(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167424
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ハイサイドスイッチ、電子機器、車両
(51)【国際特許分類】
H03K 17/687 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078599
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 竜也
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX39
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX13
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY13
5J055EY21
(57)【要約】
【課題】電源逆接時における保護動作の確実を高める。
【解決手段】ハイサイドスイッチ100は、電源逆接時に電源端子VBBと出力端子OUTとの間を導通する逆接保護回路20を備える。逆接保護回路20は、電源逆接時にグランド端子GNDからトランジスタQ1のゲートを充電する充電部7と、電源逆接時に充電部7を介してゲート制御回路に電流が流入することを阻止するトランジスタ9Aと、電源端子VBBとトランジスタ9Aのバックゲートとの間に接続されるトランジスタ21と、トランジスタ21のゲートと出力端子OUTとの間に接続されるトランジスタ25と、トランジスタ21のゲートとグランド端子GNDとの間に接続される抵抗22と、トランジスタ21のゲートと出力端子OUTとの間に接続される抵抗23と、トランジスタ9Aのバックゲートと出力端子OUTとの間に接続される抵抗24と、を含む。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子と出力端子との間に接続されるように構成された第1トランジスタと、
前記電源端子がグランド端子よりも低電位であるときにゲート制御回路に依ることなく前記電源端子と前記出力端子との間を導通するように構成された逆接保護回路と、
を備え、
前記逆接保護回路は、
前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記グランド端子から前記第1トランジスタのゲートを充電するように構成された充電部と、
前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記グランド端子から前記充電部を介して前記ゲート制御回路に電流が流入することを阻止するように構成されたように構成された阻止トランジスタと、
前記電源端子と前記阻止トランジスタのバックゲートとの間に接続されるように構成された第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第3トランジスタと、
前記第2トランジスタのゲートと前記グランド端子との間に接続されるように構成された第1抵抗と、
前記第2トランジスタのゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第2抵抗と、
前記阻止トランジスタのバックゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第3抵抗と、
を含む、ハイサイドスイッチ。
【請求項2】
前記第3トランジスタの素子サイズは、前記阻止トランジスタの素子サイズよりも小さい、請求項1に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項3】
前記逆接保護回路は、前記阻止トランジスタのバックゲートと前記第3トランジスタのバックゲートとの間に接続されるように構成された第4抵抗をさらに含む、請求項1に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項4】
前記第4抵抗の抵抗値は、前記第1抵抗の抵抗値よりも低い、請求項3に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項5】
前記逆接保護回路は、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記第2トランジスタのゲートに印加される第2駆動信号を所定の上限値以下に制限するように構成されたクランパをさらに含む、請求項1に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項6】
前記電源端子と導通するように構成されたn型基板と、
前記n型基板の表面に積層形成されるように構成されたn型エピ層と、
をさらに備え、
前記クランパは、前記n型エピ層の表層でpn接合を形成するように構成されたポリシリコンダイオードを含む、請求項5に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項7】
前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記第1トランジスタのゲートに印加される前記第1駆動信号を所定の上限値以下に制限するように構成された制限部をさらに備える、請求項1に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項8】
前記充電部は、前記第1トランジスタのゲートと前記グランド端子との間に接続されるように構成された第5抵抗を含む、請求項1に記載のハイサイドスイッチ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のハイサイドスイッチを備える、電子機器。
【請求項10】
バッテリと、前記バッテリから電力供給を受けて動作するように構成された請求項9に記載の電子機器と、を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、ハイサイドスイッチ、及び、これを用いた電子機器並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置で構成されるハイサイドスイッチは、例えば特許文献1に開示されている。半導体集積回路装置で構成されるハイサイドスイッチは、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、少なくとも入力端子、電源端子、出力端子、及びグランド端子を備える。
【0003】
入力端子には、ハイサイドスイッチのオンオフを制御する制御信号が入力される。電源端子には、電源電圧が印加される。出力端子には、負荷が外付け接続される。グランド端子には、グランド電圧が印加される。
【0004】
半導体集積回路装置で構成されるハイサイドスイッチは、電源端子と出力端子との間に設けられる出力トランジスタを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したハイサイドスイッチでは、誤って電源端子とグランド端子との間に逆バイアスの電圧が印加されるおそれがある。
【0007】
電源端子とグランド端子との間に逆バイアスの電圧が印加された場合、対策が何ら講じられていなければ、ハイサイドスイッチの内部に付随する寄生ダイオードを通じてグランド端子から電源端子に電流が流れてハイサイドスイッチが破壊する。
【0008】
また、電源端子とグランド端子との間に逆バイアスの電圧が印加された場合、対策が何ら講じられていなければ、出力トランジスタのボディダイオードにも、負荷を通じて電流が流れて出力トランジスタが発熱し破壊に至るおそれがある。
【0009】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、電源端子とグランド端子との間に逆バイアスの電圧が印加された場合の破壊を防止することのできるハイサイドスイッチ、及び、これを用いた電子機器並びに車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
例えば、本明細書に開示されているハイサイドスイッチは、電源端子と出力端子との間に接続されるように構成された第1トランジスタと、前記電源端子がグランド端子よりも低電位であるときにゲート制御回路に依ることなく前記電源端子と前記出力端子との間を導通するように構成された逆接保護回路と、を備え、前記逆接保護回路は、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記グランド端子から前記第1トランジスタのゲートを充電するように構成された充電部と、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記グランド端子から前記充電部を介して前記ゲート制御回路に電流が流入することを阻止するように構成されたように構成された阻止トランジスタと、前記電源端子と前記阻止トランジスタのバックゲートとの間に接続されるように構成された第2トランジスタと、前記第2トランジスタのゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第3トランジスタと、前記第2トランジスタのゲートと前記グランド端子との間に接続されるように構成された第1抵抗と、前記第2トランジスタのゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第2抵抗と、前記阻止トランジスタのバックゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第3抵抗と、を含む。
【0011】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書中に開示されている発明によれば、電源端子とグランド端子との間に逆バイアスの電圧が印加された場合の破壊を防止することのできるハイサイドスイッチ、及び、これを用いた電子機器並びに車両を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ハイサイドスイッチの第1実施形態を示す図である。
【
図2】
図2は、クランプ回路の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、ハイサイドスイッチに直流電源が正常に接続された場合を示す図である。
【
図4】
図4は、ハイサイドスイッチに直流電源が逆接続された場合を示す図である。
【
図5】
図5は、電源逆接保護回路の一構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、寄生素子に起因して不具合が生じる様子を示す図である。
【
図7】
図7は、ハイサイドスイッチの第2実施形態を示す図である。
【
図8】
図8は、逆接保護回路の電流経路を示す図である。
【
図9】
図9は、ダイオードの概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、ハイサイドスイッチの第3実施形態を示す図である。
【
図11】
図11は、ハイサイドスイッチの第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ハイサイドスイッチ(第1実施形態)>
図1に示すハイサイドスイッチ100は、半導体集積回路装置であり、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、複数の外部ピン(入力端子IN、電源端子VBB、出力端子OUT、グランド端子GND)を備える。入力端子INは、CMOSロジックICなどから制御信号の外部入力を受け付けるための外部ピンである。電源端子VBBは、バッテリ等の直流電源から電源電圧Vbb(例えば4.5V~18V)の供給を受け付けるための外部ピンである。なお、電源端子VBBは、大電流を流すために複数並列(例えば4ピン並列)に設けてもよい。出力端子OUTは、負荷(例えば、エンジン制御用ECU[electronic control unit]、エアコン、ボディ機器など)が外部接続される外部ピンである。グランド端子GNDは、グランド電圧が印加される外部ピンである。
【0015】
なお、ハイサイドスイッチ100は、入力端子IN、電源端子VBB、出力端子OUT及びグランド端子GND以外の外部ピン(例えばハイサイドスイッチ100内の異常検出の有無を示す自己診断信号を外部出力するための外部ピン)を備えてもよい。
【0016】
ハイサイドスイッチ100は、出力トランジスタQ1と、定電圧生成回路1と、発振回路2と、チャージポンプ回路3と、ゲート制御回路4と、クランプ回路5と、入力回路6と、充電部7と、遮断部8と、抵抗R1と、阻止部9と、制限部10と、を備える。
【0017】
ハイサイドスイッチ100は、内部電源回路(不図示)も備える。内部電源回路は、電源電圧Vbbから所定の内部電源電圧を生成してハイサイドスイッチ100の各部に供給する。なお、内部電源回路は、イネーブル信号ENの論理レベルに応じて動作可否が制御される。より具体的に述べると、内部電源回路は、イネーブル信号ENがイネーブル時の論理レベル(例えばハイレベル)であるときに動作状態となり、イネーブル信号ENがディセーブル時の論理レベル(例えばローレベル)であるときに停止状態となる。
【0018】
ハイサイドスイッチ100は、ハイサイドスイッチ100の異常を検出し、その検出結果に応じた異常保護信号を生成する保護回路(不図示)も備える。
【0019】
出力トランジスタQ1は、電源端子VBBと出力端子OUTとの間に設けられるパワートランジスタである。出力トランジスタQ1は、ボディダイオードを有する。出力トランジスタQ1は、例えばエンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタであり、ドレインが電源端子VBBに接続され、ソースとバックゲートが出力端子OUTに接続される。
【0020】
定電圧生成回路1は、電源端子VBBとグランド端子GNDとの間に設けられ、電源電圧Vbbに応じたハイ電圧VH(≒電源電圧Vbb)と、ハイ電圧VHよりも定電圧REF(=例えば5V)だけ低いロー電圧VL(≒Vbb-REF)とを生成して発振回路2及びチャージポンプ回路3に供給する。なお、定電圧生成回路1は、イネーブル信号EN及び異常保護信号の論理レベルに応じて動作可否が制御される。より具体的に述べると、定電圧生成回路1は、イネーブル信号ENがイネーブル時の論理レベル(例えばハイレベル)であるとき、又は、異常保護信号が異常未検出時の論理レベル(例えばハイレベル)であるときに動作状態となり、イネーブル信号ENがディセーブル時の論理レベル(例えばローレベル)であるとき、又は、異常保護信号が異常検出時の論理レベル(例えばローレベル)であるときに停止状態となる。
【0021】
定電圧生成回路1は、例えば、電流源1A、エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ1B(以下「トランジスタ1B」と略す)、ツェナーダイオード1C、ダイオード1D、負電圧保護回路1E、カレントミラー回路1F、及びエンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ1G(以下「トランジスタ1G」と略す)によって構成される。
【0022】
電流源1Aの一端に内部電源電圧が印加されて、電流源1Aの他端からカレントミラー回路1Fに電流が出力される。トランジスタ1Bのソース及びバッグゲートは、電源端子VBBに接続される。トランジスタ1Bのドレインは、ツェナーダイオード1Cのカソード、負電圧保護回路1E、発振回路2、及びチャージポンプ回路3に接続される。トランジスタ1Bは、保護回路によって異常が検出されていないときにオンとなり、保護回路によって異常が検出されているときにオフになる。
【0023】
ツェナーダイオード1Cのアノードは、ダイオード1Dのアノードに接続される。ダイオード1Dのカソードは、発振回路2及びチャージポンプ回路3に接続される。また、ダイオード1Dのカソードは、負電圧保護回路1Eを介してカレントミラー回路1Fに接続される。
【0024】
負電圧保護回路1Eは、出力端子OUTが負電圧となる場合にグランド端子GNDから出力端子OUTに至る電流経路を遮断する。なお、負電圧保護回路1Eは、例えば遮断部8と同様の構成にすればよい。遮断部8の構成例については後述する。
【0025】
カレントミラー回路1Fは、電流源1Aから出力される電流に応じたミラー電流をトランジスタ1B、ツェナーダイオード1C、ダイオード1D、及び負電圧保護回路1Eから吸い込む。
【0026】
トランジスタ1Gのドレインは、電流源1Aとカレントミラー回路1Fとの接続ノードに接続され、トランジスタ1Gのソース及びバックゲートは、カレントミラー回路1Fと遮断部8との接続ノードに接続される。トランジスタ1Gのゲートにイネーブル信号ENが供給される。イネーブル信号ENがディセーブル時にカレントミラー回路1Fはミラー電流(吸い込み電流)を出力しない。
【0027】
発振回路2は、ハイ電圧VHとロー電圧VLの供給を受けて動作し、所定周波数のクロック信号CLKを生成してチャージポンプ回路3に出力する。なお、クロック信号CLKは、ハイ電圧VHとロー電圧VLとの間でパルス駆動される矩形波信号である。
【0028】
チャージポンプ回路3は、ハイ電圧VHとロー電圧VLの供給を受けて動作し、クロック信号CLKを用いてフライングキャパシタを駆動することにより、電源電圧Vbbよりも高い昇圧電圧VCPを生成してゲート制御回路4及び阻止部9に供給する。
【0029】
ゲート制御回路4は、昇圧電圧VCPの印加端と出力端子OUTとの間に設けられており、ゲート電圧VGを生成して出力トランジスタQ1のゲートに出力する。ゲート電圧VGは、保護回路によって異常が検出されていないときにハイレベル(=VCP)となり、保護回路によって異常が検出されているときにローレベル(=Vout)となる。
【0030】
クランプ回路5は、電源端子VBBと出力トランジスタQ1のゲートとの間に設けられる。出力端子OUTに誘導性負荷が接続されるアプリケーションでは、出力トランジスタQ1をオンからオフへ切り替える際、誘導性負荷の逆起電力により出力端子OUTが負電圧となる。そのため、エネルギー吸収用にクランプ回路5(いわゆるアクティブクランプ回路)が設けられている。なお、Vbb-(Vclp+Vgs)で表されるアクティブクランプ電圧は、例えば48Vに設定するとよい(ただし、Vbbは電源電圧、Vclpは出力端子OUTの負側クランプ電圧、Vgsは出力トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧とする)。
【0031】
クランプ回路5は、例えば、
図2に示すようにエンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ5A(以下「トランジスタ5A」と略す)、ツェナーダイオード5B、ダイオード5C、及び抵抗5Dによって構成される。トランジスタ5Aのドレインは、電源端子VBBに接続される。トランジスタ5Aのソースは、出力トランジスタQ1のゲートに接続される。トランジスタ5Aのバックゲートは、出力端子OUTに接続される。ツェナーダイオード5Bのカソードは、電源端子VBBに接続される。ツェナーダイオード5Bのアノードは、ダイオード5Cのアノードに接続される。ダイオード5Cのカソードは、トランジスタ5Aのゲート及び抵抗5Dの一端に接続される。抵抗5Dの他端は、出力トランジスタQ1のゲートに接続される。
【0032】
入力回路6は、入力端子INから制御信号の入力を受け付けてイネーブル信号ENを生成するシュミットトリガである。
【0033】
直流電源200を正しい向きでハイサイドスイッチ100に接続すると、
図3に示すように、電源端子VBBに直流電源200の正極が接続される。なお、出力端子OUTに負荷300が接続され、グランド端子GNDに抵抗などの外付け素子が接続されることなくグランド電圧が印加される。
図3に示す接続状態では、電源電圧Vbbがグランド電圧よりも高くなり、電源端子VBBとグランド端子GNDとの間に正バイアスの電圧が印加される状態となる。
【0034】
一方、直流電源200を誤った向き(逆向き)でハイサイドスイッチ100に接続すると、
図4に示したように、グランド端子GNDに直流電源200の正極が接続される。なお、出力端子OUTに負荷300が接続され、電源端子VBBに抵抗などの外付け素子が接続されることなくグランド電圧が印加される。
図4に示す接続状態では、電源電圧Vbbがグランド電圧よりも低くなり、電源端子VBBとグランド端子GNDとの間に逆バイアスの電圧が印加される状態となる。
【0035】
充電部7及び遮断部8は、電源端子VBBとグランド端子GNDとの間に逆バイアスの電圧が印加された場合の破壊を防止するために設けられる。
【0036】
充電部7は、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に出力トランジスタQ1のゲートを充電する。これにより、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に出力トランジスタQ1がオンになり、出力トランジスタQ1の消費電力及び発熱を低減することができる。すなわち、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に出力トランジスタQ1の発熱によって破壊することを防止できる。
【0037】
充電部7として、例えばグランド端子GNDと出力トランジスタQ1のゲートとの間に設けられる抵抗7Aを用いることができる。抵抗7Aは、電源電圧Vbbがグランド電圧より高い場合にプルダウン抵抗になるが、ゲート制御回路4による出力トランジスタQ1の制御に影響を与えない程度の抵抗値(例えば500kΩなど)を有する。
【0038】
遮断部8は、電源逆接保護回路であり、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合にグランド端子GNDから電源端子VBBに至る電流経路を遮断する。これにより、抵抗またはダイオードなどの素子をグランド端子GNDに外付け接続しなくても、ハイサイドスイッチ100内の寄生ダイオードを通じてグランド端子GNDから電源端子VBBに電流が流れてハイサイドスイッチ100が破壊することを防止できる。
【0039】
遮断部8は、定電圧生成回路1とグランド端子GNDとの間に設けられる。また、遮断部8は、電源端子VBBに接続される。より詳細には、遮断部8は、抵抗R1を介して電源端子VBBに接続される。
【0040】
遮断部8は、例えば、
図5に示すように、エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ8A(以下「トランジスタ8A」と略す)、エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ8B(以下「トランジスタ8B」と略す)、デプレッション型NチャネルMOSトランジスタ8C(以下「トランジスタ8C」と略す)によって構成される。
【0041】
トランジスタ8Aのゲートは、電源端子VBBに接続される。より詳細には、トランジスタ8Aのゲートは、抵抗R1を介して電源端子VBBに接続される。トランジスタ8Aのドレインは、グランド端子GNDに接続される。また、トランジスタ8Aのゲートは、定電圧生成回路1の一端に接続される。より詳細には、トランジスタ8Aのゲートは、抵抗R1を介して定電圧生成回路1の一端に接続される。トランジスタ8Aのソースは、トランジスタ8Cのドレインに接続される。
【0042】
また、トランジスタ8Aのソース及びトランジスタ8Cのドレインは、定電圧生成回路1の他端に接続される。トランジスタ8Aのバックゲートは、トランジスタ8Bのドレイン及びバックゲートと、トランジスタ8Cのゲート、ソース及びバックゲートとに接続される。トランジスタ8Bのゲートは、電源端子VBBに接続される。より詳細には、トランジスタ8Bのゲートは、抵抗R1を介して電源端子VBBに接続される。また、トランジスタ8Bのゲートは、定電圧生成回路1の一端に接続される。より詳細には、トランジスタ8Bのゲートは、抵抗R1を介して定電圧生成回路1の一端に接続される。トランジスタ8Bのソースは、グランド端子GNDに接続される。
【0043】
電源電圧Vbbがグランド電圧より高い場合に、
図5に示す構成例の遮断部8では、トランジスタ8Aのゲート電圧が所定の電圧(=ドレイン電圧+閾値電圧Vth)以上となり、トランジスタ8Bがオンする。これにより、トランジスタ8Aのバックゲートがドレインと同電位となり、トランジスタ8Aがオン(ソース・ドレイン間がショート)する。
【0044】
一方、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に、
図5に示す構成例の遮断部8では、トランジスタ8Aのゲート電圧が所定の電圧以下となり、トランジスタ8Bがオフする。すると、トランジスタ8Cによって、トランジスタ8Aのバックゲートがソースと同電位となるので、トランジスタ8Aがオフする。
【0045】
図5に示す構成例の遮断部8では、電源端子VBBとグランド端子GNDとの間に印加される電圧のバイアス方向に応じて、トランジスタ8Aのバックゲートに接続されるトランジスタ8Bまたは8Cのいずれか一方が選択的にオンされるようになっている。電源端子VBBとグランド端子GNDとの間に逆バイアスの電圧が印加された場合には、トランジスタ8Cが選択的にオンされてトランジスタ8Aがオフされる。これにより、グランド端子GND側(トランジスタ8Aのドレイン側)から電源端子VBB側(トランジスタ8Aのソース側)への電流経路が遮断される。
【0046】
阻止部9は、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に、充電部7からゲート制御回路4に電流が流入することを阻止する。これにより、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に、充電部7による出力トランジスタQ1のゲート充電に関する確実性を向上することができる。
【0047】
阻止部9として、例えばゲート制御回路4と充電部7及び制限部10との間に設けられるデプレッション型NチャネルMOSトランジスタ9A(以下「トランジスタ9A」と略す)を用いることができる。電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に、トランジスタ9Aはオフになる。一方、電源電圧Vbbがグランド電圧より高い場合に、トランジスタ9Aはオンになる。
【0048】
制限部10は、電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合に出力トランジスタQ1のゲートに印加される電圧の上限を規定する。これにより、充電部7による充電で出力トランジスタQ1のゲート電圧が過度に上昇することを防止できる。
【0049】
制限部10は、例えばエンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ10A(以下「トランジスタ10A」と略す)及びツェナーダイオード10Bによって構成される。トランジスタ10Aのゲート、ソース及びバックゲートは、電源端子VBBに接続される。トランジスタ10Aのドレインは、ツェナーダイオード10Bのアノードに接続される。ツェナーダイオード10Bのカソードは、出力トランジスタQ1のゲートに接続される。
【0050】
電源電圧Vbbがグランド電圧より低い場合、電源端子VBBと出力トランジスタQ1のゲートとの間の電圧は、トランジスタ10Aのドレイン・バックゲート間のPN接合の順方向電圧とツェナーダイオード10Bのツェナー電圧との和でクランプされる。一方、電源電圧Vbbがグランド電圧より高い場合に、トランジスタ10Aはオフになる。したがって、電源電圧Vbbがグランド電圧より高い場合に、制限部10は、出力トランジスタQ1のゲートに印加される電圧の上限を規定しない。
【0051】
<寄生素子に関する考察>
ところで、高耐圧・低オン抵抗が要求される出力トランジスタQ1としては、ハイサイドスイッチ100のn型基板をドレイン電極(=電源端子VBBに相当)とする縦型MOSFET構造のパワーMOSFETが一般に用いられている。この場合、バッテリの正極と負極を取り違えた電源逆接時において、n型基板に付随する寄生素子の影響を受けないように、ハイサイドスイッチ100の回路設計及び素子設計を行う必要がある。
【0052】
図6は、寄生素子が付随する様子(特に出力トランジスタQ1のゲート周辺)を示す図である。本図で示すように、ゲート制御回路4の出力段は、一般に、エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ4A(以下「トランジスタ4A」と略す)とエンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ4B(以下「トランジスタ4B」と略す)を含む。
【0053】
トランジスタ4Aのソース及びバックゲートは、いずれも昇圧電圧VCPの印加端に接続されている。トランジスタ4A及び4Bそれぞれのドレインは、いずれも阻止部9を介して出力トランジスタQ1のゲートに接続されている。トランジスタ4Bのソース及びバックゲートは、いずれも抵抗R11を介して出力端子OUTに接続されている。なお、抵抗R11は、サージ保護用の抵抗素子である。
【0054】
ここで、ハイサイドスイッチ100がn型基板Nsubを用いて形成されている場合には、先述のように、n型基板Nsubに付随する寄生素子の影響を考慮する必要がある。
【0055】
本図に即して述べると、ハイサイドスイッチ100には、トランジスタ9Aのドレインをコレクタとし、トランジスタ4Bのバックゲートをベースとし、n型基板Nsubをエミッタとする寄生トランジスタQx(=npn型バイポーラトランジスタ)が付随する。
【0056】
また、ハイサイドスイッチ100には、トランジスタ9Aのソースまたはドレインをコレクタとし、トランジスタ9Aのバックゲートをベースとし、n型基板Nsubをエミッタとする寄生トランジスタQy(=npn型バイポーラトランジスタ)が付随する。
【0057】
従って、バッテリの正極と負極を取り違えた電源逆接時において、グランド端子GNDに電源電圧Vbbが印加され、電源端子VBBに接地電圧が印加されると、OUT>VBBとなり、上記の寄生トランジスタQx及びQyが動作し得る。
【0058】
特に、出力トランジスタQ1がオンするよりも早く寄生トランジスタQx及びQyがオンすると、出力トランジスタQ1のゲートからn型基板Nsubに向けて電流Ix及びIyが引き込まれる。その結果、電源逆接時に充電部7を用いてゲート電圧VGを引き上げることができなくなり、出力トランジスタQ1がオフしてしまうおそれがある。
【0059】
このような状況に陥ると、出力トランジスタQ1のボディダイオードを介して出力端子OUTから電源端子VBBに向けた電流が流れるので、出力トランジスタQ1が発熱して破壊に至るおそれがある。
【0060】
なお、トランジスタ9Aのバックゲートと出力端子OUTとの間に抵抗R12を設ければ、寄生トランジスタQyのゲート電流を抑制して誤動作を防止することができる。しかしながら、寄生トランジスタQxの誤動作は防止されておらず、根本的な解決策とはならない。以下では、上記の考察を鑑み、寄生素子の受けにくい新規な実施形態を提案する。
【0061】
<ハイサイドスイッチ(第2実施形態)>
図7は、ハイサイドスイッチ100の第2実施形態を示す図である。第2実施形態のハイサイドスイッチ100は、先出の第1実施形態(
図1)を基本としつつ、さらに、逆接保護回路20を有する。
【0062】
逆接保護回路20は、エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ21(以下では「トランジスタ21」と略す)と、抵抗22~24と、デプレッション型NチャネルMOSトランジスタ25(以下では「トランジスタ25」と略す)と、エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ26(以下では「トランジスタ26」と略す)と、ダイオード27と、を含む。
【0063】
トランジスタ21のドレインは、出力トランジスタQ1のドレインと共に電源端子VBBに接続されている。トランジスタ21のソース及びバックゲートは、いずれも出力トランジスタQ1のソース及びバックゲートと共に出力端子OUTに接続されている。
【0064】
このように、電源端子VBBと出力端子OUTとの間に並列に接続された出力トランジスタQ1(=第1トランジスタに相当)及びトランジスタ21(=第2トランジスタに相当)としては、いずれもDMOS構造のパワーMOSFETを用いることが望ましい。
【0065】
なお、電源逆接時における寄生素子(特に寄生トランジスタQx)の誤動作防止を主目的とする場合、トランジスタ21には必ずしも大電流を流す必要がない。そのため、トランジスタ21の素子サイズは、出力トランジスタQ1の素子サイズと比べて十分に小さくすることができる。
【0066】
また、以下では、説明の便宜上、出力トランジスタQ1のゲートに印加されるゲート電圧(先出のゲート電圧VG)を第1ゲート電圧VG1(=第1駆動信号に相当)と呼び、これと区別するように、トランジスタ21のゲートに印加されるゲート電圧を第2ゲート電圧VG2(=第2駆動信号)と呼ぶ。
【0067】
抵抗22(=第1抵抗に相当)は、グランド端子GNDとトランジスタ21のゲートとの間に接続されている。
【0068】
抵抗23(=第2抵抗に相当)は、出力端子OUTとトランジスタ21のゲートとの間に接続されている。
【0069】
抵抗24(=第3抵抗に相当)は、出力端子OUTとトランジスタ25のバックゲートとの間に接続されている。
【0070】
トランジスタ25(=スイッチに相当)は、トランジスタ21のゲートと抵抗23との間に接続されている。また、トランジスタ25のゲートは、昇圧電圧VCPの印加端に接続されている。
【0071】
なお、トランジスタ25には、トランジスタ25のソースまたはドレインをコレクタとし、トランジスタ25のバックゲートをベースとし、n型基板Nsubをエミッタとする寄生トランジスタQz(=npn型バイポーラトランジスタ)が付随する。ただし、トランジスタ25のバックゲートと出力端子OUTとの間には、抵抗24が設けられているので、寄生トランジスタQzのゲート電流を抑制して誤動作を防止することができる。この点については、先出の抵抗R12と同様である。
【0072】
トランジスタ26のソース、ゲート及びバックゲートは、いずれも電源端子VBBに接続されている。トランジスタ26のドレインは、ダイオード27のアノードに接続されている。ダイオード27のカソードは、トランジスタ21のゲートに接続されている。
【0073】
なお、トランジスタ26及びダイオード27は、電源端子VBBがグランド端子GNDよりも低電位であるときにトランジスタ21のゲートに印加される第2ゲート電圧VG2を所定の上限値以下に制限するクランパとして機能する。この点については、先出の制限部10と同様である。なお、ダイオード27としては、寄生素子の影響を受けないポリシリコンダイオードなどを使用することが望ましい(詳細は後述)。
【0074】
図8は、逆接保護回路20の電流経路を示す図である。なお、実線矢印は電源正常時の電流経路を示しており、小破線は電源逆接時の電流経路を示しており、大破線矢印はアクティブクランプ動作時の電流経路を示している。
【0075】
まず、ハイサイドスイッチ100の電源正常時(=バッテリの正極及び負極がハイサイドスイッチ100に対して正しい向きで接続されている状態)について説明する。
【0076】
ハイサイドスイッチ100の電源正常時には、電源端子VBBに電源電圧Vbbが印加されて、グランド端子GNDにグランド電圧が印加される。また、トランジスタ25のゲートには、電源電圧Vbbよりも高い昇圧電圧VCPが印加される。
【0077】
従って、トランジスタ25がオン状態となるので、トランジスタ21のゲートが抵抗23を介して出力端子OUTにプルダウンされる。その結果、トランジスタ21がオフ状態となり、電源端子VBBと出力端子OUTとの間が遮断される。
【0078】
このように、ハイサイドスイッチ100の電源正常時には、逆接保護回路20が動作しないので、ハイサイドスイッチ100の通常動作に支障を来すことがない。
【0079】
なお、ハイサイドスイッチ100の電源正常時には、本図の実線矢印で示したように、電源端子VBBからトランジスタ26、ダイオード27及び抵抗22を介してグランド端子GNDに向けた電流が流れる。そのため、逆接保護回路20での消費電流を抑えるためには、抵抗22を適切な抵抗値(例えば500kΩ~1MΩ)とすることが望ましい。
【0080】
次に、ハイサイドスイッチ100の電源逆接時(=バッテリの正極及び負極がハイサイドスイッチ100に対して逆向きに接続されている状態)について説明する。
【0081】
ハイサイドスイッチ100の電源逆接時には、電源端子VBBにグランド電圧が印加されて、グランド端子GNDに電源電圧Vbbが印加される。従って、本図の小破線矢印で示したように、グランド端子GNDから抵抗22を介してトランジスタ21のゲートに至る向きに電流が流れる。
【0082】
このとき、トランジスタ21のゲートに印加される第2ゲート電圧VG2が抵抗22を介してプルアップされるので、トランジスタ21がオン状態となり、電源端子VBBと出力端子OUTとの間が導通する。
【0083】
このように、本実施形態の逆接保護回路20は、電源端子VBBがグランド端子GNDよりも低電位であるときに、第1ゲート電圧VG1に依ることなく電源端子VBBと出力端子OUTとの間を導通する。
【0084】
その結果、電源端子VBBと出力端子OUTがほぼ同電位となるので、
図7の寄生トランジスタQx及びQyが誤動作しなくなる。従って、電源逆接時に先出の充電部7を用いて確実に第1ゲート電圧VG1を引き上げることができるので、出力トランジスタQ1をオン状態としてボディダイオードでの発熱を抑制することが可能となる。
【0085】
また、ハイサイドスイッチ100の電源逆接時には、トランジスタ25のゲートに昇圧電圧VCPが印加されないので、トランジスタ25がオフ状態となる。従って、トランジスタ21のゲートから抵抗23に向かう電流が阻止されるので、第2ゲート電圧VG2を確実にプルアップすることができる。この点については、先出の阻止部9と同様である。
【0086】
また、逆接保護回路20は、第1ゲート電圧VG1の入力を受け付けていないので、寄生トランジスタQx及びQyの影響を受けずに済む。従って、ハイサイドスイッチ100の電源逆接時に寄生素子の影響でトランジスタ21がオフ状態に維持されることはない。
【0087】
なお、本実施形態では、逆接保護回路20が寄生トランジスタQx及びQyの誤動作防止手段として機能し、出力トランジスタQ1がボディダイオードの電流バイパス手段として機能する。一方、トランジスタ21を大型化して電流能力を高めれば、電源逆接時に出力トランジスタQ1をオフしたままでも、出力トランジスタQ1のボディダイオードで生じる発熱を抑制することができる。その場合には、先出の充電部7、阻止部9、及び、制限部10を省略してもよい。ただし、出力トランジスタQ1及びトランジスタ21の双方が大面積となる点には留意が必要である。
【0088】
次に、アクティブクランプ動作時について説明する。先にも述べたように、出力端子OUTに誘導性負荷が接続されるアプリケーションにおいて、出力トランジスタQ1をオンからオフへ切り替える際、誘導性負荷の逆起電力により出力端子OUTが負電圧となる。このとき、クランプ回路75の働きにより、出力トランジスタQ1のドレイン・ソース間電圧が開き過ぎないように、出力端子OUTの負電圧に制限が掛かる。
【0089】
このように、アクティブクランプ動作時には、出力端子OUTがグランド端子GNDよりも低電位(例えばOUT=-50V)となる。従って、本図の大破線矢印で示したように、グランド端子GNDから抵抗22、トランジスタ25及び抵抗23を介して出力端子OUTに至る向きに電流が流れ得る。
【0090】
ここで、抵抗23の両端間電圧がトランジスタ21のオン閾値電圧よりも高くなると、トランジスタ21がオンしてしまうので、アクティブクランプ動作に支障を来すおそれがある。そのため、抵抗23を適切な抵抗値(例えば3~6kΩ)に設定すべきである。
【0091】
図9は、ハイサイドスイッチ100に集積化されるダイオードの概略構成を示す図(=ハイサイドスイッチ100の縦断面構造を示す図)である。本構成例のハイサイドスイッチ100は、n型基板101と、n型エピ層102と、n型ポリシリコン領域103と、p型ポリシリコン領域104と、を有する。
【0092】
n型基板101は、先に述べた通り、出力トランジスタQ1のドレイン電極(=電源端子VBB)に相当する。従って、n型基板101には、電源電圧Vbbが印加され得る。
【0093】
n型エピ層102は、n型基板101の表面に積層形成されるn型のエピタキシャル成長層である。なお、n型エピ層102は、n型基板101と電気的に導通している。従って、n型エピ層102には、n型基板101と同じく、電源電圧Vbbが印加され得る。
【0094】
n型ポリシリコン領域103及びp型ポリシリコン領域104は、それぞれ、n型エピ層102の表層でpn接合を形成する。なお、n型ポリシリコン領域103は、ポリシリコン膜にn型不純物をイオン注入することにより形成され、ポリシリコンダイオードDpolyのカソードとして機能する。一方、p型ポリシリコン領域104は、ポリシリコン膜にp型不純物をイオン注入することにより形成され、ポリシリコンダイオードDpolyのアノードとして機能する。
【0095】
ところで、仮にn型エピ層102の内部にMOSダイオードDepiを形成する場合には、まずn型エピ層102の内部にp型ウェル105を形成し、さらにp型ウェル105の内部にn型半導体領域106及びp型半導体領域107をそれぞれ形成すればよい。このような素子構造によれば、p型ウェル105及びp型半導体領域107がMOSダイオードDepiのアノードとして機能し、n型半導体領域106がMOSダイオードDepiのカソードとして機能する。
【0096】
ただし、MOSダイオードDepiを持つハイサイドスイッチ100には、n型半導体領域106をエミッタとし、p型ウェル105及びp型半導体領域107をベースとし、n型基板101及びn型エピ層102をコレクタとする寄生トランジスタQp(=npn型バイポーラトランジスタ)が付随する。そのため、n型基板101(=電源電圧Vbbの印加端)から寄生トランジスタQpを介して意図しない電流が流れるおそれがある。
【0097】
一方、先出のポリシリコンダイオードDpolyは、n型基板101及びn型エピ層102から電気的に分離されているので、寄生素子の影響を受けない。従って、例えば、逆接保護回路20のクランパを形成するダイオード27として好適に用いることができる。
【0098】
<ハイサイドスイッチ(第3実施形態)>
図10は、ハイサイドスイッチ100の第3実施形態を示す図である。第3実施形態のハイサイドスイッチ100は、先出の第2実施形態(
図7)を基本としつつ、出力トランジスタQ1及びトランジスタ21に代えて、ゲート分割型の出力トランジスタQ1’(=ゲート分割トランジスタ)が用いられている。
【0099】
出力トランジスタQ1’は、第1ゲート電圧VG1の入力を受け付ける第1ゲートと、第2ゲート電圧VG2の入力を受け付ける第2ゲートを備えており、第1ゲート電圧VG1及び第2ゲート電圧VG2を用いて第1チャネル領域及び第2チャネル領域をそれぞれ個別制御するように構成されている。なお、ゲート分割トランジスタの素子構造については、周知の素子構造を採用すれば足りるので、詳細な説明は省略する。
【0100】
このように、本実施形態のハイサイドスイッチ100では、出力トランジスタQ1及びトランジスタ21が単一のゲート分割トランジスタとして一体的に形成されている。従って、先出の第2実施形態(
図7)と比べて、逆接保護回路20の素子数を減らすことが可能となる。
【0101】
なお、第1ゲート電圧VG1に応じてオン/オフされる第1チャネル領域は、第2ゲート電圧VG2に応じてオン/オフされる第2チャネル領域よりも広く形成するとよい。
【0102】
<逆接保護動作に関する考察>
第2実施形態(
図7)の逆接保護回路20では、トランジスタ25に寄生トランジスタQzが付随する。この寄生トランジスタQzの動作点は、寄生トランジスタQx及びQyそれぞれの動作点とほぼ同じである。そのため、寄生トランジスタQx及びQyの誤動作を抑制したい動作点で寄生トランジスタQzが誤動作してしまい、逆接保護回路20が正常に動作しないおそれがある。
【0103】
なお、先にも述べた通り、トランジスタ25のバックゲートと出力端子OUTとの間に抵抗24を設けることで寄生トランジスタQzの誤動作を抑制し得るが、必ずしも十分とは言えない。
【0104】
以下では、上記の考察に鑑み、逆接保護動作の確実性を高めることのできる新規な実施形態を提案する。
【0105】
<ハイサイドスイッチ(第4実施形態)>
図11は、ハイサイドスイッチ100の第4実施形態を示す図である。第4実施形態のハイサイドスイッチ100は、先出の第2実施形態(
図7)を基本としつつ、逆接保護回路20の内部構成に変更が加えられている。なお、本図では、説明の便宜上、先出の充電部7、阻止部9及び制限部10が逆接保護回路20の構成要素であるものとしている。
【0106】
逆接保護回路20は、先にも述べたように、電源逆接時、すなわち、電源端子VBBがグランド端子GNDよりも低電位であるときに、ゲート制御回路4から与えられる第1ゲート電圧VG1に依ることなく、電源端子VBBと出力端子OUTとの間を導通する機能ブロックである。
【0107】
本図に即して具体的に述べると、本実施形態の逆接保護回路20は、先出の充電部7、阻止部9、制限部10、トランジスタ21、抵抗22、抵抗23、抵抗24、トランジスタ25、トランジスタ26、及び、ダイオード27に加えて、新たに抵抗28を含む。一方、本実施形態の逆接保護回路20では、先出の抵抗R12が取り除かれている。また、本実施形態の逆接保護回路20は、先出の第2実施形態(
図7)と比べて、構成要素の接続関係が一部変更されている。以下、変更点を中心に構成要素の接続関係を説明する。
【0108】
トランジスタ21(=第2トランジスタに相当)は、電源端子VBBとトランジスタ9A(=阻止トランジスタに相当)のバックゲートとの間に接続されている。なお、以下では、トランジスタ9Aのバックゲートと同電位になるノードを「ノードA」と呼ぶ。
【0109】
トランジスタ25(=第3トランジスタに相当)は、トランジスタ21のゲートと抵抗23との間に接続されている。なお、トランジスタ25に付随する寄生トランジスタQz(
図7を参照)の誤動作を抑制するためには、トランジスタ25の素子サイズをトランジスタ9Aの素子サイズよりも小さく設計しておくことが望ましい。
【0110】
抵抗22(=第1抵抗に相当)は、トランジスタ21のゲートとグランド端子GNDとの間に接続されている。
【0111】
抵抗23(=第2抵抗に相当)は、トランジスタ21のゲートとノードBとの間に接続されている。
【0112】
抵抗24(=第3抵抗に相当)は、トランジスタ9AのバックゲートとノードBとの間に接続されている。
【0113】
なお、出力端子OUTとノードBとの間には、静電破壊対策として抵抗R11が接続されている。
【0114】
このような回路構成によれば、トランジスタ9Aに付随する寄生トランジスタQy(
図7を参照)がオンしてベース電流が流れることにより、ノードAがクランプされる。従って、トランジスタ25に付随する寄生トランジスタQz(
図7を参照)が誤動作を生じにくくなるので、逆接保護動作の確実性を高めることが可能となる。
【0115】
また、本実施形態の逆接保護回路20では、トランジスタ9Aのバックゲートとトランジスタ25のバックゲートとの間に抵抗28(=第4抵抗に相当)が接続されている。従って、トランジスタ25に付随する寄生トランジスタQz(
図7を参照)のベース電流を小さく絞って寄生トランジスタQzの誤動作を抑制することが可能となる。
【0116】
なお、トランジスタ25に付随する寄生トランジスタQz(
図7を参照)が万一誤動作を生じたとしても、トランジスタ21が確実にオンするように、抵抗28の抵抗値は、抵抗22の抵抗値よりも低く設計しておくことが望ましい。
【0117】
<ハイサイドスイッチの用途例>
図12は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリ(本図では不図示)と、バッテリから電源電圧Vbbの供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18と、を搭載している。
【0118】
車両Xには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle」、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0119】
なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0120】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)または、モータに関する制御(トルク制御、及び、電力回生制御など)を行う電子制御ユニットを行う電子制御ユニットである。
【0121】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]及びDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0122】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0123】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0124】
電子機器X15は、ドアロック及び防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0125】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品またはメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0126】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0127】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0128】
なお、先に説明したハイサイドスイッチ100は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0129】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0130】
例えば、本明細書に開示されているハイサイドスイッチは、電源端子と出力端子との間に接続されるように構成された第1トランジスタと、前記電源端子がグランド端子よりも低電位であるときにゲート制御回路に依ることなく前記電源端子と前記出力端子との間を導通するように構成された逆接保護回路と、を備え、前記逆接保護回路は、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記グランド端子から前記第1トランジスタのゲートを充電するように構成された充電部と、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記グランド端子から前記充電部を介して前記ゲート制御回路に電流が流入することを阻止するように構成されたように構成された阻止トランジスタと、前記電源端子と前記阻止トランジスタのバックゲートとの間に接続されるように構成された第2トランジスタと、前記第2トランジスタのゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第3トランジスタと、前記第2トランジスタのゲートと前記グランド端子との間に接続されるように構成された第1抵抗と、前記第2トランジスタのゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第2抵抗と、前記阻止トランジスタのバックゲートと前記出力端子との間に接続されるように構成された第3抵抗と、を含む構成(第1の構成)とされている。
【0131】
なお、上記第1の構成によるハイサイドスイッチにおいて、前記第3トランジスタの素子サイズは、前記阻止トランジスタの素子サイズよりも小さい構成(第2の構成)にしてもよい。
【0132】
また、上記第1又は第2の構成によるハイサイドスイッチにおいて、前記逆接保護回路は、前記阻止トランジスタのバックゲートと前記第3トランジスタのバックゲートとの間に接続されるように構成された第4抵抗をさらに含む構成(第3の構成)にしてもよい。
【0133】
また、上記第3の構成によるハイサイドスイッチにおいて、前記第4抵抗の抵抗値は、前記第1抵抗の抵抗値よりも低い構成(第4の構成)にしてもよい。
【0134】
また、上記第1~第4いずれかの構成によるハイサイドスイッチにおいて、前記逆接保護回路は、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記第2トランジスタのゲートに印加される第2駆動信号を所定の上限値以下に制限するように構成されたクランパをさらに含む構成(第5の構成)にしてもよい。
【0135】
また、上記第5の構成によるハイサイドスイッチは、前記電源端子と導通するように構成されたn型基板と、前記n型基板の表面に積層形成されるように構成されたn型エピ層と、をさらに備え、前記クランパは、前記n型エピ層の表層でpn接合を形成するように構成されたポリシリコンダイオードを含む構成(第6の構成)にしてもよい。
【0136】
また、上記第1~第6いずれかの構成によるハイサイドスイッチは、前記電源端子が前記グランド端子よりも低電位であるときに前記第1トランジスタのゲートに印加される前記第1駆動信号を所定の上限値以下に制限するように構成された制限部をさらに備える構成(第7の構成)にしてもよい。
【0137】
また、上記第1~第7いずれかの構成によるハイサイドスイッチにおいて、前記充電部は、前記第1トランジスタのゲートと前記グランド端子との間に接続されるように構成された第5抵抗を含む構成(第8の構成)にしてもよい。
【0138】
また、例えば、本明細書に開示されている電子機器は、上記第1~第8いずれかの構成によるハイサイドスイッチを備える構成(第9の構成)とされている。
【0139】
また、例えば、本明細書に開示されている車両は、バッテリと、上記第9の構成により前記バッテリから電力供給を受けて動作するように構成された電子機器と、を備える構成(第10の構成)とされている。
【0140】
<その他の変形例>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0141】
A、B ノード
Dpoly ポリシリコンダイオード
Depi MOSダイオード
GND グランド端子
IN 入力端子
Nsub n型基板
OUT 出力端子
Q1 出力トランジスタ
Q1’ 出力トランジスタ(2ゲート型)
Qx、Qy、Qz、Qp 寄生トランジスタ
R1、R11、R12 抵抗
VBB 電源端子
1 定電圧生成回路
1A 電流源
1B エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ
1C ツェナーダイオード
1D ダイオード
1E 負電圧保護回路
1F カレントミラー回路
1G エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ
2 発振回路
3 チャージポンプ回路
4 ゲート制御回路
4A エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ
4B エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ
5 クランプ回路
5A エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ
5B ツェナーダイオード
5C ダイオード
5D 抵抗
6 入力回路
7 充電部
7A 抵抗
8 遮断部
8A エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ
8B エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ
8C デプレッション型NチャネルMOSトランジスタ
9 阻止部
9A デプレッション型NチャネルMOSトランジスタ
10 制限部
10A エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ
10B ツェナーダイオード
20 逆接保護回路
21 エンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタ
22、23、24、28 抵抗
25 デプレッション型NチャネルMOSトランジスタ
26 エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタ
27 ダイオード
100 ハイサイドスイッチ
101 n型基板
102 n型エピ層
103 n型ポリシリコン領域
104 p型ポリシリコン領域
105 p型ウェル
106 n型半導体領域
107 p型半導体領域