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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167198
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B25B21/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078188
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 靖仁
(57)【要約】
【課題】高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施できるインパクト工具を提供すること。
【解決手段】インパクト工具は、モータと、スピンドルシャフト部及びスピンドルシャフト部の後部に設けられるフランジ部を有し、モータの回転力により回転するスピンドルと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置される工具保持シャフトと、スピンドルシャフト部に支持され、工具保持シャフトを回転方向に打撃するハンマと、軸方向においてフランジ部の前面とフランジ部よりも前方に配置されたハンマの支持面との間に配置される弾性部材と、モータが起動する前の初期状態において、弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整機構と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
スピンドルシャフト部及び前記スピンドルシャフト部の後部に設けられるフランジ部を有し、前記モータの回転力により回転するスピンドルと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置される工具保持シャフトと、
前記スピンドルシャフト部に支持され、前記工具保持シャフトを回転方向に打撃するハンマと、
軸方向において前記フランジ部の前面と前記フランジ部よりも前方に配置された前記ハンマの支持面との間に配置される弾性部材と、
前記モータが起動する前の初期状態において、前記弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整機構と、を備える、
インパクト工具。
【請求項2】
前記弾性力調整機構は、前記初期状態における前記弾性部材の圧縮量を調整する、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項3】
前記弾性部材の後端部は、前記フランジ部に支持され、
前記弾性力調整機構は、前記弾性部材の前端部の位置を移動することにより、前記圧縮量を調整する、
請求項2に記載のインパクト工具。
【請求項4】
前記弾性力調整機構は、前記ハンマに形成されたねじ孔に配置され、前記弾性部材の前端部に接続されるねじを有し、
前記ねじの回転により、前記圧縮量が調整される、
請求項3に記載のインパクト工具。
【請求項5】
前記弾性部材の前端部を支持するワッシャを備え、
前記ねじの後端部は、前記ワッシャの前面に接触し、
前記ねじは、前記ワッシャを介して前記弾性部材に接続される、
請求項4に記載のインパクト工具。
【請求項6】
前記ねじ孔は、前記ハンマの回転軸の周囲に間隔をあけて複数形成され、
前記ねじは、複数の前記ねじ孔のそれぞれに1つずつ配置される、
請求項4又は請求項5に記載のインパクト工具。
【請求項7】
前記ハンマは、前記スピンドルシャフト部の周囲に配置される内筒部と、前記内筒部よりも径方向外側且つ前方に配置される前側外筒部と、前記前側外筒部よりも径方向外側に配置され且つ前側外筒部よりも後方に配置される後側外筒部と、を有し、
前記ねじ孔は、前記後側外筒部の前端面と前記支持面とを貫通するように形成される、
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項8】
前記ハンマを収容するハンマケースと、
前記ハンマケースに保持され、前記ハンマを回転可能に支持するハンマベアリングと、を備え、
前記ハンマベアリングは、前側外筒部の周囲に配置される、
請求項7に記載のインパクト工具。
【請求項9】
前記ハンマを収容するハンマケースを備え、
前記ハンマケースは、径方向及び周方向のそれぞれにおいて前記ねじ孔と重複する貫通孔を有し、
前記貫通孔を介して前記ねじが回転される、
請求項7に記載のインパクト工具。
【請求項10】
前記ハンマケースに保持され、前記ハンマを回転可能に支持するハンマベアリングを備え、
前記ハンマベアリングは、前記後側外筒部の周囲に配置される、
請求項9に記載のインパクト工具。
【請求項11】
前記スピンドルを保持するベアリングボックスと、
前記ハンマを保持するハンマケースと、を備え、
前記ハンマケースは、ねじ部を介して前記ベアリングボックスに結合され、
前記ハンマケースが前記ベアリングボックスに対して回転されて軸方向に移動することにより、前記弾性部材の弾性力が調整される、
請求項1又は請求項2に記載のインパクト工具。
【請求項12】
前記モータを収容するモータ収容部と、
前記モータ収容部と前記ベアリングボックスとの相対回転を抑制する第1回り止め機構と、を備える、
請求項11に記載のインパクト工具。
【請求項13】
前記ハンマケースを覆うカバーと、
前記カバーと前記ハンマケースとの相対回転を抑制する第2回り止め機構と、を備え、
前記カバーを介して前記ハンマケースが回転される、
請求項11又は請求項12に記載のインパクト工具。
【請求項14】
周方向において前記カバーを位置決めする位置決め機構を備える、
請求項13に記載のインパクト工具。
【請求項15】
前記弾性部材は、皿ばねを含む、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項16】
前記弾性部材の前端部を支持するワッシャを備え、
前記弾性部材の前端部は、前記ワッシャを介して前記ハンマに接続される、
請求項15に記載のインパクト工具。
【請求項17】
前記工具保持シャフトに移動可能に支持される可動アンビルを備え、
前記ハンマは、軸方向に変位せずに前記可動アンビルを回転方向に打撃する、
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項18】
前記可動アンビルは、前記可動アンビルの少なくとも一部が前記工具保持シャフトの外周面から径方向外側に突出する第1状態と、前記可動アンビルが前記工具保持シャフトの外周面よりも径方向内側に配置される第2状態とに変化するように移動し、
前記ハンマは、前記第1状態において前記可動アンビルを打撃し、第2状態において前記スピンドルシャフト部の周囲を回転する、
請求項17に記載のインパクト工具。
【請求項19】
ボールを介して前記フランジ部と相対回転可能に連結され、前記ハンマと軸方向に相対移動可能且つ相対回転不可能に連結されるカムリングを備え、
前記カムリングは、前記フランジ部の前面に対向するように配置され、
前記弾性部材は、軸方向において前記カムリングの前面と前記ハンマの支持面との間に配置される、
請求項17又は請求項18に記載のインパクト工具。
【請求項20】
前記カムリングは、前記ハンマの後部に連結され、
前記弾性部材は、前記スピンドルシャフト部と前記ハンマと前記カムリングとにより規定される閉鎖空間に配置される、
請求項19に記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具に係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなインパクト工具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-033738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インパクト工具は、アンビルを回転方向に打撃するハンマを備える。ハンマは、コイルばねのような弾性部材により前方に付勢される。例えばねじ締め作業において、アンビルに掛かる負荷が増加すると、ハンマは、弾性部材の弾性力(付勢力)に抗って後方に移動し、弾性部材の弾性力に基づいて前方に移動しながら回転する。アンビルに掛かる負荷が低い低負荷作業において、高い弾性力の弾性部材が使用される場合、ねじ締め作業を円滑に実施することが困難となる可能性がある。同様に、アンビルに掛かる負荷が高い高負荷作業において、低い弾性力の弾性部材が使用される場合、ねじ締め作業を円滑に実施することが困難となる可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施できるインパクト工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクト工具を開示する。インパクト工具は、モータと、スピンドルシャフト部及びスピンドルシャフト部の後部に設けられるフランジ部を有し、モータの回転力により回転するスピンドルと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置される工具保持シャフトと、スピンドルシャフト部に支持され、工具保持シャフトを回転方向に打撃するハンマと、軸方向においてフランジ部の前面とフランジ部よりも前方に配置されたハンマの支持面との間に配置される弾性部材と、モータが起動する前の初期状態において、弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整機構と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施できるインパクト工具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るインパクト工具を示す前方からの斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係るインパクト工具を示す側面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るインパクト工具を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す前方からの斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す縦断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す横断面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す断面図である。
図10図10は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す断面図である。
図11図11は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係る出力アセンブリを示す分解斜視図である。
図13図13は、第1実施形態に係る出力アセンブリの要部を示す前方からの分解斜視図である。
図14図14は、第1実施形態に係る出力アセンブリの要部を示す後方からの分解斜視図である。
図15図15は、第1実施形態に係るスピンドルを示す前方からの斜視図である。
図16図16は、第1実施形態に係るスピンドルを示す側面図である。
図17図17は、第1実施形態に係るスピンドルを前方から見た図である。
図18図18は、第1実施形態に係るカムリングを示す前方からの斜視図である。
図19図19は、第1実施形態に係るカムリングを後方から見た図である。
図20図20は、第1実施形態に係るカムリングを示す断面図である。
図21図21は、第1実施形態に係る工具保持シャフトを示す前方からの斜視図である。
図22図22は、第1実施形態に係る工具保持シャフトを示す断面図である。
図23図23は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図24図24は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図25図25は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図26図26は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図27図27は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図28図28は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図29図29は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図30図30は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図31図31は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図32図32は、第1実施形態に係る出力アセンブリの動作を示す断面図である。
図33図33は、第2実施形態に係るインパクト工具の一部を示す前方からの斜視図である。
図34図34は、第2実施形態に係る出力アセンブリを示す前方からの斜視図である。
図35図35は、第2実施形態に係る出力アセンブリを示す縦断面図である。
図36図36は、第2実施形態に係る出力アセンブリを示す分解斜視図である。
図37図37は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す前方からの斜視図である。
図38図38は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す縦断面図である。
図39図39は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す横断面図である。
図40図40は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す断面図である。
図41図41は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す断面図である。
図42図42は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す断面図である。
図43図43は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す断面図である。
図44図44は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を示す断面図である。
図45図45は、第3実施形態に係るインパクト工具の一部を上方から見た図である。
図46図46は、第4実施形態に係る出力アセンブリの一部を示す前方からの斜視図である。
図47図47は、第4実施形態に係る出力アセンブリを示す縦断面図である。
図48図48は、第4実施形態に係る出力アセンブリの一部を示す断面図である。
図49図49は、第4実施形態に係る出力アセンブリの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、モータと、スピンドルシャフト部及びスピンドルシャフト部の後部に設けられるフランジ部を有し、モータの回転力により回転するスピンドルと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置される工具保持シャフトと、スピンドルシャフト部に支持され、工具保持シャフトを回転方向に打撃するハンマと、軸方向においてフランジ部の前面とフランジ部よりも前方に配置されたハンマの支持面との間に配置される弾性部材と、モータが起動する前の初期状態において、弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整機構と、を備えてもよい。
【0010】
上記の構成では、弾性部材の弾性力が調整可能なので、インパクト工具は、高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施することができる。低負荷作業が実施される場合においては、弾性部材の弾性力が低くなるように弾性部材の弾性力が調整され、高負荷作業が実施される場合においては、弾性部材の弾性力が高くなるように弾性部材の弾性力が調整されることにより、インパクト工具は、高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施することができる。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、弾性力調整機構は、初期状態における弾性部材の圧縮量を調整してもよい。
【0012】
上記の構成では、初期状態における弾性部材の圧縮量が調整されることにより、弾性部材の弾性力が調整される。圧縮量が小さい場合、弾性部材の弾性力が低くなり、圧縮量が大きい場合、弾性部材の弾性力が高くなる。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施形態において、弾性部材の後端部は、フランジ部に支持されてもよい。弾性力調整機構は、弾性部材の前端部の位置を移動することにより、圧縮量を調整してもよい。
【0014】
上記の構成では、弾性部材の後端部の位置が固定された状態で、弾性部材の前端部の位置が移動されることにより、圧縮量が調整される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態において、弾性力調整機構は、ハンマに形成されたねじ孔に配置され、弾性部材の前端部に接続されるねじを有してもよい。ねじの回転により、圧縮量が調整されてもよい。
【0016】
上記の構成では、ねじがねじ孔に配置された状態で回転されることにより、ねじが前後方向に移動するので、圧縮量が調整される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、弾性部材の前端部を支持するワッシャを備えてもよい。ねじの後端部は、ワッシャの前面に接触してもよい。ねじは、ワッシャを介して弾性部材に接続されてもよい。
【0018】
上記の構成では、弾性部材の前端部の移動が円滑に実施される。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ねじ孔は、ハンマの回転軸の周囲に間隔をあけて複数形成されてもよい。ねじは、複数のねじ孔のそれぞれに1つずつ配置されてもよい。
【0020】
上記の構成では、前後方向において複数のねじのそれぞれの位置が調整されることにより、弾性部材の圧縮量が調整されるとともに、スピンドルに対する弾性部材の傾斜角度が調整される。スピンドルに対する弾性部材の傾斜角度とは、スピンドルの回転軸と弾性部材の回転軸(中心軸)とがなす角度をいう。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ハンマは、スピンドルシャフト部の周囲に配置される内筒部と、内筒部よりも径方向外側且つ前方に配置される前側外筒部と、前側外筒部よりも径方向外側に配置され且つ前側外筒部よりも後方に配置される後側外筒部と、を有してもよい。ねじ孔は、後側外筒部の前端面と支持面とを貫通するように形成されてもよい。
【0022】
上記の構成では、インパクト工具の組立者又は作業者は、ねじ孔に配置されたねじにねじ締め工具を円滑に接触させることができ、ねじを円滑に回転させることができる。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ハンマを収容するハンマケースと、ハンマケースに保持され、ハンマを回転可能に支持するハンマベアリングと、を備えてもよい。ハンマベアリングは、前側外筒部の周囲に配置されてもよい。
【0024】
上記の構成では、ねじによる弾性力の調整が終了した後、ハンマベアリングは、ねじ孔の前端部を覆うように配置される。これにより、ねじがハンマベアリングで保護される。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ハンマを収容するハンマケースを備えてもよい。ハンマケースは、径方向及び周方向のそれぞれにおいてねじ孔と重複する貫通孔を有してもよい。貫通孔を介してねじが回転されてもよい。
【0026】
上記の構成では、作業者は、貫通孔を介してねじ孔に配置されたねじにねじ締め工具を円滑に接触させることができ、ねじを円滑に回転させることができる。作業者は、作業内容に応じて、弾性部材の弾性力を適宜調整することができる。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ハンマケースに保持され、ハンマを回転可能に支持するハンマベアリングを備えてもよい。ハンマベアリングは、後側外筒部の周囲に配置されてもよい。
【0028】
上記の構成では、ねじ孔の前端部がハンマベアリングで覆われないので、作業者は、貫通孔を介してねじ孔に配置されたねじにねじ締め工具を円滑に接触させることができ、ねじを円滑に回転させることができる。
【0029】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドルを保持するベアリングボックスと、ハンマを保持するハンマケースと、を備えてもよい。ハンマケースは、ねじ部を介してベアリングボックスに結合されてもよい。ハンマケースがベアリングボックスに対して回転されて軸方向に移動することにより、弾性部材の弾性力が調整されてもよい。
【0030】
上記の構成では、作業者は、手でハンマケースを掴んで回転させることにより、弾性部材の弾性力を調整することができる。作業者は、ねじ締め工具を使用することなく、弾性部材の弾性力を調整することができる。
【0031】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、モータを収容するモータ収容部と、モータ収容部とベアリングボックスとの相対回転を抑制する第1回り止め機構と、を備えてもよい。
【0032】
上記の構成では、ハンマケースが回転された場合、第1回り止め機構によりベアリングボックスの回転が抑制されるので、作業者は、ベアリングボックスに対してハンマケースを円滑に回転させることができる。
【0033】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ハンマケースを覆うカバーと、カバーとハンマケースとの相対回転を抑制する第2回り止め機構と、を備えてもよい。カバーを介してハンマケースが回転されてもよい。
【0034】
上記の構成では、第2回り止め機構によりカバーとハンマケースとの相対回転が抑制されているので、作業者は、手でカバーを掴んで回転させることにより、ハンマケースを回転させることができる。ハンマケースが回転されることにより、弾性部材の弾性力が調整される。作業者は、ハンマケースに直接触れることなく、弾性部材の弾性力を調整することができる。
【0035】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、周方向においてカバーを位置決めする位置決め機構を備えてもよい。
【0036】
上記の構成では、ハンマケース及びカバーが不必要に回転することが抑制される。
【0037】
1つ又はそれ以上の実施形態において、弾性部材は、皿ばねを含んでもよい。
【0038】
上記の構成では、インパクト工具の大型化が抑制される。弾性部材に所定の弾性力が要求される場合、皿ばねを用いる場合のほうが、例えばコイルばねを用いる場合に比べて、軸方向における弾性部材の寸法を短くすることができる。これにより、インパクト工具の大型化が抑制された状態で、ハンマが工具保持シャフトを回転方向に打撃することができる。特に、インパクト工具の軸長が短縮される。インパクト工具が、モータ収容部と、モータ収容部の後端部に配置されるリヤカバーと、モータ収容部の前部に配置される出力アセンブリとを有する場合、インパクト工具の軸長とは、リヤカバーの後端部と出力アセンブリの前端部との軸方向における距離をいう。
【0039】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、弾性部材の前端部を支持するワッシャを備えてもよい。弾性部材の前端部は、ワッシャを介してハンマに接続されてもよい。
【0040】
上記の構成では、弾性部材の前端部は、ワッシャを介してハンマに安定して接続される。
【0041】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、工具保持シャフトに移動可能に支持される可動アンビルを備えてもよい。ハンマは、軸方向に変位せずに可動アンビルを回転方向に打撃してもよい。
【0042】
上記の構成では、工具保持シャフトに移動可能に支持される可動アンビルが設けられるので、ハンマは、軸方向に変位せずに可動アンビルを回転方向に打撃することができる。ハンマが軸方向に変位しないので、インパクト工具において軸方向の振動の発生が抑制される。
【0043】
1つ又はそれ以上の実施形態において、可動アンビルは、可動アンビルの少なくとも一部が工具保持シャフトの外周面から径方向外側に突出する第1状態と、可動アンビルが工具保持シャフトの外周面よりも径方向内側に配置される第2状態とに変化するように移動してもよい。ハンマは、第1状態において可動アンビルを打撃し、第2状態においてスピンドルシャフト部の周囲を回転してもよい。
【0044】
上記の構成では、ハンマは、軸方向に変位せずに可動アンビルを回転方向に打撃することができる。
【0045】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ボールを介してフランジ部と相対回転可能に連結され、ハンマと軸方向に相対移動可能且つ相対回転不可能に連結されるカムリングを備えてもよい。カムリングは、フランジ部の前面に対向するように配置されてもよい。弾性部材は、軸方向においてカムリングの前面とハンマの支持面との間に配置されてもよい。
【0046】
上記の構成では、カムリングは、ボールを介してスピンドルのフランジ部と相対回転可能に連結される。また、カムリングは、ハンマと軸方向に相対移動可能且つ相対回転不可能に連結される。これにより、軸長が短縮された状態で、ハンマが工具保持シャフトを回転方向に打撃することができる。
【0047】
1つ又はそれ以上の実施形態において、カムリングは、ハンマの後部に連結されてもよい。弾性部材は、スピンドルシャフト部とハンマとカムリングとにより規定される閉鎖空間に配置されてもよい。
【0048】
上記の構成では、ハンマが可動アンビルを介して工具保持シャフトを回転方向に打撃する場合、カムリング及び弾性部材もハンマと一緒に回転する。すなわち、ハンマが工具保持シャフトを打撃する場合、ハンマの慣性モーメントのみならず、カムリングの慣性モーメント及び弾性部材の慣性モーメントも、工具保持シャフトに付与される。これにより、工具保持シャフトは、高い打撃力で打撃される。
【0049】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0050】
実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。インパクト工具は、動力源としてモータ6を有する。
【0051】
実施形態において、モータ6の回転軸AXに平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0052】
軸方向においてインパクト工具の中心から規定の方向に離隔する方向又は位置を適宜、軸方向一方側、と称し、軸方向一方側の反対側を適宜、軸方向他方側、と称する。周方向において規定の方向を適宜、周方向一方側、と称し、周方向一方側の反対側を適宜、周方向他方側、と称する。径方向において回転軸AXから離隔する方向又は位置を適宜、径方向外側、と称し、径方向外側の反対側を適宜、径方向内側、と称する。
【0053】
実施形態において、軸方向と前後方向とは、一致する。軸方向一方側が前方とみなされてもよい。軸方向他方側が後方とみなされてもよい。
【0054】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
【0055】
<インパクト工具の概要>
図1は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す前方からの斜視図である。図2は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す側面図である。図3は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す断面図である。
【0056】
本実施形態において、インパクト工具1は、ねじ締め工具の一種であるインパクトドライバである。インパクト工具1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、出力アセンブリ4と、バッテリ装着部5と、モータ6と、ファン7と、コントローラ8と、トリガレバー9と、正逆転切換レバー10と、インタフェース部11と、モード切換スイッチ12と、ライト13とを備える。
【0057】
ハウジング2は、インパクト工具1の構成要素の少なくとも一部を収容する。ハウジング2は、合成樹脂製である。本実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。ハウジング2は、左ハウジング14と、左ハウジング14よりも右方に配置される右ハウジング15とを含む。左ハウジング14と右ハウジング15とは、複数のハウジングねじ16により固定される。
【0058】
ハウジング2は、モータ収容部17と、グリップ部18と、バッテリ保持部19とを有する。
【0059】
モータ収容部17は、モータ6を収容する。モータ収容部17は、出力アセンブリ4の少なくとも一部を収容する。モータ収容部17は、筒状である。
【0060】
グリップ部18は、作業者に握られる。グリップ部18は、モータ収容部17から下方に延びる。
【0061】
バッテリ保持部19は、バッテリ装着部5を介してバッテリパック20を保持する。バッテリ保持部19は、コントローラ8を収容する。バッテリ保持部19は、グリップ部18の下端部に接続される。
【0062】
リヤカバー3は、モータ収容部17の後端部の開口を覆う。リヤカバー3は、モータ収容部17よりも後方に配置される。リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、2本のねじによりモータ収容部17の後端部に固定される。リヤカバー3は、ファン7の少なくとも一部を収容する。
【0063】
モータ収容部17は、吸気口21を有する。リヤカバー3は、排気口22を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口21を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口22を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0064】
出力アセンブリ4は、モータ6よりも前方に配置される。出力アセンブリ4は、ハンマケース23と、ベアリングボックス24と、減速機構25と、スピンドル26と、スピンドルベアリング27と、打撃機構28と、弾性力調整機構29と、ハンマベアリング30と、工具保持シャフト31と、シャフトベアリング32と、可動アンビル33と、工具保持機構34とを有する。
【0065】
ハンマケース23は、金属製である。本実施形態において、ハンマケース23は、アルミニウム製である。ハンマケース23の少なくとも一部は、モータ収容部17よりも前方に配置される。ハンマケース23は、筒状である。ベアリングボックス24は、ハンマケース23の後端部に固定される。ベアリングボックス24及びハンマケース23の後部は、モータ収容部17の内側に配置される。ベアリングボックス24及びハンマケース23の後部は、左ハウジング14と右ハウジング15とに挟まれる。ベアリングボックス24及びハンマケース23のそれぞれは、モータ収容部17に固定される。
【0066】
減速機構25、スピンドル26、打撃機構28、可動アンビル33、スピンドルベアリング27、ハンマベアリング30、及びシャフトベアリング32は、ハンマケース23とベアリングボックス24とにより規定される出力アセンブリ4の内部空間に配置される。工具保持シャフト31の少なくとも一部は、出力アセンブリ4の内部空間に配置される。
【0067】
バッテリ装着部5には、バッテリパック20が装着される。バッテリ装着部5は、バッテリ保持部19の下部に配置される。バッテリパック20は、バッテリ装着部5に着脱可能である。バッテリパック20は、インパクト工具1の電源として機能する。バッテリパック20は、バッテリ保持部19の前方からバッテリ装着部5に挿入されることにより、バッテリ装着部5に装着される。バッテリパック20は、バッテリ装着部5から前方に抜去されることにより、バッテリ装着部5から外される。バッテリパック20は、二次電池を含む。本実施形態において、バッテリパック20は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部5に装着されることにより、バッテリパック20は、インパクト工具1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック20から供給される電力に基づいて駆動する。コントローラ8及びインタフェース部11のそれぞれは、バッテリパック20から供給される電力に基づいて作動する。
【0068】
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、バッテリパック20から供給される電力に基づいて駆動する電動モータである。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ35と、ロータ36とを有する。ステータ35は、モータ収容部17に支持される。ロータ36の少なくとも一部は、ステータ35の内側に配置される。ロータ36は、ステータ35に対して回転する。ロータ36は、前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転する。
【0069】
ステータ35は、ステータコア37と、前インシュレータ38と、後インシュレータ39と、コイル40とを有する。
【0070】
ステータコア37は、ロータ36よりも径方向外側に配置される。ステータコア37は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア37は、筒状である。ステータコア37は、コイル40を支持する複数のティースを有する。
【0071】
前インシュレータ38は、ステータコア37の前部に固定される。後インシュレータ39は、ステータコア37の後部に固定される。前インシュレータ38及び後インシュレータ39のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。前インシュレータ38は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。後インシュレータ39は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0072】
コイル40は、前インシュレータ38及び後インシュレータ39を介してステータコア37に装着される。コイル40は、複数配置される。コイル40は、前インシュレータ38及び後インシュレータ39を介してステータコア37のティースの周囲に配置される。コイル40とステータコア37とは、前インシュレータ38及び後インシュレータ39により電気的に絶縁される。複数のコイル40は、短絡部材を介して相互に接続される。
【0073】
ロータ36は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ36は、ロータコア41と、ロータシャフト42と、ロータ磁石43と、センサ磁石44とを有する。
【0074】
ロータコア41及びロータシャフト42のそれぞれは、鋼製である。ロータシャフト42は、ロータコア41に固定される。ロータコア41は、円筒状である。ロータシャフト42は、ロータコア41よりも径方向内側に配置される。ロータシャフト42の前部は、ロータコア41の前端面から前方に突出する。ロータシャフト42の後部は、ロータコア41の後端面から後方に突出する。
【0075】
ロータ磁石43は、ロータコア41に固定される。ロータ磁石43は、円筒状である。ロータ磁石43は、ロータコア41の周囲に配置される。
【0076】
センサ磁石44は、ロータコア41に固定される。センサ磁石44は、円環状である。センサ磁石44は、ロータコア41の前端面及びロータ磁石43の前端面に配置される。
【0077】
前インシュレータ38にセンサ基板45が取り付けられる。センサ基板45は、ねじにより前インシュレータ38に固定される。センサ基板45は、環状の回路基板と、回路基板に支持される磁気センサとを有する。センサ基板45の少なくとも一部は、センサ磁石44に対向する。磁気センサは、センサ磁石44の位置を検出することにより、ロータ36の回転方向の位置を検出する。
【0078】
ロータシャフト42の後部は、ロータベアリング46に回転可能に支持される。ロータシャフト42の前部は、ロータベアリング47に回転可能に支持される。ロータベアリング46は、リヤカバー3に保持される。ロータベアリング46は、ベアリングボックス24に保持される。ロータシャフト42の前端部は、ベアリングボックス24の開口を介して出力アセンブリ4の内部空間に配置される。
【0079】
ロータシャフト42の前端部にピニオンギヤ48が固定される。ピニオンギヤ48は、減速機構25の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト42は、ピニオンギヤ48を介して減速機構25に連結される。
【0080】
ファン7は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン7は、モータ6よりも後方に配置される。ファン7は、ロータベアリング46とステータ35との間に配置される。ファン7は、ロータ36の少なくとも一部に固定される。ファン7は、ブッシュ49を介してロータシャフト42の後部に固定される。ファン7は、ロータ36の回転により回転する。ロータシャフト42が回転することにより、ファン7は、ロータシャフト42と一緒に回転する。ファン7の回転により、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口21を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン7の回転により、排気口22を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0081】
コントローラ8は、モータ6を制御する制御信号を出力する。コントローラ8は、バッテリ保持部19に収容される。コントローラ8は、インパクト工具1の作業内容に基づいて、モータ6の制御モードを切り換える。モータ6の制御モードとは、モータ6の制御方法又は制御パターンをいう。コントローラ8は、複数の電子部品が実装された回路基板50と、回路基板50を収容するケース51とを含む。回路基板50に実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、トランジスタ、及び抵抗器が例示される。
【0082】
トリガレバー9は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガレバー9は、グリップ部18に設けられる。トリガレバー9は、グリップ部18の前部の上部から前方に突出する。トリガレバー9が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0083】
正逆転切換レバー10は、モータ6の回転方向を切り換えるために作業者に操作される。正逆転切換レバー10は、グリップ部18の上部に設けられる。正逆転切換レバー10が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル26の回転方向が切り換えられる。正逆転切換レバー10が中立位置に配置された場合、トリガレバー9を操作することができない。
【0084】
インタフェース部11は、作業者に操作される複数の操作ボタン52を有する。インタフェース部11は、バッテリ保持部19に設けられる。インタフェース部11は、グリップ部18よりも前方において、バッテリ保持部19の上面に設けられる。作業者により操作ボタン52が操作されることにより、モータ6の動作モードが切り換えられる。
【0085】
モード切換スイッチ12は、モータ6の制御モードを切り換えるために作業者に操作される。モード切換スイッチ12は、トリガレバー9よりも上方に配置される。
【0086】
ライト13は、照明光を射出する。ライト13は、工具保持シャフト31の周辺及び工具保持シャフト31の前方を照明光で照明する。
【0087】
<出力アセンブリ>
図4は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す前方からの斜視図である。図5は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す縦断面図である。図6は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す横断面図である。図7は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す断面図であり、図5のC-C線断面矢視図に相当する。図8は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す断面図であり、図5のD-D線断面矢視図に相当する。図9は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す断面図であり、図5のE-E線断面矢視図に相当する。図10は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す断面図であり、図5のF-F線断面矢視図に相当する。図11は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す断面図であり、図5のG-G線断面矢視図に相当する。図12は、本実施形態に係る出力アセンブリ4を示す分解斜視図である。
【0088】
出力アセンブリ4は、ハンマケース23と、ベアリングボックス24と、減速機構25と、スピンドル26と、スピンドルベアリング27と、打撃機構28と、弾性力調整機構29と、ハンマベアリング30と、工具保持シャフト31と、シャフトベアリング32と、可動アンビル33と、工具保持機構34とを有する。
【0089】
ロータ36、スピンドル26、及び工具保持シャフト31のそれぞれは、回転軸AXを中心に回転する。ロータ36の回転軸とスピンドル26の回転軸と工具保持シャフト31の回転軸とは、一致する。スピンドル26及び工具保持シャフト31のそれぞれは、モータ6が発生する回転力により回転する。
【0090】
(ハンマケース)
ハンマケース23は、大筒部53と、小筒部54を有する。大筒部53及び小筒部54のそれぞれは、回転軸AXを囲むように配置される。小筒部54は、大筒部53よりも前方に配置される。大筒部53の内径は、小筒部54の内径よりも大きい。大筒部53の外径は、小筒部54の外径よりも大きい。
【0091】
ベアリングボックス24は、ハンマケース23の後端部に固定される。ベアリングボックス24は、リング部55と、後板部56と、凸部57とを有する。リング部55は、回転軸AXを囲むように配置される。リング部55は、大筒部53の後端部の内側に挿入される。後板部56は、リング部55の後端部に接続される。後板部56の中央部に開口が設けられる。凸部57は、後板部56の後面に設けられる。凸部57は、後板部56の後面から後方に突出する。凸部57は、後板部56の開口を囲むように配置される。後板部56及び凸部57のそれぞれは、モータ収容部17に接続される。
【0092】
(減速機構)
減速機構25は、ロータシャフト42とスピンドル26とを連結する。減速機構25は、ロータ36の回転をスピンドル26に伝達する。減速機構25は、ロータシャフト42の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル26を回転させる。減速機構25は、遊星歯車機構を含む。
【0093】
減速機構25は、ピニオンギヤ48の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ58と、複数のプラネタリギヤ58のそれぞれを支持するピン59と、複数のプラネタリギヤ58の周囲に配置されるインターナルギヤ60とを有する。複数のプラネタリギヤ58のそれぞれは、ピニオンギヤ48に噛み合う。プラネタリギヤ58は、ピン59を介してスピンドル26に回転可能に支持される。スピンドル26は、プラネタリギヤ58により回転される。インターナルギヤ60は、プラネタリギヤ58に噛み合う内歯を有する。
【0094】
インターナルギヤ60は、ハンマケース23及びベアリングボックス24のそれぞれに固定される。インターナルギヤ60の後端部とベアリングボックス24との境界にOリング61が配置される。インターナルギヤ60の外面に凸部62が設けられる。凸部62は、インターナルギヤ60の外周面から径方向外側に突出する。凸部62は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。凸部62は、ハンマケース23の凹部63に配置される。凸部62が凹部63に配置されることにより、ハンマケース23とインターナルギヤ60との相対回転が抑制される。インターナルギヤ60は、ハンマケース23に対して常に回転不可能である。
【0095】
モータ6の駆動によりロータシャフト42が回転すると、ピニオンギヤ48が回転し、プラネタリギヤ58がピニオンギヤ48の周囲を公転する。プラネタリギヤ58は、インターナルギヤ60の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ58の公転により、ピン59を介してプラネタリギヤ58に接続されているスピンドル26は、ロータシャフト42の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0096】
(スピンドル)
図13は、本実施形態に係る出力アセンブリ4の要部を示す前方からの分解斜視図である。図14は、本実施形態に係る出力アセンブリ4の要部を示す後方からの分解斜視図である。図15は、本実施形態に係るスピンドル26を示す前方からの斜視図である。図16は、本実施形態に係るスピンドル26を示す側面図である。図17は、本実施形態に係るスピンドル26を前方から見た図である。
【0097】
スピンドル26は、モータ6の回転力により回転する。スピンドル26の少なくとも一部は、減速機構25よりも前方に配置される。スピンドル26は、工具保持シャフト31よりも後方に配置される。スピンドル26は、ロータ36により回転する。スピンドル26は、減速機構25により伝達されたロータ36の回転力により回転する。スピンドル26は、モータ6の回転力を、打撃機構28を介して可動アンビル33に伝達する。
【0098】
スピンドル26は、スピンドルシャフト部64と、フランジ部65と、ピン支持部66と、連結部67と、凸部68とを有する。
【0099】
スピンドルシャフト部64は、軸方向に延びる。スピンドルシャフト部64は、回転軸AXを囲むように配置される。スピンドルシャフト部64の外周面の前端部にスピンドル突起部69が設けられる。スピンドル突起部69は、スピンドルシャフト部64の外周面の前端部から径方向外側に突出する。スピンドル突起部69は、回転軸AXの周囲に2つ設けられる。2つのスピンドル突起部69は、回転軸AXを挟むように配置される。以下の説明において、一方のスピンドル突起部69を適宜、第1スピンドル突起部691、と称し、他方のスピンドル突起部69を適宜、第2スピンドル突起部692、と称する。
【0100】
スピンドルシャフト部64の外周面にボール溝70が形成される。ボール溝70は、スピンドル突起部69よりも後方に配置される。ボール溝70は、回転軸AXを囲むように形成される。ボール溝70は、スピンドルシャフト部64の外周面から径方向内側に凹むように形成される。
【0101】
フランジ部65は、スピンドルシャフト部64の後部に設けられる。フランジ部65は、スピンドルシャフト部64の後部から径方向外側に突出する。フランジ部65の前面にスピンドル溝71が設けられる。スピンドル溝71は、周方向に複数設けられる。本実施形態において、スピンドル溝71は、周方向に3つ設けられる。
【0102】
ピン支持部66は、フランジ部65よりも後方に配置される。ピン支持部66は、円環状である。フランジ部65の一部とピン支持部66の一部とは、連結部67を介して連結される。凸部68は、ピン支持部66から後方に突出する。
【0103】
プラネタリギヤ58は、フランジ部65とピン支持部66との間に配置される。ピン59の前端部は、フランジ部65に設けられた支持凹部72に配置される。ピン59の後端部は、ピン支持部66に設けられた支持孔73に配置される。プラネタリギヤ58は、ピン59を介してフランジ部65及びピン支持部66のそれぞれに回転可能に支持される。
【0104】
凸部68は、スピンドルベアリング27の内側に配置される。凸部68は、スピンドルベアリング27に回転可能に支持される。スピンドルベアリング27の内輪の前端部に対向する位置にワッシャ74が配置される。
【0105】
(打撃機構)
打撃機構28は、モータ6により駆動される。モータ6の回転力は、減速機構25及びスピンドル26を介して打撃機構28に伝達される。打撃機構28は、モータ6により回転するスピンドル26の回転力に基づいて、可動アンビル33を回転方向に打撃する。
【0106】
打撃機構28は、ハンマ75と、カムリング76と、ボール77と、弾性部材78と、ワッシャ79と、回転ボール80とを有する。
【0107】
ハンマ75は、可動アンビル33を回転方向に打撃する。ハンマ75は、可動アンビル33を介して工具保持シャフト31を回転方向に打撃する。ハンマ75は、スピンドル26に支持される。ハンマ75は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置される。ハンマ75は、スピンドルシャフト部64に回転可能に支持される。ハンマ75は、減速機構25よりも前方に配置される。
【0108】
ハンマ75は、ハンマケース23に対して軸方向に移動しない。なお、実質的には、ハンマ75は、例えばガタつきに起因して、ハンマケース23に対して軸方向に僅かに移動する可能性がある。ハンマ75は、スピンドル26に対して相対回転することができる。ハンマ75は、スピンドルシャフト部64に支持された状態で、スピンドルシャフト部64に対して相対回転することができる。ハンマ75は、スピンドル26に対して軸方向に変位せずに、可動アンビル33を回転方向に打撃する。
【0109】
ハンマ75は、後側外筒部81と、前側外筒部82と、内筒部83とを有する。後側外筒部81、前側外筒部82、及び内筒部83のそれぞれは、回転軸AXを囲むように配置される。後側外筒部81と前側外筒部82と内筒部83とは、一体である。
【0110】
前側外筒部82は、後側外筒部81よりも前方に配置される。後側外筒部81の前端部は、前側外筒部82の後端部に接続される。後側外筒部81の外径は、前側外筒部82の外径よりも大きい。後側外筒部81の内径は、前側外筒部82の内径よりも大きい。
【0111】
内筒部83は、スピンドルシャフト部64に支持される。内筒部83は、後側外筒部81及び前側外筒部82よりも径方向内側に配置される。内筒部83の前端部は、前側外筒部82の後端部に接続される。前側外筒部82は、内筒部83よりも径方向外側且つ前側に配置される。後側外筒部81は、内筒部83及び前側外筒部82よりも径方向外側に配置され且つ前側外筒部82よりも後方に配置される。
【0112】
前側外筒部82の内周面にハンマ突起部84が設けられる。ハンマ突起部84は、前側外筒部82の内周面から径方向内側に突出する。ハンマ突起部84は、回転軸AXの周囲に2つ設けられる。2つのハンマ突起部84は、回転軸AXを挟むように配置される。2つのハンマ突起部84は、相互に対向するように配置される。以下の説明において、一方のハンマ突起部84を適宜、第1ハンマ突起部841、と称し、他方のハンマ突起部84を適宜、第2ハンマ突起部842、と称する。
【0113】
内筒部83は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置される。内筒部83の内周面とスピンドルシャフト部64の外周面とは対向する。内筒部83の内周面にボール溝85が形成される。ボール溝85は、回転軸AXを囲むように形成される。ボール溝85は、内筒部83の内周面から径方向外側に凹むように形成される。
【0114】
後側外筒部81の内周面にガイド溝86が設けられる。ガイド溝86は、後側外筒部81の内周面において軸方向に延びるように形成される。ガイド溝86は、後側外筒部81の後端部から前方に延びるように形成される。ガイド溝86は、ハンマ75の回転軸AXの周囲に間隔をあけて複数設けられる。本実施形態において、ガイド溝86は、回転軸AXの周囲に6つ設けられる。6つのガイド溝86は、周方向に等間隔で設けられる。
【0115】
図18は、本実施形態に係るカムリング76を示す前方からの斜視図である。図19は、本実施形態に係るカムリング76を後方から見た図である。図20は、本実施形態に係るカムリング76を示す断面図である。
【0116】
カムリング76は、ボール77を介してフランジ部65と相対回転可能に連結される。カムリング76は、ハンマ75と軸方向に相対移動可能且つ相対回転不可能に連結される。カムリング76は、フランジ部65の前面に対向するように配置される。カムリング76は、ハンマの後部に連結される。
【0117】
カムリング76は、後側外筒部81の内側に配置される。カムリング76とハンマ75とは、軸方向に相対移動することができる。上述のように、ハンマ75は、ハンマケース23に対して軸方向に移動しない。なお、実質的には、ハンマ75は、例えばガタつきに起因して、ハンマケース23に対して軸方向に僅かに移動する可能性がある。カムリング76は、ハンマ75の後側外筒部81の内側において、ハンマケース23に対して軸方向に移動する。
【0118】
カムリング76の外周面にカムスライド部87が設けられる。カムスライド部87は、カムリング76の外周面から径方向外側に突出する。カムスライド部87は、カムリング76の回転軸AXの周囲に間隔をあけて複数設けられる。カムスライド部87は、回転軸AXの周囲に6つ設けられる。6つのカムスライド部87は、周方向に等間隔で設けられる。カムスライド部87は、ガイド溝86に配置される。1つのカムスライド部87が1つのガイド溝86に配置される。カムスライド部87は、ガイド溝86を軸方向に移動する。カムリング76は、カムスライド部87を介してガイド溝86にガイドされながら、ハンマ75に対して軸方向に移動することができる。
【0119】
ハンマ75が有するガイド溝86は、カムリング76を軸方向にガイドし、ハンマ75とカムリング76との相対回転を抑制するガイド部として機能する。
【0120】
カムリング76の内周面にカム溝88が設けられる。カム溝88は、周方向に複数設けられる。本実施形態において、カム溝88は、周方向に3つ設けられる。
【0121】
カムリング76は、フランジ部65よりも前方に配置される。カムリング76は、ハンマ75の後側外筒部81の内側に配置された状態で、フランジ部65の前面に対向するように配置される。
【0122】
ボール77は、スピンドル26とカムリング76との間に配置される。ボール77は、フランジ部65とカムリング76との間に配置される。スピンドル26のフランジ部65とカムリング76とは、ボール77を介して相対回転することができる。
【0123】
ボール77は、鉄鋼のような金属製である。フランジ部65は、ボール77の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝71を有する。スピンドル溝71は、フランジ部65の前面の一部に設けられる。回転軸AXに直交する面内において、スピンドル溝71は、円弧状である。カムリング76は、ボール77の少なくとも一部が配置されるカム溝88を有する。カム溝88は、カムリング76の内周面の一部に設けられる。回転軸AXに直交する面内において、カム溝88は、円弧状である。ボール77は、スピンドル溝71とカム溝88との間に配置される。上述のように、スピンドル溝71は、3つ設けられる。カム溝88は、3つ設けられる。ボール77は、3つ設けられる。1つのボール77が、1つのスピンドル溝71と1つのカム溝88との間に配置される。ボール77は、スピンドル溝71の内側及びカム溝88の内側のそれぞれを転がることができる。カムリング76は、ボール77に伴って移動可能である。
【0124】
スピンドル溝71の少なくとも一部は、周方向一方側に向かって後方に傾斜する。スピンドル溝71の少なくとも一部は、周方向他方側に向かって後方に傾斜してもよい。
【0125】
カム溝88の少なくとも一部は、周方向一方側に向かって後方に傾斜する。カム溝88の少なくとも一部は、周方向他方側に向かって後方に傾斜してもよい。
【0126】
本実施形態において、複数のスピンドル溝71のそれぞれは、第1部分711と、第2部分712とを有する。第1部分711と第2部分712とは、周方向において異なる位置に規定される。第1部分711と第2部分712との境界は、周方向におけるスピンドル溝71の中央部に規定される。第1部分711は、スピンドル溝71の中央部から周方向一方側に向かって後方に傾斜する。第2部分712は、スピンドル溝71の中央部から周方向他方側に向かって後方に傾斜する。第1部分711は、周方向におけるスピンドル溝71の中央部と一端部との間に規定される。第2部分712は、周方向におけるスピンドル溝71の中央部と他端部との間に規定される。
【0127】
本実施形態において、複数のカム溝88のそれぞれは、第3部分881と、第4部分882とを有する。第3部分881と第4部分882とは、周方向において異なる位置に規定される。第3部分881と第4部分882との境界は、周方向におけるカム溝88の中央部に規定される。第3部分881は、カム溝88の中央部から周方向一方側に向かって後方に傾斜する。第4部分882は、カム溝88の中央部から周方向他方側に向かって後方に傾斜する。第3部分881は、周方向におけるカム溝88の中央部と一端部との間に規定される。第4部分882は、周方向におけるカム溝88の中央部と他端部との間に規定される。
【0128】
フランジ部65とカムリング76との相対回転において、ボール77がスピンドル溝71の第1部分711とカム溝88の第3部分881との間をスピンドル溝71の中央部から第1部分711の周方向一方側の端部に向かって第1部分711を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、前方に移動する。
【0129】
また、フランジ部65とカムリング76との相対回転において、ボール77がスピンドル溝71の第1部分711とカム溝88の第3部分881との間を第1部分711の周方向一方側の端部からスピンドル溝71の中央部に向かって第1部分711を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、後方に移動する。
【0130】
フランジ部65とカムリング76との相対回転において、ボール77がスピンドル溝71の第2部分712とカム溝88の第4部分882との間をスピンドル溝71の中央部から第2部分712の周方向他方側の端部に向かって第2部分712を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、前方に移動する。
【0131】
また、フランジ部65とカムリング76との相対回転において、ボール77がスピンドル溝71の第2部分712とカム溝88の第4部分882との間を第2部分712の周方向他方側の端部からスピンドル溝71の中央部に向かって第2部分712を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、後方に移動する。
【0132】
スピンドル26のフランジ部65とカムリング76とは、スピンドル溝71及びカム溝88により規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0133】
カムリング76は、ボール77を介してスピンドル26のフランジ部65に連結される。カムリング76は、モータ6により回転されるスピンドル26の回転力に基づいて、スピンドル26と一緒に回転することができる。カムリング76は、回転軸AXを中心に回転する。
【0134】
弾性部材78は、カムリング76を後方に移動させる弾性力を常時発生する。軸方向において、弾性部材78は、ハンマ75とカムリング76との間に配置される。弾性部材78の少なくとも一部は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置される。本実施形態において、ハンマ75は、ハンマ75の後面から前方に窪むように形成された凹部89を有する。凹部89は、後側外筒部81の内周面と、内筒部83の外周面と、フランジ部65及びカムリング76よりも前方に配置される支持面90とにより規定される。支持面90は、後側外筒部81の内周面の前端部と内筒部83の外周面の前端部とを結ぶように配置される。支持面90は、円環状である。弾性部材78の少なくとも一部は、凹部89の内側に配置される。軸方向において、弾性部材78は、カムリング76の前面とフランジ部65及びカムリング76よりも前方に配置されたハンマ75の支持面90との間に配置される。
【0135】
本実施形態において、弾性部材78の後部は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置される。弾性部材78の前部は、凹部89の内側において内筒部83の周囲に配置される。本実施形態において、弾性部材78は、複数の皿ばね91を含む。複数の皿ばね91は、軸方向に複数配置される。本実施形態において、皿ばね91は、軸方向に4枚配置される。皿ばね91は、円環状である。本実施形態において、一部の皿ばね91は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置され、一部の皿ばね91は、内筒部83の周囲に配置される。
【0136】
本実施形態において、弾性部材78のばね定数は、100[N/mm]以上である。弾性部材78のばね定数の上限値は特に限定されないが、本実施形態においては、弾性部材78のばね定数は、10000[N/mm]以下である。
【0137】
ハンマ75は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置される。カムリング76は、フランジ部65よりも前方に配置され、ボール77を介してフランジ部65に連結される。カムリング76は、カムスライド部87及びガイド溝86を介してハンマ75の後部に連結される。スピンドルシャフト部64とハンマ75とカムリング76とにより、閉鎖空間が規定される。閉鎖空間は、スピンドルシャフト部64の外周面と、内筒部83の外周面と、支持面90と、後側外筒部81の内周面と、カムリング76の前面とにより規定される。弾性部材78は、閉鎖空間に配置される。
【0138】
ワッシャ79は、弾性部材78の前端部を支持する。ワッシャ79は、内筒部83よりも径方向外側に配置される。ワッシャ79は、円環状である。ワッシャ79は、内筒部83を囲むように配置される。ワッシャ79は、凹部89の内側に配置される。ワッシャ79は、凹部89の内側においてハンマ75の少なくとも一部に支持される。本実施形態において、ワッシャ79は、支持面90に設けられた円環溝92に配置される。
【0139】
弾性部材78の後端部は、カムリング76の前面に接触する。弾性部材78の前端部は、ワッシャ79に接触する。弾性部材78の前端部は、ワッシャ79を介してハンマ75に接続される。本実施形態において、弾性部材78の後端部とは、軸方向に配置される複数の皿ばね91のうち最も後方に配置される皿ばね91の後端部をいう。弾性部材78の前端部とは、軸方向に配置される複数の皿ばね91のうち最も前方に配置される皿ばね91の前端部をいう。
【0140】
回転ボール80は、スピンドルシャフト部64とハンマ75との間に配置される。回転ボール80は、ボール溝70とボール溝85と間に配置される。回転ボール80の一部は、ボール溝70に配置され、回転ボール80の一部は、ボール溝85に配置される。回転ボール80は、スピンドル26の回転軸AXの周囲に複数配置される。上述のように、ハンマ75は、スピンドルシャフト部64に対して相対回転することができる。回転ボール80は、ハンマ75のベアリングとして機能する。回転ボール80により、ハンマ75とスピンドルシャフト部64とが円滑に相対回転することができる。
【0141】
(弾性力調整機構)
弾性力調整機構29は、モータ6が起動する前の初期状態において、弾性部材78の弾性力を調整する。弾性力調整機構29は、初期状態における弾性部材78の圧縮量を調整することにより、弾性部材78の弾性力を調整する。
【0142】
弾性部材78の後端部は、カムリング76を介してフランジ部65に支持されている。弾性力調整機構29は、弾性部材78の前端部の位置を移動することにより、弾性部材78の圧縮量を調整する。
【0143】
弾性力調整機構29は、ワッシャ79に接触するねじ93を含む。ねじ93は、ワッシャ79を介して弾性部材78の前端部に接続される。ねじ93は、ハンマ75に形成されたねじ孔94に配置される。ねじ孔94は、後側外筒部81の前端面95と支持面90とを貫通するように形成される。回転軸AXに直交する面内において、前端面95は、円環状である。前端面95は、前方を向く。ねじ孔94は、ハンマ75の回転軸AXの周囲に間隔をあけて複数形成される。ねじ93は、複数のねじ孔94のそれぞれに1つずつ配置される。本実施形態において、ねじ孔94は、回転軸AXの周囲に間隔をあけて6つ形成される。ねじ93は、6つのねじ孔94のそれぞれに1つずつ配置される。
【0144】
ねじ93の後端部は、ワッシャ79の前面に接触する。ねじ93の回転により、弾性部材78の圧縮量が調整される。ねじ93が一方向に回転することにより、ハンマ75に対してねじ93が後方に移動する。ねじ93が後方に移動することにより、ワッシャ79を介して弾性部材78の前端部が後方に移動する。弾性部材78の後端部がカムリング76を介してフランジ部65に支持されている状態で、弾性部材78の前端部が後方に移動することにより、弾性部材78が圧縮される。ねじ93が他方向に回転することにより、ハンマ75に対してねじ93が前方に移動する。弾性部材78の後端部がカムリング76を介してフランジ部65に支持されている状態で、弾性部材78の前端部が前方に移動することにより、弾性部材78が伸長される。
【0145】
弾性部材78の圧縮量の調整は、インパクト工具1の組立作業において実施される。スピンドルシャフト部64とハンマ75とカムリング76とにより規定される閉鎖空間に弾性部材78が配置されるように、スピンドル26とハンマ75とカムリング76とが連結された後、前端面95よりも前方からねじ孔94にねじ締め工具が挿入される。ねじ締め工具の先端部は、ねじ孔94を介してねじ93の工具穴に挿入される。組立者は、ねじ締め工具を介してねじ93を回転させることにより、弾性部材78の圧縮量を調整することができる。また、複数のねじ93のそれぞれの軸方向の位置が調整されることにより、スピンドル26に対する弾性部材78の傾斜角度が調整される。
【0146】
(ハンマベアリング)
ハンマベアリング30は、ハンマ75を回転可能に支持する。ハンマベアリング30は、ハンマケース23に保持される。ハンマベアリング30は、ハンマ75の周囲に配置される。本実施形態において、ハンマベアリング30は、ハンマ75の前端部を回転可能に支持する。本実施形態において、ハンマベアリング30は、前側外筒部82の周囲に配置される。ハンマベアリング30の後端部の少なくとも一部は、後側外筒部81の前端面95に接触する。ハンマケース23は、ハンマベアリング30の前端部に対向する対向面96を有する。対向面96は、後方を向く。ハンマベアリング30の前端部とハンマケース23の対向面96とは、間隙を介して対向する。ハンマベアリング30は、ボールベアリングである。ハンマベアリング30の外輪は、ハンマケース23の大筒部53の内周面に接触する。ハンマベアリング30の内輪は、ハンマ75の前側外筒部82の外周面に接触する。
【0147】
本実施形態において、ハンマベアリング30は、ねじ孔94の前端部を覆うように配置される。インパクト工具1の組立作業においては、ねじ締め工具によりねじ93が回転されて弾性部材78の圧縮量が調整された後、ハンマベアリング30が前側外筒部82の周囲に配置される。
【0148】
(工具保持シャフト)
図21は、本実施形態に係る工具保持シャフト31を示す前方からの斜視図である。図22は、本実施形態に係る工具保持シャフト31を示す断面図である。
【0149】
工具保持シャフト31は、ロータ36の回転力に基づいて回転するインパクト工具1の出力部である。工具保持シャフト31の少なくとも一部は、スピンドル26よりも前方に配置される。工具保持シャフト31は、工具保持部97と、工具保持部97よりも後方に配置されるアンビル部98とを有する。工具保持部97は、前後方向に延びるロッド状である。アンビル部98は、工具保持部97の後部に接続される。
【0150】
工具保持部97は、先端工具を保持する。工具保持部97は、先端工具が挿入される工具孔99を有する。工具孔99は、工具保持部97の前端面から後方に延びるように形成される。先端工具は、工具保持シャフト31に装着される。
【0151】
アンビル部98は、工具保持部97よりも後方に配置される。アンビル部98は、工具保持部97の後部に接続される。アンビル部98は、回転軸AXを囲むように配置される。アンビル部98は、スピンドルシャフト部64の前端部が挿入される凹部100を有する。スピンドル突起部69を含むスピンドルシャフト部64の前端部は、凹部100の内側に配置される。凹部100は、アンビル部98の後端面から前方に窪むように形成される。凹部100は、アンビル部98の内周面101と、アンビル部98の内周面101の前端部に結ばれる対向面102とにより規定される。対向面102は、後方を向く平坦面である。
【0152】
アンビル部98は、アンビル部98の外周面103とアンビル部98の内周面101とを貫通するアンビル孔104を有する。アンビル孔104は、径方向に延びるように形成される。アンビル孔104は、回転軸AXの周囲に2つ設けられる。2つのアンビル孔104は、回転軸AXを挟むように配置される。
【0153】
本実施形態において、スピンドルシャフト部64の前端部に支持ボール106が支持される。スピンドルシャフト部64の前端面に支持凹部105が設けられる。支持凹部105の内面は、半球面状である。支持ボール106は、支持凹部105に配置される。支持ボール106は、対向面102に接触する。
【0154】
工具保持シャフト31は、シャフトベアリング32に回転可能に支持される。シャフトベアリング32は、工具保持部97の周囲に配置される。シャフトベアリング32は、ハンマケース23の小筒部54の内側に配置される。シャフトベアリング32は、ハンマケース23の小筒部54に保持される。シャフトベアリング32は、工具保持部97の前部を回転可能に支持する。本実施形態において、シャフトベアリング32は、軸方向に2つ配置される。シャフトベアリング32と後部保持部との間にOリング107が配置される。
【0155】
シャフトベアリング32よりも後方に、シャフトベアリング32から後方に抜けることを抑制する抑制部材108が配置される。抑制部材108は、小筒部54の内周面に形成された溝109に配置される。抑制部材108として、スナップリング又はCリングが例示される。抑制部材108は、シャフトベアリング32の後端面に接触するように配置される。抑制部材108により、シャフトベアリング32が小筒部54から後方に抜けることが抑制される。
【0156】
(可動アンビル)
可動アンビル33は、工具保持シャフト31に移動可能に支持される。本実施形態において、可動アンビル33は、工具保持シャフト31に対して径方向のみに移動する。可動アンビル33は、工具保持シャフト31に対して軸方向及び径方向には移動しない。
【0157】
可動アンビル33は、アンビル部98に移動可能に支持される。可動アンビル33は、アンビル孔104に配置される。可動アンビル33は、2つのアンビル孔104のそれぞれに1つずつ配置される。可動アンビル33は、円柱状(ピン状)の部材である。可動アンビル33は、可動アンビル33の中心軸と工具保持シャフト31の回転軸AXとが平行になるように、アンビル孔104に配置される。以下の説明において、一方の可動アンビル33を適宜、第1可動アンビル331、と称し、他方の可動アンビル33を適宜、第2可動アンビル332、と称する。
【0158】
可動アンビル33は、アンビル孔104にガイドされながら径方向に移動することができる。アンビル孔104の内面は、可動アンビル33を径方向にガイドするガイド面として機能する。アンビル部98の凹部100にスピンドルシャフト部64の前端部が配置される。スピンドルシャフト部64の前端部にスピンドル突起部69が配置される。スピンドル突起部69が可動アンビル33に接触した場合、可動アンビル33は、径方向外側に移動する。スピンドル突起部69が可動アンビル33から離れた場合、可動アンビル33は、径方向内側に移動する。
【0159】
可動アンビル33は、可動アンビル33の少なくとも一部が工具保持シャフト31のアンビル部98の外周面103から径方向外側に突出する第1状態と、可動アンビル33が工具保持シャフト31のアンビル部98の外周面103よりも径方向内側に配置される第2状態とに変化するように移動する。スピンドル26の回転において、スピンドル突起部69と可動アンビル33とが接触することにより、可動アンビル33が第2状態から第1状態に変化する。すなわち、スピンドル突起部69が可動アンビル33に接触した場合、可動アンビル33の少なくとも一部は、アンビル部98の外周面103よりも径方向外側に配置される。
【0160】
可動アンビル33が第1状態において、ハンマ75のハンマ突起部84は、可動アンビル33に接触可能である。ハンマ75は、可動アンビル33が第1状態において可動アンビル33を打撃する。可動アンビル33が第2状態において、ハンマ75のハンマ突起部84は、可動アンビル33に接触不可能である。ハンマ75は、可動アンビル33が第2状態においてスピンドルシャフト部64の周囲を回転する。
【0161】
(工具保持機構)
工具保持機構34は、ハンマケース23よりも前方において、工具保持部97の周囲に配置される。工具保持機構34は、工具保持部97の工具孔99に挿入された先端工具を保持する。工具保持機構34は、先端工具を着脱可能である。
【0162】
工具保持機構34は、保持ボール110と、リーフスプリング111と、スリーブ112と、コイルスプリング113と、位置決め部材114とを備える。
【0163】
工具保持部97は、保持ボール110を支持する支持凹部115を有する。支持凹部115は、工具保持部97の外面に形成される。本実施形態において、支持凹部115は、工具保持部97に2つ形成される。
【0164】
保持ボール110は、工具保持部97に移動可能に支持される。保持ボール110は、支持凹部115に配置される。保持ボール110は、1つの支持凹部115に1つ配置される。
【0165】
工具保持部97に、支持凹部115の内面と工具孔99の内面とを結ぶ貫通孔が形成される。保持ボール110の直径は、径方向において貫通孔の最も内側の部分における直径よりも小さい。保持ボール110が支持凹部115に支持された状態で、保持ボール110の少なくとも一部を介して、工具孔99の内側に配置される。保持ボール110は、工具孔99に挿入された先端工具を固定することができる。保持ボール110は、先端工具を固定する係合位置と先端工具の固定を解除する解除位置とに移動可能である。
【0166】
リーフスプリング111は、保持ボール110を係合位置に移動させる弾性力を発生する。リーフスプリング111は、工具保持部97の周囲に配置される。リーフスプリング111は、保持ボール110を前方に移動させる弾性力を発生する。
【0167】
スリーブ112は、円筒状の部材である。スリーブ112は、工具保持部97の周囲に配置される。スリーブ112は、工具保持部97の周囲において軸方向に移動可能である。スリーブ112は、係合位置に配置されている保持ボール110が係合位置から脱出することを阻止することができる。スリーブ112は、軸方向に移動されることにより、保持ボール110を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させることができる。
【0168】
スリーブ112は、工具保持部97の周囲において、保持ボール110の径方向外側への移動を阻止する阻止位置と径方向外側への移動を許容する許容位置とに移動可能である。
【0169】
スリーブ112が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されている保持ボール110が径方向外側に移動することが抑制される。すなわち、スリーブ112が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されている保持ボール110が係合位置から脱出することが阻止される。スリーブ112が阻止位置に配置されることにより、先端工具が保持ボール110により固定された状態が維持される。
【0170】
スリーブ112が許容位置に移動されることにより、係合位置に配置されている保持ボール110が径方向外側に移動することが許容される。スリーブ112は、許容位置に移動されることにより、保持ボール110を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させる。すなわち、スリーブ112が許容位置に配置されることにより、係合位置に配置されている保持ボール110が係合位置から脱出することが許容される。スリーブ112が許容位置に配置されることにより、先端工具が保持ボール110により固定された状態が解除可能になる。
【0171】
コイルスプリング113は、スリーブ112が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。コイルスプリング113は、工具保持部97の周囲に配置される。阻止位置は、許容位置よりも後方に規定される。コイルスプリング113は、スリーブ112を後方に移動させる弾性力を発生する。
【0172】
位置決め部材114は、工具保持部97の外面に固定されたリング状の部材である。位置決め部材114は、スリーブ112の後端部に対向可能な位置に固定される。位置決め部材114は、スリーブ112を阻止位置に位置決めする。コイルスプリング113から後方に移動する弾性力を付与されているスリーブ112は、位置決め部材114に接触することにより、阻止位置に位置決めされる。
【0173】
<インパクト工具の動作>
次に、インパクト工具1の動作について説明する。図23から図32のそれぞれは、本実施形態に係る出力アセンブリ4の動作を示す断面図である。図23図25図27図29、及び図31のそれぞれは、図5に示した出力アセンブリ4のC-C線断面矢視図に相当する。図24図26図28図30、及び図32のそれぞれは、図5に示した出力アセンブリ4のG-G線断面矢視図に相当する。
【0174】
本実施形態において、スピンドル突起部69は、第1スピンドル突起部691と、第2スピンドル突起部692とを含む。ハンマ突起部84は、第1ハンマ突起部841と、第2ハンマ突起部842とを含む。可動アンビル33は、第1可動アンビル331と、第2可動アンビル332とを含む。
【0175】
作業対象にねじ締め作業を実施するとき、ねじ締め作業に使用される先端工具(ドライバビット)が、工具保持シャフト31の工具孔99に挿入される。工具孔99に挿入された先端工具は、工具保持機構34により保持される。先端工具が工具保持シャフト31に装着された後、作業者は、グリップ部18を例えば右手で握ってトリガレバー9を右手の人差し指で引き操作する。トリガレバー9が引き操作されると、バッテリパック20からモータ6に電力が供給され、モータ6が起動するとともに、ライトが点灯する。モータ6の起動により、ロータ36のロータシャフト42が回転する。ロータシャフト42が回転すると、ロータシャフト42の回転力がピニオンギヤ48を介してプラネタリギヤ58に伝達される。プラネタリギヤ58は、インターナルギヤ60の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ48の周囲を公転する。プラネタリギヤ58は、ピンを介してスピンドル26に回転可能に支持される。プラネタリギヤ58の公転により、スピンドル26は、ロータシャフト42の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0176】
ねじ締め作業において、工具保持シャフト31は、正転方向に回転する。また、ねじ締め作業において、工具保持シャフト31には、逆転方向の負荷が掛かる。
【0177】
図23及び図24のそれぞれは、工具保持シャフト31に掛かる負荷が低い状態で回転している低負荷状態の出力アセンブリ4の断面図を示す。
【0178】
図23に示すように、低負荷状態においては、スピンドル突起部69と可動アンビル33とが接触し、可動アンビル33とハンマ突起部84とが接触する。また、スピンドル突起部69と可動アンビル33とが接触し、可動アンビル33とハンマ突起部84とが接触する。
【0179】
低負荷状態においては、可動アンビル33は、スピンドル突起部69との接触により径方向外側に移動する。可動アンビル33の少なくとも一部は、アンビル部98の外周面よりも径方向外側に配置される。可動アンビル33の少なくとも一部がアンビル部98の外周面よりも径方向外側に配置されるので、低負荷状態においては、ハンマ突起部84は、可動アンビル33の少なくとも一部に接触する。
【0180】
低負荷状態においては、可動アンビル33のくさび効果により、可動アンビル33がスピンドル突起部69とハンマ突起部84との間を通過することができず、スピンドル26とハンマ75と工具保持シャフト31との相対回転が阻止される。工具保持シャフト31は、可動アンビル33を介してハンマ75及びスピンドル26と一緒に回転する。
【0181】
カムリング76は、ガイド溝86及びカムスライド部87を介してハンマ75に連結されている。また、カムリング76は、弾性部材78の弾性力により、スピンドル26のフランジ部65に押し付けられている。そのため、ハンマ75とスピンドル26とが相対回転しない低負荷状態においては、カムリング76は、スピンドル26及びハンマ75と一緒に回転する。すなわち、低負荷状態においては、スピンドル26とハンマ75と工具保持シャフト31とカムリング76とは、一緒に回転する。
【0182】
図24に示すように、低負荷状態においては、ボール77がスピンドル溝71の中央部(第1部分711と第2部分712との境界)に配置されている状態で、カムリング76とスピンドル26とが一緒に回転する。低負荷状態においては、軸方向において、カムリング76は、ハンマ75の後側外筒部81の後端部に配置される。
【0183】
図25及び図26のそれぞれは、工具保持シャフト31に掛かる負荷が低負荷状態から高負荷状態に遷移した直後の遷移状態の出力アセンブリ4の断面図を示す。
【0184】
ねじ締め作業の進行により、工具保持シャフト31に掛かる負荷が高くなると、工具保持シャフト31の回転速度が低下する。ハンマ75は、可動アンビル33を介して工具保持シャフト31に連結されているので、工具保持シャフト31の回転速度の低下に伴って、ハンマ75の回転速度も低下する。また、カムリング76は、ガイド溝86及びカムスライド部87を介してハンマ75に連結されているので、ハンマ75の回転速度の低下に伴って、カムリング76の回転速度も低下する。一方、スピンドル26は、モータ6の回転力により回転するので、スピンドル26の回転速度は低下しない。
【0185】
スピンドル26の回転速度は低下しないものの、工具保持シャフト31、ハンマ75、及びカムリング76の回転速度が低下するので、工具保持シャフト31、ハンマ75、及びカムリング76と、スピンドル26との相対回転が開始される。工具保持シャフト31とハンマ75とカムリング76とは、一緒に回転する。
【0186】
図25に示すように、低負荷状態から高負荷状態に遷移した場合、工具保持シャフト31及びハンマ75とスピンドル26との相対回転により、スピンドル突起部69が可動アンビル33から離れる。
【0187】
カムリング76は、ガイド溝86及びカムスライド部87を介してハンマ75に連結されているので、ハンマ75の回転速度の低下に伴って、カムリング76の回転速度も低下する。スピンドル26の回転速度は低下しないので、カムリング76の回転速度が低下した状態で、スピンドル26の回転が継続されると、ボール77がスピンドル溝71及びカム溝88の内側を移動する。
【0188】
図26に示すように、低負荷状態から高負荷状態に遷移した場合、ボール77は、スピンドル溝71の中央部から端部に向かって第2部分712を移動する。カムリング76は、ボール77から力を受けて、前方に移動する。カムリング76は、ガイド溝86にガイドされながら前方に移動する。カムリング76は、弾性部材78の弾性力に抗って前方に移動する。
【0189】
このように、スピンドル26のフランジ部65とカムリング76とが正転方向に一緒に回転している状態で、工具保持シャフト31が低負荷状態から高負荷状態に遷移し、カムリング76の回転速度が低下して、フランジ部65とカムリング76とが相対回転を開始した場合、ボール77がスピンドル溝71の中央部から第2部分712の周方向他方側の端部に向かって第2部分712を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、前方に移動する。
【0190】
図27及び図28のそれぞれは、低負荷状態から高負荷状態に遷移してから所定時間経過後の高負荷状態の出力アセンブリ4の断面図を示す。
【0191】
高負荷状態の継続により、工具保持シャフト31、ハンマ75、及びカムリング76のそれぞれの回転が停止する。工具保持シャフト31、ハンマ75、及びカムリング76のそれぞれの回転が停止しても、スピンドル26は、モータ6の回転力により回転し続ける。
【0192】
工具保持シャフト31が高負荷状態においては、工具保持シャフト31、ハンマ75、及びカムリング76のそれぞれの回転が停止した状態で、スピンドル26の回転が継続される。カムリング76は、ボール77から力を受けて、弾性部材78の弾性力に抗って前方に移動する。
【0193】
図27に示すように、工具保持シャフト31、ハンマ75、及びカムリング76のそれぞれの回転が停止した状態で、スピンドル26の回転が継続されることにより、回転方向においてスピンドル突起部69が可動アンビル33から更に離れる。スピンドル突起部69が可動アンビル33から離れることにより、可動アンビル33は、径方向内側に移動可能な状態になる。可動アンビル33がアンビル部98の外周面103よりも径方向内側に移動することにより、ハンマ突起部84と可動アンビル33とが離れる。すなわち、可動アンビル33によるハンマ75のロックが解除され、ハンマ75はスピンドル26に対して回転可能な状態になる。
【0194】
ハンマ75のロックが解除されることにより、カムリング76もスピンドル26に対して回転可能な状態になる。カムリング76は、弾性部材78の弾性力により、ハンマ75に対して後方に移動する。カムリング76は、ガイド溝86にガイドされながら後方に移動する。カムリング76は、スピンドル26に対して回転可能なので、後方に移動することにより、ボール77から力を受けて、正転方向に回転する。すなわち、カムリング76は、後方に移動しながら正転方向に回転する。ボール77は、スピンドル溝71の端部から中央部に向かって第2部分712を移動する。ハンマ75は、カムスライド部87及びガイド溝86を介してカムリング76に連結されているので、カムリング76が正転方向に回転することにより、ハンマ75も、正転方向に回転する。
【0195】
このように、ハンマ75のロックが解除された後、カムリング76が後方へ移動するように弾性部材78から弾性力を受けた場合、ボール77が第2部分712の周方向他方側の端部からスピンドル溝71の中央部に向かって第2部分712を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、フランジ部65と相対回転しながら後方に移動する。
【0196】
図29及び図30のそれぞれは、ハンマ75が可動アンビル33を打撃するために回転しているハンマ回転状態の出力アセンブリ4の断面図を示す。
【0197】
図29に示すように、ハンマ75回転状態において、スピンドル26は、モータ6の回転力により正転方向に回転する。ハンマ75は、弾性部材78の弾性力により回転するカムリング76と一緒に正転方向に回転する。スピンドル26は、第1可動アンビル331から離れた第1スピンドル突起部691が第2可動アンビル332に接近し、第2可動アンビル332から離れた第2スピンドル突起部692が第1可動アンビル331に接近するように回転する。また、ハンマ75は、第1可動アンビル331から離れた第1ハンマ突起部841が第2可動アンビル332に接近し、第2可動アンビル332から離れた第2ハンマ突起部842が第1可動アンビル331に接近するように回転する。
【0198】
第1ハンマ突起部841は、第1スピンドル突起部691を追いかけるように、スピンドル26の周囲を正転方向に旋回する。第1スピンドル突起部691は、第1ハンマ突起部841よりも先に第2可動アンビル332に到達する。第2ハンマ突起部842は、第2スピンドル突起部692を追いかけるように、スピンドル26の周囲を正転方向に旋回する。第2スピンドル突起部692は、第2ハンマ突起部842よりも先に第1可動アンビル331に到達する。
【0199】
図31及び図32のそれぞれは、ハンマ75が可動アンビル33を打撃している打撃状態の出力アセンブリ4の断面図を示す。
【0200】
上述のように、第1スピンドル突起部691は、第1ハンマ突起部841よりも先に第2可動アンビル332に到達する。第1スピンドル突起部691は、第2可動アンビル332に接触する。第2可動アンビル332は、第1スピンドル突起部691との接触により径方向外側に移動する。第2可動アンビル332の少なくとも一部は、アンビル部98の外周面103よりも径方向外側に配置される。
【0201】
第1ハンマ突起部841は、第1スピンドル突起部691が第2可動アンビル332に到達した後に、第2可動アンビル332に到達する。すなわち、第1ハンマ突起部841は、第2可動アンビル332が径方向外側に移動した後に、第2可動アンビル332に到達する。第1ハンマ突起部841は、アンビル部98の外周面103よりも径方向外側に配置された第2可動アンビル332を回転方向に打撃する。第2可動アンビル332が第1ハンマ突起部841に打撃されるとき、径方向における第2可動アンビル332の位置は、第1スピンドル突起部691により拘束され、周方向における第2可動アンビル332の位置は、アンビル孔104の内面により拘束される。これにより、第1ハンマ突起部841は、第2可動アンビル332を打撃することができる。
【0202】
第2スピンドル突起部692は、第2ハンマ突起部842よりも先に第1可動アンビル331に到達する。第1可動アンビル331は、第2スピンドル突起部692との接触により径方向外側に移動する。第2ハンマ突起部842は、第1可動アンビル331が径方向外側に移動した後に、第1可動アンビル331に到達する。第2ハンマ突起部842は、アンビル部98の外周面103よりも径方向外側に配置された第1可動アンビル331を回転方向に打撃する。第1可動アンビル331が第2ハンマ突起部842に打撃されるとき、径方向における第1可動アンビル331の位置は、第2スピンドル突起部692により拘束され、周方向における第1可動アンビル331の位置は、アンビル孔104の内面により拘束される。これにより、第2ハンマ突起部842は、第1可動アンビル331を打撃することができる。
【0203】
第1ハンマ突起部841による第2可動アンビル332の打撃と、第2ハンマ突起部842による第1可動アンビル331の打撃とは、実質的に同時に実施される。可動アンビル33は、工具保持シャフト31のアンビル孔104に配置された状態で、ハンマ突起部84により打撃される。工具保持シャフト31は、2つの可動アンビル33を介して、ハンマ75により回転方向に打撃される。
【0204】
工具保持シャフト31は、ハンマ75により回転方向に打撃されるので、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
【0205】
図32に示すように、カムリング76が後方に移動することにより、打撃状態においては、ボール77がスピンドル溝71の中央部(第1部分711と第2部分712との境界)に配置される。
【0206】
打撃状態が終了した後、出力アセンブリ4は、打撃状態から低負荷状態に遷移する。
【0207】
なお、図23から図32を参照して説明したように、本実施形態においては、スピンドル26が半回転することにより、可動アンビル33がハンマ突起部84により打撃される。すなわち、本実施形態においては、スピンドル26が1回転する間にハンマ突起部84による可動アンビル33の打撃が2回実施される。スピンドル26が1回転する間にハンマ突起部84による可動アンビル33の打撃が1回実施されてもよい。スピンドル26が1回転する間にハンマ突起部84による可動アンビル33の打撃が1回実施される場合、可動アンビル33の打撃が2回実施される場合に比べて、ハンマ突起部84は高い回転速度及び高い慣性力で可動アンビル33を打撃することができる。すなわち、スピンドル26が1回転する間にハンマ突起部84による可動アンビル33の打撃が1回実施される場合、可動アンビル33の打撃が2回実施される場合に比べて、ハンマ75は、高い打撃エネルギーで可動アンビル33を打撃することができる。弾性部材78の弾性エネルギー(ばね定数)及びスピンドル26の回転速度の一方又は両方が調整されることにより、スピンドル26が1回転する間にハンマ突起部84が可動アンビル33を打撃する回数を調整することができる。また、副次的な効果として、弾性部材78の変形のし易さに起因して、ハンマ突起部84による可動アンビル33の打撃開始のタイミングが早まるので、ねじ締め作業において先端工具の先端部がねじの工具孔(十字孔)から外れてしまうカムアウト現象の発生が抑制される。
【0208】
なお、本実施形態において、可動アンビル33が2つ設けられ、ハンマ突起部84が2つ設けられることとした。可動アンビル33が3つ設けられ、ハンマ突起部84が3つ設けられてもよい。可動アンビル33が4つ設けられ、ハンマ突起部84が4つ設けられてもよい。可動アンビル33及びハンマ突起部84のそれぞれが5つ以上の任意の複数設けられてもよい。
【0209】
なお、図23から図32に示した例は、ねじ締め作業のために、スピンドル26とカムリング76とハンマ75と工具保持シャフト31とが正転方向に回転する例である。ねじ緩め作業を実施する場合、作業者は、正逆転切換レバー10を操作して、スピンドル26とカムリング76とハンマ75と工具保持シャフト31とを逆転方向に回転させる。ねじ緩め作業において、スピンドル26のフランジ部65とカムリング76とが逆転方向に一緒に回転している状態で、工具保持シャフト31が高負荷状態となり、カムリング76の回転速度が低下して、フランジ部65とカムリング76とが相対回転を開始した場合、ボール77がスピンドル溝71の中央部から第1部分711の周方向一方側の端部に向かって第1部分711を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、前方に移動する。また、ハンマ75のロックが解除された後、カムリング76が後方へ移動するように弾性部材78から弾性力を受けた場合、ボール77が第1部分711の周方向一方側の端部からスピンドル溝71の中央部に向かって第1部分711を移動することにより、カムリング76は、ボール77から力を受けて、フランジ部65を相対回転しながら後方に移動する。
【0210】
<効果>
以上説明したように、本実施形態において、インパクト工具1は、モータ6と、スピンドルシャフト部64及びスピンドルシャフト部64の後部に設けられるフランジ部65を有し、モータ6の回転力により回転するスピンドル26と、少なくとも一部がスピンドル26よりも前方に配置される工具保持シャフト31と、スピンドルシャフト部64に支持され、工具保持シャフト31を回転方向に打撃するハンマ75と、軸方向においてフランジ部65の前面とフランジ部65よりも前方に配置されたハンマ75の支持面90との間に配置される弾性部材78と、モータ6が起動する前の初期状態において、弾性部材78の弾性力を調整する弾性力調整機構29と、を備えてもよい。
【0211】
上記の構成では、弾性部材78の弾性力が調整可能なので、インパクト工具1は、高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施することができる。低負荷作業が実施される場合においては、弾性部材78の弾性力が低くなるように弾性部材78の弾性力が調整され、高負荷作業が実施される場合においては、弾性部材78の弾性力が高くなるように弾性部材78の弾性力が調整されることにより、インパクト工具1は、高負荷作業及び低負荷作業のそれぞれを円滑に実施することができる。
【0212】
本実施形態において、弾性力調整機構29は、初期状態における弾性部材78の圧縮量を調整してもよい。
【0213】
上記の構成では、初期状態における弾性部材78の圧縮量が調整されることにより、弾性部材78の弾性力が調整される。圧縮量が小さい場合、弾性部材78の弾性力が低くなり、圧縮量が大きい場合、弾性部材78の弾性力が高くなる。
【0214】
本実施形態において、弾性部材78の後端部は、フランジ部65に支持されてもよい。弾性力調整機構29は、弾性部材78の前端部の位置を移動することにより、圧縮量を調整してもよい。
【0215】
上記の構成では、弾性部材78の後端部の位置が固定された状態で、弾性部材78の前端部の位置が移動されることにより、圧縮量が調整される。
【0216】
本実施形態において、弾性力調整機構29は、ハンマ75に形成されたねじ孔94に配置され、弾性部材78の前端部に接続されるねじ93を有してもよい。ねじ93の回転により、圧縮量が調整されてもよい。
【0217】
上記の構成では、ねじ93がねじ孔94に配置された状態で回転されることにより、ねじ93が前後方向に移動するので、圧縮量が調整される。
【0218】
本実施形態において、インパクト工具1は、弾性部材78の前端部を支持するワッシャ79を備えてもよい。ねじ93の後端部は、ワッシャ79の前面に接触してもよい。ねじ93は、ワッシャ79を介して弾性部材78に接続されてもよい。
【0219】
上記の構成では、弾性部材78の前端部の移動が円滑に実施される。
【0220】
本実施形態において、ねじ孔94は、ハンマ75の回転軸の周囲に間隔をあけて複数形成されてもよい。ねじ93は、複数のねじ孔94のそれぞれに1つずつ配置されてもよい。
【0221】
上記の構成では、前後方向において複数のねじ93のそれぞれの位置が調整されることにより、弾性部材78の圧縮量が調整されるとともに、スピンドル26に対する弾性部材78の傾斜角度が調整される。
【0222】
本実施形態において、ハンマ75は、スピンドルシャフト部64の周囲に配置される内筒部83と、内筒部83よりも径方向外側且つ前方に配置される前側外筒部82と、前側外筒部82よりも径方向外側に配置され且つ前側外筒部82よりも後方に配置される後側外筒部81と、を有してもよい。ねじ孔94は、後側外筒部81の前端面95と支持面90とを貫通するように形成されてもよい。
【0223】
上記の構成では、インパクト工具1の組立者又は作業者は、ねじ孔94に配置されたねじ93にねじ締め工具を円滑に接触させることができ、ねじ93を円滑に回転させることができる。
【0224】
本実施形態において、インパクト工具1は、ハンマ75を収容するハンマケース23と、ハンマケース23に保持され、ハンマ75を回転可能に支持するハンマベアリング30と、を備えてもよい。ハンマベアリング30は、前側外筒部82の周囲に配置されてもよい。
【0225】
上記の構成では、ねじ93による弾性力の調整が終了した後、ハンマベアリング30は、ねじ孔94の前端部を覆うように配置される。これにより、ねじ93がハンマベアリング30で保護される。
【0226】
本実施形態において、弾性部材78は、皿ばね91を含んでもよい。
【0227】
上記の構成では、インパクト工具1の大型化が抑制される。弾性部材78に所定の弾性力が要求される場合、皿ばね91を用いる場合のほうが、例えばコイルばねを用いる場合に比べて、軸方向における弾性部材78の寸法を短くすることができる。これにより、インパクト工具1の大型化が抑制された状態で、ハンマ75が工具保持シャフト31を回転方向に打撃することができる。特に、インパクト工具1の軸長が短縮される。インパクト工具1が、モータ収容部17と、モータ収容部17の後端部に配置されるリヤカバー3と、モータ収容部17の前部に配置される出力アセンブリ4とを有する場合、インパクト工具1の軸長とは、リヤカバー3の後端部と出力アセンブリ4の前端部との軸方向における距離をいう。
【0228】
本実施形態において、インパクト工具1は、弾性部材78の前端部を支持するワッシャ79を備えてもよい。弾性部材78の前端部は、ワッシャ79を介してハンマ75に接続されてもよい。
【0229】
上記の構成では、弾性部材78の前端部は、ワッシャ79を介してハンマ75に安定して接続される。
【0230】
本実施形態において、インパクト工具1は、工具保持シャフト31に移動可能に支持される可動アンビル33を備えてもよい。ハンマ75は、軸方向に変位せずに可動アンビル33を回転方向に打撃してもよい。
【0231】
上記の構成では、工具保持シャフト31に移動可能に支持される可動アンビル33が設けられるので、ハンマ75は、軸方向に変位せずに可動アンビル33を回転方向に打撃することができる。ハンマ75が軸方向に変位しないので、インパクト工具1において軸方向の振動の発生が抑制される。
【0232】
本実施形態において、可動アンビル33は、可動アンビル33の少なくとも一部が工具保持シャフト31の外周面から径方向外側に突出する第1状態と、可動アンビル33が工具保持シャフト31の外周面よりも径方向内側に配置される第2状態とに変化するように移動してもよい。ハンマ75は、第1状態において可動アンビル33を打撃し、第2状態においてスピンドルシャフト部64の周囲を回転してもよい。
【0233】
上記の構成では、ハンマ75は、軸方向に変位せずに可動アンビル33を回転方向に打撃することができる。
【0234】
本実施形態において、インパクト工具1は、ボール77を介してフランジ部65と相対回転可能に連結され、ハンマ75と軸方向に相対移動可能且つ相対回転不可能に連結されるカムリング76を備えてもよい。カムリング76は、フランジ部65の前面に対向するように配置されてもよい。弾性部材78は、軸方向においてカムリング76の前面とハンマ75の支持面との間に配置されてもよい。
【0235】
上記の構成では、カムリング76は、ボール77を介してスピンドル26のフランジ部65と相対回転可能に連結される。また、カムリング76は、ハンマ75と軸方向に相対移動可能且つ相対回転不可能に連結される。これにより、軸長が短縮された状態で、ハンマ75が工具保持シャフト31を回転方向に打撃することができる。
【0236】
本実施形態において、カムリング76は、ハンマ75の後部に連結されてもよい。弾性部材78は、スピンドルシャフト部64とハンマ75とカムリング76とにより規定される閉鎖空間に配置されてもよい。
【0237】
上記の構成では、ハンマ75が可動アンビル33を介して工具保持シャフト31を回転方向に打撃する場合、カムリング76及び弾性部材78もハンマ75と一緒に回転する。すなわち、ハンマ75が工具保持シャフト31を打撃する場合、ハンマ75の慣性モーメントのみならず、カムリング76の慣性モーメント及び弾性部材78の慣性モーメントも、工具保持シャフト31に付与される。これにより、工具保持シャフト31は、高い打撃力で打撃される。
【0238】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0239】
<出力アセンブリ>
図33は、本実施形態に係るインパクト工具1Bの一部を示す前方からの斜視図である。図34は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Bを示す前方からの斜視図である。図35は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Bを示す縦断面図である。図36は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Bを示す分解斜視図である。
【0240】
出力アセンブリ4Bは、ハンマケース123と、ベアリングボックス24とを有する。ハンマケース123とベアリングボックス24とにより規定される出力アセンブリ4Bの内部空間に、ハンマ175が配置される。
【0241】
ハンマケース123は、大筒部153と、小筒部154を有する。大筒部153及び小筒部154のそれぞれは、回転軸AXを囲むように配置される。小筒部154は、大筒部153よりも前方に配置される。大筒部153の内径は、小筒部154の内径よりも大きい。大筒部153の外径は、小筒部154の外径よりも大きい。
【0242】
本実施形態において、ハンマケース123は、貫通孔116を有する。ハンマケース123は、前方を向く前面155と、後方を向く後面196とを有する。前面155は、大筒部153の外周面の前端部と小筒部154の外周面の後端部とを繋ぐように設けられる。後面196は、大筒部153の内周面の前端部と小筒部154の内周面の後端部とを繋ぐように設けられる。前面155及び後面196のそれぞれは、円環状である。貫通孔116は、前面155と後面196とを貫くように形成される。貫通孔116は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。本実施形態において、貫通孔116は、周方向に間隔をあけて6つ設けられる。
【0243】
上述の実施形態と同様、出力アセンブリ4Bは、弾性力調整機構29としてねじ93を有する。ハンマ175は、ねじ93が配置されるねじ孔94を有する。径方向において、回転軸AXとねじ孔94との距離と、回転軸AXと貫通孔116の距離とは、実質的に等しい。周方向において、複数のねじ孔94の間隔と、複数の貫通孔116の間隔とは、等しい。回転方向におけるハンマ175の位置が調整されることにより、径方向及び周方向のそれぞれにおいて、ねじ孔94の位置と貫通孔116の位置とは、一致する。すなわち、貫通孔116は、径方向及び周方向のそれぞれにおいてねじ孔94と重複することができる。回転方向におけるハンマ175の位置が調整されることにより、ねじ93は、貫通孔116に対向することができる。作業者は、貫通孔116にねじ締め工具を挿入して、ねじ93を回転させることができる。ねじ93が回転することにより、ワッシャ79が前後方向に移動する。ワッシャ79が前後方向に移動することにより、弾性部材78の圧縮量が調整され、弾性部材78の弾性力が調整される。
【0244】
ハンマ175は、後側外筒部181と、前側外筒部182と、内筒部183とを有する。後側外筒部181、前側外筒部182、及び内筒部183のそれぞれは、回転軸AXを囲むように配置される。後側外筒部181と前側外筒部182と内筒部183とは、一体である。
【0245】
前側外筒部182は、後側外筒部181よりも前方に配置される。後側外筒部181の前端部は、前側外筒部182の後端部に接続される。後側外筒部181の外径は、前側外筒部182の外径よりも大きい。後側外筒部181の内径は、前側外筒部182の内径よりも大きい。
【0246】
内筒部183は、後側外筒部181及び前側外筒部182よりも径方向内側に配置される。内筒部183の前端部は、前側外筒部182の後端部に接続される。
【0247】
内筒部183は、スピンドル26に支持される。前側外筒部182は、内筒部183よりも径方向外側且つ前方に配置される。後側外筒部181は、内筒部183及び前側外筒部82よりも径方向外側に配置され且つ前側外筒部182よりも後方に配置される。
【0248】
本実施形態において、後側外筒部181は、前側小径部181Aと、大径部181Bと、後側小径部181Cとを有する。大径部181Bは、前側小径部181Aよりも後方に配置される。後側小径部181Cは、大径部181Bよりも後方に配置される。大径部181Bの外径は、前側小径部181Aの外径及び後側小径部181Cの外径よりも大きい。
【0249】
本実施形態において、ハンマ175は、第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bに回転可能に支持される。第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bのそれぞれは、後側外筒部181の周囲に配置される。第2ハンマベアリング130Bは、第1ハンマベアリング130Aよりも後方に配置される。第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bのそれぞれは、ボールベアリングである。
【0250】
第1ハンマベアリング130Aは、ハンマ175の前部を支持する。第2ハンマベアリング130Bは、ハンマ175の後部を支持する。本実施形態において、第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bのそれぞれは、後側外筒部181を支持する。第1ハンマベアリング130Aは、後側外筒部181の前部を支持する。第2ハンマベアリング130Bは、後側外筒部181の後部を支持する。
【0251】
第1ハンマベアリング130Aは、前側小径部181Aの周囲に配置される。第1ハンマベアリング130Aの内輪は、前側小径部181Aの外周面に接触する。第1ハンマベアリング130Aの外輪は、大筒部153の内周面に接触する。ハンマ175は、第1ハンマベアリング130Aの前端部に対向する支持面197を有する。支持面197は、後方を向く。第1ハンマベアリング130Aの前端部は、ハンマ175の支持面197に接触する。支持面197は、後面196よりも径方向外側に配置される。支持面197は、後面196よりも後方に配置される。第1ハンマベアリング130Aの後端部は、大径部181Bの前端面の少なくとも一部に接触する。
【0252】
第2ハンマベアリング130Bは、後側小径部181Cの周囲に配置される。第2ハンマベアリング130Bの内輪は、後側小径部181Cの外周面に接触する。第2ハンマベアリング130Bの外輪は、大筒部153の内周面に接触する。第2ハンマベアリング130Bの前端部は、大径部181Bの後端面の少なくとも一部に接触する。本実施形態において、後側小径部181Cに複数のノッチ181Dが設けられる。ノッチ181Dは、後側小径部181Cの後端部から前方に窪むように形成される。複数のノッチ181Dにより、後側小径部181Cは、径方向に弾性変形することができる。後側小径部181Cの弾性変形により、第2ハンマベアリング130Bと後側小径部181Cとが固定される。すなわち、後側小径部181Cは、第2ハンマベアリング130Bを径方向外側に向かって押す弾性力を発生する。第2ハンマベアリング130Bは、後側小径部181Cを径方向外側から締め付けるように後側小径部181Cの周囲に配置される。これにより、第2ハンマベアリング130Bと後側小径部181Cとが固定される。
【0253】
<効果>
以上説明したように、本実施形態において、ハンマ175が第1ハンマベアリング130Aと第2ハンマベアリング130Bとに支持されてもよい。第2ハンマベアリング130Bは、第1ハンマベアリング130Aよりも後方に配置されてもよい。
【0254】
上記の構成では、ハンマ175がスピンドル26に対して傾斜した状態で回転することが抑制される。
【0255】
本実施形態において、ハンマ175は、スピンドル26に支持される内筒部183と、内筒部183よりも径方向外側且つ前方に配置される前側外筒部182と、内筒部183よりも径方向外側に配置され且つ前側外筒部182よりも後方に配置される後側外筒部181と、を有してもよい。後側外筒部181の外径は、前側外筒部182の外径よりも大きくてもよい。第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bのそれぞれは、後側外筒部181を支持してもよい。
【0256】
上記の構成では、ハンマ175がスピンドル26に対して傾斜した状態で回転することが抑制される。
【0257】
本実施形態において、第1ハンマベアリング130Aは、後側外筒部181の前部を支持してもよい。第2ハンマベアリング130Bは、後側外筒部181の後部を支持してもよい。
【0258】
上記の構成では、ハンマ175がスピンドル26に対して傾斜した状態で回転することが抑制される。
【0259】
本実施形態において、後側外筒部181は、前側小径部181Aと、前側小径部181Aよりも後方に配置される大径部181Bと、大径部181Bよりも後方に配置される後側小径部181Cと、を有してもよい。大径部181Bの外径は、前側小径部181Aの外径及び後側小径部181Cの外径よりも大きくてもよい。第1ハンマベアリング130Aは、前側小径部181Aの周囲に配置されてもよい。第2ハンマベアリング130Bは、後側小径部181Cの周囲に配置されてもよい。
【0260】
上記の構成では、ハンマケース23が径方向に大型化することが抑制される。
【0261】
本実施形態において、ハンマ175は、第1ハンマベアリング130Aの前端部に対向する支持面197を有してもよい。第1ハンマベアリング130Aの前端部は、ハンマ175の支持面197に接触してもよい。
【0262】
上記の構成では、軸方向において第1ハンマベアリング130Aが位置決めされる。
【0263】
本実施形態において、第1ハンマベアリング130Aの後端部は、大径部181Bの前端面の少なくとも一部に接触してもよい。
【0264】
上記の構成では、軸方向において第1ハンマベアリング130Aが位置決めされる。
【0265】
本実施形態において、第2ハンマベアリング130Bの前端部は、大径部181Bの後端面の少なくとも一部に接触してもよい。
【0266】
上記の構成では、軸方向において第2ハンマベアリング130Bが位置決めされる。
【0267】
本実施形態において、後側小径部181Cに複数のノッチ181Dが設けられてもよい。複数のノッチ181Dにより、後側小径部181Cは、径方向に弾性変形してもよい。後側小径部181Cの弾性変形により、第2ハンマベアリング130Bと後側小径部181Cとが固定されてもよい。
【0268】
上記の構成では、第2ハンマベアリング130Bの内輪がハンマ175に位置決めされる。
【0269】
本実施形態において、出力アセンブリ4Bは、ハンマ175を収容するハンマケース123を備えてもよい。ハンマケース123は、径方向及び周方向のそれぞれにおいてねじ孔94と重複する貫通孔116を有してもよい。貫通孔116を介してねじ93が回転されてもよい。
【0270】
上記の構成では、作業者は、貫通孔116を介してねじ孔94に配置されたねじ93にねじ締め工具を円滑に接触させることができ、ねじ93を円滑に回転させることができる。作業者は、作業内容に応じて、弾性部材78の弾性力を適宜調整することができる。
【0271】
本実施形態において、出力アセンブリ4Bは、ハンマケース23に保持され、ハンマ175を回転可能に支持する第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bを備えてもよい。第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bは、後側外筒部181の周囲に配置されてもよい。
【0272】
上記の構成では、ねじ孔94の前端部が第1ハンマベアリング130A及び第2ハンマベアリング130Bで覆われないので、作業者は、貫通孔116を介してねじ孔94に配置されたねじ93にねじ締め工具を円滑に接触させることができ、ねじ93を円滑に回転させることができる。
【0273】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0274】
<インパクト工具>
図37は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す前方からの斜視図である。図38は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す縦断面図である。図39は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す横断面図である。図40は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す断面図であり、図38のX-X線断面矢視図に相当する。図41は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す断面図であり、図38のW-W線断面矢視図に相当する。図42は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す断面図であり、図38のT-T線断面矢視図に相当する。図43は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す断面図であり、図38のS-S線断面矢視図に相当する。図44は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を示す断面図であり、図43の一部を拡大した図に相当する。図45は、本実施形態に係るインパクト工具1Cの一部を上方から見た図である。
【0275】
インパクト工具1Cは、モータ収容部217を有するハウジング202と、出力アセンブリ4Cとを有する。
【0276】
出力アセンブリ4Cは、ハンマケース223と、ベアリングボックス224と、カバー119とを有する。ハンマケース223とベアリングボックス224とにより規定される出力アセンブリ4Cの内部空間に、ハンマ75及びスピンドル26が配置される。ハンマケース223は、ハンマベアリング30を介してハンマ75を保持する。ハンマ75は、ハンマベアリング30を介してハンマケース223に接続される。ベアリングボックス224は、スピンドルベアリング27を介してスピンドル26を保持する。スピンドル26は、スピンドルベアリング27を介してベアリングボックス224に接続される。
【0277】
本実施形態において、ハンマケース223は、ねじ部を介してベアリングボックス224に結合される。ハンマケース223は、ベアリングボックス224に対して回転可能である。ハンマケース223の内周面の後部にねじ溝120が形成される。ベアリングボックス224の外周面にねじ山121が形成される。ねじ溝120とねじ山121とは結合される。ハンマケース223がベアリングボックス224に対して回転することにより、ハンマケース223は、ベアリングボックス224に対して前後方向に移動する。
【0278】
カバー119は、ハンマケース223を覆うように配置される。作業者は、カバー119を掴んだ状態で、ハンマケース223を回転させることができる。作業者は、カバー119を介してハンマケース223を回転させることにより、ベアリングボックス224に対してハンマケース223を前後方向に移動させることができる。
【0279】
図41に示すように、出力アセンブリ4Cは、モータ収容部217とベアリングボックス224との相対回転を抑制する第1回り止め機構228を有する。本実施形態において、第1回り止め機構228は、ベアリングボックス224の外周面から径方向外側に突出する凸部222と、モータ収容部217の内周面に設けられた凹部225とを含む。凸部222が凹部225に配置されることにより、モータ収容部217とベアリングボックス224との相対回転が抑制される。
【0280】
図42に示すように、出力アセンブリ4Cは、カバー119とハンマケース223との相対回転を抑制する第2回り止め機構229を有する。本実施形態において、第2回り止め機構229は、ハンマケース223の外周面から径方向外側に突出する凸部124と、カバー119の内周面に設けられた凹部125とを含む。凸部124が凹部125に配置されることにより、カバー119とハンマケース223との相対回転が抑制される。
【0281】
第2回り止め機構229によりカバー119とハンマケース223との相対回転が抑制されることにより、作業者は、カバー119を介してハンマケース223を回転させることができる。第1回り止め機構228によりモータ収容部217とベアリングボックス224との相対回転が抑制されることにより、作業者は、ベアリングボックス224に対してハンマケース223を回転させることができる。
【0282】
図43及び図44に示すように、出力アセンブリ4Cは、周方向においてカバー119を位置決めする位置決め機構231を有する。位置決め機構231は、カバー119の下部に設けられた複数の凹部126と、ハウジング202の少なくとも一部に支持されるリーフスプリング122とを含む。リーフスプリング122は、ハウジング202に対して周方向に移動しないように、ハウジング202に支持される。
【0283】
リーフスプリング122は、凸部127を有する。凸部127は、凹部126に配置される。凸部127が凹部126に配置されることにより、カバー119が周方向において位置決めされる。
【0284】
図37及び図45に示すように、カバー119の外周面に位置マーク117が設けられる。位置マーク117は、カバー119の外周面に1つ設けられる。位置マーク117は、回転方向におけるカバー119の位置を示す。モータ収容部217の外周面に指標マーク118が設けられる。指標マーク118は、周方向に複数設けられる。周方向において、複数の凹部126の間隔と指標マーク118の間隔とは一致する。指標マーク118は、弾性部材78の圧縮量を示す。
【0285】
作業者によりカバー119を介してハンマケース223が回転され、ハンマケース223が前後方向に移動すると、ハンマベアリング30を介してハンマケース223に接続されているハンマ75が、ハンマケース223と一緒に前後方向に移動する。弾性部材78の前端部は、ハンマ75の少なくとも一部に接触し、弾性部材78の後端部は、カムリング76に接触する。カムリング76は、スピンドル26のフランジ部65に接続され、スピンドル26は、スピンドルベアリング27を介してベアリングボックス224に接続される。そのため、ハンマケース223の回転によりハンマ75が前後方向に移動すると、弾性部材78の圧縮量が変化する。ハンマ75が後方に移動するようにハンマケース223が回転されることにより、前後方向においてカムリング76とハンマ75との距離が短くなるので、弾性部材78は圧縮される。ハンマ75が前方に移動するようにハンマケース223が回転されることにより、前後方向においてカムリング76とハンマ75との距離が長くなるので、弾性部材78は伸長される。
【0286】
凸部127が凹部126に配置されることにより、周方向においてカバー119が位置決めされるので、カバー119の不必要な回転が抑制される。また、リーフスプリング122により、カバー119の回転において作業者にクリック感が与えられる。作業者は、複数の指標マーク118のうち任意の指標マーク118と位置マーク117とが一致するように、カバー119を回転させる。複数の凹部126の間隔と指標マーク118の間隔とは一致するので、任意の指標マーク118と位置マーク117とが一致するようにカバー119が回転されると、凸部127が任意の凹部126に配置され、弾性部材78の圧縮量が調整される。
【0287】
<効果>
以上説明したように、本実施形態において、インパクト工具1Cは、スピンドル26を保持するベアリングボックス224と、ハンマ75を保持するハンマケース223と、を備えてもよい。ハンマケース223は、ねじ溝120及びねじ山121を含むねじ部を介してベアリングボックス224に結合されてもよい。ハンマケース223がベアリングボックス224に対して回転されて軸方向に移動することにより、弾性部材78の弾性力が調整されてもよい。
【0288】
上記の構成では、作業者は、手でハンマケース223を掴んで回転させることにより、弾性部材78の弾性力を調整することができる。作業者は、ねじ締め工具を使用することなく、弾性部材78の弾性力を調整することができる。
【0289】
本実施形態において、インパクト工具1Cは、モータ6を収容するモータ収容部217と、モータ収容部217とベアリングボックス224との相対回転を抑制する第1回り止め機構228と、を備えてもよい。
【0290】
上記の構成では、ハンマケース223が回転された場合、第1回り止め機構228によりベアリングボックス224の回転が抑制されるので、作業者は、ベアリングボックス224に対してハンマケース223を円滑に回転させることができる。
【0291】
本実施形態において、インパクト工具1Cは、ハンマケース223を覆うカバー119と、カバー119とハンマケース223との相対回転を抑制する第2回り止め機構229と、を備えてもよい。カバー119を介してハンマケース223が回転されてもよい。
【0292】
上記の構成では、第2回り止め機構229によりカバー119とハンマケース223との相対回転が抑制されているので、作業者は、手でカバー119を掴んで回転させることにより、ハンマケース223を回転させることができる。ハンマケース223が回転されることにより、弾性部材78の弾性力が調整される。作業者は、ハンマケース223に直接触れることなく、弾性部材78の弾性力を調整することができる。
【0293】
本実施形態において、インパクト工具1Cは、周方向においてカバー119を位置決めする位置決め機構231を備えてもよい。
【0294】
上記の構成では、ハンマケース223及びカバー119が不必要に回転することが抑制される。
【0295】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0296】
<出力アセンブリ>
図46は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Dの一部を示す前方からの斜視図である。図47は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Dを示す縦断面図である。図48は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Dの一部を示す断面図であり、図47のL-L線断面矢視図に相当する。図49は、本実施形態に係る出力アセンブリ4Dの一部を示す断面図であり、図47のM-M線断面矢視図に相当する。
【0297】
出力アセンブリ4Dは、ハンマケース23と、ベアリングボックス24とを有する。ハンマケース23とベアリングボックス24とにより規定される出力アセンブリ4Dの内部空間に、ハンマ375及び弾性部材378が配置される。なお、図46において、ハンマケース23の図示が省略され、ハンマ375が仮想線で示されている。
【0298】
上述の実施形態と同様、弾性部材378は、スピンドルシャフト部64とハンマ75とカムリング76とにより規定される閉鎖空間に配置される。弾性部材378のばね定数は、100[N/mm]以上である。弾性部材378のばね定数の上限値は特に限定されないが、本実施形態においては、弾性部材378のばね定数は、10000[N/mm]以下である。
【0299】
ハンマ375は、後側外筒部381と、前側外筒部382と、内筒部383とを有する。後側外筒部381、前側外筒部382、及び内筒部383のそれぞれは、回転軸AXを囲むように配置される。後側外筒部381と前側外筒部382と内筒部383とは、一体である。
【0300】
前側外筒部382は、後側外筒部381よりも前方に配置される。後側外筒部381の前端部は、前側外筒部382の後端部に接続される。後側外筒部381の外径は、前側外筒部382の外径よりも大きい。後側外筒部381の内径は、前側外筒部382の内径よりも大きい。
【0301】
内筒部383は、後側外筒部381及び前側外筒部382よりも径方向内側に配置される。内筒部383の前端部は、前側外筒部382の後端部に接続される。
【0302】
本実施形態において、弾性部材378は、スピンドル26の回転軸AXの周囲に配置される複数のコイルばね391を含む。コイルばね391の前端部は、後側外筒部381の内周面の前端部と内筒部383の外周面の前端部との間の支持面390に接触する。支持面390は、フランジ部65及びカムリング76よりも前方に配置される。コイルばね391の後端部は、カムリング76の前面に接触する。
【0303】
コイルばね391の内側に支持ピン128が配置される。支持ピン128は、ハンマ375に固定される。本実施形態において、支持ピン128は、支持面390に設けられた凹部385に圧入される。コイルばね391の内側に支持ピン128が配置されることにより、径方向及び周方向のそれぞれにおいてコイルばね391が位置決めされる。
【0304】
工具保持シャフト31は、可動アンビル333を移動可能に支持する。本実施形態において、可動アンビル333は、円筒部333Aと、円筒部333Aの内側に配置されるピン部333Bとを有する。ピン部333Bの前端部は、円筒部333Aの前端面から前方に突出する。ピン部333Bの後端部は、円筒部333Aの後端面から前方に突出する。
【0305】
<効果>
以上説明したように、本実施形態において、弾性部材378は、スピンドル26の回転軸の周囲に配置される複数のコイルばね391を含んでもよい。
【0306】
上記の構成では、弾性部材378は、高い弾性力を発生することができる。
【0307】
本実施形態において、コイルばね391の前端部は、ハンマ375の支持面390に接触してもよい。
【0308】
上記の構成では、コイルばね391の前端部は、ハンマ375に安定して接続される。
【0309】
本実施形態において、出力アセンブリ4Dは、コイルばね391の内側に配置される支持ピン128を備えてもよい。支持ピン128は、ハンマ375に固定されてもよい。
【0310】
上記の構成では、径方向及び周方向のそれぞれにおいてコイルばね391が位置決めされる。
【0311】
[他の実施形態]
上述の実施形態においては、インパクト工具がインパクトドライバであることとした。インパクト工具は、インパクトレンチでもよい。
【0312】
上述の実施形態において、インパクト工具の電源は、バッテリパック20でなくてもよく、商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0313】
1…インパクト工具、1B…インパクト工具、1C…インパクト工具、2…ハウジング、3…リヤカバー、4…出力アセンブリ、4B…出力アセンブリ、4C…出力アセンブリ、4D…出力アセンブリ、5…バッテリ装着部、6…モータ、7…ファン、8…コントローラ、9…トリガレバー、10…正逆転切換レバー、11…インタフェース部、12…モード切換スイッチ、13…ライト、14…左ハウジング、15…右ハウジング、16…ハウジングねじ、17…モータ収容部、18…グリップ部、19…バッテリ保持部、20…バッテリパック、21…吸気口、22…排気口、23…ハンマケース、24…ベアリングボックス、25…減速機構、26…スピンドル、27…スピンドルベアリング、28…打撃機構、29…弾性力調整機構、30…ハンマベアリング、31…工具保持シャフト、32…シャフトベアリング、33…可動アンビル、34…工具保持機構、35…ステータ、36…ロータ、37…ステータコア、38…前インシュレータ、39…後インシュレータ、40…コイル、41…ロータコア、42…ロータシャフト、43…ロータ磁石、44…センサ磁石、45…センサ基板、46…ロータベアリング、47…ロータベアリング、48…ピニオンギヤ、49…ブッシュ、50…回路基板、51…ケース、52…操作ボタン、53…大筒部、54…小筒部、55…リング部、56…後板部、57…凸部、58…プラネタリギヤ、59…ピン、60…インターナルギヤ、61…Oリング、62…凸部、63…凹部、64…スピンドルシャフト部、65…フランジ部、66…ピン支持部、67…連結部、68…凸部、69…スピンドル突起部、70…ボール溝、71…スピンドル溝、72…支持凹部、73…支持孔、74…ワッシャ、75…ハンマ、76…カムリング、77…ボール、78…弾性部材、79…ワッシャ、80…回転ボール、81…後側外筒部、82…前側外筒部、83…内筒部、84…ハンマ突起部、85…ボール溝、86…ガイド溝、87…カムスライド部、88…カム溝、89…凹部、90…支持面、91…皿ばね、92…円環溝、93…ねじ、94…ねじ孔、95…前端面、96…対向面、97…工具保持部、98…アンビル部、99…工具孔、100…凹部、101…内周面、102…対向面、103…外周面、104…アンビル孔、105…支持凹部、106…支持ボール、107…Oリング、108…抑制部材、109…溝、110…保持ボール、111…リーフスプリング、112…スリーブ、113…コイルスプリング、114…位置決め部材、115…支持凹部、116…貫通孔、117…位置マーク、118…指標マーク、119…カバー、120…ねじ溝、121…ねじ山、122…リーフスプリング、123…ハンマケース、124…凸部、125…凹部、126…凹部、127…凸部、128…支持ピン、130A…第1ハンマベアリング、130B…第2ハンマベアリング、153…大筒部、154…小筒部、155…前面、175…ハンマ、181…後側外筒部、181A…前側小径部、181B…大径部、181C…後側小径部、181D…ノッチ、182…前側外筒部、183…内筒部、196…後面、197…支持面、202…ハウジング、217…モータ収容部、222…凸部、223…ハンマケース、224…ベアリングボックス、225…凹部、228…第1回り止め機構、229…第2回り止め機構、231…位置決め機構、331…第1可動アンビル、332…第2可動アンビル、333…可動アンビル、333A…円筒部、333B…ピン部、375…ハンマ、378…弾性部材、381…後側外筒部、382…前側外筒部、383…内筒部、385…凹部、390…支持面、391…コイルばね、691…第1スピンドル突起部、692…第2スピンドル突起部、841…第1ハンマ突起部、842…第2ハンマ突起部、711…第1部分、712…第2部分、881…第3部分、882…第4部分、AX…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図20
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