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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167207
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】単相モータおよび扇風機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20231116BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20231116BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20231116BHJP
   H02K 1/2789 20220101ALI20231116BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
F04D29/00 B
H02K1/16 C
H02K1/2789
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078204
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】釣部 正義
(72)【発明者】
【氏名】綿引 正倫
【テーマコード(参考)】
3H130
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC25
3H130BA13G
3H130DD01X
3H130EA06G
3H130EB01G
5H601AA22
5H601BB12
5H601CC01
5H601CC15
5H601CC20
5H601DD02
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD23
5H601DD47
5H601EE03
5H601EE18
5H601EE28
5H601FF02
5H601FF04
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB22
5H601GB33
5H601GB48
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単相モータのトルクリップルの低周波成分を低減することによって、駆動時における低周波の騒音を抑制できる単相モータを提供する。
【解決手段】単相モータ10は、ロータと、ロータの径方向一方側に配置されるステータ50と、を備える。ステータ50は、ステータコア51を有する。ステータコア51は、環状のコアバック部52と、複数のティース部53と、を有する。ティース部53は、コアバック部52から延びるティース本体部54と、、ティース本体部54よりも周方向の両側に突出するアンブレラ部55と、を有する。アンブレラ部55の径方向他方側を向く面には、軸方向に沿って延びる溝部56が設けられる。軸方向に見て、ティース本体部54の周方向の中心および中心軸の両方を通る仮想線をティース部中心線Lcとする。アンブレラ部55の径方向他方側を向く面は、溝部56によりティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向一方側に配置されるステータと、
を備え、
前記ステータは、前記ロータと径方向に対向するステータコアを有し、
前記ステータコアは、環状のコアバック部と、前記コアバック部の径方向他方側を向く面に沿って配置される複数のティース部と、を有し、
前記ティース部は、前記コアバック部から径方向他方側に延びるティース本体部と、前記ティース本体部の先端と繋がり、前記ティース本体部よりも周方向の両側に突出するアンブレラ部と、を有し、
前記アンブレラ部の径方向他方側を向く面には、軸方向に沿って延びる溝部が設けられ、
軸方向に見て、前記ティース本体部の周方向の中心および前記中心軸の両方を通る仮想線をティース部中心線とし、
前記アンブレラ部の径方向他方側を向く面は、前記溝部により前記ティース部中心線に対して互いに非対称である、単相モータ。
【請求項2】
前記溝部は、
前記ティース部中心線よりも周方向一方側に設けられる第1溝部と、
前記ティース部中心線よりも周方向他方側に設けられる第2溝部と、
を有し、
軸方向に見て、前記第1溝部の形状および前記第2溝部の形状は、前記ティース部中心線に対して互いに非対称である、請求項1に記載の単相モータ。
【請求項3】
前記第1溝部と前記ティース部中心線との間の距離は、前記第2溝部と前記ティース部中心線との間の距離よりも短い、請求項2に記載の単相モータ。
【請求項4】
径方向に見て、前記第1溝部は、前記ティース本体部と重なり、
径方向に見て、前記第2溝部は、前記ティース本体部と重ならない、請求項3に記載の単相モータ。
【請求項5】
前記第1溝部の周方向の寸法と、前記第2溝部の周方向の寸法とが、互いに異なる、請求項2に記載の単相モータ。
【請求項6】
前記第1溝部の周方向の寸法が、前記第2溝部の周方向の寸法よりも小さい、請求項5に記載の単相モータ。
【請求項7】
前記第1溝部の周方向の寸法が、前記第2溝部の周方向の寸法よりも大きい、請求項5に記載の単相モータ。
【請求項8】
前記第1溝部の径方向の寸法と、前記第2溝部の径方向の寸法とが、互いに異なる、請求項2に記載の単相モータ。
【請求項9】
前記第1溝部の径方向の寸法が、前記第2溝部の径方向の寸法よりも大きい、請求項8に記載の単相モータ。
【請求項10】
前記第1溝部と前記ティース部中心線とのとの間距離は、前記第2溝部と前記ティース部中心線との間距離よりも短く、
径方向に見て、前記第1溝部は、前記ティース本体部と重なり、
径方向に見て、前記第2溝部は、前記ティース本体部と重ならず、
前記第1溝部の周方向の寸法が、前記第2溝部の周方向の寸法よりも大きく、
前記第1溝部の径方向の寸法が、前記第2溝部の径方向の寸法よりも大きい、請求項2に記載の単相モータ。
【請求項11】
前記ロータは、前記中心軸を中心として周方向一方側に回転する、請求項1から10のいずれか一項に記載の単相モータ。
【請求項12】
少なくとも、請求項1に記載の単相モータと、前記ロータと接続される羽根部材と、を備える扇風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相モータおよび扇風機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータおよびステータを有するモータが知られている。例えば、特許文献1には、ステータコアの複数のティース部それぞれの先端面に凹部を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-210105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成のモータを単相電源によって駆動する場合、ロータが有する複数のマグネットと、電流が供給されるコイルが構成する電磁石との間の磁気力が周期的に大きく変動するため、モータのトルクリップルの低周波成分が大きくなり易く、低周波の騒音が問題となっていた。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、単相モータのトルクリップルの低周波成分を低減することによって、駆動時における低周波の騒音を抑制できる単相モータ、およびそのような単相モータを備える扇風機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の単相モータの一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向一方側に配置されるステータと、を備える。前記ステータは、前記ロータと径方向に対向するステータコアを有する。前記ステータコアは、環状のコアバック部と、前記コアバック部の径方向他方側を向く面に沿って配置される複数のティース部と、を有する。前記ティース部は、前記コアバック部から径方向他方側に延びるティース本体部と、前記ティース本体部の先端と繋がり、前記ティース本体部よりも周方向の両側に突出するアンブレラ部と、を有する。前記アンブレラ部の径方向他方側を向く面には、軸方向に沿って延びる溝部が設けられる。軸方向に見て、前記ティース本体部の周方向の中心および前記中心軸の両方を通る仮想線をティース部中心線とする。前記アンブレラ部の径方向他方側を向く面は、前記溝部により前記ティース部中心線に対して互いに非対称である。
【0007】
本発明の扇風機の一つの態様は、少なくとも、上記の単相モータと、前記ロータと接続される羽根部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、単相モータにおいて、駆動時における低周波の騒音を抑制できる。
【0009】
本発明の一つの態様によれば、扇風機において、駆動時における低周波の騒音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の単相モータを示す断面図である。
図2図2は、一実施形態の単相モータを備える扇風機を示す断面図である。
図3図3は、一実施形態の単相モータを示す図1のIII-III断面図である。
図4図4は、一実施形態のステータコアの一部を示す断面図である。
図5図5は、比較例のステータコアを示す断面図である。
図6図6は、一実施形態の変形例1のステータコアの一部を示す断面図である。
図7図7は、一実施形態の変形例2のステータコアの一部を示す断面図である。
図8図8は、一実施形態の変形例3のステータコアの一部を示す断面図である。
図9図9は、一実施形態の変形例4のステータコアの一部を示す断面図である。
図10図10は、比較例の単相モータの騒音レベルを示す図である。
図11図11は、一実施形態の回転トルクリップルの16次成分を示す図である。
図12図12は、比較例の回転トルクリップルを示す図である。
図13図13は、一実施形態の回転トルクリップルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において各図には、適宜、Y軸を示す。Y軸は、以下に説明する実施形態の単相モータの中心軸J1が延びる方向を示す。各図に示す中心軸J1は、仮想軸線である。以下の説明では、中心軸J1が延びる方向、つまりY軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち中心軸J1を向く側を「径方向内側」または「径方向一方側」と呼ぶ。径方向のうち中心軸J1を向く側と反対側を「径方向外側」または「径方向他方側」と呼ぶ。中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちY軸の矢印が向く側(+Y側)を「軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちY軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。
【0012】
周方向は、各図において矢印θで示される。周方向のうち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、軸方向一方側から見て中心軸J1回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、軸方向一方側から見て中心軸J1回りに反時計回りに進む側である。
【0013】
<実施形態>
図1に示す本実施形態の単相モータ10は、図2に示す扇風機40に取り付けられる単相直流ブラシレスモータである。図1に示すように、本実施形態の単相モータ10は、ステータ50の径方向外側にロータ20を備えるアウターロータ構成である。単相モータ10は、ロータ20と、ステータ50と、第1ベアリング91と、第2ベアリング92と、制御基板70と、ベース部材80と、を備える。
【0014】
ロータ20は、中心軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、ケース21と、複数の磁石30と、シャフト31と、を有する。複数の磁石30およびシャフト31は、ケース21に固定される。
【0015】
ケース21は、軸方向に延びる略円筒状である。ケース21は、複数の磁石30、シャフト31の軸方向一方側の部分、ステータ50、第1ベアリング91、およびベース部材80の軸方向一方側の部分を内部に収容する。ケース21は、軸方向他方側に開口する。ケース21は、円筒部22と、天面部23と、傾斜部24と、平面部25と、シャフト保持部26と、を有する。
【0016】
図1に示すように、円筒部22は、中心軸J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。円筒部22は、シャフト31の軸方向一方側の部分、ステータ50、第1ベアリング91、およびベース部材80の軸方向一方側の部分を径方向外側から囲む。円筒部22の軸方向他方側の端部には、軸方向他方側に開口する開口部22aが設けられる。軸方向に見て、開口部22aは、中心軸J1を中心とする円形状である。
【0017】
天面部23は、中心軸J1を中心とする略円環板状である。天面部23の板面は、軸方向を向いている。天面部23の径方向外側の端部は、円筒部22の軸方向一方側の端部と繋がる。天面部23は、ステータ50よりも軸方向一方側に位置する。
【0018】
傾斜部24は、中心軸J1を中心とするすり鉢状である。傾斜部24の径方向外側の端部は、天面部23の径方向内側の端部と繋がる。傾斜部24は、径方向内側に向かうにしたがって、軸方向他方側に位置する。
【0019】
平面部25は、中心軸J1を中心とする略円環板状である。平面部25の板面は、軸方向を向いている。平面部25の径方向外側の端部は、傾斜部24の径方向内側の端部と繋がる。
【0020】
シャフト保持部26は、中心軸J1を中心として軸方向一方側に突出する円筒状である。シャフト保持部26の軸方向他方側の端部は、平面部25の径方向内側の端部と繋がる。軸方向において、シャフト保持部26の軸方向一方側の端部は、天面部23よりも、軸方向他方側に位置する。シャフト保持部26の内周面には、シャフト31が固定される。
【0021】
複数の磁石30は、それぞれ、軸方向に延びる板状である。各磁石30の板面は、それぞれ、径方向を向いている。図3に示すように、軸方向に見て、各磁石30の径方向外側を向く面は、円筒部22の内周面に沿って延びる円弧状である。軸方向に見て、各磁石30の径方向内側を向く面は、中心軸J1を中心とする円弧状である。各磁石30は、それぞれ、円筒部22の内周面に固定される。各磁石30は、それぞれ、ステータ50と径方向に隙間を介して対向する。各磁石30は、それぞれ、周方向に沿って配置される。本実施形態において、磁石30は、8個設けられる。周方向に隣り合う磁石30の磁極は、互いに異極である。ロータ20は、N極が径方向内側を向く第1磁石30Nと、S極が径方向内側を向く第2磁石30Sを、それぞれ、4個ずつ有する。なお、ロータ20に設ける磁石30の個数は8個に限定されず、6個以下の偶数個でもよいし、10個以上の偶数個でもよい。
【0022】
図1に示すように、シャフト31は、中心軸J1に沿って延びる略円柱状である。シャフト31の軸方向一方側の端部は、シャフト保持部26から軸方向一方側に突出する。シャフト31の軸方向他方側の端部は、開口部22aを介して、ケース21から軸方向他方側に突出する。ケース21の内部において、シャフト31は、第1ベアリング91に支持される。ケース21よりも軸方向他方側において、シャフト31は、第2ベアリング92に支持される。これらにより、シャフト31は、中心軸J1を中心として回転可能である。また、上述のように、シャフト31は、ケース21のシャフト保持部26の内周面に固定されるため、ロータ20は、中心軸J1を中心として回転可能である。なお、図3に示すように、本実施形態において、ロータ20は、中心軸J1を中心として回転方向Rに向けて回転する。すなわち、ロータ20は、中心軸J1を中心として周方向一方側(+θ側)に回転する。
【0023】
図1に示すように、シャフト31には、貫通孔31aと、雄ネジ部31bと、が設けられる。貫通孔31aは、シャフト31のうち、第2ベアリング92よりも軸方向他方側の部分に設けられる。貫通孔31aは、シャフト31を径方向に貫通する円形状の孔である。貫通孔31aには、図示しないピンが挿入され固定される。雄ネジ部31bは、シャフト31の軸方向他方側の端部に設けられる。雄ネジ部31bは、シャフト31の外周面に設けられる雄ネジである。
【0024】
図1に示すように、ベース部材80は、ステータ50、第1ベアリング91、第2ベアリング92、および制御基板70を保持する。ベース部材80の軸方向一方側の部分は、ケース21の内部に配置される。ベース部材80の軸方向一方側の部分は、ステータ50の径方向内側に配置される。ベース部材80の軸方向他方側の部分は、開口部22aを介して、ケース21から軸方向他方側に突出する。ベース部材80は、基部81、連結部82、および脚部83を有する。
【0025】
基部81は、ベース部材80の軸方向他方側の部分である。基部81は、中心軸J1を中心として軸方向に突出する略円筒状である。基部81は、ケース21よりも軸方向他方側に配置される。基部81は、シャフト31および第2ベアリング92を径方向外側から囲む。基部81の内周面には、第2ベアリング92が固定される。基部81は、接続部81aを有する。
【0026】
接続部81aは、基部81の外周面の一部から径方向外側に延びる。接続部81aは、基部81の外周面に沿って間隔をあけて複数設けられる。本実施形態において、接続部81aは3個設けられる。各接続部81aの軸方向他方側の面には、それぞれ、軸方向一方側に窪む雌ネジ穴81bが設けられる。
【0027】
連結部82は、シャフト31を囲む略円環状である。連結部82の軸方向他方側の端部は、基部81の軸方向一方側の端部と繋がる。連結部82は、軸方向一方側に向かうにしたがって、径方向内側に位置するテーパ状である。連結部82の外周面には、径方向外側を向く基板保持面82aが設けられる。連結部82の外周面には、軸方向一方側を向く基板支持面82bが設けられる。基板支持面82bの径方向内側の端部は、基板保持面82aの軸方向他方側の端部と繋がる。
【0028】
脚部83は、中心軸J1を中心として軸方向に延びる略円筒状である。脚部83の軸方向一方側の部分は、ステータ50の径方向内側に配置される。脚部83は、シャフト31および第1ベアリング91の径方向外側に配置される。脚部83の軸方向他方側の端部は、連結部82の軸方向一方側の端部と繋がる。脚部83の外周面には、ステータ50が固定される。脚部83の内周面には、径方向内側を向く第1ベアリング保持面83aが設けられる。第1ベアリング保持面83aには、第1ベアリング91が固定される。
【0029】
第1ベアリング91および第2ベアリング92は、それぞれ、シャフト31を回転可能に支持する。図1に示すように、第1ベアリング91は、第1ベアリング保持面83aに固定される。第2ベアリング92は、基部81の内周面に固定される。本実施形態において、第1ベアリング91および第2ベアリング92は、ボールベアリングである。第1ベアリング91および第2ベアリング92は、ボールベアリング以外の転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよい。
【0030】
図1に示すように、ステータ50は、ロータ20の径方向内側、すなわち径方向一方側に配置される。ステータ50は、中心軸J1を中心とする略環状である。ステータ50は、シャフト31、第1ベアリング91、およびベース部材80を径方向外側から囲む。上述のように、ステータ50は、脚部83の外周面に固定される。ステータ50は、ステータコア51と、複数のコイル59と、を有する。
【0031】
ステータコア51は、中心軸J1を中心とする略環状である。図3に示すようにステータコア51は、ロータ20と径方向に対向する。より詳細には、ステータコア51は、複数の磁石30と径方向に隙間を介して対向する。ステータコア51は、磁性を有する。ステータコア51は、コアバック部52と、ティース部53と、を有する。
【0032】
コアバック部52は、中心軸J1を中心とする環状である。図1に示すように、コアバック部52の内周面は、脚部83の外周面に固定される。これにより、ステータ50は、ベース部材80に固定される。
【0033】
図3に示すように、ティース部53は、コアバック部52から径方向外側に延びる。ティース部53の径方向外側の端部は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ティース部53は、コアバック部52の径方向外側を向く面、すなわち径方向他方側を向く面に沿って等間隔をあけて複数配置される。本実施形態において、ティース部53は、8個設けられる。各ティース部53は、それぞれ、ティース本体部54と、アンブレラ部55と、を有する。
【0034】
ティース本体部54は、コアバック部52から、径方向外側、すなわち径方向他方側に延びている。軸方向に見て、ティース本体部54は、略長方形状である。
【0035】
アンブレラ部55は、ティース本体部54の先端と繋がる。アンブレラ部55は、ティース本体部54よりも周方向の両側に突出している。アンブレラ部55は、ロータ20と径方向に間隔をあけて対向する。軸方向に見て、アンブレラ部55の径方向外側を向く面は、中心軸J1を中心とする略円弧状である。アンブレラ部55の径方向外側、すなわち径方向他方側を向く面には、径方向内側に向けて窪む溝部56が設けられる。溝部56については、後段で詳細に説明する。
【0036】
図3に示すように、複数のコイル59は、それぞれ、ステータコア51のティース本体部54に装着される。本実施形態において、コイル59は、8個設けられる。各コイル59は、互いに直列に接続される。各コイル59は、それぞれ、制御基板70と電気的に接続される。制御基板70を介して、図示しない外部電源から各コイル59に電流が供給されると、各コイル59それぞれは、電磁石を構成し、アンブレラ部55の径方向外側を向く面には磁極が構成される。互いに隣り合うティース本体部54に装着されるコイル59の巻回方向は逆方向である。そのため、周方向に互いに隣り合うアンブレラ部55の径方向外側を向く面に構成される磁極は異極である。
【0037】
制御基板70は、複数のコイル59に供給する電流を制御する。図1に示すように、制御基板70は、シャフト31および連結部82を径方向外側から囲む円環板状である。制御基板70の板面は、軸方向を向いている。制御基板70は、ケース21およびステータ50よりも、軸方向他方側に配置される。制御基板70の内周面は、ベース部材80の基板保持面82aと固定される。これにより、制御基板70は、ベース部材80に固定される。制御基板70の軸方向他方側を向く面のうち、径方向内側の部分は、基板支持面82bによって軸方向に支持される。これにより、軸方向における制御基板70の位置が決まる。制御基板70には、図示しない外部電源、および複数のコイル59が電気的に接続される。外部電源の電力は、制御基板70を介して、コイル59に供給される。より詳細には、外部電源の電圧は、制御基板70において、直流電圧に変換され、複数のコイル59に供給される。
【0038】
図2に示すように、本実施形態の単相モータ10を備える扇風機40は、モータハウジング41と、羽根部材42と、スピンナー43と、を備える。モータハウジング41は、回転軸J2と中心として回転軸方向に延びる円筒状である。なお、本実施形態において、回転軸J2は、Y軸方向に延びる仮想軸線であり、中心軸J1と略一致する。モータハウジング41の内部には、単相モータ10が収容される。モータハウジング41を挟んで、図示しないネジが軸方向他方側から雌ネジ穴81b(図1参照)に締め込まれると、ベース部材80(図1参照)とモータハウジング41とが互いに固定される。これにより、単相モータ10は、モータハウジング41に固定される。
【0039】
羽根部材42は、回転軸J2を中心とするファンである。羽根部材42には、羽根部材42を軸方向に貫通する中央孔42aが設けられる。軸方向に見て、中央孔42aは、回転軸J2を中心とする略円形状である。中央孔42aには、シャフト31の軸方向他方側の部分が通される。羽根部材42のうち、中央孔42aの径方向外側の部分には、図示しない凹部が設けられる。貫通孔31a(図1参照)に固定される図示しないピンが、凹部に嵌め合わされると、ロータ20と羽根部材42とが接続される。
【0040】
スピンナー43は、回転軸J2を中心とする円柱状である。スピンナー43の軸方向一方側を向く面には、軸方向他方側に窪む図示しないスピンナー雌ネジ穴が設けられる。中央孔42aから軸方向他方側に突出するシャフト31の雄ネジ部31b(図1参照)に、スピンナー雌ネジ穴が締め込まれると、スピンナー43はシャフト31に固定される。また、スピンナー43の軸方向一方側を向く面は、羽根部材42の軸方向他方側を向く面と接触する。これにより、軸方向における羽根部材42の位置が決まり、羽根部材42はシャフト31に固定される。そのため、ロータ20が中心軸J1周りに回転すると、羽根部材42は回転軸J2周りに回転し、扇風機40は軸方向他方側に向けて送風する。
【0041】
上述のように、本実施形態において、アンブレラ部55の径方向外側を向く面には、径方向内側に窪む溝部56が設けられる。図4に示すティース部中心線Lcは、軸方向に見て、ティース本体部54の周方向の中心および中心軸J1の両方を通る仮想線である。本実施形態において、溝部56は、第1溝部57および第2溝部58を有する。軸方向に見て、第1溝部57および第2溝部58は、それぞれ、略矩形状である。第1溝部57は、ティース部中心線Lcよりも周方向一方側(+θ側)に設けられる。第2溝部58は、ティース部中心線Lcよりも周方向他方側(-θ側)に設けられる。なお、本明細書において、「溝部」、「第1溝部」、「第2溝部」は、溝が設けられる領域を表す概念であり、それぞれ複数の溝を有し得る。本実施形態において、第1溝部57および第2溝部58は、それぞれ、1つの溝によって構成される。
【0042】
次に、第1溝部57および第2溝部58の形状について説明する。以下の説明において、溝部とティース部中心線Lcとの間の距離は、溝部の周方向の中心とティース部中心線Lcとの周方向の距離である。溝部とティース部中心線Lcとの間の距離は、溝部の周方向の中心および中心軸J1の両方を通る直線と、ティース部中心線Lcとが成す角度で説明する場合がある。以下の説明において、溝部の周方向の中心および中心軸J1の両方を通る直線と、ティース部中心線Lcとが成す角度を、溝部の位置角度と呼ぶ。溝部の周方向の寸法は、溝部の周方向両端の間の寸法である。溝部の径方向の寸法は、溝部の径方向両端の間の寸法である。また、以下の説明において、溝部の形状は、溝部の周方向の寸法および溝部の径方向の寸法に加えて、溝部の位置角度も含む。つまり、2つの溝部の周方向の寸法および径方向の寸法が同じ寸法であっても、2つの溝部の位置角度が互いに異なる場合、2つの溝部の形状は異なる。
【0043】
図4に示すように、本実施形態における、第1溝部57の位置角度θ1は、第2溝部58の位置角度θ2よりも小さい。すなわち、第1溝部57とティース部中心線Lcとの間の距離は、第2溝部58とティース部中心線Lcとの間の距離よりも短い。第1溝部57の周方向の寸法W1は、第2溝部58の周方向の寸法W2よりも大きい。つまり、第1溝部57の周方向の寸法W1と、第2溝部58の周方向の寸法W1とが、互いに異なる。また、径方向に見て、第1溝部57は、ティース本体部54と重なる。径方向に見て、第2溝部58は、ティース本体部54と重ならない。第1溝部57の径方向の寸法D1は、第2溝部58の径方向の寸法D2よりも大きい。つまり、第1溝部57の径方向の寸法D1と、第2溝部58の径方向の寸法D2とが、互いに異なる。
【0044】
これらにより、軸方向に見て、第1溝部57の形状および第2溝部58の形状は、ティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。そのため、アンブレラ部55の径方向外側、すなわち径方向他方側を向く面は、溝部56によりティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。よって、単相モータ10の駆動が停止する際に、各磁石30の周方向における中心が、ティース部中心線Lcよりも、回転方向Rにずれてロータ20が停止する。したがって、図3に示すように、単相モータ10の始動時において、ロータ20は回転方向Rに向けて回転できる。なお、アンブレラ部55の径方向外側を向く面が、溝部56によりティース部中心線Lcに対して互いに非対称であるならば、第1溝部57および第2溝部58を構成する溝の個数は1個に限定されず、第1溝部57および第2溝部58は、2個以上の溝を有していてもよい。また、第1溝部57または第2溝部58の一方は、設けられなくてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の単相モータ10の回転トルクリップルの低周波成分について説明する。以下では、2つの溝の形状がティース部中心線Lcに対して互いに対称である比較例のステータ150、2つの溝の位置角度のみがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である変形例1のステータ250、2つの溝の周方向の寸法のみがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である変形例2のステータ350、2つの溝の径方向の寸法のみがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である変形例3のステータ450それぞれの回転トルクリップルの低周波成分を比較しつつ説明する。
【0046】
<比較例>
図5に示すように、比較例のステータ150のステータコア151では、第1溝部157の位置角度θ11と第2溝部158の位置角度θ21は同じ大きさである。第1溝部157の周方向の寸法W11と第2溝部158の周方向の寸法W21は同じ寸法である。第1溝部157の径方向の寸法D11と第2溝部158の径方向の寸法D21は同じ寸法である。つまり、比較例の溝部156は、第1溝部157の形状と第2溝部158の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに対称である。比較例のステータ150のその他の構成は、本実施形態のステータ50のその他の構成と同様である。
【0047】
<変形例1>
図6に示すように、本実施形態の変形例1のステータ250のステータコア251では、第1溝部257の位置角度θ12は、第2溝部258の位置角度θ22よりも小さい。つまり、第1溝部257とティース部中心線Lcとの間の距離は、第2溝部258とティース部中心線Lcとの間の距離よりも短い。また、径方向に見て、第1溝部257は、ティース本体部54と重なり、第2溝部258は、ティース本体部54と重ならない。第1溝部257の周方向の寸法W12と第2溝部258の周方向の寸法W22は同じ寸法である。第1溝部257の径方向の寸法D12と第2溝部258の径方向の寸法D22は同じ寸法である。以上より、変形例1の溝部256は、第1溝部257の形状と第2溝部258の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。変形例1のステータ250のその他の構成は、本実施形態のステータ50のその他の構成と同様である。
【0048】
<変形例2>
図7に示すように、本実施形態の変形例2のステータ350のステータコア351では、第1溝部357の位置角度θ13と第2溝部358の位置角度θ23は同じ大きさである。第1溝部357の周方向の寸法W13は、第2溝部358の周方向の寸法W23よりも小さい。つまり、第1溝部357の周方向の寸法W13と、第2溝部358の周方向の寸法W23とが、互いに異なる。第1溝部357の径方向の寸法D13と第2溝部358の径方向の寸法D23は同じ寸法である。以上より、変形例2の溝部356は、第1溝部357の形状と第2溝部358の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。変形例2のステータ350のその他の構成は、本実施形態のステータ50のその他の構成と同様である。
【0049】
<変形例3>
図8に示すように、本実施形態の変形例3のステータ450のステータコア451では、第1溝部457の位置角度θ14と第2溝部458の位置角度θ24は同じ大きさである。第1溝部457の周方向の寸法W14と第2溝部458の周方向の寸法W24は同じ寸法である。第1溝部457の径方向の寸法D14は、第2溝部458の径方向の寸法D24よりも小さい。つまり、第1溝部457の径方向の寸法D14と、第2溝部458の径方向の寸法D24とが、互いに異なる。以上より、変形例3の溝部456は、第1溝部457の形状と第2溝部458の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。変形例3のステータ450のその他の構成は、本実施形態のステータ50のその他の構成と同様である。
【0050】
<変形例4>
図9に示すように、本実施形態の変形例4のステータ550のステータコア551では、第1溝部557の位置角度θ15は、第2溝部558の位置角度θ25よりも大きい。つまり、第1溝部557とティース部中心線Lcとの間の距離は、第2溝部558とティース部中心線Lcとの間の距離よりも長い。第1溝部557の周方向の寸法W15は、第2溝部558の周方向の寸法W25よりも小さい。第1溝部557の径方向の寸法D15と第2溝部558の径方向の寸法D25は同じ寸法である。以上より、変形例4の溝部556は、第1溝部557の形状と第2溝部558の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。変形例4のステータ550のその他の構成は、本実施形態のステータ50のその他の構成と同様である。
【0051】
次に、比較例のステータ150を用いた単相モータ110における騒音レベルの実験結果について説明する。図10は、単相モータ110を駆動する際の騒音レベルを示す図である。横軸は、周波数である。縦軸は、騒音レベルである。なお、本実験におけるロータ20の回転速度は1000rpmである。図10に示すように、単相モータ110を駆動する際の騒音レベルは、267Hz近傍の低周波成分が大きい。そのため、単相モータ110の低周波の騒音を抑制するためには、この267Hz近傍の騒音を抑制する必要がある。なお、周波数が267Hzである騒音の周期は、ロータが一周する周期の1/16の周期と同じ周期である。
【0052】
また、騒音レベルは、単相モータ110のトルクリップルと相関する。図示は省略するが、上記の実験において、単相モータ110の回転トルクリップルを周波数解析すると、回転トルクリップルのうち、ロータが一周する周期の1/16の周期の回転トルクリップル成分(以下の説明では、回転トルクリップルの16次成分と呼ぶ)が大きいことが分かった。したがって、回転トルクリップルの16次成分を低減することによって、低周波の騒音を効果的に抑制できる。
【0053】
図11に、比較例のステータ150、変形例1~3のステータ250,350,450、および本実施形態のステータ50を用いた場合における、単相モータの回転トルクリップルの16次成分を示す。まず、比較例のステータ150を用いた単相モータ110と、変形例1のステータ250を用いた単相モータ210とを比較すると、単相モータ110の回転トルクリップルの16次成分に対して、単相モータ210の回転トルクリップルの16次成分は、約31%小さい。よって、本実施形態の変形例1によれば、第1溝部257とティース部中心線Lcとの間の距離が、第2溝部258とティース部中心線との間の距離よりも短く、第1溝部257の形状と第2溝部258の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。したがって、回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ210の駆動時における騒音の低周波成分を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態の変形例1によれば、径方向に見て、第1溝部257は、ティース本体部54と重なり、第2溝部258は、ティース本体部54と重ならない。つまり、周方向において、第1溝部257は、ティース部中心線Lcに近い位置に配置され、第2溝部258は、ティース部中心線Lcから遠い位置に配置される。したがって、回転トルクリップルの低周波成分を低減できる効果を高めることができ、単相モータ210の駆動時における騒音の低周波成分をより好適に抑制できる。
【0055】
次に、単相モータ110と、変形例2のステータ350を用いた単相モータ310とを比較すると、単相モータ110の回転トルクリップルの16次成分に対して、単相モータ310の回転トルクリップルの16次成分は約16%小さい。よって、本実施形態の変形例2によれば、第1溝部357の周方向の寸法W13と、第2溝部の周方向の寸法W23とが、互いに異なるため、第1溝部357の形状と第2溝部358の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。したがって、回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ310の駆動時における騒音の低周波成分を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態の変形例2によれば、第1溝部357の周方向の寸法W13が、第2溝部358の周方向の寸法W23よりも小さいため、第1溝部357の形状と第2溝部358の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。したがって、回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ310の駆動時における騒音の低周波成分を抑制できる。
【0057】
次に、単相モータ110と、変形例3のステータ450を用いた単相モータ410とを比較すると、単相モータ110の回転トルクリップルの16次成分に対して、単相モータ410の回転トルクリップルの16次成分は約5%小さい。よって、本実施形態の変形例3によれば、第1溝部457の径方向の寸法D1と、第2溝部458の径方向の寸法D2とが、互いに異なるため、第1溝部457の形状と第2溝部458の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。したがって、回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ410の駆動時における騒音の低周波成分を抑制できる。
【0058】
次に、単相モータ110と、変形例4のステータ550を用いた単相モータ510とを比較すると、単相モータ110の回転トルクリップルの16次成分に対して、単相モータ510の回転トルクリップルの16次成分は約10%小さい。よって、本実施形態の変形例4によれば、第1溝部557とティース部中心線Lcとの間の距離は、第2溝部558とティース部中心線Lcとの間の距離よりも長く、第1溝部557の周方向の寸法W15は、第2溝部558の周方向の寸法W25よりも小さいため、第1溝部557の形状と第2溝部558の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。したがって、回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ510の駆動時における騒音の低周波成分を抑制できる。
【0059】
次に、単相モータ110と、本実施形態のステータ50を用いた単相モータ10とを比較すると、単相モータ110の回転トルクリップルの16次成分に対して、単相モータ10の回転トルクリップルの16次成分は約80%小さい。よって、本実施形態によれば、第1溝部57とティース部中心線Lcとのとの間距離は、第2溝部58とティース部中心線Lcとの間距離よりも短く、径方向に見て、第1溝部57は、ティース本体部54と重なり、径方向に見て、第2溝部58は、ティース本体部54と重ならず、第1溝部57の周方向の寸法W1が、第2溝部58の周方向の寸法W2よりも大きく、第1溝部57の径方向の寸法D1が、第2溝部58の径方向の寸法D2よりも大きいため、第1溝部57の形状と第2溝部58の形状とがティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。したがって、回転トルクリップルの低周波成分をより低減でき、単相モータ10の駆動時における騒音の低周波成分をより好適に抑制できる。
【0060】
次に、図12および図13を用いて、本実施形態において回転トルクリップルの16次成分を抑制できる理由について説明する。図12は、比較例のステータ150を用いる単相モータ110の回転トルクの時間推移を示す図である。図13は、本実施形態のステータ50を用いる単相モータ10の回転トルクの時間推移を示す図である。図12および図13の横軸は時間であり、縦軸はトルクである。図12および図13において、通電トルク、コギングトルク、および回転トルクを、それぞれ、点線、一点鎖線、および実線で示す。なお、通電トルクとは、ステータが有するコイル59に電流を供給して発生する、ロータ20とステータとの間の電磁力によって、ロータ20に加わるトルクである。また、回転トルクとは、ロータ20に与えられるトルクであり、通電トルクとコギングトルクとを足し合わせたトルクである。また、図12および図13に示す通電トルク、コギングトルク、および回転トルクは、それぞれのトルクの16次成分の大小関係を分かり易くするため、15msec間におけるそれぞれのトルクそれぞれの平均トルクが0となるように補正して示される。また、本実験において、ロータ20の回転速度は1000rpmである。したがって、回転トルクリップルの16次成分の周期は、約3.8msecである。
【0061】
図12に示すように、単相モータ110が駆動される際の通電トルクは、約3.8msec周期で正弦波状に変動する。また、コギングトルクも、約3.8msec周期で正弦波状に変動するが、コギングトルクリップルの16次成分は、通電トルクリップルの16次成分よりも小さい。また、コギングトルクリップルの16次成分の位相と、通電トルクリップルの16次成分の位相とのずれは約90°である。そのため、回転トルクリップルの16次成分は、通電トルクリップルの16次成分とほぼ同じである。つまり、第1溝部157の形状と第2溝部158の形状がティース部中心線Lcに対して互いに対称である、単相モータ110では、コギングトルクリップルの16次成分によって、通電トルクリップルの16次成分を打ち消す効果が小さい。
【0062】
図13に示すように、単相モータ10が駆動される際の通電トルクは、図12に示す、単相モータ110の通電トルクと同様である。コギングトルクは、約3.8msec周期で正弦波状に変動するが、コギングトルクリップルの16次成分は、単相モータ110のコギングトルクリップルの16次成分よりも大きい。また、コギングトルクリップルの16次成分の位相と、通電トルクリップルの16次成分の位相とのずれは約180°である。したがって、コギングトルクリップルの16次成分によって、通電トルクリップルの16次成分を打ち消す効果が非常に大きくなり、回転トルクリップルの16次成分が低減される。つまり、第1溝部57の形状と第2溝部58の形状がティース部中心線Lcに対して互いに非対称である、単相モータ10では、コギングトルクリップルの16次成分を高めつつ、通電トルクリップルの16次成分の位相に対するコギングトルクリップルの16次成分の位相を大きくずらすことができるため、回転トルクリップルの16次成分を低減できる。
【0063】
よって、本実施形態によれば、第1溝部57の形状と第2溝部58の形状が、ティース部中心線Lcに対して互いに非対称であるため、ロータ20の各磁石30からティース部53のアンブレラ部55に入りこむ磁力線の磁束密度も、ティース部中心線Lcの周方向一方側(+θ側)と周方向一方側(-θ側)とで非対称となる。そのため、ロータ20が回転する際に、1つの磁石30からアンブレラ部55に入りこむ磁束密度の変動を大きくすることができ、且つ、1つの磁石30からアンブレラ部55に入りこむ磁束密度の変動の位相を変えることができる。そのため、コギングトルクリップルの16次成分を高めつつ、通電トルクリップルの16次成分の位相に対するコギングトルクリップルの16次成分の位相を大きくずらすことができる。したがって、回転トルクリップルの16次成分、すなわち回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ10の駆動時における騒音の低周波成分を好適に抑制できる。
【0064】
また、図示は省略するが、第1溝部57の形状と第2溝部58の形状が、ティース部中心線Lcに対して互いに非対称に設けられる、本実施形態の変形例1~3の単相モータ210,310,410においても、本実施形態の単相モータ10と同様に、コギングトルクリップルの16次成分を高めつつ、通電トルクリップルの16次成分の位相に対するコギングトルクリップルの16次成分の位相を大きくずらすことができる。したがって、回転トルクリップルの16次成分、すなわち、回転トルクリップルの低周波成分を低減でき、単相モータ210,310,410の駆動時における騒音の低周波成分を抑制できる。
【0065】
本実施形態によれば、ステータ50は、ロータ20と径方向に対向するステータコア51を有し、ステータコア51は、複数のティース部53を有し、ティース部53は、コアバック部52から径方向外側、すなわち径方向他方側に延びるティース本体部54と、ティース本体部54の先端と繋がり、ティース本体部54よりも周方向の両側に突出するアンブレラ部55と、を有する。アンブレラ部55の径方向外側を向く面には、軸方向に沿って延びる溝部56が設けられ、軸方向に見て、ティース本体部54の周方向の中心および中心軸J1の両方を通る仮想線をティース部中心線Lcとし、アンブレラ部55の径方向他方側を向く面は、溝部56によりティース部中心線Lcに対して互いに非対称である。よって、ロータ20の各磁石30からティース部53のアンブレラ部55に入りこむ磁力線の磁束密度を、ティース部中心線Lcの周方向一方側(+θ側)と周方向一方側(-θ側)とで非対称にできる。そのため、上述のように、コギングトルクリップルの16次成分を高めつつ、通電トルクリップルの16次成分の位相に対するコギングトルクリップルの16次成分の位相を大きくずらすことができ、回転トルクリップルの16次成分を低減できる。したがって、単相モータ10のトルクリップルの低周波成分を低減することができ、単相モータ10の駆動時における低周波の騒音を抑制できる。また、本実施形態の単相モータ10を備える扇風機40の駆動時における低周波の騒音を抑制できる。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。例えば、溝部の形状は、単相モータのトルクリップルの低周波成分を低減できるならばどのような形状でもよく、例えば、円形状および三角形状等の他の形状であってもよい。
【0067】
また、本発明が適用される単相モータの構成は、ステータの径方向外側にロータを配置するアウターロータ構成に限定されず、ステータの径方向内側にロータを配置する備えるインナーロータ構成であってもよい。
【0068】
本発明が適用される単相モータの用途は、特に限定されない。単相モータは、扇風機以外の機器に搭載されてもよい。なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0069】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向一方側に配置されるステータと、を備え、前記ステータは、前記ロータと径方向に対向するステータコアを有し、前記ステータコアは、環状のコアバック部と、前記コアバック部の径方向他方側を向く面に沿って配置される複数のティース部と、を有し、前記ティース部は、前記コアバック部から径方向他方側に延びるティース本体部と、前記ティース本体部の先端と繋がり、前記ティース本体部よりも周方向の両側に突出するアンブレラ部と、を有し、前記アンブレラ部の径方向他方側を向く面には、軸方向に沿って延びる溝部が設けられ、軸方向に見て、前記ティース本体部の周方向の中心および前記中心軸の両方を通る仮想線をティース部中心線とし、前記アンブレラ部の径方向他方側を向く面は、前記溝部により前記ティース部中心線に対して互いに非対称である、単相モータ。
(2) 前記溝部は、前記ティース部中心線よりも周方向一方側に設けられる第1溝部と、前記ティース部中心線よりも周方向他方側に設けられる第2溝部と、を有し、軸方向に見て、前記第1溝部の形状および前記第2溝部の形状は、前記ティース部中心線に対して互いに非対称である、(1)に記載の単相モータ。
(3) 前記第1溝部と前記ティース中心線との間の距離は、前記第2溝部と前記ティース中心線との間の距離よりも短い、(2)に記載の単相モータ。
(4) 径方向に見て、前記第1溝部は、前記ティース本体部と重なり、径方向に見て、前記第2溝部は、前記ティース本体部と重ならない、(3)に記載の単相モータ。
(5) 前記第1溝部の周方向の寸法と、前記第2溝部の周方向の寸法とが、互いに異なる、(2)~(4)のいずれかに記載の単相モータ。
(6) 前記第1溝部の周方向の寸法が、前記第2溝部の周方向の寸法よりも小さい、(5)に記載の単相モータ。
(7) 前記第1溝部の周方向の寸法が、前記第2溝部の周方向の寸法よりも大きい、(5)に記載の単相モータ。
(8) 前記第1溝部の径方向の寸法と、前記第2溝部の径方向の寸法とが、互いに異なる、(2)~(7)のいずれかに記載の単相モータ。
(9) 前記第1溝部の径方向の寸法が、前記第2溝部の径方向の寸法よりも大きい、(8)に記載の単相モータ。
(10) 前記第1溝部と前記ティース中心線とのとの間距離は、前記第2溝部と前記ティース中心線との間距離よりも短く、径方向に見て、前記第1溝部は、前記ティース本体部と重なり、径方向に見て、前記第2溝部は、前記ティース本体部と重ならず、前記第1溝部の周方向の寸法が、前記第2溝部の周方向の寸法よりも大きく、前記第1溝部の径方向の寸法が、前記第2溝部の径方向の寸法よりも大きい、(2)に記載の単相モータ。
(11) 前記ロータは、前記中心軸を中心として周方向一方側に回転する、(1)~(10)のいずれかに記載の単相モータ。
(12) 少なくとも、(1)~(11)に記載の単相モータと、前記ロータと接続される羽根部材と、を備える扇風機。
【符号の説明】
【0070】
10,210,310,410,510…単相モータ、20…ロータ、40…扇風機、42…羽根部材、50,250,350,450,550…ステータ、51,251,351,451,551…ステータコア、52…コアバック部、53,253,353,453,553…ティース部、54…ティース本体部、55,155,255,355,455,555…アンブレラ部、56,256,356,456,556…溝部、57,257,357,457,557…第1溝部、58,258,358,458,558…第2溝部、J1…中心軸、Lc…ティース部中心線
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