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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167317
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/50 20160101AFI20231116BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20231116BHJP
   F02M 26/53 20160101ALI20231116BHJP
   F02M 26/46 20160101ALI20231116BHJP
   F02M 26/47 20160101ALI20231116BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20231116BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F02M26/50 321
F02M26/06 311
F02M26/53
F02M26/46 A
F02M26/47 C
F02B37/00 301G
F02B37/00 302F
F02D35/00 368
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078397
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 智也
【テーマコード(参考)】
3G005
3G062
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA25
3G005GA02
3G005GB26
3G005GC07
3G005HA12
3G005JA25
3G005JA30
3G005JA41
3G062AA03
3G062AA05
3G062DA02
3G062EA05
3G062EA06
3G062EA11
3G062EA12
3G062EB15
3G062ED11
3G062GA02
3G062GA03
3G062GA17
(57)【要約】
【課題】排気センサのセンシング性能を損なうことなく、センサ素子の凝縮水の被水を防止して、センサ素子の急冷割れを防止することが可能な排気装置を提供する。
【解決手段】排気装置1は、タービン42の下流側とコンプレッサ41の上流側とにおいて、排気管18と吸気管15とを連通する第1連通路70と、第1連通路70に介装され、コンプレッサ41の下流側と上流側との圧力差により負圧を生成するエジェクタ73と、第1連通路70と排気管18との接続部と、エジェクタ73との間において、第1連通路70に配設されるLAFセンサ19とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気管に設けられるタービン、及び、吸気管に設けられ、前記タービンと軸で接続されたコンプレッサを有し、排気のエネルギーを利用して吸入空気を過給する過給機と、
前記タービンの下流側と前記コンプレッサの上流側とにおいて、前記排気管と前記吸気管とを連通する第1連通路と、
前記第1連通路に介装され、負圧を生成する負圧生成手段と、
前記第1連通路と前記排気管との接続部と、前記負圧生成手段との間において、前記第1連通路に配設される排気センサと、を備えることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記負圧生成手段は、前記コンプレッサの下流側と連通される第2連通路と接続され、前記コンプレッサの下流側と上流側との圧力差により負圧を生成するエジェクタである
ことを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記第1連通路は、前記排気管の上部に凸状に形成された副室を介して、前記排気管に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の排気装置。
【請求項4】
前記コンプレッサの下流側と前記負圧生成手段とを連通する前記第2連通路に介装され、該第2連通路を開閉するバルブと、
前記バルブの開閉を制御するコントロールユニットと、を備え、
前記コントロールユニットは、前記第1連通路を流れる排気の流量が、所定の流量を超えないように、前記バルブの開度を制御することを特徴とする請求項3に記載の排気装置。
【請求項5】
前記エンジンから前記排気管に排出された排気の一部を前記エンジンの吸気管に再循環させるEGR装置を備え、
前記コントロールユニットは、前記第1連通路を通して再循環される排気の量に応じて、前記EGR装置により再循環される排気の量を減少させることを特徴とする請求項4に記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの排気を排出する排気管(排気通路)には、例えば、LAF(Linear Air-Fuel ratio)センサや、Oセンサ、NOxセンサ等の排気センサが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。LAFセンサは、排気(排出ガス)中の酸素濃度と未燃ガス濃度から燃焼空燃比を検出する。Oセンサは、排気中の酸素濃度をオン、オフ的に検出する。また、NOxセンサは、排気中のNOx濃度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-157264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの排気中には、ガソリン等の燃焼により生じた水分(水蒸気)が多く含まれる。そのため、排気管(排気通路)内で、排気中の水分(水蒸気)が凝縮して凝縮水が生成される。
【0005】
一方、上述した排気センサでは、センサ素子として、例えば、数百度の高温状態で活性化するジルコニア等が用いられる。そのため、高温状態のセンサ素子に凝縮水がかかると(被水すると)、センサ素子が急冷により割れるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、排気センサのセンシング性能を損なうことなく、センサ素子の凝縮水の被水を防止して、センサ素子の急冷割れを防止することが可能な排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る排気装置は、エンジンの排気管に設けられるタービン、及び、吸気管に設けられ、タービンと軸で接続されたコンプレッサを有し、排気のエネルギーを利用して吸入空気を過給する過給機と、タービンの下流側とコンプレッサの上流側とにおいて、排気管と吸気管とを連通する第1連通路と、第1連通路に介装され、負圧を生成する負圧生成手段と、第1連通路と排気管との接続部と、負圧生成手段との間において、第1連通路に配設される排気センサとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排気センサのセンシング性能を損なうことなく、センサ素子の凝縮水の被水を防止して、センサ素子の急冷割れを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る排気装置、及び、該排気装置が適用されたエンジンの構成を示す図である。
図2】エンジン回転数と、コンプレッサ下流圧P1、インマニ圧(スロットル下流圧)P0、及び、コンプレッサ上流圧P2それぞれとの関係を示す図である。
図3】第1連通路の流量(流速)の設定方法を説明するための図である。
図4】第1連通路の流量(流速)の設定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
まず、図1を用いて、実施形態に係る排気装置1について説明する。図1は、排気装置1、及び、該排気装置1が適用されたエンジン10の構成を示す図である。
【0012】
エンジン10は、ターボチャージャ40等の過給機を備えた、例えば、水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、エンジン10は、燃料を直接筒内に噴射する筒内噴射エンジン(直噴エンジン)である。エンジン10の出力軸(クランク軸)10aには、例えば、乾式クラッチを介して、マニュアルトランスミッション(図示省略)が接続されている。マニュアルトランスミッション(手動変速機)は、運転者の手動操作を受けて変速段を切り替え、エンジン10からのトルク(駆動力)を変換して出力する。なお、変速機は、自動変速機(ステップAT)や無段変速機(CVT)等でもよい。
【0013】
エンジン10の吸気管(吸気通路)15には、上流側からエアクリーナ16、エアフローメータ14、ターボチャージャ40、インタークーラー46、電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13などが配置されている。
【0014】
ターボチャージャ40は、吸気管15と排気管(排気通路)18との間に配され、過給を行う過給機である。ターボチャージャ40は、排気管18に設けられたタービン42と、吸気管15に設けられ、タービン42と回転軸43で連結されたコンプレッサ41とを有しており、排気のエネルギーでタービン42を駆動することにより、同軸のコンプレッサ41で空気を圧縮する。
【0015】
インタークーラー46は、ターボチャージャ40(コンプレッサ41)で圧縮されて高温になった吸気を熱交換によって冷却するものである。インタークーラー46の下流側には、吸入空気量を調節するスロットルバルブ13が配されている。
【0016】
エンジン10では、エアクリーナ16から吸入され、ターボチャージャ40で過給された空気が、スロットルバルブ13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量(エンジン10に吸入される空気量)は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(インマニ圧)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0017】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポートと排気ポートとが形成されている。各吸気ポート、排気ポートそれぞれには、該吸気ポート、排気ポートを開閉する吸気バルブ、排気バルブが設けられている。吸気バルブを駆動する吸気カム軸と吸気カムプーリとの間には、吸気カムプーリと吸気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する吸気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブのバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブの開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0018】
同様に、排気カム軸と排気カムプーリとの間には、排気カムプーリと排気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する排気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブのバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブの開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0019】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ60により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0020】
インジェクタ12は、デリバリーパイプ61に接続されている。デリバリーパイプ61は、高圧燃料ポンプ60から燃料配管62を通じて圧送されてきた燃料を各インジェクタ12に分配するものである。高圧燃料ポンプ60は、燃料タンク80からフィードポンプ(低圧燃料ポンプ)64により吸い上げられた燃料を、運転状態に応じて高圧(例えば、8~13MPa)に昇圧してデリバリーパイプ61へ供給する。なお、本実施形態では、高圧燃料ポンプ60として、エンジン10のカム軸によって駆動される形式のものを用いた。
【0021】
各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気(排出ガス)は排気管18を通して排出される。
【0022】
排気管(排気通路)18の集合部下流側には、ターボチャージャ40を構成するタービン42が設けられている。ターボチャージャ40には、タービン42の入口側から出口側に排気をバイパスさせるウェストゲート44、及び、ウェストゲート44を開閉するウェストゲートバルブ44aが設けられている。ウェストゲートバルブ44aは、エンジンコントロールユニット(以下「ECU」という)50によって開度が制御されることにより、過給圧を調節する。
【0023】
タービン42の下流には排気浄化触媒(CAT)20が配設されている。排気浄化触媒20としては、例えば、LNT(リーンNOxトラップ)触媒や三元触媒等が用いられる。LNT触媒は、リーンバーン運転時に窒素酸化物(NOx)をトラップし(吸蔵し)、所定のタイミングで空燃比をリッチ化すること(リッチスパイク)により、トラップした(吸蔵した)NOxを無害な窒素(N)に還元する。また、三元触媒は、排気中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)及び窒素(N)に清浄化するものである。
【0024】
排気管18には、エンジン10から排出された排気の一部を、エンジン10の吸気管15(吸気系)に再循環(還流)させる排出ガス再循環装置(以下「EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置」という)75が設けられている。EGR装置75は、エンジン10の排気管18と吸気管15とを連通するEGR配管76、及びEGR配管76上に介装され、排出ガス還流量(EGR量)を調節するEGRバルブ77を有している。
【0025】
EGRバルブ77は、ECU50によって開度が制御(デューティ制御)される。すなわち、ECU50は、エンジン10の運転状態に応じてEGRバルブ77の開閉量を調節することにより、排出ガスの還流量(再循環量)を制御する。なお、EGRバルブ77には、負圧式のものの他、ステッピングモータ等により駆動される形式のものを用いることができる。
【0026】
続いて、排気装置1について説明する。排気装置1は、排気センサ19のセンシング性能を損なうことなく、センサ素子の凝縮水の被水を防止して、センサ素子の急冷割れを防止する機能を有している。そのため、排気装置1は、主として、第1連通路70、副室71、第2連通路72、エジェクタ73、電磁バルブ74、及び、ECU50等を備えて構成されている。
【0027】
第1連通路(バイパス通路)70は、タービン42の下流側かつ排気浄化触媒20の下流側とコンプレッサ41の上流側とにおいて、排気管(排気通路)18と吸気管(吸気通路)15とを連通する。第1連通路70は、排気管18の上方に配設することが好ましい。また、第1連通路70は、排気管18の上部(上面)に凸状に形成された副室71を介して、排気管18に接続されている。副室71を介して排気を吸引することにより、第1連通路70に凝縮水が流れ込むことを抑制する(流れ込む凝縮水量を調節する)。
【0028】
第1連通路70の吸気管15側の端部付近には、負圧を生成するエジェクタ73(特許請求の範囲に記載の負圧生成手段に相当)が介装されている。エジェクタ73には、コンプレッサ41の下流側と連通される第2連通路72が接続されており、コンプレッサ41の下流側と上流側との圧力差により(ベンチュリ効果を利用して)負圧を生成する。エジェクタ73により生成される負圧によって、排気管18から第1連通路70に排気が吸引される。
【0029】
ここで、図2に、エンジン回転数と、コンプレッサ下流圧P1、インマニ圧(スロットル下流圧)P0、及び、コンプレッサ上流圧P2それぞれとの関係を示す。アイドリング時であってもターボチャージャ40は回転(過給)しており、コンプレッサ下流圧P1は大気圧より高く、かつ、コンプレッサ下流圧P1>コンプレッサ上流圧P2となる。そのため、エジェクタ73は、アイドリング領域から(全運転領域において)、負圧を生成して、排気を吸引する(第1連通路70に排気を流す)ことができる。
【0030】
排気センサ19は、第1連通路70と排気管18との接続部と、エジェクタ73との間において、第1連通路70に配設される(取り付けられる)。よって、排気センサ19は、エジェクタ73によって排気管18から第1連通路70に吸引された排気から、例えば、燃焼空燃比等を検出する。
【0031】
本実施形態では、排気センサ19として、燃焼空燃比をリニアに検出することのできるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)を用いた。LAFセンサ19は、加熱したジルコニア固体電解質(センサ素子)に電圧を印加すると、空燃比が薄いとき(A/F>14.7)には排気中の酸素濃度に応じ、濃いとき(A/F<14.7)には未燃ガス濃度に応じた酸素イオン電流が発生することを利用し、排気中の酸素濃度、未燃ガス濃度に応じた電流値を出力として得るセンサである。ジルコニア固体電解質(センサ素子)は、LAFセンサ19の先端部に、複数の貫通孔が形成された円筒状の素子カバーに覆われた状態で取り付けられる。素子カバー等については公知のものを用いることができる。なお、排気センサ19としては、例えば、空燃比をオン-オフ的に検出するOセンサやNOxセンサ等を用いてもよい。
【0032】
コンプレッサ41の下流側とエジェクタ73とを連通する第2連通路72には、該第2連通路72を開閉する電磁バルブ(開閉弁)74が介装されている。電磁バルブ74の開閉(開度)は、ECU50(特許請求の範囲に記載のコントロールユニットに相当)によって制御される。
【0033】
ECU50は、第1連通路70を流れる排気の流量(流速)が、所定の流量(流速)を超えないように、電磁バルブ74の開度を制御する。また、ECU50は、第1連通路70を通して再循環(還流)される排気の量に応じて、EGRバルブ77の開度を調節し、EGR装置75により再循環(還流)される排気の量を減少させる(調節する)。
【0034】
第1連通路70を流れる排気の量(凝縮水の量)を調節するために、エジェクタ73の効率(流量)と第1連通路70の管径(配管径)とが設定される。ここで、図3及び図4を併せて用いて、第1連通路70の流量(流速)の設定方法について説明する。図3及び図4は、第1連通路70の流量(流速)の設定方法を説明するための図である。なお、図3図4の横軸は過給圧(≒排気量)であり、縦軸は排気リターン量(第1連通路70の流量(流速)である。
【0035】
LAFセンサ(排気センサ)19がセンシングに必要とする排気の流量(流速)をV1とし、第1連通路70内が100%凝縮水に満たされたとしてもセンサ素子に凝縮水がかからない(被水しない)流量(流速)、すなわち、センサ素子を覆う素子カバーの中に凝縮水が入らない流量(流速)をV2とした場合、全運転領域において、「V1<第1連通路70の流量(流速)<V2」の関係が成立するように、エジェクタ73の効率、及び、第1連通管70の管径が設定される。なお、流量(負圧)が同じ場合、管径が大きく(太く)なるほど流速が遅くなり、管径が小さく(細く)なるほど流速が速くなる。よって、管径が決まると、第1連通管70を流れる排気の流量と流速とは比例する。
【0036】
ここで、エジェクタ効率と管径の設定により、図3に示されるように、全運転領域において、「V1<第1連通路70の流量(流速)<V2」の関係が成立する場合には、電磁バルブ74を省略することができる(設ける必要が無い)。第1連通路70の管径は、アイドリング領域からセンシングできるように、かつ、センサ素子が被水しないように、例えば、排気管18の管径の1/4程度に設定することが好ましい。
【0037】
一方、図4に示されるように、全運転領域では、「V1<第1連通路70の流量(流速)<V2」の関係が成立しない場合、電磁バルブ74を設けて、流量(流速)を制御(抑制)する。すなわち、V2を超えない様に、電磁バルブ74の開度を絞り、エジェクタ吸引量(エジェクタ73で吸引する排気流量)を減少させる。
【0038】
その際に、ECU50は、例えば、エンジン回転数、過給圧(トルク)に基づいて、コンプレッサ上流圧P2を演算により推定するとともに、コンプレッサ下流圧P1(インマニ圧力等)をセンサ(バキュームセンサ30等)で検出する。そして、ECU50は、P1とP2との圧力差に基づいて(圧力差が所定のしきい値を超えた場合に)、電磁バルブ74の開度を絞ることにより、負圧(すなわち流量)をコントロールする(下げる)。なお、電磁バルブ74としては、例えば、デューティソレノイド等が好適に用いられる。
【0039】
なお、上述したエアフローメータ14、LAFセンサ19、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサが取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。カム角センサ及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。
【0040】
これらのセンサは、ECU50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダルの開度(操作量)を検出するアクセル開度センサ36、及び、外気温度を検出する外気温センサ37等の各種センサも接続されている。
【0041】
一方、ECU50は、例えばCAN(Controller Area Network)100を介して、他のコントロールユニット(例えば、TCUやVDCU等)と相互に通信可能に接続されている。
【0042】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットルバルブ13(電動モータ)を駆動するモータドライバ等を備えている。さらに、ECU50は、電磁バルブ74、及び、ウェストゲートバルブ44を駆動するドライバ等も備えている。
【0043】
ECU50では、カム角センサの出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力からエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管負圧、アクセルペダル開度、混合気の空燃比、外気温度、及び、エンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、スロットルバルブ13やウェストゲートバルブ44等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
【0044】
特に、ECU50は、上述したように、電磁バルブ74の開度、及び、EGRバルブ77の開度を制御する。すなわち、ECU50は、第1連通路70を流れる排気の流量(流速)が、所定の流量(流速)V2を超えないように、電磁バルブ74の開度を制御する。また、ECU50は、第1連通路70を通して再循環(還流)される排気の量に応じて、EGRバルブ77の開度を調節し、EGR装置75により再循環(還流)される排気の量を減少させる(調節する)。なお、これらの制御方法については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を詳細する。
【0045】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、排気管18と吸気管15とを第1連通路70で連通するとともに、該第1連通路70にエジェクタ73を介装し、負圧を生成して排気管18の排気を第1連通路70に吸引する構成とし、その第1連通路70にLAFセンサ(排気センサ)19を配設したので、第1連通路70を流れる排気の流量(流速)を調節して、LAFセンサ19のセンサ素子の被水を防止することができる。その結果、LAFセンサ(排気センサ)19のセンシング性能を損なうことなく、LAFセンサ(排気センサ)19のセンサ素子の被水を防止して、センサ素子の急冷割れを防止することが可能となる。
【0046】
本実施形態によれば、負圧生成手段として、コンプレッサ41の下流側と上流側との圧力差により負圧を生成するエジェクタ73を用いた。そのため、エンジン10の運転状態にかかわらず(全運転領域において)、排気管18から排気を吸引することができる(センシング性能を確保できる)。
【0047】
本実施形態によれば、第1連通路70が、排気管18の上部に凸状に形成された副室71を介して、排気管18に接続されている。そのため、凝縮水が第1連通路70に流れ込むことを効果的に抑制できる。
【0048】
本実施形態によれば、第2連通路72に介装され、該第2連通路72を開閉する電磁バルブ74を備え、第1連通路70を流れる排気の流量が、所定の流量(V2)を超えないように、電磁バルブ74の開度が制御される。そのため、LAFセンサ19(センサ素子)が被水しないように(すなわち、上記流量(流速)V2を超えないように)第1連通路70の排気の流量(流速)を調節することができる。
【0049】
本実施形態によれば、第1連通路70を通して再循環される排気の量に応じて、EGR装置75により再循環される排気の量が減少される。そのため、エンジン10の燃焼悪化を防止することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をガソリンエンジン車に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、例えば、エンジンと電動モータとを駆動力源として備えるハイブリッド車(HEV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)等にも適用することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、過給機40としてターボチャージャを用いたが、過給機はターボチャージャに限られることなく、例えば、スーパーチャージャ等を用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、電磁バルブ74として、ECU50によって電気的にコントロールされるタイプのものを用いたが、このようなタイプのものに代えて、例えば、機械式のバルブを用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 排気装置
10 エンジン
13 電子制御式スロットルバルブ
15 吸気管(吸気通路)
18 排気管(排気通路)
19 LAFセンサ(排気センサ)
20 排気浄化触媒
30 バキュームセンサ
33 クランク角センサ
40 ターボチャージャ
41 コンプレッサ
42 タービン
43 回転軸
46 インタークーラー
50 ECU
70 第1連通路
71 副室
72 第2連通路
73 エジェクタ(負圧生成手段)
74 電磁バルブ
75 EGR装置
76 EGR配管
77 EGRバルブ
図1
図2
図3
図4