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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167192
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20231116BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20231116BHJP
   H01C 1/032 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C1/14 Z
H01C1/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078175
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 圭太
【テーマコード(参考)】
5E028
5E033
【Fターム(参考)】
5E028BA04
5E028BB01
5E028CA02
5E028EA01
5E028JC05
5E033AA27
5E033BC01
5E033BE02
5E033BH02
(57)【要約】
【課題】耐食性に優れたチップ抵抗器を提供する。
【解決手段】本発明のチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の表面両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の裏面両端部に形成された一対の裏電極4と、一対の表電極3間を橋絡する抵抗体5と、抵抗体5を覆う樹脂材料からなる第2絶縁層(保護膜)7と、第2絶縁層7上に積層された樹脂材料からなる第3絶縁層(補助膜)8と、表電極3上に積層された導電性粒子を含有する樹脂材料からなる一対の補助電極層9と、絶縁基板2の両端面に延在して対応する補助電極層9と裏電極4間を導通する一対の端面電極10と、補助電極層9と端面電極10の表面を覆うように設けられた一対の外部メッキ層11とを備え、補助電極層9は第3絶縁層8の端部表面を覆う位置まで形成されており、第2絶縁層7は第3絶縁層8よりも無機フィラーを多く含有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、
前記絶縁基板の主面両端部に設けられた一対の表電極と、
一対の前記表電極に両端部を重ねるように設けられた抵抗体と、
前記抵抗体を覆うように設けられた樹脂材料からなる保護膜と、
前記保護膜上に積層された樹脂材料からなる補助膜と、
前記電極上に積層された導電性粒子を含有する樹脂材料からなる一対の補助電極層と、
少なくとも前記絶縁基板の両端面に延在して前記補助電極層に導通する一対の端面電極と、
前記補助電極層および前記端面電極を覆う外部メッキ層と、
を備え、
前記補助電極層は前記補助膜の端部表面を覆う位置まで形成されており、
前記保護膜は前記補助膜よりも無機フィラーを多く含有している、
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
前記表電極と前記抵抗体の接続部分を含めて該抵抗体の全体を覆うガラス層をさらに備え、前記保護膜は前記ガラス層上に積層されている、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記補助膜の樹脂材料に含まれる無機フィラーの含有量がゼロまたは10wt%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記保護膜と前記補助膜は同系の樹脂材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記絶縁基板の短手方向に沿う長さを幅寸法とすると、前記補助電極層の幅寸法は、前記表電極の幅寸法よりも広く、且つ、前記補助膜の幅寸法よりも狭く設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
前記保護膜の外形に対して前記補助膜の外形が大きく設定されており、前記補助膜は前記保護膜の表面全体を覆うように形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記絶縁基板の裏面に設けられた裏電極をさらに備え、前記端面電極は前記裏電極に導通している、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面実装タイプのチップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う絶縁性の保護膜と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、表電極と裏電極を導通する一対の端面電極と、これら各電極を覆う一対の外部メッキ層等によって主に構成されている。
【0003】
この種のチップ抵抗器において、通常、表電極には比抵抗の低いAg(銀)系の金属材料が用いられており、この表電極を覆うように外部メッキ層が形成された構成となっているが、外部メッキ層と保護膜の境界部分となる隙間から腐食性の強い硫化ガス等が侵入し易いため、表電極と保護膜の境界位置における表電極部分が硫化ガス等によって腐食されて抵抗値変化や断線等の不具合を招来する虞がある。
【0004】
従来、特許文献1に開示されるように、導電性の樹脂材料からなる保護電極を表電極と保護膜の双方に接続するように形成し、端面電極を保護膜に接触しないように表電極と保護電極上に形成すると共に、外部メッキ層を保護電極と端面電極の境界位置を超えて保護膜の端部まで覆うように形成することにより、耐硫化性の向上を図るようにしたチップ抵抗器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/123419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたチップ抵抗器では、絶縁性の樹脂材料からなる保護膜によって抵抗体を覆い、この保護膜の端部上面に接するように保護電極を形成することで、保護電極と保護膜とが密着するように構成されている。しかし、一般的に保護膜の樹脂材料には、抵抗体で発生する熱に対する耐熱性や機械的強度を確保するためにSiO等の無機フィラーが含有されており、一方、保護電極の樹脂材料には、導電性を確保するために金属粒子が含有されているため、これら無機フィラーと金属粒子によって保護電極と保護膜の密着性が阻害されてしまう。その結果、ヒートサイクル等に起因して発生する熱応力により、保護電極と保護膜の界面に隙間ができてしまい、当該部分から硫化ガス等が入り込んでしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐食性に優れたチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面両端部に設けられた一対の表電極と、一対の前記表電極に両端部を重ねるように設けられた抵抗体と、前記抵抗体を覆うように設けられた樹脂材料からなる保護膜と、前記保護膜上に積層された樹脂材料からなる補助膜と、前記電極上に積層された導電性粒子を含有する樹脂材料からなる一対の補助電極層と、少なくとも前記絶縁基板の両端面に延在して前記補助電極層に導通する一対の端面電極と、前記補助電極層および前記端面電極を覆う外部メッキ層と、を備え、前記補助電極層は前記補助膜の端部表面を覆う位置まで形成されており、前記保護膜は前記補助膜よりも無機フィラーを多く含有している、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成されたチップ抵抗器では、導電性粒子を含有する樹脂材料からなる補助電極層が表電極上に積層されていると共に、この補助電極層が保護膜上に積層された補助膜の端部上面と接触しており、樹脂材料からなる保護膜が補助膜よりも無機フィラーを多く含有しているため、補助膜の樹脂分が相対的に増加して、補助電極層と補助膜の密着性が向上する。これにより、ヒートサイクル等に起因して熱応力が発生しても、熱応力によって補助電極層が補助膜から剥離してしまうことが抑制されるため、補助電極層と補助膜の界面から内部に硫化ガスが侵入し難くなり、表電極が硫化ガスによって腐食しまうことを防止できる。
【0010】
上記の構成において、抵抗体に抵抗値調整用のトリミング溝を形成する場合は、表電極と抵抗体の接続部分を含めて該抵抗体の全体を覆うガラス層をさらに備え、このガラス層上に保護膜を積層することが好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、補助膜の樹脂材料に含まれる無機フィラーは保護膜に比べて少なければ良いが、補助膜の樹脂材料に含まれる無機フィラーの含有量がゼロまたは10wt%以下であると、補助膜の樹脂分が大幅に増加されるため、補助電極層と補助膜の密着性を効果的に向上させることができる。
【0012】
また、上記の構成において、保護膜と補助膜は異種の樹脂材料を用いても良いが、これら保護膜と補助膜が同系の樹脂材料からなると、補助電極層と補助膜の密着性がより一層向上する。
【0013】
また、上記の構成において、絶縁基板の短手方向に沿う長さを幅寸法としたとき、補助電極層の幅寸法が、表電極の幅寸法よりも広く、且つ、補助膜の幅寸法よりも狭く設定されていると、メッキ材料が形成され易い補助電極層が絶縁基板の長辺側端面よりも内側領域に配置されるため、メッキ材料は絶縁基板の長辺側端面においても他の部位と同様の膜厚で形成される。その結果、外部メッキ層の剥離の要因となる膜厚の局部的な増大が生じなくなるため、外部メッキ層の剥離を防止することができる。
【0014】
また、上記の構成において、補助膜は必ずしも保護膜の表面全体を覆っていなくても良いが、保護膜の外形に対して補助膜の外形が大きく設定されており、補助膜が保護膜の表面全体を覆うように形成されていると、補助電極層と補助膜の密着性が向上して好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、補助電極層の剥離を防止して耐食性に優れたチップ抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図4】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図5】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図6】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図7】該チップ抵抗器の製造工程を示すフローチャートである。
図8】該チップ抵抗器の実装状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図、図2図1のII-II線に沿う断面図である。
【0019】
図1図2に示すように、本実施形態に係るチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の上面における長手方向の両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の下面における長手方向の両端部に設けられた一対の裏電極4と、一対の表電極3に両端部を重ねるように設けられた長方形状の抵抗体5と、表電極3と抵抗体5の接続部分を含めて抵抗体5の全体を覆う第1絶縁層(ガラス層)6と、第1絶縁層6上に積層された第2絶縁層(保護膜)7と、第2絶縁層7上に積層された第3絶縁層(補助膜)8と、表電極3上に積層された一対の補助電極層9と、絶縁基板2の両端面に延在して対応する表電極3(および補助電極層9)と裏電極4間を導通する一対の端面電極10と、補助電極層9と端面電極10の表面を覆うように設けられた一対の外部メッキ層11と、により主として構成されている。
【0020】
絶縁基板2はセラミックス等からなり、この絶縁基板2は、後述するシート状の大判基板を縦横に延びる一次分割溝と二次分割溝に沿って分割することにより多数個取りされたものである。
【0021】
一対の表電極3は、Pdを含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。これら表電極3は、絶縁基板2の上面における長手方向の両端部に平面視矩形状に形成されている。ここで、絶縁基板2の短手方向(図1の上下方向)を幅方向とすると、表電極3の幅方向の両端は絶縁基板2の長辺に接しておらず、表電極3の幅寸法は絶縁基板2の幅寸法よりも短くなっている。
【0022】
一対の裏電極4は、Ag系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。これら裏電極4は、絶縁基板2の下面における長手方向の両端部に平面視矩形状に形成されており、裏電極4の幅寸法も絶縁基板2の幅寸法よりも短くなっている。
【0023】
抵抗体5は、酸化ルテニウム等の抵抗ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、この抵抗体5の長手方向の両端部は表電極3に重なっている。なお、抵抗体5には抵抗値を調整するためのトリミング溝5aが形成されている。
【0024】
第1絶縁層6は、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。第1絶縁層6は、トリミング溝5aを形成する前に抵抗体5の全体を覆うように形成されている。
【0025】
第2絶縁層7は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。第2絶縁層7は、トリミング溝5aを形成した後の第1絶縁層6の全体を覆うように形成されており、第2絶縁層7の幅方向の両端は絶縁基板2の長辺に接している。なお、第2絶縁層7の樹脂材料には、耐熱性や機械的強度を確保するためにSiOやAl等の無機フィラーが含有されている。第2絶縁層7の樹脂材料に含まれる無機フィラーの含有量は多い方が好ましく、本実施形態では、無機フィラーの含有量を20~40wt%の範囲としているが、無機フィラーの含有量は40wt%以上であっても良い。
【0026】
第3絶縁層8は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。第3絶縁層8は、第2絶縁層7の全体を覆うように形成されており、第3絶縁層8の幅方向の両端も絶縁基板2の長辺に接している。すなわち、第3絶縁層8の長手方向の寸法は、第2絶縁層7の長手方向の寸法よりも長く設定されており、第3絶縁層8は、表電極3との接続箇所を含めた第2絶縁層7の表面全体を覆っている。第3絶縁層8の樹脂材料には、第2絶縁層7よりも少ない含有量の無機フィラーが含まれているか、または無機フィラーが全く含まれていない(含有量=0%)。第3絶縁層8の樹脂材料に含まれる無機フィラーの含有量は10wt%以下の範囲が好ましく、本実施形態では、無機フィラーの含有量をより好ましい5wt%以下に設定してある。
【0027】
なお、第3絶縁層8は、必ずしも第2絶縁層7の表面全体を覆っていなくても良く、表電極3との接続箇所を除いた第2絶縁層7の表面上に形成するようにしても良い。その場合、第3絶縁層8は表電極3に接触しなくなり、第3絶縁層8の両端部と表電極との間から第2絶縁層7が露出する形態となるが、補助電極層9が第3絶縁層8の両端部を覆って密着していれば良い。
【0028】
補助電極層9は、AgやCuやNi等の導電性粒子を充填したエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。補助電極層9は、表電極3の上面を覆って第3絶縁層8の上面途中に至る範囲に形成されており、第3絶縁層8の両端部の湾曲状部分は補助電極層9によって覆われている。補助電極層9と第3絶縁層8の樹脂材料は別々のものであっても良いが、第3絶縁層8と第3絶縁層8が同系の樹脂材料で形成されることが好ましい。なお、補助電極層9は表電極3の上面全体を覆っていなくても良く、補助電極層9を絶縁基板2の端面から離間する内方位置に形成することにより、絶縁基板2の端面と補助電極層9との間から表電極3の一部が露出するようにしても良い。
【0029】
ここで、第2絶縁層7と補助電極層9間に挟まれた第3絶縁層8の線膨張係数は、第2絶縁層7と補助電極層9の線膨張係数の間の値であることが好ましい。本実施形態では、線膨張係数の大きさが第2絶縁層7>第3絶縁層8>補助電極層9の関係になっているが、補助電極層9>第3絶縁層8>第2絶縁層7の関係であっても良い。また、第2絶縁層7と第3絶縁層8および補助電極層9のガラス転移温度についてみると、第2絶縁層7と補助電極層9のガラス転移温度が第3絶縁層8のガラス転移温度の±10%の範囲に含まれていることが好ましい。
【0030】
端面電極10は、Ni-Cr等をスバッタリングすることによって形成されたものであり、この端面電極10によって絶縁基板2の端面を介して上下に離間する表電極3および補助電極層9と裏電極4とが導通されている。なお、補助電極層9の第3絶縁層8寄りの上面は端面電極10に覆われておらず、裏電極4の絶縁基板2の端面から離れた内側部分も端面電極10に覆われていない。
【0031】
外部メッキ層11は、内側のバリヤー層12と外側の外部接続層13との2層構造からなる。バリヤー層12は電解めっきによって形成されたNiメッキ層であり、このバリヤー層12は、端面電極10の表面全体と該端面電極10から露出する補助電極層9および裏電極4を覆っている。外部接続層13は電解めっきによって形成されたSnメッキ層であり、この外部接続層13はバリヤー層12の表面全体を覆っている。
【0032】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器1の製造方法について、図3図7を参照しながら説明する。なお、図3図4はチップ抵抗器1の製造工程を示す平面図、図5図6はチップ抵抗器1の製造工程を示す断面図、図7はチップ抵抗器1の製造工程を示すフローチャートである。
【0033】
まず、図7のステップS1に示すように、絶縁基板2が多数個取りされるシート状の大判基板2Aを準備する。この大判基板2Aには格子状に延びる一次分割溝と二次分割溝が形成されており、これら両分割溝で区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ形成領域となる。なお、図3図6には1つのチップ形成領域が代表的に示されているが、実際には、このようなチップ形成領域が格子状に多数配列されている。
【0034】
そして、大判基板2Aの裏面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極4を形成する(図7のステップS2)。しかる後、大判基板2Aの表面にAg-Pd系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、図3(a)と図5(a)に示すように、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する(図7のステップS3)。なお、表電極3と裏電極4の形成順序は上記と逆でも良く、表電極3と裏電極4を同時に形成するようにしても良い。
【0035】
次に、大判基板2Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、図3(b)と図5(b)に示すように、両端部を表電極3に重ね合わせた長方形状の抵抗体5を形成する(図7のステップS4)。
【0036】
次に、抵抗体5を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから600℃で焼成することにより、図3(c)と図5(c)に示すように、表電極3との接続端部を含めて抵抗体5の全体を被覆する第1絶縁層6を形成する(図7のステップS5)。そして、この第1絶縁層6の上からレーザー光を照射することにより、抵抗体5にトリミング溝5aを形成して抵抗値を調整する。
【0037】
次に、第1絶縁層6の上からエポキシ樹脂系(またはフェノール樹脂系)ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化(焼付け)することにより、図3(d)と図5(d)に示すように、第1絶縁層6の全体を覆う第2絶縁層7を形成する(図7のステップS6)。この第2絶縁層7の樹脂材料には、耐熱性や機械的強度を確保するために、SiOやAl等の無機フィラーが20~40wt%の含有量で含まれている。
【0038】
次に、第2絶縁層7の上からエポキシ樹脂系(またはフェノール樹脂系)ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化することにより、図4(e)と図6(e)に示すように、第2絶縁層7の全体を覆う第3絶縁層8を形成する(図7のステップS7)。この第3絶縁層8の樹脂材料には、第2絶縁層7よりも少ない含有量の無機フィラーが含まれているか、または無機フィラーが全く含まれておらず、第3絶縁層8に含まれる無機フィラーの含有量は10wt%以下(ゼロを含む)である。
【0039】
次に、導電性粒子(Ag系、Cu系、Ni系等)を充填したエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化することにより、図4(f)と図6(f)に示すように、一対の表電極3上にそれぞれ補助電極層9を形成する(図7のステップS8)。これら補助電極層9は、表電極3の上面を覆って第3絶縁層8の上面途中に至る範囲まで形成され、第3絶縁層8の両端部の湾曲状部分は補助電極層9によって覆われる。
【0040】
これまでの工程は大判基板2Aに対する一括処理であるが、次なる工程では、図7のステップS9に示すように、大判基板2Aを一次分割溝に沿って1次ブレイク(一次分割)して短冊状基板2Bを得る。
【0041】
しかる後、この短冊状基板2Bの分割面に向けてNi-Crをスパッタリングすることにより、図4(g)と図6(g)に示すように、表電極3および補助電極層9と裏電極4とを導通する一対の端面電極10を形成する(図7のステップS10)。その際、端面電極10は補助電極層9と裏電極4の外側端寄りの表面を覆うように断面コ字状に形成されるが、補助電極層9の第3絶縁層8寄りの上面は端面電極10に覆われず、裏電極4の内側端寄りの表面も端面電極10に覆われない。
【0042】
次に、図7のステップS11に示すように、短冊状基板2Bを二次分割溝に沿って2次ブレイク(二次分割)して、チップ抵抗器1と同等の大きさのチップ単体2Cを得る。
【0043】
しかる後、個片化されたチップ単体2Cに対して電解Niめっきを施すことにより、端面電極10を被覆するバリヤー層12を形成する。次いで、チップ単体2Cに対して電解Snめっきを施すことにより、バリヤー層12を被覆する外部接続層13を形成する。これにより、図4(h)と図6(h)に示すように、バリヤー層12と外部接続層13からなる2層構造の外部メッキ層11が形成され(図7のステップS12)、図1図2に示すチップ抵抗器1が完成する。
【0044】
図8に示すように、このようにして製造されたチップ抵抗器1は、回路基板100のランド101上に絶縁基板2の裏面を下に向けた姿勢で搭載され、一対の外部メッキ層11を対応するランド101にそれぞれ半田102を介して接合することによって面実装される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るチップ抵抗器1は、導電性粒子を含有する樹脂材料からなる補助電極層9が表電極3上に積層されていると共に、この補助電極層9が第2絶縁層(保護膜)7上に積層された第3絶縁層(補助膜)8の端部上面と接触しており、第2絶縁層7が第3絶縁層8よりも無機フィラーを多く含有しているため、耐熱性や機械的強度を第2絶縁層7で確保しつつ第3絶縁層8の樹脂分が相対的に増加し、補助電極層9と第3絶縁層8の密着性を高めることができる。これにより、図8に示すようなチップ抵抗器1の実装状態において、ヒートサイクル等に起因して熱応力が発生しても、熱応力に起因する補助電極層9の第3絶縁層8からの剥離が抑制されるため、補助電極層9と第3絶縁層8の界面から内部に硫化ガスが侵入し難くなり、表電極3が硫化ガスによって腐食しまうことを防止できる。
【0046】
また、本実施形態に係るチップ抵抗器1では、絶縁基板2の短手方向に沿う長さを幅寸法としたとき、補助電極層9の幅寸法が、表電極3の幅寸法よりも広く、且つ、第3絶縁層8の幅寸法よりも狭く設定されている。これにより、メッキ材料が形成され易い補助電極層9が絶縁基板2の長辺側端面よりも内側領域に配置されるため、電解めっきを施してバリヤー層12と外部接続層13を形成する際に、メッキ材料は絶縁基板2の長辺側端面においても他の部位と同様の膜厚で形成されることになる。その結果、外部メッキ層11の剥離の要因となる膜厚の局部的な増大が生じなくなるため、外部メッキ層11の剥離を防止することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0048】
例えば、抵抗体5の抵抗値調整を必要としないチップ抵抗器の場合、第1絶縁層(ガラス層)6を省略し、抵抗体5を第2絶縁層(保護膜)7と第3絶縁層(補助膜)8の2層で覆うようにしても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、絶縁基板2の裏面に表電極3と補助電極層9に導通する裏電極4が設けられているチップ抵抗器1について説明したが、そのような裏電極を備えていないタイプのチップ抵抗器についても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 チップ抵抗器
2 絶縁基板
2A 大判基板
2B 短冊状基板
2C チップ単体
3 表電極
4 裏電極
5 抵抗体
5a トリミング溝
6 第1絶縁層(ガラス層)
7 第2絶縁層(保護膜)
8 第3絶縁層(補助膜)
9 補助電極層
10 端面電極
11 外部メッキ層
12 バリヤー層
13 外部接続層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8