IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 渡辺パイプ株式会社の特許一覧

特開2023-167433ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス
<>
  • 特開-ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス 図1
  • 特開-ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス 図2
  • 特開-ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス 図3
  • 特開-ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス 図4
  • 特開-ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス 図5
  • 特開-ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167433
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ビニールハウスの巻上軸用のホールド及びビニールハウス
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20231116BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
A01G9/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078614
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000218362
【氏名又は名称】渡辺パイプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 昌義
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029GA10
(57)【要約】
【課題】巻上軸の保持力の向上と耐久性の高い巻上軸のホールドを開発する。
【解決手段】軸収容部と取付部を備えたビニールハウスの開閉用の巻上軸を受け止めるホールドであって、取付部は鉛直であり、軸収容部は、取付部の下端から屈曲して下方が開放された収容空間を形成するように外側に湾曲した湾曲部と、湾曲部から垂下した下垂部を備えており、少なくとも取付部と軸収容部との屈曲部に金属板がインサートされた合成樹脂製であるホールド。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸収容部と取付部を備えたビニールハウスの開閉用の巻上軸を受け止めるホールドであって、
取付部は鉛直であり、軸収容部は、取付部の下端から屈曲して下方が開放された収容空間を形成するように外側に湾曲した湾曲部と、湾曲部から垂下した下垂部を備えており、
少なくとも取付部と軸収容部との屈曲部に金属板がインサートされた合成樹脂製であることを特徴とするホールド。
【請求項2】
軸収容部の下垂部は軟質材で形成されており、他の部分の樹脂は硬質材で形成されていることを特徴とする請求項1記載のホールド。
【請求項3】
下垂部の先端の内側に案内テーパが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のホールド。
【請求項4】
巻上軸がビニールハウスの側面の側面シートを巻き上げて、開口部を開放するビニールハウスにおいて、
巻上機に近い側の柱材あるいは横架材であって、巻上軸の下端位置よりも若干上部の高さの位置に請求項1又は2に記載されたホールドが取り付けられていることを特徴とするビニールハウス。
【請求項5】
少なくとも、ホールドを取り付けるアーチ部材の柱材あるいは横架材が断面八角形の管材であることを特徴とする請求項4記載のビニールハウス。
【請求項6】
さらに、中間部、反対側の妻部側の柱材あるいは横架材にもホールドが取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のビニールハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用温室に関する技術である。特に、温室の被覆材であるシートを温度調節のため開閉するシートの巻上に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
一般にビニールハウスでは、ハウス内の温度、湿度を調整して植物の適正な育成に対応させるためにビニールハウスの側面に換気装置を設けているのが普通である。
【0003】
ビニールハウスの側面における換気装置としては、図1に示すように、ビニールハウス4の側面に張った側面シート3の下端を巻上軸2に巻き付け、地上近辺から上方に向けて側面シートを巻き上げることによりビニールハウスの側面に換気用の開口部53を形成するものである。
【0004】
巻上軸2は、ビニールハウスの隅部に起立するガイドロッド23に上下移動自在に取り付けた手動又は電動の回転駆動装置を介して巻上機22を回転駆動し、シートを巻上軸2に巻き取ることにより開口部53を開き、巻き戻すことにより開口部53を閉じるものである。
【0005】
側面シート3は強風にさらされてバタつき、巻上軸2が大きく動揺することがある。
このため従来から、側面シートの外面を抑える押さえバンド62を設けて、シートのバタつきや巻上軸の動揺を防止していた。
しかしながら、近年ビニールハウスがますます大型化してきたことに伴い、巻上軸が長尺化している。このため、押さえバンド62のみの拘束力ではシートのバタつきや巻上軸の動揺を効果的に防止することが困難となってきた。
【0006】
これを改善するため、いくつかの提案がなされている。
特許文献1(実開昭63-095458号公報)には、ヒンジを介してシート巻上軸を着脱自在とする構造が開示されている(図5(c)参照)。この構造では、強風に対応する大きな負荷がヒンジに集中して、ヒンジが開いて巻上軸が外れてしまう危険がある。
【0007】
また、巻上軸103を固定するためには、個々のホルダのつかみ片を回動して開口部を開いた状態で巻上軸を収容し、その後つかみ片を回動して閉鎖する作業の必要がある。複数のホルダが設けられていると煩わしく、操作性が著しく低い。
特許文献2(実開平05-043842号公報)には、温室の縦部材に固着された支持環に挿通された長尺のフック取付け軸に多数のフックが取付けられた巻上軸ホルダが提案されている(図5(d)参照)。このホルダは、シートを一旦は弛ませておいて、フックを巻上軸にかぶさるように回動し、巻上軸を回動してシートを巻取り、シートに張力が加わるようにしてフックに当接させるものであり、必ずしも操作性が良いとはいえない。
また、多数のフックが取付けられた長尺のフック取付軸は、温室の縦部材に固着された支持環に挿通された状態にあって、直接温室の部材に固定されておらず浮動状態にあるので、フックの温室に対する固定度はさほど強くない。
【0008】
特許文献3(特開平09-037659号公報)には、後片部が取付レールに嵌込まれる波型スプリングである線状材の前片を折り曲げて形成したホルダと、この先端の係合孔に相通した連結パイプで形成された、下方に解放された収容部に巻上軸を収容する巻上軸保持機構が開示されている(図5(b)参照)。このホルダでは、固定力が弱く、そのため、ビニールハウスの外周に巻締自在に設けられたフィルム押さえ紐を利用して、押さえている。
特許文献4(特許第5798464号公報)には、緊締具により温室の棟方向部材に取付けられる下端開放の取付部と、該取付部の一方の開口端縁より延在するシート巻上軸収容部とから構成される温室シートバタつき防止部材において、前記シート巻上軸収容部は、外面に沿って巻戻されているシート巻上軸を室外方向かつ下方向に案内するとともに、再度巻取られたシートの緊張力によりその内面に前記シート巻上軸を抱え込むシートバタつき防止部材が提案されている。このシートバタつき防止部材は、取付部がコ字状に屈曲しており、棒状の定着材に上から引っかけて後面を緊締具で締め付ける構造であり、外側に湾曲した巻上軸収容部は取付部から同一厚みで屈曲成形されている(図5(a)参照)。
【0009】
出願人は、骨格となるパイプ材やハウス内の構造を工夫して、大型の栽培温室を実現してきている。例えば、特許文献5(特許第6247046号公報)には八角形のアーチ材、柱材、特許文献6(特許第6621588号公報)には、クロスタイバーの配置などに関する提案をしている。
近頃のビニールハウスの大型化に伴い、強風の影響が大きくなり、ビニールハウスの変形、倒壊の危険が増している。ビニールハウスの骨格構造も強化されているが、ハウス内に風が入ると、ハウス内の内圧が高くなり、シートのめくりあがりなどからハウスの損壊につながることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭63-095458号公報
【特許文献2】実開平05-043842号公報
【特許文献3】特開平09-037659号公報
【特許文献4】特許第5798464号公報
【特許文献5】特許第6247046号公報
【特許文献6】特許第6621588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの問題点を解決すること目的としてなされたものであって、巻上軸の保持力の向上と耐久性の高い巻上軸のホールドを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ビニールハウスの大型化に伴い、風圧に対する巻上軸の固定を強化するものである。
1.軸収容部と取付部を備えたビニールハウスの開閉用の巻上軸を受け止めるホールドであって、
取付部は鉛直であり、軸収容部は、取付部の下端から屈曲して下方が開放された収容空間を形成するように外側に湾曲した湾曲部と、湾曲部から垂下した下垂部を備えており、
少なくとも取付部と軸収容部との屈曲部に金属板がインサートされた合成樹脂製であることを特徴とするホールド。
2.軸収容部の下垂部は軟質材で形成されており、他の部分の樹脂は硬質材で形成されていることを特徴とする項1.記載のホールド。
3.下垂部の先端の内側に案内テーパが形成されていることを特徴とする1.又は2.記載のホールド。
4.巻上軸がビニールハウスの側面の側面シートを巻き上げて、開口部を開放するビニールハウスにおいて、
巻上機に近い側の柱材あるいは横架材であって、巻上軸の下端位置よりも若干上部の高さの位置に1.又は2.に記載されたホールドが取り付けられていることを特徴とするビニールハウス。
5.少なくとも、ホールドを取り付けるアーチ部材の柱材あるいは横架材が断面八角形の管材であることを特徴とする4.記載のビニールハウス。
6.さらに、中間部、反対側の妻部側の柱材あるいは横架材にもホールドが取り付けられていることを特徴とする5.記載のビニールハウス。
【発明の効果】
【0013】
1.本発明の巻上軸を固定するホールドは、巻上軸の保持力が向上し、耐久性の高い巻上軸のホールドを実現することができた。取付部と軸収容部との間の屈曲部に金属板をインサートしたので、金属板の弾力性、しなりが樹脂製のホールドに加味されて、屈曲部に集中する応力に対応することができる。
ビニールハウスの大型化に伴って巻上軸は大きな衝撃を受けることになり、樹脂製では耐衝撃性に問題があり、金属板の曲げ加工製では衝撃で変形するので対応できなかった。本発明では、大型化したビニールハウスにも十分に対応することができるホールドを開発することができた。
ビス穴の位置まで金属板を配置すると、ビス穴の耐久性が向上し、ビスによる固定を強固にすることができる。ビス穴の周囲が樹脂のみであると、巻上軸を押さえているホールドに掛かる応力がビス穴に集中するので、樹脂にひびが発生したりするが、金属板によって補強される。
金属板は、軸収容部においては、湾曲部上部側まで配置されているのが望ましい。軸収容部に収容された巻上軸が風などに揺られても、軸収容部で揺動に合わせて、金属板のしなりで押さえて安定させることができる。なお、金属部材のみでは、金属疲労や変形が発生するが、本ホールドは、樹脂と金属を複合させたので、金属の弾力性と樹脂の剛性が発揮される。
2.軸収容部の下垂部を軟質材(弾力性材、エラストマー)で形成することにより、収容された巻上軸が風で揺られても、衝撃を吸収でき、巻上軸のあばれを抑えることができる。その結果、巻上軸の飛び出し的な外れが抑制される。また、風圧が高くなるに従い、巻上軸はガタガタという振動が発生し、共振的に振幅が大きくなることがあるが、軟質材に巻上軸が接触することで初期の振動を抑えることができるので、巻上軸の安定性が向上する。
3.下垂部の先端の内側に案内テーパを形成することにより、巻上軸を軸収容部の内側に引込やすくなる。巻上軸を一旦、ホールドより下げると巻上軸はビニールハウス側に寄るので、ホールドの先端のテーパで案内されやすくなる。
4.本発明のホールドを取り付けたビニールハウスは、巻上軸の保持安定性が向上する。大型のビニールハウスの風害による損壊が抑えられる。
5.本出願人が開発したビニールハウス用の断面八角形の管材を用いることにより、本発明のホールドを面タッチで管材に固定することができる。そして、ビスを上下あるいは左右に複数本打つことができるので、固定度が向上し、大型のビニールハウスに適している。
ホールドは柱材の下の位置までビスで強固に固定することができ、そして、水平に設置されている裾シートを固定するシート定着部材より下にホールドを取り付けることができるので、側面シートを下まで下げて、裾シートとオーバーラップする幅を大きくすることができ、風の吹込みの防止効果が高くなる。
6.本ホールドをビニールハウスの中間や巻上機と反対側の妻側などにも設けることにより、巻上軸を押さえる箇所が増えて、巻上軸の安定性の向上、および、大型のビニールハウスに対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の巻き上げホールドをビニールハウスに適用した実施例の概略斜視図である。
図2図2は、本発明の巻き上げホールドの図である。(a)斜視図、(b)断面図を示す。
図3図3は、巻き上げホールドの取り付け状態を示す図である。(a)柱部に取り付けた例、(b)横架材に取り付けた例を示す。
図4図4は、巻上軸をホールドに固定する工程を示す図である。(a)巻上軸巻き下げ操作状態を示す図、(b)巻上軸が最下端から逆方向に巻き上がる状態図、(c)巻上軸が最下端から逆向きに巻き上がってホールドに収容される経過を示す図、(d)ビニールハウス断面を示す図である。
図5図5は、従来例を示す図である。
図6図6は、大型ビニールハウスに適した八角材と構造図である。(a)は本出願人が特許文献5に提案した八角パイプの例、(b)は本出願人が特許文献6に提案した大型ビニールハウスの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ビニールハウスの大型化に伴い、風圧に対する巻上軸の固定を強化するものである。ビニールハウスは側面シートを開閉して、温度コントロールする構成が多い。側面シートの開閉は、側面シートを巻上軸に巻き付けながら、巻上軸を上下させることで、行っている。巻上軸は側面長手方向に設けられているので、ビニールハウスの大型化に伴い、長くなる。本発明は、この大型化したビニールハウスの巻上軸を安定して固定できるホールド及びこのホールドを備えたビニールハウスである。
【0016】
本発明の一実施態様を示す図1~4を参照して、本発明の巻上軸のホールドについて説明する。
図2にホールド1を示す。(a)は斜視図、(b)は断面図を示す。
ホールド1は、軸収容部11と取付部12を備えた板体で形成されている。
取付部12は平板であって、軸収容部11の一端から屈曲して立ち上がっている。取付部12は、ホールド1をビニールハウスの柱材や横架材に取りつける部分である。取付部12には、横方向にビス打ち用のビス溝12aが設けられている。ビス溝12aは、ビスを打つ時の案内となる。ビス溝12aは、一本に限らず複数設けることができる。
【0017】
軸収容部11の一方側は、下方が開放された収容空間13を形成するように外側に張り出して、円弧状の湾曲部14、湾曲部14から下方に下垂部15がある。下垂部15の下縁部16には、内側に案内テーパ16aを設けることができる。
ホールドの基礎材料は合成樹脂であり、全体に同一の樹脂材料を用いることもできるが、弾力性のある軟質性樹脂(エラストマーなど)で下垂部を形成することができる。
【0018】
軸収容部11と取付部12の接続部である屈曲部17aの前後にわたって、薄い金属板19がインサートされている。金属板19は屈曲部17a付近に配置されるが、取付部12では、ビスを打つ箇所まで配置することが好ましい。軸収容部11側では、屈曲部17aから延長された傾斜部17に配置され、湾曲部14の手前まで配置することができる。
【0019】
ホールド1の材料は、全体として合成樹脂製であり、屈曲部からその前後に金属板がインサートされている。
樹脂材料は、硬質系の樹脂が用いられ、例えば、ABS樹脂やその改質材であるAES樹脂などを使用することができる。
下垂部に軟質性樹脂を用いる場合は、オレフィン系か、スチレン系のエラストマー系素材を用いる。
【0020】
金属板は、ステンレス(SUS430など)などの鉄系材料を用いることができる。
金属板は、インサートできる厚さであれば、厚みに制限はなく、箔状、シート状、薄板状などを使用できる。
【0021】
サイズとしては、軸収容部は巻上軸を収容できる大きさを備え、取付部は柱などに取り付けることができる寸法を備えていればよい。また、幅寸法Wは、面的に巻上軸を押さえることができるように、10cm以上とし、好ましくは20~40cm程度とする。それ以上長くすることもできるが、シートの上げ下げに伴って、巻上軸に癖がついて曲がった巻上軸の収まりが悪く、使い勝手が低下し、作業の効率性が落ちることがある。
例えば、取付部の高さは10~60mm程度、30mm程度でもよい。軸収容部11の張り出し量は、巻上軸を収容できる長さとする。張り出しは、巻上軸の太さに応じて設定するが、40mm前後が多い。屈曲部から下垂部の先端までは50mm前後であり、これも巻上軸の太さに応じて、直径よりも大きく設定することが好ましい。
厚みは、2~7mm程度に成形することができる。
樹脂成型は、射出成型、押し出し成形など公知の手段を用いることができ、金属板のインサート方法も公知の手段を用いることができる。
【0022】
本発明のホールドは、樹脂に金属をインサートして、樹脂の剛性と金属のしなりを組み合わせて、ホールドに耐久性と巻上軸に対する高い保持力を持たせるものである。金属板が屈曲部にインサートされていることにより、屈曲部に集中する応力が金属のしなりで吸収され、樹脂の破損が防止される。薄い金属板を曲げ成形したホールドでは、収容された巻上軸の揺動による衝撃によって、変形してしまう恐れや金属疲労による破損の恐れがあるが、樹脂の剛性により変形を防止することができる。
金属板のインサートを取付部のビス打ち位置まで伸ばすと、ビス穴に集中する応力に対する抵抗性が向上する。また、軸収容部は湾曲部の上部まで金属板をインサートすると軸収容部が補強される。
ビニールハウスの大型化に伴って、風力によって巻上軸は大きな衝撃を受けるが、本発明のホールドは安定した保持力を発生することができる。
【0023】
さらに、軸収容部の下垂部を軟質材で形成することにより、収容された巻上軸が風で揺られても、衝撃を吸収でき、巻上軸のあばれを抑えることができる。その結果、巻上軸の下方からの飛び出し的な外れが抑制される。また、風圧が高くなるに従い、巻上軸はガタガタという振動が発生し、共振的に振幅が大きくなることがあるが、軟質材に巻上軸が接触することで初期の振動を抑えることができるので、巻上軸の安定性が向上する。
そして、下垂部の先端の内側に案内テーパを形成することにより、巻上軸を軸収容部の内側に引き込みやすくなる。巻上軸を一旦、ホールドより下げると巻上軸はビニールハウス側に寄るので、ホールドの先端のテーパで案内されやすくなる。巻上軸がホールドに入らないときは、作業員が軸収容部に誘導する必要があるが、本発明ではこのような作業を減少させることができる。特に、ビニールハウスが大型化して、巻上軸が長くなると巻き癖がつきやすく、ホールドに巻上軸が収まりにくくなるので、テーパによる誘導の有用性は高くなる。
本発明のホールドを取り付けたビニールハウスは、巻上軸の保持の安定性が向上するので、大型のビニールハウスの風害による損壊を抑えることができる。
【0024】
本出願人が開発したビニールハウス用の断面八角形の管材を用いることにより、本発明のホールドを面タッチで管材に固定することができる。ホールドは柱材、横架材に取り付けることができる。八角形の管材を用いた柱材では、ホールドを止める高さに制限はなく、裾シートとオーバーラップする幅を大きくする高さにホールドを設けると、風の吹込みの防止効果が高くなる。
そして、ビスを上下あるいは左右に複数本打つことができるので、固定度を向上させることができ、大型のビニールハウスを実現することができる。ビスは、左右あるいは上下に打つことができ、3本以上にして、並列にビス打ちすると、ビス2本よりも、ねじれや、よじれに対して、抵抗力が向上する。
本ホールドをビニールハウスの中間や巻上機と反対側の妻側などにも設けることにより、巻上軸を押さえる箇所が増えて、巻上軸の安定性の向上、および、大型のビニールハウスに適応できる。
【0025】
図1に本発明の巻上ホールドをビニールハウスに適用した例を示す。
ビニールハウス4は、単棟式の典型的な例である。
柱部43と屋根アーチ42からなるアーチ部材41を棟方向に多数並べ、棟方向に棟材などの桁材(横架材)を設けてアーチ部材を連結し、前後に妻部51を形成して骨格が形成される。この骨格の表面に、シートを張ってビニールハウスが形成される。シートは、屋根シート33、側面シート3、裾シート32、サイドシート31などで形成される。これらのシートは、例えば、シート定着材61の溝にスプリング材で固定される。側面シート3は、開閉可能となるように、上辺が固定され、下辺が巻上軸2に巻き付けられている。
巻上軸2は、妻側に設けられている巻上機22で回転操作される。巻上機22は、垂直に立てられたガイドロッド23に案内されて、シートの巻取りにしたがって上がり、巻き戻しによって下がることとなる。ガイドロッドは、必要に応じて、反対の妻側にも設けられることがある。
ビニールハウス4の側面には押さえバンド62が、上下に設けたバンドフック63に掛けて、ジグザグに張設されている。側面シート3は押さえバンド62と柱部43の間を上下する。側面シート3が巻き戻された状態で、押さえバンド62が側面シート3を押さえているので、通常状態では、風がビニールハウスの中に入り込むことは無い。バンドフック63は、上は母屋材45、下は裾シートを押さえているシート定着材61に取り付けられている。
【0026】
本例では、巻上軸2を巻き戻した状態で、巻上軸を押さえることができるように、ホールド1を柱部43あるいは横架材に取り付けている。取り付け箇所は、棟の長手方向に複数設けることができる。特に、端側を安定させることが重要なので、ガイドロッド23に近い(妻部に近い)箇所に取り付ける。
ホールド1は、ハウスの側面から出っ張っているので、巻上軸をホールド1より下にいったん下げて、少し巻き上げると、巻上軸がホールドの軸収容部で形成される収容空間に納まる。
ただし、巻上軸が長く、シートが不均等に巻き付くと、巻上軸がゆがむことがあるが、本発明のホールドは、連続体ではなく、間隔を置いて配置されるので、それぞれの部分で巻上軸を湾曲空間に押し込むことができる。
【0027】
妻部51には、妻部の骨格に妻シート34が張設されており、中央に開閉扉52が設置されて、ビニールハウスへの出入口5が設けられる。
【0028】
図3に巻上ホールドの取付状態を示す。
(a)は、ホールド1を柱部43に取り付けビス64で取り付けた例である。柱部43は、八角形の管材(特許文献5、6参照)を用いている。八角形の管材は、板状である取付部12と面接合するので、安定した取付状態となる。柱部43に取り付けると取付高さの自由度が高い。裾シートの上辺よりも下側にホールドを取り付けると、巻上軸の下端位置(ほぼ、ホールドの高さ)が裾シートの上辺よりも低くなり、下げた状態の側面シートと裾シートとのオーバーラップが大きくなり、ビニールハウス内への風の入り込み防止機能を大きくすることができる。
(b)は、ホールド1を横架材に取り付けビス64で取り付けた例である。柱部と同様に八角形の管材を横架材に用いている。横架材は水平方向に配置されており、ホールドをビニールハウスの長手方向に自由に取り付けることができる。また、ビスを横に離して打つことができ、ホールドの安定性は向上する。
【0029】
図4に巻上軸をホールドに固定する工程を示している。
図4(a)は、巻上機22のハンドルを回すと巻上機22はガイドロッド23に沿って上昇し、巻上軸2が側面シートを巻きあげて、ビニールハウスの側面には開口部53が形成されて、室内の温度が過度に上がらないように換気される状態となる。巻上軸2の外面は、押さえバンド62に抑えられている。この状態から、巻上軸2を巻き戻して、開口部53を閉鎖する動作を行う。
図4(b)は、ホールド1よりも下まで巻上軸2を巻き戻した状態から、少し巻き上げて、ホールド1を収める操作を示している。巻上軸2を巻き戻した状態で、側面シートの巻き付き状態が最初の状態に近くなるので、巻き癖は解消されやすい。しかし、巻き戻した状態で、巻上軸にゆがみなどが生じている場合は、シートの巻き付き癖を直すと、ホールドへの収納や側面シートの開閉をスムーズに行うことができる。なお、巻上機22の操作で、ホールドに巻上軸を収納できない場合は、手で巻上軸をホールドに収める操作を行う。
図4(c)は、図4(b)に示される、巻上軸をホールドに固定する操作を拡大した図である。巻上軸2をホールド1より下方に巻き戻すと、巻上軸2は柱部43の外面に沿って下がり、柱部から飛び出ているホールドの軸収容部11を乗り越えて、柱部の表面に当接する(左図)。柱部の表面に当接後、さらにそのまま下げる方向に回転させる。そうすると巻上軸2に固定している側面シート3の下限まで来るので、さらに同方向に巻き続けると、逆巻状態となり巻上軸2が巻き上がっていく。そのまま巻上機22を回転すると、巻上げられて、収容空間へ巻上軸が収まることとなる(右図)。なお、巻き上げは、反対方向に巻上機22を回すことにより、巻上軸2は側面シート3を巻き付けながら上方へ上がり、開口部53を設けることができる。
特に、ホールドの先端に案内テーパが設けられていると、巻上軸の収容空間への誘導がスムーズに行われる。
図4(d)は、(a)~(c)の状態を断面図として表している。巻上軸2は、ホールド1のところが巻上軸下位置2aとなり、上側のバンドフックが取り付けられている上側のシート定着材61a付近が巻上軸上位置2bとなる。この間が側面シート3が上下する開口高さ53hとなり、開口部53が形成される。なお、シート定着材61a、61b、61cはそれぞれの位置で、屋根シート、側面シート、裾シートなどのシート材を定着している。
【0030】
本発明のホールドの使用は次のようにまとめることができる。
このホールドの軸収容部11は、図4(a)に示すように、巻上機22を回転して温室の側面の柱に沿って巻上軸2に巻き付いている側面シート3を巻戻す。巻上軸2の右回転を継続して完全に側面シート3を巻き戻し、巻上軸2をそのまま回転すると逆に側面シートは巻上軸2に巻き取られて、巻き上がり、図4(b)に示す状態となって側面シート3の緊張力により軸収容部11の内側の湾曲した収容空間13に巻上軸2が抱え込まれる。
このように巻上軸2を回転することで、巻上軸2は軸収容部11内に自動的に抱え込まれることとなるから、簡単な操作により短時間で温室に固定することが可能である。
巻上軸2が軸収容部11に収容されることによって、開口部53は緊張した側面シート3をもって完全に閉鎖される。
なお、巻上軸2は、上記した回転駆動装置内の逆回転防止機構やロックによってその高さ位置が維持され、下方への移動を防止される。そして、本ホールドが設けられているので、強い風を受けても、巻上軸の固定が安定し、風がビニールハウス内に入り込んで、風圧で内部からビニールが崩壊することを抑制できる。さらに、裾部シート32下端部近傍と屋根シート33下端部の棟方向部材に所定間隔で設けられたバンドフックを介して張られているバンドがあるのでシートの巻上軸2は更に安定する。
【符号の説明】
【0031】
1 ホールド
11 軸収容部
12 取付部
12a ビス溝
13 収容空間
14 湾曲部
15 下垂部
16 下縁部
16a 案内テーパ
17 傾斜部
17a 屈曲部
19 金属板

2 巻上軸
22 巻上機
23 ガイドロッド

3 側面シート
31 サイドシート
32 裾シート
33 屋根シート
34 妻シート

4 ビニールハウス
41 アーチ部材
42 屋根アーチ
43 柱部
45 母屋材

5 出入口
51 妻部
52 開閉扉
53 開口部
53h 開口高さ

61 シート定着材
62 押さえバンド
63 バンドフック
64 取り付けビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6