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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167371
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】コーキング装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20231116BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20231116BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20231116BHJP
【FI】
B05C5/00 A
B25J11/00 A
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078516
(22)【出願日】2022-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年2月15日、顧客である倉敷レーザー株式会社・本社工場に納品、設置
(71)【出願人】
【識別番号】592253404
【氏名又は名称】協和ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】高竹 和明
(72)【発明者】
【氏名】中村 みか
(72)【発明者】
【氏名】三好 直樹
【テーマコード(参考)】
3C707
4F035
4F041
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS10
3C707CY12
3C707HS27
3C707HT20
4F035AA04
4F035BC02
4F041AB01
4F041CB02
4F041CB47
4F041CB54
(57)【要約】
【課題】市販のカートリッジを利用可能とし、コーキング対象部位に応じて吐出ガンの姿勢を変化させても吐出ガンのノズルを適度な圧力でコーキング対象部位に押し付けることのできるコーキング装置を提供する。
【解決手段】コーキング材を押し出す吐出ガン1を、吐出ガン1に押し付け力を与える接続アダプタ3を介して産業用ロボット2に取り付けて構成され、吐出ガン1は、コーキング材が封入されたカートリッジ13を着脱自在なホルダ部11と、ホルダ部11に向けてプランジャ125を移動及び停止させる駆動部12とからなるコーキング装置である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーキング材を押し出す吐出ガンを、吐出ガンに押し付け力を与える接続アダプタを介して産業用ロボットに取り付けて構成され、
吐出ガンは、
コーキング材が封入されたカートリッジを着脱自在なホルダ部と、
ホルダ部に向けてプランジャを移動及び停止させる駆動部とからなるコーキング装置。
【請求項2】
接続アダプタは、
吐出ガンに固定されるガン側接続部と、産業用ロボットに固定されるアーム側接続部とを連結して構成され、
ガン側接続部は、産業用ロボットに向けた側に、吐出ガンのノズル突出方向に直交するガン側平面を有し、複数のガン側突起を円周方向均等間隔でガン側平面に並べ、
アーム側接続部は、産業用ロボットの先端側に、吐出ガンに向けたアーム側平面を有し、ガン側突起と同数のアーム側突起をアーム側平面に円周方向均等間隔で並べて、
ガン側平面及びアーム側平面を平行にし、ガン側突起及びアーム側突起が円周方向均等間隔に並ぶ位置関係となるように対向させた状態で、ガン側接続部を吐出ガンに、アーム側接続部を産業用ロボットにそれぞれ固定し、円周方向に隣り合うガン側突起及びアーム側突起に掛け渡してそれぞれに結合させた弾性変形板を介して、ガン側接続部及びアーム側接続部を連結した
請求項1記載のコーキング装置。
【請求項3】
ガン側突起は、ガン側平面に直交してガン側接続部を貫通し、ガン側平面と弾性変形板との間に挟まれるガン側カラーが外嵌されたボルトであり、
アーム側突起は、アーム側平面に直交してアーム側接続部を貫通し、アーム側平面と弾性変形板との間に挟まれるアーム側カラーが外嵌されたボルトであり、
弾性変形板は、ガン側突起及びアーム側突起をそれぞれ貫通させ、ガン側突起のボルト頭又はガン側突起に締められるナットとガン側カラーとに挟まれてガン側突起に接合され、アーム側突起のボルト頭又はアーム側突起に締められるナットとアーム側カラーとに挟まれてアーム側突起に接合される
請求項2記載のコーキング装置。
【請求項4】
ガン側突起及びアーム側突起は、それぞれが並ぶ円周の半径が同じであり、
弾性変形板は、円周方向に並ぶガン側突起及びアーム側突起すべてに結合される円環状である
請求項2記載のコーキング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市販のカートリッジが利用できるコーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば接続部材の隙間を塞ぐコーキング材(シーリング材)は、通常、作業者がコーキングガンを用いて塗布される。コーキングガンは、コーキング材が封入されたカートリッジが装着され、手動又は動力により移動するプランジャでカートリッジの底部を押し、カートリッジの先端に設けられたノズルからコーキング材を押し出す。カートリッジは、使用途中でも交換できる。コーキングガンを用いたコーキング材の塗布は、作業者が熟練であるほど綺麗に仕上がる。しかし、近年、コーキング材を綺麗に塗布する熟練の作業者が減少している。そこで、熟練の作業者の減少を補うべく、コーキング材の塗布のできるコーキング装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1は、産業用ロボットのロボットアームの先端に保持された吐出ガンと、吐出ガンにコーキング材(機能性流動材)を供給する供給機と、ロボットアームの近傍に設置され、供給機へコーキング材を充填する充填ユニットとを備えたコーキング装置(機能性流動材の塗布装置)を開示する(特許文献1・[請求項1][請求項6])。供給機は、吐出ガンにホースを繋いでコーキング材を供給する構成に代えて、吐出ガンにコーキング材を適宜供給する。これにより、吐出ガンにホースを繋いでコーキング材を直接供給しなくて済むようになり、装置構成の簡素化や低廉化のほか、ホースのメンテナンスにかかる作業工数を低減できるとしている(特許文献1・[0010])。
【0004】
特許文献2は、シーラガンをワークの端縁に当接させてシーラノズルを位置決めする位置決めガイドと、ワークに当接させてシーラノズルをシーラ塗布面に対する適正な高さに位置決めするアジャストボルトとを備えたコーキング装置を開示する(特許文献2・[請求項1])。シーラガンは、位置決めガイドとアジャストボルトとをワークに押し付けるコイルバネを介したフローティング構造で産業用ロボットのロボットアームに取り付けられる(特許文献2・[請求項2])。位置決めガイドやアジャストボルトを設け、これらをワークに押し付けるフローティング構造の採用は、ロボットのティーチング工数を低減するとしている(特許文献2・[0014])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-154733号公報
【特許文献2】特開2004-016883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2それぞれが開示するコーキング装置は、専用ガン(吐出ガン:特許文献1、シーラガン:特許文献2)を用いる。これは、コーキング材が封入された市販のカートリッジを使用しないことを意味する。しかし、これまでカートリッジを装着したコーキングガンを作業者が利用していた作業環境を前提にすると、新たに導入されるコーキング装置でもカートリッジをそのまま使用できる方が好ましい。また、小規模な事業では、カートリッジを使用するコーキング装置の方が、一度に必要なコーキング材の量が少ない場合に使い切り型のカートリッジの使用が好適である等、利便性が高く、運用コストも安価に済む利点が見込める。
【0007】
ところで、コーキング装置を用いながらコーキング対象部位にコーキング材を綺麗に塗布するには、吐出ガンのノズルを適度な圧力でコーキング対象部位に押し付ける必要がある。これは、仮にカートリッジを装着する吐出ガンでも同様である。ただ、コーキング対象部位の位置や一定長さが変化する場合、吐出ガンのノズルを適度な圧力で押し付け続けることは難しい。また、押しつけ力を自動的に加減する緩衝装置は、カートリッジを利用するコーキング装置に対して重量過多であったり、装置の大型を招いたりするほか、導入コストが高くなりすぎる問題がある。
【0008】
吐出ガンのノズルを適度な圧力でコーキング対象部位に押し付ける手段として、特許文献2は、コイルバネを介したフローティング構造を開示している。明示的記載は見当たらないが、例示された図では複数のコイルバネが用いられており、コイルバネごとに伸縮して押し付け力の方向を調整し、吐出ガンのノズルを適度な圧力でコーキング対象部位に押し付けているものと思われる。図を見る限り、フローティング構造は簡素な構造で、導入コストも低廉に抑制できると考えられる。
【0009】
しかしながら、実際のところ、コイルバネを用いたフローティング構造が、吐出ガンのノズルをコーキング対象部位に押し付ける適度な圧力を発生させることは難しいと言わざるを得ない。押しつけ力の変化が微妙であるほか、必要な押しつけ力が微小であるため、コイルバネの弾性力が強すぎたり、弱すぎたりするからである。また、特許文献2が開示するコーキング装置は、鉛直方向に向けられた吐出ガンのノズルの高さを加減するだけなので、コイルバネを用いたフローティング構造でも十分であるが、コーキング対象部位に応じて吐出ガンの姿勢を変化させる必要があれば、利用し難い。
【0010】
こうした事情から、市販のカートリッジを利用可能としながら、コーキング対象部位に応じて吐出ガンの姿勢を変化させても吐出ガンのノズルを適度な圧力でコーキング対象部位に押し付けることのできるコーキング装置が、未だ提供されていない。そこで、第1に市販のカートリッジを利用可能とし、第2にコーキング対象部位に応じて吐出ガンの姿勢を変化させても吐出ガンのノズルを適度な圧力でコーキング対象部位に押し付けることのできるコーキング装置を提供すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
検討の結果開発したものが、コーキング材を押し出す吐出ガンを、吐出ガンに押し付け力を与える接続アダプタを介して産業用ロボットに取り付けて構成され、吐出ガンは、コーキング材が封入されたカートリッジを着脱自在なホルダ部と、ホルダ部に向けてプランジャを移動及び停止させる駆動部とからなるコーキング装置である。吐出ガンのノズルは、カートリッジが備えるノズルを利用してもよいし、別途カートリッジに取り付ける別体のノズルを利用してもよい。本発明のコーキング装置は、コーキング材が封入されたカートリッジを使用したコーキング材の塗布作業に利用されるほか、接着剤が封入されたカートリッジを使用した接着剤の塗布作業にも利用される。
【0012】
本発明のコーキング装置は、市販のカートリッジを保持させた吐出ガンを、吐出ガンに押しつけ力を与える接続アダプタを介して、産業用ロボットに取り付ける。吐出ガンのノズルは、ホルダ部に保持されたカートリッジのノズルやカートリッジに別途取り付けたノズルが利用される。これにより、吐出ガンのノズルの姿勢を自在に調整できるコーキング装置が提供できる。吐出ガンを構成するホルダ部は、半割で開閉自在な枠体が例示される。また、吐出ガンを構成する駆動部は、電動のサーボプレスで、プレス本体から出没するラムにプランジャを取り付ける構成が例示される。接続アダプタは、駆動部を産業用ロボットに接続する構成がよい。
【0013】
接続アダプタは、吐出ガンに固定されるガン側接続部と、産業用ロボットに固定されるアーム側接続部とを連結して構成され、ガン側接続部は、産業用ロボットに向けた側に、吐出ガンのノズル突出方向に直交するガン側平面を有し、複数のガン側突起を円周方向均等間隔でガン側平面に並べ、アーム側接続部は、産業用ロボットの先端側に、吐出ガンに向けたアーム側平面を有し、ガン側突起と同数のアーム側突起をアーム側平面に円周方向均等間隔で並べて、ガン側平面及びアーム側平面を平行にし、ガン側突起及びアーム側突起が円周方向均等間隔に並ぶ位置関係となるように対向させた状態で、ガン側接続部を吐出ガンに、アーム側接続部を産業用ロボットにそれぞれ固定し、円周方向に隣り合うガン側突起及びアーム側突起に掛け渡してそれぞれに結合させた弾性変形板を介して、ガン側接続部及びアーム側接続部を連結した構成にするとよい。弾性変形板を介して連結されたガン側接続部及びアーム側接続部から構成された接続アダプタは、シール対象部位に吐出ガンのノズルを押し付けると、ガン側突起及びアーム側突起に掛け渡した弾性変形板を弾性変形させ、弾性変形板の復元力を押し付け力として吐出ガンに与える。
【0014】
弾性変形板は、選択した1つずつのガン側突起及びアーム側突起を組として掛け渡してもよい。しかし、ガン側突起及びアーム側突起は、それぞれ両隣のアーム側突起又はガン側突起に弾性変形板を掛け渡し、弾性変形板を介して互いに両持ち支持とするほうが好ましい。ガン側突起又はアーム側突起が弾性変形板を介して互いに両持ち支持となれば、産業用ロボットに対する吐出ガンの支持が安定する。また、弾性変形板は、ガン側突起及びアーム側突起が並ぶ円周方向に均等に配置されることになり、吐出ガンの姿勢が変化しても、いずれかの弾性変形板の復元力が吐出ガンに適度な押し付け力を与える。
【0015】
ガン側突起は、ガン側平面に直交してガン側接続部を貫通し、ガン側平面と弾性変形板との間に挟まれるガン側カラーが外嵌されたボルトであり、アーム側突起は、アーム側平面に直交してアーム側接続部を貫通し、アーム側平面と弾性変形板との間に挟まれるアーム側カラーが外嵌されたボルトであり、弾性変形板は、ガン側突起及びアーム側突起をそれぞれ貫通させ、ガン側突起のボルト頭又はガン側突起に締められるナットとガン側カラーとに挟まれてガン側突起に接合され、アーム側突起のボルト頭又はアーム側突起に締められるナットとアーム側カラーとに挟まれてアーム側突起に接合されると、ガン側接続部及びアーム側接続部と弾性変形板との間に、弾性変形板が必要十分な弾性変形をすることのできる空間が形成される。
【0016】
例えばガン側ボルトは、(1)ガン側平面と反対側からガン側接続部、ガン側カラー、弾性変形板の順に貫通させ、ボルト頭をガン側接続部に掛合させた状態で、弾性変形板から突出するボルト本体にナットを締め付ける、又は(2)ガン側平面の側から弾性変形板、ガン側カラー、ガン側接続部の順に貫通させ、ボルト頭を弾性変形板に掛合させた状態で、ガン側接続部から突出するボルト本体にナットを締め付ける。アーム側ボルトも、ガン側ボルト同様に、ナットを締め付けてアーム側接続部、アーム側カラー及び弾性変形板を一体化する。(1)の構成の場合、ボルト本体が長すぎれば、弾性変形板とナットとの間に調整用カラーを介装してもよい。
【0017】
吐出ガンに与える押し付け力の方向変化を専ら弾性変形板の弾性変形だけに頼る場合、ガン側ボルト及びアーム側ボルトに外嵌するガン側カラー及びアーム側カラーは、剛性を備え、変形しない素材、例えば金属又は硬質樹脂で構成するとよい。吐出ガンに与える押し付け力の方向変化を弾性変形板の弾性変形以上にしたい場合、ガン側ボルト及びアーム側ボルトに外嵌するガン側カラー及びアーム側カラーは、弾性変形する素材、例えば軟質樹脂又は弾性ゴムで構成するとよい。弾性変形するガン側カラー及びアーム側カラーは、素材の選択やカラー自体の肉厚によって、弾性変形量を加減することができる。
【0018】
ガン側突起及びアーム側突起が並ぶ円周は、半径が異なってもよい。しかし、ガン側突起及びアーム側突起は、それぞれが並ぶ円周の半径が同じであり、弾性変形板は、円周方向に並ぶガン側突起及びアーム側突起すべてに結合される円環状であると好ましい。円環状の弾性変形板は、円周方向に隣り合うガン側突起及びアーム側突起に掛け渡す弾性変形板がすべてつながった構造で、複数のガン側突起及びアーム側突起の位置合わせが一度にできる。また、円環状の弾性変形板は、ガン側突起及びアーム側突起に架け渡される弾性変形板の部分が点対称同一に複数形成でき、吐出ガンの姿勢変化に合わせて複数の弾性変形板の部分それぞれに、大きさや方向の異なる復元力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコーキング装置は、吐出ガンが市販のカートリッジを保持するホルダ部と、カートリッジの底からプランジャを押し込む駆動部とからなることにより、市販のカートリッジをそのまま利用できる。市販のカートリッジの利用は、これまでカートリッジを装着したコーキングガンを利用していた作業環境に、コーキング装置を容易に導入可能とする。また、本発明のコーキング装置は、一度に必要なコーキング材が少ない作業環境でカートリッジを利用可能とし、安価な運用コストを実現する。
【0020】
吐出ガンに押し付け力を与える接続アダプタは、市販のカートリッジを利用しながら、吐出ガンのノズルをコーキング対象部位に押し付ける働きを付与する。ここで、接続アダプタが、ガン側突起及びアーム側突起に掛け渡した弾性変形板を介してガン側接続部及びアーム側接続部が連結される構成であると、吐出ガンの姿勢に応じて弾性変形した弾性変形板に発生する復元力が、吐出ガンのノズルをシール対象部位に押し付ける具合に応じて一定の押し付け力を発生させる。これは、コーキング対象部位を問わず、良好なコーキング材の塗布が保証されることを意味し、本発明のコーキング装置が熟練の作業者に代替できる効果をもたらす。
【0021】
ガン側突起がガン側カラーを外嵌したボルトであり、アーム側突起がアーム側カラーを外嵌したボルトである接続アダプタは、ガン側カラー及びアーム側カラーが弾性変形できる必要十分な空間を弾性変形板に形成することにより、弾性変形板の復元力による押し付け力を制約なく発生させ、吐出ガンに与えることができる。また、ガン側カラー及びアーム側カラーを構成する素材の剛性又は弾性を選択すれば、吐出ガンに与える押し付け力を弾性変形板の復元力だけから、ガン側カラー及びアーム側カラーの復元力を付加することができ、押し付け力の調整幅を大きくできる。
【0022】
そして、円環状の弾性変形板を用いた接続アダプタは、複数のガン側突起又はアーム側突起を一度に位置合せができるため、組み立てやすくなる。また、円環状の弾性変形板を用いた接続アダプタは、大きさや方向の異なる復元力を、ガン側突起及びアーム側突起に架け渡される弾性変形板の部分ごとに発生させることにより、吐出ガンの姿勢に応じて押し付け力の方向を変化させることができる。これにより、本発明のコーキング装置は、吐出ガンの姿勢に関係なく、適度な大きさ及び方向の押し付け力を吐出ガンのノズルに与えることができ、良好なコーキング材の塗布を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を適用したコーキング装置の一例を表す斜視図である。
図2】本例の吐出ガンのホルダ部にカートリッジを装着する手順を表した部分斜視図である。
図3】本例の吐出ガンの正面図である。
図4】本例の吐出ガンの平面図である。
図5】本例の吐出ガンの底面図である。
図6】本例の接続アダプタの分解斜視図である。
図7】本例の接続アダプタをアーム側接続部(仮想線表示)側から見た斜視図である。
図8】本例の接続アダプタをガン側接続部(仮想線表示)側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のコーキング装置は、例えば図1に見られるように、コーキング材を押し出す吐出ガン1を、吐出ガン1に押し付け力を与える接続アダプタ3を介して産業用ロボット2に取り付けて構成される。本例の産業用ロボット2は、アーム本体22が複数のアーム単位を直列接続した垂直多関節ロボットで、ベース21に載せたアーム本体22を水平旋回させ、アーム本体22を自由に屈曲及び回転させ、先端アーム23に支持させた吐出ガン1の姿勢を自在に変更する。本発明が利用しうる産業用ロボット2は、本例の垂直多関節ロボットに限定されず、従来公知の水平多関節ロボット、パラレルリンクロボット、直交ロボット、円筒座標ロボット、極座標ロボット等も利用可能である。
【0025】
本例の吐出ガン1は、図2に見られるように、コーキング材が封入されたカートリッジ13を着脱自在なホルダ部11と、ホルダ部11に向けてプランジャ125を移動及び停止させる駆動部12とからなる。ホルダ11部は、カートリッジ13のケース131を添わせて保持するホル部本体111と、ケース131の先端部を嵌合させて保持するカートリッジ嵌合部112とから構成される。カートリッジ13は、図3に見られるように、先端部をカートリッジ嵌合部112に嵌合させ、カートリッジ嵌合部112の先端開口からノズル132を突出させた状態で、駆動部12のプランジャ125をケース131に差し込ませることにより、ホルダ部本体111に保持される。
【0026】
本例の駆動部12は、電動シリンダであり、ラム124が出没するラムケース123とモータ121とが動力伝達機構122により接続された構成で、ラム124の先端にプランジャ125が取り付けられている。動力伝達機構122は、モータ121の回転動力をボールネジ構造のラム124に伝達するほか、ラム124の移動を停止させるブレーキが内蔵されている。ホルダ部11と駆動部12とは、ラムケース123の先端にホルダ部本体の後端を接合することにより一体化する。接続アダプタ3のガン側接続部31は、ラムケース123にボルト結合により固定される。
【0027】
本例の接続アダプタ3は、図2及び図4図8に見られるように、吐出ガン1に固定されるガン側接続部31と、産業用ロボット2に固定されるアーム側接続部32とを、弾性変形板33を介して連結することにより構成される。このように、吐出ガン1は、接続アダプタ3を介して産業用ロボット2と接続され、接続アダプタ3のガン側接続部31及びアーム側接続部32を繋ぐ弾性変形板33の弾性変形により発現する復元力がガン側接続部31を通じて加えられることにより、ノズル131をコーキング対象部位に対して適度な大きさ及び方向で押し付ける押し付け力が与えられる。
【0028】
ガン側接続部31は、吐出ガン1のラムケース123から、吐出ガン1のノズル突出方向に直交して突出する長方形状の金属板で、長尺方向の左半分(左右は説明の便宜上のもので、図3に準拠する。以下、同じ)の略中心に設けられた吐出ガン貫通孔319に吐出ガン1のホルダ部11を貫通させ、吐出ガン貫通孔319の周りに設けられた多数の吐出ガン接続ボルト孔318を用いて駆動部12のラムケース123にボルト止めされる。ガン接続部31は、例えば吐出ガン1のホルダ部12にボルト止めしたり、駆動部11及びホルダ部12双方にボルト止めしたりしてもよい。
【0029】
本例のガン側接続部31は、長尺方向の右半分の産業用ロボット2に向けた側のガン側平面316に、3個のガン側ボルト孔314a~314cを円周方向均等間隔(120度間隔)で並べて設け、ガン側ボルト孔314a~314cに囲まれた中心に位置合わせ軸孔313を設けている。本例のガン側接続部31は、ガン側ボルト孔314a~314cと同一円周上の円周方向中間位置に、アーム側ナット325d~325fを締めたり、緩めたりするソケットレンチを挿入するガン側アクセス孔317d~317fを、円周方向均等間隔(120度間隔)で設けている。
【0030】
アーム側接続部32は、産業用ロボット2の先端アーム23から、ハンド部23の延在直交方向に突出する長方形状の金属板で、長尺方向の右半分の略中心に設けられたケーブル通し孔329の周りに設けられた多数のアーム接続ボルト孔328を用いて産業用ロボット2のハンド部23にボルト止めされる。ケーブル通し孔329は、産業用ロボット2を通じて配線され、吐出ガン1の駆動部11に接続される給電ケーブルや通信ケーブル(図1中図示略)を通す。給電ケーブルや通信ケーブルが産業用ロボット2と別に配線される場合、ケーブル通し孔329は省略してもよい。
【0031】
本例のアーム側接続部32は、長尺方向の左半分の吐出ガン1に向けた側のアーム側平面326に、3個のアーム側ボルト孔324d~324fを、ガン側接続部31と超尺方向を揃えた姿勢で、ガン側ボルト孔314a~314cと同一円周上かつガン側ボルト孔314a~314cと60度ずれた位置に円周方向均等間隔(120度間隔)で並べて設け、アーム側ボルト孔324d~324fに囲まれた中心に、ガン側接続部31のガン側位置合わせ軸孔313を通して突出する位置合わせボルト34を螺合する位置合わせ雌ネジ323を設けている。本例のアーム側接続部32は、アーム側ボルト孔324d~324fと同一円周上の円周方向中間位置に、ガン側ナット315a~315cを締めたり、緩めたりするソケットレンチを挿入するアーム側アクセス孔327a~327cを、円周方向均等間隔(120度間隔)で設けている。
【0032】
ガン側接続部31及びアーム側接続部32は、長尺方向を揃えて、対向するガン側平面316及びアーム側平面326を平行にし、ガン側ボルト孔314a~314c及びアーム側ボルト孔324d~324fが同一円周上かつ円周方向均等間隔に並ぶ位置関係となるように対向させた状態で、弾性変形板33を介して連結される。本例の弾性変形板33は、円形の中心開口331を有する円環状の薄い金属板で、ガン側ボルト孔314a~314c及びアーム側ボルト孔324e~324fが並ぶ同一円周上に、円周方向均等間隔(60度間隔)で6個の変形板側ボルト孔333a~333fを有し、変形板側ボルト孔333a~333fを結ぶ範囲の外周縁に、半径方向内向きの円弧状切り欠き332を円周方向均等間隔(60度間隔)で設けている。円弧状切り欠き332は、変形板側ボルト孔333a~333f回りの部分と変形板側ボルト孔333a~333fを結ぶ部分との断面積の差を小さくし、弾性変形板33全体が均等に弾性変形するようにしている。
【0033】
ガン側接続部31は、ガン側平面316の反対側からガン側ボルト孔314a~314cに、ガン側突起としてガン側ボルト311a~311cを差し込み、ガン側平面316から突出するボルト本体にガン側カラー312a~312cを外嵌し、ガン側カラー312a~312cから突出するボルト本体を弾性変形板33の変形板側ボルト孔333a~333fから突出させてガン側ナット314a~314cを螺合することにより、弾性変形板33と接合する(図7参照)。ガン側接続部31、ガン側カラー312a~312c及び弾性変形板33は、ガン側ボルト311a~311cのボルト頭とガン側ナット314a~314cに挟まれ、互いの位置関係が固定された接合状態が維持される。
【0034】
ガン側ナット315a~315cは、ガン側ボルト孔314a~314cと円周方向同位置でアーム側接続部32に設けられたアーム側アクセス孔327a~327cから差し込んだソケットレンチによりガン側ボルト311a~311cに締め付ける。本例のガン側カラー312a~312cは、弾性変形しない金属製の肉厚な筒体で、長さはすべて同じである。これにより、ガン側平面316と弾性変形板33とは、ガン側カラー312a~312cの長さで離れた平行の関係にあり、密着しないガン側平面316と弾性変形板33の間に弾性変形板33の変形代が確保される。ガン側カラー312a~312cは、ガン側平面316と弾性変形板33とを密着させない限り、長さが限定されない。
【0035】
アーム側接続部32は、アーム側平面326の反対側からアーム側ボルト孔324d~324fに、アーム側突起としてアーム側ボルト321d~321fを差し込み、アーム側平面326から突出するボルト本体にアーム側カラー322d~322fを外嵌し、アーム側カラー322d~322fから突出するボルト本体を弾性変形板33の変形板側ボルト孔333a~333fから突出させてアーム側ナット324d~324fを螺合することにより、弾性変形板33と接合する(図8参照)。アーム側接続部32、アーム側カラー322e~322f及び弾性変形板33は、アーム側ボルト321e~321fのボルト頭とアーム側ナット324e~314fに挟まれ、互いの位置関係が固定された接合状態が維持される。
【0036】
アーム側ナット325d~325fは、アーム側ボルト孔324d~324fと円周方向同位置でガン側接続部31に設けられたガン側アクセス孔317d~317fから差し込んだソケットレンチによりアーム側ボルト321d~321fに締め付ける。本例のアーム側カラー322d~322fは、弾性変形しない金属製の肉厚な筒体で、ガン側カラー312a~312cと同じものである。これにより、アーム側平面326と弾性変形板33とは、アーム側カラー322a~322cの長さで離れた平行の関係にあり、密着しないアーム側平面326と弾性変形板33との間に、弾性変形板33の変形代が確保される。本例のガン側カラー312a~312cとアーム側カラー322e~322fは同一なので、ガン側接続部31、弾性変形板33、アーム側接続部32は、前記記載順に等間隔で並行に並ぶことになる。
【0037】
本例の接続アダプタ3は、ガン側突起であるガン側ボルト311a~311cとアーム側突起であるアーム側ボルト321d~321fとが、円周方向等間隔(60度間隔)で正六角形の頂点に互い違いに並んだ状態で対向させ、円環状の弾性変形板33により連結された構成である。これは、円周方向に隣り合うガン側ボルト311a~311cとアーム側ボルト321d~321fを結ぶ弾性変形部材が環状に繋がり、弾性変形板33を構成する、と見ることができる。こうして、ガン側ボルト311a~311c及びアーム側ボルト321d~321fの位置関係が弾性変形板33の弾性変形により相対的に変化しうる。
【0038】
弾性変形板33を介したガン側接続部31及びアーム側接続部32の接続作業は、ガン側平面316の反対側からガン側接続部31の位置合わせ軸孔313に差し込んだ位置合わせボルト34を、アーム側接続部32の位置合わせ雌ネジ323に捩じ込み、ガン側接続部31及びアーム側接続部32の相対的に回転を許容した緩やかな連結状態で実施される。このとき、弾性変形板33は、中心開口331に通した位置合わせボルト34に中心開口331の内周縁が掛合する範囲で自由に動かせる。これにより、ガン側接続部31及びアーム側接続部32の距離が一定に保たれた状態で、ガン側接続部31及びアーム側接続部32の相対的に回転させながら、ガン側ボルト孔311a~311c、アーム側ボルト孔321d~321f、変形板側ボルト孔333a~333f、アーム側ボルト孔321d~321f及びアーム側アクセス孔327a~327cを位置合わせできる。
【0039】
位置合わせボルト34は、弾性変形板33の弾性変形を防止し、ガン側接続部31及びアーム側接続部32を互いに拘束するもので、通常のコーキング作業中は基本的に外す(このため、図2には位置合わせボルト34が図示されていない)。ここで、産業用ロボット2に対する吐出ガン1の姿勢を微妙に変化させる接続アダプタ3の働きは、産業用ロボット2のティーチング作業を阻害する虞がある。これから、位置合わせボルト34は、産業用ロボット2のティーチング作業に際して強く締め込み、弾性変形板33の弾性変形を防止し、ガン側接続部31及びアーム側接続部32の強固な連結状態を作り出し、産業用ロボット2に対する吐出ガン1の姿勢を化させないようにする働きも有する。
【0040】
本例のコーキング装置は、コーキング対象部位に吐出ガン1のノズル132を押し付けた際、弾性変形する接続アダプタ3の弾性変形板33の復元力によって、吐出ガン1に適度な大きさ及び方向の押し付け力を与える。本例の弾性変形板33は、円周方向均等間隔で3本のガン側ボルト311a~311cと3本のアーム側ボルト321d~321fとが交互に並んで接続されている。これは、例えばアーム側ボルト321d~321fそれぞれに架け渡された弾性変形板3の弾性変形単位EA(アーム側ボルト321d~アーム側ボルト321e間)、EB(アーム側ボルト321e~アーム側ボルト321f間)、EC(アーム側ボルト321f~アーム側ボルト321e間)それぞれの円周方向中間に、ガン側ボルト311a~311cが接続された構造と見ることができる。
【0041】
吐出ガン1のノズル131がコーキング部位に押しつけられることにより吐出ガン1からガン側接続部31に伝達される反力は、ガン側ボルト311a~311cそれぞれに分散され、ガン側ボルト311a~311cが接続された弾性変形板33の弾性変形単位EA~ECそれぞれを異なる大きさ及び向きで押し、変形させる。これにより、弾性変形単位EA~ECそれぞれに発生する復元力の大きさ及び向きが異なり、反力に応じた復元力で吐出ガン1を押し返すことになる。こうして、吐出ガン1は、弾性変形単位EA~ECそれぞれの復元力を合成し、コーキング対象部位に向けて適度な大きさ及び方向の押し付け力が与えられる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のコーキング装置は、コーキング材が充填されたカートリッジを使用したコーキング作業に利用されるほか、接着剤が充填されたカートリッジを使用した接着作業にも利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 吐出ガン
11 ホルダ部
111 ホルダ部本体
112 カートリッジ嵌合部
12 駆動部
121 モータ
122 動力伝達機構
123 ラムケース
124 ラム
125 プランジャ
13 カートリッジ
131 ノズル
2 産業用ロボット
21 ベース
22 アーム本体
23 ハンド部
3 接続アダプタ
31 ガン側接続部
311a~311c ガン側ボルト
312a~312c ガン側カラー
313 位置合わせ軸孔
314a~314c ガン側ボルト孔
315a~315c ガン側ナット
316 ガン側平面
317d~317f ガン側アクセス孔
318 吐出ガン接続ボルト孔
319 吐出ガン貫通孔
32 アーム側接続部
321d~321f アーム側ボルト
322d~322f アーム側カラー
323 位置合わせ雌ネジ
324d~324f アーム側ボルト孔
325d~325f アーム側ナット
326 アーム側平面
327a~327c アーム側アクセス孔
328 アーム接続ボルト孔
329 ケーブル通し孔
33 弾性変形板
331 中心開口
332 円弧状切り欠き
333a~334f 変形板側ボルト孔
34 位置合わせボルト
EA~EC 弾性変形単位

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8