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特開2023-167267オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機
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  • 特開-オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機 図1
  • 特開-オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機 図2
  • 特開-オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167267
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20231116BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F25B9/00 A
F25B1/00 387Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078318
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(57)【要約】
【課題】オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機におけるオイルラインの圧力損失を低減する。
【解決手段】極低温冷凍機10用の圧縮機12は、冷却ファン50と、冷却ファン50によって強制冷却されるように配置された第1オイルライン46とを備える空冷熱交換器26と、第1オイルライン46をバイパスする第2オイルライン48と、を備える。第2オイルライン48は、冷却ファン50によって強制冷却されるように配置されていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機であって、
冷却ファンと、前記冷却ファンによって強制冷却されるように配置された第1オイルラインとを備える空冷熱交換器と、
前記第1オイルラインをバイパスする第2オイルラインと、を備えることを特徴とするオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項2】
前記第2オイルラインは、前記冷却ファンによって強制冷却されるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項3】
前記空冷熱交換器は、前記第1オイルラインのオイル流量と前記第2オイルラインのオイル流量との差を低減するように前記第1オイルラインと前記第2オイルラインの少なくとも一方に設けられたオリフィスを備えることを特徴とする請求項2に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項4】
前記第2オイルラインは、前記空冷熱交換器をバイパスすることを特徴とする請求項1に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項5】
前記第2オイルラインは、前記冷却ファンを作動させるとき閉じ、前記冷却ファンを停止させるとき開くように動作する開閉弁を備えることを特徴とする請求項4に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項6】
前記空冷熱交換器は、冷媒ガスラインを冷却することを特徴とする請求項1に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項7】
前記空冷熱交換器の上流に直列接続された液冷熱交換器をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項8】
前記液冷熱交換器の上流または下流、または前記空冷熱交換器の下流に設けられたオイル温度センサをさらに備え、
前記冷却ファンは、前記オイル温度センサによって測定されるオイル温度に基づいて作動することを特徴とする請求項7に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項9】
前記液冷熱交換器は、冷媒ガスライン上で前記液冷熱交換器の上流または下流に設けられた冷媒ガス温度センサをさらに備え、
前記冷却ファンは、前記冷媒ガス温度センサによって測定される冷媒ガス温度に基づいて作動することを特徴とする請求項7に記載のオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
デュアル・アフタークーラー付きのオイル潤滑ヘリウム圧縮機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この圧縮機には、ヘリウムおよびオイルを冷却する2つのアフタークーラー、すなわち水冷式アフタークーラーと空冷式アフタークーラーが内蔵される。空冷式アフタークーラーは、水冷式アフタークーラーと直列または並列に配置される。空冷式アフタークーラーのファンを作動させることにより、水冷式アフタークーラーの冷却水回路がブロックされた場合における冗長性が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-505751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上述のヘリウム圧縮機について検討し、以下の課題を認識した。この圧縮機は水冷式と空冷式の2つの熱交換器を搭載しているため、冷却されるオイルラインの全長が長くなりがちであり、これに起因してオイル流れの圧力損失が増加しうる。その結果生じうるオイル流量低下は、冷却能力を低下させ、ひいては圧縮機のオーバーヒートや高温運転による寿命の低下を招きうる。とくに、水冷式熱交換器に供給される冷却水の温度が低すぎる場合には、そのような低温でオイル粘度が非線形に増加しうることから、この問題が顕在化しやすい。とりうる方策として、例えば、オイルポンプをハイパワーで駆動する等、投入エネルギーを増加することによって、オイル流量を回復させることが考えられる。しかし、これは望ましくないことに、消費電力を増加させることになる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機におけるオイルラインの圧力損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機が提供される。極低温冷凍機用圧縮機は、冷却ファンと、冷却ファンによって強制冷却されるように配置された第1オイルラインとを備える空冷熱交換器と、第1オイルラインをバイパスする第2オイルラインと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機におけるオイルラインの圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係る圧縮機のオイル循環ラインの一例を概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係る圧縮機のオイル循環ラインの他の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
図1は、実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【0011】
極低温冷凍機10は、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機(以下、単に圧縮機ともいう)12と、コールドヘッド14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の冷媒ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。コールドヘッド14は、膨張機とも称され、室温部14aと、冷却ステージとも称される低温部14bとを有する。圧縮機12とコールドヘッド14により極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより低温部14bが所望の極低温に冷却される。冷媒ガスは、作動ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0012】
極低温冷凍機10は、一例として、単段式または二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。コールドヘッド14は、極低温冷凍機10のタイプに応じて異なる構成を有するが、圧縮機12は、極低温冷凍機10のタイプによらず、以下に説明する構成を用いることができる。
【0013】
なお、一般に、圧縮機12からコールドヘッド14に供給される冷媒ガスの圧力と、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。
【0014】
圧縮機12は、圧縮機本体16、冷媒ガスライン18、オイル循環ライン20、圧縮機冷却系22を備える。図1では、理解を容易にするために、冷媒ガスライン18を実線で示し、オイル循環ライン20を破線で示している。詳細は後述するが、圧縮機冷却系22は、液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26を備え、冷媒ガスライン18およびオイル循環ライン20を冷却するように構成されている。また、圧縮機12は、圧縮機本体16、冷媒ガスライン18、オイル循環ライン20、圧縮機冷却系22など、圧縮機12の各構成要素を収容する圧縮機筐体28を備える。
【0015】
圧縮機本体16は、その吸入口から吸入される冷媒ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体16では冷却と潤滑のためにオイルが使用され、吸入された冷媒ガスは圧縮機本体16内でこのオイルに直接さらされる。よって、冷媒ガスは、オイルが若干混入した状態で吐出口から送出される。
【0016】
圧縮機本体16は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または冷媒ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。圧縮機本体16は、固定された一定の冷媒ガス流量を吐出するよう構成されていてもよい。あるいは、圧縮機本体16は、吐出する冷媒ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。圧縮機本体16は、圧縮カプセルと称されることもある。
【0017】
冷媒ガスライン18は、吐出ポート30、吸入ポート31、吐出流路32、吸入流路33を備える。吐出ポート30は、圧縮機本体16により高圧に昇圧された冷媒ガスを圧縮機12から送出するために圧縮機筐体28に設置された冷媒ガスの出口であり、吸入ポート31は、低圧の冷媒ガスを圧縮機12に受け入れるために圧縮機筐体28に設置された冷媒ガスの入口である。吐出流路32および吸入流路33は、圧縮機筐体28に収容されている。圧縮機本体16の吐出口が吐出流路32により吐出ポート30に接続され、吸入ポート31が吸入流路33により圧縮機本体16の吸入口に接続されている。
【0018】
吐出流路32には、圧縮機冷却系22を構成する液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26が設けられている。加えて、吐出流路32には、圧縮機冷却系22の下流にオイルセパレータ34およびアドゾーバ35が設けられている。
【0019】
オイルセパレータ34は、圧縮機本体16を通ることによって冷媒ガスに混入するオイルを冷媒ガスから分離するために設けられている。アドゾーバ35は、冷媒ガスに残留している例えば気化したオイルそのほかの汚染成分を冷媒ガスから吸着により除去するために設けられている。オイルセパレータ34とアドゾーバ35は、直列に接続されている。吐出流路32において、オイルセパレータ34が圧縮機本体16側に配置され、アドゾーバ35が吐出ポート30側に配置されている。
【0020】
オイルセパレータ34を圧縮機本体16に接続するオイル戻りライン21が設けられている。オイル戻りライン21を通じて、オイルセパレータ34で回収されたオイルを圧縮機本体16に戻すことができる。オイル戻りライン21の途中には、オイルセパレータ34で分離されたオイルに含まれる塵埃を除去するフィルターと、圧縮機本体16へのオイルの戻り量を制御するオリフィスが設けられてもよい。
【0021】
一方、吸入流路33には、ストレージタンク36が設けられている。ストレージタンク36は、コールドヘッド14から圧縮機12へと戻る低圧の冷媒ガスに含まれる脈動を除去するための容積として設けられている。
【0022】
また、冷媒ガスライン18には、圧縮機本体16を迂回するように吐出流路32を吸入流路33に接続するバイパス弁38が設けられている。一例として、バイパス弁38は、オイルセパレータ34とアドゾーバ35の間で吐出流路32から分岐し、圧縮機本体16とストレージタンク36の間で吸入流路33に接続される。バイパス弁38は、冷媒ガス流量制御のために、及び/または、圧縮機12を停止する際の吐出流路32と吸入流路33との均圧化のために設けられている。
【0023】
圧縮機12の冷媒ガスライン18は、コールドヘッド14に接続される。コールドヘッド14の室温部14aには、高圧ポート40および低圧ポート41が設けられている。高圧ポート40は、高圧配管42によって吐出ポート30に接続され、低圧ポート41は、低圧配管43によって吸入ポート31に接続されている。
【0024】
オイル循環ライン20は、圧縮機冷却系22(すなわち液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26)を経由するように、圧縮機本体16のオイル出口をオイル入口に接続する。よって、圧縮機本体16から流出するオイルが圧縮機冷却系22により冷却され再び圧縮機本体16に流入することができる。
【0025】
この実施の形態では、オイル循環ライン20は、後述のように、圧縮機冷却系22において複数(この例では2つ)のオイル流路に分岐している。これら分岐したオイル流路は、圧縮機冷却系22と圧縮機本体16のオイル入口との間で再び合流している。
【0026】
オイル循環ライン20には、内部を流れるオイル流量を制御するオリフィスが設けられていてもよい。また、オイル循環ライン20には、オイルに含まれる塵埃を除去するフィルターが設けられてもよい。こうしたオリフィスとフィルターは、例えば、オイル循環ライン20の下流側、つまり圧縮機冷却系22と圧縮機本体16のオイル入口との間に設けられてもよい。
【0027】
圧縮機冷却系22は上述のように、液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26を備える。液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26は直列に接続され、液冷式熱交換器24が空冷式熱交換器26の上流に設けられている。よって、圧縮機本体16での冷媒ガスの圧縮に伴って生じる圧縮熱により加熱されたオイルおよび高圧の冷媒ガスは、圧縮機本体16から最初に液冷式熱交換器24に流入して冷却され、次に空冷式熱交換器26に流入する。
【0028】
この実施の形態では、液冷式熱交換器24は、圧縮機12の主冷却装置として圧縮機12に搭載され、空冷式熱交換器26は、圧縮機12の予備冷却装置として圧縮機12に搭載されている。よって、液冷式熱交換器24は、圧縮機12の運転中常時作動し、空冷式熱交換器26は、液冷式熱交換器24が正常に作動しているときには作動せず、液冷式熱交換器24が故障等により作動しないときまたはその冷却能力が低下したとき作動してもよい。そこで、後述のように、空冷式熱交換器26は、オイルまたは冷媒ガスの温度センサなど圧縮機12に設けられたセンサの出力に基づいて自身のオンオフを切り替えるように構成されてもよい。
【0029】
液冷式熱交換器24は、冷媒ガスと冷却液との熱交換により冷媒ガスを冷却する第1部分24aと、オイルと冷却液との熱交換によりオイルを冷却する第2部分24bとを備える。第1部分24aは、吐出流路32において圧縮機本体16とオイルセパレータ34の間、より具体的には、圧縮機本体16の吐出口と空冷式熱交換器26の間に配置され、吐出流路32を流れる冷媒ガスを冷却する。第2部分24bは、オイル循環ライン20において圧縮機本体16のオイル出口と空冷式熱交換器26の間に配置され、オイル循環ライン20を流れるオイルを冷却する。
【0030】
冷却液としては典型的に、水(例えば、水道水、工業用水など)が使用されるが、適切な他の冷却液が使用されてもよい。冷却液は、外部から圧縮機12に供給され、液冷式熱交換器24の第1部分24aおよび第2部分24bを経て、圧縮機12の外部に排出される。このようにして、圧縮機本体16で生じる圧縮熱は、冷却液とともに圧縮機12の外へと除去される。なお、冷却液は、例えば公知の水チラーなどの冷却液循環装置(図示せず)により冷却され、再び圧縮機12に供給されてもよい。
【0031】
空冷式熱交換器26は、冷却ファン50と、冷却ファン50によって強制冷却されるように配置された第1オイルライン46と、第1オイルライン46をバイパスし、冷却ファン50によって強制冷却されるように配置された第2オイルライン48とを備える。
【0032】
第1オイルライン46と第2オイルライン48は空冷式熱交換器26内に配置されたオイル循環ライン20の一部分である。第2オイルライン48は、空冷式熱交換器26の上流、つまり液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26との間で、オイル循環ライン20から分岐し、空冷式熱交換器26の下流、つまり空冷式熱交換器26と圧縮機本体16のオイル入口との間で、第1オイルライン46と再び合流する。
【0033】
例示的な構成として、冷却ファン50は、その作動により、空冷式熱交換器26から外部へと空気を排出するように圧縮機筐体28に設置されている。圧縮機筐体28のうち空冷式熱交換器26を囲む部分には、2つの空気取入口52が設けられており、冷却ファン50の作動により、外部からこれら空気取入口52を通じて空冷式熱交換器26に空気が取り込まれる。一方の空気取入口52から空冷式熱交換器26内に吹き込む空気流れは、冷媒ガスライン18と第1オイルライン46の強制空冷に使用され、他方の空気取入口52から空冷式熱交換器26内に吹き込むもう一つの空気流れは、第2オイルライン48の強制空冷に使用される。図1では、理解のために、これら空気流れを太い矢印で模式的に示している。
【0034】
後述のように、冷却ファン50は、オイル温度センサによって測定されるオイル温度に基づいて作動してもよい。あるいは、冷却ファン50は、冷媒ガス温度センサによって測定される冷媒ガス温度に基づいて作動してもよい。
【0035】
極低温冷凍機10の運転中、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスは、低圧ポート41から低圧配管43を通じて圧縮機12の吸入ポート31に流入する。冷媒ガスは、吸入流路33上のストレージタンク36を経て、圧縮機本体16の吸入口へと回収される。冷媒ガスは、圧縮機本体16によって圧縮され昇圧される。圧縮機本体16の吐出口から送出される冷媒ガスは、液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26で冷却され、さらに、オイルセパレータ34、アドゾーバ35を経て、吐出ポート30から圧縮機12を出る。冷媒ガスは、高圧配管42と高圧ポート40を経てコールドヘッド14の内部に供給される。
【0036】
圧縮機本体16のオイル出口から流出するオイルは、オイル循環ライン20を通じて液冷式熱交換器24に流入し、液冷式熱交換器24でオイルと冷却液との熱交換により冷却される。冷却されたオイルは液冷式熱交換器24から空冷式熱交換器26に流入する。オイルは、空冷式熱交換器26内で第1オイルライン46と第2オイルライン48に分岐して流れる。冷却ファン50が作動している場合、オイルは第1オイルライン46と第2オイルライン48を流れるとき空気で冷却される。空冷式熱交換器26から流出するオイルは、オイル循環ライン20を通じて圧縮機本体16のオイル入口へと戻される。
【0037】
圧縮機12には、各種のセンサが設けられていてもよい。たとえば、圧縮機12は、オイルの温度を測定する少なくとも1つのオイル温度センサ(61~63)を備えてもよい。第1センサ61は、オイル循環ライン20上で液冷式熱交換器24の上流に設けられ、圧縮機本体16から液冷式熱交換器24に流入するオイルの温度を測定する。第2センサ62は、オイル循環ライン20上で液冷式熱交換器24の下流、具体的には液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26の間に設けられ、液冷式熱交換器24から空冷式熱交換器26に流入するオイルの温度を測定する。第3センサ63は、オイル循環ライン20上で空冷式熱交換器26の下流に設けられ、空冷式熱交換器26から圧縮機本体16に流入するオイルの温度を測定する。温度センサは、例えばサーミスタであってもよい。
【0038】
圧縮機12は、冷媒ガスの温度を測定する少なくとも1つの冷媒ガスセンサ(64~66)を備えてもよい。第4センサ64は、冷媒ガスライン18の吐出流路32上で液冷式熱交換器24の上流に設けられ、圧縮機本体16から液冷式熱交換器24に流入する冷媒ガスの温度を測定する。第5センサ65は、冷媒ガスライン18上で液冷式熱交換器24の下流、具体的には液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26の間に設けられ、液冷式熱交換器24から空冷式熱交換器26に流入する冷媒ガスの温度を測定する。第6センサ66は、冷媒ガスライン18上で空冷式熱交換器26の下流に設けられ、空冷式熱交換器26からオイルセパレータ34に流入する冷媒ガスの温度を測定する。
【0039】
空冷式熱交換器26には、冷却ファン50をオンオフするファンコントローラ54が設けられていてもよい。ファンコントローラ54は、少なくとも1つのセンサから当該センサの測定結果を示すセンサ信号を受け、測定結果に基づいて冷却ファン50を作動させるように構成される。なお図1には、例として、第2センサ62のセンサ信号がファンコントローラ54に入力される場合を示している。
【0040】
ファンコントローラ54は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0041】
例えば、ファンコントローラ54は、少なくとも1つのオイル温度センサ(61~63)によって測定されるオイル温度に基づいて、冷却ファン50を作動させてもよい。この場合、ファンコントローラ54は、オイルの測定温度を示すセンサ信号を第1センサ61、または第2センサ62、または第3センサ63から受け、この測定温度を温度しきい値と比較する。この温度しきい値は、オイル温度がこのしきい値よりも高い場合、オイルの冷却が不十分であると評価される値に設定される。
【0042】
オイル温度センサが測定するオイル温度が温度しきい値を超えるひとつの原因として、たとえば、液冷式熱交換器24に供給される冷却液の温度が高すぎる場合(すなわち、冷却液を冷却するチラーの冷却不良や故障)や、液冷式熱交換器24自身の不良(熱交換器の詰まりや破損)などが想定される。
【0043】
そこで、ファンコントローラ54は、測定温度が温度しきい値を超える場合に空冷式熱交換器26を作動させる。すなわち、ファンコントローラ54は、冷却ファン50をオフからオンに切り替えることにより、空冷式熱交換器26を起動する。一方、ファンコントローラ54は、測定温度が温度しきい値を超えない場合には、空冷式熱交換器26を起動しない(冷却ファン50をオフのままとする)。このようにして、圧縮機12の予備冷却装置である空冷式熱交換器26を作動させることにより、圧縮機12の主冷却装置である液冷式熱交換器24の動作不良に対処することができる。
【0044】
あるいは、ファンコントローラ54は、冷媒ガス温度センサによって測定されるオイル温度に基づいて、冷却ファン50を作動させてもよい。例えば、ファンコントローラ54は、冷媒ガスの測定温度を示すセンサ信号を第4センサ64、または第5センサ65から受け、この測定温度を温度しきい値と比較してもよい。ファンコントローラ54は、測定温度が温度しきい値を超える場合に空冷式熱交換器26を作動させる一方、測定温度が温度しきい値を超えない場合には空冷式熱交換器26を起動しない。このようにしても、空冷式熱交換器26を利用して、液冷式熱交換器24の動作不良に対処することができる。
【0045】
ところで、極低温冷凍機10の主たる用途の一つとして、超伝導マグネットの冷却がある。典型的には、超伝導マグネットは、大量の液体ヘリウムに浸漬することで冷却され、極低温冷凍機10は、液体ヘリウムの冷却、再凝縮に利用される。こうした従来型の装置では、たとえ極低温冷凍機10が停止したとしても、大量の液体ヘリウムがしばらくの間、超伝導マグネットの冷却を維持することができる。これに対して、近年、ヘリウム価格の高騰を背景として、大幅に液体ヘリウムの使用量を低減する超伝導マグネットの研究開発が進められている。こうした省ヘリウムタイプの超伝導装置では、極低温冷凍機10の運転停止は超伝導マグネットの冷却の喪失に直結しがちである。
【0046】
実施の形態によると、圧縮機冷却系22が液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26を有するので、圧縮機12の冷却に関して冗長性が確保される。たとえ液冷式熱交換器24に動作不良が生じたとしても、圧縮機12の冷却機能を空冷式熱交換器26により補完または代替できる。よって、圧縮機12の過剰な温度上昇およびそれに起因する極低温冷凍機10の運転停止のリスクが低減される。したがって、実施の形態に係る極低温冷凍機10は、いわゆる省ヘリウムタイプの超伝導装置の運転継続性を向上することに役立つ。
【0047】
しかしながら、この実施の形態では、圧縮機冷却系22が液冷式と空冷式の2つの熱交換器を搭載しているため(とくに、液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26が直列接続されているため)、冷却されるオイル循環ライン20の全長が長くなりがちであり、これに起因してオイル流れの圧力損失が増加しうる。その結果生じうるオイル循環ライン20のオイル流量低下は、圧縮機冷却系22の冷却能力を低下させ、ひいては圧縮機12のオーバーヒートや高温運転による寿命の低下を招きうる。とくに、液冷式熱交換器24に供給される冷却液の温度が低すぎる場合には、そのような低温でオイル粘度が非線形に増加しうることから、この問題が顕在化しやすい。とりうる方策として、例えば、オイルポンプをハイパワーで駆動する等、投入エネルギーを増加することによって、オイル循環ライン20のオイル流量を回復させることが考えられる。しかし、これは望ましくないことに、消費電力を増加させることになる。
【0048】
これに対処すべく、この実施の形態では、空冷式熱交換器26は、第1オイルライン46のみを有するのではなく、第1オイルライン46をバイパスする第2オイルライン48をさらに備える。このように、空冷式熱交換器26に複数のオイル流路を並列に設けることにより、オイル循環ライン20の流路断面積が増え、圧力損失を低減することができる。オイルが液冷式熱交換器24で低温に冷却され、液冷式熱交換器24から出るオイルの粘度が高まったとしても、空冷式熱交換器26を流れるオイル流量の低下を抑えることができる。オイル循環ライン20を循環するオイル流量の不足を防ぎ、圧縮機12の冷却不良を回避することができる。
【0049】
図2は、実施の形態に係る圧縮機12のオイル循環ライン20の一例を概略的に示す図である。図2の例においても、図1を参照して説明した実施の形態と同様に、圧縮機12は、圧縮機本体16、圧縮機冷却系22、およびこれらを接続するオイル循環ライン20を備える。圧縮機冷却系22は、液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26を備え、オイル循環ライン20を冷却するように構成されている。液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26は直列に接続され、液冷式熱交換器24が空冷式熱交換器26の上流に設けられている。
【0050】
オイル循環ライン20は、空冷式熱交換器26の上流、つまり液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26との間で、第1オイルライン46と第2オイルライン48に分岐する。空冷式熱交換器26は、冷却ファン50を備え、第1オイルライン46および第2オイルライン48は、冷却ファン50が作動するとき空冷式熱交換器26内に生じさせる空気流れによって強制冷却される。第1オイルライン46と第2オイルライン48は、空冷式熱交換器26の下流、つまり空冷式熱交換器26と圧縮機本体16のオイル入口との間で再び合流する。
【0051】
空冷熱交換器26は、第1オイルライン46のオイル流量と第2オイルライン48のオイル流量との差を低減するように第1オイルライン46と第2オイルライン48の少なくとも一方に設けられたオリフィス56を備えてもよい。図2の例では、オリフィス56が存在しなかった場合の第2オイルライン48のオイル流量は、第1オイルライン46に比べて多くなっている。そこで、オリフィス56を第2オイルライン48に設けることにより、第2オイルライン48のオイル流量を低下させ、第1オイルライン46と第2オイルライン48のオイル流量を均一化することができる。第1オイルライン46と第2オイルライン48のオイル流量のアンバランスを解消し、空冷式熱交換器26の熱交換の効率を向上することができる。
【0052】
発明者の検討によると、オリフィス56の孔径直径R[m]は、1.0×10-4≦R≦5.0×10-2の範囲から選択されてもよい。ここで、孔径直径Rは、次式により算出することができる。
【数1】
ここで、μは、空冷式熱交換器に流入するオイルの粘度[Pa・s]、L,Lはそれぞれ、第1オイルライン46および第2オイルライン48の空冷熱交換器としての長さ[m]、dは、第1オイルライン46および第2オイルライン48の配管直径[m]、Qは、オイル循環ライン20のオイルの流量[m/s]を表す。
【0053】
図3は、実施の形態に係る圧縮機12のオイル循環ライン20の他の一例を概略的に示す図である。図3の例においても、図1を参照して説明した実施の形態と同様に、圧縮機12は、圧縮機本体16、圧縮機冷却系22、およびこれらを接続するオイル循環ライン20を備える。圧縮機冷却系22は、液冷式熱交換器24および空冷式熱交換器26を備え、オイル循環ライン20を冷却するように構成されている。液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26は直列に接続され、液冷式熱交換器24が空冷式熱交換器26の上流に設けられている。
【0054】
オイル循環ライン20は、空冷式熱交換器26の上流、つまり液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26との間で、第1オイルライン46と第2オイルライン48に分岐する。空冷式熱交換器26は、冷却ファン50を備え、第1オイルライン46は、冷却ファン50が作動するとき空冷式熱交換器26内に生じさせる空気流れによって強制冷却される。第1オイルライン46と第2オイルライン48は、空冷式熱交換器26の下流、つまり空冷式熱交換器26と圧縮機本体16のオイル入口との間で再び合流する。
【0055】
ただし、第2オイルライン48は、図1および図2の例とは異なり、空冷熱交換器26をバイパスする。第2オイルライン48は、圧縮機12において空冷式熱交換器26の外に設けられ、空冷式熱交換器26内を経由しない。
【0056】
第2オイルライン48は、冷却ファン50を作動させるとき閉じ、冷却ファン50を停止させるとき開くように動作する開閉弁58を備えてもよい。そこで、ファンコントローラ54は、少なくとも1つのセンサから当該センサの測定結果を示すセンサ信号を受け、測定結果に基づいて冷却ファン50および開閉弁58を作動させるように構成されてもよい。ファンコントローラ54は、冷却ファン50を作動させるとともに開閉弁58を閉じ、冷却ファン50を停止させるとともに開閉弁58を開いてもよい。なお図3には、例として、第2センサ62のセンサ信号がファンコントローラ54に入力される場合を示している。上述のように、他のセンサ(例えば、第1センサ61、または第3センサ63、または第4センサ64、または第5センサ65)が用いられてもよい。
【0057】
このようにして、圧縮機12の主冷却装置である液冷式熱交換器24が正常に作動しているときには、予備冷却装置である空冷式熱交換器26は停止され、液冷式熱交換器24で冷却されたオイルは第2オイルライン48を流れることになる。オイル流れに空冷式熱交換器26をバイパスさせることにより、オイル循環ライン20の圧力損失の増加を抑制することができる。オイル循環ライン20を循環するオイル流量の不足を防ぎ、圧縮機12の冷却不良を回避することができる。
【0058】
一方、液冷式熱交換器24が正常に作動していないときには、開閉弁58を閉じて空冷式熱交換器26を作動させることにより、液冷式熱交換器24の冷却不良を空冷式熱交換器26により補完または代替できる。
【0059】
なお、図3の例において、図1および図2の例と同様に、空冷式熱交換器26内に複数のオイルラインが設けられ、これらオイルラインが冷却ファン50によって冷却されてもよい。
【0060】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0061】
上述の実施の形態では、オイル循環ライン20は、空冷式熱交換器26において第1オイルライン46と第2オイルライン48に分岐しているが、例えば3つまたは4つなど、より多くのオイルラインに分岐してもよい。
【0062】
上述の実施の形態では、圧縮機冷却系22において液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26が直列接続され、液冷式熱交換器24が空冷式熱交換器26の上流に設けられている。しかし、圧縮機冷却系22は、他の構成もとりうる。例えば、液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26が直列接続され、空冷式熱交換器26が液冷式熱交換器24の上流に設けられてもよい。あるいは、液冷式熱交換器24と空冷式熱交換器26が並列接続されてもよい。
【0063】
空冷式熱交換器26の冷却ファン50は、上述の例とは冷却ファンは逆向きの空気流れを生成してもよく、外部から空冷式熱交換器26内へと送風するように構成されてもよい。冷却ファン50は、冷媒ガスライン18、第1オイルライン46、第2オイルライン48に空気を吹き付けるように構成されてもよい。
【0064】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0065】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 18 冷媒ガスライン、 46 第1オイルライン、 48 第2オイルライン、 50 冷却ファン、 56 オリフィス、 58 開閉弁。
図1
図2
図3