(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167191
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】蓋体、およびそれを使用した調理用食品収納容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D81/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078174
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村木 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA01
3E013BA08
3E013BA09
3E013BB06
3E013BB09
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC06
3E013BC12
3E013BC13
3E013BC14
3E013BE01
3E013BE02
3E013BF02
3E013BF25
3E013BF36
3E013BF69
3E013BH02
3E013BH12
3E013BH18
3E013BH32
(57)【要約】
【課題】紙製の容器の開口部に貼り合わせ可能な蓋材を、金属層の無い積層シートで作成するのに、カールが発生しないで、生産性の高いシートを得る。
【解決手段】カップ容器の開口部に貼着され、加熱時に孔が現出して蒸気抜き可能な蓋体(1)であって、少なくとも、外側からポリエチレンテレフタレートからなる第一層(41)、第一層に接着剤を介し、紙からなる第二層(43)、ポリエチレンからなる第三層(44)、ポリエチレンテレフタレートからなる第四層(45)、第四層に接着剤を介し、シーラントからなる第五層(47)、の多層シートからなり、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、フィルムの垂直方向の熱収縮率が0.05パーセント以上、0.20パーセント以下、とし、かつ、全体の厚みに対する第二層の比率が50パーセント以上、70パーセント以下、としたことを特徴とする蓋体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ容器の開口部に貼着され、加熱時に孔が現出して蒸気抜き可能な易剥離領域を有する蓋体であって、
少なくとも、外側からポリエチレンテレフタレートからなる第一層、
第一層に接着剤を介し、紙からなる第二層、
ポリエチレンからなる第三層、
ポリエチレンテレフタレートからなる第四層、
第四層に接着剤を介し、シーラントからなる第五層、
の多層シートからなり、
第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、フィルムの垂直方向の熱収縮率が0.05パーセント以上、0.20パーセント以下、とし、
かつ、全体の厚みに対する第二層の比率が50パーセント以上、70パーセント以下、
としたことを特徴とする蓋体。
【請求項2】
カップ容器蓋の表層を部分的に剥離することで湯切り孔が現出する蓋体であって、
湯切り孔近傍の易剥離領域近傍において、第三層と第四層との間に易剥離層を設け、
該易剥離領域内に易剥離層の無い易剥離領域内接着部を設け、
該易剥離領域内接着部の周囲の易剥離領域において、裏面側から易剥離層までの深さに設けた湯切り孔型抜き部を有することを特徴とする請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
易剥離領域を、その易剥離領域外周に沿って、表側から易剥離層までの深さに切れ目を設けて形成したことを特徴とする請求項2に記載の蓋体。
【請求項4】
湯切り孔近傍の容器融着部外側周縁において、開孔時に易剥離領域の表層を蓋体から外す時につまむプルタブを、その根元に裏面側から易剥離層までの深さに切れ目を設けて形成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の蓋体。
【請求項5】
加熱時に孔が現出して蒸気抜き可能な易剥離領域を有する蓋体を開口部に貼着したカップ容器において、
請求項1または2に記載の蓋体を有し、
該カップ容器内部に、水、あるいは調理スープを収納し、誘電加熱時に破袋可能な脆弱部を有する包装袋を収納したことを特徴とする、調理用食品収納容器。
【請求項6】
加熱時に孔が現出して蒸気抜き可能な易剥離領域を有する蓋体を開口部に貼着したカップ容器において、
請求項1または2に記載の蓋体を有し、
該カップ容器内部に、多加水食品を収納し、冷凍保存することを特徴とする、調理用食品収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を密封し、電子レンジで加熱調理し、湯切りする容器に用いられる蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジで加熱調理する食品用の紙容器は、高速で安価に製造できると共に、紙製であるが上に、断熱性もあって持ちやすく、かつ、廃棄しやすい容器である。
特に即席食品を内部に入れた容器に使用し、内部で湯を沸かす、あるいは湯を注入し、それらの湯の高温によって加熱調理し、その後、内部の湯を湯切りして取り除く調理方法が採られる。このような用途に使用される容器の蓋は、蓋の隅に湯切り用の小穴を多数設け、調理中には閉鎖しているが、調理を終えると、この小穴から加熱し終わった湯を、内容物の麺などから分離する機能を持っている。
【0003】
例えば、特許文献1では、カップ容器の開口部に貼着され、表層を部分的に剥離することで複数の湯切り孔が現出する蓋体であって、
ポリエチレンテレフタレート層を含み、一方面が開口部にシールされる第1シートと、
前記第1シートの他方面に積層される第1の樹脂層と、
前記第1の樹脂層とは異なる材料からなり、前記第1の樹脂層上に積層される第2の樹脂層と、
前記第2の樹脂層上に積層される第2シートとを備え、
前記第1シートと前記第2シートとは、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層との界面でのみ剥離可能であり、
前記第1シートの前記第1の樹脂層側最表層は、アルミニウム層であり、
前記第1の樹脂層はエチレン-酸コポリマーで形成され、
前記第2シートの前記第2の樹脂層側最表層は、紙層であり、
前記第2の樹脂層は、ポリプロピレンにより形成される、蓋体を提案している。
【0004】
上記特許文献1の蓋体は、予め加熱した湯を注ぐことによって調理する場合には問題がないが、水を入れた後、電子レンジなどの誘電加熱で加熱する方法を採ることはできない。
上記蓋体は、金属のアルミニウム層を含んでいる。この為、電子レンジで加熱調理しようとすると、内容物ではなく、蓋体の方にエネルギーが集中し、蓋が先に高温に加熱され、表裏に貼られたプラスチック層が発火するなどの問題が起きてしまう。
このように、金属があると、食品よりも金属にエネルギーが集中してしま、金属が発火するなどの問題も発生し易く、誘電加熱を行うことができない。
【0005】
特許文献2では、容器本体の上端開口部を密封する蓋材であって、アルミニウム箔などの金属層を備えない積層体であり、且つ、外周縁に開封用タブを有する所定の形状に打ち抜かれた枚葉形状の即席食品用容器の蓋材において、
前記積層体が少なくとも、外側から紙層と、セロハンフィルム層と、シーラント層と、からなることを特徴とする蓋材を提案している。
【0006】
上記特許文献2の蓋材は、金属層がないので、電子レンジ加熱が可能であるが、容器に蓋として貼り合わす時、セロハンフィルム層を持つことから、シートの横方向にカールが発生し、そのカールが矯正し難く、かつ、端部から切れやすいなど、生産性が著しく低い問題があった。
【0007】
特許文献3では、複合シートと表面シートとが所定の形状領域に易剥離剤をパターン状に塗布することにより形成された易剥離層による易剥離領域とそれ以外の接着領域とにより区画されて互いに積層接着され、前記易剥離領域内における複合シートの1個所乃至複数個所には湯切孔形成用ハーフカットが形成され、前記表面シートには易剥離領域と接着領域の境界領域に切離部が形成された即席食品容器の湯切孔付き蓋において、前記複合シートに延伸フィルムよりなるプラスチックフィルム層を積層し、易剥離剤をベタ状に塗布して易剥離層を形成した境界領域の前記表面シートに切り離し用ミシン目を形成して成る前記切離部を設けたことを特徴とする即席食品容器の湯切孔付き蓋を提案している。
【0008】
上記特許文献3の蓋は、延伸フィルムからなるプラスチックフィルム層が、熱で収縮しやすく、安定した貼り合せができないので、シート生産時にトラブルが発生しやすかった。また、充填工程においても、生産機に通すのに、カールしたりして、機械に装てんし難いなど、生産性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5679510号公報
【特許文献2】特開2011-201550号公報
【特許文献3】特許第4221802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、紙製の容器の開口部に貼り合わせ可能な蓋材を、金属層の無い積層シートで作成するのに、カールが発生しないで、生産性の高いシートを得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の蓋体は、
カップ容器の開口部に貼着され、加熱時に孔が現出して蒸気抜き可能な蓋体であって、
少なくとも、外側からポリエチレンテレフタレートからなる第一層、
第一層に接着剤を介し、紙からなる第二層、
ポリエチレンからなる第三層、
ポリエチレンテレフタレートからなる第四層、
第四層に接着剤を介し、シーラントからなる第五層、
の多層シートからなり、
第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、フィルムの垂直方向の熱収縮率が0.05パーセント以上、0.20パーセント以下、とし、
かつ、全体の厚みに対する第二層の比率が50パーセント以上、70パーセント以下、
としたことを特徴とする蓋体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓋体は、外側からポリエチレンテレフタレートからなる第一層フィルムの垂直方向の熱収縮率を0.05パーセント以上、0.20パーセント以下とし、第二層の厚みの比率を50パーセント以上、70パーセント以下と規定することによって、シートのカールを防止できた。そして、本蓋材を使用することによって、シートの生産性が高く、かつ安定した充填が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の蓋体を使用した蓋の実施形態例で、その表面と裏面から見た図である。
【
図2】本発明の蓋体を使用した蓋を融着した容器の実施形態例で、その充填時の状態を示す縦断面図とその部分拡大図、および、湯抜き孔部分を開孔した状態を示す縦断面図とその部分拡大図である。
【
図3】本発明の蓋体の実施形態例において、その蓋体の湯抜き孔近傍の構成を示す部分拡大断面図と、その蓋体の湯抜き孔を開口した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の蓋体を融着した容器の実施形態の1例で、加熱調理前と、加熱中に容器内部の水分が沸騰し、容器内部の蒸気が湯抜き蓋部を開孔して蒸気抜きしている工程を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の蓋体を融着した容器の実施形態例で、加熱調理後、湯抜き孔を覆う剥離部を外す工程を示す平面図と、剥離部容器内部の湯を、湯抜き孔から抜く工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の蓋体について、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の蓋体の実施形態例で、その表面と裏面から見た図である。
本発明の蓋体は、容器中の食品を食す直前に、誘導加熱によって加熱調理し、調理した食品は残るように湯を容器から排出し、その後、蓋を剥離して全開封し、食す。そのような調理食品に使用される蓋体である。
図1-1は蓋体の表面側から見た図で、
図1-2は蓋体1の裏面側から見た図である。
蓋体1は、円形状(長方形など多角形であっても良い)の容器開口縁に合わせて、ほぼ円形状の外形部を有している。
蓋体1は、湯抜き孔を覆う易剥離領域2と、調理時に剥離しない閉鎖領域3と、から構成されている。
【0015】
易剥離領域2は、蓋体1を構成している積層シートの層間に易剥離層48を有している。
該易剥離領域2の内部には、易剥離層48の無い易剥離領域内接着部23を設け、該易剥離領域内接着部23の周囲の易剥離層48のある領域に、裏面側から易剥離層48までの深さとなる湯切り孔22を、湯切り孔ハーフカット線221によって形成している。
【0016】
また、易剥離領域2の表層には、その易剥離領域2外周に沿って、表側から易剥離層までの深さに易剥離領域外形ハーフカット線21を設けて形成している。
【0017】
さらに、上記易剥離領域2の外側には、湯切り孔22を開孔する時に剥離する表層11に付設したプルタブ24が設けられている。プルタブ24は蓋体1を融着する容器の融着部外形よりも外側に突き出た形状で、かつ、プルタブ24の根元に裏面側から易剥離層48までの深さにもプルタブハーフカット線241を設けて形成されている。
図1-2の裏面側から見ると、湯切り孔ハーフカット線221と、プルタブハーフカット線241を確認することができる。
【0018】
この他、蓋体1外形には、蓋体1全体を容器から剥離する時につかむつかみ部13が、易剥離領域2から充分に離れ、容器外形よりも外側に突き出た位置に設けている。
つかみ部13周縁にはハーフカットは設けていない。
【0019】
図2は、本発明の蓋体1を融着した容器5の実施形態例である。
図2-1は、その充填時の状態を示す縦断面図で、湯切り孔22を形成している易剥離領域2の近傍を部分拡大図で示した。
部分拡大図で示すように、湯切り孔ハーフカット線221が易剥離層48の無い易剥離領域内接着部23を囲み、容器の内側から易剥離層48まで切り込んでいる。
さらに、易剥離領域外形ハーフカット線21が、表面側から易剥離層48まで切り込んでおり、かつ、プルタブハーフカット線241も内側から易剥離層48まで切り込んでいる
ことから、易剥離領域2が、容易に剥離できるようになっているのが分かる。
【0020】
図2-2は、湯抜き孔22部分を開孔した状態を示す縦断面図とその部分拡大図である。
易剥離領域2が剥離して蓋体1から離されている。
この時、易剥離領域内接着部23では、内層2が剥離しないで外層に接着した状態で維持され、湯切り孔22部分もプルタブ24と一緒に剥離されるので、湯切り孔22が開孔できている。
【0021】
図3-1は、蓋体の湯抜き孔22近傍の構成を示す部分拡大断面図である。
蓋体を構成する蓋材10は、外側からポリエチレンテレフタレートからなる第一層41と、
第一層41に第一接着剤層42を介し、紙からなる第二層43と、
ポリエチレンからなる第三層44と、
ポリエチレンテレフタレートからなる第四層45と、
第四層45に第二接着剤46を介し、シーラントからなる第五層47と、
の多層シートからなり、易剥離領域2では、第三層44と第四層45との間に易剥離層48がパターン状に塗工されている。
【0022】
図3-2は、蓋体の湯抜き孔を開口した状態を示す部分拡大断面図である。
易剥離領域2では、第三層44と第四層45との間に易剥離層48がパターン状に塗工され、プルタブを引き上げると、易剥離層48より外側の第一層41から第三層44までの表層11は、第四層45から第五層47までの下層12から剥離する。
この時、易剥離層48の無い易剥離領域内接着部23近傍では、易剥離領域内接着部23を囲む湯切り孔ハーフカット線221によって、湯切り孔22が形成され、内部の食品の流出を阻止しながら、余分な湯を排出できる容器となる。
【0023】
図4は、本発明の蓋体を融着した容器の実施形態の1例で、
図4-1は加熱調理前の状態を示す縦断面図である。
この実施形態例では、容器5の内部に調理用食品6と、水・スープ等61と、が入っている。
ここで、容器内部の水・スープ等61は、電子レンジで加熱されると脆弱部が破袋する破袋可能包装袋62に包装されている。
このような、水・スープ等61の代わりに、調理用食品が多くの水を含むような多加水食品で、それらを冷凍した状態の冷凍食品であっても良い。
【0024】
図4-2は、調理用食品6と水・スープ等61を入れて蓋体1を融着した容器5を、電子レンジで誘電加熱し、容器内部の水分が沸騰し、容器内部の蒸気が湯抜き蓋部の一端を開孔して蒸気抜きしている工程を示す縦断面図である。
容器5内部の水分が沸騰し、水蒸気63で容器5内部の気圧が上昇すると、蓋体1は盛り上がり、一番剥離し易い湯切り孔22近傍の剥離部20が持ち上がって剥離し、容器内部の水蒸気63を容器5の外に排気し、容器5内部の気圧を一定に保った状態で加熱調理される。
【0025】
図5は、本発明の蓋体1を融着した容器5の実施形態の1例で、加熱調理後、容器内部の湯を、湯抜き孔から抜く工程を示す縦断面図である。
図5-1は、剥離部20を剥離し、湯切り孔22を表出させる工程である。
単にプルタブ24を引き上げて、剥離しかかった剥離部20を剥がすと、湯切り孔22を塞いでいた下層部分が、剥離部20に接着した状態で取り出すことができ、湯切り孔22が表出する。
【0026】
図5-2は、湯切り孔22が開孔した容器5を傾け、容器内部の湯を排出する工程である。
湯切り孔22の大きさは、加熱用食品の大きさや形状によって、適切な形状と大きさに開口させておくので、余分な水や油、ゆで汁などが排出される。
この後、つかみ部13をつかんで容器5から蓋体1を剥がし、調味料等を加えて混ぜるなどするだけで調理ができるので、直ぐに食すことができる。
【0027】
<試作例>
以下に蓋体を試作し、生産上の可否を確認検討した。
【0028】
<試作例に使用する部材>
蓋体を形成する蓋材の構成は、
図3の内、剥離層の無い構成である。
外側から第一層として、各種ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm、
第二層を接着剤、
第三層は坪量が65、79.1、127.9、180、230g/m
2の5種類の紙、
第四層は低密度ポリエチレン20μmとし、サンドポリエチレンとして、エクストラミネーション時のTダイで押し出し、貼り合せた。
第五層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm、
第六層は接着剤、第七層はシーラントフィルム30μmとした。
この内、第一層と第三層は異なる素材を使用し、第一層と第三層以外は、同じ構成とした。
【0029】
ここで、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmについては、予め熱収縮率を流れ方向(MD方向)と垂直方向(TD方向)とに分けて、測定した。
【0030】
また、第三層の紙の坪量を測定し、蓋材全体の重さに対し、その蓋材に使用した紙の重量比率を紙化率として、パーセントで確認した。
【0031】
<試作例1>
最外層である第一層として、熱収縮率が流れ方向(MD方向)0.38%、垂直方向(TD方向)0.1%のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを使用し、
第三層は坪量65g/m2の紙を使用した。
【0032】
<試作例2>
最外層である第一層は試作例1と同じフィルムを使用し、第三層は坪量79.1g/m2の紙を使用した。
【0033】
<試作例3>
最外層である第一層は試作例1と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0034】
<試作例4>
最外層である第一層は試作例1と同じフィルムを使用し、第三層は坪量180g/m2の紙を使用した。
【0035】
<試作例5>
最外層である第一層は試作例1と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0036】
<試作例6>
最外層である第一層として、熱収縮率が流れ方向(MD方向)0.61%、垂直方向(TD方向)0.1%のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを使用し、
第三層は坪量65g/m2の紙を使用した。
【0037】
<試作例7>
最外層である第一層は試作例6と同じフィルムを使用し、第三層は坪量79.1g/m2の紙を使用した。
【0038】
<試作例8>
最外層である第一層は試作例6と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0039】
<試作例9>
最外層である第一層は試作例6と同じフィルムを使用し、第三層は坪量180g/m2の紙を使用した。
【0040】
<試作例10>
最外層である第一層は試作例6と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0041】
<試作例11>
最外層である第一層として、熱収縮率が流れ方向(MD方向)0.48%、垂直方向(TD方向)0.2%のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを使用し、
第三層は坪量65g/m2の紙を使用した。
【0042】
<試作例12>
最外層である第一層は試作例11と同じフィルムを使用し、第三層は坪量79.1g/m2の紙を使用した。
【0043】
<試作例13>
最外層である第一層は試作例11と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0044】
<試作例14>
最外層である第一層は試作例11と同じフィルムを使用し、第三層は坪量180g/m2の紙を使用した。
【0045】
<試作例15>
最外層である第一層は試作例11と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0046】
<試作例16>
最外層である第一層として、熱収縮率が流れ方向(MD方向)0.47%、垂直方向(TD方向)0.24%のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを使用し、
第三層は坪量65g/m2の紙を使用した。
【0047】
<試作例17>
最外層である第一層は試作例16と同じフィルムを使用し、第三層は坪量79.1g/m2の紙を使用した。
【0048】
<試作例18>
最外層である第一層は試作例16と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0049】
<試作例19>
最外層である第一層は試作例16と同じフィルムを使用し、第三層は坪量180g/m2の紙を使用した。
【0050】
<試作例20>
最外層である第一層は試作例16と同じフィルムを使用し、第三層は坪量127.9g/m2の紙を使用した。
【0051】
<評価方法>
<カール測定方法>
各試作例の蓋材を10枚ずつ、
図1に示す外径φ163にプレス金型で外形を抜いて、蓋体とした。
カール測定は、定盤上に上記蓋体を置き、反った最大高さ部分を、高さゲージで測定した。
ここで、裏面側にカールした場合をプラスとし、表面側にカールする場合をマイナスとし、プラス側にカールした場合には、表面側を下に向けて測定した。
【0052】
<シール外観評価方法>
口径φ158のカップ容器に、蓋体を乗せ、アップダウン式のヒートシール機で5枚ずつシールした。シール条件は、180℃、2Kg/cm2で、融着時間は、0.5秒間ずつ延ばして、融着し始める時間よりも1秒長い時間とした。
シール後、融着した蓋体の外観を見て、変形等が無く、正常にシーラントが均一に融着しているか、シール近傍で発泡などが発生していないか、などを目視で確認した。
【0053】
<評価結果>
<カール測定結果>
蓋体が、表側にカール(マイナス)すると、蓋体端部が丸まって、シールバーにシーラントが付着したり、蓋体全体が均一にカップ容器に押し付けられなくなったりするので、不可とした。
同じように、裏側にカールしても、1mm未満の場合、不良になりやすいので、△の評価とした。
その結果、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮率が、垂直方向(TD方向)で0.2%を超えるものは、カールがマイナスになって、不可という評価になった。
さらに、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮率が、垂直方向(TD方向)において0.2%で、紙化率が45%の蓋体においても、カールがマイナスになって、不可という評価になった。
もし、デカーラロールで、予めカールを矯正する方法を採ったとしても、紙化率が低い蓋体では、カール矯正効果は小さく、効果は少ないものと考えられる。
また、紙化率が大きな比率であっても、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮率が、垂直方向(TD方向)において0.2%では、カールが+1mmで、安定した生産ができるかギリギリのカールになってしまっている。
【0054】
<シール外観測定結果>
容器に蓋体をシールして、外観で異常が見られたのは、発泡であった。
発泡した蓋体は、紙化率が74%の蓋体で発生した。
これは、紙化率が高いと、紙が厚いので吸湿する水分量が多く、断熱性も高く、シーラント面にまで熱が伝導するのに時間がかかり、結果的に、高温の状態が長くなってしまうので、吸湿した水分が沸騰することで発泡し、バブリング状態になったと考えられる。
【0055】
以上の結果を表に示した。表から、下記条件で、蓋体を製造することが必要である。
すなわち、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮率は、垂直方向(TD方向)において0.2%未満とする。
ただ、ここで、第一層41のポリエチレンテレフタレートフィルムが垂直方向の熱収縮率が0.05パーセント未満の場合には、反対側へのカール抑止効果が十分得られない。
そこで、第一層41のポリエチレンテレフタレートフィルムには、垂直方向の熱収縮率が0.05パーセント以上、0.20パーセント以下のフィルムを用いるとする。
紙化率については、評価結果から、50パーセント以上70パーセント以下の範囲とする。
【0056】
【0057】
本発明の蓋体は、以上のように、第一層のポリエチレンテレフタレートフィルムの垂直方向の熱収縮率を0.20パーセント以下、とし、
かつ、全体の厚みに対する第二層の比率が50パーセント以上、70パーセント以下、
とすることによって、安定して生産したり、充填機適性の高い蓋体とすることができる。この蓋体は、金属層が無いので、電子レンジで加熱しても、発火したり、容器が焦げるなどの問題が発生しないので、湯切り孔が必要な冷凍食品などであっても、直ぐに加熱調理ができ、別に沸かした湯を注ぐなどの手間なく調理できるなど、本発明のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0058】
1・・・・・・・・蓋体
11・・・・・・・表層
12・・・・・・・下層
13・・・・・・・つかみ部
2・・・・・・・・易剥離領域
20・・・・・・・剥離部
21・・・・・・・易剥離領域ハーフカット線
22・・・・・・・湯切り孔
221・・・・・・湯切り孔ハーフカット線
23・・・・・・・易剥離領域内接着部
24・・・・・・・プルタブ
241・・・・・・プルタブハーフカット線
3・・・・・・・・閉鎖領域
41・・・・・・・第一層(ポリエチレンテレフタレート)
42・・・・・・・第一接着剤
43・・・・・・・第二層(紙)
44・・・・・・・第三層(ポリエチレン)
45・・・・・・・第四層(ポリエチレンテレフタレート)
46・・・・・・・第二接着剤層
47・・・・・・・第五層(シーラント)
48・・・・・・・易剥離層
5・・・・・・・・容器(カップ容器)
51・・・・・・・開口部
6・・・・・・・・調理用食品
61・・・・・・・水・スープ等
62・・・・・・・破断可能包装袋
63・・・・・・・水蒸気等