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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167316
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/16 20180101AFI20231116BHJP
   F21S 43/13 20180101ALI20231116BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20231116BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
F21S43/16
F21S43/13
F21W103:60
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078396
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 峻行
(72)【発明者】
【氏名】橋塚 義弘
(57)【要約】
【課題】 蛍光体の応答時間に起因する表示輝度やコントラストの低下を抑制することができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光を出射する光源11~13と、レーザ光の入射に応じて、励起光を出射する蛍光体21~23と、励起光を走査して画像を表示する走査部50と、を備えた車両用表示装置1であって、蛍光体21~23の応答時間に基づいて、走査部50の走査速度を定めた。例えば、走査部50の画像の1ピクセルを通過する時間は、蛍光体21~23の応答時間よりも長くなるように設定される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記レーザ光の入射に応じて、励起光を出射する蛍光体と、
前記励起光を走査して画像を表示する走査部と、を備えた車両用表示装置であって、
前記蛍光体の応答時間に基づいて、前記走査部の走査速度を定めた、ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間よりも長い、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間の1.5倍以上である、ことを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間の2倍以上である、ことを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間の3倍以上である、ことを特徴とする請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間に前記蛍光体の残光時間を加えた時間よりも長い、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走査したレーザ光を蛍光体によって白色光に変換して路面に画像を投影する車両用表示装置(車両用前照灯)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-90228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の車両用表示装置では、蛍光体による変換にタイムラグ(応答時間)が生じると、表示輝度やコントラストを低下させる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、蛍光体の応答時間に起因する表示輝度やコントラストの低下を抑制できる車両用表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
(1)レーザ光を出射する光源と、前記レーザ光の入射に応じて、励起光を出射する蛍光体と、前記励起光を走査して画像を表示する走査部と、を備えた車両用表示装置であって、前記蛍光体の応答時間に基づいて、前記走査部の走査速度を定めた、ことを特徴とする。
(2)上記(1)の構成において、前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間よりも長い、ことを特徴とする。
(3)上記(2)の構成において、前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間の1.5倍以上である、ことを特徴とする。
(4)上記(3)の構成において、前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間の2倍以上である、ことを特徴とする。
(5)上記(4)の構成において、前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間の3倍以上である、ことを特徴とする。
(6)上記(1)の構成において、前記走査部の前記画像の1ピクセルを通過する時間は、前記応答時間に前記蛍光体の残光時間を加えた時間よりも長い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、蛍光体の応答時間に起因する表示輝度やコントラストの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両用表示装置を備える車両を概略的に示す側面図である。
図2】車両用表示装置の表示例を示す図である。
図3】車両用表示装置の構成を概略的に示す図である。
図4】走査部の走査軌跡と1ピクセル分の走査時間を概略的に示す図である。
図5】1ピクセル分の走査時間が蛍光体の応答時間よりも長い場合の表示輝度を示す図である。
図6】1ピクセル分の走査時間が蛍光体の応答時間よりも短い場合の表示輝度を示す図である。
図7】走査部の共振周波数と走査速度と1ピクセル分の最小走査時間との関係を説明するための図である。
図8】1ピクセル分の走査時間(共振周波数)と表示輝度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施例の車両用表示装置1は、車両の前側の左右のそれぞれに設けられる車両用の前照灯(ロードプロジェクション装置)である。なお、前照灯を構成する車両用表示装置1は、車両の幅方向中央部に設けられてもよいし、3つ以上並んで設けられてもよい。以下では、車両用表示装置1とは、特に言及しない限り、左右の任意のいずれか一方の車両用の前照灯を意味する。車両用表示装置1は、図示しないハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に配置されてよい。
【0011】
車両用表示装置1は、ハイビームやロービームを形成する灯具ユニット(図示せず)と同じ灯室内に配置されてもよいし、別の灯室内に配置されてもよい。
【0012】
図2に示すように、車両用表示装置1は、例えば路面に画像G20を投映する態様で、路面を照明してよい。画像G20は、任意の画像であってよい。任意の画像は、例えば、歩行者等の周囲の人に所定情報(自車の状態を通知するための情報や、コミュニケーション用の情報等)を提供するための画像である。また、任意の画像は、自車の運転者等の乗員に所定情報(例えば自車の車両情報やナビゲーション情報、歩行者等の検出による注意喚起情報)を提供するための画像であってもよい。また、任意の画像は、他車の運転者等の乗員に所定情報(自車の状態を通知するための情報、コミュニケーション用の情報等)を提供するための画像であってもよい。なお、図2では、左右の車両用表示装置1が別々の画像G20を生成しているが、左右の車両用表示装置1からの光を重ね合わせて一の画像を生成してもよい。
【0013】
図3に示すように、車両用表示装置1は、筐体2を有する。筐体2は、開口部2aを有する。また、車両用表示装置1は、第1光源11、第2光源12、第3光源13、第1蛍光体21、第2蛍光体22、第3蛍光体23、第1ダイクロイックミラー31、第2ダイクロイックミラー32、及び第3ダイクロイックミラー33を有する。
【0014】
第1光源11、第2光源12、第3光源13、第1蛍光体21、第2蛍光体22、第3蛍光体23、第1ダイクロイックミラー31、及び第2ダイクロイックミラー32は、筐体2内に設けられる。第3ダイクロイックミラー33は、筐体2の開口部2aを覆うように設けられてよい。
【0015】
また、車両用表示装置1は、更に、集光レンズ40と、走査部50とを有する。集光レンズ40及び走査部50は、図3に示すように、筐体2の外部に設けられてよい。
【0016】
第1光源11、第2光源12、及び第3光源13は、それぞれ、レーザ光源であり、レーザ光をそれぞれ出力する。
【0017】
本実施例では、一例として、第1光源11は、青色レーザを出射し、第2光源12は、青色レーザを出射し、第3光源13は、青色よりも短い波長を有する青紫色レーザを出射する。
【0018】
第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23は、それぞれ、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13に対応付けて設けられる。第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23は、それぞれ、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13からのレーザ光のコヒーレンスを低減する機能を有する。つまり、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23は、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13のそれぞれとの組み合わせにより、ほぼ点光源として機能する。
【0019】
本実施例では、一例として、第1蛍光体21は、第1光源11からのレーザ光が照射され、緑色の波長の緑色光L1を出力する。また、第2蛍光体22は、第2光源12からのレーザ光が照射され、赤色の波長の赤色光L2を出力する。また、第3蛍光体23は、第3光源13からのレーザ光が照射され、青色の波長の青色光L3を出力する。
【0020】
なお、図3に示すように、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23には、それぞれに対応付けてリフレクタやコリメータレンズ25が設けられてもよい。これにより、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13からの各レーザ光を、平行化して後述する第1ダイクロイックミラー31や第2ダイクロイックミラー32に入射させることができる。
【0021】
第1ダイクロイックミラー31及び第2ダイクロイックミラー32は、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3に基づいて、これらを合成した光L4(以下、「合成光L4」とも称する)を生成する第1光学系30の一例を形成する。
【0022】
具体的には、第1ダイクロイックミラー31は、図3に示すように、第1光源11の光軸上かつ第2光源12の光軸上に設けられる。すなわち、第1ダイクロイックミラー31は、第1蛍光体21からの緑色光L1と、第2蛍光体22からの赤色光L2とが入射するように配置される。
【0023】
第1ダイクロイックミラー31は、緑の波長域と赤の波長域とを仕切る特性を有し、緑の波長域及びそれよりも短い波長の光を透過し、赤の波長域及びそれよりも長い波長の光を反射する。
【0024】
従って、本実施例では、第1ダイクロイックミラー31は、第1蛍光体21からの緑色光L1を透過し、第2蛍光体22からの赤色光L2を反射する。これにより、第2ダイクロイックミラー32には、緑色光L1及び赤色光L2が入射する。
【0025】
第2ダイクロイックミラー32は、図3に示すように、第1ダイクロイックミラー31よりも第1光源11から離れた側で、第1蛍光体21の光軸上かつ第3光源13の光軸上に設けられる。すなわち、第2ダイクロイックミラー32は、第1ダイクロイックミラー31からの緑色光L1及び赤色光L2と、第3蛍光体23から青色光L3とが入射するように配置される。
【0026】
第2ダイクロイックミラー32は、青の波長域と緑の波長域とを仕切る特性を有し、青の波長域及びそれよりも短い波長の光を透過し、緑の波長域及びそれよりも長い波長の光を反射する。
【0027】
従って、本実施例では、第2ダイクロイックミラー32は、第1ダイクロイックミラー31からの緑色光L1及び赤色光L2を反射し、第3蛍光体23から青色光L3を透過する。
【0028】
このようにして、第1ダイクロイックミラー31及び第2ダイクロイックミラー32は、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3に基づいて、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3を含む合成光L4を、第3ダイクロイックミラー33に向けて出射できる。
【0029】
第3ダイクロイックミラー33は、第2ダイクロイックミラー32よりも第3光源13から離れた側で、第3光源13の光軸上に配置される。すなわち、第3ダイクロイックミラー33は、第2ダイクロイックミラー32からの合成光L4が入射するように配置される。
【0030】
第3ダイクロイックミラー33は、青紫の波長域と青の波長域とを仕切る特性を有し、青紫の波長域及びそれよりも短い波長の光を反射し、青の波長域及びそれよりも長い波長の光を透過する。従って、本実施例では、第3ダイクロイックミラー33は、第2ダイクロイックミラー32からの合成光L4を透過することができる。
【0031】
集光レンズ40は、第3ダイクロイックミラー33よりも第3光源13から離れた側で、第3光源13の光軸上に配置される。なお、集光レンズ40の光軸は、第3光源13の光軸と一致する。すなわち、集光レンズ40には、第3ダイクロイックミラー33からの透過光L5(≒合成光L4)が入射するように配置される。集光レンズ40は、透過光L5(赤、青、緑の各色のレーザ光)を集光して走査部50に向けて出射する。
【0032】
走査部50は、第3ダイクロイックミラー33からの透過光L5(集光レンズ40を介して入射する透過光L5)が入射するように配置される。走査部50は、透過光L5を走査して、上述した画像G20を出力する。
【0033】
走査部50は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナであってよい。この場合、MEMSスキャナは、集光レンズ40から入射するレーザ光を、路面上に投射する。MEMSスキャナは、例えば、直交する2軸まわりに回転可能なMEMSミラーを備える。路面上のレーザ光の投射位置は、MEMSミラーの向きに応じて変化する。従って、MEMSスキャナは、図示しない制御装置による制御下で、路面上のレーザ光の投射位置を任意に変化させることができる。
【0034】
走査部50は、例えばラスタースキャン方式で共振駆動される。図4は、ラスタースキャン方式の走査軌跡SKと、1ピクセル(1px)分の走査時間βと、を示している。1ピクセル分の走査時間βは、走査部50の共振周波数に基づいて定められる。例えば、共振周波数を下げると、走査部50の走査速度が遅くなるので、1ピクセル分の走査時間βは長くなる。
【0035】
ところで、蛍光体21~23には、応答時間が存在する。例えば、図5に示すように、蛍光体21~23へのレーザ光の入射を開始した後、蛍光体21~23から出射される励起光の輝度が実質点灯輝度(例えば、最大輝度の90%)に上昇するまでの立ち上がり時間を応答時間αとして定義することができる。なお、蛍光体21~23には、蛍光体21~23へのレーザ光の入射を停止した後、蛍光体21~23から出射される励起光の輝度が実質消灯輝度(例えば、最大輝度の10%)に低下するまでの立ち下がり時間である残光時間γも存在する。
【0036】
図6に示すように、蛍光体21~23の応答時間αが、走査部50の1ピクセル分の走査時間βよりも長い場合が考えられる。この場合は、蛍光体21~23へのレーザ光の入射を開始した後、蛍光体21~23から出射される励起光の輝度が実質点灯輝度まで上昇する前に走査時間βが終わり、蛍光体21~23へのレーザ光の入射が停止される可能性がある。このような現象が、例えば、細い線や点を描画した際に発生すると、画像の表示輝度やコントラストが低下する。
【0037】
そこで、本実施例の車両用表示装置1では、蛍光体21~23の応答時間αに基づいて、走査部50の走査速度を定める。例えば、走査部50の画像の1ピクセルを通過する時間、つまり、1ピクセル分の走査時間βを、蛍光体21~23の応答時間αよりも長くする。このようにすると、蛍光体21~23の応答時間αに起因する表示輝度やコントラストの低下を抑制することが可能となる。
【0038】
複数の蛍光体21~23の応答時間αが異なる場合は、最も応答時間αの長い蛍光体21~23を基準とし、その応答時間αよりも長くなるように1ピクセル分の走査時間βを定めることが好ましい。また、被視感度特性の高い励起光を出力する蛍光体21~23を基準とし、その応答時間αよりも長くなるように1ピクセル分の走査時間βを定めるようにしてもよい。例えば、出力する励起光が赤色、青色、緑色の場合、比視感度特性は、赤色:青色:緑色=3:1:6となるため、緑色の励起光を出力する第1蛍光体21を基準とし、その応答時間αよりも長くなるように1ピクセル分の走査時間βを定める。また、複数の蛍光体21~23の応答時間αの平均値を求め、その平均値よりも長くなるように1ピクセル分の走査時間βを定めるようにしてもよい。
【0039】
走査部50をラスタースキャン方式で共振駆動する場合、1ピクセル分の走査時間βは一定とはならない。つまり、走査部50の水平走査は、正弦波の軌跡となり、その走査速度は水平位置に応じて変化する。具体的には、水平走査軌跡の中央付近では走査速度が速くなり、両端側では走査速度が遅くなる。従って、1ピクセル分の走査時間βの最小値E(水平走査軌跡の中央付近の走査時間β)を基準とし、この最小値Eを蛍光体21~23の応答時間αよりも長くすることが好ましい。なお、1ピクセル分の走査時間βの最小値Eは、以下のように求めることができる。
【0040】
図7に示すように、走査部50の走査軌跡SKの水平振幅をA(m)、水平画素数をB(ピクセル)、水平共振周波数をf(Hz)とし、水平走査軌跡の中心位置0から正弦波の軌道で走査部50の走査を開始させる。
走査開始後、時間t(sec)の水平位置X(m)は、下記の式で表される。
X=A×sin(2πf×t)
走査速度C(m/sec)は、下記の式で表される。
C=A×2πf×cos(2πf×t)
走査速度Cの最高値Cmaxは、下記の式で表される。
Cmax=A×2πf
一方、1ピクセルの水平長D(m/pixel)は、下記の式で表される。
D=2×A/B
1ピクセル分の走査時間βの最小値E(sec)は、下記の式で表される。
E=D/Cmax=1/(B×πf)
【0041】
図8は、1ピクセル分の走査時間β(共振周波数f)と表示輝度との関係を示す図である。なお、基準となる共振周波数fを30kHz、蛍光体21~23の応答時間αを130nsec、水平解像度を100ピクセルとした。
【0042】
図8に示すように、走査部50の走査速度を遅くし、1ピクセルの走査時間βを長くすることで、蛍光体21~23の応答時間αに起因する表示輝度の低下を抑制できる。具体的に説明すると、基準となる共振周波数fを30kHzとすると、1ピクセルの走査時間βが蛍光体21~23の応答時間αと略同じであり、表示輝度は最大輝度の約40%であった。これに対して、共振周波数fを15kHzとし、1ピクセルの走査時間βを蛍光体21~23の応答時間αの1.5倍(約200nsec)にしたところ、表示輝度は最大輝度の約70%となった。また、共振周波数fをさらに下げ、蛍光体21~23から出射される励起光の輝度が実質点灯輝度(例えば、最大輝度の90%)に上昇するまでの立ち上がり時間を蛍光体21~23の応答時間αの2倍(約260nsec)にしたところ、表示輝度は最大輝度の約80%となった。また、共振周波数fをさらに下げ、1ピクセルの走査時間βを蛍光体21~23の応答時間αの3倍(約390nsec)にしたところ、表示輝度は最大輝度の約90%となった。
【0043】
従って、走査部50の1ピクセルの走査時間βは、好ましくは、蛍光体21~23の応答時間の1.5倍以上である。さらに好ましい走査時間βは、蛍光体21~23の応答時間の2倍以上である。さらに好ましい走査時間βは、蛍光体21~23の応答時間の3倍以上である。
【0044】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0045】
上述した実施例では、1ピクセルの走査時間βを蛍光体21~23の応答時間αと残光時間γを合計した時間に基づいて定めてもよい。例えば、応答時間αと残光時間γを合計した時間を総応答時間δとしたとき、1ピクセルの走査時間βが総応答時間δよりも長く設定する構成でもよい。走査時間βが総応答時間δよりも長く設定されていれば、走査時間βを応答時間αの2倍に設定したときの表示輝度が期待できる。
【0046】
例えば、前述した実施例では、ラスタースキャン方式で駆動される走査部において本発明の適用例を示したが、リサージュスキャン方式で駆動される走査部においても本発明の適用は可能である。また、前述した実施例の車両用表示装置は、前照灯(ロードプロジェクション装置)であったが、本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置などの車両用表示装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用表示装置
11 第1光源
12 第2光源
13 第3光源
21 第1蛍光体
22 第2蛍光体
23 第3蛍光体
25 コリメータレンズ
31 第1ダイクロイックミラー
32 第2ダイクロイックミラー
33 第3ダイクロイックミラー
40 集光レンズ
50 走査部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8