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  • 特開-排水中の有機物の分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001673
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】排水中の有機物の分解方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20221226BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20221226BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C02F1/58 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102536
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D038
4D061
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB27
4D038BB06
4D038BB10
4D061DA08
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB09
4D061ED03
4D061FA06
(57)【要約】
【課題】オゾンよりも強い浄化性を発揮することができる排水中の有機物の分解方法を提供しようとするもの。
【解決手段】排水中にオゾンを共存させて電気分解するようにした。したがって、排水中にオゾナイザーにより発生させて注入・圧入したオゾンを共存させて電気分解することにより、電極間で共存オゾン(O3)に及ぼされる電気エネルギーによって以下のように解離することとなる。共存オゾンの電解により生成した活性ラジカル種(・O)は、即効性の強い酸化性を有しており、排水中の有機物(汚れ成分)に対して速やかに分解作用を及ぼして浄化していく。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中にオゾンを共存させて電気分解するようにしたことを特徴とする排水中の有機物の分解方法。
【請求項2】
前記排水の処理水中の共存オゾンを活性炭で不活性化するようにした請求項1記載の排水中の有機物の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水中の有機物の分解方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排水の浄化処理にかかる排水処理システムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、排水を浄化処理する技術が多く知られており、それらの中にはオゾンを利用して排水を浄化処理する技術がある。オゾンには強い酸化力があり、この酸化力によって排水に含まれる有機物質や細菌などを酸化分解することにより、排水の殺菌、脱色、脱臭などの浄化処理を行うというものである。このような排水の浄化処理に関する技術(特開2004-122105号)が開示されている。
この文献には、オゾンの有効利用及びそれに伴うコストの低減を図るため、オゾン接触槽において酸化分解しなかったオゾンを回収して再利用する旨が開示されている。そして、オゾンを再利用することにより、排水の浄化処理における資源の有効利用が図られる一方、近年では、排水の浄化処理を効率化させることによって排水の浄化処理にかかるロスを低減し、環境の保全を図ることが強く求められている、というものである。
これに対し、オゾンよりも強い浄化性を発揮する処理方法への要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-85973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、オゾンよりも強い浄化性を発揮することができる排水中の有機物の分解方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水中の有機物の分解方法は、排水中にオゾンを共存させて電気分解するようにしたことを特徴とする。
この発明の排水中の有機物の分解方法は、排水中にオゾンを共存させて電気分解するようにしたので、排水中に(例えばオゾナイザーにより発生させて注入・圧入した)オゾンを共存させて電気分解することにより、(電極間で)共存オゾン(O3)に及ぼされる電気エネルギーによって以下のように解離することとなる。
O3→O2+・O
O2→・O+・O
この酸素ラジカル(・O)等の活性種により、排水中の有機物(汚れ成分)に酸化分解作用を及ぼして分解させていくこととなる。酸素ラジカル(・O)の酸化電位は 2.42V、オゾン(O3)の酸化電位は 2.07Vである。これらの酸化電位は、次亜塩素酸(HClO)のもの(1.36V)よりもかなり高いものである。次亜塩素酸は、活性なラジカル種と比較すると遅効性でもある。
紫外線(UV)によるオゾン(O3)の解離エネルギーは253.7nmで472kJ/mol(O3→O2+・O)であり、184.9nmで647kJ/mol(O2→・O+・O)であり、電気分解ではこれらと同等かより高いエネルギーを加える。
そして、共存オゾンの電解により生成した活性ラジカル種(・O)は、即効性の強い酸化性を有しており、排水中の有機物(汚れ成分)に対して速やかに分解作用を及ぼして浄化していく。また、電気分解の際、併せて活性なヒドロキシラジカル(・OH、酸化電位2.80V)も生成することとなる。さらに、電気分解の際の陽極電極による直接酸化作用により有機物は分解されていく。
また、このように排水中にオゾン(O3)を共存させて電気分解することにより活性なラジカル種を発生させるようにすると、水への溶解度(0.105 g / 100 mL (0 ℃))がそれほど高くないオゾンの酸化分解性を向上させることが出来る。オゾンの共存とは、排水中に溶解している溶存の上位概念である。
既述のように紫外線によるオゾンの解離エネルギーは、253.7nmで472kJ/mol(O3→O2+・O)、184.9nmで647kJ/mol(O2→・O+・O)であるが、O3→O2+・Oの場合は電圧6V、電流5A、39Wh(交流)の電気分解で解離させることができ(O3 10g当たり)、O2→・O+・Oの場合は、電圧6V、電流7A、54Wh(交流)の電気分解で解離させることが出来る(O3 10g当たり)。
【0006】
(2)排水の処理水中の共存オゾンを活性炭で不活性化するようにしてもよい。
このように、排水の処理水中の共存オゾン(オゾンの電気分解では酸素O以外の元素は生成しない)を活性炭で不活性化するようにすると、処理水を安全でまた塩化物イオン(Cl-)などの夾雑物が含まれていない清浄水として再利用することが出来る。
すなわち、排水を処理するために次亜塩素酸(HClO)などを使用すると、処理後にどうしても塩化物イオン(Cl-)が残留することになり、高清浄度が必要な再利用用途に対してはRO膜などの二次的処理が必要となってしまうのである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
共存オゾンの電解により生成した活性ラジカル種により排水中の有機物に対して速やかに分解作用を及ぼして浄化していくので、オゾンよりも強い浄化性を発揮することができる排水中の有機物の分解方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の排水中の有機物の分解方法の実施形態を説明するシステム・フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の排水処理装置は、排水原水2を最初に受け入れる活性炭流動床3と、その下方の活性炭固定床4と、浄化された排水の中間槽5とを有し、排水Wはこの順番に移動していく。
活性炭流動床3では、排水中の活性炭がエアレーターAによるエアレーションにより攪拌され、排水中の有機物が活性炭に吸着されるようにしている。活性炭固定床4では、排水中の有機物が活性炭に濾過、吸着されて除去されていく。
【0010】
また、オゾン(ガス)を発生させるオゾナイザー6と、発生したオゾンの貯留管7と、オゾン共存水を電気分解するための三連並列の電解機構8とを有する。
そして、ポンプPにより、中間槽5から一部の浄化水(清浄水)が処理系外へと排出され、一部の浄化水(排水)はオゾンの貯留管7から圧入されたオゾンガスと合流して、電解機構8で電気分解され、再び中間槽5へと循環するようにしている。
【0011】
この排水中の有機物の分解方法は、排水中にオゾンを共存させて電気分解するようにしている。すなわち、排水中にオゾナイザー6により発生させてポンプPで注入・圧入したオゾンを共存させて、電解機構8で電気分解することにより、電解機構内の電極間で共存オゾン(O3)に及ぼされる電気エネルギーによって以下のように解離することとしている。
O3→O2+・O
O2→・O+・O
【0012】
この酸素ラジカル(・O)等の活性種により、排水中の有機物(汚れ成分)に酸化分解作用を及ぼして分解させていく。酸素ラジカル(・O)の酸化電位は 2.42V、オゾン(O3)の酸化電位は 2.07Vである。これらの酸化電位は、次亜塩素酸(HClO)のもの(1.36V)よりもかなり高い。次亜塩素酸は、活性なラジカル種と比較すると遅効性である。
【0013】
紫外線(UV)によるオゾン(O3)の解離エネルギーは253.7nmで472kJ/mol(O3→O2+・O)であり、184.9nmで647kJ/mol(O2→・O+・O)であり、電気分解ではこれらより高いエネルギーを加えた(交流電力54Wh)。
そして、共存オゾンの電解により生成した活性ラジカル種(・O)は、即効性の強い酸化性を有しており、排水中の有機物(汚れ成分)に対して速やかに分解作用を及ぼして浄化していく。また、電気分解の際、併せて活性なヒドロキシラジカル(・OH、酸化電位2.80V)も生成することとなる。さらに、電気分解の際の陽極電極による直接酸化作用により有機物は分解されていく。
【0014】
また、このように排水中にオゾン(O3)を共存させて電気分解することにより活性なラジカル種を発生させるようにしたので、水への溶解度がそれほど高くないオゾンの酸化分解性を向上させることが出来た。
【0015】
そして、排水の処理水中の共存オゾンを活性炭で不活性化するようにした。
排水を処理するために次亜塩素酸(HClO)を使用すると、処理後にどうしても塩化物イオン(Cl-)が残留することになり、高清浄度が必要な再利用用途に対してはRO膜などの二次的処理が必要となってしまうが、このような二次処理は必要ない。
【0016】
次に、この実施形態の排水中の有機物の分解方法の使用状態を説明する。
共存オゾンの電解により生成した活性ラジカル種により排水中の有機物に対して速やかに分解作用を及ぼして浄化していくので、オゾンよりも強い浄化性を発揮することが出来た。
【0017】
また、排水の処理水中の共存オゾンを活性炭で不活性化するようにしたので、処理水を安全でまた塩化物イオン(Cl-)などの夾雑物が含まれていない清浄水として再利用することが出来た。
【実施例0018】
この実施例では、排水中にオゾンを共存させて電気分解した。
すなわち、オゾナイザー6によりオゾンを20g/時の割合で発生させ、これを電解機構8(電極の長さL=50mm×6)の排水中に圧入し、電圧6V、電流7A/dm2、120cc/分の条件で電気分解した(交流電力54Wh)。その結果、処理前の排水のCOD 19,800ppmであったのが、処理後には9,500ppmに低減した。
【比較例】
【0019】
この比較例では、排水中にオゾンを共存させずに電気分解した。
すなわち、電解機構8(電極の長さL=50mm×6)の排水を、電圧6V、電流7A/dm2、120cc/分の条件で電気分解した(交流電力54Wh)。その結果、処理前の排水のCOD 19,800ppmであったのが、処理後には12,500ppmに低減した。
これらの結果を対比すると、排水中にオゾンを共存させて電気分解するとCOD 19,800ppmが9,500ppmまで低減したのに対し(低減率52%)、排水中にオゾンを共存させずに電気分解したらCOD 19,800ppmは12,500ppmにしか低減しなかった(低減率37%)。
このように、実施例の低減率52%(50%以上)と比較例の低減率37%(40%未満)との結果で、かなりの有意差が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
オゾンよりも強い浄化性を発揮することができることによって、種々の排水中の有機物の分解方法の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
W 排水
6 (オゾナイザー)
8 (電解機構)
図1