(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167426
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】反力治具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20231116BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B25B21/00 G
E04G21/18 Z
B25B21/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078602
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】520185546
【氏名又は名称】ユニタイトシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】山中 修
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
(72)【発明者】
【氏名】中山 直樹
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA33
2E174DA57
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】 油圧トルクレンチと別体に形成され、各鋼管の柱の継手部へ着脱自在に装着して油圧トルクレンチへ確実に反力を与える反力治具を提供する。
【解決手段】
反力治具gは、第1部分1へ隣接ナットn2を受容する第1受容部を備え、第2部分2へ副隣接ナットn3を受容する第2受容部20を備え、第1部分1と第2部分2との間には連結部分3と共に、柱k1の十字状断面部k13の羽根状部分k13aを避ける後退部分4が設けられている。第1部分1の第2部分2と反対側に、締付対象ナットn1と隣接ナットn2との間の羽根状部分k13aよりもりも柱k1の径外方向へ延設された延設部7が備えられ、延設部7が油圧トルクレンチmの当接部m5と当接する反力発生面8を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角鋼管からなる接合すべき一方の柱の一端部に十字状断面部と端板からなる継手部が設けられると共に他方の柱の一端部の端板に前記継手部の端板を重ねて張力ボルトで接合される柱接合構造に対し、油圧トルクレンチによる前記張力ボルトの締め付けに用いられる反力治具であって、
前記柱接合構造は、前記継手部の端板を継手側端板とし前記他方の柱の一端部の端板を他方側端板として、重ね合わせた前記継手側端板と前記他方側端板へ複数の前記張力ボルトを通し、複数の前記張力ボルトの軸部後端の夫々は、前記継手側端板の前記他方側端板を臨む接合面と反対側の面から、前記十字状断面部の十字にて区画された4つの空間の夫々へ突出して、夫々ナットを嵌められるものであり、
前記油圧トルクレンチは、ケーシングと、前記ケーシング内に収容され直接又は間接的に油圧を受けて回転する環状の回転体と、前記回転体を一方向へ回転させるラチェット機構等の逆転防止機構とを備え、前記回転体を前記ナットへ嵌めることで前記ナットを回転させて前記締め付けを行うものであり、前記ナットの回転に際し、前記ケーシング表面の一部が当接面として他へ当接することにより前記回転体の回転に対する反力を受けるものであり、
前記油圧トルクレンチにて締め付けられる前記ナットを締付対象ナットとし、前記十字状断面部の十字を構成する4つの片の一つを挟んで前記締付対象ナットに隣接する一方のナットを隣接ナットとし、前記隣接ナットと共に十字を構成する4つの片の他の一つを挟み前記締付対象ナットの反対側にて前記隣接ナットと隣接するナットを副隣接ナットとし、
前記反力治具は、前記油圧トルクレンチと別体に形成されて着脱自在に前記継手部へ取り付けられ、前記トルクレンチの前記当接面と当接して前記反力を生じさせるものであり、
前記反力治具は、第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分へ連結する連結部分とを備え、
前記第1部分は前記隣接ナットを受容する第1受容部を備え、前記第2部分は前記副隣接ナットを受容する第2受容部を備え、
前記反力治具の前記継手部への装着において、前記連結部分が、前記隣接ナットと前記副隣接ナットの間にて前記十字を構成する4つの片の前記他の一つを避け前記第1受容部へ前記隣接ナットを受容させると共に前記第2受容部へ前記副隣接ナットを受容させることができ、
前記第1部分の前記連結部分と反対側には、前記対象ナットと前記隣接ナットとの間の前記十字を構成する片の前記一つよりも前記角鋼管の径外方向へ延設された延設部が備えられ、前記延設部が前記当接部と当接する反力発生面を備える反力治具。
【請求項2】
前記反力治具の前記継手部へ装着した状態において、前記第1部分と前記第2部分とは夫々前記角鋼管から前記角鋼管の径外方向にはみ出すはみ出し部分を備え、両はみ出し部分の間に前記連結部分を備えることにより、前記連結部分は前記隣接ナットと前記副隣接ナットの間で前記十字を構成する4つの片のうち前記他の一つを避けるものである請求項1記載の反力治具。
【請求項3】
角鋼管の軸方向を上下方向とし、前記継手部を備える一方の柱を他方の柱の上端へ接合するとした場合、平面視において十字を呈する前記継手部の前記十字状断面部は、前記継手部を備える一方の柱の端部から下方へ伸び前記十字状断面の下端に前記継手側端板が溶接されたものであり、
前記反力治具は、平面視略長方形を呈する板状に形成されたものであり、前記前記反力治具の厚さは、前記継手側端板の上面から上方へ突出する前記各張力ボルトの前記軸後端及び前記軸に嵌められた前記各ナットと、前記継手部を備える前記一方の柱の前記一端部との間の間隔よりも小さいものであり、前記第1受容部と前記第2受容部の夫々は、前記反力治具の上面から下面へ貫通する貫通部であり、
前記長方形の長手方向へ沿って前記延設部と前記第1部分と前記連結部分と前記第2部分とが順に備えられており、前記第1部分と前記第2部分の間は、前記長方形の一方の長辺から他方の長辺側へ向けて後退する後退部分と共に、前記連結部分とを備え、前記連結部分は、前記後退部分よりも前記他方の長辺側にて前記第1部分と前記第2部分とを連結しており、
前記隣接ナットと前記副隣接ナットの間にて前記十字を構成する4つの片の前記他の一つを前記後退部分へ挿入することができ、前記後退部分の前記一方の長辺側へ向け漸次前記長手方向の幅を広げる挿入ガイド面を備え、
前記張力ボルトの前記軸後端及び前記軸に嵌められた前記ナットと前記継手部を備える前記一方の柱の前記一端部との間へ前記反力治具を差し込み、前記反力治具を押し下げ前記第1受容部と前記第2受容部へ前記隣接ナットと前記副隣接ナットの夫々を受容させることで、前記反力治具の前記継手部へ装着することができ、
前記反力発生面は、前記延設部において前記反力治具の前記長方形の前記締付対象ナットに最も近い一角を斜めに落とした平らな面であり、前記反力治具を前記継手部へ装着した状態において、前記反力発生面へ前記油圧トルクレンチの前記当接面を対面させることができる請求項2記載の反力治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反力治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より角鋼管からなる接合すべき一方の柱の一端部に十字状断面部と端板からなる継手部が設けられ、他方の柱の一端部の端板に前記継手部の端板を重ねて張力ボルトで接合される柱接合構造が知られている(特許文献1)。
【0003】
一方張力ボルトを締め付ける工具として、油圧トルクレンチが利用される(特許文献2~5)。
上記の油圧トルクレンチは、ケーシングと、当該ケーシングに収容され油圧にて前記ケーシングに対し直線運動するピストンと、上記ケーシングに収容された環状の回転体と、上記ピストンの直線運動を回転運動に変換して上記回転体を上記ケーシングに対し回転させるラチェット機構やボールロック装置といった逆転防止機構を備え、上記回転体をナットへ嵌めることにて当該ナットを回転させボルトに対する締め付けを行う。上記ナットの回転に際し、上記ケーシング表面の一部は、当接面として他へ当接することにて上記回転体の回転力に対する反力を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-39633号公報
【特許文献2】特開昭62-44378号公報
【特許文献3】特表2018-517577号公報
【特許文献4】特表2016-516604号公報
【特許文献5】特許第5647228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に示される柱接合構造では、角鋼管からなる接合すべき一方の柱の一端部に十字状断面部と端板からなる継手部が設けられ、他方の柱の一端部の端板に前記継手部の端板を重ねて4本の張力ボルトで接合され、4つの張力ボルトの軸部後端の夫々が、継手側端板の接合面と反対側の面から、十字状断面部の十字にて区画された4つの空間の夫々へ突出して、夫々ナットを嵌められ、当該ナットの締め付にて接合を行うという、複雑な形態を採る。
このため、張力ボルトの締め付けを、上記油圧トルクレンチを利用して円滑且つ確実に行おうとすると、反力を受ける最適なアタッチメントを制作し上記油圧トルクレンチに取付けるか、或いは、反力を受ける最適な形態に油圧トルクレンチを改良することが、必要であると考えられた。
油圧トルクレンチの上記特許文献1の柱接合構造に適合させるための上記アタッチメントの油圧トルクレンチへの取り付けや、油圧トルクレンチ自体の改良は、コストや手間の面で無視できるものではない。
そこで本発明は、上記柱接合構造における張力ボルトの締め付けに際し、上記柱接合構造に適合させる構成を上記油圧トルクレンチへ取り付けたり、油圧トルクレンチを改造したりすることなく、既存の油圧トルクレンチを利用し簡便に適切な上記反力の発生を可能とする、反力治具を提供することにより、上記課題の解決を図る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、角鋼管からなる接合すべき一方の柱の一端部に十字状断面部と端板からなる継手部が設けられると共に他方の柱の一端部の端板に前記継手部の端板を重ねて張力ボルトで接合される柱接合構造に対し、油圧トルクレンチによる前記張力ボルトの締め付けに用いられる反力治具であって、前記柱接合構造は、前記継手部の端板を継手側端板とし前記他方の柱の一端部の端板を他方側端板として、重ね合わせた前記継手側端板と前記他方側端板へ複数の前記張力ボルトを通し、複数の前記張力ボルトの軸部後端の夫々は、前記継手側端板の前記他方側端板を臨む接合面と反対側の面から、前記十字状断面部の十字にて区画された4つの空間の夫々へ突出して、夫々ナットを嵌められるものであり、前記油圧トルクレンチは、ケーシングと、前記ケーシング内に収容され直接又は間接的に油圧を受けて回転する環状の回転体と、前記回転体を一方向へ回転させるラチェット機構等の逆転防止機構とを備え、前記回転体を前記ナットへ嵌めることで前記ナットを回転させて前記締め付けを行うものであり、前記ナットの回転に際し、前記ケーシング表面の一部が当接面として他へ当接することにより前記回転体の回転に対する反力を受けるものであり、前記油圧トルクレンチにて締め付けられる前記ナットを締付対象ナットとし、前記十字状断面部の十字を構成する4つの片の一つを挟んで前記締付対象ナットに隣接する一方のナットを隣接ナットとし、前記隣接ナットと共に十字を構成する4つの片の他の一つを挟み前記締付対象ナットの反対側にて前記隣接ナットと隣接するナットを副隣接ナットとし、前記反力治具は、前記油圧トルクレンチと別体に形成されて着脱自在に前記継手部へ取り付けられ、前記トルクレンチの前記当接面と当接して前記反力を生じさせるものであり、前記反力治具は、第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分へ連結する連結部分とを備え、前記第1部分は前記隣接ナットを受容する第1受容部を備え、前記第2部分は前記副隣接ナットを受容する第2受容部を備え、
前記反力治具の前記継手部への装着において、前記連結部分が、前記隣接ナットと前記副隣接ナットの間にて前記十字を構成する4つの片の前記他の一つを避け前記第1受容部へ前記隣接ナットを受容させると共に前記第2受容部へ前記副隣接ナットを受容させることができ、前記第1部分の前記連結部分と反対側には、前記対象ナットと前記隣接ナットとの間の前記十字を構成する片の前記一つよりも前記角鋼管の径外方向へ延設された延設部が備えられ、前記延設部が前記当接部と当接する反力発生面を備える反力治具を提供する。
また本発明では、前記反力治具の前記継手部へ装着した状態において、前記第1部分と前記第2部分とは夫々前記角鋼管から前記角鋼管の径外方向にはみ出すはみ出し部分を備え、両はみ出し部分の間に前記連結部分を備えることにより、前記連結部分は前記隣接ナットと前記副隣接ナットの間で前記十字を構成する4つの片のうち前記他の一つを避ける反力治具を提供できた。
更に本発明では、角鋼管の軸方向を上下方向とし、前記継手部を備える一方の柱を他方の柱の上端へ接合するとした場合、平面視において十字を呈する前記継手部の前記十字状断面部は、前記継手部を備える一方の柱の端部から下方へ伸び前記十字状断面の下端に前記継手側端板が溶接されたものであり、前記反力治具は、平面視略長方形を呈する板状に形成されたものであり、前記前記反力治具の厚さは、前記継手側端板の上面から上方へ突出する前記各張力ボルトの前記軸後端及び前記軸に嵌められた前記各ナットと、前記継手部を備える前記一方の柱の前記一端部との間の間隔よりも小いものであり、前記第1受容部と前記第2受容部の夫々は、前記反力治具の上面から下面へ貫通する貫通部であり、前記長方形の長手方向へ沿って前記延設部と前記第1部分と前記連結部分と前記第2部分とが順に備えられており、前記第1部分と前記第2部分の間は、前記長方形の一方の長辺から他方の長辺側へ向けて後退する後退部分と共に、前記連結部分とを備え、前記連結部分は、前記後退部分よりも前記他方の長辺側にて前記第1部分と前記第2部分とを連結しており、前記隣接ナットと前記副隣接ナットの間にて前記十字を構成する4つの片の前記他の一つを前記後退部分へ挿入することができ、前記後退部分の前記一方の長辺側へ向け漸次前記長手方向の幅を広げる挿入ガイド面を備え、前記張力ボルトの前記軸後端及び前記軸に嵌められた前記ナットと前記継手部を備える前記一方の柱の前記一端部との間へ前記反力治具を差し込み、前記反力治具を押し下げ前記第1受容部と前記第2受容部へ前記隣接ナットと前記副隣接ナットの夫々を受容させることで、前記反力治具の前記継手部へ装着することができ、前記反力発生面は、前記延設部において前記反力治具の前記長方形の前記締付対象ナットに最も近い一角を斜めに落とした平らな面であり、前記反力治具を前記継手部へ装着した状態において、前記反力発生面へ前記油圧トルクレンチの前記当接面を対面させることができる反力治具を提供できた。
尚、本上記において、発明の各構成の相対的な位置関係を説明する便宜上、角鋼管の軸方向を上下方向(縦方向)としたが、各鋼管の軸方向を横方向や斜めに伸びる場合を排除するものではない。また、前記継手部を備える一方の柱を他方の柱の下端へ接合するものとしてもよいのである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、角鋼管からなる接合すべき一方の柱の一端部に十字状断面部と端板からなる継手部が設けられ、他方の柱の一端部の端板に継手部の端板を重ねて張力ボルトで接合され、複数の張力ボルトの軸部後端の夫々は、継手側端板の接合面と反対側の面から、十字状断面部の十字にて区画された4つの空間の夫々へ突出して、夫々ナットを嵌められ当該ナットの締め付にて接合を行う柱接合構造において、上記張力ボルトの締め付けに際し、上記第1受容部と第2受容部へ、締め付けるナット(締付対象ナット)以外の2つのナット(隣接ナット及び副隣接ナット)を装着することによって、2点で反力治具の継手部に対する位置決めが行え、反力発生面へ油圧トルクレンチの当接面を安定して当接させて、確実に当接面へ反力を与えることができる。
即ち、本発明では、既存の油圧トルクレンチへ固定せずに、抗張力ボルト締付時に着脱自在に上記継手部へ装着して既存の油圧トルクレンチにて上記締付けを行うことができる、反力治具を提供できた。
本発明により、既存の油圧トルクレンチを改造したりアタッチメントを取り付けることなくそのまま利用して、簡単に特許文献1に示された柱接合構造の引張力ボルトの締め付けを行うことが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る反力治具の平面図、(B)は(A)の反力治具の正面図、(C)は(A)のx-x断面図。
【
図2】(A)は接合前の角鋼管の柱を示す側面図、(B)は(A)のy-y断面図。
【
図3】(A)は
図2(A)の角鋼管の柱へ張力ボルトを装着した側面図、(B)は(A)のz-z断面図。
【
図4】油圧トルクレンチ使用前、
図3(B)の角鋼管へ
図1の反力治具を装着した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る反力治具の最適な実施の形態について説明する。
尚説明の便宜上図中、Uは上方を、Sは上方を、Fは前方を、Bは後方を、Rは右方を、Lは左方を示す。
本発明に係る反力治具gは、油圧トルクレンチmと別体に形成された、平面視略長方形金属製の板である(
図1及び
図4)。
反力治具gは、第1部分1と、第2部分2と、第2部分2を第1部分1へ連結する連結部分3とを備える(
図1)。また、第1部分1について連結部分3(第2部分2側)と反対側へ延長された延設部7を備える。
図1へ示す通り、左右(L,R)方向を上記長方形の長辺の伸びる方向として説明すると、反力治具gにおいて、右から左へ、延設部7、第1部分1、連結部分3、第2部分2の順で、各領域が配列されたものである。
【0010】
以下の説明において、反力治具gの呈する上記長方形は、一対の長辺を夫々g3,g4とし、一対の短辺を夫々g5,g6とし、平面視において、反力治具gの背面側を一方の上記長辺g3とし、反力治具gの正面側を他方の上記長辺g4とする。
第1部分1は後方B側へ延設された(第1)はみ出し部分5を備える。第2部分2は後方B側へ延設された(第2)はみ出し部分6を備える。両はみ出し部分5,6は、後述する柱k1の継手部ktへ反力治具gを装着した際、継手部ktから横方向へはみ出す、はみ出し幅t8を備える。平面視において、両はみ出し部分5,6の後端と、連結部分3の後端と、延設部7の後端とが一直線となって上記一方の長辺g3を構成している。
【0011】
連結部分3の前後(F,B)幅は、当該はみ出し幅t8とほぼ同じか若干小さいものとすることで、第1部分1と第2部分2の間において、反力治具gの正面側より背面側へ後退する後退部分4が設けられている。即ち、第1部分1と第2部分2の間において連結部分3の前端よりも上記他方の長辺g4側は、上記後退部分4とする空間が設けられている。
【0012】
第1部分1の前端及び第2部分2の前端は同一直線上にある。当該直線からの後退部分4の後退幅t3即ち後退部分4の前後幅は、当該直線から後述する柱k1の継手部ktの十字状断面部k13の1枚の羽根状部分k13aの平面視における長さとほぼ同じか若干大きなものとする。
また、後退部分4は上記他方の長辺g4側に向けて後退部分4の左右幅を漸次広げる傾斜面が挿入ガイド面40,40として形成されている。
【0013】
第1部分1には、第1部分1を上下に(反力治具gの上面g1から下面g2へ)貫通する貫通部として、第1受容部10が設けられている。第2部分2には、第2部分2を上下に(反力治具gの上面g1から下面g2へ)貫通する貫通部として、第2受容部20が設けられている。第1受容部10及び第2受容部20は平面視円形であり、第1受容部10及び第2受容部20の径rは、後述するナットnの最大径と同じか若干大きいものとする。
反力治具g(の上面g1と下面g2の間)の厚みt9は、後述する第1柱k1における端部k12と第1端板k11から上方へ突出するボルトbの後端(軸端。図示した例では上端)との間の間隔h(
図3(A))よりも小さいものとする。
【0014】
反力治具gの平面視において、第2部分2側の一方の上記短辺g5に対向する第1部分1側の他方の短辺g6と延設部7の前端とが交差する、上記長方形の一角については、角が落とされている。即ち長方形の角に代えて、上記他方の短辺g6及び延設部7の双方に対し斜めとなる、傾斜面が反力発生面8として、上記他方の短辺g6及び延設部7の間へ設けられている。反力発生面8は、後述する油圧トルクレンチgの使用時、油圧トルクレンチgの当接面m5と対面し当該当接面m5と当接する面である。
平面視において、上記他方の短辺g6に対する反力発生面8の挟角θは、反力発生面8を上記当接面m5と面接触できる向きを向くように設定するのが望ましい。
【0015】
この例では、平面視において反力治具gが呈する略長方形の上記他方の長辺g4は、上記延設部7の前端以外の区間、即ち第1部分1及び第2部分2の夫々の前端(を含む上記直線)が、延設部7の前端より後方Bへ後退した状態に形成されて、相対的に第1部分1及び第2部分2の前端よりも前方Fへ突出する回り込み部分71を、延設部7が備えるものとなっている。
当該回り込み部分71は、後述する継手部ktの十字状断面部k13において、後述する
図5の、締付対象ナットn1と隣接ナットn2間に位置する羽根状部分k13aの横方向の先端の先へ回り込むものであり、後述する油圧トルクレンチmの当接面m5が当該羽根状部分k13aの先端に邪魔されない位置に反力発生面8を配置する。
即ち、反力治具gの使用時、締付対象ナットn1と隣接ナットn2との間の羽根状部分k13aよりもりも柱k1(角鋼管)の径外方向へ延設された延設部7において、上記回り込み部分71へ反力発生面8が形成されることで、当該羽根状部分k13aの上記先端へ油圧トルクレンチmを接触させない。
【0016】
尚、反力治具gの呈する上記略長方形において、上記の通り一対の長辺を夫々g3,g4とし、一対の短辺を夫々g5,g6とし、平面視において、反力治具gの背面側を一方の上記長辺g3とし、反力治具gの正面側を他方の上記長辺g4とすると、この例では背面側の上記長辺g3と一方の短辺g5の間の角は丸められ、当該長辺g3と他の一方の短辺g6との間の角も丸められている。更に上記の通り、平面視において上記延設部7の回り込み部71と上記他の一方の短辺g6との間も、長辺g4及び短辺g6に対し斜めに落とされて上記反力発生面8とされている。また更に上記正面側の長辺g4も上記の通り前記回り込み部分71以外の区間は、背面側の長辺g3へ向け後退し、更に上記後退部分4が形成されている。そして当該長辺g4と上記一方の短辺g5との間の角も丸められている。
従って、平面視における反力治具gは、厳密には長方形ではない。しかし、説明の便宜上、平面視における反力治具gは上記の通り「略」長方形とし、平面視において各部の位置関係が適切なものであれば、厳密には長方形でない反力治具gもこの例に含まれるものとする。
【0017】
通常の使用では、反力治具gの上記長手方向の長さt1は10cm~50cmとするのが好ましく、上記短辺の幅即ち反力治具gの前後幅t2は、5cm~30cmとするのが好ましい。
但し、上記長辺g3の長さ即ち反力治具gの長手方向の長さt1や上記前後幅t2については、使用する柱の大きさに応じて適切なものとすればよく、上記範囲を外れたものであってもよい。
【0018】
特に、一辺を12cm~13cmとする正方形の断面を有する一般的な角鋼管の柱k1の継手部kt(
図2)に対し、反力治具gの、上記長手方向の長さt1を210mmとし、上記前後幅t2を112mmとし、厚みt9を30mmとし、上記直線(第1部分1及び第2部分2の前端)からの後退幅t3を58mmとし、上記他方の長辺g4からの上記直線の後退幅t7を23mmとし、連結部分3及び後退部分4の上記長手方向の幅(左右幅)t4を38mmとし、延設部7の左右の幅即ち上記長手方向についての延設幅t5を54.5mmとし、延設部7の前端の左右幅t6を22mmとし、第1受容部10及び第2受容部20の内径を38mmとして実施することができた。
【0019】
(柱接合構造)
この例では、柱k1と柱k2の2本の柱を接合するものとして説明する(
図2(A))。両柱k1,k2は端面同士が突き合わされ、ボルトbにて接合されて1本の柱とされる(
図3(A)(B))。
以下、上下に伸びる一方の柱k1の下端へ他方の柱k2を接合する場合を例に、当該柱の接合構造について説明する。
上記一方の柱k1の端面(下端面)を構成し接合面を提供する端板k11と、他方の柱k2の端面(上端面)を構成し接合面を提供する端板k21とが重ねられて4本のボルトbが両端板k11,k21(
図2(A)(B)、
図3(A)(B))へ通され、ナット締めされる。
【0020】
詳しくは、上記一方の柱k1(以下必要に応じて第1柱k1と呼ぶ。)は、角鋼管である第1柱本体k10と、第1柱本体k10の下端を塞ぐ端部k12と、当該端部k12に設けられた継手部ktとを備える。上記端部k12は、第1柱本体k10の下端へ溶接された鋼材である。接手部ktは、上記端部k12の下面から下方に伸び横断面を十字とする鋼製の十字状断面部k13と、十字状断面部k13の下端へ設けられた上記端板k11(以下第1端板k11)とからなる。
上記端部k12と十字状断面部k13と第1端板k11の三者は、削り出し加工にて形成された、一体のものである。但し、説明の便宜上、十字状断面部k13より下方(第2柱k2側)の部位を上記の通り端板(第1端板k11)と呼ぶ。
【0021】
第1柱本体k10の横断面において矩形の第1柱本体k10の一対の対角線同士が交差する交差点を中心として、十字状断面部k13は、当該中心を通る中心線の延長線(
図2(A)において二点鎖線で示す仮想線)から、横方向即ち上記延長線と直交する四方(前後左右)へ伸びる、4枚の羽根状部分k13aにて構成されている(
図2(B))。4枚の羽根状部分k13aが、特許請求の範囲の「十字を構成する4つの片」に対応する。この例では、羽根状部分k13a夫々の上記横方向の先端側は、平面視において矩形の第1端板k11の4辺に対し夫々垂線として当該4辺の夫々と交差する。この例では、羽根状部分k13aの上記横方向の基端側は、横断面矩形の柱状部k13bを構成する。矩形の柱状部k13bの4つ角の夫々が、隣り合う羽根状部分k13aの基端同士から横方向に突出している。
【0022】
継手部ktの第1端板k11には、ボルトb(
図3(A)(B))を通す4つの孔k14が上下に貫通している(
図2(A)(B))。各孔k14は、第1端板k11の上面において、十字状断面部k13にて区画された4つの空間へ向けて開口している。
【0023】
上記他方の柱k2(以下必要に応じて第2柱k2と呼ぶ。)は、角鋼管である第2柱本体k20と、第2柱本体k20の上端へ溶接されて当該上端を塞ぐ端板k21(以下第2端板k21)とを備える。
第2端板k21には、ボルトb(
図3(A)(B))を通す4つの孔k22が上下に貫通している(
図2(A))。当該各孔k22は、第2端板k21を第1端板k11と重ねた際に、第1端板k11の上記各孔k14と対応する位置に設けられている。第2端板k21の上記各孔k22には雌螺子が設けられている。
【0024】
この例では、ボルトbは、両ネジボルト(スタッドボルト/植え込みボルト)即ち、両端部に雄螺子を設けられた軸である。両柱k1,k2の接合に際し、先ず第2端板k21の上記各孔k22の上記雌螺子へボルトbをねじ込むことで各ボルトbを第2縁板k2へ立て、ボルトbの上端側を第1端板k11の上記各孔k14へ通す。このようにして第2端板k21へ第1端板k11を重ねる。そして第1端板k11から上方の上記区画された空間内へ突出するボルトbの軸端(上端)へナットnを嵌める。即ち、各ボルトbの上端(後端)側の雄螺子へ各ナットnの雌螺子がねじ込まれる。
【0025】
(油圧トルクレンチm)
図4へ示す通り、上記ナットnの夫々を締め付ける油圧トルクレンチmは、ケーシングm1と、ケーシングm2へ収容され油圧にてケーシングm1に対し直線運動するピストン(図示しない。)と、ケーシングm1に収容された環状の回転体m2と、上記ピストンの直線運動を回転運動に変換して上記回転体を上記ケーシングm1に対し回転させるラチェット機構又はボールロック装置といった逆転防止機構(図示しない。)とを備える。
図中m4は、上記油圧を他より油圧トルクレンチmへ供給する油圧供給部を示す。
【0026】
ケーシングm1は、環状の回転体m2の中空部分を外部へ露出させる穴(レンチ穴m3)を備える。当該レンチ穴m3へ上記ナットnを嵌めることにより回転体m3をナットnへ嵌合することができる(
図5)。この例では、一対のレンチ穴m3は、ケーシングm1の上面と下面の夫々へ互いに同心に設けられている。
ケーシングm1の側面には、回転体m3締め付けるナットnへ嵌合した状態においてケーシングm1の上記継手部ktより側方へ露出する部分へ、反力を受ける当接面m5が形成されている(
図4及び
図5)。
【0027】
(反力治具gの使用例)
以下、締付けを行うナットnを締付対象ナットn1と、隣接する一方のナットnを隣接ナットn2と、隣接ナットn2対し締付を行う締付対象ナットn1と反対側にて隣接するナットnを副隣接ナットn3と呼ぶ。また、上記4つのナットnのうちの残りの一つを非関与ナットn4と呼ぶ。
【0028】
第1柱k1における上記端部k12と第1端板k11から上方へ突出する隣接ボルトbの後端(上端)との間から上記反力治具gの第1部分1を第1挿入部として、隣接ナットn2のある空間へ挿入すると共に、上記端部k12と第1端板k11から上方へ突出する副隣接ボルトbの後端(上端)との間から上記反力治具gの第2部分2を第2挿入部として、副隣接ナットn3のある空間へ挿入する。当該挿入と同時に後退部4内へ隣接ナットn2と副隣接ナットn3との間を区画する上記羽根状部分k13aの一枚が挿入される(
図4)。
上記各挿入後、継手部ktに対し反力治具gを押し下げることにて、反力治具gの第1受容部10内へ隣接ナットn2を受容させ、反力治具gの第2受容部20へ副隣接ナットn3を受容させて、反力治具gの上記継手部ktへの装着を完了する。
【0029】
反力治具gの上記継手部ktへの装着完了後、上記油圧トルクレンチmのレンチ穴m3を締付対象ナットn1へ嵌め回転体m2へ締付対象ナットn1を嵌合し、当接面m5を反力治具gの反力発生面8へ当接させ、油圧トルクレンチmを作動させることにて回転体m2を回転させ、締付対象ナットn1のボルトへの締付けを行う(
図5)。
【0030】
上記締付けが完了すると、例えば、上記において非関与ナットn4であったナットnを次の締付対象ナットn1とし、上記において締付対象ナットn1であったナットnを次の隣接ナットn2とし、上記において隣接ナットn2であったナットnを次の副隣接ナットn3として、反力治具gを装着し油圧トルクレンチmを使用すればよい。締め付けが完了すると、締付けられていない他のナットnを順次締付対象ナットn1として、継手部ktに対する反力治具gの取り付け位置を順次変更し、油圧トルクレンチmにて締付けを行えばよい。
油圧トルクレンチmにてナットnを緩める場合は、反力治具gを図示した上記の場合と上下逆にして使用すればよい。
また、上記第2柱k2の下端へ、継手部ktを備える第1柱k1を接合する場合も、反力治具gを上下逆にして、油圧トルクレンチmにてナットnを締め付ければよい。
【0031】
(変更例)
図示した実施の形態において、第1受容部10及び第2受容部20は反力治具gの上面g1から下面g2へ貫通する貫通部(貫通孔)とした。第1受容部10及び第2受容部20はボルトの軸へ通されたナットを受容することができることを条件に、第1受容部10及び第2受容部20は、反力梅治具gの下面g2において上方へ凹む凹部として形成してもよい。
また、第1部分1及び第2部分2へ上記はみ出し部分5,6を設けるのに代えて、平面視において連結部分3が羽根状部分k13aを迂回するよう曲がった状態に形成されたものとしてもよい。
【0032】
また、反力治具gは、前述の平面視において、輪郭を略長方形とするものに限定するものではなく、略正方形や略台形や、その他の略多角形、或いは全体として曲線的な輪郭を備えるものや、上記以外の曲線と直線とが複合したものであってもよい。
また、反力治具gを取り付ける継手部ktの十字状断面部k13の羽根状部分k13aについても、
図2(B)及び
図3(B)へ示すものと異なり、平面視略矩形の第1端板k11の一対の対角線の夫々と一致する向きに設けられたものとして実施できる。
【0033】
(総括)
本発明は、油圧トルクレンチと別体に形成され、各鋼管の柱の継手部へ着脱自在に装着し、油圧トルクレンチへ確実に反力を与える反力治具gの提供を目的とする。
即ち、本発明に係る反力治具gは、第1部分1へ隣接ナットn2を受容する第1受容部を備え、第2部分2へ副隣接ナットn3を受容する第2受容部20を備え、第1部分1と第2部分2との間には連結部分3と共に、柱k1の十字状断面部k13の羽根状部分k13aを避ける後退部分4が設けられている。第1部分1の第2部分2と反対側に、締付対象ナットn1と隣接ナットn2との間の羽根状部分k13aよりもりも柱k1の径外方向へ延設された延設部7が備えられ、延設部7が油圧トルクレンチmの当接部m5と当接する反力発生面8を備える。
【符号の説明】
【0034】
b ボルト
g 反力治具
g1 (反力治具gの)上面
g2 (反力治具gの)下面
g3 (反力治具gの一方の)長辺
g4 (反力治具gの他方の)長辺
g5 (反力治具gの一方の)短辺
g6 (反力治具gの他の一方の)短辺
k1 (第1)柱
k2 (第2)柱
kt 継手部
k10 第1柱本体
k11 第1端板
k12 端部
k20 第2柱本体
k13 十字状断面部
k13a 羽根状部分
k14 (第1端板k11の)孔
k21 第2端板
k22 (第2端板k21の)孔
m 油圧トルクレンチ
m1 ケーシング
m2 回転体
m3 レンチ穴
m4 油圧供給部
m5 当接部
n ナット
n1 締付対象ナット
n2 隣接ナット
n3 副隣接ナット
n4 非関与ナット
r (第1受容部10及び第2受容部の)内径
1 第1部分
2 第2部分
3 連結部分
4 後退部分
5 (第1)はみ出し部分
6 (第2)はみ出し部分
7 延設部
8 反力発生面
10 第1受容部
20 第2受容部
40 ガイド面
71 回り込み部分