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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167335
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B41J2/335 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078438
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛司
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065HA11
(57)【要約】
【課題】基板を放熱部材に確実に固定することが可能なサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッドA1は、複数の発熱部41を含む発熱基板1と、発熱基板1に導通する第1基板5と、放熱部材7と、第1基板5を放熱部材7に固定する固定部材8と、を備える。放熱部材7は、第1基板5が固定された第1支持面71を有する。第1支持面71は、開口711を有する。第1基板5は、第1基板5の厚さ方向zに見て開口711に重なる取付孔501を有する。固定部材8は、開口711および取付孔501に挿通される挿通部81と、挿通部81の挿通方向の一方の端部に繋がる塑性変形部(かしめ部82)と、を含む。塑性変形部は、挿通部81の挿通方向に見て挿通部81よりも大きく、且つ、第1基板5および放熱部材7のいずれか一方に係止される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱部を含む発熱基板と、
前記発熱基板に導通する第1基板と、
放熱部材と、
前記第1基板を前記放熱部材に固定する固定部材と、
を備え、
前記放熱部材は、前記第1基板が固定された第1支持面を有し、
前記第1支持面は、開口を有し、
前記第1基板は、前記第1基板の厚さ方向に見て前記開口に重なる取付孔を有し、
前記固定部材は、前記開口および前記取付孔に挿通される挿通部と、前記挿通部の挿通方向の一方の端部に繋がる塑性変形部と、を含み、
前記塑性変形部は、前記挿通方向に見て前記挿通部よりも大きく、且つ、前記第1基板および前記放熱部材のいずれか一方に係止される、
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記放熱部材は、前記開口に繋がる貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記放熱部材を前記厚さ方向に貫通する、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記固定部材は、前記挿通部の前記挿通方向の両端にそれぞれ繋がるかしめ部および係止部を含み、
前記かしめ部は、前記塑性変形部であり、
前記係止部は、前記第1基板および前記放熱部材のいずれか他方に係止され、
前記第1基板および前記放熱部材は、前記かしめ部および前記係止部により挟持される、
請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記発熱基板に導通する第2基板をさらに備え、
前記第1基板は、前記第2基板を介して前記発熱基板に導通する、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記放熱部材は、前記発熱基板が固定された第2支持面をさらに有する、
請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第2基板は、前記第2支持面に支持される、
請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第2支持面は、前記第1支持面に対して傾斜する、
請求項5または請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第1支持面と前記第2支持面との間に凹部が形成されている、
請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記開口は、前記凹部を避けて配置される、
請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記第1基板は、フレキシブル基板と、前記フレキシブル基板を支持する補強板とを備える、
請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記フレキシブル基板は、前記第2基板に導通接合されたコネクタ部を含む、
請求項10に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記放熱部材と前記発熱基板とを接着する発熱基板接着剤と、
前記放熱部材と前記第2基板とを接着する第2基板接着剤と、をさらに備え、
前記発熱基板接着剤と前記第2基板接着剤の各々は、常温硬化性である、
請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記放熱部材と前記第1基板とを接着する第1基板接着剤をさらに備え、
前記第1基板接着剤は、常温硬化性である、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記固定部材は、樹脂を含む、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記塑性変形部は、熱圧着により形成される、
請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記発熱基板は、前記複数の発熱部を支持する基材を含み、
前記基材は、シリコンを含む、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。従来のサーマルプリントヘッドは、基板上に主走査方向に並ぶ複数の発熱部を備える。複数の発熱部は、ジュール熱によって発熱する。発熱部には、プラテンローラによって印刷媒体が押し当てられる。そして、当該発熱部の発熱によって、印刷媒体に印字ドットが形成される。
【0003】
特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドは、複数の発熱部が配置された基板(第1基板)と、ドライブIC等が搭載された基板(第2基板)と、放熱部材と、を備える。ドライブICは、各発熱部への通電を制御し、各発熱部を選択的に発熱させる。ドライブICは、複数のボンディングワイヤによって、第1基板上の配線および第2基板上の配線に接続されている。第1基板および第2基板は、放熱部材に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-166824号公報
【特許文献2】特開2003-220722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のサーマルプリントヘッドにおいては、基板が放熱部材にしっかりと固定されていなければ、次のようなことにより、印字品質を低下させる。たとえば、基板の揺動によって、印刷媒体を適正に発熱部に押し当てられないこと、および、基板から放熱部材への放熱性が低下して、不要な熱の排出ができないことなどである。したがって、印字品質の低下を抑制するには、基板を放熱部材に確実に固定する必要がある。たとえば、特許文献2には、ネジによって、サーマルプリントヘッドの基板を放熱部材に固定する構成が開示されている。しかしながら、ネジのゆるみなどにより、確実な固定には、未だ改善の余地があった。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、基板を放熱部材に確実に固定することが可能なサーマルプリントヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のサーマルプリントヘッドは、複数の発熱部を含む発熱基板と、前記発熱基板に導通する第1基板と、放熱部材と、前記第1基板を前記放熱部材に固定する固定部材と、を備え、前記放熱部材は、前記第1基板が固定された第1支持面を有し、前記第1支持面は、開口を有し、前記第1基板は、前記第1基板の厚さ方向に見て前記開口に重なる取付孔を有し、前記固定部材は、前記開口および前記取付孔に挿通される挿通部と、前記挿通部の挿通方向の一方の端部に繋がる塑性変形部と、を含み、前記塑性変形部は、前記挿通方向に見て前記挿通部よりも大きく、且つ、前記第1基板および前記放熱部材のいずれか一方に係止される。
【発明の効果】
【0008】
本開示のサーマルプリントヘッドによれば、基板を放熱部材に確実に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図2は、図1の平面図において、放熱部材上に配置される各部位(発熱基板、第1基板および第2基板など)を省略した図である。
図3図3は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す側面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドのうちの発熱基板を示す要部平面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
図8図8は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
図9図9は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
図10図10は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
図11図11は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
図12図12は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
図13図13は、第1変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図14図14は、第2変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図15図15は、第3変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図16図16は、第3変形例にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部拡大断面図である。
図17図17は、第4変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のサーマルプリントヘッドの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本開示における「第1」、「第2」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0011】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B(の)上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B(の)上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B(の)上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」を含む。また、「ある方向に見てある物Aがある物Bに重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0012】
図1図6は、一実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA1を示している。サーマルプリントヘッドA1は、発熱基板1、第1基板5、第2基板59、保護接着剤50、複数のドライブIC61、複数のワイヤ62,63,64、保護樹脂65、コネクタ69、放熱部材7、発熱基板接着剤791、第1基板接着剤792,第2基板接着剤793、両面粘着テープ795および複数の固定部材8を備える。説明の便宜上、図1図6において、第1基板5の厚さ方向をz、主走査方向をx、副走査方向をyとする。厚さ方向z、主走査方向xおよび副走査方向yは、互いに直交する。以下の説明において、厚さ方向zの一方を上方、他方を下方ということがある。なお、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上面」および「下面」などの記載は、厚さ方向zにおける各部品等の相対的位置関係を示すものであり、必ずしも重力方向との関係を規定する用語ではない。
【0013】
サーマルプリントヘッドA1は、印刷媒体P1に印字を施すサーマルプリンタPr(図2参照)に組み込まれるものである。サーマルプリンタPrは、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラ91を備える。プラテンローラ91は、サーマルプリントヘッドA1に正対する。印刷媒体P1は、サーマルプリントヘッドA1とプラテンローラ91との間に挟まれ、このプラテンローラ91によって、副走査方向yに搬送される。以下の説明では、副走査方向yにおいて、印刷媒体P1が排出される方向を「下流」という。印刷媒体P1としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。サーマルプリントヘッドA1には、後に詳述する構成によって、抵抗体層4に複数の発熱部41が形成されている。サーマルプリントヘッドA1は、複数の発熱部41を選択的に発熱駆動させることで、印刷媒体P1に印字を行う。プラテンローラ91に代えて、平坦なゴムからなるプラテンを使用してもよい。このプラテンは、大きな曲率半径を有する円柱状のゴムにおける、断面視において弓形状の一部分を含む。本開示において、「プラテン」という用語は、プラテンローラ91と平坦なプラテンとの双方を含む。サーマルプリンタPrは、感熱紙に直接印字するものに限定されず、インクリボンに対して選択的に熱を付与して印刷媒体P1に印字を施す熱転写式のものであってもよい。
【0014】
発熱基板1は、プラテンローラ91によって、印刷媒体P1が押し当てられる。発熱基板1には、複数の発熱部41が形成されている。図1に示すように、発熱基板1は、厚さ方向z視において主走査方向xを長手方向とする矩形状である。
【0015】
発熱基板1は、発熱基板接着剤791により、放熱部材7に固定される。発熱基板接着剤791は、たとえば常温硬化性である。
【0016】
発熱基板1は、図5および図6に示すように、基材10、絶縁層19、保護層2、配線層3および抵抗体層4を備える。
【0017】
基材10は、配線層3および抵抗体層4を支持する。基材10は、単結晶半導体を含んでおり、当該単結晶半導体は、たとえばケイ素(Si)である。基材10は、図6に示すように、主面11および裏面12を有する。主面11および裏面12は、厚さ方向zに離間し、且つ、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。保護層2、配線層3および抵抗体層4は、厚さ方向zにおいて、主面11側に設けられる。
【0018】
図示された例では、基材10は、凸部13を有する。凸部13は、図6に示すように、主面11から厚さ方向zに突出する。凸部13は、主走査方向xに長く延びる。凸部13は、基材10のうちの副走査方向y下流寄りに配置されている。凸部13は、基材10の一部であることから、単結晶半導体であるSiを含む。凸部13は、印刷媒体P1を発熱部41に押し当てやすくするために設けられる。なお、基材10は、凸部13を有していなくてもよい。
【0019】
絶縁層19は、図6に示すように、主面11および凸部13を覆う。絶縁層19は、基材10と、配線層3および抵抗体層4とをより確実に絶縁するために設けられる。絶縁層19は、たとえばTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原料ガスとして成膜される酸化ケイ素(TEOS-SiO2)を含む。絶縁層19は、TEOS-SiO2の代わりに、たとえば他の方法によって成膜された酸化ケイ素(SiO2)あるいは窒化ケイ素(SiN)を含んでもよい。
【0020】
配線層3は、複数の発熱部41への通電経路を構成する。配線層3は、基材10に支持される。配線層3は、図6に示すように、抵抗体層4上に積層されている。なお、配線層3の形状および配置は、図示された例に限定されない。配線層3は、図5に示すように、共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33を有する。
【0021】
複数の中継電極33はそれぞれ、複数の発熱部41の副走査方向y下流側に位置する。複数の中継電極33の各々は、図5に示すように、2つの帯状部331および連結部332を含む。2つの帯状部331は、副走査方向yに延びる帯状である。2つの帯状部331は、互いに略平行に配置された状態で主走査方向xに離間している。2つの帯状部331はそれぞれ、隣接する発熱部41にそれぞれ接続している。図5に示す例では、2つの帯状部331はそれぞれ、副走査方向yの下流側から各発熱部41に繋がっている。2つの帯状部331の主走査方向xの各寸法は、略同じである。2つの帯状部331の副走査方向y下流側の端部はそれぞれ、連結部332に繋がる。連結部332は、主走査方向xに延びる帯状である。各中継電極33において、2つの帯状部331は、連結部332を介して導通する。
【0022】
共通電極31は、図5に示すように、複数の直行部311、複数の分岐部312、複数の帯状部313、および、連結部314を含む。複数の直行部311はそれぞれ、副走査方向yに延びる帯状である。複数の直行部311は、主走査方向xに等ピッチで配列されている。複数の直行部311の各先端側(副走査方向y下流側)には、分岐部312および2つの帯状部313が設けられている。当該2つの帯状部313は、隣接する発熱部41にそれぞれ接続している。図5に示す例では、当該2つの帯状部313はそれぞれ、副走査方向yの上流側から発熱部41に繋がっている。各帯状部313の主走査方向xの寸法は、各帯状部331の主走査方向xの寸法と略同じである。また、各帯状部313は、副走査方向yに見て帯状部331に重なる。複数の分岐部312はそれぞれ、各直行部311の先端に接続される。複数の分岐部312のそれぞれにおいて、副走査方向yにおいて2つの帯状部313に繋がる各端部と反対側の端部には、複数の直行部311がそれぞれ1つずつ接続されている。連結部314は、複数の直行部311の基端側(副走査方向y上流側)に位置して、主走査方向xに沿って延びている。連結部314には、複数の直行部311がそれぞれ繋がっている。図5に示すように、連結部314は、ワイヤ64および第2基板59(後述の配線591)に接続されており、駆動電圧が印加される。
【0023】
複数の個別電極32はそれぞれ、共通電極31に対して逆極性となる。複数の個別電極32は、図5に示すように、主走査方向xに離間して配列されている。複数の個別電極32はそれぞれ、図5に示すように、帯状部321およびパッド部322を含む。各個別電極32において、帯状部321は、副走査方向yに延びる帯状であり、発熱部41の副走査方向y上流側に位置する。図5に示す例では、帯状部321の先端側(副走査方向y下流側)は、発熱部41に接続されている。帯状部321の主走査方向xの寸法は、各帯状部331の主走査方向xの寸法と略同じである。また、帯状部321の副走査方向y下流側の端部は、副走査方向yに見て帯状部331に重なる。各個別電極32において、パッド部322は、帯状部321の副走査方向y上流側の端部に設けられている。パッド部322は、ワイヤ62を介して、複数のドライブIC61のいずれかに導通する。
【0024】
サーマルプリントヘッドA1では、図5に示すように、共通電極31の各直行部311が、2つの個別電極32の帯状部321に挟まれて配置されている。各中継電極33の2つの帯状部331の一方が接続された発熱部41は、共通電極31に接続しており、当該中継電極33の2つの帯状部331の他方が接続された発熱部41は、複数の個別電極32のいずれかに接続している。したがって、各個別電極32が通電することで、これに接続する発熱部41と、当該発熱部41に中継電極33を介して接続する発熱部41とに電流が流れて、これらの発熱部41が発熱する。つまり、2つの発熱部41が同時に発熱する。サーマルプリントヘッドA1では、各発熱部41が通電したとき、各発熱部41には、副走査方向yに沿って電流が流れる。
【0025】
配線層3(共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33のそれぞれ)は、図6に示すように、厚さ方向zに積層された第1導体層301および第2導体層302を含んで構成されている。
【0026】
第1導体層301は、図6に示すように、抵抗体層4上に形成されている。第1導体層301は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4よりも低抵抗であり、かつ、第2導体層302よりも高抵抗な材料からなる。第1導体層301の構成材料としては、たとえばTi(チタン)が採用されるが、Tiの代わりに、Ta、Ga、Sn、PtIr、Pt、Tl(タリウム)、V(バナジウム)あるいはCrなどを採用してもよい。第1導体層301の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。
【0027】
第2導体層302は、図6に示すように、第1導体層301上に形成されている。第2導体層302は、第1導体層301を部分的に覆っている。よって、第1導体層301は第2導体層302から露出する部分がある。第2導体層302は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4および第1導体層301よりも低抵抗な材料からなる。第2導体層302の構成材料は、たとえばCuが採用されるが、Cuの代わりに、Cu合金、Al、Al合金、Au、Ag、NiあるいはW(タングステン)などを採用してもよい。なお、第2導体層302の構成材料がAu、Ag、Niである場合、一般的にはめっきにより形成されるが、この場合、第2導体層302は、シード層(たとえばCu)などを含んでいてもよい。第2導体層302の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。
【0028】
サーマルプリントヘッドA1では、図6に示すように、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれのうちの各発熱部41に繋がる部分は、第2導体層302から露出する第1導体層301によって構成されている。つまり、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれは、第1導体層301のみで構成された部分と、第1導体層301と第2導体層302とが積層された部分とを含む。この構成とは異なり、各発熱部41に繋がる当該部分は、第1導体層301上に第2導体層302が積層された構成であってもよい。つまり、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれは、形成範囲のすべてにおいて、第1導体層301と第2導体層302とが積層されていてもよい。
【0029】
抵抗体層4は、絶縁層19を介して、基材10に支持される。抵抗体層4は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が配線層3よりも大きい(高抵抗である)。抵抗体層4の構成材料としては、たとえばTaNが採用されるが、TaNの代わりに、TaSiO2、TiON、PolySi、Ta25、RuO2、RuTiOあるいはTaSiNなどを採用してもよい。抵抗体層4の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。
【0030】
抵抗体層4は、複数の発熱部41を有する。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体P1を局所的に加熱する。各発熱部41は、抵抗体層4のうち配線層3から露出した領域である。複数の発熱部41は、主走査方向xに沿って配置されており、主走査方向xにおいて互いに離間する。各発熱部41は、図5および図6に示すように、凸部13上に配置されている。
【0031】
保護層2は、図6に示すように、配線層3および抵抗体層4を覆っており、配線層3および抵抗体層4を保護する。保護層2は、絶縁性材料からなる。この絶縁性材料としては、たとえばSiN(窒化ケイ素)が採用されるが、SiNの代わりに、SiO2(酸化ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)などが採用されてもよい。保護層2は、先述の絶縁性材料の単層または複数層によって構成される。
【0032】
保護層2は、図6に示すように、複数の開口29を有する。各開口29は、保護層2を厚さ方向zに貫通する。複数の開口29はそれぞれ、各個別電極32のパッド部322を露出させている。図示された例示と異なり、複数の開口29に導電性材料を充填させてもよい。この場合、この導電性材料上にめっき層を形成してもよい。このめっき層の構成は特に限定されないが、一例を挙げると、導電性材料の表面からNi、Pd(パラジウム)、Auの順に積層されている。
【0033】
なお、発熱基板1の構成は、上記した例に限定されず、特許文献1に開示された実施形態および変形例の各基板(特許文献1における第1基板)と同様にすることが可能である。たとえば、発熱基板1における基材10が単結晶半導体ではなくセラミックであってもよい。また、配線層3が中継電極33を含まず、副走査方向yにおいて共通電極31と各個別電極32とが発熱部41を挟んで対向する構成としてもよい。
【0034】
第1基板5は、発熱基板1に導通する。本実施形態では、第1基板5は、第2基板59を介して、発熱基板1に導通する。第1基板5は、発熱基板1および第2基板59に対して、副走査方向y上流側に配置される。第1基板5は、第1基板接着剤792および固定部材8により、放熱部材7に固定される。第1基板接着剤792は、たとえば常温硬化性である。第1基板5は、図3に示すように、フレキシブル基板51および補強板52を備える。
【0035】
フレキシブル基板51は、補強板52の上面(厚さ方向zにおいて放熱部材7と反対側の面)に接合される。フレキシブル基板51には、配線が形成されている。当該配線により、コネクタ69と第2基板59とが電気的に接続される。図1および図3に示すように、フレキシブル基板51は、コネクタ部511を有する。コネクタ部511は、フレキシブル基板51のうちの副走査方向y下流側(副走査方向yにおける発熱基板1側)の端部に配置される。コネクタ部511は、第2基板59に導通接合される。コネクタ部511は、たとえば、第2基板59の配線に熱圧着される。コネクタ部511と第2基板59の配線とが熱圧着された部位は、保護接着剤50により覆われている。保護接着剤50は、たとえば常温硬化性である。フレキシブル基板51は、補強板52に接合されていない領域において、屈曲させることが容易である。図3に示す例では、フレキシブル基板51のうちのコネクタ部511側の一部が屈曲している。
【0036】
補強板52は、フレキシブル基板51の少なくとも一部を支持する。補強板52は、たとえばガラスエポキシ樹脂製である。補強板52は、ガラスエポキシ樹脂製ではなく、金属製(たとえばステンレス製)であってもよいし、ポリイミド樹脂製であってもよい。補強板52には、配線類は形成されていない。
【0037】
第1基板5は、2つの取付孔501を有する。なお、取付孔501の数は、特に限定されない。各取付孔501は、図3および図4に示すように、第1基板5を厚さ方向zに貫通する。各取付孔501は、フレキシブル基板51と補強板52とに跨って形成される。図示された例では、各取付孔501の厚さ方向z視における形状は、円形である。
【0038】
第2基板59は、図1に示すように、発熱基板1に対して副走査方向y上流側に配置される。第2基板59は、第1基板5に対して副走査方向y下流側に配置される。よって、第2基板59は、副走査方向yにおいて、発熱基板1と第1基板5との間に配置される。第2基板59は、たとえばPCB基板(Printed Circuit Board基板)であり、ドライブIC61が搭載される。第2基板59は、配線を有する。なお、図5に、第2基板59の配線の一部を、配線591として図示する。第2基板59は、たとえば主走査方向xを長手方向とする矩形状である。第2基板59は、第2基板接着剤793により、放熱部材7に固定される。第2基板接着剤793は、たとえば常温硬化性である。また、第2基板59は、両面粘着テープ795により、放熱部材7に固定される。図2に示すように、両面粘着テープ795は、第2基板接着剤793を囲むように配置されている。なお、図示された例とは異なり、第2基板59は、第2基板接着剤793、あるいは、両面粘着テープ795のいずれかのみで、放熱部材7に固定されてもよい。サーマルプリントヘッドA1と異なる例において、第2基板59がなくてもよい。この場合、ドライブIC61は発熱基板1に搭載される。また、この場合、第1基板5と発熱基板1とが、第2基板59を介することなく導通する。
【0039】
複数のドライブIC61はそれぞれ、複数の発熱部41を選択的に発熱させるために、複数の発熱部41への通電を制御するものである。ドライブIC61の数は、発熱部41の個数に応じて、適宜変更される。各ドライブIC61は、第2基板59に搭載される。この例とは異なり、各ドライブIC61は、発熱基板1に搭載されていてもよい。図5に示すように、各ドライブIC61の上面(厚さ方向z上方を向く面)には、複数の電極611,612が配置されている。各電極611には、複数のワイヤ62が個別に接続される。各電極611は、対応するワイヤ62を介して、個別電極32に導通する。各電極612には、複数のワイヤ63が個別に接続される。各電極612は、対応するワイヤ63を介して、第2基板59の配線591に導通する。各ドライブIC61は、対応するワイヤ63、第2基板59の配線および第1基板5の配線を介して、コネクタ69に導通する。各ドライブIC61は、コネクタ69に入力される外部からの制御信号に基づいて、各発熱部41への通電を制御する。
【0040】
複数のワイヤ62,63,64はそれぞれ、ボンディングワイヤである。各ワイヤ62,63,64の材料は、何ら限定されないが、たとえば金を含む。当該材料は、金ではなく、銅、アルミニウムまたは銀のいずれかを含んでいてもよい。各ワイヤ62は、図5に示すように、ドライブIC61の電極611と、個別電極32のパッド部322とに接合され、これらを電気的に接続する。各ワイヤ63は、図5に示すように、ドライブIC61の電極612と、第2基板59の配線とに接合され、これらを電気的に接続する。ワイヤ64は、図5に示すように、共通電極31の連結部314と第2基板59の配線591とに接合され、これらを電気的に接続する。
【0041】
保護樹脂65は、複数のドライブIC61および複数のワイヤ62,63を覆う。保護樹脂65は、たとえば絶縁性樹脂を含む。当該絶縁性樹脂は、黒色のエポキシ樹脂である。保護樹脂65は、図1および図3に示すように、発熱基板1と第2基板59とに跨るように形成されている。
【0042】
コネクタ69は、サーマルプリントヘッドA1をサーマルプリンタPrに接続するために用いられる。コネクタ69は、第1基板5に取り付けられており、第1基板5の配線および第2基板59の配線などを介して、各ドライブIC61の各電極611に接続されている。コネクタ69は、図3に示すように、第2基板59の下面(厚さ方向z下方を向く面)に接続される。なお、図1に示すように、第2基板59の上面(厚さ方向z上方を向く面)には、コネクタ69の接続部位(はんだ接合部)が視認される。
【0043】
放熱部材7は、図3に示すように、発熱基板1、第1基板5および第2基板59を支持する。放熱部材7は、複数の発熱部41によって生じる熱の一部を、発熱基板1を介して外部へと放熱する。放熱部材7は、たとえばアルミニウム等の金属を含む。放熱部材7は、図2および図3に示すように、第1支持面71、第2支持面72および裏面73を有する。
【0044】
図3に示すように、第1支持面71には、第1基板5が接合される。第1支持面71は、平坦であり、厚さ方向z上方を向く。第1支持面71は、第2支持面72よりも、厚さ方向z上流側に位置する。第1支持面71は、複数の開口711を有する(図示された例では2つの開口711を有する)。複数の開口711はそれぞれ、厚さ方向zに見て、円形である。上記複数の取付孔501はそれぞれ、厚さ方向z視において、複数の開口711のうちの対応する1つに重なる。
【0045】
図3に示すように、第2支持面72には、発熱基板1および第2基板59が接合される。第2支持面72は、平坦であり、第1支持面71に対して傾斜する。図示された例では、第2支持面72は、副走査方向y上流側から副走査方向y下流側に向かうほど、厚さ方向z上方に向かうように傾斜する。
【0046】
図3に示すように、裏面73は、厚さ方向zにおいて第1支持面71と反対側を向く。つまり、裏面73は、厚さ方向z下方を向く。
【0047】
図2図4に示すように、放熱部材7は、複数の貫通孔74を有する(図示された例では、2つの貫通孔74を有する)。貫通孔74の数は、何ら限定されないが、取付孔501の数と同じである。各貫通孔74は、厚さ方向zに貫通する。各貫通孔74は、複数の開口711にそれぞれ個別に繋がる。各貫通孔74には、複数の固定部材8がそれぞれ個別に挿通される。
【0048】
図2および図3に示すように、放熱部材7は、複数の凹部761,762,763,771を有する。複数の凹部761,762,763はそれぞれ、厚さ方向zに見て、主走査方向xに延びる。凹部761は、副走査方向yにおいて、第1支持面71と第2支持面72との間に配置される。凹部762は、図3に示すように、第1支持面71から窪む。上記第1基板接着剤792は、複数の貫通孔74および凹部762をそれぞれ避けるように配置される。複数の貫通孔74はそれぞれ、凹部761,762を避けるように形成される。複数の凹部763は、図3に示すように、第2支持面72から窪む。上記発熱基板接着剤791および上記第2基板接着剤793は、複数の凹部763を避けるように配置される。図示された例では、複数の凹部763のうちの最も副走査方向y下流側に位置する凹部763は、厚さ方向zにおいて、発熱基板1と第2基板59との境界に重なる。複数の凹部771はそれぞれ、図3に示すように、裏面73から窪む。図2に示す例では、複数の凹部771はそれぞれ、厚さ方向z視において矩形状であるが、この例とは異なり、円形状であってもよい。図3に示すように、上記複数の貫通孔74は、複数の凹部771に個別にそれぞれ繋がる。図4に示す例では、凹部771の底面771aは、裏面73に対して平行であるが、傾斜していてもよい。なお、放熱部材7は、複数の凹部771ではなく、1つの凹部771が主走査方向xに長く繋がる構成であってもよい。
【0049】
複数の固定部材8はそれぞれ、第1基板5を放熱部材7に固定する。各固定部材8は、たとえば樹脂製である。各固定部材8は、樹脂製ではなく、金属製であってもよい。複数の固定部材8はそれぞれ、挿通部81、かしめ部82および係止部83を含む。以下で説明する挿通部81、かしめ部82および係止部83は、特段の断りがない限り、各固定部材8で共通する。
【0050】
挿通部81は、棒状であり、厚さ方向zに延びる。挿通部81は、たとえば円柱形状である。この例とは異なり、挿通部81は、筒状であってもよい。挿通部81は、取付孔501および貫通孔74(開口711)に挿通される。本実施形態では、挿通部81は、取付孔501および貫通孔74に、厚さ方向zに挿通される。よって、挿通部81の挿通方向は、厚さ方向zと同じである。
【0051】
かしめ部82は、挿通部81の挿通方向(厚さ方向z)において、挿通部81の一方側(厚さ方向z上方)の端部に繋がる。かしめ部82は、挿通方向(厚さ方向z)に見て、挿通部81よりも大きい。また、かしめ部82は、挿通方向(厚さ方向z)に見て、取付孔501よりも大きい。かしめ部82は、第1基板5よりも厚さ方向z上方に位置する。かしめ部82は、図3および図4に示すように、第1基板5に係止される。かしめ部82は、後に詳述される製造方法から理解されるように、熱圧着により潰れた部位(塑性変形された部位)である。かしめ部82は、熱圧着により形成されるものではなく、物理的な衝撃により形成されたものでもよい。かしめ部82は、特許請求の範囲に記載の「塑性変形部」の一例である。かしめ部82は、図3および図4に示すように、サーマルプリントヘッドA1の側方から見て、半円状をなす。
【0052】
係止部83は、挿通部81の挿通方向(厚さ方向z)において、挿通部81の他方側(厚さ方向z下方)の端部に繋がる。係止部83は、挿通方向(厚さ方向z)に見て、挿通部81よりも大きい。また、係止部83は、挿通方向に見て(厚さ方向z視において)、貫通孔74よりも大きい。係止部83は、凹部771に形成される。係止部83は、厚さ方向z視において、凹部771の外周よりも内方に位置する。係止部83は、図3および図4に示すように、凹部771の底面771aに係止される。よって、係止部83は、放熱部材7に係止される。図4に示す例では、係止部83の下面(厚さ方向z下方を向く面)は、裏面73と面一であるが、この例と異なり、裏面73よりも厚さ方向zに窪んでいてもよい。図4に示す例では、係止部83は、凹部771の側壁に接するが、この例と異なり、接していなくてもよい。
【0053】
上述の通り、かしめ部82が第1基板5に係止され、係止部83が凹部771の底面771aに係止される。この構成により、固定部材8は、第1基板5と放熱部材7とを挟持する。
【0054】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法について、図7図12を参照して説明する。図7図12は、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す断面図である。
【0055】
まず、図7に示すように、発熱基板1および第2基板59を準備する。そして、第2基板59に各ドライブIC61を搭載し、複数のワイヤ62,63を形成する。その後、各ドライブIC61および複数のワイヤ62,63を覆う保護樹脂65を形成する。
【0056】
次いで、図8に示すように、コネクタ69が取り付けられた第1基板5を準備する。そして、第2基板59に第1基板5を取り付ける。たとえば、第1基板5のフレキシブル基板51のコネクタ部511を第2基板59の配線に熱圧着することで、第1基板5を第2基板59に取り付ける。その後、この熱圧着部分(コネクタ部511と第2基板59の配線との接合部分)を保護するための、保護接着剤50を形成する。
【0057】
次いで、図9に示すように、放熱部材7を準備し、発熱基板1、第1基板5および第2基板59に貼り付ける。図9に示す工程では、まず、準備した放熱部材7に対して、第1支持面71に、第1基板接着剤792を塗布する。また、第2支持面72に、発熱基板接着剤791および第2基板接着剤793を塗布し、且つ、両面粘着テープ795を貼付する。次いで、発熱基板1、第1基板5および第2基板59を、放熱部材7に貼り付ける。このとき、第1支持面71に対する第2支持面72の傾斜に応じて、第1基板5の一部(補強板52に接合されないフレキシブル基板51の部分)が屈曲する。発熱基板1、第1基板5および第2基板59を放熱部材7に取り付けた後、発熱基板接着剤791、第1基板接着剤792および第2基板接着剤793を自然硬化させる。
【0058】
次いで、図10図12に示すように、固定部材8により、放熱部材7と第1基板5とを固定する。この工程では、まず、図10に示すように、リベット部材8Aを、放熱部材7の裏面73側から、貫通孔74および取付孔501に挿通する。リベット部材8Aは、棒状部801およびフランジ部802を含む。フランジ部802は、リベット部材8Aの挿通方向(厚さ方向z)に見て、棒状部801よりも大きい。リベット部材8Aが貫通孔74および取付孔501に挿通された状態において、フランジ部802が、凹部771の底面771aに係止される。また、棒状部801の先端801aが、第1基板5よりも厚さ方向z上方に突き出る。フランジ部802は、後に係止部83となる部位である。次いで、図11に示すように、溶着ヘッドT1を用いて、棒状部801の先端801aを熱圧着する。これにより、図11に示すように、棒状部801の先端801aが押しつぶされる(塑性変形する)。このとき、溶着ヘッドT1の先端の形状に応じて、棒状部801の先端801aが、固定部材8のかしめ部82の形に成型される。次いで、図12に示すように、溶着ヘッドT1を取り外すことで、上述の固定部材8が形成される。これにより、第1基板5と放熱部材7とがかしめ部82および係止部83で挟持されることで、固定部材8によって第1基板5が放熱部材7に固定される。
【0059】
上記サーマルプリントヘッドA1の製造方法は、上記した例に限定されない。たとえば、コネクタ69の取付を、第1基板5を放熱部材7に貼り付けた後、または、固定部材8を形成した後であってもよい。また、上記した例では、溶着ヘッドT1を用いた熱圧着により、かしめ部82を形成したが、ハンマーなどの物理的な衝撃により、かしめ部82を形成してもよい。この場合、固定部材8が金属製であることが好ましい。また、発熱基板接着剤791、第1基板接着剤792および第2基板接着剤793が自然硬化するタイミングは、固定部材8の取付前ではなく、固定部材8の取付と同時または取付後であってもよい。
【0060】
サーマルプリントヘッドA1の作用および効果は、次の通りである。
【0061】
サーマルプリントヘッドA1では、第1基板5と放熱部材7とが固定部材8により固定される。放熱部材7は、第1基板5を支持する第1支持面71を有し、当該第1支持面71は、開口711を有する。第1基板5は、取付孔501を有する。固定部材8は、挿通部81と、塑性変形部としてのかしめ部82とを含む。そして、塑性変形部(かしめ部82)は、挿通部81の挿通方向に見て、挿通部81よりも大きく、且つ、第1基板5および放熱部材7のいずれか一方(本実施形態では第1基板5)に係止される。この構成によれば、塑性変形部(かしめ部82)が第1基板5に係止されて、固定部材8により第1基板5が放熱部材7に固定される。したがって、特許文献2のようにネジ止めした構成と比較して、ゆるみの発生が抑制されるので、第1基板5を放熱部材7に、強固に固定することが可能となる。つまり、サーマルプリントヘッドA1は、第1基板5を放熱部材7に確実に固定することが可能となる。
【0062】
サーマルプリントヘッドA1では、固定部材8は、挿通部81の挿通方向の両端にそれぞれ繋がるかしめ部82および係止部83を含む。かしめ部82は、上述の通り、塑性変形部であり、第1基板5および放熱部材7のいずれか一方(本実施形態では第1基板5)に係止される。また、係止部83は、第1基板5および放熱部材7のいずれか他方(本実施形態では放熱部材7)に係止される。そして、第1基板5と放熱部材7とが、かしめ部82および係止部83により挟持される。この構成によれば、かしめ部82および係止部83によって、第1基板5と放熱部材7とを、確実に固定することが可能となる。
【0063】
サーマルプリントヘッドA1では、第1基板接着剤792をさらに備える。第1基板接着剤792は、常温硬化性である。この構成とは異なり、第1基板接着剤792が熱硬化性である場合(たとえばシリコーンゴム系の接着剤の場合)、第1基板接着剤792を加熱して安定化(硬化)させる必要がある。このとき、第1基板接着剤792の硬化前後で第1基板接着剤792の厚さが変わることがある。そのため、固定部材8としてネジを用い、第1基板接着剤792の硬化前後でネジを増し締めする必要があった。一方で、サーマルプリントヘッドA1では、第1基板接着剤792が常温硬化性であるので、第1基板接着剤792の硬化前後で第1基板接着剤792の厚さが変わることが抑制される。これにより、サーマルプリントヘッドA1は、固定部材8としてネジを用いることなく、第1基板5と放熱部材7とを確実に固定することができる。また、先述のネジの増し締めが不要となるので、サーマルプリントヘッドA1の生産性を向上できる。このことは、発熱基板接着剤791および第2基板接着剤793においても同様である。
【0064】
サーマルプリントヘッドA1は、放熱部材7の第1支持面71に支持される第1基板5と、放熱部材7の第2支持面72に支持される第2基板59とを備える。そして、第1基板5は、フレキシブル基板51を備え、フレキシブル基板51は、第2基板59に導通接合されたコネクタ部511を含む。この構成によると、放熱部材7において、第2支持面72が第1支持面71に対して傾斜する場合であっても、フレキシブル基板51が屈曲するので、第1基板5と第2基板59とを放熱部材7に接着することができる。
【0065】
サーマルプリントヘッドA1では、第1基板5は、補強板52を備える。この構成によれば、第1基板5が補強板52を備えない構成(つまりフレキシブル基板51のみで構成された場合)と比較して、第1基板5を放熱部材7に確実に固定することができる。
【0066】
サーマルプリントヘッドA1では、放熱部材7は、裏面73から窪む凹部771を有する。そして、貫通孔74は、当該凹部771に繋がる。この構成によれば、係止部83を凹部771に収容することができるので、固定部材8が放熱部材7の裏面73から突き出ることを抑制できる。
【0067】
サーマルプリントヘッドA1では、放熱部材7は、第1支持面71と第2支持面72との間に凹部761を含む。この構成によると、第2支持面72が第1支持面71に対して傾斜する構成であっても、第1支持面71に接合される部材(たとえば第1基板5)と第2支持面72に接合される部材(たとえば第2基板59)との干渉を抑制できる。
【0068】
サーマルプリントヘッドA1では、放熱部材7は、第1支持面71から窪む凹部762を含む。この構成によれば、第1基板接着剤792の塗布量が多すぎた場合に、第1基板接着剤792の一部が凹部762に流出する。これにより、サーマルプリントヘッドA1は、第1基板接着剤792のうちの過剰に塗布された一部を、当該凹部762に逃すことができる。このことは、第2支持面72から窪む凹部763においても同様である。つまり、サーマルプリントヘッドA1は、発熱基板接着剤791および第2基板接着剤793のうちの過剰に塗布された一部を、当該凹部763に逃すことができる。
【0069】
以下に、本開示のサーマルプリントヘッドの各変形例について、図13図17を参照して、説明する。なお、各変形例における各部の構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において相互に組み合わせ可能である。
【0070】
図13は、第1変形例にかかるサーマルプリントヘッドA11を示す。図13は、サーマルプリントヘッドA11の要部拡大断面図であって、サーマルプリントヘッドA1の図4に対応する。
【0071】
サーマルプリントヘッドA11では、かしめ部82が放熱部材7(凹部771の底面771a)に係止され、係止部83が第1基板5に係止される。サーマルプリントヘッドA11の固定部材8において、挿通部81の挿通方向の一方側(厚さ方向z下方)にかしめ部82が繋がり、挿通部81の挿通方向の他方側(厚さ方向z上方)に係止部83が繋がる。サーマルプリントヘッドA11においては、図13に示すように、係止部83の厚さ方向z寸法が、サーマルプリントヘッドA1の係止部83の寸法よりも小さいことが好ましい。
【0072】
図14は、第2変形例にかかるサーマルプリントヘッドA12を示す。図14は、サーマルプリントヘッドA12の要部拡大断面図であって、サーマルプリントヘッドA1の図4に対応する。
【0073】
サーマルプリントヘッドA12では、固定部材8は、一対のかしめ部82を含む。一対のかしめ部82は、挿通部81の挿通方向の両端にそれぞれ個別に繋がる。一対のかしめ部82の一方は、第1基板5よりも厚さ方向z上方に位置し、第1基板5の上面に係止される。一対のかしめ部82の他方は、放熱部材7よりも厚さ方向z下方に位置し、放熱部材7の下面(裏面73)に係止される。サーマルプリントヘッドA12の固定部材8は、厚さ方向zの両側からそれぞれ、溶着ヘッドT1により熱圧着される。つまり、一対のかしめ部82の両方が塑性変形された部位である。なお、図14に示す例では、放熱部材7には凹部771が形成されていないが、図13に示す例と同様に、放熱部材7に凹部771が形成されていてもよい。
【0074】
図15は、第3変形例にかかるサーマルプリントヘッドA13を示す。図15は、サーマルプリントヘッドA13の要部拡大断面図であって、サーマルプリントヘッドA1の図4に対応する。
【0075】
サーマルプリントヘッドA13では、放熱部材7は、貫通孔74の代わりに凹部75を含む。凹部75は、第1支持面71から厚さ方向zに窪み、開口711に繋がる。凹部75の底面は、厚さ方向zにおいて、第1支持面71と裏面73との間に位置する。サーマルプリントヘッドA1では、固定部材8が放熱部材7を貫通するように形成されていたが、サーマルプリントヘッドA13では、固定部材8は放熱部材7を貫通しない。凹部75のうち、厚さ方向zにおける裏面73側の部分は、厚さ方向zにおける第1支持面71側の部分よりも、厚さ方向zに見て大きい。これにより、係止部83が凹部75の内方に係止される。
【0076】
サーマルプリントヘッドA13の固定部材8は、たとえば図16に示す工程を経て形成される。図16に示す工程では、たとえば樹脂成型により、樹脂部材8Bを凹部75に充填させつつ、棒状部801の先端801aを第1基板5の上面よりも突き出させる。その後、図10図12に示す工程と同様に、樹脂部材8Bの棒状部801の先端801aを熱圧着することで、図15に示すかしめ部82を形成する。
【0077】
図17は、第4変形例にかかるサーマルプリントヘッドA14を示す。図17は、サーマルプリントヘッドA14の要部拡大断面図であって、サーマルプリントヘッドA1の図4に対応する。
【0078】
サーマルプリントヘッドA14では、固定部材8は、嵌合部84および係止部83を含む。嵌合部84は、放熱部材7の凹部75に圧入されることで形成される。嵌合部84は、凹部75の内面に係止される。嵌合部84は、凹部75に圧入される前の状態では、厚さ方向zに見て凹部75よりも大きいが(図17の二点鎖線参照)、凹部75に圧入されることで図17に示すように変形する。嵌合部84は、特許請求の範囲に記載の「塑性変形部」の一例である。嵌合部84の凹部75への係止力を高める上で、好ましくは、サーマルプリントヘッドA14の固定部材8は、金属製である。
【0079】
上記変形例にかかる各サーマルプリントヘッドA11~A14はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1と同様に、塑性変形部(かしめ部82または嵌合部84)を含むことから、サーマルプリントヘッドA1と同様の効果を奏する。
【0080】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示のサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本開示のサーマルプリントヘッドは、以下の付記に関する実施形態を含む。
付記1.
複数の発熱部を含む発熱基板と、
前記発熱基板に導通する第1基板と、
放熱部材と、
前記第1基板を前記放熱部材に固定する固定部材と、
を備え、
前記放熱部材は、前記第1基板が固定された第1支持面を有し、
前記第1支持面は、開口を有し、
前記第1基板は、前記第1基板の厚さ方向に見て前記開口に重なる取付孔を有し、
前記固定部材は、前記開口および前記取付孔に挿通される挿通部と、前記挿通部の挿通方向の一方の端部に繋がる塑性変形部と、を含み、
前記塑性変形部は、前記挿通方向に見て前記挿通部よりも大きく、且つ、前記第1基板および前記放熱部材のいずれか一方に係止される、サーマルプリントヘッド。
付記2.
前記放熱部材は、前記開口に繋がる貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記放熱部材を前記厚さ方向に貫通する、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
付記3.
前記固定部材は、前記挿通部の前記挿通方向の両端にそれぞれ繋がるかしめ部および係止部を含み、
前記かしめ部は、前記塑性変形部であり、
前記係止部は、前記第1基板および前記放熱部材のいずれか他方に係止され、
前記第1基板および前記放熱部材は、前記かしめ部および前記係止部により挟持される、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
付記4.
前記発熱基板に導通する第2基板をさらに備え、
前記第1基板は、前記第2基板を介して前記発熱基板に導通する、付記1ないし付記3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記5.
前記放熱部材は、前記発熱基板が固定された第2支持面をさらに有する、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
付記6.
前記第2基板は、前記第2支持面に支持される、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
付記7.
前記第2支持面は、前記第1支持面に対して傾斜する、付記5または付記6に記載のサーマルプリントヘッド。
付記8.
前記第1支持面と前記第2支持面との間に凹部が形成されている、付記5ないし付記7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記9.
前記開口は、前記凹部を避けて配置される、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
付記10.
前記第1基板は、フレキシブル基板と、前記フレキシブル基板を支持する補強板とを備える、付記4ないし付記9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記11.
前記フレキシブル基板は、前記第2基板に導通接合されたコネクタ部を含む、付記10に記載のサーマルプリントヘッド。
付記12.
前記放熱部材と前記発熱基板とを接着する発熱基板接着剤と、
前記放熱部材と前記第2基板とを接着する第2基板接着剤と、をさらに備え、
前記発熱基板接着剤と前記第2基板接着剤の各々は、常温硬化性である、付記4ないし付記11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記13.
前記放熱部材と前記第1基板とを接着する第1基板接着剤をさらに備え、
前記第1基板接着剤は、常温硬化性である、付記1ないし付記12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記14.
前記固定部材は、樹脂を含む、付記1ないし付記13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記15.
前記塑性変形部は、熱圧着により形成される、付記14に記載のサーマルプリントヘッド。
付記16.
前記発熱基板は、前記複数の発熱部を支持する基材を含み、
前記基材は、シリコンを含む、付記1ないし付記15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
付記17.
付記1ないし付記16のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記サーマルプリントヘッドに正対するプラテンと、を備えるサーマルプリンタ。
【符号の説明】
【0081】
A1,A11~A14:サーマルプリントヘッド
1 :発熱基板
10 :基材
11 :主面
12 :裏面
13 :凸部
19 :絶縁層
2 :保護層
29 :開口
3 :配線層
301 :第1導体層
302 :第2導体層
31 :共通電極
311 :直行部
312 :分岐部
313 :帯状部
314 :連結部
32 :個別電極
321 :帯状部
322 :パッド部
33 :中継電極
331 :帯状部
332 :連結部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :第1基板
50 :保護接着剤
501 :取付孔
511 :コネクタ部
51 :フレキシブル基板
52 :補強板
59 :第2基板
591 :配線
61 :ドライブIC
611 :電極
612 :電極
62,63,64:ワイヤ
65 :保護樹脂
69 :コネクタ
7 :放熱部材
71 :第1支持面
711 :開口
72 :第2支持面
73 :裏面
74 :貫通孔
75 :凹部
761,762,763:凹部
771 :凹部
771a :底面
791 :発熱基板接着剤
792 :第1基板接着剤
793 :第2基板接着剤
795 :両面粘着テープ
8 :固定部材
81 :挿通部
82 :かしめ部
83 :係止部
84 :嵌合部
8A :リベット部材
8B :樹脂部材
801 :棒状部
801a :先端
802 :フランジ部
91 :プラテンローラ
P1 :印刷媒体
Pr :サーマルプリンタ
T1 :溶着ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17