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特開2023-167196未架橋タイヤの成形装置及びタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167196
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】未架橋タイヤの成形装置及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/24 20060101AFI20231116BHJP
   B29D 30/30 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B29D30/24
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078182
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 智昭
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP02
4F215AQ05
4F215AR02
4F215VA02
4F215VA15
4F215VD01
4F215VD02
4F215VK01
4F215VK33
4F215VL23
4F215VL27
4F215VP02
4F215VP07
4F215VP10
4F215VQ02
4F215VR01
4F215VR03
4F215VR04
(57)【要約】
【課題】
ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる未架橋タイヤの成形装置を提供する。
【解決手段】
本明細書が開示する未架橋タイヤの成形装置は、圧縮空気で第1予備成形体を膨らませるシェーピングフォーマーと、膨らんだ第1予備成形体に第2予備成形体を貼り合わせるステッチャーと、前記シェーピングフォーマー及び前記ステッチャーを制御する制御装置と、を備え、前記シェーピングフォーマーは、前記第1予備成形体を保持する一対のドラム体と、前記一対のドラム体と前記第1予備成形体とで囲まれた内部空間から圧縮空気を排出する排気弁と、を有しており、前記制御装置は、前記内部空間の内圧の時間変化を示すモデルチャートを記憶しており、前記内部空間の実内圧から対応する前記モデルチャートの値を差し引いた実差分値が予め定めた排気差分値以上のとき、前記排気弁を作動させて前記内部空間から圧縮空気を排出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気で第1予備成形体を膨らませるシェーピングフォーマーと、
膨らんだ第1予備成形体に第2予備成形体を貼り合わせるステッチャーと、
前記シェーピングフォーマー及び前記ステッチャーを制御する制御装置と、を備え、
前記シェーピングフォーマーは、
前記第1予備成形体を保持する一対のドラム体と、
前記一対のドラム体と前記第1予備成形体とで囲まれた内部空間から圧縮空気を排出する排気弁と、を有しており、
前記制御装置は、
前記内部空間の内圧の時間変化を示すモデルチャートを記憶しており、
前記内部空間の実内圧から対応する前記モデルチャートの値を差し引いた実差分値が予め定めた排気差分値以上のとき、前記排気弁を作動させて前記内部空間から圧縮空気を排出する、未架橋タイヤの成形装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記実差分値が前記排気差分値よりも大きい予め定めた停止差分値以上のとき前記シェーピングフォーマー及び前記ステッチャーの動作を停止させる、請求項1に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【請求項3】
第1予備成形体に第2予備成形体を貼り合わせるステッチ工程が実施される期間における前記モデル内圧は一定である、請求項1に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【請求項4】
前記シェーピングフォーマーは、
前記内部空間への圧縮空気の供給、及び、前記内部空間からの圧縮空気の排出を行う空気流路と、
前記空気流路に設けられ前記内部空間に供給する圧縮空気の流量を調整する供給流量調整弁と、
前記空気流路に設けられ前記内部空間から排出する圧縮空気の流量を調整する排出流量調整弁と、を有し、
前記排気弁は、前記空気流路の前記排出流量調整弁が設けられている位置よりも前記内部空間に近い位置に設けられている、請求項1に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【請求項5】
前記シェーピングフォーマーは、前記内部空間に設けられた内部圧力計を有し、
前記制御装置は前記内部圧力計から前記内部空間の実内圧を取得する、請求項1に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【請求項6】
請求項1に記載の未架橋タイヤの成形装置を用いて未架橋タイヤを形成し、形成した未架橋タイヤを加圧及び加熱することでタイヤを得る、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、未架橋タイヤの成形装置及びタイヤの製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程では、成形装置を用いて未架橋タイヤ(ローカバー)を成形し、成形した未架橋タイヤを圧縮及び加熱する。これらの工程を経ることでタイヤを得ることができる。また、上記の成形装置では、圧縮空気で膨らませた第1予備成形体(1st カバー)に、第2予備成形体(2nd カバー)を貼り合わせることで未架橋タイヤを成形している(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-72844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤには高いユニフォミティ(均一性)が求められるところ、未架橋タイヤの成形は、タイヤのユニフォミティに大きく影響する。これを踏まえ、本出願人の意図するところは、ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる未架橋タイヤの成形装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する未架橋タイヤの成形装置は、圧縮空気で第1予備成形体を膨らませるシェーピングフォーマーと、膨らんだ第1予備成形体に第2予備成形体を貼り合わせるステッチャーと、前記シェーピングフォーマー及び前記ステッチャーを制御する制御装置と、を備え、前記シェーピングフォーマーは、前記第1予備成形体を保持する一対のドラム体と、前記一対のドラム体と前記第1予備成形体とで囲まれた内部空間から圧縮空気を排出する排気弁と、を有しており、前記制御装置は、前記内部空間の内圧の時間変化を示すモデルチャートを記憶しており、前記内部空間の実内圧から対応する前記モデルチャートの値を差し引いた実差分値が予め定めた排気差分値以上のとき、前記排気弁を作動させて前記内部空間から圧縮空気を排出する。
【発明の効果】
【0006】
この未架橋タイヤの成形装置によれば、未架橋タイヤを成形するにあたり、内部空間の内圧の過上昇が抑制される。そのため、ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、成形装置の概略図である。
図2図2は、未架橋タイヤの成形方法を示した図である。
図3図3は、シェーピングフォーマーの全体図である。
図4図4は、モデルチャートを示した図である。
図5図5は、モデルチャートと実内圧を比較した図である。
図6図6は、内圧監視プログラムのフローチャートである。
図7図7は、内圧監視プログラムを実行したときの実内圧の変動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<成形装置の概要>
はじめに、本実施形態に係る成形装置100の概要について説明する。図1は、成形装置100の概略図である。成形装置100は、未架橋タイヤを成形する装置であって、タイヤの製造工程で使用される。成形装置100によって成形された未架橋タイヤは、その後に加圧及び加熱され、これによりタイヤを得ることができる。
【0009】
図1に示すように、成形装置100は、シェーピングフォーマー10と、ベルトトランスファー20と、ステッチャー30と、制御装置40と、を備えている。
【0010】
シェーピングフォーマー10は、回転筒体11と、一対のドラム体12と、を有している。回転筒体11は、円筒状であって、回転筒体11の軸心110まわりに回転する。なお、回転筒体11の軸心110は、図1の紙面左右方向に延びている。以下では、軸心110が延びる方向を単に「軸方向」と称し、軸心110に対して垂直な方向を「半径方向」と称する。一対のドラム体12は、回転筒体11に設けられており、回転筒体11とともに回転する。一対のドラム体12は、軸方向に移動して互いの軸方向間距離を変化させることができる。
【0011】
ベルトトランスファー20は、環状フレーム21と、複数の保持具22と、を有している。環状フレーム21は、回転筒体11と軸心が一致する円環状であって、軸方向に移動することができる。保持具22は、環状フレーム21の内側に設けられており、環状フレーム21の周方向に沿って等間隔に配置されている。各保持具22は、環状フレーム21に対して半径方向に移動可能な保持具本体23と、保持具本体23の先端に設けられたクランプ24を有している。各保持具本体23が半径方向に移動すると、各クランプ24で形成されるベルトトランスファー20の内周面の径が変動する。
【0012】
ステッチャー30は、シリンダベース31と、ステッチシリンダ32と、ステッチローラー33と、を有している。シリンダベース31は、上述した環状フレーム21の軸方向両端面に設けられている。各シリンダベース31は、ステッチシリンダ32を保持しており、ステッチシリンダ32の軸方向位置、及び、半径方向に対する角度を変更することができる。ステッチシリンダ32は、伸縮して長さが変動するように構成されている。ステッチローラー33は、ステッチシリンダ32の先端部分に設けられている。また、ステッチローラー33は、ステッチシリンダ32の伸縮方向に対して垂直な方向に延びる回転軸まわりに回転することができる。
【0013】
制御装置40は、シェーピングフォーマー10、ベルトトランスファー20、及び、ステッチャー30を制御する装置である。制御装置40は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及び、I/Oインターフェース等を有している。制御装置40の不揮発性メモリには後述する「内圧調整プログラム」及び「内圧監視プログラム」を含む種々のプログラム、並びに、後述する「モデルチャート」を含む種々のデータが保存されている。制御装置40のプロセッサは、保存されているプログラムに基づき揮発性メモリを用いて演算処理を行う。
【0014】
以上が、本実施形態に係る成形装置100の概要である。ただし、成形装置100は上記の構成に限定されない。例えば、ステッチャー30は、ベルトトランスファー20に設けられるのではなく、ベルトトランスファー20から独立して移動できるように構成されていてもよい。また、図1では、ステッチャー30は、ベルトトランスファー20の頂部付近に位置しているが、ベルトトランスファー20の複数の周方向位置に位置していてもよい。
【0015】
<未架橋タイヤの成形方法>
次に、未架橋タイヤ101の成形方法について説明する。図2は、未架橋タイヤ101の成形方法を示した図である。
【0016】
未架橋タイヤ101を成形するにあたり、まず、図2の(a)に示す予備工程を実施する。予備工程では、シェーピングフォーマー10の一対のドラム体12の間を渡すようにして、第1予備成形体102を円筒状に配置する。第1予備成形体102は、インナーライナーシート、支持層シート、カーカスシート、及び、ビードリング等によって構成されている。また、ベルトトランスファー20が第2予備成形体103を保持した状態で軸方向に移動し、第1予備成形体102の半径方向外側に円環状の第2予備成形体103を配置する。第2予備成形体103は、トレッドシート、ベルトシート、及び、バンドシート等によって構成されている。なお、ベルトトランスファー20は、各クランプ24で形成されるベルトトランスファー20の内周面の径を小さくすることで、円筒状の第2予備成形体103を保持することができる。
【0017】
続いて、図2の(b)に示す膨張工程を実施する。膨張工程では、各ドラム体12が第1予備成形体102を保持した状態で、互いに近づくように各ドラム体12を軸方向に移動させる。このとき、一対のドラム体12と第1予備成形体102で囲まれた空間111(以下、「内部空間」と称す)に圧縮空気を供給する。これにより、第1予備成形体102は半径方向外側に膨らみ、第1予備成形体102の半径方向外周面と第2予備成形体103の内周面が密着する。なお、内部空間111に圧縮空気を供給する方法については後述する。
【0018】
続いて、図2の(c)に示すステッチ工程を実施する。ステッチ工程では、シェーピングフォーマー10の回転筒体11を回転させながら実施する。これにより第1予備成形体102及び第2予備成形体103は回転する。この状態で、ステッチローラー33を第2予備成形体103の表面に沿って軸方向に移動させながら第2予備成形体103に押し当てる。これにより、第1予備成形体102に第2予備成形体103が貼り合わせられる。
【0019】
続いて、図2の(d)に示す後処理工程を実施する。上記の各工程を経ることにより、未架橋タイヤ101が形成される。後処理工程では、未架橋タイヤ101の内部空間111から圧縮空気を排出し、未架橋タイヤ101を成形装置100から取り外す。なお、内部空間111から圧縮空気を排出する方法については後述する。
【0020】
<シェーピングフォーマー>
次に、上述したシェーピングフォーマー10の全体構造について説明する。図3は、シェーピングフォーマー10の全体図である。図3に示すように、シェーピングフォーマー10は、回転筒体11と、一対のドラム体12と、静止筒体13と、空気流路14と、供給流量調整弁15と、排出流量調整弁16と、内部圧力計17と、排気弁18と、を有している。
【0021】
回転筒体11は、前述のとおり軸心110まわりに回転する。本実施形態の回転筒体11は、動力伝達ベルト50を介して駆動モータ51により駆動される。ただし、駆動モータ51と回転筒体11は直接接続されていてもよく、減速機などを介して接続されていてもよい。なお、駆動モータ51の動作は、制御装置40(図1参照)から送信される制御信号に基づいて制御される。
【0022】
ドラム体12は、前述のとおり、回転筒体11とともに回転し、軸方向に移動する。また、ドラム体12は、第1予備成形体102を保持する。ドラム体12の動作は、制御装置40から送信される制御信号に基づいて制御される。なお、前述のとおり、ドラム体12は、第1予備成形体102とともに内部空間111を形成する。
【0023】
静止筒体13は、回転筒体11と異なる軸方向位置であって、回転筒体11と同一軸上に位置している。ただし、静止筒体13は回転しない。静止筒体13と回転筒体11の間には、ロータリージョイント52が位置している。
【0024】
空気流路14は、メイン配管53と、供給配管54と、排出配管55と、を有している。メイン配管53は、静止筒体13の内部、ロータリージョイント52、及び、回転筒体11の内部を通って、内部空間111に開口する。供給配管54は、メイン配管53に接続されており、メイン配管53を介して内部空間111に圧縮空気を供給する。排出配管55は、メイン配管53に接続されており、メイン配管53を介して内部空間111から圧縮空気を排出する。
【0025】
供給流量調整弁15は、供給配管54に設けられており、内部空間111に供給する圧縮空気の流量を調整する。供給流量調整弁15の動作は、制御装置40から送信される制御信号に基づいて制御される。
【0026】
排出流量調整弁16は、排出配管55に設けられており、内部空間111から排出する圧縮空気の流量を調整する。排出流量調整弁16の動作は、制御装置40から送信される制御信号に基づいて制御される。
【0027】
内部圧力計17は、内部空間111に設けられている。具体的には、回転筒体11の外周面上であって、一対のドラム体12の間に設けられている。内部圧力計17は、内部空間111の内圧(実内圧)を測定し、測定データを制御装置40に送信する。内部圧力計17から制御装置40への測定データの送信は無線で行う。そのため、内部圧力計17は、回転筒体11とともに回転している状態であっても、制御装置40に測定データを送信することができる。
【0028】
排気弁18は、メイン配管53に設けられており、内部空間111から圧縮空気を排出する。本実施形態の排気弁18は、いわゆるクイックエキゾースト弁であって、圧縮空気を早急に排出することができる。なお、排気弁18は、空気流路14の排出流量調整弁16が設けられている位置よりも内部空間111に近い位置に設けられている。ただし、排気弁18の位置は限定されない。また、排気弁18の動作は、制御装置40から送信される制御信号に基づいて制御される。
【0029】
<内圧調整プログラム>
次に、制御装置40が実行する内圧調整プログラムについて説明する。内圧調整プログラムは、未架橋タイヤ101を成形する際における、内部空間111の内圧を調整するプログラムである。内圧調整プログラムにおいて、制御装置40は、供給流量調整弁15及び排出流量調整弁16の動作を制御することにより、内部空間111の内圧を調整する。
【0030】
制御装置40は、内部空間111の内圧の時間変化を示すモデルチャートを記憶している。図4は、モデルチャートの一例を示している。図4の横軸が時間であり、縦軸が内部空間111の内圧である(この点は、図5及び図7も同様である)。内圧調整プログラムでは、内部空間111の実内圧が、このモデルチャートに沿って変化するように調整が行われる。なお、制御装置40が記憶するモデルチャートは、製造するタイヤの種類によって異なる。
【0031】
図4に示すtからtの期間は、前述した予備工程(図2の(a)参照)に相当する。この期間におけるモデルチャートの値(以下、「モデル内圧」と称す)はゼロである。この期間において、制御装置40は、供給流量調整弁15及び排出流量調整弁16を閉じたままにする。
【0032】
図4に示すtからtの期間は、前述した膨張工程(図2の(b)参照)に相当する。この期間におけるモデル内圧は、時間が進むにつれて高くなる。この期間において、制御装置40は、供給流量調整弁15を開き、排出流量調整弁16を閉じたままにする。これにより、内部空間111に圧縮空気が供給され、第1予備成形体102が膨らむ。
【0033】
図4に示すtからtの期間は、前述したステッチ工程(図2の(c)参照)に相当する。この期間におけるモデル内圧は一定である。この期間において、制御装置40は、供給流量調整弁15及び排出流量調整弁16を閉じたままにする。
【0034】
図4に示すt以降の期間は、前述した後処理工程(図2の(d)参照)に相当する。この期間におけるモデル内圧は、次第に低くなる。この期間において、制御装置40は、供給流量調整弁15を閉じたままとし、開度を調整しながら排出流量調整弁16を開く。なお、図4に示すtからtの期間は、モデル内圧が一定であるが、この期間におけるモデル内圧は一定でなくてもよい。図4に示すt以降の期間はモデル内圧がゼロとなり、未架橋タイヤ101を成形装置100から取り外すことができる。
【0035】
<モデルチャートと実内圧の比較>
上記のような内圧調整プログラムを実行し、供給流量調整弁15及び排出流量調整弁16を制御したとしても、内部空間111の実内圧の変動はモデルチャートから多少ずれる。図5は、図4に示すモデルチャートと内部空間111の実内圧とを比較した図である。図5中の太い破線がモデルチャートであり、太い実線が内部空間111の実内圧の変化の一例である。
【0036】
図5で示すようにtの直後(ステッチ工程の開始直後)に内部空間111の実内圧が高くなる傾向にある。モデル内圧に対して内部空間111の実内圧が高くなりすぎると、タイヤのユニフォミティが悪化するおそれがあり、場合によってはタイヤの一部が膨れ上がる現象(フーセン現象)が発生する。そこで、本実施形態の制御装置40は、上述した「内圧調整プログラム」と並行して「内圧監視プログラム」を実行する。
【0037】
<内圧監視プログラム>
次に、制御装置40が実行する内圧監視プログラムについて説明する。図6は、内圧監視プログラムのフローチャートである。内圧監視プログラムでは、図6に示す各ステップ(S1からS5)が短時間で繰り返される。
【0038】
まず、内圧監視プログラムが開始されると、制御装置40は内部空間111の実内圧とモデル内圧を取得する(ステップS1)。内部空間111の実内圧は内部圧力計17(図3参照)から取得することができ、モデル内圧は記憶しているモデルチャートから取得することができる。なお、取得するモデル内圧は、内部空間111の実内圧を取得した時間に対応する時間の値である。
【0039】
続いて、制御装置40は取得した内部空間111の実内圧からモデル内圧を引いた値(以下、「実差分値」と称す)が、予め定めた排気差分値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、排気差分値は、一例として0.03MPaである。
【0040】
制御装置40は、実差分値が排気差分値以上であると判定した場合(ステップS2でYES)、排気弁18を作動させて、内部空間111から圧縮空気を排出する(ステップS3)。このステップS3を経た後は、ステップS4に進む。
【0041】
一方、制御装置40は、ステップS2において、実差分値が排気差分値以上でないと判定した場合(ステップS2でNO)、つまり実差分値が排気差分値よりも小さいと判定した場合、ステップS4に進む。
【0042】
ステップS4では、制御装置40は、実差分値が予め定めた停止差分値以上であるか否かを判定する。なお、停止差分値は、前述の排気差分値よりも大きく、一例として0.05MPaである。
【0043】
制御装置40は、実差分値が停止差分値以上であると判定した場合(ステップS4でYES)、シェーピングフォーマー10、ベルトトランスファー20、及び、ステッチャー30の動作を停止させる(ステップS5)。これにより、内部空間111の実内圧が過上昇に至った場合には、作業者が未架橋タイヤ101の状態をすぐに確認することができる。
【0044】
一方、制御装置40は、ステップS4において、実差分値が停止差分値以上でないと判定した場合(ステップS4でNO)、つまり実差分値が停止差分値よりも小さいと判定した場合、ステップS1に戻って、上述した各ステップを繰り返す。
【0045】
<内圧監視プログラムの効果>
次に、上述した内圧監視プログラムを実行したことによる効果を説明する。図7は、内圧監視プログラムを実行したときの内部空間111の実内圧の変動を示した図である。前述の図5で示した内部空間111の実内圧の変動は、内圧監視プログラムを実行することで、図7に示すように改善される。
【0046】
具体的には、図7に示すように、tの直後において、実差分値Dが排気差分値以上となるが、このとき排気弁18が作動して、内部空間111から圧縮空気が排出される(図6のステップS3参照)。これにより、内部空間111の実内圧が低下して、実内圧の過上昇が抑制される。したがって、本実施形態の内圧監視プログラムを実行すれば、未架橋タイヤ101の成形が適切に行われ、ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる。
【0047】
<開示項目>
(項目1)
圧縮空気で第1予備成形体を膨らませるシェーピングフォーマーと、膨らんだ第1予備成形体に第2予備成形体を貼り合わせるステッチャーと、前記シェーピングフォーマー及び前記ステッチャーを制御する制御装置と、を備え、前記シェーピングフォーマーは、前記第1予備成形体を保持する一対のドラム体と、前記一対のドラム体と前記第1予備成形体とで囲まれた内部空間から圧縮空気を排出する排気弁と、を有しており、前記制御装置は、前記内部空間の内圧の時間変化を示すモデルチャートを記憶しており、前記内部空間の実内圧から対応する前記モデルチャートの値を差し引いた実差分値が予め定めた排気差分値以上のとき、前記排気弁を作動させて前記内部空間から圧縮空気を排出する、未架橋タイヤの成形装置。
【0048】
この構成によれば、未架橋タイヤを成形するにあたり、未架橋タイヤの内部空間の実内圧の過上昇が抑制される。その結果、未架橋タイヤの成形を適切に行うことができ、ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる。
【0049】
(項目2)
前記制御装置は、前記実差分値が前記排気差分値よりも大きい予め定めた停止差分値以上のとき前記シェーピングフォーマー及び前記ステッチャーの動作を停止させる、項目1に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【0050】
この構成によれば、内部空間の内圧が過上昇に至った場合には、作業者が未架橋タイヤの状態をすぐに確認することができる。
【0051】
(項目3)
第1予備成形体に第2予備成形体を貼り合わせるステッチ工程が実施される期間における前記モデル内圧は一定である、項目1又は2に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【0052】
この構成によれば、内部空間の実内圧が高くなりやすいステッチ工程において、内部空間の実内圧の過上昇を抑制することができる。
【0053】
(項目4)
前記シェーピングフォーマーは、前記内部空間への圧縮空気の供給、及び、前記内部空間からの圧縮空気の排出を行う空気流路と、前記空気流路に設けられ前記内部空間に供給する圧縮空気の流量を調整する供給流量調整弁と、前記空気流路に設けられ前記内部空間から排出する圧縮空気の流量を調整する排出流量調整弁と、を有し、前記排気弁は、前記空気流路の前記排出流量調整弁が設けられている位置よりも前記内部空間に近い位置に設けられている、項目1乃至3のうちいずれか一の項に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【0054】
この構成によれば、実差分値が排気差分値以上のとき、内部空間に近い排気弁から内部空間の圧縮空気が排出されるため、内部空間の圧縮空気を速やかに排出することができる。その結果、内部空間の実内圧の過上昇が一層抑制される。
【0055】
(項目5)
前記シェーピングフォーマーは、前記内部空間に設けられた内部圧力計を有し、前記制御装置は前記内部圧力計から前記内部空間の実内圧を取得する、項目1乃至4のうちいずれか一の項に記載の未架橋タイヤの成形装置。
【0056】
この構成によれば、制御装置は内部空間の正確な実内圧を取得することができるため、実内圧の過上昇を精度よく抑制することができる。
【0057】
(項目6)
項目1乃至5のうちいずれか一の項に記載の未架橋タイヤの成形装置を用いて未架橋タイヤを形成し、形成した未架橋タイヤを加圧及び加熱することでタイヤを得る、タイヤの製造方法。
【0058】
この方法によれば、未架橋タイヤを成形するにあたり、未架橋タイヤの内部空間の実内圧の過上昇が抑制される。その結果、未架橋タイヤの成形を適切に行うことができ、ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 シェーピングフォーマー
11 回転筒体
12 ドラム体
14 空気流路
15 供給流量調整弁
16 排出流量調整弁
17 内部圧力計
18 排気弁
30 ステッチャー
40 制御装置
100 成形装置
101 未架橋タイヤ
102 第1予備成形体
103 第2予備成形体
111 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7