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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167286
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】防振部材及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20231116BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H04R1/02 105B
H04R1/02 105A
G10K11/16 160
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078351
(22)【出願日】2022-05-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛盛
(72)【発明者】
【氏名】今井 拓水
(72)【発明者】
【氏名】西野 浩造
(72)【発明者】
【氏名】柴山 佳幸
【テーマコード(参考)】
5D017
5D061
【Fターム(参考)】
5D017AG02
5D061GG01
5D061GG05
(57)【要約】
【課題】スピーカーボックスを安定して支持することができ、その容積への影響も抑える。
【解決手段】防振部材は、電子機器の筐体にスピーカーボックスを支持するための防振部材であって、棒状の本体と、当該防振部材を前記スピーカーボックスに固定するためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、を備え、前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、前記取付片は、前記ゴム材によって形成されている。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体にスピーカーボックスを支持するための防振部材であって、
棒状の本体と、
当該防振部材を前記スピーカーボックスに固定するためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、
を備え、
前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、
前記取付片は、前記ゴム材によって形成されている
ことを特徴とする防振部材。
【請求項2】
請求項1に記載の防振部材であって、
前記本体は、長手方向での第1端部の端面及び第2端部の端面のそれぞれに、前記ゴム材で形成された突起を有する
ことを特徴とする防振部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防振部材であって、
前記取付片は、その両面にそれぞれ前記孔部の周囲を囲むように配置され、前記ゴム材で形成された複数の突起を有する
ことを特徴とする防振部材。
【請求項4】
請求項1に記載の防振部材であって、
前記取付片は、第1取付片及び第2取付片を含み、
前記第1取付片は、前記本体の一側面から突出し、
前記第2取付片は、前記本体の他側面から突出し、前記本体を間に挟んで前記第1取付片と並んでいる
ことを特徴とする防振部材。
【請求項5】
請求項4に記載の防振部材であって、
前記第1取付片及び前記第2取付片の組が、前記本体の長手方向で複数組設けられている
ことを特徴とする防振部材。
【請求項6】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に収容されたスピーカーボックスと、
前記スピーカーボックスに取り付けられ、前記筐体に対して前記スピーカーボックスを支持する防振部材と、
を備え、
前記防振部材は、
棒状の本体と、
当該防振部材を前記スピーカーボックスに取り付けるためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、
を有し、
前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、
前記取付片は、前記ゴム材によって形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記本体は、長手方向での第1端部の端面及び第2端部の端面のそれぞれに、前記ゴム材で形成された突起を有し、
前記防振部材は、前記第1端部の端面及び前記第2端部の端面に設けられた各突起がそれぞれ前記筐体の壁面に当接している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電子機器であって、
前記取付片は、その両面にそれぞれ前記孔部の周囲を囲むように配置され、前記ゴム材で形成された複数の突起を有し、
前記ねじは、ねじ部と、頭部とを有し、
前記取付片は、一面に形成された前記突起が前記スピーカーボックスの表面に当接し、他面に形成された前記突起が前記頭部に当接した状態で、前記スピーカーボックスに固定される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8に記載の電子機器であって、
前記ねじは、前記ねじ部と前記頭部との間に非ねじ部が設けられた段付きねじで構成され、
前記非ねじ部の長さは、前記取付片の板厚と、前記両面に形成された各突起の高さとの合計値と同一程度である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7に記載の電子機器であって、
さらに、前記筐体内に収容され、前記スピーカーボックスの一面側に並んで配置された部品を備え、
前記防振部材は、前記スピーカーボックスの周囲に複数取り付けられると共に、それぞれの前記第1端部及び前記第2端部が前記壁面に当接した状態で、該壁面と前記スピーカーボックスの前記一面との間に前記部品が配置されるスペースを形成している
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーボックスを支持する防振部材及び該防振部材を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インターネットや電話回線等を利用し、遠隔地同士で音声や映像を介した会議や通話を行うことができる電子機器がある。この種の電子機器は、相手側から発せられた音声等を出力するためのスピーカー装置を搭載している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器のスピーカー装置は、会議室等の比較的広い空間に音を届ける必要があるため、十分な容積を持ったスピーカーボックスを備える必要がある。このため、スピーカーボックスを支持する防振部材は、スピーカーボックスの容積への影響を抑える必要がある。さらに防振部材は、スペースの確保が難しい筐体内でスピーカーボックスを安定して支持できる必要もある。このため、例えば、単にドーム状に成形したゴムをスピーカーボックスに取り付けた構成等では、安定した支持が難しいだけでなく、スピーカーボックスの容積への影響も大きくなる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、スピーカーボックスを安定して支持することができ、その容積への影響も抑えることができる防振部材及び該防振部材を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る防振部材は、電子機器の筐体にスピーカーボックスを支持するための防振部材であって、棒状の本体と、当該防振部材を前記スピーカーボックスに固定するためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、を備え、前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、前記取付片は、前記ゴム材によって形成されている。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に収容されたスピーカーボックスと、前記スピーカーボックスに取り付けられ、前記筐体に対して前記スピーカーボックスを支持する防振部材と、を備え、前記防振部材は、棒状の本体と、当該防振部材を前記スピーカーボックスに取り付けるためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、を有し、前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、前記取付片は、前記ゴム材によって形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、スピーカーボックスを安定して支持することができ、その容積への影響も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器の一使用態様を示すシステム図である。
図2A図2Aは、電子機器の正面図である。
図2B図2Bは、電子機器の背面図である。
図3図3は、電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
図4図4は、図3に示すスピーカー装置4及びその周辺部の模式的な正面図である。
図5図5は、図4に示すスピーカー装置及びその周辺部の模式的な底面図である。
図6A図6Aは、防振部材を正面側から見た斜視図である。
図6B図6Bは、防振部材を背面側から見た斜視図である。
図7図7は、防振部材の正面図である。
図8A図8Aは、防振部材の平面図である。
図8B図8Bは、図7中のVIIIB-VIIIB線に沿う模式的な断面図である。
図9図9は、防振部材の底面図である。
図10図10は、防振部材の取付片及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図11図11は、スピーカーボックスに取り付けた防振部材の第1端部を筐体で支持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る防振部材及び電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の一使用態様を示すシステム図である。本実施形態の電子機器10は、例えばインターネットで接続された遠隔地との間で音声や映像を利用した会議や通話を行うオンライン会議システムに用いることができる端末装置である。
【0012】
図1に示すオンライン会議システムは、本実施形態に係る電子機器10と、タッチパネル操作部12と、外部ディスプレイ14と、パーソナルコンピュータ16とを含む。図1に示すように、電子機器10は、例えば会議室の壁に壁掛け固定された外部ディスプレイ14の上方又は下方に壁掛け固定される。電子機器10は、テーブル等の上に載置して用いることもできる。
【0013】
タッチパネル操作部12は、電子機器10に対する入力操作用のタッチパネル式端末である。外部ディスプレイ14は、例えば電子機器10とインターネット18及びクラウドサーバー19を介して接続された会議相手側のパーソナルコンピュータ20からの情報を表示することができる。具体的には、外部ディスプレイ14は、電子機器10の制御下に会議相手の顔映像や資料等を表示する。パーソナルコンピュータ16は、例えば電子機器10の使用者からの資料等を外部ディスプレイ14及び相手側のパーソナルコンピュータ20に送信することができる。パーソナルコンピュータ16は、タッチパネル操作部12に代えて電子機器10に対する入力操作用として用いてもよい。
【0014】
電子機器10と、タッチパネル操作部12、外部ディスプレイ14、及びパーソナルコンピュータ16とは、例えばUSB規格やHDMI(登録商標)規格等の所定の接続規格に準拠したコネクタ及びケーブルを用いて接続される。
【0015】
先ず、電子機器10の外観構造を説明する。
【0016】
図2Aは、電子機器10の正面図である。図2Bは、電子機器10の背面図である。
【0017】
図2A及び図2Bに示すように、電子機器10は、筐体22を備える。以下、電子機器10及びその各要素について、図2Aに示す正面から見た方向を基準として、筐体22の高さ方向を上下、筐体22の幅方向を左右、筐体22の奥行方向を前後、と呼んで説明する。
【0018】
筐体22は、横長の棒形状を有し、略直方体形状の箱体である。このため、筐体22の正面22a及び背面22bは、それぞれ左右方向に横長な幅寸法と、これよりも小さい高さ寸法とを有する。筐体22の上面22c及び下面22dは、それぞれ左右方向に横長な幅寸法と、これよりも小さい奥行寸法とを有する(図3参照)。筐体22の左側面22e及び右側面22fは、それぞれ前後方向に幅狭な奥行寸法と、これよりも多少大きい上下方向の高さ寸法とを有する。
【0019】
図2Aに示すように、正面22aには、カメラ24と、マイク25と、ライト26とが設けられている。
【0020】
カメラ24は、電子機器10の正面側に位置する使用者を撮像するカメラデバイスである。カメラ24は、正面22aの左右略中央の上部に配置されている。図2A中の参照符号24aは、カメラ24を物理的に遮蔽可能なスライド式のシャッターである。マイク25は、電子機器10の使用者の音声等を集音するマイクデバイスである。マイク25は、カメラ24の下方で左右方向に並んだ複数のマイク孔から正面22aを臨んでいる。ライト26は、電子機器10の動作状態やマイク25の集音状態等を使用者に通知するための光通知部であり、スマートライトとも呼ばれる表示部である。ライト26は、カメラ24とマイク25との間に設けられた横長な細い光透過窓から正面2aを臨んでいる。正面22aには、さらに電子機器10の電源ランプの他、時計や作動状態を表示するディスプレイ等も設けられている。
【0021】
図2Bに示すように、背面22bには、左右一対の背面吸気口27,27と、接続端子部28とが設けられている。背面吸気口27は、筐体22の内外を連通する開口である。背面吸気口27は、例えば多数の孔部を集合させたメッシュ構造、又は複数のスリットを並列した構造である。接続端子部28は、電子機器10をタッチパネル操作部12、外部ディスプレイ14、パーソナルコンピュータ16、及びインターネット18等に接続するためのコネクタが接続される外部端子群である。接続端子部28には、さらに電子機器10を外部電源に接続するための電源ケーブルも接続される。
【0022】
下面22dには、左右一対のゴム脚33,33及び底面吸気口が設けられている。ゴム脚33は、電子機器10をデーブル等に載置して使用する際の脚部である。上記したように、電子機器10は、ゴム脚33を使用せず、会議室の壁等に壁掛けで設置することもできる。壁掛けで使用する場合、電子機器10は、所定のブラケットを背面22bに取り付けて使用するとよい。底面吸気口は、筐体22の内外を連通する開口であり、背面吸気口27と同様なメッシュ構造やスリット構造でよく、左右一対設けられるとよい。上面22cは、下面22dと略同一の外形を有するが、フラットなプレートで形成されている。
【0023】
右側面22fには、側面排気口34が設けられている(図3参照)。側面排気口34は、左側面22eにも設けられている。側面排気口34も背面吸気口27と同様なメッシュ構造やスリット構造でよい。
【0024】
次に、電子機器10の内部構造を説明する。
【0025】
図3は、電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。図3は、電子機器10の略右半部を拡大したものであるが、左半部はこれと略左右対称構造でよい。図4は、図3に示すスピーカー装置42R及びその周辺部の模式的な正面図である。図5は、図4に示すスピーカー装置42R及びその周辺部の模式的な底面図である。
【0026】
図2A及び図3に示すように、筐体22には、CPUを実装した基板38と、左右一対の冷却装置40L,40Rと、左右一対のスピーカー装置42L,42Rとが収容されている。
【0027】
基板38は、電子機器10のマザーボードである。基板38は、CPU、メモリ、及びSSD等の各種電子部品を実装している。基板38は、筐体22の内部にねじ止めされたブラケット44に取り付けられ、上下左右に沿った起立姿勢で設置されている。
【0028】
図2Aに示すように、冷却装置40L,40Rは左右対称構造であり、スピーカー装置42L,42Rも同様である。そこで、以下では、右側の冷却装置40R及びスピーカー装置42Rについて代表的に説明し、左側の冷却装置40L及びスピーカー装置42Lについての詳細な説明は省略する。
【0029】
冷却装置40Rは、基板38に実装されたCPUや他の電子部品を冷却するものである。図3図5に示すように、冷却装置40Rは、ファン46と、フィン48と、ヒートパイプ50と、ダクト部品52とを有する。
【0030】
ファン46は、ファン筐体内にインペラを回転可能に収容した遠心ファンである。ファン46は、ブラケット44に支持され、筐体22の底側の壁面22gに沿って横置きされている。フィン48は、複数の薄い金属プレートを等間隔に並べてヒートシンクである。
【0031】
フィン48は、ファン46の排気口46aに面して配置されている。フィン48を構成する各金属プレートは、上下方向に起立すると共に左右方向に延在し、前後方向に平行に並んでいる。これにより隣接する金属プレートの間には、ファン46から送られた空気が通過する隙間が形成されている。
【0032】
ヒートパイプ50は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ50は、金属パイプを扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内部の密閉空間に作動流体が封入されたものである。ヒートパイプ50は、一端部がCPUと接続され、他端部がフィン48と接続されている。
【0033】
図4に示すように、ダクト部品52は、ファン46の排気口46aからフィン48を通過した空気Aを側面排気口34へと導くための空気ダクトを形成する。ダクト部品52は、樹脂製又は金属製の部品である。ダクト部品52は、例えば3辺を互いに直交させた略U字状のプレートで構成されている。ダクト部品52が形成するダクトの高さは、フィン48の高さと同一か又は多少高い。ダクト部品52が形成するダクトの前後幅は、フィン48の前後幅と同一か又は多少広い。ダクト部品52は、矩形断面の角筒で構成されてもよい。本実施形態では、フラットな筐体22の壁面22gが、ダクト部品52が形成するダクトの下壁として機能するため、ダクト部品52は下板を設けない略U字形状としている。
【0034】
スピーカー装置42Rは、筐体22の外側に向けて音を出力する装置である。図3図5に示すように、スピーカー装置42Rは、スピーカーユニット54と、スピーカーボックス55とを有する。
【0035】
スピーカーユニット54は、実際に音を出力する部分である。スピーカーユニット54は、例えば振動板、磁石、及びボイスコイルを組み合わせたものであり、公知のスピーカーユニットと同一又は同様でよい。
【0036】
スピーカーボックス55は、スピーカーユニット54のバックチャンバとなる空洞が形成された箱体であり、エンクロージャーとも呼ばれる。スピーカーユニット54は、スピーカーボックス55の前面に取り付けられている。スピーカーボックス55は、ファン46、フィン48及びダクト部品52を覆い隠すようにその上方に設置される。すなわちスピーカーボックス55は、ファン46、フィン48及びダクト部品52の略全体を覆うほどの大きな前後左右の幅寸法を有する。これによりスピーカーボックス55は、筐体22内で可能な限り大きな容積を確保できている。
【0037】
本実施形態のスピーカーボックス55、つまりスピーカー装置42L,42Rは、発生する振動が筐体22に伝達されることを抑えるため、複数の防振部材56を用いて筐体22に支持されている。
【0038】
そこで、次に、防振部材56の具体的な構成例を説明する。
【0039】
図6Aは、防振部材56を正面側から見た斜視図である。図6Bは、防振部材56を背面側から見た斜視図である。図7は、防振部材56の正面図である。図8Aは、防振部材56の平面図である。図8Bは、図7中のVIIIB-VIIIB線に沿う模式的な断面図である。図9は、防振部材56の底面図である。
【0040】
図3図5に示すように、防振部材56は、スピーカーボックス55の前面及び後面に、それぞれ2本ずつ取り付けられ、合計4本でスピーカー装置42R(42L)を支持している。防振部材56の設置本数は4本以外でもよい。
【0041】
図6A図9に示すように、防振部材56は、棒状の本体58と、本体58から左右側方に突出した4枚の取付片60A,60B,60C,60Dとを有する。取付片60A~60Dは、基本的な構造は同一でよいため、以下では、取付片60A~60Dについて、まとめて「取付片60」と呼んで説明することもある。
【0042】
本体58は、角型棒状に形成され、上下方向に沿って延在している。本体58は、前後方向に太い中央部58aと、これより細い第1端部58b及び第2端部58cとを有する。これにより本体58は、段付き形状を有する。本実施形態の防振部材56は、後述するように、各端部58b,58cをそれぞれ凹部64,65に挿入して支持するため、各端部58b,58cを中央部58aよりも細く構成している。さらに、本実施形態の防振部材56は、後述するように、第2端部58cがフィン48やダクト部品52を跨いで配置されるため、これらとの干渉を防ぐ目的で第2端部58cを中央部58aよりも細く構成している。本体58は、段付き形状ではなく、全長が略同径に形成されてもよいことは勿論である。
【0043】
取付片60は、防振部材56をスピーカーボックス55に取り付けるための部分である。取付片60A,60Bは、本体58を間に挟んで左右に並ぶように、それぞれ本体58の左右の側面58d,58eから突出している。同様に、取付片60C,60Dは、本体58を間に挟んで左右に並ぶように、それぞれ本体58の左右の側面58d,58eから突出している。つまり本実施形態の防振部材56は、左右一対の取付片60の組が、本体58の長手方向で複数組、例えば2組設けられている。
【0044】
取付片60は、ヒレ状或いは耳状の板片であり、略中央に孔部60aが形成されている。孔部60aには、取付片60とスピーカーボックス55とを締結するねじ61が挿通される。
【0045】
図6B図7及び図8Bに示すように、防振部材56は、芯材56aと、ゴム材56bとで形成されている。芯材56aは、硬質の樹脂材であり、例えばPC/ABS,PCGF(ポリカーボネート+ガラスフィラー)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。芯材56aは、本体58の長手方向に沿って延在している。ゴム材56bは、芯材56aの外面を覆うように設けられている。ゴム材56bは、例えば天然ゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム又はブチルゴム等を例示できる。防振部材56は、例えば芯材56aとゴム材56bとを2色成形によって成形される。
【0046】
芯材56aは、本体58の長手方向に沿って延在する棒状部材であり、その周囲がゴム材56bで覆われることで本体58を形成している。これにより本体58は、振動吸収性と剛性とが両立されている。取付片60は、ゴム材56bのみで形成されている。つまり取付片60には芯材56aが設けられていない。これにより取付片60は、高い振動吸収性を有する。
【0047】
防振部材56の外面には、各所に半球状或いはドーム状の突起62a~62l,63a,63bが形成されている。これら突起62a~62l,63a,63bは、ゴム材56bで形成され、高い振動吸収性を有する。
【0048】
図6A図9に示すように、突起62aは、第1端部58bの端面、つまり防振部材56の上端面から突出している。突起62bは、第2端部58cの端面、つまり防振部材56の下端面から突出している。突起62c~62fは、第2端部58cの四周の各面58d~58gからそれぞれ突出している。突起62g~62iは、本体58の正面58fから突出しており、それぞれ本体58の長手方向に並んでいる。突起62j~62lは、本体58の背面58gから突出しており、それぞれ本体58の長手方向に並んでいる。突起62c~62lは、一部を省略してもよい。
【0049】
突起63aは、板状の取付片60の一面(正面58f側を向いた面)に設けられ、孔部60aの周囲を囲むように、孔部60aの縁部に沿って例えば4つ配置されている。各突起63aは、孔部60aに挿通されるねじ61の頭部61aに当接し、押圧される(図9及び図10参照)。
【0050】
突起63bは、板状の取付片60の他面(背面58g側を向いた面)に設けられ、孔部60aの周囲を囲むように、孔部60aの縁部に沿って例えば4つ配置されている。各突起63aは、スピーカーボックス55の表面55aに当接する(図9及び図10参照)。
【0051】
次に、防振部材56を用いたスピーカーボックス55の支持構造を説明する。
【0052】
図10は、防振部材56の取付片60B及びその周辺部を拡大した斜視図である。図11は、スピーカーボックス55に取り付けた防振部材56の第1端部58bを筐体22で支持した状態を示す斜視図である。
【0053】
図3図5図9及び図11に示すように、防振部材56は、スピーカーボックス55に固定して使用するため、先ず、防振部材56をスピーカーボックス55に取り付ける。
【0054】
本実施形態のスピーカーボックス55の表面55aには、防振部材56の取付本数に応じた数の凹部55bが形成されている。本実施形態では、1つのスピーカーボックス55につき、4本の防振部材56を用いるため、凹部55bも4つ形成されている。凹部55bは、取付片60が挿入される浅い凹みと、この浅い凹みの中央をさらに凹ませて、本体58が挿入される深い凹みとを有する。
【0055】
先ず、防振部材56は、凹部55bに対して背面58g側から挿入される。そして、防振部材56は、左右の取付片60A(C),60B(D)が、凹部55bに設けられた左右一対の支持部55cの表面55aに当接する。この際、各取付片60は、突起62bが支持部55cの表面55aに押し当てられる。
【0056】
続いて、各取付片60の孔部60aにねじ61を挿通し、これをスピーカーボックス55の支持部55cに形成されたねじ穴55dに螺合させる。これにより防振部材56がスピーカーボックス55に締結される。この際、防振部材56は、スピーカーボックス55の表面55aに対してはゴム材56bで形成された各突起62bが当接し、ねじ61の頭部61aに対してはゴム材56bで形成された各突起62aが当接する。その結果、防振部材56は、各取付片60がスピーカーボックス55にねじ61で固定されると、スピーカーボックス55及びねじ61と、本体58との間にはゴム材56bのみが介在した、弾性を有する取付状態となる。つまりスピーカーボックス55は、防振部材56との間が実質的にフローティング状態で連結される。
【0057】
特に、本実施形態のねじ61は、図10に示すように、頭部61aとねじ部61bとの間に非ねじ部61cを設けた段付きねじで構成されている。このため、ねじ61は、ねじ部61bを適正位置までねじ穴55dに螺合させた状態において、突起62a,62bが頭部61aと表面55aとの間で過度に押し潰され、弾性を喪失することがない。なお、図9に示すように、非ねじ部61cの長さL1は、取付片60の板厚と各突起62a,62bの高さとの合計値L2と同一程度、好ましくはL1よりも僅かにL2が小さく設定されるとよい。
【0058】
ここで、図4に示すように、本実施形態の防振部材56は、スピーカーボックス55に固定された状態で、本体58の第2端部58cがスピーカーボックス55の下面55eよりも大きく下方に突出した状態となる。つまり防振部材56は、スピーカーボックス55から下方に突出した脚部として機能する。なお、防振部材56は、第1端部58abについても、少なくとも突起62aがスピーカーボックス55の上面よりも上方に突出した状態となる。
【0059】
次に、このようにして防振部材56が固定されたスピーカーボックス55を筐体22内に設置する。
【0060】
図7及び図11に示すように、防振部材56は、第1端部58bを筐体22の上側の壁面22hに形成された袋状の凹部64に挿入し、突起62aを凹部64の奥側の壁面22hに押し当てる。また、この第1端部58bの凹部64への挿入動作と全として、第2端部58cを筐体22の下側の壁面22gに形成された袋状の凹部65に挿入し、突起62bを凹部65の奥側の壁面22gに押し当てる。この際、第2端部58cの周囲にある突起62c~62fも凹部65の内側壁にそれぞれ当接させる。
【0061】
その結果、スピーカーボックス55は、4本の防振部材56の端部58b,58cがそれぞれ上下の凹部64、65に保持され、両端の突起62a,62bが筐体22の壁面22h,22gに押し当てられた状態で筐体22に支持される。
【0062】
この際、防振部材56は、スピーカーボックス55から下方に大きく突出した第2端部58cが、スピーカーボックス55の下に配置されるファン46、フィン48及びダクト部品52を跨いで配置される。つまり防振部材56は、スピーカーボックス55の下に他の部品を設置可能なスペースSを形成することができる。その結果、当該電子機器10は、スピーカーボックス55の容積を最大限に確保しつつ、ダクト部品52等の設置スペースも確保可能となっている。
【0063】
図6A中の2点鎖線で示すように、第1端部58bの四周側面58d~58gにも、第2端部58cと同様な突起62c~62fを設け、これを凹部64の内側壁に当接させる構成としてもよい。逆に、第2端部58cの突起62c~62fは、省略してもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態の防振部材56は、棒状の本体58と、防振部材56をスピーカーボックス55に固定するためのねじ61が挿通される孔部60aを有し、本体58から突出するように設けられた板状の取付片60と、を備える。そして、本体58は、芯材56aと、芯材56aの表面を覆うゴム材56bとを有し、取付片60は、ゴム材56bによって形成されている。
【0065】
従って、このような防振部材56は、棒状の本体58がゴム材56bだけでなく、その内部に芯材56aを有するため、振動吸収性と剛性とを両立できる。その結果、防振部材56は、筐体22内でスピーカーボックス55を支持した際、高い安定性と防振性能とを両立できる。特にスピーカーボックス55が大型で重量が大きな場合にも、防振部材56は安定した支持を可能とする。
【0066】
また、防振部材56は、ゴム材56bで形成された取付片60をスピーカーボックス55にねじ止めする構成としている。このため、防振部材56は、スピーカーボックス55の振動を取付片60によって一層確実に吸収できると共に、スピーカーボックス55への取付作業も極めて容易である。さらに、防振部材56は、取付片60の幅若しくは厚み、又は取付片60を形成するゴム材56bの硬度等を調整することで、スピーカーボックス55の振動吸収に必要な周波数への対応も容易である。なお、取付片60は、1枚のみで構成されてもよいが、本実施形態のように4枚の取付片60A~60Dをバランスよく配置することで、防振性能が一層安定する。
【0067】
しかも、防振部材56は、本体58の側方から突出した薄い板状の取付片60の弾性でスピーカーボックス55の振動の多くを吸収する構造としている。このため、防振部材56は、スピーカーボックス55の奥行方向への影響が小さく、スピーカーボックス55の容積への影響を最小限に抑えることができる。
【0068】
本実施形態の防振部材56は、棒状の本体58の両端部58b,58cの端面それぞれにゴム材56bで形成された突起62a,62bを有してもよい。そうすると、防振部材56は、スピーカーボックス55の側面にねじ止めした状態で、スピーカーボックス55の上下面から突出する突起62a,62bを、筐体22の壁面22h,22gに当てる。これだけで、防振部材56は、スピーカーボックス55を筐体22内に支持できる。このため、防振部材56によるスピーカーボックス55の筐体22への支持が一層容易となり、さらに防振部材56の筐体22に対する接触面積も抑制でき、防振性能が一層向上する。
【0069】
また、防振部材56は、端部58b,58cの少なくとも一方の側面58d~58gのいずれかに突起62c~62fを備えてもよい。そうすると、端部58b,58cを筐体22に設けた凹部64,65で保持する際の振動吸収性が一層向上する。
【0070】
さらに、防振部材56は、その両面でそれぞれ孔部60aの周囲を囲むように配置され、ゴム材56bで形成された複数の突起62a,62bを有する。そうすると、ねじ61及びスピーカーボックス55と、取付片60との間に、突起62a,62bによるクッションが介在することになる。その結果、スピーカーボックス55の振動がねじ61を介して防振部材56に伝達されることを一層抑制できる。
【0071】
さらに、防振部材56は、本体58の正面58f及び背面58gにそれぞれゴム材56bで形成された突起62c~62lを備えてもよい。そうすると、スピーカーボックス55が想定以上に大きく振動した場合等に、各突起62c~62lが筐体22の正面22a及び背面22bの内壁面に干渉する。その結果、スピーカーボックス55が、筐体22のこれら内壁面に衝撃的に接触することを抑制できる。
【0072】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 電子機器
22 筐体
40L,40R 冷却装置
42L,42R スピーカー装置
46 ファン
48 フィン
50 ヒートパイプ
52 ダクト部品
54 スピーカーユニット
55 スピーカーボックス
56 防振部材
56a 芯材
56b ゴム材
58 本体
60A~60D 取付片
60a 孔部
61 ねじ
62a~62l,63a,63b 突起
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体にスピーカーボックスを支持するための防振部材であって、
棒状の本体と、
当該防振部材を前記スピーカーボックスに固定するためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、
を備え、
前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、
前記取付片は、前記ゴム材によって形成されており、
前記本体は、長手方向での第1端部の端面及び第2端部の端面のそれぞれに、前記ゴム材で形成された突起を有する
ことを特徴とする防振部材。
【請求項2】
請求項に記載の防振部材であって、
前記取付片は、その両面にそれぞれ前記孔部の周囲を囲むように配置され、前記ゴム材で形成された複数の突起を有する
ことを特徴とする防振部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防振部材であって、
前記取付片は、第1取付片及び第2取付片を含み、
前記第1取付片は、前記本体の一側面から突出し、
前記第2取付片は、前記本体の他側面から突出し、前記本体を間に挟んで前記第1取付片と並んでいる
ことを特徴とする防振部材。
【請求項4】
請求項に記載の防振部材であって、
前記第1取付片及び前記第2取付片の組が、前記本体の長手方向で複数組設けられている
ことを特徴とする防振部材。
【請求項5】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に収容されたスピーカーボックスと、
前記スピーカーボックスに取り付けられ、前記筐体に対して前記スピーカーボックスを支持する防振部材と、
を備え、
前記防振部材は、
棒状の本体と、
当該防振部材を前記スピーカーボックスに取り付けるためのねじが挿通される孔部を有し、前記本体から突出するように設けられた板状の取付片と、
を有し、
前記本体は、芯材と、前記芯材の表面を覆うゴム材と、を有し、
前記取付片は、前記ゴム材によって形成されており、
前記本体は、長手方向での第1端部の端面及び第2端部の端面のそれぞれに、前記ゴム材で形成された突起を有し、
前記防振部材は、前記第1端部の端面及び前記第2端部の端面に設けられた各突起がそれぞれ前記筐体の壁面に当接している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項に記載の電子機器であって、
前記取付片は、その両面にそれぞれ前記孔部の周囲を囲むように配置され、前記ゴム材で形成された複数の突起を有し、
前記ねじは、ねじ部と、頭部とを有し、
前記取付片は、一面に形成された前記突起が前記スピーカーボックスの表面に当接し、他面に形成された前記突起が前記頭部に当接した状態で、前記スピーカーボックスに固定される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項に記載の電子機器であって、
前記ねじは、前記ねじ部と前記頭部との間に非ねじ部が設けられた段付きねじで構成され、
前記非ねじ部の長さは、前記取付片の板厚と、前記両面に形成された各突起の高さとの合計値と同一程度である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の電子機器であって、
さらに、前記筐体内に収容され、前記スピーカーボックスの一面側に並んで配置された部品を備え、
前記防振部材は、前記スピーカーボックスの周囲に複数取り付けられると共に、それぞれの前記第1端部及び前記第2端部が前記壁面に当接した状態で、該壁面と前記スピーカーボックスの前記一面との間に前記部品が配置されるスペースを形成している
ことを特徴とする電子機器。