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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167357
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ノンアルコールビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20231116BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231116BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231116BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/38 J
A23L2/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078488
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】砂原 和允
(72)【発明者】
【氏名】村上 園実
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG16
4B117LK06
4B117LL01
4B117LL09
4B117LP01
4B117LP05
4B117LP06
4B117LP13
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】香味の強度が増強されたノンアルコールビールテイスト飲料の提供。
【解決手段】シス-リナロールオキシドの含有量が2.0ppb以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス-リナロールオキシドの含有量が2.0ppb以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項2】
β-ユーデスモールの含有量が0.5ppb以上である、請求項1に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項3】
麦芽使用比率が50~100質量%である、請求項1または2に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項4】
シス-リナロールオキシドの含有量が2.0~500ppbである、請求項1または2に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項5】
β-ユーデスモールの含有量が0.5~100ppbである、請求項1または2に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項6】
ノンアルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を2.0ppb以上に調整する工程を含んでなる、方法。
【請求項7】
前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を0.5ppb以上に調整する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ノンアルコールビールテイスト飲料の麦芽使用比率が50~100質量%である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の強度を増強する方法であって、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を2.0ppb以上に調整する工程を含んでなる、方法。
【請求項10】
前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を0.5ppb以上に調整する工程をさらに含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の余韻を増強する方法であって、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を2.0ppb以上に調整する工程を含んでなる、方法。
【請求項12】
前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を0.5ppb以上に調整する工程をさらに含んでなる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンアルコールビールテイスト飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康面の観点から、ノンアルコールビールテイスト飲料の需要が高まってきている。ノンアルコールビールは、アルコールを生成する発酵工程がない製品であることから、香味の強度や余韻が弱いビールテイスト飲料となってしまうことが多い。
【0003】
嗜好度向上のため、香味の強度や余韻の優れたビールテイスト飲料が求められている。味の強度を高めるための従来の方法としては、BU上昇や、ホップによる香気成分を付与する方法があるが、BU上昇は全体の味のバランスを崩すことが多く、ホップによる香気成分の付与は単調な印象を与えることが多い。従って、ノンアルコールビールテイスト飲料において、香味の強度や余韻を増強するための他の手段が求められている。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、ノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、シス-リナロールオキシドの含有量を所定の範囲に調整することにより、香味の強度を増強することができることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0005】
従って、本発明は、香味の強度が増強されたノンアルコールビールテイスト飲料およびその製造方法を提供する。
【0006】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)シス-リナロールオキシドの含有量が2.0ppb以上である、ノンアルコールビールテイスト飲料。
(2)β-ユーデスモールの含有量が0.5ppb以上である、前記(1)に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
(3)麦芽使用比率が50~100質量%である、前記(1)または(2)に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
(4)シス-リナロールオキシドの含有量が2.0~500ppbである、前記(1)~(3)のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
(5)β-ユーデスモールの含有量が0.5~100ppbである、前記(1)~(4)のいずれかに記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
(6)ノンアルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を2.0ppb以上に調整する工程を含んでなる、方法。
(7)前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を0.5ppb以上に調整する工程をさらに含んでなる、前記(6)に記載の方法。
(8)前記ノンアルコールビールテイスト飲料の麦芽使用比率が50~100質量%である、前記(6)または(7)に記載の方法。
(9)ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の強度を増強する方法であって、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を2.0ppb以上に調整する工程を含んでなる、方法。
(10)前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を0.5ppb以上に調整する工程をさらに含んでなる、前記(9)に記載の方法。
(11)ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の余韻を改善する方法であって、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を2.0ppb以上に調整する工程を含んでなる、方法。
(12)前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を0.5ppb以上に調整する工程をさらに含んでなる、前記(11)に記載の方法。
【0007】
本発明によれば、香味の強度が増強されたノンアルコールビールテイスト飲料が提供される。また、本発明によれば、ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の余韻を改善することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ飲料をいう。「ビール様の風味」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを、その飲料が呈することを意味する。
【0009】
本発明において「ノンアルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味し、好ましくはアルコール濃度が0.005%(v/v)未満のビールテイスト飲料とされる。本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、アルコール濃度が0.00%(v/v)であるアルコールゼロのビールテイスト飲料とされる。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、非発酵ビールテイスト飲料とされる。本発明において「非発酵ビールテイスト飲料」とは、発酵工程を経ずに製造されたビールテイスト飲料をいう。ここで、「発酵工程」とは、酵母等の微生物が有機物を分解することによってアルコール等の代謝産物を生成する工程をいう。
【0010】
本明細書において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義であり、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0011】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、シス-リナロールオキシドを所定の濃度範囲で含む。また、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、所定濃度のβ-ユーデスモールをさらに含む。
【0012】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、該ノンアルコールビールテイスト飲料の製造過程において、シス-リナロールオキシドの含有量を調整することにより製造することができる。また、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料の製造過程において、β-ユーデスモールの含有量も調整される。
【0013】
シス-リナロールオキシド含有量の調整およびβ-ユーデスモール含有量の調整は、例えば、ノンアルコールビールテイスト飲料の製造過程においてシス-リナロールオキシドおよび/またはβ-ユーデスモールを添加することによって行ってもよく、また、ノンアルコールビールテイスト飲料にシス-リナロールオキシドおよび/またはβ-ユーデスモールを与える原材料を増減することにより行ってもよい。
【0014】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料の製造においてシス-リナロールオキシドまたはβ-ユーデスモールを添加する場合には、これらは食品製造に適しているものであればよい。その形態も、水性溶媒に容易に溶解するものであればよく、液状、粉末状、固形状などのいかなる形態のものであってもよい。
【0015】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシド含有量の下限値は2.0ppbとされ、好ましくは5.0ppb、より好ましくは10.0ppb、さらに好ましくは20.0ppb、さらに好ましくは50.0ppbとされる。本発明では、シス-リナロールオキシドが用量依存的に香味の強度の増強および余韻の改善の効果を奏することが実証されているため、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシド含有量の上限値は特に制限されない。しかし、あえてシス-リナロールオキシド含有量の上限値を設定するとすれば、例えば750ppbとされ、好ましくは500ppb、より好ましくは400ppb、さらに好ましくは300ppbとされる。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシド含有量は2.0ppb以上とされ、好ましくは2.0~500ppb、より好ましくは2.0~100ppbとされる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様における本発明のノンアルコールビールテイスト飲料中のβ-ユーデスモール含有量の下限値は0.5ppbとされ、好ましくは1.0ppb、より好ましくは2.5ppb、さらに好ましくは5.0ppbとされる。本発明では、β-ユーデスモールが用量依存的に香味の強度の増強および余韻の改善の効果を奏することが実証されているため、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモール含有量の上限値は特に制限されない。しかし、あえてβ-ユーデスモール含有量の上限値を設定するとすれば、例えば100ppbとされ、好ましくは75ppb、より好ましくは50ppbとされる。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料中のβ-ユーデスモール含有量は0.5ppb以上とされ、好ましくは0.5~100ppb、より好ましくは0.5~50ppbとされる。
【0017】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料中のシス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールの定量は、GC/MS分析により行うことができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。このGC/MS分析は、例えば、次のように実施することができる。まず、飲料中の成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いる。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加する。GC/MSの分析条件は、以下の表1に従うことができる。
【0018】
【表1】
【0019】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、好ましくは麦芽使用比率50~100質量%のノンアルコールビールテイスト飲料である。ここで、麦芽使用比率は、水、ホップおよび酵母(製造の際に酵母による発酵工程が行われる場合)を除く原材料のうちの麦芽の比率を意味する。
【0020】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料には、本発明の効果を妨げない範囲でその他の原料を配合してもよい。すなわち、本発明のノンアルコールビールテイスト飲料では、着色料(例えば、カラメル色素)、甘味料(例えば、高甘味度甘味料)、調味成分(例えば、アミノ酸)、香料(例えば、ビールの代表的な香気成分である酢酸エチル、酢酸イソアミル、イソアミルアルコールなどを含んだ市販のビールフレーバー)、異性化ホップエキスなどの苦味成分、酵母エキスなどを原料として使用することができる。
【0021】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料のpHは、好ましくは3.5以上4.5以下とされ、より好ましくはpH3.5以上pH4.2以下、さらに好ましくはpH3.7以上pH4.2以下、最も好ましくはpH3.8以上pH4.2以下とされる。本発明のノンアルコールビールテイスト飲料のpH調整はpH調整剤を用いて行うことができる。
【0022】
本発明のノンアルコールビールテイスト飲料は、当技術分野においてよく知られている一般的な方法において、いずれかの段階でシス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールの含有量を調整することによって製造することができる。このような一般的な方法としては、例えば、麦汁の調製工程および濾過工程を含む方法が挙げられ、この方法は、例えば、(a)麦芽粉砕物と水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得る工程、(b)得られた麦汁にホップを添加した後、煮沸する工程、(c)煮沸した麦汁を冷却する工程、および(d)冷却した麦汁を濾過する工程を順次行うことによって実行することができる。
【0023】
本発明の他の態様によれば、ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の強度を増強する方法が提供され、該方法は、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を上述の数値範囲に調整する工程を含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、この方法は、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を上述の数値範囲に調整する工程をさらに含んでなる。
【0024】
本発明の他の態様によれば、ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の余韻を改善する方法が提供され、該方法は、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドの含有量を上述の数値範囲に調整する工程を含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、この方法は、前記ノンアルコールビールテイスト飲料におけるβ-ユーデスモールの含有量を上述の数値範囲に調整する工程をさらに含んでなる。
【実施例0025】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1:ノンアルコールビールテイスト飲料におけるシス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールの濃度調整による香味への影響
(1)サンプルの調製
麦芽1kgを適当な粒度に粉砕して仕込槽に入れ、これに3Lの温水を加え、65℃で30分保持後、徐々に昇温して76℃で30分間、糖化を行った。糖化終了後、82℃まで昇温後、濾紙を用いて濾過を行い、濾液を得た。この濾過液1Lにホップを約1g添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸後の液体について、濾紙を用いて濾過を行い、約5℃に冷却した。得られた液体に、適宜、糖度が7.0°Pになるよう湯を加えて麦汁を調整した。この麦汁に炭酸水および炭酸ガスを加え、2~4℃で24時間貯蔵し、その後濾過を行った。この濾過後の液にビール風味香料を添加し、さらに、下記の表に記載の濃度となるよう、シス-リナロールオキシドやβ-ユーデスモールを添加した。
【0027】
実施例における各飲料サンプル中のシス-リナロールオキサイドおよびネロールの濃度の測定は、下記の条件によるGC/MS分析により行った。具体的には、飲料サンプル中の成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いた。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加した。なお、シス-リナロールオキサイド濃度およびネロール濃度は、濃度が既知の対照サンプルを用いて作成した検量線に基づいて算出した。
【0028】
【表2】
【0029】
(2)試飲サンプルの官能評価
上記(1)で調製された各試験区の試飲サンプルについて、訓練された6名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「香味の強度」、「香味の余韻」、および「香りと味のバランス」の3項目とした。官能評価は、それぞれの項目について、1~5のスコアを用いて、1刻みの5段階で行った。以下に、各評価項目のそれぞれについての具体的な評価基準を示す。
【0030】
・香味の強度
5:対照区と比較しなくても強度が確保されていることが明確にわかる;
4:対照区と比較しなくても強度が確保されていることがわかる;
3:対照区と連続比較することで強度が確保されていることがわかるが、比較しないとわからない;
2:対照区と連続比較することで、わずかに強度が確保されていることがわかるが、比較しないとわからない;
1:対照区と同等。
香味の強度の評価においては、シス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールのいずれも含有しないサンプルのスコアを「1」に固定し、シス-リナロールオキシド濃度が10ppbであり、β-ユーデスモール濃度が0.5ppbであるサンプルのスコアを「4」に固定した。
【0031】
・香味の余韻
5:香味の余韻が嗜好飲料としてとても優れている;
4:香味の余韻が嗜好飲料として優れている;
3:香味の余韻が嗜好飲料として適している;
2:香味の余韻が嗜好飲料として適していない;
1:香味の余韻が嗜好飲料として極端に強いまたは弱く適していない。
香味の余韻の評価においては、シス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールのいずれも含有しないサンプルのスコアを「1」に固定した。
【0032】
・香りと味のバランス
5:香りと味のバランスがとても優れており、嗜好飲料として適している;
4:香りと味のバランスが優れており、嗜好飲料として適している;
3:香りと味のバランスがとれており、嗜好飲料として適している;
2:香りと味が強いまたは弱くバランスがとれておらず、嗜好飲料として適していない;
1:香りと味のどちらかまたは両方が極端に強いまたは弱く、嗜好飲料として適していない。
香りと味のバランスの評価においては、シス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールのいずれも含有しないサンプルのスコアを「1」に固定し、シス-リナロールオキシド濃度が0.1ppbであり、β-ユーデスモールを含有しないサンプルのスコアを「2」に固定した。
【0033】
(3)結果
上記の官能評価の結果を、各試験区におけるシス-リナロールオキシドおよびβ-ユーデスモールの濃度とともに表3に示す。官能評価の結果は、6名のパネルのスコアの平均値と標準偏差として示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3の対照区1および試験区1~6の結果から、シス-リナロールオキシドは、用量依存的に、ノンアルコールビールテイスト飲料における香味の強度を増強する効果、および香味の余韻を改善する効果を奏することがわかった。また、シス-リナロールオキシドの濃度は、2.0ppb以上とすることが好ましいものと考えられた。
【0036】
さらに、表3の全データから、β-ユーデスモールは、用量依存的に、上記のシス-リナロールオキシドの効果を増強することがわかった。また、β-ユーデスモールの濃度は、0.5ppb以上とすることが好ましいものと考えられた。
【0037】
さらに、表3の全データから、香りと味のバランスを考慮した場合には、シス-リナロールオキシド濃度の上限値を500ppbとすることが好ましく、100ppbとすることがさらに好ましいものと考えられた。また、香りと味のバランスを考慮した場合には、β-ユーデスモール濃度の上限値を100ppbとすることが好ましく、50ppbとすることがさらに好ましいものと考えられた。