(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167402
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/22 20060101AFI20231116BHJP
F23D 14/34 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F23D14/22 D
F23D14/34 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078564
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢太
(72)【発明者】
【氏名】荒川 聖長
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
【テーマコード(参考)】
3K019
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BA01
3K019BB02
3K019CA03
3K019CC05
(57)【要約】
【課題】排ガス中のNOxを低減する。
【解決手段】バーナ100は、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口(燃料噴射口112c)を含む第1噴射部110と、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口138を含み、第1噴射部110と離隔する第2噴射部130と、少なくとも水素を含む燃料ガスを第1噴射部110に供給する第1供給部120と、酸化剤ガスを第2噴射部130に供給する第2供給部140と、を備え、第1噴射部110から噴射される燃料ガスの流速は、100m/秒以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口を含む第1噴射部と、
前記炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口を含み、前記第1噴射部と離隔する第2噴射部と、
少なくとも水素を含む燃料ガスを前記第1噴射部に供給する第1供給部と、
酸化剤ガスを前記第2噴射部に供給する第2供給部と、
を備え、
前記第1噴射部から噴射される前記燃料ガスの流速は、100m/秒以上である、バーナ。
【請求項2】
前記第2噴射部から噴射される前記酸化剤ガスの流速は、前記燃料ガスの流速の0.9倍以上である、請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
前記第1供給部は、
前記燃料ガスに加えて、前記燃料ガスに対する理論酸化剤量以上の目標酸化剤量の20%未満の前記酸化剤ガスを前記第1噴射部に供給し、
前記第2供給部は、
前記第1噴射部に供給される前記酸化剤ガスの量と前記目標酸化剤量との差分の前記酸化剤ガスを前記第2噴射部に供給する、請求項1または2に記載のバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を含む燃料ガスを燃焼させるバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を防止するために、CO2(二酸化炭素)排出量の削減が求められている。このため、化石燃料に加えて、または、化石燃料に代えて、水素を燃焼させる技術が注目されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素を燃焼させる場合の火炎の温度は、化石燃料のみを燃焼させる場合の火炎の温度よりも高い。したがって、空気中の窒素と酸素との反応によって生成されるサーマルNOx(窒素酸化物)が増加し、排ガス中のNOxの濃度が上昇してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、排ガス中のNOxを低減することが可能なバーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のバーナは、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口を含む第1噴射部と、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口を含み、第1噴射部と離隔する第2噴射部と、少なくとも水素を含む燃料ガスを第1噴射部に供給する第1供給部と、酸化剤ガスを第2噴射部に供給する第2供給部と、を備え、第1噴射部から噴射される燃料ガスの流速は、100m/秒以上である。
【0007】
また、第2噴射部から噴射される酸化剤ガスの流速は、燃料ガスの流速の0.9倍以上であってもよい。
【0008】
また、第1供給部は、燃料ガスに加えて、燃料ガスに対する理論酸化剤量以上の目標酸化剤量の20%未満の酸化剤ガスを第1噴射部に供給し、第2供給部は、第1噴射部に供給される酸化剤ガスの量と目標酸化剤量との差分の酸化剤ガスを第2噴射部に供給してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排ガス中のNOxを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るバーナを説明する図である。
【
図2】第1噴射部の燃料噴射口、および、第2噴射部の第2噴射口を炉の内部空間側から見た図である。
【
図3】第1噴射部から噴射される燃料ガスの流速とNOxの濃度との関係を説明する図である。
【
図4】第2噴射部から噴射される二次空気の流速とNOxの濃度との関係を説明する図である。
【
図5】仮想円の直径とNOxの濃度との関係を説明する図である。
【
図6】第2の実施形態に係るバーナを説明する図である。
【
図7】目標空気量における一次空気量の比率と、排ガス中に含まれるNOxの量との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
[第1の実施形態:バーナ100]
図1は、第1の実施形態に係るバーナ100を説明する図である。
図1に示すように、バーナ100は、炉を構成する炉壁10に設けられる。炉は、例えば、ガラス溶解炉、金属(鉄鋼または非鉄金属)加熱炉、熱処理炉、焼成炉、ボイラの火炉等である。
【0013】
バーナ100は、FDI(Fuel Direct Injection)システムのバーナである。バーナ100は、燃料ガスと酸化剤ガスとを別々に炉内に直接噴出させる。そうすると、これらの噴流が炉内の雰囲気ガスを大量に巻き込んで、自己排ガス再循環が行われる。自己排ガス再循環により、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合が緩慢となり、バーナ100は、火炎温度を低く抑えて燃料ガスを燃焼させることができる。
【0014】
本実施形態において、燃料ガスは、水素を少なくとも含む。燃料ガスは、水素のみを含んでもよいし、水素に加えて炭化水素等を含んでもよい。炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン等である。酸化剤ガスは、燃料ガスを燃焼させることができるガスである。ここでは、酸化剤ガスが、空気である場合を例に挙げる。
【0015】
図1に示すように、バーナ100は、第1噴射部110と、第1供給部120と、第2噴射部130と、第2供給部140とを含む。
【0016】
第1噴射部110は、炉の内部空間に向けて設けられる。第1噴射部110は、燃料ガスを噴射する。本実施形態において、第1噴射部110は、燃料噴射ノズル112を有する。
【0017】
燃料噴射ノズル112は、燃料ガスを噴射するノズルである。燃料噴射ノズル112は、本体112aと、燃料供給管112bと、燃料噴射口112c(第1噴射口)とを含む。本体112aは、円筒形状の管体である。本体112aの中心軸は、炉壁10に対して交差(ここでは、略直交)する。
図1では、本体112aにおける炉壁10側(
図1中、右側、以下「先端」という)に位置する先端部112dが先端に向かうにつれて径が漸減する形状の場合の例を示しているが、燃料噴射ノズル112の形状はこれに限らない。
【0018】
本体112aの後部(本体112aにおける炉壁10側に対する逆側(
図1中、左側、以下「後端」という)の部分)に、燃料供給管112bが接続される。
【0019】
また、本体112aの先端に、開口である燃料噴射口112cが形成される。燃料噴射口112cは、炉の内部空間に臨む。
【0020】
第1供給部120は、燃料ガスを第1噴射部110に供給する。本実施形態において、第1供給部120は、燃料供給系統122を含む。燃料ガスは、燃料供給系統122から、燃料供給管112bを介して本体112a内に供給される。本体112a内に供給された燃料ガスは、本体112a内の空間を流れる。本体112a内を通過した燃料ガスは、燃料噴射口112cから炉の内部空間に噴射される。そして、噴射された燃料ガスは、不図示の着火装置によって着火され、炉の内部空間において火炎が形成される。
【0021】
第2噴射部130は、第1噴射部110によって噴射される燃料ガスに対し、径方向外側から空気(二次空気)を供給する。第2噴射部130は、目標空気量の空気を供給する。目標空気量は、第1供給部120によって第1噴射部110(燃料噴射ノズル112)に供給される燃料ガスに対する理論空気量以上の所定の空気量である。目標空気量は、例えば、理論空気量の1.0倍以上、1.5倍以下(空気比が1.0倍以上、1.5倍以下)である。理論空気量は、燃料ガスを完全燃焼させるために必要な最小の空気量である。
【0022】
本実施形態において、第2噴射部130は、主流路132と、複数の分岐流路134と、酸化剤供給管136と、第2噴射口138とを有する。主流路132は、バーナ本体ブロック132a内および耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路である。主流路132は、円柱形状である。主流路132は、燃料噴射ノズル112の本体112aと同軸上に、本体112aを囲むように配置される。主流路132における炉壁10側(
図1中、右側、以下「先端」という)は、複数の分岐流路134に分岐される。分岐流路134は、耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路である。分岐流路134は、主流路132よりも小径の円柱形状である。本実施形態において、分岐流路134は、例えば、6つ設けられる。
【0023】
主流路132の後部(主流路132における炉壁10側に対する逆側(
図1中、左側、以下「後端」という)の部分)に、酸化剤供給管136が接続される。主流路132の後端は、燃料噴射ノズル112の本体112aの後端よりも炉壁10側に位置する。
【0024】
また、分岐流路134の先端に、開口である第2噴射口138が形成される。ここでは、6つの第2噴射口138が形成される。第2噴射口138は、炉の内部空間に臨む。第2噴射口138は、燃料噴射口112cと離隔して設けられる。本実施形態において、複数の第2噴射口138は、燃料噴射口112cの径方向外方に設けられる。
【0025】
第2噴射口138は、燃料噴射口112cと略同一平面上に設けられる。つまり、分岐流路134の先端の軸方向の位置は、燃料噴射口112cの軸方向の位置と略一致する。
【0026】
図2は、第1噴射部110の燃料噴射口112c、および、第2噴射部130の第2噴射口138を炉の内部空間側から見た図である。
図2に示すように、6つの第2噴射口138は、燃料噴射口112cを中心とした仮想円VC上に略等間隔に配置される。仮想円VCの直径Ln(P.C.D: Pitch Circle Diameter)については、後に詳述する。
【0027】
図1に戻って説明すると、第2供給部140は、二次空気を第2噴射部130に供給する。本実施形態において、第2供給部140は、酸化剤供給系統142を含む。二次空気は、酸化剤供給系統142から、酸化剤供給管136を介して主流路132内に供給される。主流路132内に供給された二次空気は、主流路132内の空間を流れる。そして、二次空気は、主流路132から分岐流路134に導かれ、第2噴射口138から炉の内部空間に噴射される。
【0028】
[第1噴射部110から噴射される燃料ガスの流速]
続いて、第1噴射部110(燃料噴射口112c)から噴射される燃料ガスの流速について説明する。上記バーナ100を用い、燃料ガスの流速Vfを異ならせて、排ガスに含まれるNOxの濃度をそれぞれ測定した。排ガスは、燃料ガスが燃焼することで生じる排ガスである。また、第2噴射部130から噴射される二次空気の流速Vaを90m/秒(s)とした。
【0029】
図3は、第1噴射部110から噴射される燃料ガスの流速VfとNOxの濃度との関係を説明する図である。
図3中、縦軸は、排ガスに含まれるNOxの濃度を示し、横軸は、燃料ガスの流速Vf[m/s]を示す。
【0030】
図3に示すように、燃料ガスの流速Vfを40m/sとした場合、NOxの濃度は、約15ppmであった。また、燃料ガスの流速Vfを100m/sとした場合、NOxの濃度は、約9ppmであった。燃料ガスの流速Vfを150m/sとした場合、NOxの濃度は、約9ppmであった。つまり、燃料ガスの流速Vfを100m/s以上とすることで、NOxの濃度を10ppm未満にできることが確認された。
【0031】
したがって、第1供給部120は、第1噴射部110(燃料噴射口112c)から噴射される燃料ガスの流速Vfが、100m/秒以上となるように、燃料ガスを第1噴射部110に供給する。これにより、バーナ100は、排ガス中のNOxを低減することができる。
【0032】
なお、燃料ガスの流速Vfが100m/秒以上であれば、排ガス中のNOxを低減できるため、燃料ガスの流速Vfの上限に限定はない。ただし、燃料ガスの流速Vfを高くするほど、第1供給部120の要求能力(燃料ガスの供給圧力等)が増加する。このため、燃料ガスの流速Vfは、100m/秒以上、150m/秒以下が好ましい。燃料ガスの流速Vfを150m/秒以下とすることにより、第1供給部120の要求能力を低減することができ、第1供給部120に要するコストを削減することが可能となる。
【0033】
[第2噴射部130から噴射される二次空気の流速]
続いて、第2噴射部130(第2噴射口138)から噴射される二次空気の流速について説明する。上記バーナ100を用い、二次空気の流速Vaを異ならせて、排ガスに含まれるNOxの濃度をそれぞれ測定した。また、第1噴射部110から噴射される燃料ガスの流速Vfを100m/sとした。
【0034】
図4は、第2噴射部130から噴射される二次空気の流速VaとNOxの濃度との関係を説明する図である。
図4中、縦軸は、排ガスに含まれるNOxの濃度を示し、横軸は、二次空気の流速Va[m/s]を示す。
【0035】
図4に示すように、二次空気の流速Vaを18m/sとした場合、NOxの濃度は、約18ppmであった。また、二次空気の流速Vaを40m/sとした場合、NOxの濃度は、約13ppmであった。二次空気の流速Vaを90m/sとした場合、NOxの濃度は、約9ppmであった。つまり、二次空気の流速Vaを90m/s以上とすることで、NOxの濃度を10ppm未満にできることが確認された。
【0036】
したがって、第2供給部140は、第2噴射部130(第2噴射口138)から噴射される二次空気の流速Vaが、90m/秒以上となるように、二次空気を第2噴射部130に供給する。つまり、第2供給部140は、第2噴射部130から噴射される二次空気の流速Vaが、燃料ガスの流速Vfの0.9倍以上となるように、二次空気を第2噴射部130に供給する。これにより、バーナ100は、排ガス中のNOxを低減することができる。
【0037】
なお、二次空気の流速Vaが90m/秒以上であれば、排ガス中のNOxを低減できるため、二次空気の流速Vaの上限に限定はない。ただし、二次空気の流速Vaを高くするほど、第2供給部140の要求能力(二次空気の供給圧力等)が増加する。このため、例えば、空気予熱を行わない場合、つまり、二次空気が常温(例えば、25℃)である場合、二次空気の流速Vaは、燃料ガスの流速Vfの0.9倍以上、1.0倍以下が好ましい。二次空気の流速Vaを燃料ガスの流速の1.0倍以下とすることにより、第2供給部140の要求能力を低減することができ、第2供給部140に要するコストを削減することが可能となる。なお、空気予熱を行う場合、二次空気の流速Vaを1.0倍超とするとよい。これにより、バーナ100は、排ガス中のNOxをさらに低減することができる。
【0038】
[仮想円VCの直径Ln]
続いて、燃料噴射口112cを中心とした仮想円VCの直径Lnについて説明する。
【0039】
図5は、仮想円VCの直径LnとNOxの濃度との関係を説明する図である。
図5中、縦軸は、排ガスに含まれるNOxの濃度を示し、横軸は、仮想円VCの直径Ln[mm]を示す。
【0040】
図5に示すように、仮想円VCの直径Lnが、170mmである場合、215mmである場合、260mmである場合のいずれの場合であっても、NOxの濃度は、約10ppmであった。
【0041】
炭化水素を燃焼させるバーナでは、仮想円VCの直径Lnが大きくなるほどNOxの濃度は低下する。一方、水素を含む燃料ガスを燃焼させるバーナ100では、仮想円VCの直径Lnを170mmまで小さくしても、NOxの濃度を約10ppm程度に維持することができる。したがって、本実施形態に係るバーナ100では、仮想円VCの直径Lnを170mm以上、260mm以下とすることで、NOxの濃度を約10ppmに維持しつつ、バーナ100の小型化を図ることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るバーナ100は、水素を含む燃料ガスを100m/秒以上で噴出させる。これにより、バーナ100は、火炎温度が炭化水素よりも高い水素であっても、排ガス中のNOxの濃度を低減することができる。
【0043】
また、水素は、炭化水素と比較して、燃焼性に優れる。したがって、バーナ100は、炉内が低温の状態にあり炭化水素のみでは当該バーナ100単独で燃焼状態を維持することができない状況であっても、燃焼補助用のバーナ等を設置することなく、燃料ガスを安定して燃焼させることができる。これにより、バーナ100は、従来の炭化水素用のバーナとは異なり、低温時用の補助バーナや燃料供給口等を省略することができ、設備の小型化、および、設備のコストダウンを図ることが可能となる。
【0044】
また、バーナ100は、水素を含む燃料ガスを燃焼させるため、二次空気を予熱せずとも、安定してフレームレス燃焼を行うことができる。したがって、バーナ100は、従来の炭化水素用のバーナとは異なり、二次空気を予熱する機構を省略することができ、設備の小型化、および、設備のコストダウンを図ることが可能となる。
【0045】
また、バーナ100は、水素を含む燃料ガスを燃焼させるため、一次空気が不要となる。したがって、バーナ100は、従来の炭化水素用のバーナとは異なり、一次空気を供給する機構を省略することができ、設備の小型化、および、設備のコストダウンを図ることが可能となる。
【0046】
[第2の実施形態:バーナ200]
上記第1の実施形態において、第1噴射部110が燃料ガスのみを噴射する場合を例に挙げた。つまり、バーナ100が、一次空気を噴射しない場合を例に挙げた。しかし、バーナ200は、燃料ガスとともに一次空気を噴射してもよい。
【0047】
図6は、第2の実施形態に係るバーナ200を説明する図である。バーナ200は、上記バーナ100と同様に、FDIシステムのバーナである。
【0048】
図6に示すように、第2の実施形態に係るバーナ200は、第1噴射部210と、第1供給部220と、第2噴射部130と、第2供給部140とを含む。なお、上記バーナ100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施形態において、第1噴射部210は、燃料ガスおよび空気を噴射する。第1噴射部210は、炉の内部空間に向けて設けられる。本実施形態において、第1噴射部210は、燃料噴射ノズル212と、酸化剤ガス噴射ノズル214とを有する。
【0050】
燃料噴射ノズル212は、燃料ガスを噴射するノズルである。燃料噴射ノズル212は、本体212aと、燃料供給管212bと、燃料噴射口212c(第1噴射口)とを含む。本体212aは、円筒形状の管体である。本体212aの中心軸は、炉壁10に対して交差(ここでは、略直交)する。
【0051】
本体212aの後部(本体212aにおける炉壁10側に対する逆側(
図6中、左側、以下「後端」という)の部分)に、燃料供給管212bが接続される。また、本体212aの先端(本体212aにおける炉壁10側(
図6中、右側)、以下「先端」という)に、開口である燃料噴射口212cが形成される。燃料噴射口212cは、炉の内部空間を向いている。
【0052】
酸化剤ガス噴射ノズル214は、燃料ガスと空気(一次空気)とを含む混合ガスを噴射するノズルである。酸化剤ガス噴射ノズル214は、本体214aと、酸化剤供給管214bと、混合ガス噴射口214c(第1噴射口)とを有する。本体214aは、円筒形状の管体である。本体214aは、燃料噴射ノズル212の本体212aと同軸上に、本体212aを囲むように配置される。つまり、燃料噴射ノズル212の本体212aと、酸化剤ガス噴射ノズル214の本体214aとによって、二重円筒構造が形成される。
図6では、本体214aにおける炉壁10側(
図6中、右側、以下「先端」という)に位置する先端部214dが先端に向かうにつれて径が漸減する形状の場合の例を示しているが、酸化剤ガス噴射ノズル214の形状はこれに限らない。
【0053】
本体214aの後部(本体214aにおける炉壁10側に対する逆側(
図6中、左側、以下「後端」という)の部分)に、酸化剤供給管214bが接続される。本体214aの後端は、燃料噴射ノズル212の本体212aの後端よりも炉壁10側に位置する。
【0054】
また、本体214aの先端に、開口である混合ガス噴射口214cが形成される。混合ガス噴射口214cは、炉の内部空間に臨む。
【0055】
なお、本実施形態において、燃料噴射ノズル212の燃料噴射口212cは、酸化剤ガス噴射ノズル214の本体214a内に位置するように設けられる。つまり、酸化剤ガス噴射ノズル214の混合ガス噴射口214cは、燃料噴射ノズル212の燃料噴射口212cよりも炉の内部空間側に設けられる。
【0056】
また、本実施形態において、第1噴射部210の混合ガス噴射口214cは、第2噴射部130の第2噴射口138と略同一平面上に設けられる
【0057】
第1供給部220は、燃料ガスおよび空気(一次空気)を第1噴射部210に供給する。本実施形態において、第1供給部220は、燃料供給系統122と、酸化剤供給系統224とを含む。本実施形態において、燃料ガスは、燃料供給系統122から、燃料供給管212bを介して本体212a内に供給される。本体212a内に供給された燃料ガスは、本体212a内の空間を流れる。本体212a内を通過した燃料ガスは、燃料噴射口212cから本体214aの先端部214d内に形成される空間に向けて噴射される。
【0058】
一次空気は、酸化剤供給系統224から、酸化剤供給管214bを介して本体214a内に供給される。本体214a内に供給された一次空気は、本体214a内の空間を流れる。そして、本体214aの先端部214dに到達した一次空気は、先端部214d内の空間において、燃料噴射口212cから噴射された燃料ガスと混合される。燃料ガスと一次空気とを含む混合ガスは、混合ガス噴射口214cから炉の内部空間に噴射される。
【0059】
また、本実施形態において、第1供給部220および第2供給部140は、合計で目標空気量の空気を供給する。
【0060】
[第1供給部220および第2供給部140の空気量の比]
続いて、本実施形態に係る第1供給部220によって第1噴射部110(酸化剤ガス噴射ノズル214)に供給される一次空気量と、第2供給部140によって第2噴射部130に供給される二次空気量との関係について説明する。上記バーナ200を用い、目標空気量における一次空気量A1の比率を異ならせて、排ガスに含まれるNOxの濃度をそれぞれ測定した。
【0061】
図7は、目標空気量における一次空気量の比率と、排ガス中に含まれるNOxの量との関係を説明する図である。
図7中、縦軸は、排ガスに含まれるNOx量を示し、横軸は、目標空気量(A1+A2)における一次空気量(A1)の比率[%]を示す。
【0062】
図7に示すように、一次空気量A1の比率を0%とした場合、NOxの濃度は、約15ppmであった。また、一次空気量A1の比率を18%とした場合、NOxの濃度は、約21ppmであった。一次空気量A1の比率を32%とした場合、NOxの濃度は、約43ppmであった。また、一次空気量A1の比率を49%とした場合、NOxの濃度は、約48ppmであった。一次空気量A1の比率を65%とした場合、NOxの濃度は、約51ppmであった。同様に、一次空気量A1の比率を82%とした場合、NOxの濃度は、約51ppmであった。また、一次空気量A1の比率を100%とした場合、つまり、二次空気量A2の比率を0%とした場合、NOxの濃度は、約51ppmであった。これにより、一次空気量A1の比率を20%未満とすることで、NOxの濃度を25ppm未満にできることが確認された。
【0063】
したがって、本実施形態において、第1供給部220は、目標空気量の20%未満の空気を第1噴射部210に供給する。また、第2供給部140は、第1噴射部210に供給される空気量と目標空気量との差分の二次空気を第2噴射部130に供給する。これにより、バーナ200は、排ガス中のNOxを低減することができる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、上述した実施形態において、酸化剤ガスとして空気を例に挙げた。しかし、酸化剤ガスは、燃料ガスを燃焼させることができればよい。酸化剤ガスは、空気の他、例えば、酸素富化空気、酸素であってもよい。なお、酸化剤ガスが空気以外である場合、上記理論空気量は、理論酸化剤量となり、目標空気量は目標酸化剤量となる。理論酸化剤量は、燃料ガスを完全燃焼させるために必要な最小の酸化剤ガスの量である。
【0066】
また、上記実施形態において、燃料噴射ノズル112の本体112a、燃料噴射ノズル212の本体212a、および、酸化剤ガス噴射ノズル214の本体214aが管体である場合を例に挙げた。しかし、燃料噴射ノズル112の本体112a、燃料噴射ノズル212の本体212a、および、酸化剤ガス噴射ノズル214の本体214aは、バーナ本体ブロック132a内および耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路であってもよい。
【0067】
同様に、上記実施形態において、主流路132がバーナ本体ブロック132a内および耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路であり、分岐流路134が耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路である場合を例に挙げた。しかし、主流路132、および、分岐流路134は、管体であってもよい。
【0068】
また、上記第1の実施形態において、第2噴射部130の第2噴射口138が、第1噴射部110の燃料噴射口112cと略同一平面上に設けられる場合を例に挙げた。しかし、第2噴射部130の第2噴射口138は、第1噴射部110の燃料噴射口112cと略同一平面上に設けられずともよい。例えば、第2噴射部130の第2噴射口138は、火炎に向けて設けられてもよい。
【0069】
同様に、上記第2の実施形態において、第2噴射部130の第2噴射口138が、混合ガス噴射口214cと略同一平面上に設けられる場合を例に挙げた。しかし、第2噴射部130の第2噴射口138は、第1噴射部210の混合ガス噴射口214cと略同一平面上に設けられずともよい。例えば、第2噴射部130の第2噴射口138は、火炎に向けて設けられてもよい。
【0070】
また、上記第1の実施形態において、第1噴射部110が燃料噴射口212cを1つ備える場合を例に挙げた。しかし、第1噴射部110は、複数の燃料噴射口212cを備えてもよい。
【0071】
また、上記第2の実施形態において、燃料噴射ノズル212の燃料噴射口212cが、酸化剤ガス噴射ノズル214の本体214a内に位置するように設けられる場合を例に挙げた。しかし、燃料噴射ノズル212の燃料噴射口212cは、酸化剤ガス噴射ノズル214の混合ガス噴射口214cと略同一平面上に設けられてもよいし、酸化剤ガス噴射ノズル214の本体214aの先端から突出してもよい。この場合、混合ガス噴射口214c(酸化剤噴射口)から一次空気が噴射され、炉の内部空間において混合ガスが生成される。また、混合ガス噴射口214cが一次空気を噴射する場合、燃料噴射口212cおよび混合ガス噴射口214cは、それぞれ複数設けられてもよいし、燃料噴射口212cが1つ設けられ、混合ガス噴射口214cが燃料噴射口112cを囲むように複数設けられてもよい。
【0072】
また、上記第2の実施形態において、第1噴射部210が燃料噴射ノズル212と酸化剤ガス噴射ノズル214とを備える場合を例に挙げた。しかし、第1噴射部210は、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスが流れる1のノズルを有していてもよい。この場合、混合ガスを噴射する第1噴射口を1または複数備える。
【0073】
また、上記実施形態において、第2噴射部130が、6つの第2噴射口138を備える場合を例に挙げた。しかし、第2噴射部130が備える第2噴射口の数に限定はない。例えば、第2噴射部130は、第2噴射口138を1つのみ備えていてもよいし、2以上備えていてもよい。なお、第2噴射部130は、第2噴射口138を3つ以上備える場合、略同一円周上に略等間隔で複数の第2噴射口138が設けられるとよい。また、第2噴射部130が複数の第2噴射口138を備えることにより、燃料ガスを効率よく燃焼させることができる。
【0074】
また、従来の炭化水素用のバーナを改造して、少なくとも水素を含む燃料ガスを燃焼させるバーナ100としてもよい。例えば、従来の炭化水素用のバーナを第1噴射部とし、第2噴射部130を追加してバーナ100とする。これにより、低コストでバーナ100を製造することができる。また、第1噴射部に供給する燃料を、炭化水素と水素とに切り換え可能なハイブリッドバーナとすることもできる。
【符号の説明】
【0075】
100 バーナ
110 第1噴射部
112c 燃料噴射口(第1噴射口)
120 第1供給部
130 第2噴射部
138 第2噴射口
140 第2供給部
200 バーナ
210 第1噴射部
212c 燃料噴射口(第1噴射口)
214c 混合ガス噴射口(第1噴射口)
220 第1供給部