(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167321
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】溶接ビードの監視方法、溶接ビードの監視装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/095 20060101AFI20231116BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20231116BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
B23K9/095 515A
B23K31/00 K
B23K26/00 P
B23K26/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078409
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】今城 貴徳
(72)【発明者】
【氏名】椋田 雄
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA34
4E168BA35
4E168BA81
4E168BA83
4E168CA00
4E168CA06
4E168CA11
4E168CA15
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB22
4E168CB24
4E168FB01
4E168KA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶接ビードの形状不良を早期にかつ簡便に発見することができる方法を提供する。
【解決手段】コンピュータが、熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する、取得ステップと、コンピュータが、撮影画像から溶接ビードの輪郭を検出する、検出ステップと、コンピュータが、溶接ビードの輪郭に基づいて、溶接ビードの形状指標を抽出する、抽出ステップと、コンピュータが、溶接ビードの形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定する、判定ステップとを含むことを特徴とする溶接ビードの監視方法。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する、取得ステップと、
コンピュータが、前記撮影画像から前記溶接ビードの輪郭を検出する、検出ステップと、
コンピュータが、前記溶接ビードの輪郭に基づいて、当該溶接ビードの形状指標を抽出する、抽出ステップと、
コンピュータが、前記溶接ビードの形状指標に基づいて、当該溶接ビードの形状不良の発生を判定する、判定ステップと
を含むことを特徴とする溶接ビードの監視方法。
【請求項2】
前記取得ステップでは、溶融池を更に撮影した前記撮影画像を取得し、
前記抽出ステップでは、前記溶融池の先端から予め定められた距離以上離れた位置における前記溶接ビードの形状指標を抽出することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項3】
前記取得ステップでは、前記溶接ビードの温度分布を更に取得し、
前記抽出ステップでは、前記温度分布に基づいて、前記予め定められた距離を特定することを特徴とする請求項2に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項4】
前記取得ステップでは、前記溶接ビードの温度分布を更に取得し、
前記抽出ステップでは、前記温度分布に基づいて特定される所定の範囲内の温度の位置における前記溶接ビードの形状指標を抽出することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項5】
前記抽出ステップでは、前記溶接ビードの形状指標として、当該溶接ビードの幅又は高さを抽出することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項6】
前記抽出ステップでは、前記溶接ビードの形状指標として、複数の溶接ビードの幅又は高さの累積値を抽出することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項7】
前記判定ステップでは、前記複数の溶接ビードの幅の累積値と当該累積値の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、前記溶接ビードの形状不良として、当該複数の溶接ビードの垂れ広がりが発生していると判定することを特徴とする請求項6に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項8】
前記判定ステップでは、前記複数の溶接ビードの高さの累積値と当該累積値の計画値との差分が所定の閾値を下回る場合に、前記溶接ビードの形状不良として、当該複数の溶接ビードの垂れ広がりが発生していると判定することを特徴とする請求項6に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項9】
前記抽出ステップでは、前記溶接ビードの形状指標として、複数の溶接ビードのうちの上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る幅又は高さを抽出することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項10】
前記上層側の溶接ビードは、前記下層側の溶接ビードを下地としてオーバーハング状に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項11】
前記判定ステップでは、前記上層側の溶接ビード及び前記下層側の溶接ビードに跨る幅と当該幅の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、前記溶接ビードの形状不良として、当該溶接ビードの垂れが発生していると判定することを特徴とする請求項10に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項12】
前記判定ステップでは、前記上層側の溶接ビード及び前記下層側の溶接ビードに跨る高さと当該高さの計画値との差分が所定の閾値を下回る場合に、前記溶接ビードの形状不良として、当該溶接ビードの垂れが発生していると判定することを特徴とする請求項10に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項13】
前記取得ステップでは、溶融池を更に撮影した前記撮影画像を取得し、
前記検出ステップでは、前記撮影画像から前記溶融池の輪郭を検出し、
前記抽出ステップでは、前記溶融池の輪郭に基づいて、当該溶融池の形状指標を抽出し、
前記判定ステップでは、前記溶融池の形状指標に基づいて、前記溶接ビードの形状不良の発生を判定することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項14】
前記抽出ステップでは、前記溶融池の形状指標として、当該溶融池の面積を抽出することを特徴とする請求項13に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項15】
前記判定ステップでは、前記溶融池の面積と当該面積の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、前記溶接ビードの形状不良として、当該溶接ビードの垂れが発生していると判定することを特徴とする請求項14に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項16】
前記抽出ステップでは、前記溶融池の形状指標として、当該溶融池の形状を抽出することを特徴とする請求項13に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項17】
前記判定ステップでは、前記溶融池の形状と円形との乖離度合いが所定の基準を上回る場合に、前記溶接ビードの形状不良として、当該溶接ビードの垂れが発生していると判定することを特徴とする請求項16に記載の溶接ビードの監視方法。
【請求項18】
熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する取得部と、
前記撮影画像から前記溶接ビードの輪郭を検出する検出部と、
前記溶接ビードの輪郭に基づいて、当該溶接ビードの形状指標を抽出する抽出部と、
前記溶接ビードの形状指標に基づいて、当該溶接ビードの形状不良の発生を判定する判定部と
を備えることを特徴とする溶接ビードの監視装置。
【請求項19】
コンピュータに、
熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する機能と、
前記撮影画像から前記溶接ビードの輪郭を検出する機能と、
前記溶接ビードの輪郭に基づいて、当該溶接ビードの形状指標を抽出する機能と、
前記溶接ビードの形状指標に基づいて、当該溶接ビードの形状不良の発生を判定する機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ビードの監視方法、溶接ビードの監視装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の視覚センサにより取得した特徴量と、ビード形状計測器により取得した開先形状及び各層毎のビード形状をリンクさせることによって、平板下向き姿勢でのギャップ溶接の施工結果の良否の判定、また、多層盛溶接においては、予め設定された品質判断基準に基づき次の層の溶接が連続して施工可能か否かの判定を行う溶接作業情報計測装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、開先内に形成された溶接ビードの2次元断面形状を取得する断面読取センサと、断面読取センサで取得した断面形状に基づいて溶接ビードの良否を判定する溶接ビード良否判定手段を備えた、突き合わせ溶接の良否判定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-110388号公報
【特許文献2】特開2008-212944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱エネルギーによって材料を溶融することで形成される溶接ビードについて、垂れや熱変形により形状不良が発生する場合がある。例えば、溶接ビードを繰り返し積層して造形物の形状を作る積層造形において形状不良が発生すると、造形物に要求される性能が満たされなかったり、積層造形が途中で中断されたりする等、品質や生産性が低下することが懸念される。そこで、溶接ビードの形状不良を早期に発見することが要求される。しかしながら、積層造形においては溶接ビードの周辺に開先形状のような監視に都合の良い形状が無い場合も多く、溶接ビードが積層される部位や積層方向によって監視すべき範囲や視野が変わりうる。
【0006】
本発明の目的は、溶接ビードの形状不良を早期にかつ簡便に発見することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、コンピュータが、熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する、取得ステップと、コンピュータが、撮影画像から溶接ビードの輪郭を検出する、検出ステップと、コンピュータが、溶接ビードの輪郭に基づいて、溶接ビードの形状指標を抽出する、抽出ステップと、コンピュータが、溶接ビードの形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定する、判定ステップとを含む溶接ビードの監視方法を提供する。
取得ステップでは、溶融池を更に撮影した撮影画像を取得し、抽出ステップでは、溶融池の先端から予め定められた距離以上離れた位置における溶接ビードの形状指標を抽出してよい。その場合、取得ステップでは、溶接ビードの温度分布を更に取得し、抽出ステップでは、温度分布に基づいて、予め定められた距離を特定してよい。
取得ステップでは、溶接ビードの温度分布を更に取得し、抽出ステップでは、温度分布に基づいて特定される所定の範囲内の温度の位置における溶接ビードの形状指標を抽出してよい。
抽出ステップでは、溶接ビードの形状指標として、溶接ビードの幅又は高さを抽出してよい。
抽出ステップでは、溶接ビードの形状指標として、複数の溶接ビードの幅又は高さの累積値を抽出してよい。その場合、判定ステップでは、複数の溶接ビードの幅の累積値と累積値の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、複数の溶接ビードの垂れ広がりが発生していると判定してよい。判定ステップでは、複数の溶接ビードの高さの累積値と累積値の計画値との差分が所定の閾値を下回る場合に、溶接ビードの形状不良として、複数の溶接ビードの垂れ広がりが発生していると判定してよい。
抽出ステップでは、溶接ビードの形状指標として、複数の溶接ビードのうちの上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る幅又は高さを抽出してよい。その場合、上層側の溶接ビードは、下層側の溶接ビードを下地としてオーバーハング状に配置されていてよい。また、その場合、判定ステップでは、上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る幅と幅の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定してよい。判定ステップでは、上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る高さと高さの計画値との差分が所定の閾値を下回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定してよい。
取得ステップでは、溶融池を更に撮影した撮影画像を取得し、検出ステップでは、撮影画像から溶融池の輪郭を検出し、抽出ステップでは、溶融池の輪郭に基づいて、溶融池の形状指標を抽出し、判定ステップでは、溶融池の形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定してよい。
その場合、抽出ステップでは、溶融池の形状指標として、溶融池の面積を抽出してよい。また、その場合、判定ステップでは、溶融池の面積と面積の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定してよい。
その場合、抽出ステップでは、溶融池の形状指標として、溶融池の形状を抽出してよい。また、その場合、判定ステップでは、溶融池の形状と円形との乖離度合いが所定の基準を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定してよい。
【0008】
また、本発明は、熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する取得部と、撮影画像から溶接ビードの輪郭を検出する検出部と、溶接ビードの輪郭に基づいて、溶接ビードの形状指標を抽出する抽出部と、溶接ビードの形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定する判定部とを備える溶接ビードの監視装置も提供する。
【0009】
更に、本発明は、コンピュータに、熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する機能と、撮影画像から溶接ビードの輪郭を検出する機能と、溶接ビードの輪郭に基づいて、溶接ビードの形状指標を抽出する機能と、溶接ビードの形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定する機能とを実現させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶接ビードの形状不良を早期にかつ簡便に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態における金属積層造形システムの概略構成例を示した図である。
【
図2】本発明の実施の形態における制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における積層計画装置の機能構成例を示した図である。
【
図4】本発明の実施の形態における制御装置の機能構成例を示した図である。
【
図5】積層中のビードの先端部分の撮影画像を示した模式図である。
【
図6】ビードの幅の実測値と計画値との差分の累積値を形状指標として抽出する様子を示す図である。
【
図7】下層側のビードを含めて観察される幅又は高さを抽出する様子を示す図である。
【
図8】(a),(b)は、溶融池を含む撮影画像を示す図である。
【
図9】(a)~(c)は、溶融池の面積又は形状に基づいてビードの形状不良の発生を判定する方法について示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態における積層計画装置の動作例を示したフローチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態における制御装置が実行するモニタリング処理の内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
[金属積層造形システムの構成]
図1は、本実施の形態における金属積層造形システム1の概略構成例を示した図である。
図示するように、金属積層造形システム1は、溶接ロボット(マニピュレータ)10と、CAD装置20と、積層計画装置30と、制御装置50とを備える。また、積層計画装置30は、溶接ロボット10を制御する制御プログラムを、例えばメモリカード等のリムーバブルな記録媒体70に書き込み、制御装置50は、記録媒体70に書き込まれた制御プログラムを読み出すことができるようになっている。
【0014】
溶接ロボット10は、複数の関節を有する腕(アーム)11を備え、制御装置50が読み込んだ制御プログラムに従って動作することで溶接作業を行う。また、溶接ロボット10は、腕11の先端に手首部12を介して、積層造形物100を造形するための溶接トーチ13を有している。そして、金属積層造形システム1の場合、溶接ロボット10は、軟鋼製の溶加材(ワイヤ)14を溶融しながら、溶接トーチ13を移動させて、積層造形物100を製造する。具体的には、溶接トーチ13は、溶加材14を供給しつつ、シールドガスを流しながらアークを発生させて溶加材14を溶融及び固化し、母材90上に複数層の溶接ビード(以下、単に「ビード」という)101を積層して積層造形物100を製造する。ここで、ビード101は、TIG(Tungsten Inert Gas)やレーザで溶加材14を溶融して形成したものでもよく、ガスメタルアーク溶接にて消耗式電極としての溶加材14を溶融して形成したものでもよい。その意味で、ビード101は、熱エネルギーによって材料を溶融することで形成された溶接ビードの一例である。また、溶接ロボット10は、この他に、溶加材14を送給する送給装置等も含むが、これについては説明を省略する。
【0015】
また、溶接ロボット10は、腕11の先端にカメラ15を備える。カメラ15は、溶融池等、積層しているビード101の先端側を撮像できれば、如何なるものでもよい。例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いたデジタルカメラでもよいし、アナログカメラでもよい。また、撮像時のノイズを防止する観点からフィルタを組み合わせたものでもよい。更に、カメラ15は、温度分布も併せて計測できる赤外線カメラであってもよい。尚、カメラ15は、図のように溶接トーチ13の運棒方向前方に設置すると、造形の進行に合わせて常に溶融池を含むビード101の画像を連続して取得し続けることができる。しかしながら、カメラ15の設置位置はこれに限らず、例えば溶接トーチ13の運棒方向に対して真横の位置としてもよい。
【0016】
CAD装置20は、コンピュータを用いて造形物の設計を行うと共に、設計によって得られた三次元データ(以下、「三次元CADデータ」という)を保持する機能を有している。
【0017】
積層計画装置30は、CAD装置20が保持する三次元CADデータに基づいて積層造形物100の積層計画を作成する。つまり、溶接トーチ13の軌道を決定すると共に、溶接ロボット10が溶接する際の溶接条件を決定する。そして、この決定した軌道に沿って決定した溶接条件でビード101を形成するように溶接ロボット10を制御するための制御プログラムを生成し、この制御プログラムを記録媒体70に出力する。
【0018】
制御装置50は、記録媒体70から制御プログラムを読み込んで保持する。そして、この制御プログラムを動作させることにより、積層計画装置30で作成された積層計画に従って、つまり、積層計画装置30で決定された軌道に沿って、積層計画装置30で決定された溶接条件でビード101を形成するよう、溶接ロボット10を制御する。
【0019】
尚、ここでは、溶接ロボット10は、母材90上にビード101を積層して積層造形物100を製造するものとしたが、開先内の多層盛溶接や肉盛溶接を行うものであってもよい。
【0020】
[制御装置のハードウェア構成]
図2は、制御装置50のハードウェア構成例を示す図である。
図示するように、制御装置50は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現され、演算手段であるCPU51と、記憶手段であるメインメモリ52及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)53とを備える。ここで、CPU51は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行し、制御装置50の各機能を実現する。また、メインメモリ52は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD53は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
また、制御装置50は、外部との通信を行うための通信I/F54と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構55と、キーボードやマウス等の入力デバイス56と、記録媒体70に対してデータの読み書きを行うためのドライバ57とを備える。尚、
図2は、制御装置50をコンピュータシステムにて実現した場合のハードウェア構成を例示するに過ぎず、制御装置50は図示の構成に限定されない。
【0021】
また、
図2に示したハードウェア構成は、積層計画装置30のハードウェア構成としても捉えられる。但し、積層計画装置30について述べるときは、
図2のCPU51、メインメモリ52、磁気ディスク装置53、通信I/F54、表示機構55、入力デバイス56、ドライバ57をそれぞれ、CPU31、メインメモリ32、磁気ディスク装置33、通信I/F34、表示機構35、入力デバイス36、ドライバ37と表記するものとする。
【0022】
[積層計画装置の機能構成]
図3は、本実施の形態における積層計画装置30の機能構成例を示した図である。図示するように、本実施の形態における積層計画装置30は、CADデータ取得部41と、CADデータ分割部42と、積層計画部43と、制御プログラム生成部44と、計画値取得部45と、情報出力部46とを備える。
【0023】
CADデータ取得部41は、CAD装置20から、積層造形物100の三次元形状を表す三次元CADデータを取得する。
CADデータ分割部42は、CADデータ取得部41が取得した三次元CADデータを複数の層に分割(スライス)することで、各層の形状をそれぞれが表す複数の層形状データを生成する。その際、CADデータ分割部42は、三次元CADデータを複数の層に分割し易い内部形式に変換してもよい。
【0024】
積層計画部43は、CADデータ分割部42が生成した複数の層形状データの各層の高さ及び幅に合ったビード101を溶着する際の溶接条件やアーク狙い位置を含む積層計画を生成する。このような積層計画を生成するには、ビード101の高さや幅の他、ビード101の断面形状を近似するモデルが必要である。これらは測定実験の実測値や、溶着金属量の断面積から計算して推定したものでもよい。本実施の形態では、溶接速度やワイヤ送給速度を数条件振って溶着量を変えつつ、ビードオンプレート溶接や鉛直に数層の積層を行い、各々の条件にて1層当たりの高さや幅を測定した結果をデータベース化する。そして、積層する際に積層する所望の高さや幅を満たす溶接速度と溶着量を選択し、測定した結果から各層の推定形状を随時計算し、アーク狙い位置を決める。尚、溶着断面の計算は溶加材14の材質や、既に積層した部位の形状の状態によって計算方法を変えるようにしてもよい。この計算方法によって造形物を内包する積層を計画していく。
【0025】
制御プログラム生成部44は、積層計画部43が生成した積層計画に従って溶接を行うように溶接ロボット10を制御するための制御プログラムを生成する。
計画値取得部45は、積層計画部43が生成した積層計画から計画値を取得する。計画値には、ビード101の幅又は高さの計画値、ビード101の幅又は高さの累積値の計画値、下層側のビード101を含めて観察される幅又は高さの計画値、溶融池の面積の計画値等がある。
情報出力部46は、制御プログラム生成部44が生成した制御プログラムと、計画値取得部45が取得した計画値とを含む情報を記録媒体70に出力する。
【0026】
尚、ここでは、計画値取得部45が、積層計画部43から計画値を取得し、計画値を制御プログラムとは別に情報出力部46に通知するようにしたが、これには限らない。例えば、計画値取得部45は、制御プログラム生成部44が生成した制御プログラムから計画値を取得し、計画値を制御プログラムとは別に情報出力部46に通知するようにしてもよい。或いは、計画値取得部45は、積層計画部43から計画値を取得し、計画値を制御プログラムに含めて情報出力部46に通知するようにしてもよい。
【0027】
[制御装置の機能構成]
図4は、本実施の形態における制御装置50の機能構成例を示した図である。図示するように、本実施の形態における制御装置50は、情報取得部61と、制御プログラム記憶部62と、制御プログラム実行部63と、計画値記憶部64と、撮影画像受信部65と、輪郭検出部66と、形状指標抽出部67と、形状不良判定部68とを備える。
【0028】
情報取得部61は、記録媒体70に記録された情報を取得する。この情報には、制御プログラムと、計画値とが含まれる。
制御プログラム記憶部62は、情報取得部61が取得した情報のうち、制御プログラムを記憶する。
制御プログラム実行部63は、制御プログラム記憶部62に記憶された制御プログラムを読み出して実行する。これにより、制御プログラム実行部63は、積層計画部43が生成した積層計画に従ってビード101を形成するよう、溶接ロボット10を制御する。
計画値記憶部64は、情報取得部61が取得した情報のうち、計画値を記憶する。
【0029】
撮影画像受信部65は、カメラ15からビード101を撮影した撮影画像を受信する。ここで、撮影画像は、溶融池を含めて撮影した撮影画像であってよい。
本実施の形態では、溶接ビードを撮影した撮影画像を取得する取得部の一例として、撮影画像受信部65のこの機能を設けている。また、本実施の形態では、溶融池を更に撮影した撮影画像を取得する取得部の一例として、撮影画像受信部65のこの機能を設けている。
【0030】
また、撮影画像受信部65は、カメラ15が赤外線カメラである場合は、カメラ15からビード101の温度分布情報を受信してもよい。
本実施の形態では、溶接ビードの温度分布を更に取得する取得部の一例として、撮影画像受信部65のこの機能を設けている。
【0031】
輪郭検出部66は、撮影画像受信部65が受信した撮影画像からビード101の輪郭を検出する。輪郭検出部66は、二値化処理やエッジ抽出処理等、公知の画像処理により、ビード101の輪郭を検出するとよい。その際、輪郭検出部66は、二値化処理を、例えば、「菅泰雄、常磐琢也、『溶融池近傍画像の解析による溶接線位置の検出』、溶接学会全国大会講演概要 第57集(’95-10)、p.380-381、https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11144209_po_ART0003980918.pdf?contentNo=1&alternativeNo=」に記載されたように行うとよい。輪郭検出部66は、エッジ抽出処理を、例えば、「芦田強、岡本陽、尾▲崎▼圭太、飛田正俊、山下隆義、『溶接自動化のための画像センサ技術の開発(ディープラーニングによる画像認識)』、神戸製鋼技報/Vol. 68 No. 2(Dec. 2018)、p.63-66、https://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/68_2/063-066.pdf」に記載された、曲線フィッティングによるエッジ検出によって行うとよい。また、輪郭検出部66は、特開2018-192524号公報に記載された要領で、予めビード101の形状をアノテーションした画像によって構築された機械学習モデルを用いて、ビード101の輪郭を抽出するようにしてもよい。更に、輪郭検出部66は、連続的に撮像された複数フレームの画像を平均化し、平均化された画像からビード101の輪郭を検出してもよい。
本実施の形態では、撮影画像から溶接ビードの輪郭を検出する検出部の一例として、輪郭検出部66のこの機能を設けている。
【0032】
また、輪郭検出部66は、撮影画像受信部65が受信した撮影画像から溶融池の輪郭を検出してもよい。その際、輪郭検出部66は、例えば、「浅井知、『視覚センサによる溶接自動化システムの高機能化と実用化に関する研究』、博士学位論文(大阪大学大学院工学研究科)、p-13、https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/34407/26527_%E8%AB%96%E6%96%87.pdf」に記載された方法で、溶融池の輪郭を検出するとよい。即ち、輪郭検出部66は、撮影画像に対して、A/D変換、画像平滑化、ノイズ低減を行った後、二値化処理にて溶融池領域を抽出するとよい。また、輪郭検出部66は、撮影画像受信部65がカメラ15から温度分布情報を受信した場合は、温度分布情報に基づいて、温度変化が所定の閾値より大きい位置を溶融池の輪郭として検出してもよい。更に、輪郭検出部66は、連続的に撮像された複数フレームの画像を平均化し、平均化された画像から溶融池の輪郭を検出してもよい。
本実施の形態では、撮影画像から溶融池の輪郭を検出する検出部の一例として、輪郭検出部66のこの機能を設けている。
【0033】
形状指標抽出部67は、輪郭検出部66が検出したビード101の輪郭に基づいてビード101の形状指標を抽出する。
本実施の形態では、溶接ビードの輪郭に基づいて、溶接ビードの形状指標を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0034】
ところで、撮影画像が溶融池を含む場合は、溶融池の先端側からビード101の形状指標を抽出すると、溶融金属の流動性からビード101の形状指標の抽出値が安定しない場合がある。
【0035】
その場合、形状指標抽出部67は、ビード101の先端から所定距離だけ離れた位置からビード101の形状指標を抽出してもよい。
図5は、積層中のビード101の先端部分の撮影画像を示した模式図である。尚、この撮影画像は、カメラ15を溶接トーチ13の運棒方向に対して真横に設けて撮影したものである。
図5では、溶接トーチ13が紙面の右側から左側へと移動してきたことを想定している。従って、ビード101の左側の先端に溶加材14が供給されてアーク16が発生し、溶融池102が形成されている。この状態で、形状指標抽出部67は、溶融池102の先端の一例としてのアーク16の中心から所定距離Dだけ離れた部分の高さHを、ビード101の形状指標として抽出してもよい。
尚、形状指標抽出部67は、撮影画像受信部65が受信した温度分布情報に基づいて、この所定距離を決定してもよい。所定距離としては、例えば、溶融金属の凝固点以下で凝固点に近い所定温度の位置までの距離が考えられる。
このようにビード101の先端以外の位置から形状指標を抽出することにより、安定して形状指標を抽出することができる。例えば、溶融金属の凝固点以下で凝固点に近い所定温度の位置はビード101の形状が変化しないので、この位置よりも遠い位置から形状指標を抽出することにより、安定な形状指標の抽出が可能となる。
本実施の形態では、溶融池の先端から予め定められた距離以上離れた位置における溶接ビードの形状指標を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。また、本実施の形態では、温度分布に基づいて、予め定められた距離を特定する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0036】
或いは、形状指標抽出部67は、撮影画像受信部65が受信した温度分布情報に基づいて、ビード101の所定の範囲内の温度の位置を特定してもよい。そして、形状指標抽出部67は、ビード101のこの特定された位置からビード101の形状指標を抽出してもよい。
本実施の形態では、温度分布に基づいて特定される所定の範囲内の温度の位置における溶接ビードの形状指標を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0037】
具体的には、形状指標抽出部67は、ビード101の代表的な形状指標として、ビード101の幅又は高さを抽出するとよい。
本実施の形態では、溶接ビードの形状指標として、溶接ビードの幅又は高さを抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0038】
また、形状指標抽出部67は、形状指標として、複数のビード101の幅又は高さの累積値を併せて抽出してもよい。或いは、形状指標抽出部67は、ビード101の幅又は高さの計画値との差分の複数のビード101又は層についての累積値を更に抽出してもよい。例えば、形状指標抽出部67は、造形物の実績の幅と計画の幅との差分を見るために、撮影画像から抽出されたビード101の幅と計画上のビード101の幅との差分を同一層内で累積してもよい。
図6は、ビード101の幅の実測値と計画値との差分の累積値を形状指標として抽出する様子を示す図である。図では、ビード101-1~101-5の幅をそれぞれt1~t5とし、ビード101-1~101-5の幅の計画値とのずれをΔe1~Δe5としている。この場合、形状指標抽出部67は、Δe1+Δe2+Δe3+Δe4+Δe5を、実測した幅と計画した幅との差分の累積値として抽出してもよい。
このように累積値を抽出することにより、ビード101ごとに見たときには計画値とのずれが小さくても、累積的な影響を見て全体として垂れているかどうか等を判別することができる。例えば、オーバーハング状の壁の積層高さやある層が形成する幅等から全体として垂れているかを推定できる。
本実施の形態では、溶接ビードの形状指標として、複数の溶接ビードの幅又は高さの累積値を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0039】
更に、形状指標抽出部67は、形状指標として、下層側のビード101を含めて観察される幅又は高さを抽出してもよい。
図7は、このような幅又は高さを抽出する様子を示す図である。
図7では、オーバーハング状にビード101を積み上げて壁を形成する場合を例にとっている。この例で、カメラ15aを用いてビード101を上方から観察する場合、形状指標抽出部67は、形状指標として、下層のビード101を含めた場合の幅Laを抽出してもよい。また、カメラ15bを用いてビード101を横から観察する場合、形状指標抽出部67は、形状指標として、下層のビード101を含めた場合の高さLbを抽出してもよい。
このように少なくとも下層側のビード101も含めて観察することにより、下層側のビード101に対する上層側のビード101の垂れ等による相対的な形状変化を捉えることができる。また、オーバーハング状に積層するビード101に適用することにより、形状崩れをいち早く判定して補修等の次工程判断を促すことができる。
本実施の形態では、溶接ビードの形状指標として、複数の溶接ビードのうちの上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る幅又は高さを抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。また、
図7の壁は、上層側の溶接ビードが、下層側の溶接ビードを下地としてオーバーハング状に配置されている造形物の一例である。
【0040】
形状指標抽出部67は、撮像画像が溶融池を含む場合は、輪郭検出部66が検出した溶融池の輪郭に基づいて溶融池の形状指標を抽出してもよい。
本実施の形態では、溶融池の輪郭に基づいて、溶融池の形状指標を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0041】
具体的には、形状指標抽出部67は、溶融池の形状指標として、溶融池の面積又は形状を抽出するとよい。
図8(a),(b)は、溶融池102を含む撮影画像を示す図である。
図8(a)は、溶融池102の輪郭103が正常な形状を有する場合の撮影画像であり、
図8(b)は、溶融池102の輪郭103が歪んだ形状を有する場合の撮影画像である。形状指標抽出部67は、何れの撮影画像においても、輪郭103で囲まれた領域の面積又は形状を、溶融池102の面積又は形状として抽出するとよい。
本実施の形態では、溶融池の形状指標として、溶融池の面積を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。また、本実施の形態では、溶融池の形状指標として、溶融池の形状を抽出する抽出部の一例として、形状指標抽出部67のこの機能を設けている。
【0042】
形状不良判定部68は、形状指標抽出部67が抽出したビード101の形状指標に基づいてビード101の形状不良の発生を判定する。
本実施の形態では、溶接ビードの形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。
【0043】
具体的には、形状不良判定部68は、形状指標抽出部67が抽出したビード101の幅又は高さに基づいてビード101の形状不良の発生を判定する。例えば、形状不良判定部68は、ビード101の幅を、計画値記憶部64に記憶された幅の計画値と比較して、その差分が所定の閾値を上回る場合は、ビード101の垂れが発生したと判定すればよい。形状不良判定部68は、ビード101の高さを、計画値記憶部64に記憶された高さの計画値と比較して、その差分が所定の閾値を下回る場合も同様に、ビード101の垂れが発生したと判定すればよい。
【0044】
また、形状不良判定部68は、複数のビード101の幅又は高さの累積値に基づいて、積層造形物の途中形状が全体的に垂れ広がっているか等を判定してもよい。例えば、形状指標抽出部67が複数のビード101の幅又は高さの累積値を形状指標として抽出していれば、形状不良判定部68は、この幅又は高さの累積値を、計画値記憶部64に記憶された累積値の計画値と比較すればよい。また、形状指標抽出部67がビード101の幅又は高さとその計画値との差分の累積値を形状指標として抽出していれば、形状不良判定部68は、この差分の累積値を、所定の閾値と比較すればよい。そして、形状不良判定部68は、複数のビード101の幅の累積値と累積値の計画値との差分又は複数のビード101の幅とその計画値との差分の累積値が所定の閾値を上回る場合は、複数のビード101の垂れ広がりが発生したと判定すればよい。形状不良判定部68は、複数のビード101の高さの累積値と累積値の計画値との差分又は複数のビード101の高さとその計画値との差分の累積値が所定の閾値を下回る場合も同様に、複数のビード101の垂れ広がりが発生したと判定すればよい。
本実施の形態では、複数の溶接ビードの幅の累積値と累積値の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、複数の溶接ビードの垂れ広がりが発生していると判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。また、本実施の形態では、複数の溶接ビードの高さの累積値と累積値の計画値との差分が所定の閾値を下回る場合に、溶接ビードの形状不良として、複数の溶接ビードの垂れ広がりが発生していると判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。
【0045】
更に、形状不良判定部68は、形状指標抽出部67が形状指標として
図7のように下層側のビード101を含めて観察される幅又は高さを抽出した場合、上記のビード101の垂れを、上層側に溶着したビード101が垂れさがった結果観察される幅又は高さと捉えてもよい。例えば、形状不良判定部68は、下層側のビード101を含めて観察される幅を、計画値記憶部64に記憶された幅の計画値と比較して、その差分が所定の閾値を上回る場合は、ビード101の垂れが発生したと判定すればよい。形状不良判定部68は、下層側のビード101を含めて観察される高さを、計画値記憶部64に記憶された計画値と比較して、その差分が所定の閾値を下回る場合も同様に、ビード101の垂れが発生したと判定すればよい。
本実施の形態では、上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る幅と幅の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。また、本実施の形態では、上層側の溶接ビード及び下層側の溶接ビードに跨る高さと高さの計画幅との差分が所定の閾値を下回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。
【0046】
形状不良判定部68は、形状指標抽出部67が溶融池の形状指標を抽出した場合は、溶融池の形状指標に基づいてビード101の形状不良の発生を判定してもよい。
本実施の形態では、溶融池の形状指標に基づいて、溶接ビードの形状不良の発生を判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。
【0047】
具体的には、形状不良判定部68は、形状指標抽出部67が抽出した溶融池の面積又は形状に基づいてビード101の形状不良の発生を判定する。
図9(a)~(c)は、この場合の判定方法について示す図である。
図9(a)は、ビード101が正常である場合の溶融池102を示す。
図9(b),(c)は、ビード101の垂れが発生した場合の溶融池102を示す。例えば、形状不良判定部68は、溶融池102の面積と、計画値記憶部64に記憶された溶融池102の面積の計画値との差分が、所定の閾値を上回る場合に、ビード101の垂れが発生したと判定すればよい。或いは、形状不良判定部68は、溶融池102の形状が円形から大きく(例えば、所定の基準を超えて)逸脱している場合にも、ビード101の垂れが発生したと判定すればよい。
本実施の形態では、溶融池の面積と面積の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。また、本実施の形態では、溶融池の形状と円形との乖離度合いが所定の基準を上回る場合に、溶接ビードの形状不良として、溶接ビードの垂れが発生していると判定する判定部の一例として、形状不良判定部68のこの機能を設けている。
そして、形状不良判定部68は、ビード101の形状不良が発生していると判定すれば、例えば、溶接ロボット10を停止するように制御プログラム実行部63に指示する。
【0048】
[積層計画装置の動作]
図10は、本実施の形態における積層計画装置30の動作例を示したフローチャートである。
【0049】
積層計画装置30では、まず、CADデータ取得部41が、CAD装置20から三次元CADデータを取得する(ステップ301)。
次に、CADデータ分割部42が、ステップ301で取得された三次元CADデータを複数の層に分割して、層形状データを生成する(ステップ302)。
次に、積層計画部43が、ステップ302で生成された層形状データから積層計画を生成する(ステップ303)。
次に、制御プログラム生成部44が、ステップ303で生成された積層計画に従ってビード101を形成することにより積層造形物100を造形するように溶接ロボット10を制御する制御プログラムを生成する(ステップ304)。
一方、計画値取得部45が、ステップ303で生成された積層計画から、ビード101の形状指標に関する計画値を取得する(ステップ305)。
最後に、情報出力部46が、ステップ304で生成された制御プログラムと、ステップ305で生成された計画値とを記録媒体70に出力する(ステップ306)。
【0050】
[制御装置の動作]
制御装置50では、まず、情報取得部61が、記録媒体70から制御プログラムと計画値とを取得し、制御プログラムを制御プログラム記憶部62に、計画値を計画値記憶部64にそれぞれ記憶する。そして、制御プログラム実行部63が制御プログラム記憶部62に記憶された制御プログラムを読み出してこれを実行する。
その際、制御装置50は、ビード101を形成するように溶接ロボット10を制御しながら、ビード101に形状不良が発生していないかを監視するモニタリング処理を実行する。
【0051】
図11は、このようなモニタリング処理の内容を示したフローチャートである。
【0052】
図示するように、制御装置50では、まず、撮影画像受信部65が、カメラ15から、ビード101を撮影した撮影画像を受信する(ステップ501)。
その際、撮影画像受信部65は、カメラ15から、溶融池を含む撮影画像を受信してもよい。また、撮影画像受信部65は、カメラ15から、撮影画像に加えて、ビード101の温度分布情報を受信してもよい。
【0053】
次に、輪郭検出部66が、ステップ501で受信された撮影画像から、ビード101の輪郭を検出する(ステップ502)。
その際、輪郭検出部66は、ビード101の輪郭に加えて、溶融池の輪郭を検出してもよい。ステップ501でビード101の温度分布情報が受信された場合、輪郭検出部66は、温度変化が所定の閾値より大きい位置を溶融池の輪郭として検出するとよい。
【0054】
次に、形状指標抽出部67は、ステップ502で検出されたビード101の輪郭に基づいて、ビード101の形状指標を抽出する(ステップ503)。その際、形状指標抽出部67は、ビード101の形状指標として、ビード101の幅又は高さ、ビード101の幅又は高さの累積値、ビード101の幅又は高さの計画値との差分の累積値、又は下層側のビード101を含めて観察される幅又は高さを抽出するとよい。ステップ501でビード101の温度分布情報が受信された場合、形状指標抽出部67は、ビード101の所定範囲内の温度の位置から、ビード101の形状指標を抽出するとよい。或いは、形状指標抽出部67は、ビード101の先端から所定距離だけ離れた位置から、ビード101の形状指標を抽出してもよい。
また、形状指標抽出部67は、ステップ502で溶融池の輪郭が検出された場合、溶融池の輪郭に基づいて、溶融池の形状指標を抽出してもよい。その際、形状指標抽出部67は、溶融池の形状指標として、溶融池の面積又は形状を抽出するとよい。
【0055】
最後に、形状不良判定部68は、ステップ503で抽出されたビード101の形状指標に基づいて、ビード101の形状不良を判定する(ステップ504)。例えば、形状不良判定部68は、ステップ503で抽出されたビード101の幅と、計画値記憶部64に記憶された幅の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合、ビード101の形状不良が発生していると判定するとよい。形状不良判定部68は、ステップ503で抽出されたビード101の高さと、計画値記憶部64に記憶された高さの計画値との差分が所定の閾値を下回る場合も、ビード101の形状不良が発生していると判定するとよい。ステップ503でビード101の幅又は高さの累積値、もしくはビード101の幅又は高さの計画値との差分の累積値が抽出された場合も、形状不良判定部68は同様にしてビード101の形状不良の発生を判定するとよい。ステップ503で下層側のビード101を含めて観察される幅又は高さが抽出された場合も、形状不良判定部68は同様にしてビード101の形状不良の発生を判定するとよい。
また、ステップ503で溶融池の形状指標が抽出された場合、形状不良判定部68は、溶融池の形状指標に基づいて、ビード101の形状不良を判定する。例えば、形状不良判定部68は、ステップ503で抽出された溶融池の面積と、計画値記憶部64に記憶された面積の計画値との差分が所定の閾値を上回る場合、ビード101の形状不良が発生していると判定するとよい。形状不良判定部68は、ステップ503で抽出された溶融池の形状が円形から大きく逸脱している場合、ビード101の形状不良が発生していると判定するとよい。
【0056】
[本実施の形態の効果]
本実施の形態では、ビード101の輪郭からビード101の幅又は高さを抽出して監視するようにした。これにより、ビード101の垂れ等の形状不良を容易かつ迅速に検出することが可能となった。
【符号の説明】
【0057】
1…金属積層造形システム、10…溶接ロボット、15…カメラ、20…CAD装置、30…積層計画装置、41…CADデータ取得部、42…CADデータ分割部、43…積層計画部、44…制御プログラム生成部、45…計画値取得部、46…情報出力部、50…制御装置、61…情報取得部、62…制御プログラム記憶部、63…制御プログラム実行部、64…計画値記憶部、65…撮影画像受信部、66…輪郭検出部、67…形状指標抽出部、68…形状不良判定部、70…記録媒体