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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167258
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】撮像素子及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20231116BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N5/369
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078303
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 康平
(72)【発明者】
【氏名】若嶋 駿一
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高尾 友美
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118AB03
4M118BA14
4M118CA02
4M118CA22
4M118DD04
4M118FA06
4M118FA38
4M118GC08
4M118GC14
4M118GD03
4M118GD04
5C024CX03
5C024CY17
5C024CY47
5C024EX12
5C024EX43
5C024GX03
5C024GX14
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY31
(57)【要約】
【課題】 画素が行列状に配列された撮像素子において、行方向と列方向とで焦点検出信号のS/N比が異なる場合に、行方向と列方向とで焦点検出の性能を近づけること。
【解決手段】 第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、を有し、前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、前記複数の光電変換部から読み出される信号に重畳するノイズの影響が、前記第1の方向よりも前記第2の方向の方が大きい場合に、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率が、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高いことを特徴とする。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、を有し、
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、
前記複数の光電変換部から読み出される信号に重畳するノイズの影響が、前記第1の方向よりも前記第2の方向の方が大きい場合に、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向または前記第2の方向に配置された2つの光電変換部であることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記複数の光電変換部は、前記第1の方向及び前記第2の方向に配置された4つの光電変換部であることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の不純物濃度を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の不純物濃度よりも低くしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の幅を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の幅よりも短くしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部において、光が入射する側から、光電変換して得られた電荷を蓄積する領域までの電位勾配を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部における電位勾配よりも緩やかにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の電位を制御する電極を更に有し、
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の電位を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の電位よりも低くしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記複数の光電変換部により光電変換された電荷を信号に変換して出力する出力手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項9】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、を有し、
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の数が、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の数よりも多く、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする撮像素子。
【請求項10】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、
前記複数の光電変換部ごとに備えられた複数のフローティングデフュージョン部と、
前記複数の光電変換部から前記フローティングデフュージョン部に転送された電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部と
を有し、
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部に対応する前記フローティングデフュージョン部を構成する拡散層から前記電荷電圧変換部までの配線の長さが、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部に対応する前記フローティングデフュージョン部を構成する拡散層から前記電荷電圧変換部までの配線の長さよりも短く、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする撮像素子。
【請求項11】
請求項1乃至3、9、10のいずれか1項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号を処理する処理手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
前記処理手段は、前記信号に基づいて、像面位相差方式の焦点検出を行うことを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光電変換部を有する画素部が2次元配列された撮像素子及び当該撮像素子を搭載した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像装置で行われる焦点検出方法の1つとして、撮像素子に形成された焦点検出用画素を用いて一対の瞳分割信号を取得し、位相差方式の焦点検出を行う、いわゆる撮像面位相差方式が知られている。
【0003】
このような撮像面位相差方式の例として、1つの画素に対して、1つのマイクロレンズと複数に分割された光電変換部が形成された2次元撮像素子を用いた撮像装置が、特許文献1に開示されている。複数の光電変換部は、1つのマイクロレンズを介して撮像レンズの射出瞳の異なる領域を透過した光を受光するように構成され、瞳分割を行う。そして、個々の光電変換部の信号である位相差信号から像ずれ量を算出することで、位相差方式の焦点検出を行うことができる。また、画素毎に個々の光電変換部の信号を足し合わせることで、通常の画像信号を取得することができる。また、特許文献1には、画素における光電変換部間の分離障壁の高さが異なる複数種類の画素を配列することで、画素の飽和耐性を高めた構成が開示されている。
【0004】
このようなイメージセンサでは、複数の光電変換部が画素内で横方向に並び、瞳分割方向が横方向である構成では、例えば、被写体が横方向のストライプ模様等の場合、視差が表れにくく、焦点検出精度が低下することがある。
【0005】
これに対し、特許文献2には、各マイクロレンズに対する光電変換部の配置方向を2種類にし、瞳分割方向を2種類とすることで、焦点検出精度を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、縦方向に隣接する光電変換部間を分離する構造と、横方向に隣接する光電変換部間を分離する構造とで、電荷を隣接する光電変換部に漏出させる強度を異ならせることが開示されている。この構造により、1つの光電変換部が蓄積できる電荷量を超えて受光した過飽和電荷を予め決められた方向に配置された異なる光電変換部へ漏出させて蓄積することで、1つの光電変換部が飽和した場合にも、横方向、もしくは縦方向の位相差方式の焦点検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-212351号公報
【特許文献2】特開2014-107835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では、瞳分割方向を行方向と列方向の2種類としている。ここで、例えば、行方向に瞳分割された画素数と列方向に瞳分割された画素数とが異なる場合等では、行方向の位相差信号と列方向の位相差信号のS/N比(Signal to Noise Ratio)が異なる。そのために、位相差方式の焦点検出性能が、行方向と列方向とで異なってしまう可能性がある。
【0008】
しかしながら、特許文献2では、行方向と列方向とでS/N比が異なる場合について何ら開示されていないため、上記課題を解決することができない。
【0009】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、画素が行列状に配列された撮像素子において、行方向と列方向とで焦点検出信号のS/N比が異なる場合に、行方向と列方向とで焦点検出の性能を近づけることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の撮像素子は、第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、を有し、前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、前記複数の光電変換部から読み出される信号に重畳するノイズの影響が、前記第1の方向よりも前記第2の方向の方が大きい場合に、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画素が行列状に配列された撮像素子において、行方向と列方向とで焦点検出信号のS/N比が異なる場合に、行方向と列方向とで焦点検出の性能を近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態に係る撮像素子の全体構成の一例を概略的に示す図。
図3】第1の実施形態に係る画素の等価回路図。
図4】第1の実施形態に係る第1の配置を有する画素の構成を示す概略図。
図5】第1の実施形態に係る第2の配置を有する画素の構成を示す概略図。
図6】第1の実施形態に係る第1の配置を有する画素と部分瞳領域との関係を示す図。
図7】第1の実施形態に係る第1の配置を有する画素の瞳強度分布の一例を示す概略図。
図8】第1の実施形態に係る撮像素子のセンサー入射瞳を概略的に説明する図。
図9】第1の実施形態に係る視差画像間の像ずれ量とデフォーカス量の概略関係を示す図。
図10】第1の実施形態における画素、射出瞳、部分瞳領域の関係を概略的に示す図
図11】第1の実施形態における射出瞳と瞳強度分布の関係を概略的に示す図
図12】第1の実施形態における電荷クロストーク率分布と瞳強度分布の関係を概略的に示す図
図13】第1の実施形態における画素の配置例を示す図。
図14】第2の実施形態に係る第3の配置を有する画素の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
<第1の実施形態>
[全体構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の撮像装置は、撮像素子1と、全体制御・演算部2と、指示部3と、タイミング発生部4と、撮影レンズユニット5と、レンズ駆動部6と、信号処理部7と、表示部8と、記録部9と、を備えている。
【0015】
撮影レンズユニット5は、被写体の光学像を撮像素子1に結像させる。図では1枚のレンズで表されているが、撮影レンズユニット5は、フォーカスレンズ、ズームレンズ等を含む複数のレンズと、絞りを含む。また、撮影レンズユニット5は、撮像装置の本体から着脱可能であってもよいし、本体に一体的に構成されていてもよい。
【0016】
撮像素子1は、撮影レンズユニット5を介して入射する光を電気信号に変換して出力する。撮像素子1の各画素からは、位相差方式の焦点検出に用いることのできる瞳分割された瞳分割信号(以下、「位相差信号」と呼ぶ。)と、画素ごとの信号である画像信号とを取得可能に信号が読み出される。
【0017】
信号処理部7は、撮像素子1から出力される信号に対して、補正処理等の所定の信号処理を行い、焦点検出に用いる位相差信号及び記録に用いる画像信号を出力する。
【0018】
全体制御・演算部2は、撮像装置全体の統括的な駆動及び制御を行う。また、信号処理部7により処理された位相差信号を用いて焦点検出のための演算を行ったり、画像信号に対して、露出制御のための演算処理や、記録・再生用画像を生成するための現像、圧縮等の所定の信号処理を行ったりする。
【0019】
レンズ駆動部6は、撮影レンズユニット5を駆動するものであり、全体制御・演算部2からの制御信号に従って、撮影レンズユニット5に対してフォーカス制御や、ズーム制御、絞り制御等を行う。
【0020】
指示部3は、ユーザー等の操作により外部から入力される、撮影の実行指示、撮像装置の駆動モード設定、その他各種設定や選択等の入力を受け付け、全体制御・演算部2へ送信する。
【0021】
タイミング発生部4は、全体制御・演算部2からの制御信号に従って、撮像素子1及び信号処理部7を駆動するためのタイミング信号を生成する。
表示部8は、プレビュー画像や再生画像、撮像装置の駆動モード設定等の情報を表示する。
【0022】
記録部9には不図示の記録媒体が備えられ、記録用画像信号が記録される。記録媒体としては、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。記録媒体は記録部9から着脱可能であってもよいし、内蔵されたものであってもよい。
【0023】
[撮像素子]
図2は、図1に示す撮像素子1の全体構成の一例を概略的に示す図である。撮像素子1は、画素アレイ部201、垂直選択回路202、列回路203、水平選択回路204を含む。
【0024】
画素アレイ部201には、複数の画素205が行列状に配置されている。垂直選択回路202の出力が画素駆動配線群207を介して画素205に入力されることにより、垂直選択回路202により選択された行の画素205の画素信号が、行単位で出力信号線206を介して列回路203に読み出される。出力信号線206は、各画素列毎もしくは複数の画素列毎に1つ、または各画素列毎に複数設けることが可能である。列回路203には複数の出力信号線206を介して並列に読み出された信号が入力され、信号の増幅やノイズ除去、A/D変換等の処理を行い、処理した信号を保持する。水平選択回路204が、列回路203に保持された信号を、順次、ランダム、または同時に選択することで、選択された信号が、不図示の水平出力線と出力部を介して撮像素子1の外に出力される。
【0025】
このように垂直選択回路202により選択した行の画素信号を撮像素子1の外に出力する動作を、垂直選択回路202で選択する行を変更しながら順次行うことで、撮像素子1から、2次元の撮像信号または位相差信号を読み出すことができる。
【0026】
[画素回路・信号読み出し]
図3は、本実施形態の画素205の等価回路図である。
各画素205は、光電変換部である2つのフォトダイオード301(PDA)及び302(PDB)を有する。入射した光量に応じてPDA301により光電変換され、蓄積された信号電荷は、転送スイッチ(TXA)303を介して、電荷蓄積部を構成するフローティングディフュージョン部(FD)305に転送される。また、PDB302により光電変換され、蓄積された信号電荷は、転送スイッチ(TXB)304を介してFD305に転送される。リセットスイッチ(RES)306は、オンとなることで、FD305を定電圧源VDDの電圧にリセットする。また、RES306とTXA303及びTXB304を同時にオンとすることで、PDA301及びPDB302をリセットすることができる。
【0027】
画素を選択する選択スイッチ(SEL)307がONとなることで、増幅トランジスタ(SF)308(電荷電圧変換部)は、FD305に蓄積された信号電荷を電圧に変換し、変換された信号電圧は画素から出力信号線206に出力される。また、TXA303、TXB304、RES306、SEL307のゲートは、それぞれ画素駆動配線群207と接続され、垂直選択回路202により制御される。
【0028】
なお、以下の説明において本実施形態では、光電変換部で蓄積する信号電荷を電子とし、光電変換部をN型半導体で形成し、P型半導体で分離するものとしているが、信号電荷を正孔とし、光電変換部をP型半導体で形成し、N型半導体で分離しても良い。
【0029】
続いて、上述した構成を有する画素において、PDA301及びPDB302をリセット後、所定の電荷蓄積時間が経過した後にPDA301及びPDB302から信号電荷を読み出す動作について説明する。まず、垂直選択回路202により選択された行のSEL307がオンとなり、SF308のソースと出力信号線206が接続されると、出力信号線206はFD305の電圧に対応する電圧が読み出される状態となる。続いて、RES306がオン/オフされ、FD305の電位がリセットされる。その後、FD305の電圧変動を受けた出力信号線206が静定するまで待機し、静定した出力信号線206の電圧を信号電圧Nとして列回路203で取り込み、信号処理を行って保持する。
【0030】
その後、TXA303がオン/オフされ、PDA301に蓄積されている信号電荷がFD305に転送される。FD305の電圧は、PDA301に蓄積していた信号電荷量に対応した分だけ低下する。その後、FD305の電圧変動を受けた出力信号線206が静定するまで待機し、静定した出力信号線206の電圧を信号電圧Aとして列回路203で取り込み、信号処理を行って保持する。
【0031】
その後、TXB304がオン/オフされ、PDB302に蓄積されている信号電荷がFD305に転送される。FD305の電圧は、PDB302に蓄積していた信号電荷量に対応した分だけ低下する。その後、FD305の電圧変動を受けた出力信号線206が静定するまで待機し、静定した出力信号線206の電圧を信号電圧(A+B)として列回路203で取り込み、信号処理を行って保持する。
【0032】
このようにして取り込んだ信号電圧Nと信号電圧Aとの差分から、PDA301に蓄積されていた信号電荷量に応じた信号Aを得ることができる。また、信号電圧Aと信号電圧(A+B)との差分から、PDB302に蓄積していた信号電荷量に応じた信号Bを得ることができる。この差分計算は、列回路203で行っても良いし、撮像素子1から出力した後に行っても良い。信号Aと信号Bをそれぞれ用いることで位相差信号を得ることができ、信号Aと信号Bを足し合わせることで撮像信号を得ることができる。または、差分計算を撮像素子1から出力した後に行う場合、信号電圧Nと信号電圧(A+B)との差分を取ることで、撮像信号を得るようにしてもよい。
【0033】
また、信号電圧Nと信号電圧Aとを読み出す駆動と同様の駆動を、PDA301の代わりにPDB302に対して行うことで、信号電圧N、信号電圧A、信号電圧Bをそれぞれ読み出すようにしても良い。その場合、信号電圧Aと信号電圧Bからそれぞれ得られた信号Aと信号Bをそのまま位相差信号として用いることができると共に、信号電圧Aと信号電圧B、または信号Aと信号Bを足し合わせることで、撮像信号を得ることができる。
【0034】
[光電変換領域の構成]
・x方向の位相差検出画素構造
図4は、本実施形態に係る画素205を構成する半導体領域の第1の配置を示す模式図であり、図4(a)は、斜視模式図、図4(b)は平面視における位置関係を示す平面模式図である。なお、「平面視」とは、半導体基板のトランジスタのゲートが配されている側の面と平行な面(xy平面)に対して、z方向または-z方向から視ることを指す。また、「行」方向はx方向を指し、「列」方向はy方向を指し、「深さ」方向はz方向をさす。
【0035】
図4(a)に示すように、第1の配置を有する画素205は、マイクロレンズ(ML)401、PDA301、PDB302、TXA303、TXB304、FD305を含む。第1の配置において、PDA301とPDB302は、x方向に並べて、半導体基板であるSi基板内に形成されており、ML401が配置されている側を基板の裏面側、TXA303,304及びFD305が配置されている側を基板の表面側とする。
【0036】
ML401を介して入射した光の大部分はPDA301及びPDB302の基板裏面側において光電変換される。ここで、PDA301及びPDB302内で発生した電荷が、TXA303、TXB304に移動し易くなるように、PDA301及びPDB302内において、深さ方向に電子が受けるポテンシャルが減少するように、電位勾配が形成されている。
【0037】
また、PDA301とPDB302との間には、ポテンシャル障壁が形成されるように、p型不純物濃度がPDA301及びPDB302よりも高い分離領域400が形成されている。これにより、発生した電荷が、PDA301とPDB302との間で移動しにくいように電気的に分離されている。従って、本実施形態において、第1の配置におけるPDA301とPDB302の分割方向は、x方向(第1の方向)である。
【0038】
・y方向の位相差検出画素構造
図5は、本実施形態に係る画素205を構成する半導体領域の第2の配置を示す模式図であり、図5(a)は、斜視模式図、図5(b)は平面視における位置関係を示す平面模式図である。なお、「平面視」及びx、y、zの定義は、図4と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
図5(a)に示すように、第2の配置を有する画素205は、ML401、PDA301、PDB302、TXA303、TXB304、FD305を含む。第2の配置を有する画素205の基本的構成は、図4に示した第1の配置と同様であるが、PDA301とPDB302がy方向に並ぶように配置されており、光電変換部の分離方向は、y方向(第2の方向)である。
【0040】
第2の配置においても、PDA301及びPDB302内で発生した電荷がTXA303、TXB304へ移動し易くするように、PDA301及びPDB302内において、深さ方向に電子が受けるポテンシャルが減少するように、電位勾配が形成されている。また、第2の配置においても、第1の配置と同様に、PDA301とPDB302との間に、p型不純物濃度がPDA301及びPDB302より高い分離領域500が形成されている。これにより、発生した電荷が、PDA301とPDB302との間で移動しにくいように電気的に分割されている。
【0041】
なお、本実施形態では、ML401とPDA301及びPDB302との間に不図示のカラーフィルタが配置されているものとする。一例として、ベイヤー配列のカラーフィルタの場合、主に赤の波長の光を透過するRフィルタ、主に緑の波長を透過するGフィルタと、主に青の波長を透過するBフィルタにより構成される。2×2の画素単位では、左上にRフィルタ、右上にGフィルタ、左下にGフィルタ、右下にBフィルタが配置される
【0042】
・電荷クロストーク率分布
PDA301及びPDB302で発生した電荷の大部分は、各PDA301及びPDB302内で蓄積されるが、PDA301からPDB302に、または、PDB302からPDA301に移動し、蓄積されることがある。このようなPDA301からPDB302へ、もしくはPDB302からPDA301へ電荷が移動する現象のことを、「電荷クロストーク」と呼ぶ。電荷クロストークが起きる割合(以下、「電荷クロストーク率」と呼ぶ。)は、平面視において、分離領域400及び500に近い程高い。また、PDA301及びPDB302では、TXA303、TXB304に向けて電荷が移動し易くなるように深さ方向に電位勾配を付けているため、TXA303、TXB304までの移動距離が短い程、電荷クロストーク率は小さくなる。すなわち、PDA301及びPDB302内において、同一のx座標、y座標では、TXA303、TXB304までの距離が近い位置の方が、ML401に近い位置よりも、電荷クロストーク率が小さくなる。以下の説明において、PDA301及びPDB302内におけるクロストーク率の分布のことを「電荷クロストーク率分布」と呼ぶ。この電荷クロストーク率分布は、PDA301及びPDB302内の深さ方向の電位勾配が急峻であるほど、PDA301及びPDB302全体に亘って小さくなる。
【0043】
また、電荷クロストークは、隣接画素間に対しても起こり得る。隣接画素間で発生する電荷クロストークは、撮像信号における解像度低下等の要因である。そのため、隣接画素間の電荷クロストーク率は、PDA301からPDB302へもしくはPDB302からPDA301への電荷クロストーク率より低くすることが望ましい。具体的には、例えば、隣接画素間を絶縁体で分離したり、ポテンシャル障壁の高さを高くすることで、電荷クロストーク率を低く抑えたりすることができる。
【0044】
・x方向の位相差検出方法
続いて、全体制御・演算部2において、位相差信号からデフォーカス量を算出する演算について説明する。
【0045】
まず、図6から図9を参照して、本実施形態におけるx方向の位相差検出方式の焦点検出について説明する。本実施形態におけるx方向の位相差検出方式の焦点検出では、第1の配置を有する画素205から得られる位相差信号からx方向の像ずれ量を算出し、変換係数を用いてデフォーカス量に変換する。
【0046】
図6は、第1の配置を有する画素205の図4(b)に示すA-A’断面図、及び、撮像素子1の撮像面600からz軸負方向に距離Dsだけ離れた位置の瞳面を示している。なお、x、y、zは、撮像面600における座標軸を示し、xp、yp、zpは、瞳面における座標軸を示している。
【0047】
ML401を介して、瞳面と撮像素子1の受光面は略共役関係となっている。そのため、部分瞳領域601を通過した光束はPDA301で受光される。また、部分瞳領域602を通過した光束はPDB302で受光される。このように、瞳面をx方向に分割している場合の瞳分割方向はx方向である。そのため、瞳強度分布の分割方向位置依存性は、図7に例示したような形状となる。図7において、PDA301に対応する瞳強度分布が701であり、PDB302に対応する瞳強度分布が702である。
【0048】
次に、図8を参照して、撮像素子1のセンサー入射瞳について説明する。本実施形態の撮像素子1では、2次元の平面上の像高座標に応じて、各画素205のML401は、撮像素子1の中心方向へ連続的にシフトされて配置されている。つまり、各ML401は、像高が高くになるにつれ、撮像素子1の中心方向へ偏心するように配置されている。なお、撮像素子1の中心と撮像光学系の光軸は、撮像光学系または撮像素子1を駆動することで手振れ等によるブレの影響を低減する機構によって変化するが、略一致する。これにより、撮像素子1から距離Ds(入射瞳距離)だけ離れた位置の瞳面において、撮像素子1の各像高座標に配置された各画素の第1瞳強度分布701及び第2瞳強度分布702が、概ね、一致するように構成される。つまり、撮像素子1から距離Dsだけ離れた位置の瞳面において、撮像素子1の全ての画素の第1瞳強度分布701と第2瞳強度分布702が、概ね、一致するように構成されている。本実施形態では、第1瞳強度分布701及び第2瞳強度分布702を、撮像素子1の「センサー入射瞳」と呼ぶ。
【0049】
なお、全ての画素が単一の入射瞳距離を有する構成とする必要はなく、例えば像高8割までの画素の入射瞳距離を略一致させる構成としてもよいし、あえて行ごとまたは検出領域ごとに異なる入射瞳距離を有するように画素を構成してもよい。
【0050】
図9に、視差画像間の像ずれ量とデフォーカス量の概略関係図を示す。撮像面600に本実施形態の撮像素子1(不図示)が配置され、図6と同様に、撮影レンズユニット5の射出瞳が、部分瞳領域601と部分瞳領域602に2分割される。
【0051】
デフォーカス量dは、被写体の結像位置から撮像面までの距離を大きさ|d|とし、被写体の結像位置が撮像面より被写体側にある前ピン状態を負(d<0)、被写体の結像位置が撮像面より被写体の反対側にある後ピン状態を正(d>0)として定義する。被写体の結像位置が撮像面にある合焦状態はd=0である。図9では、物体面901にある被写体が合焦状態(d=0)となり、物体面902にある被写体が前ピン状態(d<0)となる例を示している。前ピン状態(d<0)と後ピン状態(d>0)を合わせて、デフォーカス状態(|d|>0)とする。
【0052】
前ピン状態(d<0)では、物体面902にある被写体からの光束のうち、部分瞳領域601(602)を通過した光束は、一度、集光した後、光束の重心位置G1(G2)を中心として幅Γ1(Γ2)に広がり、撮像面600でボケた像となる。ボケた像は、PDA301及びPDB302により受光され、視差画像が生成される。よって、生成される視差画像には、重心位置G1(G2)に、物体面902にある被写体の像が幅Γ1(Γ2)にボケた被写体像となる。
【0053】
被写体像のボケ幅Γ1(Γ2)は、デフォーカス量dの大きさ|d|が増加するのに伴い、概ね、比例して増加していく。同様に、視差画像間の被写体像の像ずれ量p(=G2-G1)の大きさ|p|も、デフォーカス量dの大きさ|d|が増加するのに伴い、概ね、比例して増加していく。後ピン状態(d>0)でも、視差画像間の被写体像の像ずれ方向が前ピン状態と反対となるが、同様である。合焦状態(d=0)では、視差画像間の被写体像の重心位置が一致(p=0)し、像ずれは生じない。
【0054】
したがって、PDA301及びPDB302の信号を用いて得られる2つの位相差信号において、視差画像のデフォーカス量の大きさが増加するのに伴い、2つの位相差信号間のx方向の像ずれ量の大きさが増加する。この関係性から、視差画像をx方向にずらしながら相関演算することにより算出した像ずれ量をデフォーカス量に変換することで、位相差検出方式の焦点検出を行う。
【0055】
・y方向の位相差検出方法
本実施形態におけるy方向(第2の方向)の位相差検出方法は、上述した第1の配置を有する画素205からの信号を用いたx方向(第1の方向)の位相差検出方法と同様の方法を用いることができる。すなわち、第1の配置を有する画素205の代わりに、第2の配置を有する画素205からの信号を用いて、y方向(第2の方向)の位相差検出を行う。
【0056】
・変換係数
像ずれ量からデフォーカス量に変換する際に乗算する係数を変換係数と呼ぶ。この変換係数は、概ね、瞳強度分布701と瞳強度分布702の重心間距離に反比例する。変換係数が大きいと、変換係数が小さい場合と比較して、小さい像ずれ量から大きいデフォーカス量を算出するため、位相差信号のノイズの影響を受けやすく、位相差検出性能が低下する可能性がある。すなわち、瞳強度分布701と瞳強度分布702の重心距離が長い程、位相差信号のノイズの影響が低減される。
【0057】
ここで、図10図11を用いて、撮影レンズユニット5の瞳領域が絞りによって制限された場合の変換係数について説明する。図10は、図6に示した、部分瞳領域601、602、第1の配置を有する画素205のA-A’断面図に、絞りにより絞られた射出瞳1001を重ねた模式図であり、射出瞳1001が部分瞳領域601と602により分割されている。
【0058】
図11は、このような場合において、絞りにより絞られていない場合の第1瞳強度分布701及び第2瞳強度分布702のうち、射出瞳1001に対応した、受光される光束の第1部分瞳強度分布711及び第2部分瞳強度分布712を示す。この場合、第1部分瞳強度分布711及び第2部分瞳強度分布712の重心間の距離に応じて変換係数が決まるため、瞳強度分布が交差している領域713におけるグラフ上での傾きが大きい程、重心間距離が長くなり、変換係数が小さくなる。すなわち、射出瞳1001によって制限された瞳強度分布が交差している領域の傾きが大きいほど、変換係数が小さくなるため、位相差信号のノイズの影響が小さくなる。
【0059】
[電荷クロストーク率]
・電荷クロストーク率分布と変換係数との関係
次に、図12を用いて、電荷クロストーク率の大小と瞳強度分布との関係について説明する。電荷クロストークは、PDA301で発生した電荷がPDB302に移動、または、PDB302で発生した電荷がPDA301に移動して蓄積される現象のことである。すなわち、電荷クロストーク率が小さい場合、電荷クロストーク率が大きい場合と比較して、PDA301とPDB302の信号の混ざりが小さくなる。図12は電荷クロストーク率が大きい場合の第1瞳強度分布701及び第2瞳強度分布702と、電荷クロストーク率分布が小さい場合の第1瞳強度分布721及び第2瞳強度分布722(1点鎖線)を比較した図である。電荷クロストーク率が小さい場合、瞳強度分布が交差している領域713におけるグラフ上の傾きが大きくなる。
【0060】
従って、電荷クロストーク率が小さい第1瞳強度分布721及び第2瞳強度分布722の方が、電荷クロストーク率が大きい第1瞳強度分布701及び第2瞳強度分布702よりも、射出瞳1001によって制限された瞳強度分布が交差している領域の傾きが大きい。すなわち、電荷クロストーク率が小さい方が、変換係数が小さくなり、位相差信号のノイズの影響も小さくなる。
【0061】
・位相差信号のノイズ
位相差信号のノイズには、光そのものの揺らぎである光ショットノイズや、SF308や列回路203等で信号に重畳する読み出し回路ノイズ等がある。光電変換により生成される電荷が十分に多い領域では、光ショットノイズは、概ね、信号電荷数の平方根となる。また、読み出し回路ノイズは、概ね、信号電荷量とは関係なく一定の値となる。そのため、光電変換により生成される電荷が多いほど、S/N比が高く、位相差信号のノイズが小さくなる。
【0062】
図13は、本実施形態の画素アレイ部201における、第1の配置を有する画素205と、第2の配置を有する画素205の配列例を8行4列分、示した図である。ここでは、ベイヤー配列を構成するRフィルタで覆われたR画素と、Gフィルタで覆われた2つのG画素と、Bフィルタで覆われたB画素とからなる2×2の画素単位をベースとして説明する。2×2の画素単位のうち、R画素と、G画素のうちの1つと、B画素が瞳をx方向に分割する第1の配置を有する画素205であり、G画素の残り1つが瞳をy方向に分割する第2の配置を有する画素205である。
【0063】
図13から分かるように、1行に含まれる、第1の配置を有する画素205の数の方が、1列に含まれる第2の配置を有する画素205の数よりも多いため、x方向の位相差信号の方が、y方向の位相差信号よりも、多くの光に基づいた信号となる。そのため、位相差信号のS/N比は、x方向の位相差信号の方が、y方向の位相差信号よりも高くなる。
【0064】
また、図3に示す構成において、FD305を構成する拡散層とSF308は、距離が近い程、それらを接続する配線(以下、「FD配線」と呼ぶ。)が短く、FD305の容量が小さくなる。FD305の容量が小さいと、電荷電圧変換ゲインが大きくなるため、後段で重畳するノイズ抑制効果が大きくなり、低ノイズとなる。ここで、第1の配置を有する画素205と、第2の配置を有する画素205とで、FD305を構成する拡散層と、SF308までの距離やSF308のサイズを揃えることが難しい場合、位相差信号にのるノイズの大きさが異なることになる。
【0065】
例えば、撮像素子1に配列される、第1の配置を有する画素205の数と第2の配置を有する画素205の数が異なる場合、通常、数が多い方のFD305を構成する拡散層とSF308とを接続する配線が優先的に短くなるようにする。そのため、第1の配置を有する画素205の数の方が多い場合、第2の配置を有する画素205から得られる位相差信号に乗るノイズの方が大きくなる。すなわち、位相差信号のS/N比は、x方向の方が、y方向よりも高くなる。
【0066】
・位相差信号のノイズと電荷クロストーク率と位相差検出性能との関係
上述したように、像ずれ量からデフォーカス量に変換する変換係数が小さい方が、ノイズの影響を受けにくく、また、電荷クロストーク率が小さい方が、変換係数を小さくすることができる。
【0067】
そこで、本実施形態では、第1の配置を有する画素205の電荷クロストーク率よりも、第2の配置を有する画素205の電荷クロストーク率を小さくする。このようにすることで、相対的にy方向の位相差信号をノイズの影響を受けにくくして位相差焦点検出性能を向上させることで、x方向の位相差検出性能と概ね揃える。
【0068】
第1の配置を有する画素205と第2の配置を有する画素205とで電荷クロストーク率を異ならせるために、PDA301とPDB302の分離領域400及び500における例えばp型不純物濃度が異なるように、イオン注入プロセスを行う。これにより、本実施形態の撮像素子1を実現することができる。本実施形態の場合、第1の配置を有する画素205の分離領域400の不純物濃度を薄く、第2の配置を有する画素の分離領域500の不純物濃度を濃くする。つまり、第1の配置を有する画素205の分離領域400の不純物濃度と、第2の配置を有する画素205の分離領域500の不純物濃度との大小関係が、ノイズの影響の大小関係と同じになるようにする。
【0069】
このような電荷クロストーク率の調整は、光電変換部の分離領域の幅を異ならせることにより行ってもよい。本実施形態の場合、第1の配置を有する画素205の分離領域400の幅を狭く、第2の配置を有する画素205の分離領域500の幅を広くする。つまり、第1の配置を有する画素の分離領域400の幅と、第2の配置を有する画素の分離領域500の幅の大小関係が、ノイズの影響の大小関係と同じになるようにする。
【0070】
さらに、基板裏面側から基板表面側への光電変換部内での電荷収集のための電位勾配を、第1の配置を有する画素205と第2の配置を有する画素205で異ならせることにより、第1の配置を有する画素205と第2の配置を有する画素205の電荷クロストーク率を調整しても良い。この場合、第1の配置を有する画素205の電位勾配を第2の配置を有する画素の電位勾配よりも緩やかに、つまりこの急峻さの大小関係が、ノイズの影響の大小関係と同じになるようにする。
【0071】
また、上述した、分離領域の不純物濃度及び幅、更に、電解勾配を組み合わせて、第1の方向の電荷クロストーク率が第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くなるように調整しても良い。
【0072】
また、上述した例では、撮像素子1の製造時に、第1の配置を有する画素205と第2の配置を有する画素205の電荷クロストーク率を調整する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものでは無く、製造後に調整できる構成としても良い。その場合、例えば、PDA301とPDB302の分離領域400,500に電極部を配置し、分離領域400,500の電位を制御することで、電荷クロストーク率を調整してもよい。その場合、第1の配置を有する画素205の分離領域400にかける電位を第2の配置を有する画素205の分離領域500にかける電位よりも低くする、つまり電位の大小関係が、幅Hと高さVの大小関係と逆になるようにする。なお、電極部としては制御配線に連結されたDeep Trench Isolation(DTI)を用いることができる。
【0073】
また、上述した例では、全ての画素205が第1の配置または第2の配置を有するものとして説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、画素205の一部を第1の配置または第2の配置として、離散的に配置してもよい。
【0074】
上記の通り第1の実施形態によれば、画素が行列状に配列された撮像素子から得られる、x方向とy方向とでノイズ量が異なる信号を用いて像面位相差方式の焦点検出を行う場合に、x方向とy方向とで焦点検出の性能を近づけることができる。
【0075】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図14は、本実施形態における撮像素子1の第3の配置を有する画素205の構成を示す。
【0076】
第3の配置では、図14に示すように、画素205を4つのフォトダイオード(PD)1101~1104により構成する。以下、PDA1101、PDB1102、PDC1103、PDD1104と記す。図14(a)は、本実施形態の画素の斜視図、図14(b)は、ML401側(基板裏面側)から見た平面視における位置関係を示す平面模式図であり、本実施形態では転送スイッチ等は省略している。なお、「平面視」及びx、y、zの定義は、図4と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
本実施形態において、第1の方向をx方向、第2の方向をy方向とすることにより、直交する2つの方向における位相差検出を、同一構成の画素で行うことが可能となる。
【0078】
PDA1101とPDC1103の信号の和(信号A)と、PDB1102とPDD1104の信号の和(信号B)を用いることでx方向の位相差検出を、PDA1101とPDB1102の信号の和(信号C)と、PDC1103とPDD1104の信号の和(信号を用いることでy方向の位相差検出を行うことができる。つまり、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、信号Aと信号Bに司る光電変換部間の電荷クロストーク率と信号Cと信号Dに司る光電変換部間の電荷クロストーク率の大小関係が、ノイズの影響の大小関係と一致するように、画素が構成されている。電荷クロストーク率の調整に関しては、第1の実施形態と同様に、分離領域1105及び分離領域1106の不純物濃度、幅の調整や、光電変換部内の電位勾配の調整、電極による電位制御により行う。
【0079】
上記の通り第2の実施形態によれば、各画素が2方向に分割された複数の光電変換部を有する場合にも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
<まとめ>
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0081】
(構成1)
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、を有し、
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、
前記複数の光電変換部から読み出される信号に重畳するノイズの影響が、前記第1の方向よりも前記第2の方向の方が大きい場合に、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする撮像素子。
【0082】
(構成2)
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向または前記第2の方向に配置された2つの光電変換部であることを特徴とする構成1に記載の撮像素子。
【0083】
(構成3)
前記複数の光電変換部は、前記第1の方向及び前記第2の方向に配置された4つの光電変換部であることを特徴とする構成1に記載の撮像素子。
【0084】
(構成4)
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の不純物濃度を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の不純物濃度よりも低くしたことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の撮像素子。
【0085】
(構成5)
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の幅を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の幅よりも短くしたことを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の撮像素子。
【0086】
(構成6)
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部において、光が入射する側から、光電変換して得られた電荷を蓄積する領域までの電位勾配を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部における電位勾配よりも緩やかにしたことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の撮像素子。
【0087】
(構成7)
前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の電位を制御する電極を更に有し、
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の電位を、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の間を分離する分離領域の電位よりも低くしたことを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の撮像素子。
【0088】
(構成8)
前記複数の光電変換部により光電変換された電荷を信号に変換して出力する出力手段を更に有することを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の撮像素子。
【0089】
(構成9)
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、を有し、
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部の数が、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部の数よりも多く、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする撮像素子。
【0090】
(構成10)
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向に行列状に配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズの少なくとも一部の各マイクロレンズに対して、前記各マイクロレンズを介して入射した光を光電変換するように構成された複数の光電変換部と、
前記複数の光電変換部ごとに備えられた複数のフローティングデフュージョン部と、
前記複数の光電変換部から前記フローティングデフュージョン部に転送された電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部と
を有し、
前記複数の光電変換部は、前記複数の光電変換部ごとに前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に配置され、
前記第1の方向に配置された前記複数の光電変換部に対応する前記フローティングデフュージョン部を構成する拡散層から前記電荷電圧変換部までの配線の長さが、前記第2の方向に配置された前記複数の光電変換部に対応する前記フローティングデフュージョン部を構成する拡散層から前記電荷電圧変換部までの配線の長さよりも短く、前記複数の光電変換部の間の前記第1の方向の電荷クロストーク率を、前記第2の方向の電荷クロストーク率よりも高くしたことを特徴とする撮像素子。
【0091】
(構成11)
構成1乃至10のいずれかに記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号を処理する処理手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【0092】
(構成12)
前記処理手段は、前記信号に基づいて、像面位相差方式の焦点検出を行うことを特徴とする構成11に記載の撮像装置。
【0093】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0094】
1:撮像素子、2:全体制御・演算部、7:信号処理部、201:画素アレイ部、202:垂直選択回路、203:列回路、204:水平選択回路、205:画素、206:出力信号線、207:画素駆動配線群、301,302:フォトダイオード、303,304:転送スイッチ、305:フローティングディフュージョン部、400,500:分離領域、721:第1瞳強度分布、722:第2瞳強度分布
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14