiO5等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でもLi1+xAlxGe2-x(PO4)3(以下、LAGPともいう)が好ましい。
固体電解質としてLAGPを用いた場合、酸化チタンとの焼結の際に下記式(1)
TiO2 + Li1+xAlxGe2-x(PO4)3
→ Li1+xAlxTi2-x(PO4)3 + GeO2 (1)
の副反応が進行し、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(以下、LATPともいう)とGeO2からなる副反応相が形成され、このうち、LATPが電極の作動電位の高電位化の原因となる。これに対し、本発明の電極材料を用いることで、このような副反応相の形成を効果的に抑制し、酸化チタンを電極活物質とする充放電反応が十分に進行するようにして作動電位の高電位化の発生を抑制することができる。このように固体電解質としてLAGPを用いた場合に、本発明の電極材料を用いることの効果がより十分に発揮されると考えられる。
【0050】
5.全固体電池
本発明はまた、本発明の電極材料(全固体電池用電極)を備えることを特徴とする全固体電池でもある。上述したとおり、本発明の電極材料を用いることで、固体電解質と焼結する際の副反応相の形成を抑制して電極の作動電位の高電位化を効果的に抑制し、充放電特性に優れた全固体電池(全固体二次電池)とすることができる。
【0051】
本発明の全固体電池において、本発明の電極材料を用いて構成された電極は正極として用いられても負極として用いられてもよいが、負極として用いられることが好ましい。負極として用いることで、種々のリチウム化合物や、その他のリチウムを吸蔵、放出することが可能な種々の金属化合物を正極活物質として用いることができる。
本発明の全固体電池用電極を負極として用いる場合、正極活物質としては、LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4(0<x≦1であり、0≦y≦1である)で表されるオリビン構造を有するリチウムのリン酸塩;リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムマンガンニッケル複合化合物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウムと他の金属との複合酸化物等を用いることができる。
【0052】
上記正極活物質を用いて構成される正極は、正極活物質以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック等の導電助剤;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、アクリルポリマー等のバインダーが挙げられる。
【0053】
上記正極は、正極活物質を含む正極材料組成物からなる膜を集電体上に形成して作製されたものであってもよい。
【0054】
本発明において、電極の作製に用いる集電体としては、集電体として使用可能ないずれの材料であってもよいが、例えば、マグネシウム、チタン、亜鉛、ニッケル、マンガン、鉄、銅、アルミニウム、金等を用いることができる。
【実施例0055】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
【0056】
<ルチル化率>
ルチル化率は、XRDスペクトルにおけるルチル型酸化チタンの回折ピーク(面指数110)のピーク強度IRと、アナタース型酸化チタンの回折ピーク(面指数101)のピーク強度IAにおいて、IR×1.32/(IA+IR×1.32)×100により表される値である。なお、XRD測定にはリガク製RINT-TTRIIIを用い、平行ビーム法で行った。またX線出力は50kV、300mA、stepモード(step幅:0.01°)とした。解析においては、リガク社製 統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL2を使用し、バックグラウンド処理を行い、ピーク強度IA及びIRを算出した。
【0057】
<一次粒子径>
(比較TiO2粒子1以外の場合)
一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(JSM-7000F、日本電子社製)写真の1万倍視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔)で定義される粒子径(μm)であって、SEM写真内の一次粒子150個の定方向径を計測し、その累積分布の平均値を求めた。なお凝集粒子に関しては、その粒子を一次粒子に分割して定方向径を計測した。
(比較TiO2粒子1の場合)
一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(JSM-7000F、日本電子社製)写真の1000倍視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔)で定義される粒子径(μm)であって、SEM写真内の一次粒子150個の定方向径を計測し、その累積分布の平均値を求めた。なお凝集粒子に関しては、その粒子を一次粒子に分割して定方向径を計測した。
【0058】
<存在比の算出方法>
上記の方法により電子顕微鏡にて定方向径を計測した全粒子の一次粒子径の総和を求め、総和に対する一次粒子径が300nm未満の粒子の一次粒子径の累積値の比率を存在比A、300nm以上かつ3000nm未満の粒子の一次粒子径の累積値の比率を存在比B、3000nm以上の粒子の一次粒子径の累積値の比率を存在比Cとした。
【0059】
<BET比表面積、BET換算径>
全自動比表面積測定装置(Macsorb,マイクロトラック社製)を用いて、200℃で30分脱気し、予備加熱を200℃で5分間行った後に、吸脱着測定により、BET比表面積を測定した。
【0060】
<副反応率評価>
(1)酸化チタン粒子と、固体電解質(glass-LAGP)とをそれぞれ8gずつ測り取り、スターラー乳鉢を用いて3時間混合した。
(2)(1)で混合した粉体を650℃、700℃又は750℃で焼成した(昇温速度:300℃/h)。
(3)焼成した粉末に対してXRD測定を行った。
XRD測定で得られたスペクトルについて、BG処理を行い、BG処理後のXRDチャートから、酸化チタンとLAGPとの副反応率を以下の式(2)に基づき計算した。
副反応率=ILATP/ILAGP (2)
ILATP:29.6±0.5°のLATPの最強ピーク強度
ILAGP:30.5±0.5°のLAGPの最強ピーク強度
【0061】
<調製例1:(glass-LAGPの調製)>
Li1.3Al0.3Ge1.7(PO4)3の結晶粒子25gを1200℃で1時間溶融させた後、急冷させた。200rpm×2時間の条件で遊星ボールミルにて粉砕した後、150μmの篩に通し、glass-LAGPを回収した。
【0062】
<実施例1>
水酸化チタンスラリー(堺化学工業社製、ST-C)をTiO2として100g(TiO2として100質量部)量り取り、外径150mm、容量400mlの磁製蒸発皿に入れ、80g/lの硫酸カリウム水溶液を125ml(K2SO4として10.0質量部)添加し、30分間撹拌し、100℃で蒸発乾固させた。得られた粉体を目開き300μmの篩通しを行い900℃で4時間静置焼成を行った。焼成した粉体をアルミナ乳鉢で15分間解砕した。解砕粉90gを0.1M塩酸880mLにリパルプし30分間攪拌し、目開き40μmの篩に通し、篩下のリパルプ液をブフナー漏斗に移してろ過し、純水2リットルで通水洗浄し、100℃で蒸発乾固させた。得られた粉末1を150μmの篩に通し、TiO2粒子1を得た。
【0063】
<実施例2>
水酸化チタンスラリー(堺化学工業社製、ST-C)をTiO2として100g(TiO2として100質量部)量り取り、外径150mm、容量400mlの磁製蒸発皿に入れ、95%リン酸三リチウム5.44g(Li2Oとして2.0質量部、P2O5として3.17質量部)を純水10mLに懸濁させたものを添加し、30分間撹拌し、100℃で蒸発乾固させた。得られた粉体を目開き300μmの篩通しを行い870℃で4時間静置焼成を行った。焼成した粉体をアルミナ乳鉢で15分間解砕した。解砕粉90gを0.1M塩酸880mLにリパルプし30分間攪拌し、目開き40μmの篩に通し、篩下のリパルプ液をブフナー漏斗に移してろ過し、純水2リットルで通水洗浄し、100℃で蒸発乾固させた。得られた粉末を150μmの篩に通し、TiO2粒子2を得た。
【0064】
<比較例1>
純水1200mLに対し、硫酸チタニル濃縮液600mL、NaCl360gを添加・混合した。混合溶液を90℃で加熱撹拌し、3時間還流をおこなった。得られたスラリーをろ過・水洗し固形分を得た。固形分を再度純水にリパルプし、スラリーのpHが8-9程度になるまでアンモニア水溶液を添加した。再度純水にて洗浄を行い、固形分を乾燥することでメタチタン酸凝集体を得た。
得られたメタチタン酸凝集体を純水に対して分散させ、メタチタン酸凝集体中のTiO2に対し、P2O5として3.0wt%の85%リン酸を添加・混合し、100℃で蒸発乾固させた。得られた粉体を、900℃で4時間焼成後、0.1MのHClで洗浄し、乾燥させ、比較TiO2粒子1を得た。
【0065】
<比較例2>
TiO2(堺化学工業社製品:SA-120)を比較TiO2粒子2とした。
【0066】
<実施例3>
純水200mLに、実施例2で得たTiO2粒子2を24.75g、及び、比較例2で得た比較TiO2粒子2を0.2475g添加し、スターラーで30分間撹拌し、100℃で乾固させた後、150μmの篩に通し、TiO2粒子3を得た。
【0067】
<比較例3>
純水200mLに、実施例2で得たTiO2粒子2を23.75g、及び、比較例2で得た比較TiO2粒子2を1.1875g添加し、スターラーで30分間撹拌し、100℃で乾固させた後、150μmの篩に通し、比較TiO2粒子3を得た。
【0068】
<比較例4>
純水200mLに、実施例2で得たTiO2粒子2を22.5g、及び、比較例2で得た比較TiO2粒子2を2.250g添加し、スターラーで30分間撹拌し、100℃で乾固させた後、150μmの篩に通し、比較TiO2粒子4を得た。
【0069】
実施例1~3又は比較例1~4の酸化チタン粒子について、上記物性評価を行い、表1に示した。粒度分布において、一次粒子径(長径)が0nmより大きく、300nm未満の粒子の割合を存在比Aとし、一次粒子径(長径)が300nm以上、3000nm未満の粒子の割合を存在比Bとし、一次粒子径(長径)が3000nm以上の粒子の割合を存在比Cとした。
【0070】
【0071】
実施例1~3のTiO2粒子1~3及び比較例2~4の比較TiO2粒子2~4について、焼成温度650℃、700℃、750℃におけるLAGPとの副反応率を測定した。
結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
<電極の作製>
メノウ乳鉢に、実施例1のTiO2粒子1、アセチレンブラック、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をそれぞれ重量比80:10:10の割合で加え、アセトンを滴下しながら1時間よく混合し、ペーストを作製した。作製したペーストをニッケルメッシュに貼り付け、真空下、150℃で乾燥させ、電極1を作製した。
実施例2のTiO2粒子2、比較例1、2の比較TiO2粒子1、2を用いて、上記実施例1と同様に電極2、比較電極1、比較電極2を作製した。
【0074】
<電極性能評価>
負極ボディ上に、銅箔、実施例1のTiO
2粒子1を用いて作製した電極1、セパレータ、金属Li箔、銅箔の順に重ね、最後に正極ボディを被せてねじ締めを行った。電解液には1mol/L LiPF
6 EC:DEC(1:1v/v%)を使用し、電極性能評価用の電池を構成した。以下の方法により、電極性能評価を行った。
上記実施例2のTiO
2粒子、比較例1、2の比較TiO
2粒子1、2を用いた電極2、比較電極1、2についても同様にして電極性能評価を行った。結果を表3及び
図1に示す。
充放電試験は、開回路電圧で12時間放置した後、0.05Cの電流密度で3サイクル行った。
なお、ここでは、下記式(3)、(4)の通り、酸化チタンへのリチウムの挿入反応を充電、リチウムの脱離反応を放電と定義した。
《充電》
TiO
2(A)+Li
++e
-→LiTiO
2 (3)
《放電》
LiTiO
2→TiO
2(A)+Li
++e
- (4)
各条件について、充電はCC充電で1-2cycleは1.6V終止、3cycle目は1.0V終止、放電はCC放電で3.0V終止とした。3サイクル目の充電曲線を用いて、表3に示す電極性能の解析を行った。
【0075】
【0076】
表2の結果より、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比が12%未満である実施例1~3は、焼成温度が700℃、750℃であっても固体電解質との副反応を充分に抑制することができることが明らかとなった。
また、表3の結果より、平均一次粒子径が1500nm以下である実施例1、2は、充放電特性にも優れることが明らかとなった。
【0077】
<TiO2とLAGPの混合物を650℃で焼成した際の副反応量の評価(充放電試験)>
調製例1で調製したglass-LAGPと実施例1のTiO2粒子1とを重量比1:1の割合で加え3時間混合した粉末を650℃で4時間焼成(昇温速度300℃/h)した。
メノウ乳鉢に、上記焼成粉末、アセチレンブラック、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をそれぞれ重量比80:10:10の割合で加え、アセトンを滴下しながら1時間よく混合し、ペーストを作製した。作製したペーストをニッケルメッシュに貼り付け、真空下、で150℃で乾燥させ、電極1A(650℃)、を作製した。
また、実施例2のTiO2粒子2、比較例2の比較TiO2粒子2を用いて、上記電極1Aと同様に電極2A、比較電極2Aを作製した。
【0078】
電極1、2、比較電極2の代わりに電極1A、電極2A、比較電極2Aを用いた以外は実施例1と同様にして、電極性能評価を行った。
電極1A、電極2A、比較電極2Aをそれぞれ備える電池について、充電開始からの電圧(V)と充電容量Q(mAh/g)とをプロットし(プロットA)、更に、dV/dQの絶対値(|dV/dQ|)と充電容量Qとをプロットした(プロットB)。
プロットBにおいて、電池の充電開始から充電終了までの領域は以下の3つに分けることができる。
(1)領域1:充電開始から1.6V付近で|dV/dQ|=0.0025となる点まで
領域1はTiO2を活物質とする本来の電極反応、TiO2とLAGPとの副反応によって生成するLATPによる充電反応も進行する領域である。
(2)領域2:領域1以降で|dV/dQ|≦0.0025の範囲
領域2はLATPによる充電反応が進行しない一方、アナタース型TiO2に由来する可逆的な充電反応が進行する領域である。
(3)領域3:領域2以降で充電終了まで
各成分の充電反応が十分に進行した領域である。
これら各領域での充電容量を測定し、(領域1での充電容量)/(領域1+領域2での充電容量)の値(C値と呼ぶ)から、酸化チタン電極における副反応の程度を評価する。
結果を表4に示す。
【0079】
【0080】
表4の結果より、実施例1、2は、比較例2よりもC値が低く、副反応が十分に抑制できていることが確認できる。
比較例2は、表3の結果より、充放電容量に優れるものの、表2及び4の結果より、LAGPとの副反応が顕著に進行することが確認され、電極の高電位化が起こり易いといえる。
【0081】
以上より、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子において、平均一次粒子径を所定の範囲とし、かつ、一次粒子径が300nm未満の粒子の存在比を所定の割合以下とすることにより、600℃よりも高温で焼結を行った場合でも副反応を抑制することができ、かつ、十分な充放電容量を確保できることが明らかとなった。