(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167294
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両の空調制御システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20231116BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B60H1/00 101U
B60H1/00 101R
B60H1/00 101Z
B60H1/00 101F
B60H1/00 101L
B60H1/22 671
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078366
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晴信
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 裕也
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211BA60
3L211DA22
3L211DA42
3L211EA12
3L211EA41
3L211EA72
3L211FA01
3L211FA23
3L211FB05
3L211GA03
(57)【要約】
【課題】車両走行中にエンジンが自動停止した際の空調変化を車室乗員に気付かせない。
【解決手段】車両1は、自動停止条件に基づいて自動停止可能なエンジン2と、空気調和機9と、コントローラ60と、を備える。空気調和機は、空気ダクト10と、空気ダクトにおける空気Wとの間で熱交換を行う熱交換器36,42を含む熱交換回路30,40と、空気ダクトにおける空気を車室8に送風するブロア20と、を有する。コントローラは、エンジンが自動停止された時に車両の速度Vが第1所定速度V1未満の場合の無車速空調モードMaにおいて、ブロア20の送風量Qaを、自動停止の直前におけるブロアの送風量Q0よりも低減するとともに、エンジンが自動停止された時に車両の速度が第1所定速度以上の有車速空調モードMbにおいて、ブロアの送風量Qbの低減量(Q0-Qb)を、無車速空調モードにおける低減量(Q0-Qa)よりも小さくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止条件に基づいて自動停止可能なエンジンと、車室の空気を調和する空気調和機と、前記空気調和機を制御する制御装置と、を備える車両の空調制御システムであって、
前記空気調和機は、
空気が流れる空気ダクトと、
前記空気ダクトにおける前記空気との間で熱交換を行う熱交換器を含む熱交換回路と、
前記空気ダクトにおける前記空気を前記車室に送風するブロアと、を有し、
前記制御装置は、前記エンジンが前記自動停止された時に前記車両の速度が第1所定速度未満の場合の無車速空調モードと、前記エンジンが前記自動停止された時に前記車両の前記速度が前記第1所定速度以上の場合の有車速空調モードと、の間で空調モードを切り換え可能であり、
前記制御装置は、前記無車速空調モードにおいて、前記ブロアの送風量を、前記自動停止の直前における前記ブロアの前記送風量よりも低減しており、
前記制御装置は、前記有車速空調モードにおいて、前記ブロアの前記送風量の低減量を、前記無車速空調モードにおける前記低減量よりも小さくする、車両の空調制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の空調制御システムであって、
前記制御装置は、前記有車速空調モードにおいて、前記送風量を低減しない、車両の空調制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の空調制御システムであって、
前記制御装置は、前記有車速空調モードの進行中に前記車両の前記速度が前記第1所定速度よりも小さな第2所定速度に到達すると、前記空調モードを前記有車速空調モードから前記無車速空調モードに切り換える、車両の空調制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の空調制御システムであって、
前記エンジンは、自動再始動条件に基づいて自動再始動可能であり、
前記制御装置は、前記有車速空調モードにおいて、前記無車速空調モードにおける前記自動再始動条件よりも厳しい前記自動再始動条件に基づいて、前記エンジンを前記自動再始動する、車両の空調制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の空調制御システムであって、
前記自動再始動条件は、前記熱交換器の温度条件及び前記車室の快適性条件のうちの少なくとも1つを含む、車両の空調制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の車両の空調制御システムであって、
前記熱交換回路は、前記熱交換器として、エバポレータ及びヒータコアのうちの少なくとも一方を含む、車両の空調制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の車両の空調制御システムであって、
前記車両は、モータを備え、
前記車両は、前記モータのみによって駆動する電動モードと、前記モータ及び前記エンジンの少なくとも一方によって駆動するハイブリッドモードと、に切り換え可能であり、
前記ハイブリッドモード且つ前記有車速空調モードの場合、前記車両が前記モータの駆動によって走行する、又は前記車両が減速中且つ前記モータが回生発電される、車両の空調制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の車両の空調制御システムであって、
前記車両は、モータを備え、
前記車両は、前記モータのみによって駆動する電動モードと、前記モータ及び前記エンジンの少なくとも一方によって駆動するハイブリッドモードと、に切り換え可能であり、
前記電動モードの場合、前記ハイブリッドモードで用いる前記熱交換回路とは異なる前記熱交換回路を、用いており、
前記無車速空調モード及び前記有車速空調モードは、前記ハイブリッドモードでのみ設定可能である、車両の空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の空調制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃費向上を図るべく、所定の自動停止条件が成立した際にエンジンを自動停止(アイドリングストップ)させるとともに、自動停止状態において所定の自動再始動条件が成立した際にエンジンを自動再始動(リスタート)させる制御技術が、知られている。
【0003】
エンジンの自動停止状態では、エンジンに連動して駆動するコンプレッサやポンプが停止して、熱交換回路において熱交換媒体が熱交換器としてのエバポレータやヒータコアに供給されなくなるので、エバポレータ温度の上昇やヒータコア温度の低下を招き、空気調和機の冷暖房能力が低下してしまう。空気調和機の冷暖房能力が低下すると、エンジンを自動再始動せざるを得ないので、エンジンの燃費が悪化してしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に係る車両の制御装置は、走行中自動停止条件が成立した際、次回の車両停車時の停車継続時間を予測して、予測された停車継続時間中にエンジンを自動再始動させないエバポレータ温度を算出して、コースティング走行を開始した場合にエバポレータ温度が上述の自動再始動させないエバポレータ温度に達するまでの時間を算出して、当該時間が次回の車両停車までの停車必要時間以上である場合にコースティング走行を実行する。
【0005】
かかる構成によれば、車両の停車状態においてエンジンが自動再始動される可能性は低くなり、燃費の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空気調和機は、空気ダクトにおける空気を車室に送風するためのブロアを、有する。エンジンの自動停止状態において、ブロアの送風量を低減することによって、空気ダクトにおける空気とエバポレータ/ヒータコアとの間の熱交換を抑制して、空気調和機の冷暖房能力の低下を抑制する方法が知られている。
【0008】
車両の停止中(無車速時)にエンジンが自動停止した際に、ブロアの送風量が低減されたとしても、車両の振動やロードノイズも同時に低減されているので、車室における乗員に対してそれほど違和感を与えない。
【0009】
しかしながら、車両の走行中(有車速時)にエンジンが自動停止した際に、ブロアの送風量が低減されると、車両の振動やロードノイズに変化が無いにもかかわらず、ブロアの送風量のみが低減されることになるので、車室における乗員に対して大きな違和感を与える可能性がある。
【0010】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の走行中にエンジンが自動停止した際における空調変化を車室の乗員に気付かせにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る車両の空調制御システムは、自動停止条件に基づいて自動停止可能なエンジンと、車室の空気を調和する空気調和機と、上記空気調和機を制御する制御装置と、を備える車両の空調制御システムであって、上記空気調和機は、空気が流れる空気ダクトと、上記空気ダクトにおける上記空気との間で熱交換を行う熱交換器を含む熱交換回路と、上記空気ダクトにおける上記空気を上記車室に送風するブロアと、を有し、上記制御装置は、上記エンジンが上記自動停止された時に上記車両の速度が第1所定速度未満の場合の無車速空調モードと、上記エンジンが上記自動停止された時に上記車両の上記速度が上記第1所定速度以上の場合の有車速空調モードと、の間で空調モードを切り換え可能であり、上記制御装置は、上記無車速空調モードにおいて、上記ブロアの送風量を、上記自動停止の直前における上記ブロアの上記送風量よりも低減しており、上記制御装置は、上記有車速空調モードにおいて、上記ブロアの上記送風量の低減量を、上記無車速空調モードにおける上記低減量よりも小さくする。
【0012】
車両の停止中(無車速時)にエンジンが自動停止した際に、ブロアの送風量が低減されたとしても、車両の振動やロードノイズも同時に低減されているので、車室における乗員に対してそれほど違和感を与えない。
【0013】
そこで、無車速空調モードでは、ブロアの送風量を、エンジンの自動停止の直前におけるブロアの送風量よりも低減する。
【0014】
一方、車両の走行中(有車速時)にエンジンが自動停止した際に、ブロアの送風量が低減されると、車両の振動やロードノイズに変化が無いにもかかわらず、ブロアの送風量のみが低減されることになるので、車室における乗員に対して大きな違和感を与える可能性がある。
【0015】
そこで、有車速空調モードでは、ブロアの送風量の低減量を、無車速空調モードにおける低減量よりも小さくする。換言すると、有車速空調モードでは、ブロアの送風量を、エンジンの自動停止の直前におけるブロアの送風量から、可能な限り低減しない。
【0016】
これにより、車両の走行中にエンジンが自動停止した際における空調変化を車室の乗員に気付かせにくくすることができる。
【0017】
一実施形態では、上記制御装置は、上記有車速空調モードにおいて、上記送風量を低減しない。
【0018】
かかる構成によれば、車両の走行中にエンジンが自動停止した際に、車室の乗員にほとんど違和感を与えない。
【0019】
一実施形態では、上記制御装置は、上記有車速空調モードの進行中に上記車両の上記速度が上記第1所定速度よりも小さな第2所定速度に到達すると、上記空調モードを上記有車速空調モードから上記無車速空調モードに切り換える。
【0020】
有車速空調モードではブロアの送風量がほとんど低減しないので、有車速空調モードを長時間維持すると、空気ダクトにおける空気と熱交換器との間の熱交換が促進されてしまい、空気調和機の冷暖房能力が低下するおそれがある。
【0021】
一方、無車速空調モードでは、ブロアの送風量が低減するので、空気ダクトにおける空気と熱交換器との間の熱交換が抑制されて、空気調和機の冷暖房能力が低下しにくくなる。
【0022】
そこで、有車速空調モードの進行中に車両の速度が第1所定速度よりも小さな第2所定速度に到達した場合に、空調モードを有車速空調モードから無車速空調モードに切り換えることによって、空気調和機の冷暖房能力の低下を抑制することができる。
【0023】
一実施形態では、上記エンジンは、自動再始動条件に基づいて自動再始動可能であり、上記制御装置は、上記有車速空調モードにおいて、上記無車速空調モードにおける上記自動再始動条件よりも厳しい上記自動再始動条件に基づいて、上記エンジンを上記自動再始動する。
【0024】
上述したように、有車速空調モードを長時間維持すると、空気ダクトにおける空気と熱交換器との間の熱交換が促進されてしまい、空気調和機の冷暖房能力が低下するおそれがある。
【0025】
そこで、有車速空調モードでは、無車速空調モードよりも厳しい自動再始動条件を設定することによって、エンジンを自動再始動させやすくしている。これにより、エンジンの自動停止に起因する空気調和機の冷暖房能力の低下を、抑制することができる。
【0026】
一実施形態では、上記自動再始動条件は、上記熱交換器の温度条件及び上記車室の快適性条件のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
かかる構成によれば、エンジンの自動再始動条件を、好適に設定することができる。
【0028】
一実施形態では、上記熱交換回路は、上記熱交換器として、エバポレータ及びヒータコアのうちの少なくとも一方を含む。
【0029】
かかる構成によれば、空気ダクトにおける空気との間での熱交換を、好適に行うことができる。
【0030】
一実施形態では、上記車両は、モータを備え、上記車両は、上記モータのみによって駆動する電動モードと、上記モータ及び上記エンジンの少なくとも一方によって駆動するハイブリッドモードと、に切り換え可能であり、上記ハイブリッドモード且つ上記有車速空調モードの場合、上記車両が上記モータの駆動によって走行する、又は上記車両が減速中且つ上記モータが回生発電される。
【0031】
かかる構成によれば、エンジンの自動停止状態であっても、効率よく、車両を走行させることができる。
【0032】
一実施形態では、上記車両は、モータを備え、上記車両は、上記モータのみによって駆動する電動モードと、上記モータ及び上記エンジンの少なくとも一方によって駆動するハイブリッドモードと、に切り換え可能であり、上記電動モードの場合、上記ハイブリッドモードで用いる上記熱交換回路とは異なる上記熱交換回路を、用いており、上記無車速空調モード及び上記有車速空調モードは、上記ハイブリッドモードでのみ設定可能である。
【0033】
かかる構成によれば、電動モードとハイブリッドモードとで互いに異なる熱交換回路を用いることによって、各運転モードに応じて好適な空調制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、車両の走行中にエンジンが自動停止した際における空調変化を車室の乗員に気付かせにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る車両の空調制御システムを示す構成図である。
【
図2】
図2は、空調制御システムによる空調制御フローの前半を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、空調制御システムによる空調制御フローの後半を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、外気温度とコンプレッサ係数との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、車両の速度と空調モードとの関係を示すマップである。
【
図6】
図6は、空調モード毎のエバポレータ温度に基づく自動停止条件及び自動再始動条件を示すマップである。
【
図7】
図7は、空調モード毎のヒータコア温度に基づく自動停止条件及び自動再始動条件を示すマップである。
【
図8】
図8は、空調モード毎の車室温度に基づく自動停止条件及び自動再始動条件を示すマップである。
【
図9】
図9は、空調制御システムによる空調制御タイムチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0037】
(車両の構成)
図1は、本開示の実施形態に係る車両1の空調制御システムSを示す。車両1は、エンジン2と、モータ3と、バッテリ4と、第1クラッチ5と、トランスミッション6と、駆動輪7と、空気調和機(エアコンディショナ)9と、制御装置としてのコントローラ60と、を備える。
【0038】
車両1は、プラグインハイブリッド(PHEV)自動車であり、運転モードを、モータ3のみによって駆動する電動モード(EVモード)と、モータ3及びエンジン2の少なくとも一方によって駆動するハイブリッドモード(HEVモード)と、に切り換え可能である。エンジン2による車両1の駆動とモータ3による車両1の駆動とは、シームレスに切り換えられる。
【0039】
エンジン2は、例えばガソリンエンジンである。エンジン2は、所定の自動停止条件に基づいて、自動停止(アイドリングストップ)が可能である。また、エンジン2は、所定の自動再始動条件に基づいて、自動再始動(リスタート)が可能である。
【0040】
モータ3は、例えばロータ(回転軸)に永久磁石が埋設され且つステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータである。モータ3は、バッテリ4からの電力供給によって回転駆動する。また、モータ3は、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせるジェネレータとしても、機能する。モータ3は、例えば、車両1の減速時に回生発電される。
【0041】
バッテリ4は、例えばリチウムイオンバッテリであり、充放電可能である。バッテリ4は、放電によって、モータ3に電力を供給する。一方、バッテリ4は、ジェネレータとしてのモータ3の発電によって、充電される。また、バッテリ4は、充電プラグ(図示せず)を介して、外部電源から外部充電される。図示しないが、モータ3とバッテリ4との間には、インバータが介在している。
【0042】
第1クラッチ5は、エンジン2とモータ3との間に介在している。第1クラッチ5は、エンジン2の出力軸とモータ3の回転軸(詳細には回転軸の一端部)とを連結(締結)する。また、第1クラッチ5は、エンジン2の出力軸とモータ3の回転軸とを断接(解放)する。すなわち、第1クラッチ5は、エンジン2とモータ3との間において、トルクの伝達と遮断とを切り換える。
【0043】
第1クラッチ5は、例えば乾式多板クラッチであって、オイルポンプ(図示せず)からのクラッチ作動油の流量及び圧力を連続的又は段階的に変化させることによって、伝達トルク容量を変更可能である。
【0044】
第1クラッチ5が連結状態のとき、エンジン2の出力軸及びモータ3の回転軸のうちの一方が回転すると、他方も回転する。第1クラッチ5が解放状態のとき、エンジン2の出力軸及びモータ3の回転軸のうちの一方が回転しても、他方は回転しない。
【0045】
トランスミッション6は、エンジン2及び/又はモータ3からの動力を変速して、駆動輪7に出力する。トランスミッション6は、詳細な説明及び図示を省略するが、遊星歯車機構と、ブレーキ機構と、第2クラッチ6aと、を有する。第2クラッチ6aは、例えば乾式多板クラッチであって、エンジン2及び/又はモータ3と駆動輪7との間において、トルクの伝達と遮断とを切り換える。
【0046】
ハイブリッドモードでは、基本的に、第1クラッチ5及び第2クラッチ6aがともに連結状態であり、エンジン2は、モータ3及びトランスミッション6を介して、駆動輪7を駆動する(車両1を走行させる)。
【0047】
ハイブリッドモードにおいて、エンジン2が駆動輪7を駆動している状態でモータ3を駆動することによって、モータ3は、アシストモータとして、エンジン2による駆動輪7の駆動をアシストしてもよい。
【0048】
ハイブリッドモードにおいて、モータ3をアシストモータとして駆動させずに、エンジン2のみによって、駆動輪7を駆動してもよい。エンジン2の駆動によって、ジェネレータとしてのモータ3を発電させてもよい。
【0049】
ハイブリッドモードにおいて、エンジン2を駆動させずにモータ3のみによって、駆動輪7を駆動してもよい(車両1を走行させてもよい)。ここで、第1クラッチ5が連結状態であれば、エンジン2自身は駆動(燃焼)していないにもかかわらず、モータ3の回転に連動してエンジン2も回転する(連れ回る)。一方、第1クラッチ5が解放状態であれば、モータ3が回転しても、エンジン2は回転しない。
【0050】
ハイブリッドモードにおいて、車両1の減速中に、モータ3が回生発電されてもよい。
【0051】
電動モードでは、第1クラッチ5が解放状態且つ第2クラッチ6aが連結状態であり、モータ3のみによって、トランスミッション6を介して駆動輪7が駆動される。
【0052】
(空気調和機)
空気調和機9は、車室8の空気Wを調和する。空気調和機9は、空気ダクト10と、ブロア20と、熱交換回路としての冷媒循環回路30と、熱交換回路としてのエンジン冷却水循環回路40と、熱交換回路としての温水循環回路50と、を有する。
【0053】
空気ダクト10は、車室8に空気Wを導入するための空気通路を形成する。空気ダクト10には、空気Wが流れる。空気ダクト10の上流端には、外気導入口11及び内気導入口12が設けられている。車室8の外側の空気W(外気)は、外気導入口11を介して、空気ダクト10に導入される。車室8の内側の空気W(内気)は、内気導入口12を介して、空気ダクト10に導入される。
【0054】
外気導入口11及び内気導入口12の近傍には、切換ドア13が配置されている。切換ドア13は、アクチュエータ(図示せず)による駆動によって、外気導入口11から空気ダクト10に外気が導入される外気導入モードと、内気導入口12から空気ダクト10に内気が導入される内気導入モードと、を切り換える。
【0055】
空気ダクト10の下流端には、空気吹出口14が設けられている。空気吹出口14は、車室8に連通しており、空気ダクト10内の空気Wを車室8に吹き出す。空気吹出口14は、複数ある。空気吹出口14の近傍には、空気吹出口14を開閉する開閉ドア15が配置されている。開閉ドア15は、アクチュエータ(図示せず)による駆動によって、開閉される。
【0056】
複数の空気吹出口14として、例えば、フロントガラスの内面に向かって空気Wを吹き出すデフロスタ吹出口、乗員の頭部や胸部に向かって空気Wを吹き出すフェイス吹出口、及び乗員の脚部に向かって空気Wを吹き出すフット吹出口などがある。
【0057】
ブロア20は、遠心送風機であって、空気ダクト10内の上流側に配置されている。ブロア20は、空気ダクト10内の空気Wを車室8に送風する。ブロア20は、インペラ21と、インペラ21を回転させるブロアモータ22と、を有する。なお、ブロア20の定義として、吐出圧力の大小に関係なく、空気Wを送風する全ての送風装置を、包含する。
【0058】
ブロアモータ22によりインペラ21の回転数を制御することによって、ブロア20による空気Wの送風量が制御される。ブロアモータ22は、インバータを含むブロア駆動回路(図示せず)に接続されている。
【0059】
冷媒循環回路30は、冷媒が循環することによって、空気ダクト10内を流れる空気Wを冷却して車室8を冷房する。冷媒循環回路30は、電動コンプレッサ31と、コンデンサ32と、冷却ファン33と、レシーバ34と、膨張弁35と、熱交換器としてのエバポレータ36と、冷媒配管37と、を含む。
【0060】
電動コンプレッサ31は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。電動コンプレッサ31は、電動式であり、エンジン2とは独立して駆動する。すなわち、電動コンプレッサ31は、エンジン2が自動停止状態であっても、駆動可能である。電動コンプレッサ31の駆動によって、冷媒が冷媒循環回路30を循環する。
【0061】
コンデンサ32には、電動コンプレッサ31から吐出された冷媒が流入する。コンデンサ32は、電動コンプレッサ31により圧縮された冷媒を、凝縮液化させる。コンデンサ32は、冷却ファン33による送風及び/又は車両走行風と冷媒との間で熱交換を行う。
【0062】
レシーバ34は、コンデンサ32により凝縮液化された冷媒を気液分離して、液冷媒のみを下流に流す。膨張弁35は、レシーバ34で分離された液冷媒を、減圧膨張させる。
【0063】
エバポレータ36は、空気ダクト10内に配置されている。エバポレータ36は、膨張弁35で減圧膨張された冷媒を、蒸発気化させる。エバポレータ36は、空気ダクト10における空気Wとの間で熱交換を行う。具体的には、エバポレータ36は、冷媒の蒸発気化によって、空気ダクト10における空気Wを冷却する。
【0064】
冷媒配管37は、電動コンプレッサ31、コンデンサ32、レシーバ34、膨張弁35及びエバポレータ36を、環状に接続する。
【0065】
エンジン冷却水循環回路40は、エンジン冷却水が循環する。エンジン冷却水は、エンジン2の各部を循環することによって、加熱されている。エンジン冷却水循環回路40は、加熱されたエンジン冷却水が循環することによって、空気ダクト10内を流れる空気Wを加熱して車室8を暖房する。
【0066】
エンジン2には、エンジン冷却水温センサ2aが設けられている。エンジン冷却水温センサ2aは、エンジン2の各部を循環するエンジン冷却水の温度を、測定する。
【0067】
エンジン冷却水循環回路40は、ウォータポンプ41と、熱交換器としてのヒータコア42と、エンジン冷却水配管43と、を含む。
【0068】
ウォータポンプ41は、機械式ポンプであって、エンジン冷却水を吐出する。ウォータポンプ41は、エンジン2のクランクシャフトに、プーリ及びタイミングベルト等を介して連結されている。すなわち、ウォータポンプ41は、エンジン2に連動して駆動する。ウォータポンプ41は、エンジン2が自動停止状態のとき、駆動しない。エンジン2が自動停止状態のとき、エンジン冷却水は、エンジン冷却水循環回路40を循環しない。
【0069】
ヒータコア42は、空気ダクト10内において、エバポレータ36よりも下流側に配置されている。ヒータコア42には、ウォータポンプ41から吐出されたエンジン冷却水が流入する。ヒータコア42は、空気ダクト10における空気Wとの間で熱交換を行う。具体的には、ヒータコア42は、熱源として、空気ダクト10における空気Wを加熱する。
【0070】
エンジン冷却水配管43は、ウォータポンプ41及びヒータコア42を、環状に接続する。エンジン冷却水循環回路40は、その他に、エンジン冷却水の熱を大気に放出するためのラジエータ等を有する。
【0071】
温水循環回路50は、温水が循環することによって、空気ダクト10内を流れる空気Wを加熱して車室8を暖房する。温水循環回路50は、電動ポンプ51と、ヒータ52と、温水配管53と、上述のヒータコア42と、を含む。
【0072】
電動ポンプ51は、媒体を吐出する。電動ポンプ51は、電動式であり、エンジン2とは独立して駆動する。電動ポンプ51の駆動によって、媒体が温水循環回路50を循環する。ヒータ52は、電動ポンプ51から吐出された媒体を加熱して温水にする。
【0073】
ヒータコア42には、ヒータ52で加熱された温水が流入する。ヒータコア42は、熱源として、空気ダクト10における空気Wとの間で熱交換を行って、空気ダクト10における空気Wを加熱する。温水配管53は、電動ポンプ51、ヒータ52及びヒータコア42を、環状に接続する。
【0074】
ハイブリッドモードのとき、冷媒循環回路30及びエンジン冷却水循環回路40が用いられる。電動モードのとき、冷媒循環回路30及び温水循環回路50が用いられる。
【0075】
空気ダクト10において、エバポレータ36とヒータコア42との間には、エアミックスドア16が配置されている。エアミックスドア16は、アクチュエータ(図示せず)による駆動によって、全ての空気Wがヒータコア42を迂回する最大冷房位置と、全ての空気Wがヒータコア42を通る最大暖房位置との間を、回動する。ヒータコア42を迂回する空気Wとヒータコア42を通る空気Wとの割合を変更することによって、空気吹出口14から車室8へ吹き出される空気Wの吹出温度を、調整する。
【0076】
(空調制御システム)
コントローラ60は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御器である。コントローラ60は、コンピュータで構成されており、図示しないが、プロセッサ(例えばCPU)と、ROMやRAMのようなメモリと、を含む。メモリは、プロセッサ上で解釈実行される各種プログラム及び各種データを記憶する。コントローラ60は、車両1のパワーユニットを制御する機能と、空気調和機9を制御する機能と、を有する。
【0077】
コントローラ60は、エンジン2、インバータ(図示せず)、第1クラッチ5、トランスミッション6(第2クラッチ6a)に対して、制御信号を出力する。例えば、コントローラ60は、エンジン2の点火プラグ、燃料噴射弁及びスロットル弁などを制御することによって、エンジン2の回転数及びトルクなどを調整する。
【0078】
コントローラ60は、油圧制御回路を介して、第1クラッチ5及びトランスミッション6(第2クラッチ6a)を制御する。また、コントローラ60は、インバータを介してモータ3を制御することによって、モータ3の回転数及びトルクなどを調整する。
【0079】
コントローラ60は、空気調和機9を制御する。具体的には、コントローラ60は、空気調和機9において、切換ドア13、開閉ドア15、エアミックスドア16、ブロアモータ22、電動コンプレッサ31、冷却ファン33、電動ポンプ51及びヒータ52等に対して、制御信号を出力する。
【0080】
コントローラ60は、切換ドア13、開閉ドア15及びエアミックスドア16を駆動するための各アクチュエータを制御して、各ドア13,15,16の位置を調整する。コントローラ60は、ブロアモータ22を制御することによって、インペラ21の回転数を調整して、ブロア20による空気Wの送風量を調整する。
【0081】
コントローラ60は、電動コンプレッサ31の回転数を制御することによって、冷媒循環回路30における冷媒の循環量(エバポレータ36への冷媒の流入量)を制御する。コントローラ60は、電動ポンプ51の回転数を制御することによって、温水循環回路50における温水の循環量(ヒータコア42への温水の流入量)を制御する。コントローラ60は、冷却ファン33の回転数やヒータ52のON/OFFを制御してもよい。
【0082】
コントローラ60は、所定の自動停止条件に基づいて、エンジン2を自動停止させる。コントローラ60は、所定の自動再始動条件に基づいて、エンジン2を自動再始動させる。自動停止条件及び自動再始動条件は、コントローラ60に予め記憶されている。自動停止条件及び自動再始動条件として、様々な条件があり、空調関連の条件を挙げると、例えば、熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)の温度条件及び/又は車室8の快適性条件(温度条件等)などがある。
【0083】
(空調モード)
コントローラ60は、空調モードを、無車速空調モードMaと有車速空調モードMbとの間で、切り換え可能である。無車速空調モードMaは、エンジン2が自動停止された時に車両1の速度Vが第1所定速度V1未満の場合のモードである。有車速空調モードMbは、エンジン2が自動停止された時に車両1の速度Vが第1所定速度V1以上の場合のモードである。第1所定速度V1は、適宜設定可能であり、コントローラ60に予め記憶されている。第1所定速度V1は、例えば、5km/hである。車両1の速度Vは、車速センサによって測定される。
【0084】
コントローラ60は、無車速空調モードMaにおいて、ブロア20による空気Wの送風量Qaを、エンジン2の自動停止の直前におけるブロア20による空気Wの送風量Q0よりも、低減する(Qa<Q0)。換言すると、コントローラ60は、無車速空調モードMaにおいて、ブロアモータ22(インペラ21)の回転数を、エンジン2の自動停止の直前におけるブロアモータ22の回転数よりも、小さくする。
【0085】
「エンジン2の自動停止の直前」とは、エンジン2の自動停止の瞬間(0秒前)、乃至、エンジン2の自動停止の5秒前程度を含み得る。
【0086】
コントローラ60は、有車速空調モードMbにおいて、ブロア20による空気Wの送風量Qbを、低減しない(Qb=Q0)。すなわち、コントローラ60は、有車速空調モードMbにおいて、ブロア20による空気Wの送風量Qbの低減量(Q0-Qb)を、無車速空調モードMaにおけるブロア20による空気Wの送風量Qaの低減量(Q0-Qa)よりも、小さくする(Q0-Qb<Q0-Qa)。
【0087】
換言すると、コントローラ60は、有車速空調モードMbにおいて、ブロアモータ22(インペラ21)の回転数を、低減しない。コントローラ60は、有車速空調モードMbにおいて、ブロアモータ22の回転数の低減量を、無車速空調モードMaにおけるブロアモータ22の回転数の低減量よりも、小さくする。
【0088】
コントローラ60は、有車速空調モードMbの進行中に車両1の速度Vが第1所定速度V1よりも小さな第2所定速度V2に到達すると(V=V2)、空調モードを、有車速空調モードMbから無車速空調モードMaに切り換える。第2所定速度V2は、適宜設定可能であり、コントローラ60に予め記憶されている。第2所定速度V2は、例えば、0km/hである。
【0089】
コントローラ60は、有車速空調モードMbの進行中に車両1の速度Vが第1所定速度V1を下回った(例えば3km/h)としても、車両1の速度Vが第2所定速度V2(例えば0km/h)に到達するまでは、空調モードを、有車速空調モードMbに維持する。
【0090】
コントローラ60は、例えば車両1が下り坂に差し掛かった場合、無車速空調モードMaの進行中に車両1の速度Vが第1所定速度V1に到達すると、空調モードを、無車速空調モードMaから有車速空調モードMbに切り換える。
【0091】
コントローラ60は、有車速空調モードMbにおいて、無車速空調モードMaにおける自動再始動条件Yaよりも厳しい自動再始動条件Ybに基づいて、エンジン2を自動再始動する。上述したが、自動再始動条件Ya,Ybは、熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)の温度条件及び/又は車室8の快適性条件(温度条件等)を、含む。
【0092】
同様に、コントローラ60は、有車速空調モードMbにおいて、無車速空調モードMaにおける自動停止条件Xaよりも厳しい自動停止条件Xbに基づいて、エンジン2を自動停止可能である。上述したが、自動停止条件Xa,Xbは、熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)の温度条件及び/又は車室8の快適性条件(温度条件等)を、含む。
【0093】
ハイブリッドモード且つ有車速空調モードMbの場合、車両1がモータ3のみの駆動によって走行する、又は、車両1が減速中且つモータ3が回生発電される。
【0094】
電動モードの場合、ハイブリッドモードで用いるエンジン冷却水循環回路40とは異なる温水循環回路50を、用いる。
【0095】
無車速空調モードMa及び有車速空調モードMbは、ハイブリッドモードでのみ設定可能である。換言すると、無車速空調モードMa及び有車速空調モードMbは、電動モードでは行われない。
【0096】
(空調制御フロー)
図2,3は、空調制御システムSによる空調制御フローを示すフローチャートである。
図2は前半を示し、
図3は後半を示す。なお、
図2,3に示す空調制御フローは、主に、車室8を冷房する場合(冷房シーン)を、例示する。
【0097】
スタートから出発して、ステップS1において、冷媒循環回路30における電動コンプレッサ31の狙い回転数Nc1を設定する。電動コンプレッサ31の回転数Ncは、車室8への空気Wの吹出温度に関係する。すなわち、電動コンプレッサ31の回転数Ncが大きいほど、冷媒循環回路30での冷媒の循環量が大きくなるので、エバポレータ36による空気Wの冷却能力が大きくなって、車室8への空気Wの吹出温度が低くなる。
【0098】
狙い回転数Nc1は、外気の湿度・湿度及び車室8の温度・湿度などに基づいて、決定される。狙い回転数Nc1は、都度設定されるのではなく、一義的に定めてコントローラ60に記憶されてもよい。
【0099】
次に、ステップS2において、車両1の運転モードを判定する。車両1の運転モードがハイブリッドモード(HEVモード)と判定された場合、ステップS3に進む。車両1の運転モードが電動モード(EVモード)と判定された場合、ステップS23に進んで、冷媒循環回路30及び温水循環回路50を用いて通常空調制御を行い、リターンに至る。
【0100】
車両1がハイブリッドモード(HEVモード)の場合、ステップS3において、エンジン2の自動停止条件Xa,Xbを判定する。
【0101】
次に、ステップS4において、第1クラッチ5が解放状態及び連結状態のうちのいずれであるかを判定する。第1クラッチ5が解放状態の場合、モータ3が回転しても、エンジン2は回転しない。すなわち、第1クラッチ5が解放状態の場合、エンジン2の回転数Neは、所定回転数Ne1未満であると判定できる。このとき、エンジン2は、自動停止(アイドリングストップ)していると判定できる。
【0102】
一方、第1クラッチ5が連結状態の場合、モータ3の回転に連動して、エンジン2も回転する。すなわち、第1クラッチ5が連結状態の場合、エンジン2の回転数Neは、所定回転数Ne1以上であると判定できる。所定回転数Ne1は、適宜設定可能であり、例えば500rpmである。
【0103】
ステップS4において、第1クラッチ5が解放状態(エンジン2の回転数Neが所定回転数Ne1未満)であると判定された場合、ステップS5に進む。ステップS4において、第1クラッチ5が連結状態(エンジン2の回転数Neが所定回転数Ne1以上)であると判定された場合、ステップS6に進む。
【0104】
ステップS5では、エンジン2に連動したウォータポンプ41が駆動しないので、エンジン冷却水は、エンジン冷却水循環回路40を循環せずに、ヒータコア42に流入しない。すなわち、ヒータコア42の温度Thは、エンジン冷却水温センサ2aによるエンジン冷却水の測定温度Teに、一致しない(Th≠Te)。
【0105】
したがって、ステップS5では、ヒータコア42の温度Thとして、エンジン冷却水の測定温度Teをそのまま使えない。そこで、エンジン冷却水がヒータコア42に流入しない条件での温度予測モデル等に基づいて、ヒータコア42の温度Thを予測する。
【0106】
ステップS6では、エンジン2の回転に連動してウォータポンプ41が駆動するので、エンジン冷却水は、エンジン冷却水循環回路40を循環して、ヒータコア42に流入する。すなわち、ヒータコア42の温度Thは、エンジン冷却水温センサ2aによるエンジン冷却水の測定温度Teに、一致する(Th=Te)。したがって、ステップS6では、ヒータコア42の温度Thとして、エンジン冷却水の測定温度Teをそのまま使うことができる。
【0107】
ステップS5の後、ステップS7において、冷媒循環回路30及びエンジン冷却水循環回路40を用いて、エアミックス空調制御を行う。なお、エアミックス空調制御においてエアミックスドア16が最大冷房位置にあるとき、全ての空気Wがヒータコア42を迂回する。
【0108】
同様に、ステップS6の後、ステップS7’において、冷媒循環回路30及びエンジン冷却水循環回路40を用いて、エアミックス空調制御を行う。ステップS7’の後、リターンに至る。
【0109】
次に、ステップS8において、冷房要求の大小を判定する。冷房要求は、主に、外気温度Tmに基づいて、判定される。外気温度Tmが高い場合、冷房要求大になり、外気温度Tmがそれほど高くない場合、冷房要求小になる。冷房要求の大小の基準となる外気温度Tmの閾値は、適宜設定されてよく、例えば25℃である。
【0110】
ステップS8において、冷房要求小と判定された場合、ステップS9に進む。ステップS8において、冷房要求大と判定された場合、ステップS10に進む。
【0111】
ステップS9において、冷房要求小であるにもかかわらず、電動コンプレッサ31の回転数Ncを大きくしてしまうと、エバポレータ36により空気Wが冷却され過ぎてしまうので、その後、ヒータコア42によって空気Wを再加熱しなければならなり、非効率である。
【0112】
そこで、ステップS9では、電動コンプレッサ31の回転数Ncを、その上限回転数Ncmaxにコンプレッサ係数k(0≦k≦1)を乗じた値と、狙い回転数Nc1との小さい方とする。すなわち、Nc=Min(Ncmax×k,Nc1)である。ここで、上限回転数Ncmaxは、電動コンプレッサ31が発揮可能な最大回転数である。なお、上限回転数Ncmaxの代わりに、定格回転数を用いてもよい。
【0113】
コンプレッサ係数kは、外気温度Tmに基づいて、決定される。
図4は、外気温度Tm[℃]とコンプレッサ係数kとの関係を示すグラフである。外気温度Tmが20℃以下のとき、コンプレッサ係数kは、0で一定である。外気温度Tmが30℃以上のとき、コンプレッサ係数kは、1で一定である。外気温度Tmが20℃~30℃のとき、コンプレッサ係数kは、外気温度Tmに比例して、0から1の間で変化する。コンプレッサ係数kが0のとき、電動コンプレッサ31の回転数Ncはゼロになる(電動コンプレッサ31は回転しない)。
【0114】
一方、ステップS10では、冷房要求大なので、エバポレータ36による空気Wの冷却を促進するべく、コンプレッサ係数kを用いない。ステップS10では、電動コンプレッサ31の回転数Ncを、その上限回転数Ncmaxと狙い回転数Nc1との小さい方とする。すなわち、Nc=Min(Ncmax,Nc1)である。
【0115】
ステップS9及びステップS10の後、ステップS11において、車両1の速度Vが第1所定速度V1(5km/h)以上であるか否かを判定する。
図5は、車両1の速度Vと空調モードとの関係を示すマップである。
【0116】
図3,5に示すように、車両1の速度Vが第1所定速度V1以上(V≧V1)のとき、ステップS12に進んで、空調モードを有車速空調モードMbにする。車両1の速度Vが第1所定速度V1未満(V<V1)のとき、ステップS13に進んで、空調モードを無車速空調モードMaにする。なお、
図5における白丸は、エンジン2の自動停止の瞬間における車両1の速度Vを、示す。
【0117】
有車速空調モードMbのとき、ステップS14において、ブロア20による空気Wの送風量Qbを、エンジン2の自動停止の直前における送風量Q0から、低減しない(Qb=Q0、ブロア送風量低減=NO)。
【0118】
一方、無車速空調モードMaのとき、ステップS15において、ブロア20による空気Wの送風量Qaを、エンジン2の自動停止の直前における送風量Q0よりも、低減する(Qa<Q0、ブロア送風量低減=YES)。
【0119】
すなわち、有車速空調モードMbにおけるブロア20の送風量Qbの低減量(Q0-Qb)は、無車速空調モードMaにおけるブロア20の送風量Qaの低減量(Q0-Qa)よりも、小さい(Q0-Qb<Q0-Qa)。
【0120】
図6は、空調モードMa,Mb毎のエバポレータ36の温度Tv[℃]に基づく自動停止条件Xa,Xb及び自動再始動条件Ya,Ybを示すマップである。
図6の上段は、「有車速エバポレータ温度マップ」であって、有車速空調モードMbにおけるエバポレータ36の温度Tvに基づく自動停止条件Xb及び自動再始動条件Ybを、示す。
図6の下段は、「無車速エバポレータ温度マップ」であって、無車速空調モードMaにおけるエバポレータ36の温度Tvに基づく自動停止条件Xa及び自動再始動条件Yaを、示す。
【0121】
有車速空調モードMbのとき、ステップS16において、「有車速エバポレータ温度マップ」を参照して、自動再始動条件Ybとしてのエバポレータ36の温度Tvに基づいて、エンジン2を自動再始動させるか否かを判定する。一方、無車速空調モードMbのとき、ステップS17において、「無車速エバポレータ温度マップ」を参照しながら、自動再始動条件Yaとしてのエバポレータ36の温度Tvに基づいて、エンジン2を自動再始動させるか否かを判定する。
【0122】
図6の上段に示すように、有車速空調モードMbのとき、自動再始動条件Ybとしてのエバポレータ36の温度Tvが12℃以上になると、エンジン2は、自動再始動する。そして、エンジン2が自動再始動した後、自動停止条件Xbとしてのエバポレータ36の温度Tvが8℃未満になると、エンジン2は、自動停止可能になる。
【0123】
図6の下段に示すように、無車速空調モードMaのとき、自動再始動条件Yaとしてのエバポレータ36の温度Tvが16℃以上になると、エンジン2は、自動再始動する。そして、エンジン2が自動再始動した後、自動停止条件Xaとしてのエバポレータ36の温度Tvが12℃未満になると、エンジン2は、自動停止可能になる。
【0124】
図6に示すように、有車速空調モードMbにおける自動再始動条件Ybとしてのエバポレータ36の温度Tv(12℃)は、無車速空調モードMaにおける自動再始動条件Yaとしてのエバポレータ36の温度Tv(16℃)よりも、低い(厳しい)。同様に、有車速空調モードMbにおける自動停止条件Xbとしてのエバポレータ36の温度Tv(8℃)は、無車速空調モードMaにおける自動停止条件Xaとしてのエバポレータ36の温度Tv(12℃)よりも、低い(厳しい)。なお、
図6における白丸は、エンジン2の自動停止の瞬間におけるエバポレータ36の温度Tvを、示す。
【0125】
図7は、空調モードMa,Mb毎のヒータコア42の温度Th[℃]に基づく自動停止条件Xa,Xb及び自動再始動条件Ya,Ybを示すマップである。
図7の上段は、「有車速ヒータコア温度マップ」であって、有車速空調モードMbにおけるヒータコア42の温度Thに基づく自動停止条件Xb及び自動再始動条件Ybを、示す。
図7の下段は、「無車速ヒータコア温度マップ」であって、無車速空調モードMaにおけるヒータコア42の温度Thに基づく自動停止条件Xa及び自動再始動条件Yaを、示す。
【0126】
有車速空調モードMbのとき、ステップS18において、「有車速ヒータコア温度マップ」を参照して、自動再始動条件Ybとしてのヒータコア42の温度Thに基づいて、エンジン2を自動再始動させるか否かを判定する。一方、無車速空調モードMbのとき、ステップS19において、「無車速ヒータコア温度マップ」を参照しながら、自動再始動条件Yaとしてのヒータコア42の温度Thに基づいて、エンジン2を自動再始動させるか否かを判定する。
【0127】
図7の上段に示すように、有車速空調モードMbのとき、自動再始動条件Ybとしてのヒータコア42の温度Thが50℃未満になると、エンジン2は、自動再始動する。そして、エンジン2が自動再始動した後、自動停止条件Xbとしてのヒータコア42の温度Thが55℃以上になると、エンジン2は、自動停止可能になる。
【0128】
図7の下段に示すように、無車速空調モードMaのとき、自動再始動条件Yaとしてのヒータコア42の温度Thが45℃未満になると、エンジン2は、自動再始動する。そして、エンジン2が自動再始動した後、自動停止条件Xaとしてのヒータコア42の温度Thが50℃以上になると、エンジン2は、自動停止可能になる。
【0129】
図7に示すように、有車速空調モードMbにおける自動再始動条件Ybとしてのヒータコア42の温度Th(50℃)は、無車速空調モードMaにおける自動再始動条件Yaとしてのヒータコア42の温度Th(45℃)よりも、高い(厳しい)。同様に、有車速空調モードMbにおける自動停止条件Xbとしてのヒータコア42の温度Th(55℃)は、無車速空調モードMaにおける自動停止条件Xaとしてのヒータコア42の温度Th(50℃)よりも、高い(厳しい)。なお、
図7における白丸は、エンジン2の自動停止の瞬間におけるヒータコア42の温度Thを、示す。
【0130】
図8は、空調モードMa,Mb毎の車室8の温度Tr[℃]に基づく自動停止条件Xa,Xb及び自動再始動条件Ya,Ybを示すマップである。車室8の温度Trは、車室8の快適性条件の1つである。本例では、車室8の温度Trが25℃に近いほど、車室8の快適性が高まると設定されている。
【0131】
図8の上段は、「有車速車室温度マップ」であって、有車速空調モードMbにおける車室8の温度Trに基づく自動停止条件Xb及び自動再始動条件Ybを、示す。
図8の下段は、「無車速車室温度マップ」であって、無車速空調モードMaにおける車室8の温度Trに基づく自動停止条件Xa及び自動再始動条件Yaを、示す。
【0132】
有車速空調モードMbのとき、ステップS20において、「有車速車室温度マップ」を参照して、自動再始動条件Ybとしての車室8の温度Trに基づいて、エンジン2を自動再始動させるか否かを判定する。一方、無車速空調モードMbのとき、ステップS21において、「無車速車室温度マップ」を参照しながら、自動再始動条件Yaとしての車室8の温度Trに基づいて、エンジン2を自動再始動させるか否かを判定する。
【0133】
図8の上段に示すように、有車速空調モードMbのとき、自動再始動条件Ybとしての車室8の温度Trが15℃未満又は35℃以上になると、エンジン2は、自動再始動する。そして、エンジン2が自動再始動した後、自動停止条件Xbとしての車室8の温度Trが20℃以上及び30℃未満になると、エンジン2は、自動停止可能になる。
【0134】
図8の下段に示すように、無車速空調モードMaのとき、自動再始動条件Yaとしての車室8の温度Trが10℃未満又は40℃以上になると、エンジン2は、自動再始動する。そして、エンジン2が自動再始動した後、自動停止条件Xaとしての車室8の温度Thが15℃以上及び35℃未満になると、エンジン2は、自動停止可能になる。
【0135】
図8に示すように、有車速空調モードMbにおける自動再始動条件Ybとしての車室8の温度Tr(15℃~35℃)は、無車速空調モードMaにおける自動再始動条件Yaとしての車室8の温度Tr(10℃~40℃)よりも、25℃に近く、許容範囲が狭い(厳しい)。同様に、有車速空調モードMbにおける自動停止条件Xbとしての車室8の温度Tr(20℃~30℃)は、無車速空調モードMaにおける自動停止条件Xaとしての車室8の温度Tr(15℃~35℃)よりも、25℃に近く、許容範囲が狭い(厳しい)。なお、
図8における白丸は、エンジン2の自動停止の瞬間における車室8の温度Trを、示す。
【0136】
有車速空調モードMbのとき、ステップS20の後、ステップS22において、車両1の速度Vが第2所定速度V2(=0km/h)に到達したか否かを判定する。車両1の速度Vが第2所定速度V2に到達しない(V>V2)場合、リターンに至る。車両1の速度Vが第2所定速度V2(=0km/h)に到達した(V=V2=0km/h)場合、ステップS13に進んで、空調モードが、有車速空調モードMbから無車速空調モードMaに切り換わる。無車速空調モードMaのとき、ステップS21の後、リターンに至る。
【0137】
(空調制御タイムチャート)
図9は、空調制御システムSによる空調制御タイムチャートを示す。
図9では、車両1の速度V、エンジン2の回転数Ne、電動コンプレッサ31の回転数Nc、エバポレータ36の温度Tv、ヒータコア42の温度Th及びブロア20の電圧Uを、示す。なお、
図9では、暖房シーンを例示する。
【0138】
時刻t1において、車両1の速度Vは、第1所定速度V1(5km/h)以上となっている。エンジン2が回転しているので、ヒータコア42の温度Thは、高く維持されている。電動コンプレッサ31が回転しているので、エバポレータ36の温度Tvは、低く維持されている。ブロア20の電圧Uは、ONになっている(ブロアモータ22が起動してインペラ21が回転する)。すなわち、空気ダクト10における空気Wと熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)との間の熱交換が促進される。
【0139】
時刻t2において、エンジン2が自動停止して、エンジン2の回転数Neがゼロになる。エンジン2が自動停止した瞬間(時刻t2)において、車両1の速度Vは、第1所定速度V1以上である。すなわち、有車速空調モードMbが適用される。車両1の速度Vは、低下し始める。車両1の減速中に、モータ3が回生発電されてもよい。エンジン2の回転数Neがゼロなので、ヒータコア42の温度Thは、低下し始める。電動コンプレッサ31を停止する。電動コンプレッサ31の回転数Ncがゼロなので、エバポレータ36の温度Tvは、上昇し始める。有車速空調モードMbが適用されるので、ブロア20の電圧Uは、ONで維持される。
【0140】
時刻t3において、ヒータコア42の温度Thは、有車速空調モードMbにおける自動再始動条件Ybで定める有車速下限温度Thb(例えば50℃)未満になる。そこで、エンジン2を自動再始動して回転させる。車両1の速度Vは、時間の経過とともに低下する。エンジン2が回転するので、ヒータコア42の温度Thは、上昇し始める。電動コンプレッサ31は、再び回転する。電動コンプレッサ31が回転するので、エバポレータ36の温度Tvは、低下し始める。ブロア20の電圧Uは、ONで維持される。
【0141】
時刻t4において、エンジン2を自動停止して、エンジン2の回転数Neをゼロにする。エンジン2が自動停止した瞬間(時刻t4)において、車両1の速度Vは、第1所定速度V1以上である。すなわち、有車速空調モードMaが適用される。車両1の速度Vは、時間の経過とともに、低下する。車両1の減速中に、モータ3が回生発電されてもよい。エンジン2の回転数Neがゼロなので、ヒータコア42の温度Thは、低下し始める。電動コンプレッサ31を停止する。電動コンプレッサ31の回転数Ncがゼロなので、エバポレータ36の温度Tvは、上昇し始める。有車速空調モードMaが適用されるので、ブロア20の電圧Uは、ONで維持される。
【0142】
時刻t5において、エンジン2は、自動停止状態のままであり、エンジン2の回転数Neは、ゼロのままである。車両1の速度Vは、第2所定速度V2(0km/h)に到達する。すなわち、空調モードは、有車速空調モードMbから、無車速空調モードMaに切り換わる。無車速空調モードMaが適用されるので、ブロア20の電圧Uは、OFFになる(ブロアモータ22が起動せずにインペラ21が回転しない)。すなわち、空気ダクト10における空気Wと熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)との間の熱交換が抑制される。このため、ヒータコア42の温度Thの低下速度が遅くなる。同様に、エバポレータ36の温度Tvの上昇速度が遅くなる。
【0143】
時刻t6において、ヒータコア42の温度Thは、無車速空調モードMaにおける自動再始動条件Yaで定める無車速下限温度Tha(<Thb、例えば45℃)未満になる。そこで、エンジン2を自動再始動して回転させる。エンジン2が回転するので、ヒータコア42の温度Thは、上昇し始める。電動コンプレッサ31は、再び回転する。電動コンプレッサ31が回転するので、エバポレータ36の温度Tvは、低下し始める。ブロア20の電圧Uは、ONに切り換わる。
【0144】
場面が変わって、時刻t7において、車両1の速度Vは、第1所定速度V1以上となっている。エンジン2は、回転している。時刻t8において、エンジン2が自動停止して、エンジン2の回転数Neがゼロになる。このとき、車両1は、モータ3の駆動によって走行する。これにより、車両1の速度Vは、第1所定速度V1以上に維持される。時刻t9において、時刻t3と同様に、エンジン2を自動再始動して回転させる。その他の条件は、時刻t1~t3と同様である。
【0145】
(作用効果)
車両1の停止中(無車速時)にエンジン2が自動停止した際に、ブロア20による空気Wの送風量Qaが低減されたとしても、車両1の振動やロードノイズも同時に低減されているので、車室8における乗員に対してそれほど違和感を与えない。
【0146】
そこで、無車速空調モードMaでは、ブロア20の送風量Qaを、エンジン2の自動停止の直前におけるブロア20の送風量Q0よりも、低減する。
【0147】
一方、車両1の走行中(有車速時)にエンジン2が自動停止した際に、ブロア20による空気Wの送風量Qbが低減されると、車両1の振動やロードノイズに変化が無いにもかかわらず、ブロア20の送風量Qbのみが低減されることになるので、車室8における乗員に対して大きな違和感を与える可能性がある。
【0148】
そこで、有車速空調モードMbでは、ブロア20の送風量Qbの低減量(Q0-Qb)を、無車速空調モードMaにおけるブロア20の送風量Qaの低減量(Q0-Qa)よりも、小さくする(Q0-Qb<Q0-Qa)。換言すると、有車速空調モードMbでは、ブロア20の送風量Qbを、エンジン2の自動停止の直前におけるブロア20の送風量Q0から、可能な限り低減しない。
【0149】
これにより、車両1の走行中にエンジン2が自動停止した際における空調変化を、車室8の乗員に気付かせにくくすることができる。
【0150】
特に本実施形態では、有車速空調モードMbにおいて、ブロア20による空気Wの送風量Qbを、低減しない(Qb=Q0)。これにより、車両1の走行中にエンジン2が自動停止した際に、車室8の乗員にほとんど違和感を与えない。
【0151】
有車速空調モードMbではブロア20の送風量Qbがほとんど低減しないので、有車速空調モードMbを長時間維持すると、空気ダクト10における空気Wと熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)との間の熱交換が促進されてしまい、空気調和機9の冷暖房能力が低下するおそれがある。
【0152】
一方、無車速空調モードMaでは、ブロア20の送風量Qaが低減するので、空気ダクト10における空気Wと熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)との間の熱交換が抑制されて、空気調和機9の冷暖房能力が低下しにくくなる。
【0153】
そこで、有車速空調モードMbの進行中に車両1の速度Vが第1所定速度V1(5km/h)よりも小さな第2所定速度V2(0km/h)に到達した場合に、空調モードを有車速空調モードMbから無車速空調モードMaに切り換えることによって、空気調和機9の冷暖房能力の低下を抑制することができる。
【0154】
有車速空調モードMbでは、無車速空調モードMaにおける自動再始動条件Yaよりも厳しい自動再始動条件Ybを設定することによって、エンジン2を自動再始動させやすくしている。これにより、エンジン2の自動停止に起因する空気調和機9の冷暖房能力の低下を、抑制することができる。
【0155】
熱交換器(エバポレータ36及びヒータコア42)の温度条件及び車室8の快適性条件(車室8の温度条件)を、エンジン2の自動再始動条件Ya,Ybとして、好適に設定することができる。
【0156】
エバポレータ36及びヒータコア42によって、空気ダクト10における空気Wとの間での熱交換を、好適に行うことができる。
【0157】
ハイブリッドモード且つ有車速空調モードMbの場合、車両1がモータ3の駆動によって走行する、又は車両1が減速中且つモータ3が回生発電されるので、エンジン2の自動停止状態であっても、効率よく、車両1を走行させることができる。
【0158】
電動モードとハイブリッドモードとで互いに異なる熱交換回路(温水循環回路50vsエンジン冷却水循環回路40)を用いることによって、各運転モードに応じて好適な空調制御を行うことができる。
【0159】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0160】
有車速空調モードMbにおいて、ブロア20による空気Wの送風量Qbを、多少低減してもよい。自動再始動条件Ya,Ybは、エバポレータ36の温度条件、ヒータコア42の温度条件及び車室8の快適性条件のうちのいずれか1つのみを含んでもよい。自動停止条件Xa,Xbについても同様である。車室8の快適性条件として、車室8の湿度条件を含んでもよい。冷媒循環回路30は、電動コンプレッサ31の代わりに、エンジン2に連動する機械式コンプレッサを、含んでもよい。空調制御システムSは、車室8を冷房する場合(冷房シーン)及び車室8を暖房する場合(暖房シーン)のいずれにも、適用されてもよい。車両1は、マイルドハイブリッド(MHEV)自動車でもよい。車両1は、単純なエンジン自動車でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示は、車両の空調制御システムに適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0162】
S 空調制御システム
W 空気
Ma 無車速空調モード
Mb 有車速空調モード
V 速度
V1 第1所定速度
V2 第2所定速度
Q0 送風量
Qa 送風量
Qb 送風量
Xa 自動停止条件
Xb 自動停止条件
Ya 自動再始動条件
Yb 自動再始動条件
1 車両
2 エンジン
3 モータ
8 車室
9 空気調和機
10 空気ダクト
20 ブロア
30 冷媒循環回路(熱交換回路)
31 電動コンプレッサ
36 エバポレータ(熱交換器)
40 エンジン冷却水循環回路(熱交換回路)
41 ウォータポンプ
42 ヒータコア(熱交換器)
50 温水循環回路(熱交換回路)
51 電動ポンプ
52 ヒータ
60 コントローラ(制御装置)