IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ピラー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アンテナユニット 図1
  • 特開-アンテナユニット 図2
  • 特開-アンテナユニット 図3
  • 特開-アンテナユニット 図4
  • 特開-アンテナユニット 図5
  • 特開-アンテナユニット 図6
  • 特開-アンテナユニット 図7
  • 特開-アンテナユニット 図8
  • 特開-アンテナユニット 図9
  • 特開-アンテナユニット 図10
  • 特開-アンテナユニット 図11
  • 特開-アンテナユニット 図12
  • 特開-アンテナユニット 図13
  • 特開-アンテナユニット 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167236
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】アンテナユニット
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/26 20060101AFI20231116BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01Q3/26 B
H01Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078263
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】奥長 剛
(72)【発明者】
【氏名】夏原 悠佑
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA15
5J020BC13
5J020DA03
5J021AA03
5J021AB06
5J021CA03
5J021DB03
5J021GA04
(57)【要約】
【課題】3dBビーム幅を好適に広げることができるアンテナユニットを提供する。
【解決手段】アンテナユニットは、誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、前記一対の無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部を含み、前記給電アンテナと前記一対の無給電アンテナとのピッチは、実質的に等しく、自由空間波長をλとしたとき、前記ピッチは、0.4λ+[(λ/2)×n]以上、0.6λ+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、
前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、
前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、
前記一対の無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部を含み、
前記給電アンテナと前記一対の無給電アンテナとのピッチは、実質的に等しく、
自由空間波長をλとしたとき、
前記ピッチは、0.4λ+[(λ/2)×n]以上、0.6λ+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)
アンテナユニット。
【請求項2】
前記単一の給電アンテナは、水平偏波アンテナであり、
前記ピッチは、2λ以下である
請求項1に記載のアンテナユニット。
【請求項3】
前記単一の給電アンテナは、垂直偏波アンテナであり、
前記ピッチは、1λ以下である
請求項1に記載のアンテナユニット。
【請求項4】
誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、
前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、
前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、
前記一対の無給電アンテナは、前記単一の給電アンテナに対して一方に設けられる第1無給電アンテナ、および、前記単一の給電アンテナに対して他方に設けられる第2無給電アンテナを有し、
前記第1無給電アンテナおよび前記第2無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部、および、前記無給電本体部の端部から延びる位相調整線路を含み、
前記単一の給電アンテナは、水平偏波アンテナであり、
自由空間波長をλ、誘電体内の波長をλg、および、λとλgとの和をλeとし、
前記給電アンテナと前記第1無給電アンテナとのピッチを第1ピッチとし、
前記給電アンテナと前記第2無給電アンテナとのピッチを第2ピッチとし、
前記第1無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第1長さとし、
前記第2無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第2長さとしたとき、
前記第1ピッチと前記第1長さとの和、および、前記第2ピッチと前記第2長さとの和は、
0.75λe+[(λ/2)×n]以上、1.05λe+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)
アンテナユニット。
【請求項5】
誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、
前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、
前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、
前記一対の無給電アンテナは、前記単一の給電アンテナに対して一方に設けられる第1無給電アンテナ、および、前記単一の給電アンテナに対して他方に設けられる第2無給電アンテナを有し、
前記第1無給電アンテナおよび前記第2無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部、および、前記無給電本体部の端部から延びる位相調整線路を含み、
前記単一の給電アンテナは、垂直偏波アンテナであり、
自由空間波長をλ、誘電体内の波長をλg、および、λとλgとの和をλeとし、
前記給電アンテナと前記第1無給電アンテナとのピッチを第1ピッチとし、
前記給電アンテナと前記第2無給電アンテナとのピッチを第2ピッチとし、
前記第1無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第1長さとし、
前記第2無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第2長さとしたとき、
前記第1ピッチと前記第1長さとの和、および、前記第2ピッチと前記第2長さとの和は、
0.35λe+[(λ/2)×n]以上、0.7λe+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)
アンテナユニット。
【請求項6】
前記第1ピッチと、前記第2ピッチとは、異なり、
前記第1長さと、前記第2長さとは、異なり、
前記第1ピッチと前記第1長さとの和と、前記第2ピッチと前記第2長さの和とは、実質的に等しい
請求項4または5に記載のアンテナユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アンテナユニットの一例を開示している。このアンテナユニットは、誘電体に設けられる複数の給電アンテナと、複数の給電アンテナの両側に設けられる無給電アンテナと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6456716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記アンテナユニットにおいては、メインローブの最大利得から3dB低くなる範囲の角度ビーム幅、換言すれば、3dBビーム幅を広げる点について、検討されていない。このため、3dBビーム幅を広げる点について、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、3dBビーム幅を好適に広げることができるアンテナユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るアンテナユニットは、誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、前記一対の無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部を含み、前記給電アンテナと前記一対の無給電アンテナとのピッチは、実質的に等しく、自由空間波長をλとしたとき、前記ピッチは、0.4λ+[(λ/2)×n]以上、0.6λ+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)。
【0007】
上記アンテナユニットが例えば、送信用として用いられた場合、単一の給電アンテナから放射された電波は、一対の無給電アンテナに伝播する。一対の無給電アンテナは、単一の給電アンテナが放射した電波とは位相が異なる電波を放射する。水平角度の正面(0°)においては、単一の給電アンテナが放射した電波と、一対の無給電アンテナが放射した電波とに位相差があるため、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットよりもビーム幅の利得が低下する。一方、水平角度の斜め方向、例えば、45°においては、単一の給電アンテナが放射した電波と、一対の無給電アンテナが放射した電波とが合成されるため、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットよりもビーム幅の利得が上昇する。本願発明者(ら)は、給電アンテナと一対の無給電アンテナとのピッチを等しくし、かつ、ピッチが上記範囲に含まれるように設定することによって、3dBビーム幅が好適に広がることを見出した。
【0008】
本発明の第2観点に係るアンテナユニットは、第1観点に係るアンテナユニットであって、前記単一の給電アンテナは、水平偏波アンテナであり、前記ピッチは、2λ以下である。
【0009】
給電アンテナが水平偏波アンテナである場合には、ピッチを2λ以下とすることによって、3dBビーム幅が好適に広がることが確認された。
【0010】
本発明の第3観点に係るアンテナユニットは、第1観点に係るアンテナユニットであって、前記単一の給電アンテナは、垂直偏波アンテナであり、前記ピッチは、1λ以下である。
【0011】
給電アンテナが垂直偏波アンテナである場合には、ピッチを1λ以下とすることによって、3dBビーム幅が好適に広がることが確認された。
【0012】
本発明の第4観点に係るアンテナユニットは、誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、前記一対の無給電アンテナは、前記単一の給電アンテナに対して一方に設けられる第1無給電アンテナ、および、前記単一の給電アンテナに対して他方に設けられる第2無給電アンテナを有し、前記第1無給電アンテナおよび前記第2無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部、および、前記無給電本体部の端部から延びる位相調整線路を含み、前記単一の給電アンテナは、水平偏波アンテナであり、自由空間波長をλ、誘電体内の波長をλg、および、λとλgとの和をλeとし、前記給電アンテナと前記第1無給電アンテナとのピッチを第1ピッチとし、前記給電アンテナと前記第2無給電アンテナとのピッチを第2ピッチとし、前記第1無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第1長さとし、前記第2無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第2長さとしたとき、前記第1ピッチと前記第1長さとの和、および、前記第2ピッチと前記第2長さとの和は、0.75λe+[(λ/2)×n]以上、1.05λe+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)。
【0013】
上記アンテナユニットによれば、第1観点のアンテナユニットによって得られる効果と同様の効果が得られる。さらに、上記アンテナユニットにおいては、単一の給電アンテナと一対の無給電アンテナとのピッチを調整することによって、再放射電波の振幅を調整できる。また、一対の無給電アンテナの位相調整線路の長さを調整することによって、再放射電波の位相を調整できる。このため、設置スペースの都合等によって、単一の給電アンテナと一対の無給電アンテナとのピッチを十分に確保できない場合であっても、電波の指向性を好適に調整できる。また、上記アンテナユニットによれば、3dBビーム幅が好適に広がることが確認された。
【0014】
本発明の第5観点に係るアンテナユニットは、誘電体に設けられる単一の給電アンテナと、前記誘電体において、前記単一の給電アンテナに対して一方および他方に設けられる一対の無給電アンテナと、を備え、前記給電アンテナは、給電線路、および、前記給電線路から給電される放射素子を含む給電本体部を含み、前記一対の無給電アンテナは、前記単一の給電アンテナに対して一方に設けられる第1無給電アンテナ、および、前記単一の給電アンテナに対して他方に設けられる第2無給電アンテナを有し、前記第1無給電アンテナおよび前記第2無給電アンテナは、前記給電本体部と実質的に同じ形状である無給電本体部、および、前記無給電本体部の端部から延びる位相調整線路を含み、前記単一の給電アンテナは、垂直偏波アンテナであり、自由空間波長をλ、誘電体内の波長をλg、および、λとλgとの和をλeとし、前記給電アンテナと前記第1無給電アンテナとのピッチを第1ピッチとし、前記給電アンテナと前記第2無給電アンテナとのピッチを第2ピッチとし、前記第1無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第1長さとし、前記第2無給電アンテナの前記位相調整線路の長さを第2長さとしたとき、前記第1ピッチと前記第1長さとの和、および、前記第2ピッチと前記第2長さとの和は、0.35λe+[(λ/2)×n]以上、0.7λe+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる(ただし、nは、0以上の整数)。
【0015】
上記アンテナユニットによれば、第4観点のアンテナユニットによって得られる効果と同様の効果が得られる。
【0016】
本発明の第6観点に係るアンテナユニットは、第4観点または第5観点に係るアンテナユニットであって、前記第1ピッチと、前記第2ピッチとは、異なり、前記第1長さと、前記第2長さとは、異なり、前記第1ピッチと前記第1長さとの和と、前記第2ピッチと前記第2長さの和とは、実質的に等しい。
【0017】
上記アンテナユニットによれば、3dBビーム幅が好適に広がることが確認された。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関するアンテナユニットによれば、3dBビーム幅を好適に広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態のアンテナユニットの平面図。
図2図1のD2-D2線に沿う断面図。
図3図2の給電アンテナが無給電アンテナに伝播された状態の断面図。
図4図3の無給電アンテナが電波を放射した状態の断面図。
図5図4の給電アンテナが放射した電波と、無給電アンテナが放射した電波とが合成された状態の断面図。
図6】第1実施形態のアンテナユニットの指向性に関するシミュレーション結果。
図7】第1実施形態の変形例のアンテナユニットの指向性に関するシミュレーション結果。
図8】第2実施形態のアンテナユニットの平面図。
図9】第2実施形態のアンテナユニットの指向性に関するシミュレーション結果。
図10】第3実施形態のアンテナユニットの平面図。
図11】第3実施形態のアンテナユニットの指向性に関するシミュレーション結果。
図12】第3実施形態の変形例のアンテナユニットの指向性に関するシミュレーション結果。
図13】変形例のアンテナユニットの平面図。
図14】別の変形例のアンテナユニットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
[1.第1実施形態]
<1-1.アンテナユニットの全体構成>
図1は、本実施形態のアンテナユニット10の平面図である。アンテナユニット10は、例えば、受信アンテナ(図示略)に電波を送信する送信用のアンテナユニットである。アンテナユニット10は、受信用のアンテナユニットであってもよい。アンテナユニット10は、単一の給電アンテナ20と、一対の無給電アンテナ50と、を備える。単一の給電アンテナ20、および、一対の無給電アンテナ50は、誘電体100の面内に並んで設けられる。誘電体100は、板状であり、例えば、エポキシ樹脂、ガラス、または、テフロン(登録商標)等によって構成される。誘電体100のうち、単一の給電アンテナ20、および、一対の無給電アンテナ50が設けられる面と反対側の面には、グラウンドとなる金属箔110が接合されている。金属箔110は、例えば、銅箔である。以下では、アンテナユニット10の平面視において、単一の給電アンテナ20、および、一対の無給電アンテナ50が延びる方向を長手方向と称し、平面視において、長手方向と直交する方向を幅方向と称する。
【0022】
本実施形態では、単一の給電アンテナ20(以下では、単に「給電アンテナ20」という)は、水平偏波アンテナである。給電アンテナ20は、垂直偏波アンテナであってもよい。給電アンテナ20は、例えば、マイクロストリップアンテナである。給電アンテナ20は、給電本体部30およびスタブ40を備える。
【0023】
給電本体部30は、給電線路31、および、給電線路31から給電される放射素子32を有する。給電線路31の一方の端部は、例えば、導波管の端部に設けられる変換器(図示略)とスタブ40を介して接続される。変換器は、導波管とスタブ40との間で電力変換を行う。変換器は、スタブ40を介した給電線路31への給電点となる。給電線路31は、例えば、平面線路であり、誘電体100に形成された導電性薄膜である。
【0024】
放射素子32は、給電線路31と繋がり、給電線路31から幅方向の一方に突出する。放射素子32は、例えば、平面アンテナであり、誘電体100に形成された導電性薄膜である。給電本体部30が有する放射素子32の数は、任意に選択可能である。本実施形態では、給電本体部30は、6個の放射素子を有する。給電本体部30は、1~5個、または、7個以上の放射素子を有していてもよい。本実施形態では、長手方向における6個の放射素子32の長さXAは、給電アンテナ20の長手方向の中央に近い放射素子32ほど長い。
【0025】
給電アンテナ20において、給電線路31は、最も給電側の放射素子32Aまでの線路である。本実施形態では、給電本体部30は、給電線路31、および、6個の放射素子32を含む部分である。
【0026】
スタブ40は、給電本体部30の端部から延びる。スタブ40は、例えば、誘電体100に形成された導電性薄膜である。スタブ40の中間部には、電波の反射を抑制するためのマッチングパターン41が形成されている。
【0027】
一対の無給電アンテナ50は、幅方向において、給電アンテナ20に対して一方に設けられる第1無給電アンテナ71と、給電アンテナ20に対して他方に設けられる第2無給電アンテナ72と、を有する。第1無給電アンテナ71および第2無給電アンテナ72は、同様の構成である。以下では、第1無給電アンテナ71および第2無給電アンテナ72を特に区別しない場合、単に無給電アンテナ50と称する場合がある。
【0028】
無給電アンテナ50は、給電アンテナ20とは異なり、変換器には、接続されていない。このため、無給電アンテナ50には、給電が行われない。無給電アンテナ50は、給電本体部30と実質的に同じ形状の無給電本体部60を有する。無給電本体部60は、無給電線路61、および、無給電線路61と繋がる放射素子62を有する。無給電線路61は、例えば、平面線路であり、誘電体100に形成された導電性薄膜である。
【0029】
放射素子62は、無給電線路61から幅方向の一方に突出する。放射素子62は、例えば、平面アンテナであり、誘電体100に形成された導電性薄膜である。無給電本体部60が有する放射素子62の数は、任意に選択可能である。本実施形態では、無給電本体部60は、6個の放射素子を有する。無給電本体部60は、1~5個、または、7個以上の放射素子を有していてもよい。本実施形態では、長手方向における6個の放射素子62の長さXBは、無給電アンテナ50の長手方向の中央に近い放射素子62ほど長い。本実施形態では、無給電本体部60は、無給電線路61、および、6個の放射素子62を含む部分である。
【0030】
本実施形態では、幅方向における給電アンテナ20と第1無給電アンテナ71とのピッチLAと、給電アンテナ20と第2無給電アンテナ72とのピッチRAとが実質的に等しい。さらに、本実施形態では、3dBビーム幅を好適に広げる観点から、自由空間波長をλとしたとき、ピッチLA、RAは、0.4λ+[(λ/2)×n]以上、0.6λ+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる。ただし、nは、0以上の整数である。特に、アイソレーションが50dB以下の場合は、給電アンテナ20から一対の無給電アンテナ50に伝播する電波の強度が高いため、より好適に3dBビーム幅を広げることができる。アイソレーションが50dB以下とするためには、給電アンテナ20が水平偏波アンテナである場合には、ピッチLA、RAは2λ以下であることが好ましく、給電アンテナ20が垂直偏波アンテナである場合には、ピッチLA、RAは1λ以下であることが好ましい。なお、自由空間波長は、例えば、24GHzにおいて、12.49mmである。
【0031】
<1-2.アンテナユニットの作用および効果>
図2図5を参照して、アンテナユニット10の作用および効果について説明する。図2図5は、図1のD2-D2線に沿う断面図である。
【0032】
図2に示されるように、給電アンテナ20は、電波WAを放射する。図3に示されるように、電波WAは、一対の無給電アンテナ71、72に伝播する。図4に示されるように、一対の無給電アンテナ71、72は、給電アンテナ20が放射した電波WAとは位相が異なる電波WBを放射する。図5の双方向矢印に示されるように、水平角度の正面(0°)においては、給電アンテナ20が放射した電波と、一対の無給電アンテナ71、72が放射した電波WBとに位相差があるため、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットよりもビーム幅の利得が低下する。一方、水平角度の斜め方向、例えば、45°においては、給電アンテナ20が放射した電波WAと、一対の無給電アンテナ71、72が放射した電波WBとが合成されるため、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットよりもビーム幅の利得が上昇する。本願発明者(ら)は、給電アンテナ20と一対の無給電アンテナ71、72とのピッチLA、RAを等しくし、かつ、ピッチLA、RAが所定の範囲に含まれるように設定することによって、3dBビーム幅が好適に広がることを見出した。
【0033】
<1-3.アンテナユニットのシミュレーション結果>
図6は、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットと、本実施形態のアンテナユニット10の指向性に関するシミュレーション結果である。本実施形態のアンテナユニット10は、3dBビーム幅が132°である。従来のアンテナユニットは、3dBビーム幅が107°である。このため、本実施形態のアンテナユニット10は、従来のアンテナユニットよりも3dBビーム幅を23.4%広げられることが確認された。
【0034】
図7は、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットと、本実施形態の変形例のアンテナユニット10の指向性に関するシミュレーション結果である。図7に示される例では、変形例のアンテナユニット10の給電アンテナ20は、垂直偏波アンテナである。変形例のアンテナユニット10は、3dBビーム幅が105°である。従来のアンテナユニットは、3dBビーム幅が69°である。このため、変形例のアンテナユニット10は、従来のアンテナユニットよりも3dBビーム幅を52.2%広げられることが確認された。
【0035】
[2.第2実施形態]
第2実施形態のアンテナユニット200は、一対の無給電アンテナ250を備える点において、第1実施形態と異なり、その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第2実施形態のアンテナユニット200について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0036】
<2-1.アンテナユニットの全体構成>
図8は、第2実施形態のアンテナユニット200の平面図である。アンテナユニット200は、一対の無給電アンテナ250を備える。一対の無給電アンテナ250は、幅方向において、給電アンテナ20に対して一方に設けられる第1無給電アンテナ271と、給電アンテナ20に対して他方に設けられる第2無給電アンテナ272と、を有する。第1無給電アンテナ271および第2無給電アンテナ272は、同様の構成である。以下では、第1無給電アンテナ271および第2無給電アンテナ272を特に区別しない場合、単に無給電アンテナ250と称する場合がある。
【0037】
無給電アンテナ250は、無給電本体部60および位相調整線路280を有する。位相調整線路280は、無給電本体部60の端部から延びる。位相調整線路280は、例えば、誘電体100に形成された導電性薄膜である。本実施形態では、位相調整線路280の終端280Xは、オープンである。
【0038】
本実施形態では、第1無給電アンテナ271の位相調整線路280の長さLAXと、第2無給電アンテナ272の位相調整線路280の長さRAXとは、等しい。第1実施形態と同様にピッチLAと、ピッチRAとは、等しい。このため、ピッチLAと長さLAXとの和SLと、ピッチRAと長さRAXとの和SRとは、等しい。
【0039】
<2-2.アンテナユニットの効果>
本実施形態のアンテナユニット200によれば、第1実施形態のアンテナユニット10と同様の効果が得られる。さらに、アンテナユニット200においては、給電アンテナ20と一対の無給電アンテナ250とのピッチLA、RAを調整することによって、再放射電波の振幅を調整できる。また、一対の無給電アンテナ250の位相調整線路280の長さLAX、RAXを調整することによって、再放射電波の位相を調整できる。このため、設置スペースの都合等によって、給電アンテナ20と一対の無給電アンテナ250とのピッチLA、RAを十分に確保できない場合であっても、指向性を好適に調整できる。
【0040】
<2-3.アンテナユニットのシミュレーション結果>
図9は、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットと、本実施形態のアンテナユニット200の指向性に関するシミュレーション結果である。本実施形態のアンテナユニット200は、3dBビーム幅が131°である。従来のアンテナユニットは、3dBビーム幅が107°である。このため、本実施形態のアンテナユニット200は、従来のアンテナユニットよりも3dBビーム幅を22.4%広げられることが確認された。
【0041】
[3.第3実施形態]
第3実施形態のアンテナユニット300は、一対の無給電アンテナ350を備える点において、第2実施形態と異なり、その他の構成は、第2実施形態と同様である。以下では、第3実施形態のアンテナユニット300について、第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
<3-1.アンテナユニットの全体構成>
図10は、第3実施形態のアンテナユニット300の平面図である。アンテナユニット300は、一対の無給電アンテナ350を備える。一対の無給電アンテナ350は、幅方向において、給電アンテナ20に対して一方に設けられる第1無給電アンテナ371と、給電アンテナ20に対して他方に設けられる第2無給電アンテナ372と、を有する。以下では、第1無給電アンテナ371および第2無給電アンテナ372を特に区別しない場合、単に無給電アンテナ350と称する場合がある。
【0043】
無給電アンテナ350は、無給電本体部60および位相調整線路380を有する。位相調整線路380は、無給電本体部60の端部から延びる。位相調整線路380は、例えば、誘電体100に形成された導電性薄膜である。本実施形態では、位相調整線路380の終端380Xは、オープンである。
【0044】
本実施形態では、第1無給電アンテナ371の位相調整線路380の長さLAXと、第2無給電アンテナ372の位相調整線路380の長さRAXとは、異なる。本実施形態では、長さLAXは、長さRAXよりも長い。本実施形態では、ピッチLAと、ピッチRAとは、異なる。本実施形態では、ピッチLAは、ピッチRAよりも短い。本実施形態では、ピッチLAと長さLAXとの和SLと、ピッチRAと長さRAXとの和SRとは、等しいことが好ましい。
【0045】
図10に示されるように、給電アンテナ20が水平偏波アンテナである場合には、3dBビーム幅を好適に広げる観点から、自由空間波長をλ、誘電体100内の波長をλg、および、λとλgとの和をλeとしたとき、和SLおよび和SRは、0.75λe+[(λ/2)×n]以上、1.05λe+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる。ただし、nは、0以上の整数である。なお、誘電体100内の波長は、例えば、24GHzにおいて、7.95mmである。
【0046】
給電アンテナ20が、垂直偏波アンテナである場合には、3dBビーム幅を好適に広げる観点から、自由空間波長をλ、誘電体100内の波長をλg、および、λとλgとの和をλeとしたとき、和SLおよび和SRは、0.35λe+[(λ/2)×n]以上、0.7λe+[(λ/2)×n]以下の範囲に含まれる。ただし、nは、0以上の整数である。
【0047】
<3-2.アンテナユニットのシミュレーション結果>
図11は、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットと、本実施形態のアンテナユニット300の指向性に関するシミュレーション結果である。本実施形態のアンテナユニット300は、3dBビーム幅が128°である。従来のアンテナユニットは、3dBビーム幅が107°である。このため、本実施形態のアンテナユニット300は、従来のアンテナユニットよりも3dBビーム幅を19.6%広げられることが確認された。
【0048】
図12は、給電アンテナのみを有する従来のアンテナユニットと、本実施形態の変形例のアンテナユニット300の指向性に関するシミュレーション結果である。図12に示される例では、変形例のアンテナユニット300の給電アンテナ20は、垂直偏波アンテナである。変形例のアンテナユニット300は、3dBビーム幅が107°である。従来のアンテナユニットは、3dBビーム幅が69°である。このため、変形例のアンテナユニット300は、従来のアンテナユニットよりも3dBビーム幅を55.1%広げられることが確認された。
【0049】
<4.変形例>
上記各実施形態は本発明に関するアンテナユニットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するアンテナユニットは、各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に各実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、上記各実施形態および以下の変形例は、技術的に矛盾しない限り互いに組み合わせることができる。
【0050】
<4-1>
第2実施形態において、無給電アンテナ250の位相調整線路280の終端280Xは、任意に変更可能である。図13に示されるように、例えば、位相調整線路280の終端280Xにスルーホール280Yを形成し、終端280Xとグラウンドとを接続してもよい。図14に示されるように、例えば、位相調整線路280の終端280Xに抵抗280Z等を配置して、電波が反射しない構成としてもよい。図14に示される例では、ピッチLAと、ピッチRAを調整することによって電波の再放射のタイミングを調整することが好ましい。これらの変形例は、第3実施形態のアンテナユニット300にも同様に適用できる。
【0051】
<4-2>
第3実施形態において、長さLAXを長さRAXよりも短くして、ピッチLAをピッチRAよりも長くしてもよい。この変形例では、和SLと和SRとは、等しいことが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
10、200、300:アンテナユニット
20 :給電アンテナ
30 :給電本体部
31 :給電線路
32 :放射素子
50、250、350:無給電アンテナ
60 :給電本体部
61 :給電線路
62 :放射素子
71、271、371:第1無給電アンテナ
72、272、372:第2無給電アンテナ
100 :誘電体
280、380:位相調整線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14