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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167234
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】貴金属線材の構造
(51)【国際特許分類】
   B21C 37/04 20060101AFI20231116BHJP
   A44C 9/00 20060101ALI20231116BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20231116BHJP
   B21D 53/44 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
B21C37/04 C
A44C9/00
A44C25/00 A
B21D53/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078258
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】595153354
【氏名又は名称】株式会社江商
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博一
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA02
3B114AA03
3B114AA06
3B114JA00
3B114JA09
(57)【要約】
【課題】
本発明は、今まで不可能とされていた軽量かつ高強度という問題をクリアにし、デザインの自由度、コストの削減の両方面に広く反映させることができる新規の貴金属線材の構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
貴金属パイプと、前記貴金属パイプの内周部分に挿入される硬質線材と、からなる貴金属線材の構造であって、前記硬質線材が前記貴金属パイプの内周部分の内径と略同径のサイズをなし、前記硬質線材を前記貴金属パイプの内周部分に挿入してセットすることにより、貴金属線材の強度が上がって前記貴金属パイプが潰れるなど問題を回避し、二次加工の曲げる、丸める、ねじる等のパイプ状では加工が困難だった加工を容易にしたことを特徴とする貴金属線材の構造。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属パイプと、
前記貴金属パイプの内周部分に挿入される硬質線材と、
からなる貴金属線材の構造であって、
前記硬質線材が前記貴金属パイプの内周部分の内径と略同径のサイズをなし、
前記硬質線材を前記貴金属パイプの内周部分に挿入してセットすることにより、貴金属線材の強度が上がって前記貴金属パイプが潰れるなど問題を回避し、二次加工の曲げる、丸める、ねじる等のパイプ状では加工が困難だった加工を容易にしたことを特徴とする貴金属線材の構造。
【請求項2】
前記貴金属パイプの肉厚を0.1mm~0.2mmとし、
前記貴金属パイプの直径を1mm~3mmとすることにより、
前記貴金属パイプと前記硬質線材とからなる貴金属線材の大きなウエートを占める地金のコストダウンが図れるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の貴金属線材の構造。
【請求項3】
前記貴金属パイプの素材が主に貴金属といわれる K24、K18、K14、K10、K5、Pt1000、Pt950、Pt850、SV925のいずれかの素材からなるとともに、前記貴金属パイプ内に挿入してセットする前記硬質線材の素材が銅、ステンレス、チタン等の外側となる前記貴金属パイプよりも硬質かつ加工性の良い素材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の貴金属線材の構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
指輪やネックレスの下げ飾り等の装身具を構成する貴金属線材の、貴金属部分をパイプ状とし、その中空内部に硬質の線材を挿入することで、強度を保ちながら貴金属地金の軽量化を図る貴金属線材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指輪やネックレスといった装身具を構成する貴金属の線材は、単一の地金により成形される傾向にあったが、近年の貴金属素材全般の相場の高騰とともに、製品に使用する貴金属地金の軽量化が求められ、貴金属の線材における地金の軽量化も求められている。
そして、従来の貴金属地金の軽量化対策としては、中空状の貴金属素材、すなわちパイプ状の構造をもったもの一般的に知られているが、前記中空状の貴金属素材、すなわちパイプ状の構造をもった先行技術においては、中空状の貴金属素材に対して二次加工の曲げる、丸める、ねじる等のパイプ状の構造では加工時の変形等、加工が困難であった。
このように、装飾性とともに機能性をも求められる装身具においては、「強度」という点でデザイン、サイズ等における軽量化には限界があり、顧客の要望と生産者側の技術的な歩み寄りが強いられてきていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特になし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、今まで不可能とされていた軽量かつ高強度という問題をクリアにし、デザインの自由度、コストの削減の両方面に広く反映させることができる新規の貴金属線材の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明の貴金属線材の構造は、貴金属パイプと、前記貴金属パイプの内周部分に挿入される硬質線材と、からなる貴金属線材の構造であって、前記硬質線材が前記貴金属パイプの内周部分の内径と略同径のサイズをなし、前記硬質線材を前記貴金属パイプの内周部分に挿入してセットすることにより、貴金属線材の強度が上がって前記貴金属パイプが潰れるなど問題を回避し、二次加工の曲げる、丸める、ねじる等のパイプ状では加工が困難だった加工を容易にしたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の貴金属線材の構造において、前記貴金属パイプの肉厚を0.1mm~0.2mmとし、前記貴金属パイプの直径を1mm~3mmとすることにより、前記貴金属パイプと前記硬質線材とからなる貴金属線材の大きなウエートを占める地金のコストダウンが図れるようにしたことをも特徴とするものである。
【0007】
本発明の貴金属線材の構造において、前記貴金属パイプの素材が主に貴金属といわれる K24、K18、K14、K10、K5、Pt1000、Pt950、Pt850、SV925のいずれかの素材からなるとともに、前記貴金属パイプ内に挿入してセットする前記硬質線材の素材が銅、ステンレス、チタン等の外側となる前記貴金属パイプよりも硬質かつ加工性の良い素材からなることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貴金属線材の構造は、肉厚0.1mm~0.2mmで直径1mm~3mmほどの貴金属パイプを利用することにより、貴金属線材が従来の半分以下の重量になるため、地金製品部分(ダイヤ等の装飾部分を除<)のコストの約80%を占める地金のコストダウンが図れるようになった。
更に貴金属パイプの中に内径に近いサイズの硬質線材をセットすることにより強度が上がって貴金属パイプが潰れるなど問題を回避することができ、二次加工の曲げる、丸める、ねじる等のパイプ状では加工が困難だった加工を容易に行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の貴金属線材の構造の1実施例を示し、(a)はその組立前の概略正面図、(b)はその概略断面図である。
図2】その組立前の概略斜視図である。
図3】(a)はその組立状態を示す概略正面図、(b)はその組立状態を示す概略断面図である。
図4】その組立状態を示す概略斜視図である。
図5】本発明の貴金属線材の構造を適用した貴金属線材に曲げる加工を施して指輪のパーツ形状とした状態を示す概略正面図である。
図6】その概略断面図である。
図7】その概略斜視図である。
図8】その概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
図1ないし図4は、本発明の貴金属線材の構造の1実施例を示すものであり、次のような製造工程を経て制作される。
まず図1および図2に示すように、直線状に製作した肉厚0.1mm~0.2mmで直径1mm~3mmほどの貴金属製シームレスパイプ11を1m~2mの長さに切断して用意する。
この貴金属製シームレスパイプ11は、貴金属といわれるK24(金の純度100%)、K18(金の純度75%)、K14、K10、K5、Pt1000、Pt950、Pt850、SV925(このスターリングシルバーとは、純銀の含有率92.5%以上の割合で鋳造された銀合金を指す)で作成されたものを好適に用いることができる。
【0011】
同様に、前記貴金属製シームレスパイプ11の内径12の寸法に近い線径、例えば直径0.7mm~2.7mmの硬質線材(外側の貴金属素材よりも硬質な素材)21を用意する。
この硬質線材21とは、銅、ステンレス、チタン等であって、外側となる前記貴金属製シームレスパイプ11よりも硬質かつ加工性の良い素材を好適に用いることができる。
【0012】
次いで、図3および図4に示すように、前記貴金属製シームレスパイプ11の内径12の寸法に近い線径の前記硬質線材(外側の貴金属素材よりも硬質な素材)21を前記貴金属製シームレスパイプ11内に挿入して完成品の貴金属線材を得る。
このとき、前記貴金属製シームレスパイプ11と前記硬質線材21とは、単純前記硬質線材21を前記貴金属製シームレスパイプ11内に挿入するほか、互いの寸法精度を高くして密着させたり、接着剤を使用したり、高温で接合させて、より強固に固着させることもできる。
その上で、丸める、曲げる等の加工を施して所定の用途のデザインに応じた様々なパーツ形状を作成するのである。
【0013】
なお、貴金属製シームレスパイプとして肉厚0.1mm~0.2mmで直径1mm~3mmのものを利用するとか、貴金属製シームレスパイプ11の内径12の寸法に近い線径の硬質線材21を利用するとかの表現があるが、これらはあくまで例示であってその寸法等に何ら限定されるものではない。
【0014】
図5ないし図8は、前記硬質線材21を前記貴金属製シームレスパイプ11内に挿入して得られた貴金属線材に曲げる加工を施して、指輪のパーツ形状31としたものである。
【0015】
図に示すように、前記硬質線材21は、前記指輪のパーツ形状31内に収納されており、前記指輪のパーツ形状31の外側が貴金属で覆われていることで装飾性を発揮しつつ、前記指輪のパーツ形状31内に収納された前記硬質線材21によって機能的な強度を保ちながら、前記指輪のパーツ形状31における貴金属地金の割合を大幅に削減することができているのである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は装身具を構成する貴金属線材の構造に関するものであるが、装身具に限らず、室内インテリア等の装飾性と、機能性や製造コスト等とを両立させる要請のあるその他の製品にも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0017】
11 貴金属製シームレスパイプ
12 内径
21 硬質線材
31 指輪のパーツ形状

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8