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  • 特開-ボイラ及びボイラの保護方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167410
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ボイラ及びボイラの保護方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20231116BHJP
   F23G 5/48 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F22B37/10 602Z
F23G5/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078581
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 晃輔
【テーマコード(参考)】
3K065
【Fターム(参考)】
3K065AB01
3K065AC01
3K065BA01
(57)【要約】
【課題】ダストがボイラ内に付着することを防ぎボイラを保護する。
【解決手段】廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラであって、交流電圧が印加されることにより気流を発生するプラズマアクチュエータを前記伝熱管の周面に有する。排ガスに含まれるダストはプラズマアクチュエータが発生する気流に沿って流れるため、排ガスに含まれるダストが伝熱管に付着するのを抑え、ダストにより伝熱管が腐食するのを抑えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラであって、
交流電圧が印加されることにより気流を発生するプラズマアクチュエータを前記伝熱管の周面に有する
ボイラ。
【請求項2】
前記放射室及び前記対流伝熱室の内壁に前記プラズマアクチュエータを有する
請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラにおいて、
前記伝熱管の周面に設けられたプラズマアクチュエータに交流電圧を印加して前記周面に沿った気流を誘起する
ボイラの保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ及びボイラの保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却炉における発電は、焼却炉でのごみの燃焼から得られる高温の排ガスからボイラにて熱回収を行い、所定の温度・圧力の蒸気を発生させてタービン発電機に導入することにより行われている。ごみ焼却において発生する排ガス中には、塩素、硫黄、重金属類等を含む小粒径のダストが含まれるが、これらがボイラの伝熱管に付着すると付着したダストが断熱材の役割をするので伝熱効率が低下する。
【0003】
ボイラの伝熱管に付着したダストを除去する発明として、例えば特許文献1、2に開示された発明がある。特許文献1に開示された発明は、燃料ガスと酸化剤ガスを高圧化で混合して爆発燃焼させ、伝熱管に付着したダストを爆発燃焼によって生じた圧力波によって除去する。特許文献2に開示された発明は、所定の大きさ未満の灰塊を用いて成型した灰球と、所定の大きさ以上の灰塊とをボイラの水管群に落下させることにより、水管群に付着した灰を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-181008号公報
【特許文献2】特開2019-184151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明は、圧力波を発生させるために燃料ガスと酸化剤ガスを消費するためランニングコストがかかる。また、特許文献1に開示された発明は、爆発燃焼を行なうため間欠的にしか駆動することができず、強い衝撃が発生するため作業員の安全を確保する必要がある。特許文献2に開示された発明は、灰塊の選別、灰球の乾燥、灰塊や灰球の搬送の工程を要し、これらの工程に要する設備の費用と運転にコストがかかる。また、特許文献2に開示された発明では、灰球は衝突の衝撃により部品を損傷する虞がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ダストがボイラ内に付着することを防ぎボイラを保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るボイラは、廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラであって、交流電圧が印加されることにより気流を発生するプラズマアクチュエータを前記伝熱管の周面に有する。
【0008】
また、本発明に係るボイラにおいては、前記放射室及び前記対流伝熱室の内壁に前記プラズマアクチュエータを有するようにしてもよい。
【0009】
本発明に係るボイラの保護方法は、廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラにおいて、前記伝熱管の周面に設けられたプラズマアクチュエータに交流電圧を印加して前記周面に沿った気流を誘起する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダストがボイラ内に付着することを防ぎボイラを保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る焼却炉とボイラの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るボイラの内部を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るプラズマアクチュエータの斜視図である。
図4図4は、図3のA-A線断面図である。
図5図5は、プラズマアクチュエータの配置の一例を示す図である。
図6図6は、プラズマアクチュエータの配置の一例を示す図である。
図7図7は、プラズマアクチュエータの変型例を示す図である。
図8図8は、プラズマアクチュエータの変型例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。
【0013】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る焼却炉1とボイラ2の構成を示す図である。焼却炉1は、例えば廃棄物を焼却する焼却炉である。焼却炉1にはボイラ2が接続されており、焼却炉1で発生した排ガスは、ボイラ2へ流通する。ボイラ2には、排ガスの流れを屈曲させる屈曲部21と屈曲部22が設けられている。ボイラ2には、屈曲部21と屈曲部22とによって排ガスの流路の上流側から第1放射室11、第2放射室12、対流伝熱室13が形成される。なお、焼却炉1内の廃棄物を燃焼した後に排出される排ガスは、第1放射室11を下方から上方へ、第2放射室12を上方から下方へ、対流伝熱室13を下方から上方へ流れる。
【0014】
図2は、ボイラ2の内部を示す図である。第2放射室12には、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管40が放射伝熱面として配置されている。対流伝熱室13には、排ガスの流路の上流側からスクリーン管32、2次過熱器34、3次過熱器36、1次過熱器38が設けられている。なお、対流伝熱室13には、必要に応じてエコノマイザを設けてもよい。
【0015】
2次過熱器34、3次過熱器36、1次過熱器38は、それぞれ、水平方向に配列した複数の伝熱管40を上下方向に多段に設けた伝熱管群を備えている。この伝熱管群は、対流伝熱面を構成しており、第2放射室12の伝熱管40で発生した蒸気を排ガスとの熱交換により更に過熱するようにされている。スクリーン管32には伝熱管40が設けられている。スクリーン管32は、対流伝熱室13に導入される排ガスを冷却し、排ガスに含まれるダスト成分を固体化してダストとして排ガスから分離する。対流伝熱室13には、図示省略したエコノマイザが接続されており、1次過熱器38を通過した排ガスはエコノマイザへ流通する。
【0016】
本発明の実施形態においては、スクリーン管32、2次過熱器34、3次過熱器36及び1次過熱器38の伝熱管40の外周面にプラズマアクチュエータ100が設けられている。プラズマアクチュエータ100は、誘電体バリア放電を用いて雰囲気気体の流れを誘起し、雰囲気気体の流れを制御するデバイスである。
【0017】
図3は、プラズマアクチュエータの斜視図であり、図4は、図3のA-A線断面図である。プラズマアクチュエータ100は、第1電極101、第2電極102、誘電体層103、及び絶縁層104を有する。誘電体層103は、例えば誘電体セラミックで矩形に形成されている。第1電極101及び第2電極102は、例えばチタンを白金でコーティングしたチタン電極であり、矩形に形成されている。第1電極101は、誘電体層103の表面に配置されており、第2電極102は、上下方向にみて第1電極101と重ならないように誘電体層103の裏面に配置されている。第1電極101は交流電圧を出力する交流電源200に接続されている。第2電極102は、交流電源200とグランドGNDに接続されている。絶縁層104は、絶縁体で形成されており、誘電体層103の裏面と第2電極102を覆っている。
【0018】
交流電圧が交流電源200から第1電極101と第2電極102へ印加されると、第1電極101と誘電体層103とに挟まれた部分で放電が生じ、図4に示す矢印の方向へ気体の流れが誘起される。交流電源200から第1電極101及び第2電極102に印加される電圧は数kV、数kHzである。
【0019】
図5は、プラズマアクチュエータ100の配置の一例を示す図である。図5においては、伝熱管40の断面を図示している。プラズマアクチュエータ100は、例えば図5に示すように伝熱管40の外周面の下端側で絶縁層104が伝熱管40の外周面に接するように配置される。
【0020】
図5に示す左側のプラズマアクチュエータ100は、伝熱管40の周面に沿って右側のプラズマアクチュエータ100と反対方向へ気流の流れが生じるように配置され、図5に示す右側のプラズマアクチュエータ100は、伝熱管40の周面に沿って左側のプラズマアクチュエータ100と反対方向へ気流の流れが生じるように配置されている。対流伝熱室13においては、排ガスは下方から上方へ流れるため、排ガスは伝熱管40の下方から図5に示す太い矢印の方向に流れている。伝熱管40に至った排ガスは、プラズマアクチュエータ100によって生じる気流により、伝熱管40の周面に沿って図5に示す細い矢印の方向に流れる。
【0021】
ここで排ガスに含まれるダストもプラズマアクチュエータ100が発生する気流に沿って流れるため、排ガスに含まれるダストが伝熱管40に付着するのを抑えることができる。また、ダストが伝熱管40に付着するのを抑えることができるため、ダストにより伝熱管40が腐食するのを抑えることができる。また、ダストが伝熱管40に付着するのを抑えることができるため、伝熱効率が低下するのを抑えることができる。また、伝熱管40の表面にプラズマアクチュエータ100を設置する構成のため、既存のボイラに対しても伝熱管40からダストを除去した後に後付けでプラズマアクチュエータ100を容易に設置することができる。また、プラズマアクチュエータ100は、機械的に可動する構成がなく部品点数も少ないため、導入のコストを抑え、メンテナンスを容易に行うことができる。また、プラズマアクチュエータ100は、電力の供給のみで伝熱管40へのダストの付着を抑制できるため、ランニングコストを抑えることができる。
【0022】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0023】
上述した実施形態においては、伝熱管40の下端側に2つのプラズマアクチュエータ100が配置されているが、伝熱管40に配置されるプラズマアクチュエータ100は、2つに限定されるものではない。例えば図6に示すように、伝熱管40の周面で上端と下端の間及び上端側にもプラズマアクチュエータ100を配置してもよい。
【0024】
上述した実施形態においては、プラズマアクチュエータ100は、1つの第1電極101と1つの第2電極102とを備える構成であるが、第1電極101と第2電極102の数は1つに限定されるものではない。図7は、変形例に係るプラズマアクチュエータ100Aの断面図である。プラズマアクチュエータ100Aにおいては、誘電体層103の上面に第1電極101と第2電極102が所定の間隔で配置されている。また、プラズマアクチュエータ100Aにおいては、誘電体層103の裏面に第1電極101と第2電極102が所定の間隔で配置されている。なお、誘電体層103の裏面に配置されている第2電極102は、上下方向にみて表面の第1電極101及び第2電極102と重ならないように位置している。また、誘電体層103の裏面に配置されている第1電極101は、上下方向にみて表面の第2電極102と重ならないように配置されている。2つの第1電極101は、交流電源200に接続されている。また、2つの第2電極102は、交流電源200とグランドGNDに接続されている。
【0025】
プラズマアクチュエータ100Aによれば、交流電源200から交流電圧が第1電極101と第2電極102へ印加されると、表面の第1電極101と裏面の第2電極102及び表面の第2電極102と裏面の第1電極101によって、図7に示す矢印の方向へ気体の流れが誘起される。プラズマアクチュエータ100Aを伝熱管40へ配置することにより、伝熱管40の周囲に気流の流れを発生させ、ダストが伝熱管40に付着するのを防ぐことができる。なお、プラズマアクチュエータ100Aに印加する交流電圧は、直流成分を重畳したものであってもよい。また、プラズマアクチュエータ100Aに印加する電圧は、パルス電圧であってもよい。
【0026】
図8は、変形例に係るプラズマアクチュエータ100Bの断面図である。プラズマアクチュエータ100Bにおいては、誘電体層103の上面に第1電極101と第3電極105が所定の間隔で配置されている。また、プラズマアクチュエータ100Bにおいては、誘電体層103の裏面に第2電極102が配置されている。第3電極105は、例えばチタンを白金でコーティングしたチタン電極であり、矩形に形成されている。プラズマアクチュエータ100Bの第1電極101は、交流電源200に接続されている。プラズマアクチュエータ100Bの第2電極102は、交流電源200とグランドGNDに接続されている。第3電極105は、直流電圧を印加する直流電源201の正極に接続されている。直流電源201の負極はグランドGNDに接続されている。プラズマアクチュエータ100Bによれば、交流電源200から交流電圧が第1電極101と第2電極102へ印加され、直流電圧が第3電極105に印加されると、図8に示す矢印の方向へ気体の流れが誘起される。プラズマアクチュエータ100Bを伝熱管40へ配置することにより、伝熱管40の周囲に気流の流れを発生させ、ダストが伝熱管40に付着するのを防ぐことができる。
【0027】
プラズマアクチュエータ100、プラズマアクチュエータ100A、又はプラズマアクチュエータ100Bが配置される位置は、伝熱管40に限定されるものではない。図2に示す第1放射室11の内壁11a、第2放射室12の内壁12a、対流伝熱室13の内壁13a、及び第2放射室12に配置された伝熱管40にもプラズマアクチュエータ100、プラズマアクチュエータ100A、又はプラズマアクチュエータ100Bを配置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 焼却炉
2 ボイラ
11 第1放射室
11a 内壁
12 第2放射室
12a 内壁
13 対流伝熱室
13a 内壁
21、22 屈曲部
32 スクリーン管
34 2次過熱器
36 3次過熱器
38 1次過熱器
40 伝熱管
100、100A、100B プラズマアクチュエータ
101 第1電極
102 第2電極
103 誘電体層
104 絶縁層
105 第3電極
200 交流電源
201 直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8