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特開2023-167345色素多量体、着色組成物、カラーフィルター及び表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167345
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】色素多量体、着色組成物、カラーフィルター及び表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09B 69/10 20060101AFI20231116BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20231116BHJP
   C08G 85/00 20060101ALI20231116BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231116BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231116BHJP
   C09B 57/00 20060101ALN20231116BHJP
   C09B 57/04 20060101ALN20231116BHJP
   C09B 45/22 20060101ALN20231116BHJP
   C09B 29/42 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
C09B69/10 B CSP
C09B67/46 A
C09B69/10 A
C08G85/00
G02B5/20 101
G03F7/004 505
C09B57/00 X
C09B57/04
C09B45/22
C09B29/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078463
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井川 茂
(72)【発明者】
【氏名】倉 怜史
(72)【発明者】
【氏名】江幡 敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓之
(72)【発明者】
【氏名】服部 清太郎
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J031
【Fターム(参考)】
2H148BE15
2H148BE18
2H148BE22
2H148BG11
2H148BH21
2H225AC36
2H225AD06
2H225AF12P
2H225AF18P
2H225AF76P
2H225AM12P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM25P
2H225AM32P
2H225AM39P
2H225AM96P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN65P
2H225AN68P
2H225AN96P
2H225AN98P
2H225BA01P
2H225BA16P
2H225BA17P
2H225BA32P
2H225BA35P
2H225CA17
2H225CB02
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J031CA67
4J031CB01
(57)【要約】
【課題】耐溶剤性及び耐熱性にバランスよく優れる色素(色素多量体)を提供すること。
【解決手段】色素構造を有する繰り返し単位を含み、前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物構造を有する、色素多量体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素構造を有する繰り返し単位を含み、
前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物構造を有する、
色素多量体。
【請求項2】
前記色素構造がポリメチン系色素に由来する構造である、請求項1に記載の色素多量体。
【請求項3】
前記ポリメチン系色素が、スクアリリウム系化合物又はシアニン系化合物である、請求項2に記載の色素多量体。
【請求項4】
前記スクアリリウム系化合物が、下記式(S1)で表される化合物である、請求項3に記載の色素多量体。
【化1】
[式(S1)中、A及びBはそれぞれ独立に、芳香族炭化水素環又はヘテロ環のいずれかを含む基であり、A及びBの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。]
【請求項5】
前記スクアリリウム系化合物が、下記式(IA)で表される化合物である、請求項3に記載の色素多量体。
【化2】
[式(IA)中、
複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRef基であり、Re及びRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeであり、
複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRgh基であり、Rg及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Le又はC(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeである。)であり、
複数あるYはそれぞれ独立に、-NRjk基であり、Rj及びRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeであり、
1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、Lg又はLhであり、
複数あるRa、Rb及びYの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。
(La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基
(Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
(置換基L)前記反応性基、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、これら脂肪族炭化水素基、ハロゲン置換アルキル基及びアルコキシ基の少なくとも一部が、-O-、-S-、-SO2-、>C=O、-CONH-及び-COO-から選ばれる少なくとも1つで置換された基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基並びにアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種]
【請求項6】
前記繰り返し単位が、
重合性基又は加水分解性基を有する色素化合物由来の繰り返し単位である、
重合性基を有する色素化合物及び該色素化合物以外の重合性化合物由来の繰り返し単位である、又は、
カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を有する樹脂由来の繰り返し単位であり、該樹脂に含まれるイオン性基に対する対イオンとして、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を含有する色素構造を有する繰り返し単位である[但し、該繰り返し単位は、2つ以上の色素構造を有する]、
請求項1に記載の色素多量体。
【請求項7】
重合性基を有する色素化合物の重合体、
重合性基を有する色素化合物と該色素化合物以外の重合性化合物との共重合体、
加水分解性基を有する色素化合物の加水分解縮合物、又は、
カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を有する樹脂と、該樹脂に含まれるイオン性基に対する対イオンとして、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を含有する色素化合物との塩、
をゲストとし、
前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物である、
請求項1に記載の色素多量体。
【請求項8】
前記環状化合物が下記式(R1)で表される化合物である、請求項1に記載の色素多量体。
【化3】
[La1、La2及びLb1はそれぞれ独立に、二価連結基である。]
【請求項9】
前記環状化合物が下記式(R2)で表される化合物である、請求項1に記載の色素多量体。
【化4】
[Lは独立に、単結合又は二価連結基であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、Xはそれぞれ独立に、CH又はNである。]
【請求項10】
請求項1~9いずれか1つに記載の色素多量体を含む、着色組成物。
【請求項11】
前記色素多量体以外の樹脂を含む、請求項10に記載の着色組成物。
【請求項12】
黄色色素を含む、10に記載の着色組成物。
【請求項13】
請求項10に記載の着色組成物を用いて得られたカラーフィルター。
【請求項14】
請求項13に記載のカラーフィルターを有する、表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素多量体、着色組成物、カラーフィルター及び表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチン系色素などの色素は、各種部材の着色のためのみならず、光学特性を調整するためなど、様々な分野で使用されている。
しかしながら、前記色素は、安定性に劣るため、例えば、特許文献1では、色素の色(明度)を安定させることを目的として、色素(染料)をゲストとし、大環状化合物で前記色素を包摂した包摂化合物とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-117858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載された包接化合物は、特に耐溶剤性に劣り、耐溶剤性及び耐熱性にバランスよく優れる色素を得ることができないことが分かった。
【0005】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、耐溶剤性及び耐熱性にバランスよく優れる色素(色素多量体)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0007】
[1] 色素構造を有する繰り返し単位を含み、
前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物構造を有する、
色素多量体。
【0008】
[2] 前記色素構造がポリメチン系色素に由来する構造である、[1]に記載の色素多量体。
【0009】
[3] 前記ポリメチン系色素が、スクアリリウム系化合物又はシアニン系化合物である、[2]に記載の色素多量体。
【0010】
[4] 前記スクアリリウム系化合物が、下記式(S1)で表される化合物である、[3]に記載の色素多量体。
【0011】
【化1】
[式(S1)中、A及びBはそれぞれ独立に、芳香族炭化水素環又はヘテロ環のいずれかを含む基であり、A及びBの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。]
【0012】
[5] 前記スクアリリウム系化合物が、下記式(IA)で表される化合物である、[3]又は[4]に記載の色素多量体。
【0013】
【化2】
[式(IA)中、
複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRef基であり、Re及びRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeであり、
複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRgh基であり、Rg及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Le又はC(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeである。)であり、
複数あるYはそれぞれ独立に、-NRjk基であり、Rj及びRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeであり、
1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、Lg又はLhであり、
複数あるRa、Rb及びYの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。
(La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基
(Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
(置換基L)前記反応性基、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、これら脂肪族炭化水素基、ハロゲン置換アルキル基及びアルコキシ基の少なくとも一部が、-O-、-S-、-SO2-、>C=O、-CONH-及び-COO-から選ばれる少なくとも1つで置換された基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基並びにアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種]
【0014】
[6] 前記繰り返し単位が、
重合性基又は加水分解性基を有する色素化合物由来の繰り返し単位である、
重合性基を有する色素化合物及び該色素化合物以外の重合性化合物由来の繰り返し単位である、又は、
カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を有する樹脂由来の繰り返し単位であり、該樹脂に含まれるイオン性基に対する対イオンとして、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を含有する色素構造を有する繰り返し単位である[但し、該繰り返し単位は、2つ以上の色素構造を有する]、
[1]~[5]のいずれか1つに記載の色素多量体。
【0015】
[7] 重合性基を有する色素化合物の重合体、
重合性基を有する色素化合物と該色素化合物以外の重合性化合物との共重合体、
加水分解性基を有する色素化合物の加水分解縮合物、又は、
カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を有する樹脂と、該樹脂に含まれるイオン性基に対する対イオンとして、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を含有する色素化合物との塩、
をゲストとし、
前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物である、
[1]~[6]のいずれか1つに記載の色素多量体。
【0016】
[8] 前記環状化合物が下記式(R1)で表される化合物である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の色素多量体。
【0017】
【化3】
[La1、La2及びLb1はそれぞれ独立に、二価連結基である。]
【0018】
[9] 前記環状化合物が下記式(R2)で表される化合物である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の色素多量体。
【0019】
【化4】
[Lは独立に、単結合又は二価連結基であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、Xはそれぞれ独立に、CH又はNである。]
【0020】
[10] [1]~[9]のいずれか1つに記載の色素多量体を含む、着色組成物。
[11] 前記色素多量体以外の樹脂を含む、[10]に記載の着色組成物。
[12] 黄色色素を含む、[10]又は[11]に記載の着色組成物。
【0021】
[13] [10]~[12]のいずれか1つに記載の着色組成物を用いて得られたカラーフィルター。
[14] [13]に記載のカラーフィルターを有する、表示素子。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐溶剤性及び耐熱性にバランスよく優れる色素(色素多量体)を提供することができる。
また、本発明によれば、耐光性にも優れる色素(色素多量体)を提供することができ、更には、高輝度(高刺激値)の色素(色素多量体)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪色素多量体≫
本発明に係る色素多量体(以下「本色素多量体」ともいう。)は、色素構造を有する繰り返し単位を含み、前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物構造を有する。
本明細書において、「色素多量体」とは、色素構造(色素[色素化合物]に由来する構造)を2つ以上有することをいい、例えば、前記特許文献1に記載の包接化合物は、色素構造を有する繰り返し単位を含まないため、色素単量体であるといえる。
また、本明細書において「色素構造」とは、色素に由来する部分構造であって、発色団であり、電荷を有していてもよい。
【0024】
<色素構造>
前記色素構造は特に制限されず、従来公知の色素(色素化合物)に由来する構造であればよいが、ポリメチン系色素に由来する構造であることが好ましい。
以下前記色素構造の原料となる色素(色素化合物)を「原料色素」ともいう。
本色素多量体に含まれる色素構造は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0025】
前記ポリメチン系色素としては、具体的には、a)スクアリリウム系化合物、b)シアニン系化合物、c)これら以外のその他のポリメチン系化合物が挙げられ、これらの中でも、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物が好ましく、スクアリリウム系化合物がより好ましい。
【0026】
例えば、前記原料色素として、波長600~1200nmの領域に吸収極大を有する化合物を用いる場合、本色素多量体は、カラーフィルター等の着色用途のみならず、近赤外線カットフィルター(NIR-CF)、可視光-近赤外線選択透過フィルターなどのデュアルバンドパスフィルター(DBPF)、近赤外線透過フィルター(IRPF)などのシングルバンドパスフィルター等の光学フィルターに用いることができ、特に(近)赤外線遮蔽用途に好適に用いることができる。
【0027】
a)スクアリリウム系化合物
前記スクアリリウム系化合物としては、例えば、下記式(S1)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化5】
[式(S1)中、A及びBはそれぞれ独立に、芳香族炭化水素環又はヘテロ環のいずれかを含む基であり、A及びBの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。]
【0029】
前記A及びBにおける芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンが挙げられる。
前記A及びBにおけるヘテロ環としては、五員環又は六員環の芳香族複素環が好ましく、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、フラン、チオフェン、チアゾールが挙げられる。
前記A及びBにおける芳香族炭化水素環又はヘテロ環のいずれかを含む基の炭素数は、好ましくは炭素数6~48である。
【0030】
前記式(S1)で表される化合物としては、下記式(IA)、(IB)、(II)及び(III)で表されるスクアリリウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
【化6】
【0032】
式(IA)及び(IB)中、Ra、Rb及びYは、下記条件(i)又は(ii)を満たし、条件(i)を満たすことが好ましい。
【0033】
・条件(i)
複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRef基である。Re及びRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeである。
複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRgh基である。Rg及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Le又はC(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeである。)である。
複数あるYはそれぞれ独立に、-NRjk基である。Rj及びRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeである。
1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、Lg又はLhである。
複数あるRa、Rb及びYの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。中でもYが反応性基を有することが好ましく、Rj又はRkが反応性基を有することがより好ましく、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeが反応性基を有することがさらに好ましい。
【0034】
前記La~Lhは、以下の基である。
(La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基
(Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
【0035】
置換基Lは、前記反応性基、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、これら脂肪族炭化水素基、ハロゲン置換アルキル基及びアルコキシ基の少なくとも一部が、-O-、-S-、-SO2-、>C=O、-CONH-及び-COO-から選ばれる少なくとも1つで置換された基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基並びにアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0036】
前記La~Lhは、置換基を含めた炭素数の合計が、それぞれ50以下であることが好ましく、炭素数40以下であることがさらに好ましく、炭素数30以下であることが特に好ましい。炭素数がこの範囲よりも多いと、化合物の合成が困難となる場合があるとともに、単位質量あたりの光の吸収強度が小さくなる場合がある。
【0037】
・条件(ii)
1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5又は6の複素環を形成する。前記複素環は置換基を有していてもよく、Rb及び前記複素環の形成に関与しないRaは、それぞれ独立に前記条件(i)のRb及びRaと同義である。
【0038】
・各基の具体例
前記La及びLにおける炭素数1~12の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(n-Pr)、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基(n-Bu)、sec-ブチル基(s-Bu)、tert-ブチル基(t-Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及びドデシル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ペンテニル基、ヘキセニル基及びオクテニル基等のアルケニル基;ならびに、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2-メチル-1-プロピニル基、ヘキシニル基及びオクチニル基等のアルキニル基を挙げることができる。
【0039】
前記Lb及びLにおける炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基としては、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基及びヘプタフルオロプロピル基を挙げることができる。
【0040】
前記Lc及びLにおける炭素数3~14の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基及びアダマンタン基等の多環脂環式基を挙げることができる。
【0041】
前記Ld及びLにおける炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、アセナフチル基、フェナレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基及びビフェニリル基を挙げることができる。
【0042】
前記Le及びLにおける炭素数3~14の複素環基としては、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、モルホリン及びフェナジン等の複素環からなる基を挙げることができる。
【0043】
前記Lfにおける炭素数1~12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基を挙げることができる。
【0044】
前記Lgにおける炭素数1~9のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、トリフルオロメチルカルボニル基及びベンゾイル基を挙げることができる。
【0045】
前記Lhにおける炭素数1~9のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基及びオクチルオキシカルボニル基を挙げることができる。
【0046】
前記Laとしては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基である。
【0047】
前記Lbとしては、好ましくはトリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0048】
前記Lcとしては、好ましくはシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基であり、より好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0049】
前記Ldとしては、好ましくはフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基であり、より好ましくはフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基である。
【0050】
前記Leとしては、好ましくはフラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、モルホリンからなる基であり、より好ましくはフラン、チオフェン、ピロール、モルホリンからなる基である。
【0051】
前記Lfとしては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基である。
【0052】
前記Lgとしては、好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基トリフルオロメチルカルボニル基であり、より好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基である。
【0053】
前記Lhとしては、好ましくはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基であり、より好ましくはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基である。
【0054】
前記La~Lhは、さらに、置換基Lとして、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子又は基、又は、これらの原子又は基を有する基を有していてもよい。このような置換基Lを有するLa~Lhの例としては、4-スルホブチル基、4-シアノブチル基、5-カルボキシペンチル基、5-アミノペンチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ホスホリルエチル基、6-アミノ-2,2-ジクロロヘキシル基、2-クロロ-4-ヒドロキシブチル基、2-シアノシクロブチル基、3-ヒドロキシシクロペンチル基、3-カルボキシシクロペンチル基、4-アミノシクロヘキシル基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、4-ヒドロキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-ヒドロキシナフチル基、4-アミノフェニル基、4-ニトロフェニル基、3-メチルピロールからなる基、2-ヒドロキシエトキシ基、3-シアノプロポキシ基、4-フルオロベンゾイル基、2-ヒドロキシエトキシカルボニル基、4-シアノブトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0055】
前記条件(i)におけるRaとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、水酸基である。
【0056】
前記条件(i)におけるRbとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、水酸基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基である。
【0057】
前記Rj及びRkとしては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、-R1-R'[ここで、R1は炭素数1~12の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、R'は反応性基であり、好ましくは下記重縮合性基である。]、-R1-OCO-R2-R'[ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、R'は反応性基であり、好ましくは下記重縮合性基である。]、-R1-OCO-R''[ここで、R1は炭素数1~12の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、R''は反応性基であり、好ましくは下記カチオン性基又はアニオン性基である。]、-R1-OCONH-R2-R'''[ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、R'''は反応性基であり、好ましくは下記加水分解性基である。]、-Cy-(OR)n[ここで、Cyはシクロヘキサンジイル基であり、Rは独立に、水素原子、炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のハロゲン化炭化水素基であり、nは1~5の整数であり、好ましくは1~2の整数である。]、-Cy-(OCO-R1)n-OCO-R''''[ここで、Cyはシクロヘキサンジイル基であり、R1は炭素数1~12の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、R''''は反応性基であり、好ましくは下記ラジカル重合性基であり、nは0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数である。]、-Ph-(R)n[ここで、Phはフェニレン基であり、Rは独立に、炭素数1~4の炭化水素基、炭素数1~4のハロゲン化炭化水素基又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、nは1~5の整数であり、好ましくは1~2の整数である。]である。
【0058】
前記条件(ii)における、1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して形成される、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5又は6の複素環としては、例えば、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン及びピラジン等を挙げることができる。これらの複素環のうち、当該複素環を構成し、且つ、前記ベンゼン環を構成する炭素原子の隣の1つの原子が窒素原子である複素環が好ましく、ピロリジンがさらに好ましい。
【0059】
前記反応性基は、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つである。
重合性基、加水分解性基、カチオン性基、アニオン性基は、原料色素を用いた反応形態により決まり、例えば、カルボキシ基は、重合性基でもあり、アニオン性基でもある。
原料色素に含まれる反応性基の数は、好ましくは1又は2である。
【0060】
前記重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、重縮合性基が挙げられる。
【0061】
前記ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基が挙げられる。
前記式(IA)及び(IB)におけるYがラジカル重合性基を有する場合、例えば、Rjがラジカル重合性基を有する場合、該Rjの具体例としては、以下の群(a)で表される基が挙げられる。
【0062】
【化7】
[群(a)中、Rは独立に、水素原子又はメチル基であり、*は、Nに結合する結合手である。]
【0063】
前記重縮合性基としては、例えば、カルボキシ基、クロロカルボニル基、アミノ基、水酸基、イソシアナト基、エポキシ基、酸無水物基が挙げられる。
前記式(IA)及び(IB)におけるYが重縮合性基を有する場合、例えば、Rjが重縮合性基を有する場合、該Rjの具体例としては、以下の群(b)で表される基が挙げられる。
【0064】
【化8】
[群(b)中、*は、Nに結合する結合手である。]
【0065】
前記加水分解性基としては、例えば、-OR、-ORを含む基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基が挙げられ、これらの中でも、-OR、-ORを含む基が好ましい。-ORを含む基としては、アルコキシシリル基が好ましい。
前記-ORとしては、例えば、炭素数1~12の-ORが挙げられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基が挙げられる。
【0066】
前記カチオン性基としては、例えば、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基が挙げられる。
なお、例えば、下記式(I-2)で表される=N+jk等は、前記反応性基としてのカチオン性基ではない。
【0067】
前記アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基、ホスホン酸基、ホスホネート基が挙げられる。
なお、例えば、前記式(IA)で表される-O-は、前記反応性基としてのアニオン性基ではない。
【0068】
【化9】
【0069】
式(II)中、Xは独立に、O、S、Se、N-Rc又はC(Rdd)であり;複数あるRcはそれぞれ独立に、水素原子、La、Lb、Lc、Ld又はLeであり;複数あるRdはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRef基であり、隣り合うRd同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく;La~Le、L1、Re及びRfは、前記式(IA)及び(IB)において定義したLa~Le、L1、Re及びRfと同義である。
複数あるRc及びRdの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。該反応性基としては、前記式(IA)及び(IB)で例示した基と同様の基が挙げられる。
【0070】
前記式(II)中のRcとしては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トルフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基である。
【0071】
前記式(II)中のRdとしては、好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、4-アミノシクロヘキシル基であり、より好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0072】
前記Xとしては、好ましくはO、S、Se、N-Me、N-Et、CH2、C-Me2、C-Et2であり、より好ましくはS、C-Me2、C-Et2である。
【0073】
前記式(II)において、隣り合うRd同士は連結して環を形成してもよい。このような環としては、例えば、ベンゾインドレニン環、α-ナフトイミダゾール環、β-ナフトイミダゾール環、α-ナフトオキサゾール環、β-ナフトオキサゾール環、α-ナフトチアゾール環、β-ナフトチアダゾール環、α-ナフトセレナゾール環、β-ナフトセレナゾール環を挙げることができる。
【0074】
前記式(IA)や式(II)で表される化合物は、下記式(I-1)及び下記式(II-1)のような記載方法に加え、下記式(I-2)及び下記式(II-2)のように共鳴構造を取るような記載方法でも構造を表すことができる。つまり、下記式(I-1)と下記式(I-2)との違い、及び下記式(II-1)と下記式(II-2)との違いは構造の記載方法のみであり、どちらも同一の化合物である。本発明中では特に断りのない限り、下記式(I-1)及び下記式(II-1)のような記載方法にてスクアリリウム系化合物の構造を表すものとする。
これらのことは、前記式(IB)で表される化合物や下記式(III)で表される化合物についても同様である。
【0075】
【化10】
【0076】
さらに、例えば、下記式(I-3)で表される化合物と下記式(I-4)で表される化合物は、同一の化合物であると見なすことができる。
【0077】
【化11】
【0078】
前記式(IA)、(IB)、(II)で表される化合物は、それぞれ前記式(IA)、(IB)及び(II)の要件を満たせば特に構造は限定されない。例えば前記式(I-1)及び前記式(II-1)のように構造を表した場合、中央の四員環に結合している左右の基は同一であっても異なっていてもよい。
【0079】
前記式(IA)及び(II)で表される化合物の具体例としては、下記式(I-A)~(I-H)で表される化合物が挙げられる。
【0080】
【化12】
【0081】
【化13】
【0082】
前記式(I-A)~(I-H)において、Ra1~Ra2はそれぞれ独立に、前記Raと同義であり、Rb1~Rb2はそれぞれ独立に、前記Rbと同義であり、Rcは独立に、前記Rcと同義であり、Rd1~Rd6はそれぞれ独立に、前記Rdと同義であり、Rj1~Rj6はそれぞれ独立に、前記Rjと同義であり、Rk1~Rk4はそれぞれ独立に、前記Rkと同義であり、Rgは独立に、前記Rgと同義であり、Rhは独立に、前記Rhと同義であり、Xは独立に、前記Xと同義である。
【0083】
前記式(IA)、(IB)及び(II)で表される化合物は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開平1-228960号公報、特開2001-40234号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
【0084】
【化14】
【0085】
式(III)中、Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH-であり、R1~R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1又はNRgh基である。Rg及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Le又はC(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ld又はLeである。)である。
1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、Lg又はLhである。
a~Lhは、前記式(IA)及び(IB)において定義したLa~Lhと同義である。
複数あるR1~R7の少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。該反応性基としては、前記式(IA)及び(IB)で例示した基と同様の基が挙げられる。
【0086】
前記R1としては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、水酸基である。
【0087】
前記R2~R7としては、好ましくはそれぞれ独立に、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基であり、より好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、水酸基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基である。
【0088】
前記Xとしては、好ましくは酸素原子、硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0089】
前記式(III)で表される化合物は、前記式(III)の要件を満たせば特に構造は限定されない。例えば前記式(III)のように構造を表した場合、中央の四員環に結合している左右の置換基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であった方が合成上容易であるため好ましい。
【0090】
前記式(III)で表される化合物は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開平1-228960号公報、特開2001-40234号公報、特許第3094037号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
【0091】
b)シアニン系化合物
前記シアニン系化合物は、下記式(IV-1)~(IV-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0092】
【化15】
【0093】
式(IV-1)~(IV-3)中、Xa -は1価の陰イオンであり、
複数あるDは独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子であり、
複数あるRa、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh及びRiはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L1、-S-L2、-SS-L2、-SO2-L3、-N=N-L4、又は、RbとRc、RdとRe、ReとRf、RfとRg、RgとRh及びRhとRiのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)~(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、
前記アミノ基、アミド基、イミド基及びシリル基は、前記式(IA)及び(IB)において定義した置換基Lを有してもよく、
1は、前記式(IA)及び(IB)において定義したL1と同義であり、
2は、水素原子又は前記式(IA)及び(IB)において定義したLa~Leのいずれかであり、
3は、水酸基又は前記La~Leのいずれかであり、
4は、前記La~Leのいずれかであり、
a~Zc及びYa~Ydはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L1、-S-L2、-SS-L2、-SO2-L3、-N=N-L4(L1~L4は、前記Ra~RiにおけるL1~L4と同義である。)、又は、これらのうち隣接した二つから選ばれるZ同士若しくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6~14の芳香族炭化水素基;窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5~6員環の脂環式炭化水素基;若しくは、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも1つ含む、炭素数3~14の複素芳香族炭化水素基;であり、これらの芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素芳香族炭化水素基は、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有してもよい。
複数あるRa、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh及びRiの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する(但し、式(IV-1)~(IV-3)は、該式中に少なくとも1つの反応性基を有する)。該反応性基としては、前記式(IA)及び(IB)で例示した基と同様の基が挙げられる。
【0094】
前記Za~Zc及びYa~Ydにおける、Z同士若しくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける芳香族炭化水素基で例示した化合物が挙げられる。
【0095】
前記Za~Zc及びYa~Ydにおける、Z同士若しくはY同士が相互に結合して形成される、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5乃至6員環の脂環式炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける脂環式炭化水素基及び複素環で例示した化合物(複素芳香族炭化水素基を除く。)が挙げられる。
【0096】
前記Za~Zc及びYa~Ydにおける、Z同士若しくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数3~14の複素芳香族炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける複素環基として例示した化合物(窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも1つ含む脂環式炭化水素基を除く。)が挙げられる。
【0097】
a -は1価の陰イオンであれば特に限定されないが、I-、Br-、PF6 -、N(SO2CF32 -、B(C654 -、ニッケルジチオラート系錯体、銅ジチオラート系錯体などが挙げられる。
【0098】
【化16】
【0099】
式(A)~(H)中、Rx及びRyは炭素原子であり、
複数あるRA~RLはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L1、-S-L2、-SS-L2、-SO2-L3又はN=N-L4(L1~L4は、前記式(IV-1)~(IV-3)において定義したL1~L4と同義である。)であり、前記アミノ基、アミド基、イミド基及びシリル基は、前記置換基Lを有してもよい。
【0100】
前記置換基Lを有してもよいアミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
【0101】
前記置換基Lを有してもよいアミド基としては、アミド基、メチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジブチルアミド基、α-ラクタム基、β-ラクタム基、γ-ラクタム基、δ-ラクタム基などが挙げられる。
【0102】
前記置換基Lを有してもよいイミド基としては、イミド基、メチルイミド基、エチルイミド基、ジエチルイミド基、ジプロピルイミド基、ジイソプロピルイミド基、ジブチルイミド基などが挙げられる。
【0103】
前記置換基Lを有してもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
【0104】
前記-S-L2としては、チオール基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、イソブチルスルフィド基、sec-ブチルスルフィド基、tert-ブチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルスルフィド基、2,6-ジフェニルフェニルスルフィド基、4-クミルフェニルスルフィド基などが挙げられる。
【0105】
前記-SS-L2としては、ジスルフィド基、メチルジスルフィド基、エチルジスルフィド基、プロピルジスルフィド基、ブチルジスルフィド基、イソブチルジスルフィド基、sec-ブチルジスルフィド基、tert-ブチルジスルフィド基、フェニルジスルフィド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルジスルフィド基、2,6-ジフェニルフェニルジスルフィド基、4-クミルフェニルジスルフィド基などが挙げられる。
【0106】
前記-SO2-L3としては、スルホ基、メシル基、エチルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基などが挙げられる。
【0107】
前記-N=N-L4としては、メチルアゾ基、フェニルアゾ基、p-メチルフェニルアゾ基、p-ジメチルアミノフェニルアゾ基などが挙げられる。
【0108】
前記式(IV-1)~(IV-3)で表される化合物は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開2009-108267号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0109】
c)その他のポリメチン系化合物
前記その他のポリメチン系色素としては、スクアリリウム系化合物及びシアニン系化合物以外の化合物であり、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、例えば、特開2019-164269号公報に記載の化合物が挙げられ、一般的に知られている方法で合成すればよい。
前記その他のポリメチン系化合物としては、下記式(V)又は(VII)で表される化合物が好ましい。
【0110】
Cn+An- (V)
[式(V)中、Cn+は下記式(VI)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【0111】
【化17】
[式(VI)中、
ユニットAは、下記式(A-I)~(A-III)のいずれかであり、
ユニットBは、下記式(B-I)~(B-III)のいずれかであり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、又は、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、又は、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基及び複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
Aと下記式(A-III)におけるR1又はR5、YEと下記式(B-III)におけるR5又はR1は、互いに結合して、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基を形成してもよく、
g及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基又は下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子又は下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基又は下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。
ユニットA及びユニットBの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。該反応性基としては、前記式(IA)及び(IB)で例示した基と同様の基が挙げられる。]
【0112】
【化18】
[式(A-I)~(A-III)中の-*は、前記式(VI)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)~(B-III)中の=**は、前記式(VI)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)~(B-III)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子又はNR8-であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基又は下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、又は、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基及び複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
g及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基又は下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【0113】
なお、前記ユニットAが前記式(A-I)であり、前記ユニットBが前記式(B-I)である場合、Cn+は下記式(VI-1)で表される。つまり、前記式(A-I)~(A-III)における「*-」の単結合(-)は、前記式(VI)中のYAが結合している炭素原子とユニットAとの間の単結合に相当し、前記式(B-I)~(B-III)における「**=」の二重結合(=)は、前記式(VI)中のYEが結合している炭素原子とユニットBとの間の二重結合に相当する。
【0114】
【化19】
【0115】
前記YB及びYDはそれぞれ独立に、より好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、YB及びYD同士が互いに結合して形成された4~6員の脂環式炭化水素基(該脂環式炭化水素基は、水素原子、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基、水酸基、ハロゲン原子、=Oから選ばれる置換基R9を有していてもよい。)である。
【0116】
なお、YB及びYDが互いに結合して形成された4~6員の脂環式炭化水素基である場合、式(VI)は、それぞれ、好ましくは、下記式(C-I)~(C-III)で表すことができる。
【0117】
【化20】
【0118】
【化21】
【0119】
【化22】
【0120】
置換基R9としては、水素原子、水酸基、=O、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基が好ましく、水素原子、水酸基、=O、メチル基、エチル基、tert-ブチル基がより好ましい。
【0121】
前記YA、YC及びYEはそれぞれ独立に、より好ましくは、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、水酸基、フェニルアミノ基(NHPh)、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチル基、メトキシ基、フェニル基、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、-S-(4-tolyl)基である。
【0122】
前記Laは、好ましくは、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基(tert-Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基である。
【0123】
前記Laは、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2-メチル-1-プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基であってもよい。
【0124】
前記Lbにおける炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基としては、例えば、炭素数1~15のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられ、好ましくは、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基である。
【0125】
前記Lcにおける置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基及びアダマンチル基等の多環脂環式基が挙げられる。
【0126】
前記Ldにおける置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、好ましくは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基(トリメチルフェニル基)、クメニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジル基(CH2Ph)である。
【0127】
前記Leにおける置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基としては、好ましくは、フラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、モルホリン、ピリジンである。
【0128】
前記Lfにおける-ORとしては、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシ基(OPh)、4-メチルフェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。
【0129】
前記Lgにおける置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基としては、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、4-プロピルベンゾイル基、トリフルオロメチルカルボニル基である。
【0130】
前記Lhにおける置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基としては、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-トリフルオロメチルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基である。
【0131】
前記Xは、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、-NR8-であり、特に好ましくは、酸素原子である。
【0132】
式(VI)において、左右のユニットA及びBは同一であっても異なってもよいが、同一であることが合成上容易であるため好ましい。
なお、ここで、ユニットA及びBが同一である組み合わせは、式(A-I)と式(B-I)、式(A-II)と式(B-II)、式(A-III)と式(B-III)である。
【0133】
前記R1~R6はそれぞれ独立に、好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基(NMe2)、ジエチルアミノ基(NEt2)、ジブチルアミノ基(N(n-Bu)2)、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n-ブチルスルホニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、メトキシ基であり、より好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アミノ基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、メトキシ基である。
【0134】
前記R8としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ベンジル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、tert-ブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ベンジル基である。
【0135】
前記An-としては、一価のアニオンであれば特に制限されないが、好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、PF4 -、過塩素酸アニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンなどが挙げられ、より好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンであり、耐熱性により優れる化合物を容易に得ることができる等の点から、さらに好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンであり、特に好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである。
【0136】
Cn+An- (VII)
[式(VII)中、Cn+は下記式(VIII)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【0137】
【化23】
[式(VIII)中、YA及びYDはそれぞれ独立に、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子及びリン原子から選ばれる少なくとも1つを有する基、水素原子又はハロゲン原子であり、
A~ZC及びYB~YCはそれぞれ独立に、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、リン原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1つを有する基、水素原子若しくはハロゲン原子、又は、ZA~ZCのうち隣接した二つが相互に結合して環を形成していてもよく、YB及びYCが相互に結合して環を形成していてもよく、
ユニットA及びユニットBはそれぞれ独立に、複素芳香環を有する基であり、
ユニットA中の一部の基は、YAと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよく、ユニットB中の一部の基は、YDと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよい。
ユニットA及びユニットBの少なくとも1つは、重合性基、加水分解性基、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つの反応性基を有する。該反応性基としては、前記式(IA)及び(IB)で例示した基と同様の基が挙げられる。]
【0138】
前記式(VIII)におけるユニットAは、下記式(A-I)~(A-III)のいずれかで表される基であることが好ましく、前記式(VIII)におけるユニットBは、下記式(B-I)~(B-III)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0139】
【化24】
[式(A-I)~(A-III)中の-*は、前記式(VIII)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)~(B-III)中の=**は、前記式(VIII)のYDが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)~(B-III)中、Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子又はNR8-であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基又は下記Lb~Liのいずれかであり、
1~R6のうち隣接した二つは相互に結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよく、
式(A-III)中のR1又はR4は、前記式(VIII)中のYAと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよく、
式(B-III)中のR1又はR4は、前記式(VIII)中のYDと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよく、
8は水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記Lb~Liのいずれかであり、
g及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基又は下記Lb~Lfのいずれかであり、
iは下記Lb~Lfのいずれかであり、
(Lb):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lc):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Lf):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lg):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Li):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記Lb~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【0140】
なお、前記-NR8-は下記式(a)で表される基であり、前記-NRgh基は下記式(b)で表される基であり、前記-SRi基は下記式(c)で表される基であり、前記-SO2i基は下記式(d)で表される基であり、前記-OSO2i基は下記式(e)で表される基であり、前記-C(O)Ri基は下記式(f)で表される基である。
また、前記-SSQ2は-S-S-Q2で表される基であり、前記-SO23は下記式(d)で表される基において、RiをQ3に置き換えた基である。
【0141】
【化25】
【0142】
なお、前記式(VIII)におけるユニットAが前記式(A-I)であり、前記式(VIII)におけるユニットBが前記式(B-I)である場合、Cn+は下記式(VIII-1)で表される。つまり、前記式(VIII)における式(A-I)~(A-III)における「*-」の単結合(-)は、前記式(VIII)中のYAが結合している炭素原子とユニットAとの間の単結合に相当し、前記式(B-I)~(B-III)における「**=」の二重結合(=)は、前記式(VIII)中のYDが結合している炭素原子とユニットBとの間の二重結合に相当する。
【0143】
【化26】
【0144】
前記「ユニットA中の一部の基は、YAと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよい」とは、好ましくは、式(A-III)中のR1又はR4が、前記式(VIII)中のYAと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよいことを示し、
前記「ユニットB中の一部の基は、YDと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよい」とは、好ましくは、式(B-III)中のR1又はR4が、前記式(VIII)中のYDと結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよいことを示す。
【0145】
前記式(VIII)におけるYA及びYDはそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~8の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(n-Pr)、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基(n-Bu)、sec-ブチル基、tert-ブチル基(t-Bu)、シクロヘキシル基、フェニル基(Ph)であり、さらに好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基であり、特に好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、エチル基である。
【0146】
前記式(VIII)におけるYB及びYCはそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、-SO23、又は、YB及びYCが相互に結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基;窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい5~6員の脂環基;若しくは、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基;を形成していてもよく、これらの脂環基、芳香族炭化水素基及び複素芳香族基は、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有してもよく、
g及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基又は前記Lb~Lfのいずれかであり、Q1は、前記式(VIII)におけるLb~Lgのいずれかであり、Q2は、水素原子又は前記式(IV)におけるLb~Lfのいずれかであり、Q3は、水酸基又は前記Lb~Lfのいずれかであり、Riは前記式(VIII)におけるLb~Lfのいずれかである。
【0147】
前記式(VIII)におけるYB及びYCはそれぞれ独立に、より好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、YB及びYC同士が相互に結合して形成された5又は6員の脂環式炭化水素基(該脂環式炭化水素基は、水素原子、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基及びハロゲン原子から選ばれる置換基R9を有していてもよい。)であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基、tert-ブチル基、YB及びYC同士が相互に結合して形成された5員の脂環式炭化水素基、YB及びYC同士が相互に結合して形成された置換基R9を有する6員の脂環式炭化水素基である。
なお、YB及びYC同士が相互に結合して形成された5又は6員の脂環式炭化水素基である場合、式(VIII)は、好ましくは、下記式(D-I)、(D-II)で表すことができる。
【0148】
【化27】
【0149】
式(D-I)において、R9は、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、tert-ブチル基がより好ましい。
【0150】
【化28】
【0151】
前記式(VIII)におけるZA~ZCはそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、-SO23、又は、ZA~ZCのうち隣接した二つが相互に結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基:窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい5~6員の脂環基;若しくは、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基;を形成していてもよく、これらの脂環基、芳香族炭化水素基及び複素芳香族基は、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有してもよく、
g及びRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基又は前記式(VIII)におけるLb~Lfのいずれかであり、Q1は、前記式(VIII)におけるLb~Lgのいずれかであり、Q2は、水素原子又は前記式(VIII)におけるLb~Lfのいずれかであり、Q3は、水酸基又は前記式(VIII)におけるLb~Lfのいずれかであり、Riは前記Lb~Lfのいずれかである。
【0152】
前記式(VIII)におけるZA及びZCはそれぞれ独立に、より好ましくは水素原子である。
前記式(VIII)におけるZBは、より好ましくは、水素原子、塩素原子、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基(NPh2)、メチルフェニルアミノ基、メチル基、フェニル基、4-メチルフェノキシ基(O-(4-tolyl))、-S-(4-tolyl)基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基である。
【0153】
前記式(VIII)におけるLbは、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基(Pent)、ヘキシル基(Hex)、1,1-ジメチルブチル基、オクチル基(Oct)、ノニル基、デシル基、ドデシル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、オクチル基である。
【0154】
前記式(VIII)におけるLbは、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2-メチル-1-プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基であってもよい。
【0155】
前記式(VIII)におけるLcの炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基としては、例えば、炭素数1~15のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられ、好ましくは、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基である。
【0156】
前記式(VIII)におけるLdの置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-ペンチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基、アダマンチル基、1-アダマンチルメチル基等の多環脂環式基が挙げられる。
【0157】
前記式(VIII)におけるLeの置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、好ましくは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジル基(CH2Ph)である。
【0158】
前記式(VIII)におけるLfの置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基としては、好ましくは、フラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、モルホリン、ピリジンである。
【0159】
前記式(VIII)におけるLgの-ORとしては、好ましくは、メトキシ基(OMe)、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基(OBu)、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。
【0160】
前記式(VIII)におけるLhの置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基としては、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、4-プロピルベンゾイル基、トリフルオロメチルカルボニル基である。
【0161】
前記式(VIII)におけるLiの置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基としては、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-トリフルオロメチルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基である。
【0162】
前記式(VIII)におけるXは、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、-NR8-であり、ユニットAやBが、式(A-I)、(A-III)、(B-I)、(B-III)である場合、特に好ましくは、酸素原子、硫黄原子であり、ユニットAやBが、式(A-II)、(B-II)である場合、特に好ましくは、-NR8-である。
【0163】
式(VIII)において、左右のユニットA及びBは同一であっても異なってもよいが、同一であることが合成上容易であるため好ましい。
なお、ここで、ユニットA及びBが同一である組み合わせは、式(A-I)と式(B-I)、式(A-II)と式(B-II)、式(A-III)と式(B-III)である。
【0164】
前記式(VIII)のユニットA及びBにおけるR1~R6はそれぞれ独立に、好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、1-アダマンチル基、1-アダマンチルメチル基、4-ペンチルシクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基(NEt2)、ジブチルアミノ基(NBu2)、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n-ブチルスルホニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、メトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であり、より好ましくは、前記反応性基、前記反応性基を有する基、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、1-アダマンチル基、1-アダマンチルメチル基、4-ペンチルシクロヘキシル基、フェニル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、メトキシ基、ブトキシ基である。
また、R1~R6のうち隣接した二つは相互に結合して炭素数5又は6の環状炭化水素基を形成していてもよい。
【0165】
前記式(VIII)のユニットA及びBにおけるR8としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、ベンジル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、tert-ブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、n-ヘキシル基、ベンジル基である。
【0166】
前記式(VIII)におけるAn-としては、一価のアニオンであれば特に制限されないが、好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、PF4 -、過塩素酸アニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンなどが挙げられ、より好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンであり、耐熱性により優れる化合物を容易に得ることができる等の点から、さらに好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンであり、特に好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである。
【0167】
<環状化合物>
前記環状化合物は、前記色素構造をゲストとし、該環状化合物をホストとする包摂化合物構造を形成することができるような環状化合物であれば特に制限されない。
前記色素多量体に含まれる環状化合物は、2種以上であってもよいが、通常1種である。
【0168】
前記環状化合物は、炭素原子以外のヘテロ原子を含むことが好ましく、該環状化合物の環を構成する原子として、ヘテロ原子を含むことがより好ましく、該ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子等の水素結合を形成し得る原子が好ましい。
なお、環状化合物の環を構成する原子とは、例えば、下記式(R2)で表される環状化合物の場合、C、N、L及びXのこという。
【0169】
前記環状化合物の具体例としては、シクロデキストリン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレン、環状アミド化合物が挙げられる。
【0170】
シクロデキストリンとしては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンが挙げられる。
【0171】
クラウンエーテルは、エチレンオキシ単位が結合して環を形成している化合物であり、一部のエチレンオキシ単位のエチレン基は、フェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、一部のエチレンオキシ単位の酸素原子は、-NH-基等で置換されていてもよい。
クラウンエーテルの具体例としては、12-クラウン-4-エーテル(1,4,7,10-テトラオキサシクロドデカン)、15-クラウン-5-エーテル(1,4,7,10,13-ペンタオキサシクロペンタデカン)、18-クラウン-6-エーテル、(1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカン)、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、ジアザ-18-クラウン-6-エーテルが挙げられる。
【0172】
シクロファンは、フェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基と、アルキレン基(好ましくは炭素数1~5のアルキレン基)等の2価の脂肪族炭化水素基とが交互に結合して環を形成している化合物であり、前記2価の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基は、硫黄原子又は-NH-基等で置換されていてもよい。
シクロファンの具体例としては、2価の芳香族炭化水素基と2価の脂肪族炭化水素基とからなる構成単位の繰り返し数が、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である化合物が挙げられる。
【0173】
カリックスアレンは、ヒドロキシフェニレン基、tert-ブチル-ヒドロキシフェニレン基等のフェノール性ヒドロキシ基を有する2価の芳香族炭化水素基と、アルキレン基(好ましくは炭素数1~5のアルキレン基)等の2価の脂肪族炭化水素基とが交互に結合して環を形成している化合物であり、前記2価の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基は、硫黄原子又は-NH-基等で置換されていてもよい。
カリックスアレンの具体例としては、フェノール性ヒドロキシ基を有する2価の芳香族炭化水素基と、2価の脂肪族炭化水素基とからなる構成単位の繰り返し数が、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である化合物が挙げられる。
【0174】
環状アミド化合物は、少なくとも1つのアミド結合が、環状化合物の環を構成している環状化合物であり、具体的には、アミド結合と、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環基及び2価の脂肪族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つとが結合して環を形成している化合物が挙げられる。
環状化合物の環を構成しているアミド結合の数は、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上であり、好ましくは6つ以下、より好ましくは5つ以下である。
環状アミド化合物は、フェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基又はピリジンジイル基等の2価の芳香族複素環基を含むことが好ましい。
【0175】
前記環状化合物としては、これらの中でも、包接による耐性効果を十分発揮できる等の点から、環状アミド化合物が好ましい。
該環状アミド化合物としては、下記式(R1)で表される化合物が好ましい。
【0176】
【化29】
[La1、La2及びLb1はそれぞれ独立に、二価連結基である。]
【0177】
La1及びLa2は、-L-Ar1-L-で表される基であることが好ましい。
La1及びLa2は、同一でも、異なっていてもよいが、合成容易性等の点から、同一の基であることが好ましい。
【0178】
前記Lとしては、単結合又は炭素数1~20のアルキレン基が挙げられ、好ましくは、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基である。
【0179】
前記Ar1としては、置換基を有していてもよい2価の芳香環含有基が挙げられる。
該芳香環含有基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素環;チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フラン、ベンゾフラン(1-ベンゾフラン)、イソベンゾフラン(2-ベンゾフラン)、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、フタラジン、キナゾリン、ナフチリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン等の芳香族複素環;から2つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
該取り除かれる水素原子の位置は特に制限されないが、例えば、ベンゼン環の場合、メタ位又はパラ位が好ましい。
【0180】
また、前記Ar1としては、下記群(c)で表される基も挙げられる。
【0181】
【化30】
[*は、結合手を示す。]
【0182】
前記Ar1が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基、これら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミノ基の塩が挙げられる。
【0183】
前記Lb1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
式(R1)中に含まれる2つのLb1は、同一でも、異なっていてもよいが、合成容易性等の点から、同一の基であることが好ましい。
【0184】
前記2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、前記Ar1で例示した芳香族炭化水素環から2つの水素原子を取り除いた基が挙げられ、該取り除かれる水素原子の位置は特に制限されないが、例えば、ベンゼンの場合、メタ位又はパラ位が好ましい。
【0185】
前記2価の芳香族複素環基としては、例えば、前記Ar1で例示した芳香族複素環から2つの水素原子を取り除いた基が挙げられ、該取り除かれる水素原子の位置は特に制限されないが、例えば、ピリジンの場合、2位と4位との組合せ、又は、2位と6位との組合せが好ましい。
【0186】
前記Lb1が有していてもよい置換基としては、例えば、前記Ar1で例示した置換基と同様の基が挙げられる。
【0187】
前記式(R1)で表される化合物の好適例としては、下記群(d)で表される化合物が挙げられる。
【0188】
【化31】
【0189】
前記群(d)中のXはそれぞれ独立に、N又はCRである。
前記群(d)中のR及び前記XにおけるRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基である。
【0190】
前記式(R1)で表される化合物としては、下記式(R2)で表される化合物が好ましい。
【0191】
【化32】
[Lは独立に、単結合又は二価連結基であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、Xはそれぞれ独立に、CH又はNである。]
【0192】
前記式(R2)のLにおける二価連結基としては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基が挙げられ、好ましくは、炭素数1~4のアルキレン基である。
式(R2)中に含まれる4つのLは、同一でも、異なっていてもよいが、合成容易性等の点から、同一の基であることが好ましい。
【0193】
前記式(R2)のRにおける置換基としては、例えば、前記Ar1で例示した置換基と同様の基が挙げられる。
【0194】
前記環状化合物としては、これらの中でも、包接による耐性効果を十分発揮できる等の点から、下記群(e)で表される化合物が特に好ましい
【0195】
【化33】
【0196】
前記環状アミド化合物の合成方法は特に制限されず、従来公知の方法が挙げられるが、具体例としては、p-キシリレンジアミン等のジアミン化合物と、イソフタロイルクロリド等のジハロゲン化カルボニル化合物とを反応させる方法が挙げられる。この反応の際には、必要により有機溶媒を用いてもよい。
この際の反応温度は、好ましくは-20℃~60℃、より好ましくは10℃~40℃であり、反応時間は、好ましくは1~60時間である。
【0197】
<本色素多量体の構造>
本色素多量体は、色素構造を有する繰り返し単位を含み、前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物構造を有する。
【0198】
前記色素構造を有する繰り返し単位の具体例としては、
重合性基又は加水分解性基を有する色素由来の繰り返し単位(i)、
重合性基を有する原料色素及び該原料色素以外の重合性化合物由来の繰り返し単位(ii)、
カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を有する樹脂由来の繰り返し単位であり、該樹脂に含まれるイオン性基に対する対イオンとして、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を含有する色素構造を有する繰り返し単位(iii)[但し、該繰り返し単位(iii)は、2つ以上の色素構造を有する]、又は、
2つ以上の反応性基を有するコアの各反応性基に、原料色素が結合した、所謂、ミクロゲル構造又はスターバースト構造である繰り返し単位(iv)
が挙げられる。
【0199】
・繰り返し単位(i)
前記繰り返し単位(i)としては、具体的には、下記式(1)又は(2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0200】
【化34】
【0201】
式(1)において、Xは前記原料色素における重合性基又は加水分解性基が反応(重合)することによって形成される連結基であり、Dyeは前記原料色素の重合性基又は加水分解性基が反応(重合)した後の色素残基であり、mは1又は2である。
【0202】
前記式(1)中、Xは、前記原料色素における重合性基又は加水分解性基が反応(重合)することによって形成される、主鎖に相当する繰り返し単位を形成する部分を指す。
前記Xとしては、例えば、下記(X-1)~(X-15)で表される基が挙げられる。下記(X-1)~(X-15)において*で示された部位でDyeと連結していることを表す。
なお、下記(X-2)は、例えば、前記原料色素における重合性基がCH2=CH-である場合に相当する。
【0203】
【化35】
【0204】
【化36】
【0205】
式(2)は、前記原料色素が有する2つの重縮合性基が反応(重合)した繰り返し単位であり、nは、例えば2以上の整数である。
【0206】
前記繰り返し単位(i)を有する本色素多量体としては、例えば、重合性基を有する原料色素の重合性基を重合させた重合体をゲストとする包摂化合物、加水分解性基を有する原料色素の加水分解縮合物をゲストとする包接化合物、2つの重縮合性基を有する原料色素を重縮合(単独重縮合)させた重合体をゲストとする包摂化合物が挙げられる。
該重合体は、1種の原料色素の単独重合体であってもよく、2種以上の原料色素の共重合体であってもよい。
前記重合としては、重合性基の種類にもよるが、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合が挙げられ、これらの中でもラジカル重合が好ましい。
前記重合及び重縮合は、従来公知の方法で行えばよい。
【0207】
・繰り返し単位(ii)
前記繰り返し単位(ii)としては、具体的には、下記式(3)又は(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0208】
【化37】
【0209】
式(3)において、X、Dye及びmは前記式(1)におけるX、Dye及びmと同義であり、Rは、前記原料色素以外の重合性化合物における重合性基又は加水分解性基が反応(重合)することによって形成される連結基である。
【0210】
前記原料色素以外の重合性化合物(以下「コモノマー」ともいう。)の具体例としては、下記樹脂(B)の欄に記載の不飽和単量体(b1)及び不飽和単量体(b2)と同様の化合物が挙げられる。これらの中でも、エチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリル系単量体、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物がより好ましい。
【0211】
【化38】
【0212】
式(4)は、前記原料色素が有する2つの重縮合性基と、前記原料色素以外の重合性化合物(以下「他の重縮合性化合物」ともいう。)における2つの重縮合性基とが反応(重合)した繰り返し単位であり、Dyeは該原料色素由来の構造であり、Rは該他の重縮合性化合物由来の構造であり、nは、例えば2以上の整数である。
【0213】
前記他の重縮合性化合物としては、例えば、前記原料色素が有する2つの重縮合性基と反応して、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレアを形成することができる化合物が挙げられ、カルボキシ基、クロロカルボニル基、アミノ基、水酸基、イソシアナト基、エポキシ基、酸無水物基等の重縮合性基を2つ有する化合物等が挙げられる。
【0214】
前記繰り返し単位(ii)を有する本色素多量体は、例えば、重合性基を有する色素化合物と前記コモノマーとを共重合させた共重合体をゲストとする包摂化合物、2つの重縮合性基を有する原料色素と前記他の重縮合性化合物とを重縮合(共重縮合)させた共重合体をゲストとする包摂化合物が挙げられる。
該共重合体及び重縮合の際は、2種以上の原料色素を用いてもよく、2種以上の前記コモノマーや前記他の重縮合性化合物を用いてもよい。
前記原料色素の使用量は、前記共重合の際に用いるモノマー100質量%に対し、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~99質量%であり、さらに好ましくは30~99質量%である。
前記共重合としては、重合性基の種類にもよるが、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合が挙げられ、これらの中でもラジカル重合が好ましい。
前記共重合及び重縮合は、従来公知の方法で行えばよい。
【0215】
・繰り返し単位(iii)
前記繰り返し単位(iii)としては、具体的には、下記式(5)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0216】
【化39】
【0217】
式(5)において、X、Dye及びmは前記式(1)におけるX、Dye及びmと同義であり、DyeとXの間の点線は、カチオン性基を有する原料色素のカチオン性基と、アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基とがイオン結合していること、又は、アニオン性基を有する原料色素のアニオン性基と、カチオン性基を有する樹脂のカチオン性基とがイオン結合していることを表す。
【0218】
前記カチオン性基を有する樹脂としては、例えば、下記樹脂(B)に公知の方法でカチオン性基を付与した樹脂が挙げられる。
該カチオン性基としては、例えば、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ジアゾニウムカチオンが挙げられる。
前記アニオン性基を有する樹脂としては、例えば、下記樹脂(B)に公知の方法でアニオン性基を付与した樹脂が挙げられる。
該アニオン性基としては、例えば、スルホネートアニオン、イミドアニオン、カルボキシレートアニオンが挙げられる。
【0219】
前記繰り返し単位(iii)を有する本色素多量体としては、例えば、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を有する樹脂と、該樹脂に含まれるイオン性基に対する対イオンとして、カチオン性基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1つのイオン性基を含有する原料色素とから形成した塩をゲストとする包摂化合物が挙げられる。
該塩を形成する際には、2種以上の原料色素を用いてもよく、2種以上の前記樹脂を用いてもよい。
該塩を形成する方法は、従来公知の方法で行えばよい。
【0220】
・繰り返し単位(iv)
前記繰り返し単位(iv)としては、具体的には、下記式(6)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0221】
【化40】
【0222】
式(6)中、Lはm価のコアであり、Dyeは、前記繰り返し単位(i)、繰り返し単位(ii)又は繰り返し単位(iii)を含む直鎖又は分岐を有する重合体であり、mは2~100の整数である。
mは、好ましくは2~80、より好ましくは2~40、特に好ましくは3~20である。
【0223】
式(6)において、mが2の場合、Lで表される2価のコアとしては、例えば、炭素数1~30の置換若しくは無置換の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換若しくは無置換のヘテロ環基、-CH=CH-、-O-、-S-、-NR-、-C(=O)-、-SO-、-SO2-及びこれらを2個以上連結して形成される基〔例えば、-N(R)C(=O)-、-OC(=O)-、-C(=O)N(R)-、-C(=O)O-、-N(R)C(=O)N(R)-など〕が挙げられる。ここで、前記各式中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基である。
mが3以上のm価のコアは、例えば、置換若しくは無置換のアリーレン基(1,3,5-フェニレン基、1,2,4-フェニレン基、1,4,5,8-ナフタレン基など)、ヘテロ環基(例えば、1,3,5-トリアジン基など)、アルキレン基が挙げられる。
また、前記コアとしては、重合性基を側鎖に2つ以上有する樹脂等も挙げられる。
【0224】
前記繰り返し単位(iv)の具体例として、下記群(f)で表される繰り返し単位が挙げられる。群(f)において、Dyeは、前記繰り返し単位(i)、繰り返し単位(ii)又は繰り返し単位(iii)を含む直鎖又は分岐を有する重合体である。
【0225】
【化41】
【0226】
前記繰り返し単位(iv)を有する本色素多量体としては、例えば、コアとなる化合物又は樹脂中の複数の重合性基それぞれに、前記繰り返し単位(i)、繰り返し単位(ii)又は繰り返し単位(iii)を含む直鎖又は分岐を有する重合体が結合した構造となるように反応させた、ミクロゲル構造体又はスターバースト構造体をゲストとする包摂化合物が挙げられる。
該ミクロゲル構造体又はスターバースト構造体を形成する際には、2種以上の原料色素を用いてもよく、2種以上のコアを用いてもよい。
該ミクロゲル構造体又はスターバースト構造体を形成する方法は、従来公知の方法で行えばよい。
【0227】
<本色素多量体の合成方法>
本色素多量体の合成方法は、色素構造を有する繰り返し単位を含み、前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物が得られれば特に制限されないが、具体的には、下記方法(x)~(z)が挙げられ、下記方法(x)が好ましい。
・方法(x):前記原料色素を合成し、次いで、該原料色素の存在下で、前記環状化合物を合成することで、該原料色素をゲストとし、該環状化合物をホストとする包接化合物を合成した後、原料色素中の反応性基を反応(好ましくは重合)させ、色素構造を有する繰り返し単位を有する本色素多量体を合成する方法
・方法(y):前記原料色素を合成し、次いで、原料色素中の反応性基を反応(好ましくは重合)させ、色素構造を有する繰り返し単位を形成し、その後、色素構造を有する繰り返し単位の存在下で、前記環状化合物を合成することで、該色素構造をゲストとし、該環状化合物をホストとする包接化合物である本色素多量体を合成する方法
・方法(z):前記原料色素の一部を合成し、次いで、得られた色素中間体の存在下で、前記環状化合物を合成することで、該色素中間体をゲストとし、該環状化合物をホストとする包接化合物を合成した後、前記原料色素の残りの部分を合成し、次いで、得られた原料色素中の反応性基を反応(好ましくは重合)させ、色素構造を有する繰り返し単位を有する本色素多量体を合成する方法
【0228】
前記方法(x)~(z)における、原料色素(の一部)の合成方法は、前記色素構造の欄に記載の各色素の合成方法と同様の方法が挙げられ、環状化合物の合成方法は、前記環状化合物の欄に記載の合成方法と同様の方法が挙げられ、反応性基を反応させる方法は、前記本色素多量体の構造の欄に記載の方法と同様の方法が挙げられる。
【0229】
≪着色組成物≫
本発明に係る着色組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、前記本色素多量体を含む。
本組成物に用いる本色素多量体は、1種でもよく、2種以上でもよい。
本組成物中の本色素多量体の含有量は、該本色素多量体が有する効果(例:着色効果、光吸収効果)を十分に発揮できる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~40質量%である。
なお、本組成物の固形分とは、本組成物中の溶媒・分散媒以外の成分のことをいう。
【0230】
<添加剤>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記本色素多量体以外の、従来の着色組成物に用いられてきた公知の添加剤を含んでもよい。
該添加剤としては、前記本色素多量体以外の樹脂(以下「樹脂(B)」ともいう。);重合性化合物;着色剤;光重合開始剤;界面活性剤;溶媒;ガラス、アルミナ等の無機充填剤;密着促進剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定剤;多官能チオール類;ジルコニウム化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物等の金属キレート化合物が挙げられる。
前記添加剤はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0231】
〔樹脂(B)〕
前記樹脂(B)は、例えば、本色素多量体を分散、染色若しくは浸透させる目的で、又はバインダー樹脂として用いられる。
前記樹脂(B)としては、本色素多量体以外の樹脂であれば特に制限されないが、アルカリ現像型の硬化膜形成用の本組成物を得る場合には、前記樹脂(B)として、アルカリ可溶性の樹脂を用いることが好ましい。
本組成物に用いる樹脂(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0232】
前記樹脂(B)がアルカリ可溶性の樹脂である場合、樹脂(B)は、アルカリ溶液に対して可溶であればよく、特に限定されないが、カルボキシ基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を有する重合体であることが好ましい。樹脂(B)は、これらの中でも、カルボキシ基又は酸無水物基を有する樹脂であることが好ましく、例えば、1個以上のカルボキシ基又は酸無水物基を有する不飽和単量体(以下「不飽和単量体(b1)」ともいう。)と、該不飽和単量体(b1)と共重合可能な不飽和単量体(以下「不飽和単量体(b2)」ともいう)との共重合体が挙げられる。
【0233】
前記不飽和単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物、コハク酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p-ビニル安息香酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸が挙げられる。
前記不飽和単量体(b1)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0234】
前記不飽和単量体(b1)に由来する構成単位の含有割合は、アルカリ現像性に優れる着色硬化膜を容易に得ることができる等の点から、樹脂(B)が有する全構成単位100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、溶媒との溶解性に優れる等の点から、樹脂(B)が有する全構成単位100質量%に対し、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0235】
前記不飽和単量体(b2)は、用途等に応じて適宜選択可能であり、特に限定されないが、その具体例としては、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、フェノール性水酸基含有不飽和化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格等を有する不飽和化合物及びその他の不飽和化合物が挙げられる。
前記不飽和単量体(b2)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0236】
前記エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロへキシルメチル、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-2-メチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン、3-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-2-エチルオキセタンが挙げられる。
【0237】
前記水酸基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5-ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシルが挙げられる。
【0238】
前記フェノール性水酸基含有不飽和化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシスチレンが挙げられる。
【0239】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。
【0240】
前記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。
【0241】
前記不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルが挙げられる。
【0242】
前記ビシクロ不飽和化合物としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-t-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(t-ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2’-ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(2’-ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシメチル-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンが挙げられる。
【0243】
前記マレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシベンジル)マレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチレート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドカプロエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオネート、N-(9-アクリジニル)マレイミドが挙げられる。
【0244】
前記不飽和芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メトキシスチレンが挙げられる。
【0245】
前記共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンが挙げられる。
【0246】
前記テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシ-プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3-(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン-2-オンが挙げられる。
【0247】
前記不飽和単量体(b2)に由来する構成単位の含有割合は、樹脂(B)が有する全構成単位100質量%に対し、好ましくは10~80質量%である。
【0248】
前記樹脂(B)は、例えば、溶媒及び重合開始剤の存在下、前記不飽和単量体(b1)及び(b2)を共重合することによって合成することができる。
前記樹脂(B)を合成する際に用いる溶媒としては、例えば、アルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン、エステルが挙げられる。
また、前記樹脂(B)を合成する際に用いる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られている、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や過酸化物等の重合開始剤が挙げられる。
【0249】
前記樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~30,000、より好ましくは5,000~20,000である。
Mwが前記範囲にある樹脂(B)を用いることで、本組成物の感度及び現像性を高めることができる。なお、本明細書における重合体のMw及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0250】
前記樹脂(B)の酸価は、通常50~150、好ましくは60~135、より好ましくは70~135である。
酸価が前記範囲にある樹脂(B)を用いることで、現像液に対する溶解性が向上するため、未露光部が溶解しやすくなることに加え、感度が向上するので現像後の残膜率が向上する。
前記酸価は、樹脂(B)1gを中和するに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、通常は水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
【0251】
本組成物中の樹脂(B)の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%である。
樹脂(B)の含有量が前記範囲にあると、本組成物の製品としての十分な保存安定性を有し、本組成物からカラーフィルターを形成する際に、十分な色濃度を有するカラーフィルターを容易に形成することができる。
【0252】
〔重合性化合物〕
前記重合性化合物としては特に制限されず、従来公知の重合性化合物を用いることができる。
前記重合性化合物としては、重合性基を2個以上有する化合物であることが好ましく、架橋剤として機能する化合物であることが好ましい。
前記重合性化合物の分子量は、好ましくは1,000以下であり、より好ましくは800以下である。
本組成物に用いる重合性化合物は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0253】
前記重合性化合物としては、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、且つ、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し、且つ、3~5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0254】
本組成物中の重合性化合物の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%である。
重合性化合物の含有量が前記範囲にあると、得られる本組成物は、低露光量においても十分な耐熱性、耐溶媒性、電圧保持率を有した着色パターン等を形成できる。
【0255】
〔着色剤〕
前記着色剤としては本色素多量体以外の着色剤であれば特に制限されず、従来公知の着色剤を用いることができ、用途に応じて色彩や種類を適宜選択すればよい。
本組成物に用いる着色剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0256】
前記着色剤としては、顔料、染料、量子ドット及び天然色素のいずれも使用できる。輝度及び色純度の高い画素を得ることができる等の点から、顔料及び染料の少なくともいずれかであることが好ましく、該顔料及び染料は、有機物であることが好ましい。
【0257】
前記色素としては、具体的には、例えば、ジピロメテン色素、ジアリールメタン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素、アントラキノン色素、アゾ色素、キノンイミン色素、ポリメチン色素(オキソノール色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、スチリル色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素等)、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
【0258】
前記顔料の具体例としては、
C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:3,15:6,16,22,60,66等の青色顔料;
C.I.ピグメントバイオレット1,19,23,29,32,36,38,39等のバイオレット色顔料;
C.I.ピグメントイエロー11,24,31,53,83,93,99,108,109,110,138,139,147,150,151,154,155,167,180,185,199等の黄色顔料;
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71等のオレンジ色顔料;
C.I.ピグメントレッド81,105,122,149,150,155,171,175,176,177,209,220,224,242,254,255,264,270等の赤色顔料;
C.I.ピグメントグリーン7,36,37,58,59等の緑色顔料;
C.I.ピグメントブラウン25,28等の茶色顔料;
C.I.ピグメントブラック1等の黒色顔料;
が挙げられる。
【0259】
前記着色剤は、前記色素多量体との濃度比を調整することで透過性に優れる緑色カラーフィルターを作製することができるため、黄色色素を含むことが好ましい。
【0260】
前記着色剤として顔料を用いる場合には、顔料分散剤を用いて分散処理を行うことで、顔料が均一に分散した状態の本組成物を得ることができる。
なお、この場合、本組成物を調製する際に、顔料と顔料分散剤とを用いてもよいが、本組成物を調製する前に、予め、顔料と顔料分散液と分散媒とを混合した顔料分散液を調製し、調製した顔料分散液を用いて本組成物を調製することが好ましい。
【0261】
前記顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性界面活性剤が挙げられ、具体的には、ポリエステル系界面活性剤、ポリアミン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。
前記顔料分散剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0262】
前記顔料分散剤を用いる場合、顔料が均一に分散した顔料分散液を容易に得ることができる等の点から、その使用量は、顔料1質量部に対し、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.05~0.5質量部である。
【0263】
本組成物中の着色剤の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~60質量%である。
着色剤の含有量が前記範囲にあると、得られる本組成物から、機械的強度が十分なパターンを形成しやすく、また、本組成物からカラーフィルターを形成する際には、色濃度が十分であるカラーフィルターを容易に得ることができる。
【0264】
〔重合開始剤〕
本組成物が重合性化合物を含む場合、本組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
前記重合開始剤としては特に制限されず、重合性化合物の種類に応じて従来公知の重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。
本組成物に用いる重合開始剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0265】
前記光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により重合性化合物の重合を開始し得る活性種を発生する化合物である。
このような光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物、オニウム塩系化合物が挙げられる。
これらの中でも、ラジカルを十分に生成することができ、膜硬化を十分に進行させることができる等の点から、オキシム系開始剤を含むことが好ましい。オキシム系開始剤としては、O-アシルオキシム系化合物が好ましい。
【0266】
前記O-アシルオキシム系化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-〔9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、特開2013-037349号公報に記載のO-アシルオキシム化合物が挙げられる。
【0267】
本組成物中の重合開始剤の含有量は、前記重合性化合物100質量部に対し、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
重合開始剤の含有量が前記範囲にあると、低露光量でも高い耐溶媒性等を有する着色パターン及びカラーフィルターを容易に形成できる。
【0268】
〔界面活性剤〕
前記界面活性剤としては特に制限されず、従来公知の界面活性剤を用いることができ、具体例としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、フッ素原子を有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。
本組成物に用いる界面活性剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0269】
本組成物中の界面活性剤の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.1~20質量%である。
重合開始剤の含有量が前記範囲にあると、得られる本組成物から膜を形成する際に、平坦性に優れる膜を容易に得ることができる。
【0270】
〔溶媒〕
前記溶媒としては特に制限されず、従来公知の溶媒を用いることができる。
本組成物に用いる溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0271】
前記溶媒としては、溶解性、顔料分散性、塗布性等の観点から、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸エチル、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オールが挙げられる。
【0272】
本組成物中の溶媒の含有量は、本組成物の固形分が、好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~25質量%となるような量である。
【0273】
≪用途≫
前記本色素多量体及び本組成物の用途は特に制限されないが、例えば、カラーフィルター、光学フィルター、各色画素、層間絶縁膜、平坦化膜、発光層を形成する領域を規定するバンク(隔壁)、ブラックマトリックス、スペーサー、保護膜が挙げられ、これらの中でも、カラーフィルター、光学フィルターが好ましい。
【0274】
<カラーフィルター>
前記カラーフィルターの好適例は、本組成物を用いて得られたカラーフィルターであり、具体的には、本組成物を用いて形成された着色層を有するカラーフィルターである。
該カラーフィルターは輝度及び色純度が高く、表示素子、固体撮像素子、カラーセンサー、有機EL表示素子、電子ペーパー等に好適に用いることができ、表示素子に特に好適に用いることができる。
【0275】
前記カラーフィルターの製造方法としては特に制限されないが、本組成物に、前記アルカリ可溶性の樹脂(B)を用いる場合、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、基板の表面に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するように遮光層(ブラックマトリックス)を形成する。次いで、この基板上に、例えば、緑色の着色組成物を塗布した後、減圧乾燥又はプレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する(膜形成工程)。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光した後(露光工程)、アルカリ現像液を用いて現像する(現像工程)。このとき、ポジ型の場合には塗膜の露光部を溶解除去し、ネガ型の場合には塗膜の未露光部を溶解除去する。その後、ポストベークを行うことにより(加熱工程)、緑色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。
次いで、赤色又は青色の各着色組成物を用い、前記と同様にして各着色組成物の塗布、乾燥、露光、現像及びポストベークを行い、赤色の画素アレイ及び青色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。これにより、緑色、赤色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルターが得られる。なお、各色の画素を形成する順番は特に制限されず、任意の順番で形成すればよい。
前記ブラックマトリックスは、スパッタや蒸着により成膜したクロム等の金属薄膜を、フォトリソグラフィー法を利用して所望のパターンとすることにより形成してもよく、黒色の着色組成物を用いて、前記画素の形成の場合と同様にして形成してもよい。
本発明では、以上の各着色組成物の少なくとも1つとして本組成物を用いる。以上の各着色組成物の全てとして本組成物を用いてもよい。本組成物は、以上の各着色組成物のいずれにも好適に用いることができる。
【0276】
前記基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが挙げられる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておいてもよい。
【0277】
前記着色組成物を基板に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができる。これらのうち特に、均一な膜厚の塗膜を形成することができる等の点から、スピンコート法、スリットダイ塗布法を採用することが好ましい。
【0278】
前記減圧乾燥は、通常、室温にて1~15分、好ましくは1~10分程度実施され、通常、50~200Paに到達する圧力で行われる。
前記プレベークは、ポストベーク温度よりも低温で行えばよい。
前記膜形成工程で形成する塗膜の厚さは、通常0.6~8μm、好ましくは1.2~5μmである。
【0279】
前記露光の際には、放射線を照射することが好ましい。
該放射線の光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源、紫外線LEDが挙げられる。
放射線の波長は、好ましくは190~450nm、より好ましくは300~450nmである。
放射線の露光量は、好ましくは10J/m2以上、より好ましくは100J/m2以上、更に好ましくは200J/m2以上であり、好ましくは10,000J/m2以下、より好ましくは5,000J/m2以下、更に好ましくは2,000J/m2以下である。
【0280】
前記アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。アルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加してもよい。
前記現像の方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法が挙げられる。
現像条件は、常温で5~300秒が好ましい。
なお、前記現像工程後は、通常、水洗する。
【0281】
前記ポストベークの温度は、例えば70~230℃である。ポストベークの温度は、硬化性や耐溶剤性、基板との密着性の向上、色移りの抑制、基板保護等を考慮して、例えば70~120℃、120℃~180℃、180℃~240℃等、用途に応じて加熱温度を設定してもよい。
前記ポストベークの加熱時間は、加熱温度により適宜設定すればよいが、例えば70~120℃の低温で加熱する場合、通常5~120分、好ましくは30~100分である。
【0282】
前記加熱工程後に得られる着色硬化膜(すなわち画素)の膜厚は、通常0.5~5μm、好ましくは1~3μmである。
【0283】
得られた画素アレイ上には、必要に応じて、保護膜を形成した後、透明導電膜をスパッタリングにより形成する。透明導電膜を形成した後、更にスペーサーを形成してカラーフィルターとすることもできる。
該スペーサーは、通常、透明な感光性樹脂組成物を用いて形成されるが、遮光性を有するスペーサー(ブラックスペーサー)としてもよい。遮光性を有するスペーサーを形成する場合、例えば、黒色の感光性着色組成物が用いられる。該感光性着色組成物としては、本組成物を用いてもよい。
【0284】
<表示素子>
前記表示素子の好適例は、本組成物を用いて得られたカラーフィルターを有する表示素子である。
該表示素子の具体例としては、カラー液晶表示素子、有機EL表示素子、電子ペーパーが挙げられる。
【0285】
前記カラー液晶表示素子は、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)の他、白色LEDを光源とするバックライトユニットを具備していてもよい。
前記有機EL表示素子は、適宜の構造をとることが可能であり、例えば、特開平11-307242号公報等に開示されている構造の有機EL表示素子が挙げられる。
前記電子ペーパーは、例えば、特開2007-41169号公報等に開示されている構造の電子ペーパーが挙げられる。
【0286】
<光学フィルター>
前記光学フィルターの好適例は、本組成物を用いて得られた光学フィルターであり、具体的には、本組成物を用いて形成された(近)赤外線遮蔽膜を有する光学フィルターである。
このような(近)赤外線遮蔽膜を有する光学フィルターは、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する。
前記光学フィルターは、固体撮像素子等の光学センサーの光学フィルターとして好適に用いられる。
【0287】
前記光学フィルターは、前記赤外線遮蔽膜のみからなるフィルターであってもよいし、前記赤外線遮蔽膜と他の構成部材とからなるフィルターであってもよい。例えば、当該光学フィルターは、前記赤外線遮蔽膜と他の層とを有する積層体であってもよい。
【0288】
前記赤外線遮蔽膜は、一構成部材として、固体撮像素子等の光学センサーに組み込まれていてもよい。この場合、当該赤外線遮蔽膜が、単体で光学フィルター(赤外線カットフィルター)として機能してもよい。光学センサーに当該赤外線遮蔽膜が組み込まれていることで、大きなプロセスマージンを獲得することなどができ好ましい。赤外線遮蔽膜が固体撮像素子に組み込まれている場合、当該赤外線遮蔽膜は、例えば、固体撮像素子のマイクロレンズの外面側、マイクロレンズとカラーフィルターとの間、カラーフィルターとフォトダイオードとの間などに配置することができる。赤外線遮蔽膜は、マイクロレンズとカラーフィルターとの間又はカラーフィルターとフォトダイオードとの間に積層されることが好ましい。
【0289】
前記光学フィルターとしては、透明基板の表面に前記赤外線遮蔽膜が積層された積層体を含むフィルターであってもよい。
該透明基板としては、ガラスや透明樹脂等が採用される。該透明樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが挙げられる。
【0290】
前記光学フィルターとしては、より幅広い近赤外線領域から赤外線領域の光を遮蔽するため、前記赤外線遮蔽膜上若しくは前記透明基板上に誘電体多層膜を有していてもよい。
該誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層体等が挙げられる。また、赤外線遮蔽膜上に誘電体多層膜を設ける代わりに、誘電体多層膜を有する他の透明基材を素子内に別途配置してもよい。このような光学フィルターも、固体撮像素子における赤外線カットフィルターなどとして好適に用いられる。
【0291】
前記光学フィルターを備える固体撮像素子等の光学センサーは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器等に好適に用いられる。
【実施例0292】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0293】
[合成例1]SQR-1の合成
以下の合成例1-1~1-4に基づいて、下記中間体A~Cを合成し、SQR-1を合成した。
【0294】
【化42】
【0295】
[合成例1-1]中間体Aの合成
窒素置換した反応容器に、2,4-ジメチルジフェニルアミン100.0g、1,2-エポキシシクロヘキサン59.7g、脱水DMF 780mLを加え、室温にて撹拌しながら水素化ナトリウム(油性、60質量%)30.4gを添加し、窒素気流下で内温70℃まで加熱した。水素の発生が終了したことを確認した後、内温100℃まで昇温し、同温度にて24時間撹拌した。次いで、反応混合物を4Lのイオン交換水に投入して酢酸エチルで2回抽出し、有機層を合わせイオン交換水で2回洗浄した。洗浄後の有機層をロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮後、室温で減圧乾燥して水素化ナトリウム由来の鉱油を含む中間体Aを174g得た。
【0296】
[合成例1-2]中間体Bの合成
反応容器に、中間体A 14.1g、2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸(共栄社化学(株)製、商品名「ライトエステルHO-MS(N)」)15.0g、4-ジメチルアミノピリジン3.3g、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド15.6gを加え、ジクロロメタン500mLに溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で10時間撹拌した。次いで、反応溶液に、1M希塩酸300mLを添加し、1時間撹拌を行った。得られた混合液からジクロロメタン溶液を分層により抽出し、濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで中間体Bを14.2g得た。
【0297】
[合成例1-3]中間体Cの合成
冷却管を備えた反応容器に、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオンを1.0g、中間体Bを8.5g加え、クロロベンゼン60mL、1-ブタノール30mLの混合溶媒に溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で撹拌しながら110℃に加熱し、同温度にて10時間撹拌を行った。次いで、室温まで冷却した後、濃縮することで得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1(v/v))にて精製することで、中間体Cを6.5g得た。
【0298】
[合成例1-4]SQR-1の合成
反応容器に、中間体Cを1.0g、トリエチルアミンを2mL加え、クロロホルム200mLに溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で撹拌しながら、そこに、p-キシリレンジアミン0.6gをクロロホルム75mLに溶解させた溶液と、イソフタロイルクロリド0.9gをクロロホルム25mLに溶解させた溶液とをそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下完了後、追加で3時間撹拌を行った。得られた溶液をセライトろ過し、ろ液を濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1(v/v))にて精製することで、SQR-1を1.1g得た。
【0299】
[合成例2]SQR-2の合成
反応容器に、中間体A 18.0g、無水メタクリル酸14.0g、4-ジメチルアミノピリジン1.9g、ピリジン46.5gを加え、ジクロロメタン130mLに溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で10時間撹拌した。次いで、反応溶液に1M希塩酸300mLを添加し、1時間撹拌を行った。この混合液からジクロロメタン溶液を分層により抽出し、濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで中間体Dを9.2g得た。
【0300】
【化43】
【0301】
得られた中間体Dを中間体Bの代わりに用いた以外は、合成例1と同様にして、下記SQR-2を得た。
【0302】
【化44】
【0303】
[合成例3]SQR-3の合成
合成例2において、イソフタロイルクロリドの代わりに、2,6-ピリジンジカルボニルジクロリドを用いたこと以外は合成例2と同様にして、下記SQR-3を得た。
【0304】
【化45】
【0305】
[合成例4]SQR-4の合成
以下の合成例4-1~4-4に基づいて、下記中間体E~Gを合成し、SQR-4を合成した。
【0306】
【化46】
【0307】
[合成例4-1]中間体Eの合成
窒素置換した反応容器に、前記中間体A17.4g、ヨードメタン10.8g、脱水DMF 78mLを加え、内温10℃まで冷却した。この溶液に対し、同温度で水素化ナトリウム(油性、60質量%)24.3gを分割添加した後、室温に戻し、水素の発生の状況を確認しつつ、内温が60℃になるまで撹拌した。水素の発生が終了したことを確認した後、内温70℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した。その後、反応混合物を400mLのイオン交換水に投入して酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層をイオン交換水で2回洗浄し、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、室温で減圧乾燥した。得られた粗生成物の固体を、ヘキサン10mLで室温にて1時間スラリー洗浄することで、中間体Eを9.6g得た。
【0308】
[合成例4-2]中間体Fの合成
冷却管を備えた反応容器に、中間体E3.0g、3,4-ジクロロシクロブテン-1,2-ジオン1.3gを加え、トルエン100mLに溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で撹拌しながら110℃に加熱し、同温度にて6時間撹拌を継続した。次いで、室温まで冷却した後、得られた溶液を氷水200mLに添加し、トルエン層を分層により抽出した。得られたトルエン溶液を濃縮し、粗生成物を得た。冷却管を取り付けた反応容器にこの粗生成物を添加し、THF 30mLに溶解させた。撹拌しながら6N HClを10mL添加し、85℃に昇温し、さらに12時間撹拌を続けた。室温に冷却した後、濃縮により粗生成物を得た。得られた粗生成物を少量のエタノール及びノルマルヘキサンで洗浄することで中間体Fを2.5g得た。
【0309】
[合成例4-3]中間体Gの合成
冷却管を備えた反応容器に、中間体Dを4.0g、中間体Fを4.5g加え、クロロベンゼン60mL、1-ブタノール30mLの混合溶媒に溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で撹拌しながら110℃に加熱し、同温度にて10時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、濃縮することで得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1(v/v))にて精製することで、中間体Gを5.7g得た。
【0310】
[合成例4-4]SQR-4の合成
中間体Gを中間体Cの代わりに用いたこと以外は合成例1と同様にして、下記SQR-4を得た。
【0311】
【化47】
【0312】
[合成例5]SQR-5の合成
無水メタクリル酸の代わりに無水アクリル酸を用いたこと以外は、合成例2と同様にして、下記SQR-5を得た。
【0313】
【化48】
【0314】
[合成例6]SQR-6の合成
以下の合成例6-1~6-5に基づいて、下記中間体H~Kを合成し、SQR-6を合成した。
【0315】
【化49】
【0316】
[合成例6-1]中間体Hの合成
窒素置換した反応容器に、4-メトキシ-2-メチルジフェニルアミン21.3g、2-(2-ブロモエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン25.1g、脱水DMF 150mLを加え、室温にて撹拌しながら水素化ナトリウム(油性、60質量%)8.0gを添加し、窒素気流下で、同温度で24時間撹拌した。次いで、反応混合物を750mLのイオン交換水に投入し、酢酸エチルで2回抽出し、有機層を合わせイオン交換水で2回洗浄した。洗浄後の有機層を、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮後、室温で減圧乾燥することで油状の粗生成物を得た。この粗生成物を、メタノール270mL、1,2-ジメトキシエタン125mLの混合溶媒に溶解し、1M塩酸20mLを加え、室温で6時間撹拌した。その後、2質量%水酸化ナトリウム水溶液45gを加え、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、大部分のメタノールと1,2-ジメトキシエタンとを留去することで得られた混合物を、酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層をイオン交換水で2回洗浄後、洗浄後の有機層をロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、中間体Hを21.7g得た。
【0317】
[合成例6-2]中間体Iの合成
冷却管を備えた反応容器に、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオンを3.0g、中間体Hを7.5g加え、クロロベンゼン180mL、1-ブタノール90mLの混合溶媒に溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で撹拌しながら110℃に加熱し、同温度にて10時間撹拌を行った。次いで、室温まで冷却した後、濃縮することで得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1(v/v))にて精製することで、中間体Iを8.1g得た。
【0318】
[合成例6-3]中間体Jの合成
反応容器に、中間体I 5.9g、ピリジン2.4g、ジクロロメタン60mLを加え、内温が10℃以下になるまで冷却した。得られた溶液に、同温度で無水酢酸2.4gを滴下した後、室温まで昇温し、窒素気流下、同温度で1時間撹拌した。得られた反応混合物に60mLのイオン交換水を投入して室温で1時間撹拌した。ジクロロメタン有機層を分離し、該有機層を、1M塩酸、イオン交換水で順次洗浄し、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、得られた固体をジイソプロピルエーテルで洗浄して、中間体Jを6.5g得た。
【0319】
[合成例6-4]中間体Kの合成
中間体Jを中間体Cの代わりに用いた以外は、合成例1-4と同様にして、中間体Kを得た。
【0320】
[合成例6-5]SQR-6の合成
反応容器に、得られた中間体K 7.5gを加え、メタノール200mLに溶解させた。この溶液を撹拌しながら冷却し、水素化ナトリウム(油性、60質量%)7.5gを少量ずつ添加した。撹拌しながら、反応溶液を室温まで昇温し、さらに6時間撹拌を継続した。得られた反応溶液に2M希塩酸を400mL添加し、さらに1時間撹拌を行った。得られた反応液にクロロホルムを300mL添加し、分層によりクロロホルム層を抽出した。このクロロホルム層を濃縮し、ノルマルヘキサンで洗浄することでSQR-6を6.5g得た。
【0321】
[合成例7]SQR-7の合成
反応容器に、SQR-6 1.0g、N-(t-ブトキシカルボニル)-β-アラニン3.5g、4-ジメチルアミノピリジン2.0g、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド4.7gを加え、ジメチルホルムアミド30mLに溶解させた。この溶液を窒素気流下で10時間撹拌した。次いで、得られた反応溶液に、1M希塩酸200mLを添加し、1時間撹拌を行った。得られた混合液に、クロロホルム300mLを添加し、クロロホルム溶液を分層により抽出し、濃縮することで、粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで、SQR-7を0.7g得た。
【0322】
【化50】
【0323】
[合成例8]SQR-9の合成
合成例4-3及び合成例6と同様の方法により、下記SQR-8を得た。
冷却管を備えた反応容器に、SQR-8 1.0g、トリエチルアミン0.4mLを加え、クロロホルム30mLに撹拌しながら溶解させた。得られた溶液に、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート1.4mLを添加し、窒素気流下で撹拌しながら80℃まで昇温した。80℃を維持しながら、さらに6時間撹拌を行った。得られた溶液を室温まで冷却した後、濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をノルマルヘキサンで洗浄することで、SQR-9を0.7g得た。
【0324】
【化51】
【0325】
[合成例9]SQR-10の合成
反応容器に、SQR-8 1.2g、4-ピリジンカルボン酸0.4g、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド0.8g、ジメチルアミノピリジン0.1gを加え、DMF 10mLに溶解させて、室温にて1時間撹拌した。その後、酢酸エチル50mL、イオン交換水40mL、1M塩酸10mLを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を合わせイオン交換水で洗浄後、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、得られた残渣を60℃で減圧乾燥することで着色固体を得た。次いで、反応容器に、得られた固体、ヨードメタン12.6g、アセトニトリル40mLを加え、窒素気流下、還流条件にて7時間撹拌した。その後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、得られた残渣を酢酸エチルで洗浄後、60℃で減圧乾燥することで、SQR-10を1.3g得た。
【0326】
【化52】
【0327】
[合成例10]SQR-11の合成
反応容器に、SQR-8 1.2g、4-スルホ安息香酸ナトリウム0.7g、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド0.8g、ジメチルアミノピリジン0.1gを加え、DMF 30mLに溶解させて、室温にて1時間撹拌した。その後、減圧条件下で大部分のDMFを留去し、残渣にイオン交換水10mLを添加して5℃に冷却して固体を析出させた。得られた固体をろ取し、酢酸エチルで洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、SQR-11を0.8g得た。
【0328】
【化53】
【0329】
[実施例1-1]ラジカル重合体SQRP-1の合成
反応容器に、SQR-1 2.8g、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学(株)製:STMP)1.1gを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15mLに溶解させた。窒素気流下にて撹拌しながら、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製:V-65)0.1gを添加し、70℃に昇温した。その温度を保った状態で3時間撹拌の後、V-65をさらに0.1g添加し、3時間撹拌を継続した。得られた溶液を室温まで冷却した後、ノルマルヘキサン500mLに添加した。析出物を濾過により得ることで、SQRP-1(色素多量体)を2.6g得た。
得られたSQRP-1は、Mw=20,000、Mn=7,000であることをGPCにて確認した。
【0330】
【化54】
【0331】
[実施例1-2~1-7]
表1に示す色素(モノマー)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、重合体SQRP-2~SQRP-7(色素多量体)を得た。
なお、100質量%のSQR-1の代わりに、実施例1-6では、75質量%のSQR-2と、25質量%の2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを用い、実施例1-7では、50質量%のSQR-2と、50質量%のメチルメタクリレートとを用いた。
【0332】
【表1】
【0333】
[実施例1-8]重縮合体の合成
反応容器に、SQR-6 1.0g、トリエチルアミン0.2mLを添加し、ジクロロメタン20mLに溶解させた。窒素気流下にて得られた溶液を撹拌しながら0℃まで冷却し、アジピン酸ジクロリドを0.2g添加した。その後室温まで昇温し、3時間撹拌を行った。得られた反応溶液に、水を30mL添加し、ジクロロメタン溶液を分層により抽出した。得られたジクロロメタン溶液を濃縮し、粗生成物を得た後にノルマルヘキサンで洗浄することで、SQRP-8(色素多量体)を0.8g得た。
得られたSQRP-8は、Mw=18,000、Mn=10,000であることをGPCにて確認した。
【0334】
【化55】
【0335】
[実施例1-9~1-11]
表2に示す色素及びその他モノマーを用いた以外は実施例1-8と同様にして、SQRP-9~SQRP-11(色素多量体)を得た。
【0336】
【表2】
【0337】
[実施例1-12]加水分解縮合による重合体合成
反応容器に、SQR-9を2.8g添加し、プロピレングリコールモノエチルエーテル7.7gに溶解させた後、窒素気流下にて撹拌しながら70℃に昇温した。得られた溶液に、水0.2g、5質量%のシュウ酸水溶液を0.01g添加し、2時間撹拌を継続した。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、プロピレングリコールモノエチルエーテル10.7gを加え、エバポレーターを用いて減圧濃縮することにより、水分及び反応で生成したエタノールを除去してSQRP-12(色素多量体)の溶液を得た。その後、プロピレングリコールモノエチルエーテルを加え、固形分濃度が20.0質量%になるよう調整した。得られたSQRP-12は、Mw=12,000、Mn=8,300であることをGPCにて確認した。
【0338】
[実施例1-13]色素とアニオン性基含有重合体との塩
冷却管を取り付けた反応容器に、p-(ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩10.5g、メタクリル酸(MA)1.5g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP)0.4gを加え、シクロヘキサノン(CHN)25.4g、n-ブタノール59.2gに溶解させた。得られた溶液を、窒素気流下で撹拌しながら75℃まで加熱した。同温度で撹拌しながら、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株)製:V-70)0.8gを添加し、更に4時間撹拌を続けた。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、アセトン60gを加えて均一な溶液とし、得られた溶液をヘキサン1.1Lに滴下した。生成した析出物をろ取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥することで、下記構造式で表されるアニオン性基含有重合体(A-1)を15.0g得た。
得られた重合体(A-1)は、Mwが11,100、Mnが6,900であることをGPCにより確認した。
【0339】
【化56】
【0340】
前記で合成した重合体(A-1)2.0gをアセトン40mLに溶解した。次に、下記スキームに示すように、重合体(A-1)の共重合比より算出される、p-(ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩由来の構成単位のモル数に対して当モル量のSQR-10を加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧下で濃縮することで得られた残渣に対し、イオン交換水200mLを加えて生じた析出物をろ取し、水洗した。得られた固体を50℃で減圧乾燥して、下記構造式で表されるSQRP-13(色素多量体)を2.61g得た。
【0341】
【化57】
【0342】
[実施例1-14]色素とカチオン性基含有重合体との塩
冷却管を取り付けた反応容器に、メタクリロイルプロピルトリメチルアンモニウムクロリド10.5g、MA 1.5g、HEMA 2.0g、PEMP 0.4gを加え、CHN 25.0g、n-ブタノール60.0gに溶解させた。得られた溶液を窒素気流下で撹拌しながら75℃まで加熱した。同温度で撹拌しながら、V-70 0.8gを添加し、更に4時間撹拌を続けた。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、アセトン60.0gを加えて均一な溶液とし、得られた溶液を1.10Lのヘキサンに滴下した。生成した析出物をろ取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥することで、下記構造式で表されるカチオン性基含有重合体(A-2)を15.0g得た。
得られた重合体(A-2)は、Mwが10,500、Mnが7,000であることをGPCにより確認した。
【0343】
【化58】
【0344】
前記で合成した重合体(A-2)2.0gをアセトン40.0mLに溶解した。次に、下記スキームに示すように、重合体(A-2)の共重合比より算出される、アンモニウム塩由来の構成単位のモル数に対して当モル量のSQR-11を加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧下で濃縮することで得られた残渣に対し、イオン交換水200mLを加えて生じた析出物をろ取し、水洗した。得られた固体を50℃で減圧乾燥して、下記構造式で表されるSQRP-14(色素多量体)を2.6g得た。
得られたSQRP-14は、Mwが12,600、Mnが7,500であることをGPCにより確認した。
【0345】
【化59】
【0346】
[黄色染料1の合成]
特許第4317152号を参考に、下記黄色染料1を合成した。
【0347】
[黄色染料2の合成]
特開2017-142488号公報を参考に合成した黄色染料モノマーを用いたこと以外は、黄色染料1の合成と同様にして、下記黄色染料2を合成した。
【0348】
[黄色染料4の合成]
英国特許出願公開第001297116号明細書を参考に、下記黄色染料3を合成した。次いで、黄色染料3を用い、特開2017-114955号公報を参考に、ホスホ12タングステン酸3水素水溶液と反応させることで、下記黄色染料4を得た。
【0349】
【化60】
【0350】
[比較合成例1~3]
下記化合物1~3を、それぞれ、特開2019-148796号公報、特許第6761118号、特許第6964752号を参考に合成した。
【0351】
【化61】
【0352】
[重合体(B-1)の合成]
冷却管と撹拌機とを備えたフラスコに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル3質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を仕込んだ。このフラスコに、N-シクロヘキシルマレイミド12質量部、スチレン10質量部、MA 20質量部、HEMA 15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート29質量部、ベンジルメタクリレート14質量部及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)製)5質量部を仕込んで、窒素置換した。その後、緩やかに撹拌して、反応溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を3時間保持して重合した。その後、反応溶液の温度を100℃に昇温させ、更に1時間重合することにより、重合体(B-1)を33.3質量%含む重合体(B-1)溶液を得た。
得られた重合体(B-1)は、Mwが9,700、Mnが5,700であることをGPCにより確認した。
【0353】
[調製例1]着色剤分散液(MB-Y-1)の調製
着色剤としてC.I.ピグメントイエロー138を13質量部、分散剤としてBYK-LPN21116(ビックケミー社製、固形分濃度40.0質量%)を溶液で11.8質量部、バインダー樹脂として前記重合体(B-1)溶液(固形分濃度33.3質量%)を溶液で13.0質量部、並びに、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート55.0質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル8質量部からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、着色剤分散液(MB-Y-1)を調製した。
【0354】
[調製例2]着色剤分散液(MB-Y-2)の調製
着色剤の種類をC.I.ピグメントイエロー139に変更したこと以外は、前記調製例1と同様にして、着色剤分散液(MB-Y-2)を得た。
【0355】
[調製例3]着色剤分散液(MB-Y-3)の調製
着色剤の種類をC.I.ピグメントイエロー150に変更したこと以外は、前記調製例1と同様にして、着色剤分散液(MB-Y-3)を得た。
【0356】
[調製例4]着色剤分散液(MB-Y-4)の調製
着色剤の種類をC.I.ピグメントイエロー185に変更したこと以外は、前記調製例1と同様にして、着色剤分散液(MB-Y-4)を得た。
【0357】
[調製例5]着色剤分散液(RB-Y-1)の調製
着色剤の種類を前記黄色染料4に変更したこと以外は、前記調製例1と同様にして、着色剤分散液(RB-Y-1)を得た。
【0358】
[実施例2-1]
(1)着色組成物の調製
色素多量体として前記実施例1-1で得られたSQRP-1 2.7質量部、着色剤として前記着色剤分散液(MB-Y-1)63.0質量部、バインダー樹脂として前記重合体(B-1)溶液(固形分濃度33.3質量%)を溶液で25.0質量部、重合性化合物としてジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM-402)13.5質量部、光重合開始剤として下記式D-1で表されるオキシム系開始剤(D-1)1.0質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC(株)製)0.1質量部を混合し、最終組成物の固形分濃度が15.0質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、着色組成物(G1-1)を調製した。
【0359】
【化62】
【0360】
(2)評価
着色組成物(G1-1)について、下記(i)及び(ii)に従って評価を行った。
【0361】
(i)耐溶剤性の評価
着色組成物(G1-1)を、ナトリウムイオン溶出防止用のSiO2膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、室温で減圧乾燥し、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。
【0362】
次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、形成した塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を400J/m2の露光量で露光した。その後、この基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm2(ノズル径1mm)で吐出することにより、60秒間シャワー現像を行った。現像後の基板を、超純水で洗浄し、風乾した後、更に150℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークすることにより、基板上に短冊状パターンを形成した。この短冊状パターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製、MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。
【0363】
次に、形成した短冊状パターンを、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル/エチレングリコールモノブチルエーテル=50/50(質量比)の混合溶剤に5分間浸漬し、浸漬後の短冊状パターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製、MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。浸漬前後における色変化、すなわちΔE*abを算出した。評価基準は以下の通りである。結果を表3に示す。
【0364】
(評価基準)
○:ΔE*abの値が3.0以下
△:ΔE*abの値が3.0より大きく、5.0以下
×:ΔE*abの値が5.0より大きい
【0365】
(ii)耐熱性の評価
着色組成物(G1-1)を、ナトリウムイオン溶出防止用のSiO2膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、室温で減圧乾燥し、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。
【0366】
次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、形成した塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を400J/m2の露光量で露光した。その後、この基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm2(ノズル径1mm)で吐出することにより、60秒間シャワー現像を行った。現像後の基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に150℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークすることにより、基板上に短冊状パターンを形成した。この短冊状パターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製、MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。
【0367】
次に、形成した短冊状パターンを、150℃のクリーンオーブン内で120分間ポストベークした後、カラーアナライザー(大塚電子(株)製、MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。150℃で120分のポストベーク前後における色変化、すなわちΔE*abを算出した。評価基準は以下の通りである。結果を表3に示す。
【0368】
(評価基準)
○:ΔE*abの値が3.0以下
△:ΔE*abの値が3.0より大きく、5.0以下
×:ΔE*abの値が5.0より大きい
【0369】
[実施例2-2~2-23及び比較例2-1~2-4]
実施例2-1において、色素多量体、着色剤及び光重合開始剤の種類を下記表3に示すように変更し、色素多量体、着色剤、バインダー樹脂及び重合性化合物の配合量を下記表3に示すように変更した以外は実施例2-1と同様にして、着色組成物(G1-2)~(G1-23)及び(G1-1R)~(G1-4R)をそれぞれ調製した。得られた着色組成物(G1-2)~(G1-23)及び(G1-1R)~(G1-4R)について、実施例2-1と同様にして耐溶剤性及び耐熱性の評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0370】
【表3】
【0371】
表3中、化合物の略称は以下の通りである。
・D-1:前記式D-1で表されるオキシム系開始剤
・D-2:Irgacure OXE02(BASFジャパン(株)製)
【0372】
[実施例3-1]
前記実施例2-1で調製した着色組成物(G1-1)を、ナトリウムイオン溶出防止用のSiO2膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、室温で減圧乾燥し、塗膜を形成した。
【0373】
次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、形成した塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を400J/m2の露光量で露光した。その後、この基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm2(ノズル径1mm)で吐出することにより、60秒間シャワー現像を行った。現像後の基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に150℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークすることにより、基板上に短冊状パターンを形成した。この短冊状パターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製、MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。なお、この際の色度座標値の値が(0.31,0.53)となるように製膜し、その際の刺激値(Y)の値を評価した。結果を下記表4に示す。
【0374】
[実施例3-2及び比較例3-1~3-2]
実施例3-1において、着色組成物(G1-1)の代わりに、下記表4に示す着色組成物を用いた以外は実施例3-1と同様にして、刺激値(Y)の評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0375】
【表4】
【0376】
前記表4から明らかなように、色素構造を有する繰り返し単位を含み、前記色素構造をゲストとし、前記ゲストを包摂する環状化合物をホストとする包摂化合物構造を有する色素多量体を含む実施例3-1及び3-2は、色素構造を有する繰り返し単位を含まない包摂化合物を含む比較例3-1及び3-2と比較して、高輝度のパターンを得ることができた。