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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167348
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】温調システム及び温調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/36 20180101AFI20231116BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20231116BHJP
【FI】
F24F11/36
F24F11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078467
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】松岡 隆史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 徹平
(72)【発明者】
【氏名】増田 克洋
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA06
3L260BA52
3L260FC06
3L260GA17
3L260HA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体に温調空気を供給する温調システム及び温調装置において、冷媒の種類によらず、居室としての安全な運用を実現しつつ、ブース本体における環境条件を適切に維持できる温調システム及び温調装置を提供する。
【解決手段】外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体と、ブース本体の内部空間に温調空気を供給する温調装置と、温調装置で用いる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体と、
前記ブース本体の内部空間に温調空気を供給する温調装置と、
前記温調装置で用いる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段と、を備えることを特徴とする温調システム。
【請求項2】
前記ガス検知手段は、前記温調空気が通過する経路上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の温調システム。
【請求項3】
前記ガス検知手段により検知した冷媒ガス濃度に基づき、異常状態の判別及び通知を行う通知手段を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の温調システム。
【請求項4】
前記通知手段は、前記異常状態の通知と併せて異常履歴を表示する表示部を有することを特徴とする、請求項3に記載の温調システム。
【請求項5】
前記ブース本体の内部空間における前記冷媒ガス濃度の上昇抑制を行うフェールセーフ機構を備え、
前記フェールセーフ機構は、前記ガス検知手段による冷媒ガスの検知結果に基づき機能することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項6】
外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体の温調を行う温調装置であって、
空気の温調を行う温調部と、
前記ブース本体と接続され、前記温調部からの温調空気を前記ブース本体の内部空間に供給する供給部と、
前記温調部で用いる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段と、を備えることを特徴とする、温調装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調システム及び温調装置に関する。特に、本発明は、工場や建屋内に配置され、各種作業等を所定の環境条件下で行うための温調システム及び温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品・精密部品の組立や、実験等の各種作業、プロセス装置・精密機械の運転などを行うために、工場や建屋内において外部空間と隔離した局所的な空間を形成するブースを設けることが知られている。このようなブースでは、仕切り部材(壁、天井など)により、外部空間から内部空間を隔離し、温度や湿度、清浄度等の環境条件を保つようにされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブース内の温度や湿度を所定値に維持するために、ファンフィルタユニットを有するクリーンブースと、このクリーンブースのファンフィルタユニットに調整された空気を供給する空調機とを備えるクリーンブース装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-196985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、温度や湿度等を調整した空気(以下、「温調空気」とも呼ぶ)を発生させる空調機においては、空気の熱移動(熱搬送)を行うための冷媒が利用される。
一方、近年、温室効果ガスの排出抑制対策の一つとして、空調機の冷媒として使用されるハイドロフルオロカーボン類について、二酸化炭素換算での排出量を低減させることが計画されている。
このため、温調空気の発生・供給を行うに当たり、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒を使用することが求められている。
【0006】
ここで、特許文献1に記載されるクリーンブース装置のように、外部空間と隔離した空間を形成するブースに対して温調空気を供給する場合においては、ブース内における所定の環境条件を保つために必要となる冷媒の総量は、いわゆる家庭用の空調機と比べて多くなる。したがって、従来の冷媒からGWPの低い冷媒へと変更する場合、冷媒の変更による影響を考慮する必要が生じてくる。
特に、GWPの低い冷媒として今後の活用が期待されるR32については、微燃性を有し、特定範囲の濃度において燃焼することが知られている。つまり、冷媒の変更によって運用の安全性に影響を及ぼさないためには、空調機等からの冷媒の漏洩を的確に把握し、さらに適切な対応を行うことが求められる。
【0007】
本発明の課題は、外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体に温調空気を供給する温調システム及び温調装置において、冷媒の種類によらず、居室としての安全な運用を実現しつつ、ブース本体における環境条件を適切に維持することができる温調システム及び温調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体に温調空気を供給する温調システム及び温調装置において、温調空気を供給する温調装置で用いる冷媒ガスの検知を行う手段を設けることで、冷媒ガスの漏洩を的確に把握することができ、冷媒の種類によらず、居室としての安全な運用を実現し、かつブース本体における環境条件を適切に維持できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の温調システム及び温調装置である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の温調システムは、外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体と、ブース本体の内部空間に温調空気を供給する温調装置と、温調装置で用いる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段と、を備えることを特徴とする。
従来、温調空気の発生・供給を行う温調装置において用いられる冷媒は、不燃性であり、人体への影響が少ない物質が用いられてきたため、冷媒の漏洩に係る迅速な検知を行うことについては考慮されていなかった。
一方、本発明の温調システムによれば、冷媒ガスの検知を行うガス検知手段を設けることにより、冷媒ガスの漏洩を的確に把握することができ、冷媒の種類によらず、ブース本体の居室としての安全な運用を実現しつつ、環境条件を適切に維持することが可能となる。特に、GWPが低い一方で、微燃性や臭気など、漏洩による影響が大きい特性を有する冷媒の使用に際し、顕著な効果を奏することができる。
【0010】
また、本発明の温調システムの一実施態様としては、ガス検知手段は、温調空気が通過する経路上に設けられることを特徴とする。
この特徴によれば、冷媒ガスが温調空気内に漏洩したことを確実に検知することができ、より一層安全な運用を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明の温調システムの一実施態様としては、ガス検知手段により検知した冷媒ガス濃度に基づき、異常状態の判別及び通知を行う通知手段を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、冷媒ガスの漏洩に起因するシステムの異常状態をより一層的確に把握することができるとともに、作業者による適切な対応を迅速に行うことが容易となり、より一層安全な運用を実現することが可能となる。
【0012】
また、本発明の温調システムの一実施態様としては、通知手段は、異常状態の通知と併せて異常履歴を表示する表示部を有することを特徴とする。
この特徴によれば、冷媒ガスの漏洩等に起因するシステムの異常状態及び異常状態に関する履歴を作業者が把握することが容易となるとともに、作業者による適切な対応を迅速に行うことがより一層容易となる。また、冷媒ガスの漏洩に起因するシステムの異常状態以外に係る異常状態及び異常履歴も表示することで、作業者が行うべき対応を速やかに把握し、システムの安定運用のために必要な作業を適切に実施することが可能となる。
【0013】
また、本発明の温調システムの一実施態様としては、ブース本体の内部空間における冷媒ガス濃度の上昇抑制を行うフェールセーフ機構を備え、フェールセーフ機構は、ガス検知手段による冷媒ガスの検知結果に基づき機能することを特徴とする。
この特徴によれば、冷媒ガスの漏洩という不具合が生じた場合においても、システム全体を安全に動作させることが可能となる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の温調装置は、外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体の温調を行う温調装置であって、空気の温調を行う温調部と、ブース本体と接続され、温調部からの温調空気をブース本体の内部空間に供給する供給部と、温調部で用いる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段と、を備えることを特徴とする。
本発明の温調装置によれば、冷媒ガスの検知を行うガス検知手段を設けることにより、冷媒ガスの漏洩を的確に把握することができ、冷媒の種類によらず、温調空気を供給するブース本体の居室としての安全な運用を実現しつつ、環境条件を適切に維持することが可能となる。特に、GWPが低い一方で、微燃性や臭気など、漏洩による影響が大きい特性を有する冷媒の使用に際し、顕著な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部空間から仕切られた内部空間を備えるブース本体に温調空気を供給する温調システム及び温調装置において、冷媒の種類によらず、居室としての安全な運用を実現しつつ、ブース本体における環境条件を適切に維持することができる温調システム及び温調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施態様に係る温調システムを示す概略説明図(斜視図)である。
図2】本発明の第1の実施態様に係る温調システムを示す概略説明図(側面図)である。
図3】本発明の第2の実施態様に係る温調システムを示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様に係る温調システムにおける通知手段の一例を示す概略説明図である。
図5】本発明の第3の実施態様に係る温調システムを示す概略説明図である。
図6】本発明の第3の実施態様に係る温調システムの別態様を示す概略説明図である。
図7】本発明の第3の実施態様に係る温調システムの別態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る温調システム及び温調装置を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する温調システム及び温調装置については、本発明に係る温調システム及び温調装置を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様に係る温調システム1Aの構造を示す概略説明図(斜視図)である。また、図2は、本発明の第1の実施態様に係る温調システム1Aの構造を示す概略説明図(側面図)である。
本実施態様における温調システム1Aは、図1及び図2に示すように、外部空間から仕切られた内部空間Sを備えるブース本体2と、ブース本体2の内部空間Sに温調空気を供給する温調装置3と、温調装置3で用いる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段4とを備えるものである。
なお、図2において、鎖線の矢印は温調空気の流れを示すものである。
【0019】
本実施態様における温調システム1Aは、例えば、工場や建屋内に配置されるものであり、ブース本体2の内部空間Sに対し、温調装置3からの温調空気を供給することで、外部空間とは隔離された局所的な区画内に、所定の環境条件を形成・維持するものである。また、本実施態様における温調システム1Aは、温調空気の発生・供給に際して用いられる冷媒ガスの検知を行うガス検知手段4を備えることで、冷媒ガスの漏洩を的確に把握することが可能となるものである。
【0020】
本実施態様におけるブース本体2は、外部空間から仕切られた内部空間Sを備え、温調装置3からの温調空気が供給されるものである。
本実施態様におけるブース本体2としては、例えば、図1に示すように、床面の上に配設された4本の支柱21a~21dと、天井部22及び仕切り部材23a~23dを組み立てることで、外部空間から仕切られた内部空間Sを形成するものが挙げられる。
【0021】
ここで、内部空間Sは、温調装置3からの温調空気の供給による所定の環境条件下での作業を可能とする作業空間であり、内部空間Sのサイズは、特定の値に限定されるものではないが、例えば奥行き方向3~20m、幅方向3~20m、高さ方向2~5m程度とすることができる。
また、内部空間Sで行う作業内容については特に限定されないが、例えば、電子部品・精密部品の組立や、実験等の各種作業、プロセス装置・精密機械の運転など、温調された雰囲気下での作業、あるいは機器の運転が求められるものが挙げられる。
【0022】
天井部22及び仕切り部材23a~23dは、ビニールカーテン、断熱不燃パネル、ガラス、アクリル板、金属板など、壁材または天井材として用いられている公知材料を適宜用いることができる。
また、図1に示すように、ブース本体2の構造的な強度を保つために、支柱21a~21dを用いて、天井部22及び仕切り部材23a~23dを組み立てることが好ましいが、天井部22及び仕切り部材23a~23dの材質・大きさ等により、ブース本体2の構造的強度が十分に維持される場合には、支柱21a~21dを省略するものとしてもよい。また、図1に示した4本の支柱21a~21dに代えて、フレーム(枠体)、梁等を用い、天井部22及び仕切り部材23a~23dを組み立てるものとしてもよい。
【0023】
本実施態様のブース本体2における天井部22側には、温調装置3からの温調空気が供給される導入口24が設けられる。また、ブース本体2の仕切り部材23(仕切り部材23a)下方側には、内部空間S内の温調空気を温調装置3に返送する導出口25が設けられる。
【0024】
ここで、本実施態様におけるブース本体2は、図2に示すように、導入口24が設けられる天井部22が水平方向に広がる空間を有し、さらに内部空間S側に複数の導入孔24aを形成することが好ましい。これにより、導入口24から供給される温調空気は、天井部22の空間内で水平方向に拡散し、各導入孔24aから内部空間Sに供給されることになる。すなわち、均一に整流された状態の温調空気を、内部空間S全体に供給することが可能となる。
また、天井部22の空間内に、ULPAフィルタ等のエアフィルタユニットを設け、温調空気から塵埃や浮遊微生物等を除去して内部空間Sに供給するものとしてもよい。
【0025】
本実施態様のブース本体2における仕切り部材23の一部には、外部空間から内部空間Sへの入退室が可能な出入口26が設けられる。なお、出入口26の具体的な構造については、内部空間Sへの作業者及び/又は機器の入退室が可能であり、かつ外部空間と内部空間Sとの隔離状態が維持できるものであればよく、特に限定されない。例えば、図1に示すように、仕切り部材23(仕切り部材23b)によって開閉可能な扉状構造を形成するものとしてもよく、仕切り部材23の一部に開口部を設け、エアカーテンや、開口部に係る開閉機構を別途設けるものとしてもよい。
【0026】
また、本実施態様におけるブース本体2は、図1に示すように、支柱21a~21dの底部に、アジャスタ27及びキャスタ28を備えるものとしてもよい。
支柱21a~21dに取り付けられたアジャスタ27は、温調システム1Aの位置を固定し、各支柱の高さを個別に調整するものである。また、キャスタ28は、温調システム1Aの移動を容易とするものである。これにより、温調システム1Aの移動と固定について、簡便かつ自由自在に行うことが可能となる。
【0027】
本実施態様における温調装置3は、ブース本体2の内部空間Sに温調空気を供給するためのものである。
なお、本実施態様における温調装置3から供給される温調空気とは、主に温度調整された空気を指すものであるが、これに限定されるものではない。温調空気としては、例えば、湿度調整や清浄度調整がなされた空気であってもよい。
【0028】
本実施態様の温調装置3としては、図2に示すように、ブース本体2の導出口25に接続した配管L1及び吸込口34を介して内部空間Sからの空気(温調空気)が導入され、この空気を所定の条件(温度、湿度、清浄度等)を満たすように調整(温調)する温調部31と、ブース本体2と接続され、温調部31からの温調空気をブース本体2の導入口24から内部空間Sに供給する供給部32と、温調部31から供給部32へ温調空気を送風する送風ファン33とを備えるものが挙げられる。また、温調装置3は、吸込口34を有し、温調部31及び送風ファン33を収容し、かつ記載順に温調空気を連通させる流路35aを形成する筐体35を備えるものが挙げられる。
これにより、ブース本体2の導出口25からの温調空気は、流路35aに沿って筐体35内を通流する過程で所定条件を満たすように温調され、供給部32を介してブース本体2の導入口24から内部空間Sに再度供給される。つまり、温調空気は適宜温調されながら温調システム1A内を循環するため、内部空間Sにおける環境条件を所定の状態に維持することが可能となる。
【0029】
温調部31は、所定の条件を満たす温調空気を調整することができるものであればよく、例えば、冷却・加熱、除湿・加湿に係る機能を有するものが挙げられる。特に、本実施態様の温調部31としては、冷媒ガスを利用して温調を行うものが挙げられる。
本実施態様における温調部31の具体例としては、例えば、公知の圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器等を備えた冷凍回路により構成される冷却機能を備えるものが挙げられる。また、冷凍回路を通流する冷媒ガスの温熱を利用し、温調空気を加熱する再熱器を設けるものとしてもよい。
【0030】
温調部31で用いる冷媒ガスとしては、空気の温調を可能とするものであればよいが、GWPの低い冷媒を用いることが特に好ましい。このような冷媒ガスとしては、例えば、R32、R1234yf、R1234zeのようなA2L(微燃性)冷媒や、アンモニア等が挙げられる。これらの冷媒ガスは、GWPの値が低く、温暖化対策の一つとなり得る次世代冷媒として期待されている。
本実施態様で用いる冷媒ガスは、GWP以外の物性に着目したものを用いてもよい。また、環境への影響やコスト等を鑑みて、冷媒ガスの種類を選択するものとしてもよい。
なお、本実施態様の温調システム1Aにおいては、冷媒の種類によらず、ブース本体2における環境条件を適切に維持しつつ、居室としての安全な運用を実現するために、冷媒ガスの漏洩を的確に把握する手段として、ガス検知手段4を設けるものとしている。
【0031】
供給部32は、温調部31からの温調空気を、送風ファン33を用いた送風によってブース本体2の導入口24へと通流させ、内部空間Sに供給するためのものである。
供給部32の具体例としては、図1及び図2に示すように、温調部31及び送風ファン33を収容した筐体35内を通流する温調空気を移送するための供給管32aを設け、この供給管32aを、ブース本体2の導入口24に接続するものが挙げられる。
【0032】
図1及び図2には、供給部32として単一の供給管32aを設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。供給部32として、複数の供給管を設けるものとしてもよい。
また、図1及び図2に示すように、本実施態様の供給部32としては、導入口24近傍の供給管32a上に流量調整弁MD1を設けることが好ましい。さらに、ブース本体2の内部空間Sに供給する温調空気の供給量制御を可能とし、内部空間Sが陽圧になるように温調空気の供給量を制御することが好ましい。これにより、外部空間の空気が内部空間Sに流入しにくくなり、内部空間Sにおける環境条件を適切に維持することが容易となる。
【0033】
ガス検知手段4は、温調装置3で用いる冷媒ガスの検知を行うためのものである。これにより、温調システム1Aにおける冷媒ガスの漏洩を的確に把握することが可能となる。特に、GWPが低い一方で、微燃性や臭気など、漏洩による影響が大きい特性を有する冷媒の使用に際し、冷媒ガスの漏洩を的確に把握することで、必要な対応を迅速に行うことが可能になる等、顕著な効果を奏することができる。
【0034】
ガス検知手段4としては、冷媒ガスの検知を行うことができるものであればよく、温調装置3で用いる冷媒ガスに応じ、公知のガス検知器、ガスセンサーを用いることができる。
また、ガス検知手段4としては、常時あるいは定期的に冷媒ガス濃度の測定を行うものであってもよく、冷媒ガス濃度が所定濃度を超過した場合のみ検知するものであってもよい。
【0035】
ガス検知手段4を設ける箇所は特に限定されないが、図1及び図2に示すように、温調装置3内に設けることが挙げられる。このとき、温調部31から漏洩した冷媒ガスは、送風ファン33を用いた送風によって、温調空気とともに筐体35(流路35a)及び供給部32内を通流することになる。したがって、図2に示すように、温調空気が通過する経路上(流路35aあるいは供給部32)にガス検知手段4を設けることが好ましい。これにより、冷媒ガスが温調空気内に漏洩したことを確実に検知することができ、より一層安全な運用を行うことが可能となる。また、温調装置3の流路35a上にガス検知手段4を設けることが特に好ましい。これにより、冷媒ガスの漏洩が起き得る箇所(温調部31)に近いところで検知を行うことが可能となるため、冷媒ガスが温調空気内に漏洩したことを迅速かつ確実に検知することができ、より一層安全な運用を行うことが可能となる。
なお、ガス検知手段4を設ける箇所としては、温調装置3内に限定されるものではない。例えば、ブース本体2側にガス検知手段4を設けるものとしてもよい。
【0036】
このように、本実施態様の温調システム1Aにおいて、温調装置3で温調された温調空気が循環することによって、ブース本体2の内部空間Sが所定の環境条件を満たすように制御される。また、本実施態様の温調システム1Aは、ガス検知手段4を備えることで、温調装置3からの冷媒ガスの漏洩を的確に把握することができ、冷媒の種類によらず、ブース本体2の居室としての安全な運用を実現しつつ、環境条件を適切に維持することが可能となる。特に、GWPが低いという点で有用である一方、微燃性や臭気など、漏洩による影響が大きい特性を有する冷媒の使用に際し、顕著な効果を奏することができる。
【0037】
なお、本実施態様においてガス検知手段4を備える温調装置3に係る構成は、本発明に係る温調装置として独立したものとすることができる。また、この温調装置を既設のブース本体と接続することで、簡素な取り付け作業によって、本発明の温調システムを提供することが可能となる。
【0038】
以下、本発明の温調システム及び温調装置の別態様として、ガス検知手段4による検知結果に基づき、作業者が冷媒ガスの漏洩を的確に把握して対応するための具体的手段や、安全な運用を実現するための具体的手段を備えるものについて説明する。
【0039】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様に係る温調システム1Bの構成を示す概略説明図である。また、図4は、本発明の第2の実施態様に係る温調システム1Bにおいて、特に通知手段の一例を示す概略説明図である。
第2の実施態様の温調システム1Bは、図3及び図4に示すように、第1の実施態様の温調システム1Aにおいて、ガス検知手段4により検知した冷媒ガス濃度に基づき、異常状態の判別及び通知を行う通知手段5を更に備えるものである。なお、第1の実施態様と同様の構成については、説明を省略する。また、図3における実線の矢印は、情報(データ)の入出力が可能となるよう接続されていることを示すものである。
【0040】
本実施態様における通知手段5は、作業者が冷媒ガスの漏洩を的確に把握して対応するための具体的手段の一つであり、ガス検知手段4の検知結果(冷媒ガス濃度)に基づき、異常状態の判別及び通知を行うものである。
これにより、作業者は温調システム1Bが冷媒ガスの漏洩に基づく異常状態にあるか否かを速やかに把握することができ、通知手段5によって通知された内容に応じて必要な対応を迅速に行うことが可能となる。
【0041】
通知手段5の具体例としては、例えば、図3に示すように、ガス検知手段4で検知した冷媒ガス濃度に基づき、異常状態にあるか否かを判別する判別部51と、判別部51における判別結果を出力して通知する通知部52を備えるものが挙げられる。また、通知手段5としては、通知部52で通知する内容と併せて異常履歴を表示する表示部53を更に備えることが好ましい。
【0042】
判別部51は、ガス検知手段4の検知結果を用い、温調システム1Bに対して冷媒ガスの漏洩に基づく対応が必要な状況(異常状態)にあるか否かを判別するものである。より具体的には、判別部51は、ガス検知手段4と入出力可能に接続され、ガス検知手段4で検知した冷媒ガス濃度に係る情報を取得するとともに、この情報に基づき、異常状態にあるか否かを判別する演算を行うものが挙げられる。
【0043】
判別部51で取得するガス検知手段4からの情報は、ガス検知手段4によって常時あるいは定期的に取得した冷媒ガス濃度に係る情報であってもよく、冷媒ガス濃度が閾値を超える、あるいは所定範囲内に入った場合のみ、ガス検知手段4で検知される結果に係る情報であってもよい。
例えば、判別部51が、ガス検知手段4からの情報を連続的あるいは定期的に取得する場合、判別基準値をあらかじめ設定し、この判別基準値を超える、あるいは判別基準値内に入ったときに、冷媒ガスが漏洩していると判断し、異常状態にあるという判別結果を通知部52に送達する。
また、判別部51が、ガス検知手段4からの情報として、閾値や所定範囲内など一定の基準を基に検知された結果を取得する場合、この検知結果を取得した時点で冷媒ガスが漏洩していると判断し、異常状態にあるという判別結果を通知部52に送達する。
【0044】
ここで、判別部51による異常状態の判別は、段階的に行うものとしてもよい。例えば、温調装置3で用いる冷媒ガスがA2L冷媒である場合、漏洩の程度がA2L冷媒の爆発限界よりも小さい値(例えば、爆発限界の1/20~1/50)を「冷媒漏洩レベル1(1段階目)」、A2L冷媒の爆発限界に近い値(例えば、爆発限界の1/10~1/2)を「冷媒漏洩レベル2(2段階目)」等とし、異常状態のレベルごとの判別結果を通知部52に送達することや、図4に示すように、表示部53で表示することが挙げられる。これにより、冷媒ガスの漏洩が緩やかに生じている場合であっても、急激に生じている場合であっても、冷媒ガスの漏洩に基づく異常状態を的確に把握することが可能となり、適切な対応を迅速に行うことが可能となる。
【0045】
通知部52は、判別部51から送達された判別結果を通知するためのものであり、主に作業者に対して通知を行うものである。なお、通知部52による通知は、後述するフェールセーフ機構6を機能させるための指示信号として用いてもよい。
通知部52による通知に係る出力手段は、作業者が通知内容を把握することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、通知内容を文章・用語・記号として出力することや、通知内容に応じた音声・光を出力することなどが挙げられる。また、通知部52における出力手段は複数を組み合わせるものとしてもよい。
【0046】
特に、通知部52による通知としては、通知内容を的確かつ容易に理解することができるため、通知内容を文章・用語・記号として出力することが好ましい。また、図4に示すように、通知部52による通知内容と併せて異常履歴を表示する表示部53を設けることで、通知内容の理解及び見返しと併せて、異常状態が生じた時系列の把握が容易となり、作業者が行うべき対応を速やかに把握し、必要な作業を実施することが可能となる。なお、図4下部には、表示部53で表示する異常履歴の表示例として、「異常名称」「発生日時」「復旧」という項目を示しているが、これに限定されるものではない。
【0047】
図4に示すように、通知部52及び表示部53は一体として、温調装置3(筐体35)の外装に直接設けるものとしてもよく、PCやタブレット端末などの通信端末に通知部52及び表示部53の機能を備えるものとしてもよい。なお、図4に示すように、通知部52及び表示部53を温調装置3に直接設ける場合、タッチパネルによる表示及び入力方式を用い、異常状態に関する詳細な情報や異常履歴の確認・呼び出しに係る操作を可能とし、さらに対応済みであることを入力可能とすることが好ましい。これにより、作業者の作業効率を向上させることが可能となる。
【0048】
また、表示部53では、ガス検知手段4の検知結果に基づく異常状態及び異常履歴だけではなく、温調システム1B全体に係る異常状態及び異常履歴を表示するものとしてもよい。これにより、作業者が行うべき対応を速やかに把握し、システムの安定運用のために必要な作業を適切に実施することが可能となる。
表示部53で表示する内容の一例としては、例えば、冷媒ガスの漏洩に係る異常以外に、ガス検知手段4としてのガス検知器自体の異常(故障)、送風ファン33の異常、温調部31の異常などが挙げられる。
【0049】
本実施態様における温調システム1Bは、ガス検知手段により検知した冷媒ガス濃度に基づき、異常状態の判別及び通知を行う通知手段を備えることで、冷媒ガスの漏洩に起因するシステムの異常状態をより一層的確に把握することができるとともに、作業者による適切な対応を迅速に行うことが容易となり、より一層安全な運用を実現することが可能となる。
【0050】
なお、本実施態様においてガス検知手段4及び通知手段5を備える温調装置3に係る構成は、本発明に係る温調装置として独立したものとすることができる。また、この温調装置を既設のブース本体と接続することで、簡素な取り付け作業によって、本発明の温調システムを提供することが可能となる。
【0051】
〔第3の実施態様〕
図5図7は、本発明の第3の実施態様に係る温調システム1Cの構成を示す概略説明図である。なお、図5において、上図が温調システム1Cの側面図であり、下図が温調システム1Cを天井部22から見た平面図である。
第3の実施態様の温調システム1Cは、図5図7に示すように、第1の実施態様の温調システム1Aにおいて、ブース本体2の内部空間Sにおける冷媒ガス濃度の上昇抑制を行うフェールセーフ機構6を更に備え、このフェールセーフ機構6が、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果に基づき機能するものである。なお、第1の実施態様と同様の構成については、説明を省略する。
【0052】
本実施態様におけるフェールセーフ機構6は、安全な運用を実現するための具体的手段の一つであり、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果に基づき、ブース本体2の内部空間Sにおける冷媒ガス濃度の上昇抑制を行うものである。
【0053】
ここで、フェールセーフとは、一般的に、装置に何らかの異常が発生した場合でも装置全体を安全側に動作させることを指し、本実施態様におけるフェールセーフ機構6は、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果に基づき、冷媒ガスの漏洩という異常状態が認められた場合において、ブース本体2の内部空間Sにおける冷媒ガス濃度の上昇抑制を行うことで、特に作業者の入退室が行われる内部空間Sの居室としての安全性を向上させた運用を可能とするものである。
【0054】
本実施態様におけるフェールセーフ機構6を適切に機能させるために用いられる、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果を取得する手段については特に限定されないが、例えば、上述した通知手段5を用いることが挙げられる。より具体的には、判別部51から送達された判別結果を直接フェールセーフ機構6に入力することや、通知部52の通知結果に基づく作業者による手入力、あるいは通知部52の通知結果を指示信号としてフェールセーフ機構6に入力することなどが挙げられる。
【0055】
以下、本実施態様におけるフェールセーフ機構6の具体例について説明する。
フェールセーフ機構6の一例としては、図5に示すように、温調装置3の供給部32として、ブース本体2の導入口24と接続する供給管を少なくとも2本備え(供給管32a及び32b)、供給管32a及び32bの導入口24近傍には、それぞれ流量調整弁MD1及びMD2を設け、さらに供給管32a及び32bの筐体35近傍には、それぞれ流量調整弁VD1及びVD2を設けることが挙げられる。
また、流量調整弁VD1及びVD2の開閉操作、並びに流量調整弁MD1及びMD2の開閉操作について、個別に制御可能な制御部61aを設けるとともに、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果に基づき、制御部61aによる各流量調整弁の開閉操作を実施する。
さらに、供給管32bと筐体35の間には、冷媒ガスの吸着あるいは除去が可能なケミカルフィルタCFを配設する。
【0056】
制御部61aにおける流量調整弁の開閉操作に係る制御の一例について説明する。
まず、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩に係る異常状態が生じていない場合、供給管32aの流量調整弁VD1及びMD1を開とする一方、供給管32bの流量調整弁VD2及びMD2を閉とする。なお、このとき、供給管32aの流量調整弁MD1は、内部空間Sへの温調空気の供給量を調整するために開度を調整するものとしてもよい。
【0057】
一方、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩に係る異常状態が生じた場合、供給管32aの流量調整弁VD1及び/又はMD1を閉とする一方で、供給管32bの流量調整弁VD2及びMD2を開とする。これにより、漏洩した冷媒ガスが混合した温調空気(以下、「冷媒ガス混合温調空気」と呼ぶ)は、ケミカルフィルタCFを通過した後、供給管32bを介して内部空間Sに供給されることになる。したがって、冷媒ガスの漏洩が生じても、ブース本体2の内部空間Sでは、冷媒ガスの濃度上昇が抑制され、安全な運用が可能となる。また、冷媒ガスが漏洩した場合のみ、ケミカルフィルタCFに温調空気を通流するため、ケミカルフィルタCFの劣化速度を低減させることも可能となる。
【0058】
また、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩の程度が大きい場合、供給管32aの流量調整弁VD1及び/又はMD1を閉とする一方、供給管32bの流量調整弁VD2を開とし、流量調整弁MD2を閉とする。これにより、冷媒ガス混合温調空気は、ケミカルフィルタCFを通過した後、供給管32b内に貯留されることになる。したがって、冷媒ガスの漏洩の程度が大きい場合において、ブース本体2の内部空間Sには冷媒ガス混合温調空気が供給されないため、冷媒ガスの濃度上昇が抑制され、安全な運用が可能となる。
なお、この場合、供給管32b内に貯留された冷媒ガス混合温調空気については、冷媒ガス濃度を低下させるために希釈することが好ましい。希釈手段については、例えば、供給管32bの流量調整弁MD2を三方弁とし、供給管32b内の冷媒ガス混合温調空気を大気開放することや、温調装置3における冷媒ガスの漏洩を解消した後、供給管32aの流量調整弁VD1及びMD1、並びに供給管32bの流量調整弁MD2を開とすることで、供給管32b内に貯留された冷媒ガス混合温調空気を、冷媒ガスを含まない温調空気によって希釈することなどが挙げられる。
【0059】
また、本実施態様におけるフェールセーフ機構6の別態様としては、図6に示すように、温調装置3の筐体35上方に、ブース本体2の導入口24と接続する供給管32cに加え、温調空気を配管L1側にバイパスする配管36を設け、供給管32c及び配管36の筐体35近傍には、それぞれ流量調整弁VD3及びVD4を設けることが挙げられる。
また、流量調整弁VD3及びVD4の開閉操作を個別に制御可能な制御部61bを設けるとともに、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果に基づき、制御部61bによる各流量調整弁の開閉操作を実施する。
【0060】
制御部61bにおける流量調整弁の開閉操作に係る制御の一例について説明する。
まず、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩に係る異常状態が生じていない場合、供給管32cの流量調整弁VD3を開とする一方、配管36の流量調整弁VD4を閉とする。なお、このとき、供給管32cに対し、導入口24近傍に流量調整弁を設け(不図示)、内部空間Sへの温調空気の供給量を調整するために開度を調整するものとしてもよい。
【0061】
一方、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩に係る異常状態が生じた場合、供給管32cの流量調整弁VD3を閉とする一方で、配管36の流量調整弁VD4を開とする。これにより、冷媒ガス混合温調空気は、配管36内に貯留される。したがって、ブース本体2の内部空間Sには冷媒ガス混合温調空気が供給されないため、冷媒ガスの濃度上昇が抑制され、安全な運用が可能となる。
なお、この場合、配管36内に貯留された冷媒ガス混合温調空気については、冷媒ガス濃度を低下させるために希釈することが好ましい。希釈手段については、上述したように、大気開放や冷媒ガスを含まない温調空気による希釈を行うことが挙げられる。
【0062】
さらに、本実施態様におけるフェールセーフ機構6の別態様としては、図7に示すように、温調装置3の筐体35上方に、ブース本体2の導入口24と接続する供給管32dに加え、温調空気を大気開放する配管37を設け、供給管32d及び配管37の筐体35近傍には、それぞれ流量調整弁VD5及びVD6を設けることが挙げられる。
また、流量調整弁VD5及びVD6の開閉操作を個別に制御可能な制御部61cを設けるとともに、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果に基づき、制御部61cによる各流量調整弁の開閉操作を実施する。
【0063】
制御部61cにおける流量調整弁の開閉操作に係る制御の一例について説明する。
まず、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩に係る異常状態が生じていない場合、供給管32dの流量調整弁VD5を開とする一方、配管37の流量調整弁VD6を閉とする。なお、このとき、供給管32dに対し、導入口24近傍に流量調整弁を設け(不図示)、内部空間Sへの温調空気の供給量を調整するために開度を調整するものとしてもよい。
【0064】
一方、ガス検知手段4による冷媒ガスの検知結果として、冷媒ガスの漏洩に係る異常状態が生じた場合、供給管32dの流量調整弁VD5を閉とする一方で、配管37の流量調整弁VD6を開とする。これにより、冷媒ガス混合温調空気は、大気開放される。したがって、ブース本体2の内部空間Sには冷媒ガス混合温調空気が供給されないため、冷媒ガスの濃度上昇が抑制され、安全な運用が可能となる。
このとき、筐体35内の冷媒ガス混合温調空気を効果的に大気開放させるため、制御部61cにより、送風ファン33の回転速度を増加させるものとしてもよい。特に、冷媒ガスが空気より比重が重い気体である場合、送風ファン33の回転制御を行うことが好ましい。
また、上述した制御部61a及び61bにおいても、筐体35底部に冷媒ガスが停滞しないよう、送風ファン33の回転制御を行うものとしてもよい。
【0065】
本実施態様における温調システム1Cは、ガス検知手段による冷媒ガスの検知結果に基づき、ブース本体の内部空間における冷媒ガス濃度の上昇抑制を行うフェールセーフ機構を備えることで、冷媒ガスの漏洩という不具合が生じた場合においても、システム全体を安全に動作させることが可能となる。
【0066】
なお、本実施態様においてガス検知手段4及びフェールセーフ機構6を備える温調装置3に係る構成は、本発明に係る温調装置として独立したものとすることができる。また、この温調装置を既設のブース本体と接続することで、簡素な取り付け作業によって、本発明の温調システムを提供することが可能となる。
【0067】
なお、上述した実施態様は温調システム及び温調装置の一例を示すものである。本発明に係る温調システム及び温調装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る温調システム及び温調装置を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の温調システム及び温調装置は、電子部品や半導体、電池、医薬品、塗料などの製品製造における製造工程や機械の運転を所定の環境下で行う作業の作業空間を提供するものとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0069】
1A~1C 温調システム、2 ブース本体、21a~21d 支柱、22 天井部、23a~23d 仕切り部材、24 導入口、24a 導入孔、25 導出口、26 出入口、27 アジャスタ、28 キャスタ、3 温調装置、31 温調部、32 供給部、32a~32 供給管、33 送風ファン、34 吸込口、35 筐体、35a 流路、36 バイパス用配管、37 配管、4 ガス検知手段、5 通知手段、51 判別部、52 通知部、53 表示部、6 フェールセーフ機構、61a~61c 制御部、CF ケミカルフィルタ、L1 配管、MD1,MD2 流量調整弁、S 内部空間、VD1~VD6 流量調整弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7