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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167218
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】リーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/02 20060101AFI20231116BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20231116BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H04B5/02
G06K7/10 104
H04B1/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078224
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】松下 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】大石 禎利
【テーマコード(参考)】
5K012
5K052
【Fターム(参考)】
5K012AB05
5K012AB12
5K012AC11
5K012AD04
5K012AE12
5K052BB02
5K052DD04
5K052FF32
(57)【要約】
【課題】 2種の応答器の双方を読み取るための時間を短縮可能とする。
【解決手段】 実施形態のリーダ装置は、送信部、打ち消し部及び復号部を備える。送信部は、第1の応答器に与えるコマンドを表した変調信号により搬送波を変調して得た質問波を送信する。打ち消し部は、第1の応答器とは別の第2の応答器にてバックスキャッタ方式で送信された応答波から、変調信号に応じた変調成分を打ち消す。復号部は、打ち消し部によって変調成分が打ち消された後の応答波に表されているデータを復号する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の応答器に与えるコマンドを表した変調信号により搬送波を変調して得た質問波を送信する送信部と、
前記第1の応答器とは別の第2の応答器にてバックスキャッタ方式で送信された応答波から、前記変調信号に応じた変調成分を打ち消す打ち消し部と、
前記打ち消し部によって変調成分が打ち消された後の応答波に表されているデータを復号する復号部と、
を具備するリーダ装置。
【請求項2】
前記打ち消し部は、前記応答波に応じた受信信号に前記変調信号により逆変調をかけることにより変調成分を打ち消す、
請求項1に記載のリーダ装置。
【請求項3】
前記打ち消し部は、前記変調信号により前記搬送波に逆変調をかけて得たローカル信号の成分を前記応答波から除去することにより変調成分を打ち消す、
請求項1に記載のリーダ装置。
【請求項4】
前記打ち消し部は、前記質問波に含まれる前記コマンドに応じて前記第1の応答器から第1の周波数帯域で送信された第1の応答波と、前記質問波に応じて前記第2の応答器から第2の周波数帯域で送信された第2の応答波とを含んだ受信波に応じた受信信号から、前記変調信号に応じた変調成分を打ち消し、
前記打ち消し部によって変調成分が打ち消された後の受信信号から、前記第1の周波数帯域の成分の第1の信号と及び前記第2の周波数帯域の成分の第2の信号とをそれぞれ分離する分離部をさらに備え、
かつ前記復号部は、前記分離部により分離された第1の信号から前記第1の応答波に表されているデータを復号し、前記分離部により分離された第2の信号から前記第2の応答波に表されているデータを復号する、
請求項1-請求項3のいずれか一項に記載のリーダ装置。
【請求項5】
前記第2の周波数帯域は前記質問波と同じ周波数帯域であり、前記第1の周波数帯域は前記質問波の周波数帯域から規定量だけシフトした周波数帯域である、
請求項4に記載のリーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグは、RTF(reader talk first)タグとTTF(tag talk first)タグとに大別される。RTFタグは、例えばEPC Global Gen2規格などの規格に従い、リーダから送信される電波の被変調部分に含まれるコマンドに応答する。TTFタグは、リーダから送信される電波を受けると、その電波の変調、無変調に拘わらず到来電波を検出するだけで、バックスキャッタ応答を行う。
このため、TTFタグに近接して存在しているRTFタグを読み取るべくリーダがコマンドを送信すると、TTFタグも応答してしまうことがある。そこで、TTFタグをFM0応答とし、RTFタグをミラーサブキャリア応答とすることによって、TTFタグからの応答波と、RTFタグからの応答波との周波数帯域を異ならせて、個々の応答波をフィルタにより抽出可能としている。
【0003】
しかしながら、RTFタグの読取のためのコマンドの無線伝送には、ASK(amplitude shift keying)が用いられている。このため、リーダがコマンドを送信している期間におけるTTFタグからの応答波にはASK変調波の成分が含まれており、応答データを正しく復号できる保証がない。そこでリーダは、RTFタグの読み取り中におけるTTFタグからの応答は無視している。つまりリーダが、RTFタグとTTFタグとの双方を読取対象とするならば、RTFタグを読み取る期間とTTFタグを読み取る期間とを別々とせざるを得ず、双方の読み取りに要する時間が長くなってしまう。
このような事情から、RTFタグ及びTTFタグのような2種の応答器の双方を読み取るための時間を短縮できることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-304008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、2種の応答器の双方を読み取るための時間を短縮できる通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のリーダ装置は、送信部、打ち消し部及び復号部を備える。送信部は、第1の応答器に与えるコマンドを表した変調信号により搬送波を変調して得た質問波を送信する。打ち消し部は、第1の応答器とは別の第2の応答器にてバックスキャッタ方式で送信された応答波から、変調信号に応じた変調成分を打ち消す。復号部は、打ち消し部によって変調成分が打ち消された後の応答波に表されているデータを復号する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るリーダ装置の要部回路構成を示すブロック図。
図2図1中の逆変調器の構成例を表すブロック図。
図3】RTFタグの読み取りに際して送受される電波の様子を表す図。
図4】RTFタグ及びTTFタグからの応答波のスペクトルを表す図。
図5図1に表すリーダ装置での各種処理による信号状態の変化の様子を表す図。
図6】変形実施形態としてのリーダ装置の要部回路構成を表すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下においては、RFIDタグが記憶するデータを読み取るリーダ装置を例に説明する。
図1は本実施形態に係るリーダ装置100の要部回路構成を示すブロック図である。
リーダ装置100は、RFID(radio frequency identification)タグ201,202に記憶されているデータを読み取る。
【0009】
RFIDタグ201は、RTFタグである。RFIDタグ202は、TTFタグである。そこで以下においては、RTFタグであるか、TTFタグであるかを区別する必要がある場合には「RTFタグ201」「TTFタグ202」と記し、区別する必要がない場合には「RFIDタグ201,202」と記すこととする。RTFタグは、第1の応答器の一例である。TTFタグ202は、第2の応答器の一例である。
【0010】
リーダ装置100は、発振器11、移相器12、DAC(digital to analog converter)13、ASK変調器14、BPF(band-pass filter)15、電力増幅器16、LPF(low-pass filter)17、アンテナ共用器18、給電線19、アンテナ20、ベクトル変調器21、DAC22、電力合成器23、逆変調器24、直交検波器25、BPF(band-pass filter)26、VGA(variable-gain amplifier)27、ADC(analog to digital converter)28、LPF29、VGA30、ADC31、LPF32、ADC33、制御部34、表示部35及び操作部36を含む。なお、アンテナ20はリーダ装置100に含めず、任意のアンテナを給電線19に接続可能としてもよい。またアンテナ20及び給電線19はリーダ装置100に含めず、任意のアンテナが接続された任意の給電線をアンテナ共用器18に接続可能としてもよい。
【0011】
リーダ装置100は、典型的には、上記の構成要素をいずれも備えた単体の装置として実現される。しかしながらリーダ装置100は、上記の構成要素を分担搭載した複数の装置を有線又は無線により接続して実現されてもよい。後者の実現形態は、例えば制御部34、表示部35及び操作部36を備えたモバイル情報端末を、それ以外の要素を搭載した通信ユニットに接続する形態が一例である。
【0012】
発振器11は、予め定められた周波数の正弦波を搬送波として発生する。
移相器12は、発振器11により発生された搬送波の位相を90度ずらすことで、余弦波をもう1つの搬送波として出力する。
【0013】
DAC13は、制御部34からディジタル状態で出力される直交送信ベースバンド信号を、アナログ化する。
ASK変調器14は、発振器11により発生された搬送波の振幅を変化させて、ASKされた送信信号を得る。本実施形態では、ASK変調器14は、直交変調回路を用いて構成する。そして、周波数シフトは生じさせず、振幅変化のみを生じさせるような直交送信ベースバンド信号を、制御部34からDAC13を介して直交変調回路に与えることにより、ASKされた送信信号を得る。
【0014】
BPF15は、ASK変調器14で得られた送信信号から、帯域制限のために低周波成分及び高周波成分を除去する。
電力増幅器16は、BPF15を通過した送信信号を、無線送信に適するレベルまで電力増幅する。
LPF17は、電力増幅器16により増幅された送信信号から、高調波成分を除去する。
【0015】
アンテナ共用器18は、入力端TI、入出力端TIO、出力端TOA及び出力端TOBを備える。LPF17を通過した送信信号は、入力端TIに入力される。アンテナ共用器18は、入力端TIに入力された送信信号を入出力端TIO及び出力端TOBより出力する。アンテナ共用器18は、入出力端TIOに入力された信号を出力端TOAより出力する。アンテナ共用器18の出力端TOAから出力される信号は、アンテナ20に生じる受信信号と自己干渉信号とが合成された信号であるが、この信号を以下では単に受信信号と称する。
【0016】
給電線19は、アンテナ共用器18の入出力端TIOから出力される送信信号をアンテナ20に供給する。給電線19は、アンテナ20に生じた受信信号をアンテナ共用器18の入出力端TIOに伝送する。
アンテナ20は、給電線19により供給される送信信号に応じた電波を放射する。アンテナ20は、到来する電波に応じた電気信号を受信信号として生じさせる。
【0017】
ベクトル変調器21は、アンテナ共用器18の出力端TOBから出力される送信信号を、DAC22から直交制御信号(以下、I制御信号及びQ制御信号と称する)で表されるベクトルに応じた振幅及び位相を持つ信号となるように変調する。ベクトル変調器21で変調された後の送信信号を、以下においてキャンセル信号と称する。
DAC22は、制御部34からディジタル状態で出力されるI制御信号及びQ制御信号をアナログ化して、ベクトル変調器21へと供給するI制御信号及びQ制御信号を得る。
電力合成器23は、アンテナ共用器18の出力端TOAから出力される受信信号に、ベクトル変調器21から出力されるキャンセル信号を電力合成する。これにより電力合成器23は、受信信号に含まれる自己干渉信号を低減する。
【0018】
逆変調器24は、ASK変調器14に入力されているIとQの直交ベースバンド信号をそれぞれ入力する。逆変調器24は、電力合成器23から出力された受信信号を、上記の変調波により逆変調する。
直交検波器25は、逆変調器24によって逆変調された後の受信信号を、発振器11及び移相器12からそれぞれ出力され90度の位相差を持つ2つの搬送波を用いて直交検波する。直交検波器25は、直交検波により得られるアナログ状態の受信ベースバンド信号を、並列に出力する。
【0019】
BPF26は、直交検波器25から出力された受信ベースバンド信号のそれぞれから、予め定められた周波数帯域の成分を抽出する。BPF26の通過帯域は、ミラーサブキャリア応答用として予め定められた周波数帯域である。つまり、BPF26は、受信ベースバンド信号から、RTFタグ201からの応答波に対応する信号を抽出する。
VGA27は、BPF26を通過した受信ベースバンド信号のそれぞれを、ADC28でのディジタル化に適するレベルとするべく、制御部34により指示される利得で増幅する。
ADC28は、VGA27で増幅された受信ベースバンド信号のそれぞれをディジタル化する。
かくして、BPF26、VGA27及びADC28は、RTFタグ201からの応答波に対応する受信ベースバンド信号の処理系を構成する。
【0020】
LPF29は、直交検波器25から出力された受信ベースバンド信号のそれぞれから、予め定められた周波数帯域の成分を抽出する。LPF26の通過帯域は、FM0応答用として予め定められた周波数帯域である。つまり、BPF26は、受信ベースバンド信号から、TTFタグ202からの応答波に対応する信号を抽出する。
VGA30は、LPF29を通過した受信ベースバンド信号のそれぞれを、ADC31でのディジタル化に適するレベルとするべく、制御部34により指示される利得で増幅する。
ADC31は、VGA30で増幅された受信ベースバンド信号のそれぞれをディジタル化する。
かくして、LPF29、VGA30及びADC31は、TTFタグ202からの応答波に対応する受信ベースバンド信号の処理系を構成する。
【0021】
LPF32は、直交検波器25から出力された受信ベースバンド信号のそれぞれに含まれる自己干渉信号の成分に相当する低周波帯域を抽出する。このLPF32により抽出される信号は、電力合成器23の出力に残留している自己干渉信号の成分を含む。そこでLPF32で抽出された信号を、以下においてはI残留信号及びQ残留信号と称する。
ADC33は、LPF32から出力されたI残留信号及びQ残留信号をそれぞれディジタル化する。
かくしてLPF32及びADC33は、自己干渉信号の処理系を構成する。
【0022】
制御部34は、CPU(central processing unit)341、平方加算回路342,343、2値化回路344,345、SJC制御回路346及びレジスタ347を含む。
CPU341は、RTFタグ201との通信時には、予め定められたシーケンスに従って、送信ベースバンド信号を出力する。CPU341は、2値化回路344から出力される受信信号に基づいて、RTFタグ201から送られたデータを再構築する。CPU341は、2値化回路345から出力される受信信号に基づいて、TTFタグ202から送られたデータを再構築する。
【0023】
平方加算回路342は、ADC28から出力される受信ベースバンド信号を個々に2乗した後に加算し、当該の加算結果を出力する。平方加算回路343は、ADC31から出力される受信ベースバンド信号を個々に2乗した後に加算し、当該の加算結果を出力する。
2値化回路344は、平方加算回路343からの出力値を予め定められた閾値で2値化する。2値化回路345は、平方加算回路343からの出力値を予め定められた閾値で2値化する。
【0024】
SJC制御回路346は、自己干渉信号をキャンセルするためのSJC(self-jammer cancellation)処理のために、ベクトル変調器21を制御する。例えばSJC制御回路346は、ADC33から出力されるI残留信号及びQ残留信号に基づいて、自己干渉信号を低減するためのキャンセル信号の振幅及び位相を決定し、当該振幅及び位相を持ったキャンセル信号を出力させるべくベクトル変調器21にI制御信号及びQ制御信号を与える。
【0025】
レジスタ347は、CPU341とSJC制御回路346との間でSJC処理のために授受される諸データを一時的に保存する。
表示部35は、CPU341の制御の下に、RFIDタグ201,202の読み取り結果など、利用者に通知すべき各種の情報を表示する。
操作部36は、リーダ装置100の動作に関わる利用者による各種の指示を入力し、指示の内容をCPU341に通知する。
【0026】
図2は逆変調器24の構成例を表すブロック図である。
逆変調器24は、移相器241、反転増幅回路242,243、オフセット加算回路244,245、積算回路246,247及び加算回路248を含む。
移相器241には、電力合成器23から出力された受信信号が入力される。移相器241は、入力された受信信号の位相を90度ずらす。
【0027】
反転増幅回路242には、DAC13から出力されるI変調信号が入力される。反転増幅回路243には、DAC13から出力されるQ変調信号が入力される。反転増幅回路242,243は、入力される各変調信号の極性を反転しつつ、その振幅を調整する。
オフセット加算回路244には、反転増幅回路242から出力されるI変調信号が入力される。オフセット加算回路245には、反転増幅回路243から出力されるQ変調信号が入力される。オフセット加算回路244,245は、反転増幅回路242,243のオフセット電圧によりI変調信号及びQ変調信号にそれぞれ生じるオフセット成分を相殺するように予め定められたオフセット値を、入力されるI変調信号及びQ変調信号にそれぞれ加算する。
【0028】
積算回路246には、電力合成器23から出力された受信信号と、オフセット加算回路244から出力されたI変調信号とが入力される。積算回路247には、移相器241から出力された受信信号と、オフセット加算回路245から出力されたQ変調信号とが入力される。積算回路246,247はそれぞれ、入力される受信信号に、I変調信号又はQ変調信号を積算する。
加算回路248は、積算回路246,247のそれぞれの出力を加算する。加算回路248の出力は、逆変調器24の出力として直交検波器25に入力される。
【0029】
次に以上のように構成されたリーダ装置100の動作について説明する。
CPU341は、RTFタグ201を読み取るに当たっては、予め定められたシーケンスに従って送信信号を変化させるべく、DAC13へと出力する送信ベースバンド信号を変化させる。なお、RTFタグ201の読取のためのシーケンスは種々知られており、それらの何れを用いるのでも構わないが、以下ではEPC Global Gen2規格を適用する場合の具体例を説明する。
【0030】
図3はRTFタグ201の読み取りに際して送受される電波の様子を表す図である。
図3中のQWAは、CPU341が上記のように送信ベースバンド信号を変化させることによりアンテナ20から放射される電波(以下、質問波と称する)の状態変化を表す。RWAは、質問波に応じてのRTFタグ201からの応答波の状態変化を表す。RWBは、質問波に応じてのTTFタグ202からの応答波の状態変化を表す。
【0031】
期間PAにおいて質問波は、無変調搬送波(CW)である。期間PBにおいて質問波は、Selectコマンドを表す変調信号によりASKされている。期間PCにおいて質問波は、無変調搬送波である。期間PDにおいて質問波は、Queryコマンドを表す変調信号によりASKされている。期間PEにおいて質問波は、無変調搬送波である。期間PFにおいて質問波は、Ackコマンドを表す変調信号によりASKされている。期間PEにおいて質問波は、無変調搬送波である。
【0032】
このような質問波は、CPU341による変化される送信ベースバンド信号に対するDAC13、ASK変調器14、BPF15、電力増幅器16、LPF17及びアンテナ共用器18での各種の処理を経て得られた送信信号が給電線19を介してアンテナ20に供給されることによりアンテナ20から送信される。かくしてこれらの各部により、第1の応答器としてのRTFタグ201に与えるコマンドを表した質問波を送信する送信部としての機能が実現される。
【0033】
RTFタグ201は、Selectコマンドで指定されるタグに該当する場合に、Queryコマンドに応答して、期間PEにおいてRN16をバックスキャッタ送信する。RN16は、16ビットの乱数である。そしてRTFタグ201は、自らが送信したRN16に関するAckコマンドを期間PFにて受けたことに応じて期間PGにて、自らが記憶している応答データをバックスキャッタ送信する。なお応答データには、RTFタグ201を識別するためのID(identifier)を含む。
【0034】
このときTTFタグ202は、質問波として送信されている搬送波を受信すると、これに応答して、自らが記憶している応答データをバックスキャッタ送信する。なお応答データには、TTFタグ202を識別するためのIDを含む。
【0035】
図4はRTFタグ201及びTTFタグ202からの応答波のスペクトルを表す図である。
f0は、無変調搬送波の周波数である。TTFタグ202は、バックスキャッタ送信に当たっては、FM0法により無変調搬送波を、周波数をそのままに反射させる。このためTTFタグ202からの応答波は、周波数f0を中心としたスペクトルSPAとなる。
RTFタグ201は、バックスキャッタ送信に当たっては、ミラーサブキャリア法により無変調搬送波を、±200kHzの周波数シフトを生じさせつつ反射させる。このためRTFタグ201からの応答波は、f0±200kHzを中心としたスペクトルSPB,SPCとなる。
【0036】
RTFタグ201又はTTFタグ202からの応答波によりアンテナ20に生じた受信信号は、給電線19及びアンテナ共用器18を介して電力合成器23へと入力される。そして受信信号は、ベクトル変調器21から出力されるキャンセル信号が電力合成器23により合成されることによって、アンテナ共用器18及び給電線19で生じる自己干渉信号が低減される。こののち受信信号は、逆変調器24に入力される。
【0037】
受信信号は、逆変調器24では、反転増幅回路242により反転増幅されたI変調信号が積算回路246にて積算される。また受信信号は、移相器241で位相が90度ずらされた上で、反転増幅回路243により反転増幅されたQ変調信号が積算回路247にて積算される。そして積算回路246,247のそれぞれから出力される受信信号は、加算回路248により互いに加算される。これにより加算回路248の出力としては、電力合成器23から出力された受信信号を、ASK変調器14でのASKに用いたI変調信号及びQ変調信号によって逆変調した信号となる。つまり逆変調器24では、電力合成器23から出力された受信信号にASKによる変調成分が含まれる場合に、当該の変調成分が打ち消される。かくして逆変調器24は、打ち消し部として機能する。
【0038】
図5はリーダ装置100での各種処理による信号状態の変化の様子を表す図である。
信号SCは、信号SAで表す状態にある質問波を受けて信号SBで表す応答データでTTFタグ202がバックスキャッタ送信した際の応答波を表す。図5に表す信号SCは、質問波におけるASKによる振幅変化と、応答データによる反射率の変化に応じた振幅変化とが混在し、振幅が3段階で変化している。
【0039】
逆変調後の受信信号は、直交検波器25により直交検波される。直交検波器25により得られる受信ベースバンド信号のそれぞれから、ミラーサブキャリア応答の周波数帯域の成分が、BPF26により抽出される。また直交検波器25により得られる受信ベースバンド信号のそれぞれから、FM0応答の周波数帯域の成分が、LPF29により抽出される。かくして、RTFタグ201からの応答データに関する信号成分が、VGA27で増幅された上でADC28によりディジタル化されて制御部34に与えられる。また、TTFタグ202からの応答データに関する信号成分が、VGA30で増幅された上でADC31よりディジタル化されて制御部34に与えられる。このように、BPF26及びLPF29は、分離部としての機能を実現する。
【0040】
RTFタグ201に関する受信ベースバンド信号は平方加算回路342により、またTTFタグ202に関する受信ベースバンド信号は平方加算回路343により、それぞれ平方加算される。これらの平方加算により、応答波における振幅の大きさに応じた信号レベルを持った信号が平方加算回路342,343の出力信号となる。
【0041】
RTFタグ201がRN16及び応答データを送信するときは、質問波は無変調搬送波であるから、応答波は応答データのみに基づく2段階の振幅変動を含む。そしてこの期間には変調信号にレベル変動は生じないから、逆変調器24での逆変調は行われず、受信信号はそのまま逆変調器24を通過する。かくして直交検波器25に入力される時点で受信信号は、RTFタグ201からの応答データのみに基づく2段階の振幅変動を含んだ信号である。この結果、平方加算回路342の出力は、RTFタグ201からの応答データと同様にレベルが変化する信号となる。つまり、平方加算回路342の出力を2値化回路344によって適宜の閾値で2値化することによって、RTFタグ201からの応答データを復号できる。このように平方加算回路342及び2値化回路344により、第1の応答器としてのRTFタグ201が送信した応答波に表されているデータを復号する復号部としての機能が実現される。
【0042】
以上のようにRTFタグ201を読み取るべくリーダ装置100から送信された搬送波成分に応答してTTFタグ202が応答データを送信するとき、図3における期間PB,PD,PFに関しては、応答波にASKの変調成分が残留し、例えば図5の信号SCのように3段階、または4段階の振幅変動を含むことになる。このため、平方加算回路343の出力は、応答データとは異なり、例えば信号SDのように3段階以上でレベルが変化する信号となる。
【0043】
信号SDを閾値THで2値化すると、その結果は信号SEとなり、応答データである信号SBとは一致しない。つまり2値化の結果は、応答データを正しく復号した信号にはなっていない。
しかしながら本実施形態では、信号SCのような応答波を信号SFのような逆変調信号により逆変調することにより、受信信号は信号SGのような、応答データに応じた2段階の振幅変動のみを含んだ信号とされる。
【0044】
かくして平方加算回路343の出力は信号SHのような2段階の振幅変動の信号となり、閾値THでの2値化を2値化回路345で行うことによって、信号SBを精度良く復号できる。このように平方加算回路343及び2値化回路345により、第2の応答器としてのTTFタグ202が送信した応答波に含まれるデータを復号する復号部としての機能が実現される。
【0045】
以上のようにリーダ装置100によれば、RTFタグ201に関する読み取りを行いながら、同時にTTFタグ202が応答してきた場合には、このTTFタグ202からの応答データも誤りなく復調することができる。つまりRTFタグ201とTTFタグ202とを同時に読み取ることが可能となり、RTFタグ201及びTTFタグ202がともに読取対象となっている状況における読み取りの効率の向上を図ることが可能である。
【0046】
この実施形態は、次のような変形実施が可能である。
図6は変形実施形態としてのリーダ装置101の要部回路構成を表すブロック図である。
なお図6において図1に表されるのと同一の要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
リーダ装置101は、リーダ装置100と同じ構成要素を含む。ただしリーダ装置101は、逆変調器24の配置がリーダ装置100と異なる。
リーダ装置101では、電力合成器23から出力された変調波をそのまま直交検波器25に入力している。そして逆変調器24には、発振器11より出力された搬送波を入力している。かくして逆変調器24は、搬送波に逆変調をかける。そして逆変調後の搬送波と、当該逆変調後の搬送波の位相を移相器12により90度ずらした搬送波とを、直交検波器25に入力する。
このような構成によっても、直交検波器25からの出力としては、リーダ装置100の場合と同様となり、リーダ装置100と同様の効果を得ることができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
11…発振器、12…移相器、13,22…DAC、14…ASK変調器、15…BPF、16…電力増幅器、17…LPF、18…アンテナ共用器、19…給電線、20…アンテナ、21…ベクトル変調器、23…電力合成器、24…逆変調器、25…直交検波器、26…BPF、27,30…VGA、28,31,33…ADC、29,32…LPF、34…制御部、35…表示部、36…操作部、100,101…リーダ装置、201…RFIDタグ,RTFタグ、202…RFIDタグ,TTFタグ、241…移相器、242,243…反転増幅回路、244,245…オフセット加算回路、245…オフセット加算回路、246,247…積算回路、248…加算回路、341…CPU、342,343…平方加算回路、344,345…2値化回路、346…SJC制御回路、347…レジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6