(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167440
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】塗装装置及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 12/12 20060101AFI20231116BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20231116BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20231116BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231116BHJP
B05B 15/00 20180101ALI20231116BHJP
【FI】
B05B12/12
B05D1/02 Z
B05D3/06 Z
B05D3/00 D
B05B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078627
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390028495
【氏名又は名称】アネスト岩田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑田 透
(72)【発明者】
【氏名】大澤 健一
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CB03
4D073CB15
4D073CB21
4D075AA01
4D075AA02
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075BB48Z
4D075BB57Y
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075EA05
4F035AA03
4F035BB02
4F035BB04
4F035BB07
4F035BB32
(57)【要約】
【課題】容易に被塗布部とスプレーガンの距離を適切な距離に保った状態で塗装することができ、より均一な塗装をすることができる塗装装置及び塗装方法を提供する。
【解決手段】被塗布部101に液体を噴射して塗布する塗装装置1であって、液体を噴射する噴射ノズル11を備えるスプレーガン10と、被塗布部101までの距離を測定する距離計20と、を有し、距離計20は、被塗布部101にレーザー光線を照射して被塗布部101までの距離を測定する距離測定手段21と、距離測定手段21により測定された距離を表示する表示手段25と、を有する塗装装置1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布部に液体を噴射して塗布する塗装装置であって、
前記液体を噴射する噴射ノズルを備えるスプレーガンと、
前記被塗布部までの距離を測定する距離計と、を有し、
前記距離計は、
前記被塗布部にレーザー光線を照射して前記被塗布部までの距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段により測定された距離を表示する表示手段と、を有する塗装装置。
【請求項2】
前記液体を前記被塗布部に向けて噴射するように配置された前記スプレーガンに、前記表示手段及び前記被塗布部を略同時に視認可能となる配置に前記距離計を装着する装着手段と、
前記装着手段により前記スプレーガンに装着された前記距離計の前記距離測定手段から照射される前記レーザー光線を屈折させて前記被塗布部に照射する屈折手段と、を有する
請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記装着手段は、前記距離測定手段により測定される前記被塗布部までの距離と前記噴射ノズルの先端から前記被塗布部までの距離が等しくなる配置に前記距離計を前記スプレーガンに装着する
請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記被塗布部に一定距離の間隔で表示され、前記噴射ノズルを所定の距離単位で移動するための基準となるマークを表示するマーク表示手段を有する
請求項1に記載の塗装装置。
【請求項5】
一定時間の間隔で発信され、前記噴射ノズルを所定の速度で移動するための基準となる報知をする報知手段を有する
請求項1又は請求項4に記載の塗装装置。
【請求項6】
前記液体は、光触媒である
請求項1に記載の塗装装置。
【請求項7】
被塗布部に液体を噴射して塗布する塗装方法であって、
前記液体を噴射する噴射ノズルを備えるスプレーガンにより前記液体を噴射する噴射工程と、
前記被塗布部までの距離を測定する距離計が備える距離測定手段により前記被塗布部にレーザー光線を照射して前記被塗布部までの距離を測定する距離測定工程と、
前記距離測定工程により測定された距離を前記距離計が備える表示手段に表示する表示工程と、を有する塗装方法。
【請求項8】
前記液体を前記被塗布部に向けて噴射するように配置された前記スプレーガンに、前記表示手段及び前記被塗布部を略同時に視認可能となる配置に前記距離計を装着する装着工程と、
前記装着工程で前記スプレーガンに装着された前記距離計の前記距離測定手段から照射される前記レーザー光線を屈折させて前記被塗布部に照射する屈折工程と、を有する
請求項7に記載の塗装方法。
【請求項9】
前記装着工程は、前記距離測定手段により測定される前記被塗布部までの距離と前記噴射ノズルの先端から前記被塗布部までの距離が等しくなる配置に前記距離計を前記スプレーガンに装着する
請求項8に記載の塗装方法。
【請求項10】
前記被塗布部に一定距離の間隔で表示され、前記噴射ノズルを所定の距離単位で移動するための基準となるマークを表示するマーク表示工程を有する
請求項7に記載の塗装方法。
【請求項11】
一定時間の間隔で発信され、前記噴射ノズルを所定の速度で移動するための基準となる報知をする報知工程を有する
請求項7又は請求項10に記載の塗装方法。
【請求項12】
前記噴射工程は、前記液体である光触媒を噴射する
請求項7に記載の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗装装置及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、均一に薄膜の塗装をするための技術が開示されている。特許文献1に開示されている塗装機は、建築外壁を塗装するために使用する塗装機であって、塗料を噴射する塗料吐出口を有するスプレーガンと、スプレーガンに装着され、且つ塗料の噴射方向に向けてレーザービームを照射する少なくとも2つのレーザービーム照射部と、を備え、レーザービーム照射部は、建築外壁とスプレーガンとの塗装距離を一定に保つために、建築外壁表面でレーザービームが2点交差して塗装距離を目視で確認可能となるようにレーザービームを照射するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術は、建築外壁表面でレーザービームが2点交差することを確認しながら塗装作業を行うことで、建築外壁とスプレーガンとの塗装距離を一定に保つものである。しかしながら、2つのレーザービームが完全に2点交差した状態を維持しながら塗装作業を行うことは非常に難しい。また、2つのレーザービームが2点交差する状態を維持できない場合に、建築外壁表面で2つのレーザービームの照射位置がどの程度開くのが許容範囲であるかを把握するのが難しい。このため、上記のような従来技術では、スプレーガンと建築外壁表面の距離を適切な距離に保った状態で塗装するのが難しいとの問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、容易に被塗布部とスプレーガンの距離を適切な距離に保った状態で塗装することができ、より均一な塗装をすることができる塗装装置及び塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下によって把握される。
(1)本発明の塗装装置は、被塗布部に液体を噴射して塗布する塗装装置であって、前記液体を噴射する噴射ノズルを備えるスプレーガンと、前記被塗布部までの距離を測定する距離計と、を有し、前記距離計は、前記被塗布部にレーザー光線を照射して前記被塗布部までの距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段により測定された距離を表示する表示手段と、を有する。
(2)上記(1)において、前記液体を前記被塗布部に向けて噴射するように配置された前記スプレーガンに、前記表示手段及び前記被塗布部を略同時に視認可能となる配置に前記距離計を装着する装着手段と、前記装着手段により前記スプレーガンに装着された前記距離計の前記距離測定手段から照射される前記レーザー光線を屈折させて前記被塗布部に照射する屈折手段と、を有する。
(3)上記(2)において、前記装着手段は、前記距離測定手段により測定される前記被塗布部までの距離と前記噴射ノズルの先端から前記被塗布部までの距離が等しくなる配置に前記距離計を前記スプレーガンに装着する。
(4)上記(1)において、前記被塗布部に一定距離の間隔で表示され、前記噴射ノズルを所定の距離単位で移動するための基準となるマークを表示するマーク表示手段を有する。
(5)上記(1)又は(4)において、一定時間の間隔で発信され、前記噴射ノズルを所定の速度で移動するための基準となる報知をする報知手段を有する。
(6)上記(1)において、前記液体は、光触媒である。
(7)本発明の塗装方法は、被塗布部に液体を噴射して塗布する塗装方法であって、前記液体を噴射する噴射ノズルを備えるスプレーガンにより前記液体を噴射する噴射工程と、前記被塗布部までの距離を測定する距離計が備える距離測定手段により前記被塗布部にレーザー光線を照射して前記被塗布部までの距離を測定する距離測定工程と、前記距離測定工程により測定された距離を前記距離計が備える表示手段に表示する表示工程と、を有する。
(8)上記(7)において、前記液体を前記被塗布部に向けて噴射するように配置された前記スプレーガンに、前記表示手段及び前記被塗布部を略同時に視認可能となる配置に前記距離計を装着する装着工程と、前記装着工程で前記スプレーガンに装着された前記距離計の前記距離測定手段から照射される前記レーザー光線を屈折させて前記被塗布部に照射する屈折工程と、を有する。
(9)上記(8)において、前記装着工程は、前記距離測定手段により測定される前記被塗布部までの距離と前記噴射ノズルの先端から前記被塗布部までの距離が等しくなる配置に前記距離計を前記スプレーガンに装着する。
(10)上記(7)において、前記被塗布部に一定距離の間隔で表示され、前記噴射ノズルを所定の距離単位で移動するための基準となるマークを表示するマーク表示工程を有する。
(11)上記(7)又は(10)において、一定時間の間隔で発信され、前記噴射ノズルを所定の速度で移動するための基準となる報知をする報知工程を有する。
(12)上記(7)において、前記噴射工程は、前記液体である光触媒を噴射する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、容易に被塗布部とスプレーガンの距離を適切な距離に保った状態で塗装することができ、より均一な塗装をすることができる塗装装置及び塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る塗装装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスプレーガンを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスプレーガンを示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る屈折手段40の配置を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るマークの配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る塗装装置1を示す斜視図である。
図1を用いて、塗装装置1について説明する。
【0011】
図1は、被塗物100の被塗布部101に塗装装置1を用いて液体を塗布する状態を示している。
図1において被塗物100は平面状の板であり、被塗布部101は平面状の面である場合を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、被塗物100は建築物であって、被塗布部101はその外壁であってもよい。
【0012】
塗装装置1は、液体を噴射する噴射ノズル11を備えるスプレーガン10と、被塗布部101にレーザー光線を照射して被塗布部101までの距離を測定する距離計20と、を有している。距離計20は、
図1に示すようにスプレーガン10に装着されていてもよく、スプレーガン10に装着されないでスプレーガン10と別に設けられていてもよい。
【0013】
また、塗装装置1は、被塗布部101に一定距離の間隔でマークMを表示するマーク表示手段50を有するようにしてもよい。このマークMは、噴射ノズル11を所定の距離単位で移動するための基準となるものである。
図1において、10個のマーク表示手段50が、スタンド55に立設したポール56に上下方向に並べて固定されている。それぞれのマーク表示手段50は、例えば、レーザーダイオードを光源として被塗布部101の表面に縦ラインLと横ライン(マークM)が交差した十文字のクロスラインを照射して表示するようにしてもよい。
図1において、この10本の縦ラインLが一直線に重なるようにし、更に、10本の横ライン(マークM)が一定距離の間隔になるように、それぞれのマーク表示手段50をポール56に位置決めして固定した状態を示している。
【0014】
図1において、マークMは、クロスラインの横ラインとしているが、これに限定されるものではない。例えば、マークMが縦横の格子状のラインであってもよい。すなわち、マークMを縦と横に一定距離の間隔(縦と横が同じ一定距離の間隔でもよく、縦と横がそれぞれ異なる一定距離の間隔でもよい)で表示するようにしてもよく、縦ラインのみを横方向に一定距離の間隔で表示するようにしてもよい。また、マークMは、
図1では実線の直線で示しているが、これに限定されず、例えば、破線や一点鎖線や2点鎖線でもよく、また、曲線でもよい。更に、マークMは、
図1で示すような線状であることに限定されず、例えば、横ラインのマークMに代えて、所定距離の間隔で表示された点であってもよい。マークMが点の場合には、横方向と縦方向のそれぞれに一定距離の間隔(縦と横が同じ一定距離の間隔でもよく、縦と横がそれぞれ異なる一定距離の間隔でもよい)で表示するようにしてもよい。
【0015】
図2、
図3は、本発明の実施形態に係るスプレーガン10及びスプレーガン10に装着される距離計20を示す斜視図である。
図2はスプレーガン10の後方(液体の噴射方向と逆側)から見た斜視図であり、
図3はスプレーガン10の前方(液体の噴射方向の側)から見た斜視図である。
図2、
図3を用いて、スプレーガン10及び距離計20について説明する。
【0016】
スプレーガン10は、前方に噴射ノズル11を備えており、噴射ノズル11を挟むように2個の突起が設けられた空気キャップ12が設けられている。この空気キャップ12の2個の突起の内側面には噴射ノズル11から噴射する液体の中心に向けて空気を噴射する空気穴12aが設けられている。この空気穴12aから噴射する空気の量を変えることで、液体の塗布パターンを広くしたり狭くしたり、塗布パターンの形状を丸くしたり細長くしたりするなどの調整をすることができる。
【0017】
スプレーガン10は、空気ニップル16を有しており、図示しないエアコンプレッサーに接続される。そして、エアコンプレッサーからこの空気ニップル16を経て空気キャップ12に空気が供給される。
【0018】
スプレーガン10は、液体(塗料)供給方式が重力式の場合を示している。すなわち、液体が収納された液体ボトル15から液体の重量により噴射ノズル11に液体が供給されるようになっている。そして、噴射レバー14を引くと液体が噴射ノズル11から噴射され、同時に空気キャップ12の空気穴12aから空気が噴射され、所定の塗布パターンで液体が被塗布部101に塗布される。
【0019】
スプレーガン10は、重力式に限定されず、例えば、下方に液体ボトル15が設けられてサイフォンにより液体を吸い上げる吸上式であってもよく、ポンプや圧送タンクで液体を加圧してスプレーガン10に供給する圧送式であってもよい。
【0020】
スプレーガン10から噴射される液体は、様々な塗料であってもよく、例えば、光触媒であってもよい。光触媒は、光が照射されると触媒作用を発揮する材料で、酸化分解、超親水性の特徴があり、この特徴を利用して防汚、抗菌、消臭・脱臭、防曇、大気浄化などを目的に使用される。光触媒を均等に隙間なく塗布して均一な薄膜でコーティングすることで、様々な有機物(カビ・細菌・ウイルス等)を分解し、汚れやニオイの除去や抗菌作用が得られる。このような均一な薄膜のコーティングを形成するためには、塗り重ねを少なくし、かつ、液体を均一に塗布することが必要とされる。
【0021】
そして、スプレーガン10の噴射ノズル11から噴射される液体は、噴射ノズル11の先端からの距離が大きくなるのに伴い広がる。このため、この距離が変わると、被塗布部101の単位面積当たりに塗布される液体の量が変わり液体の厚さが変化する。すなわち、この距離が小さくなると被塗布部101に塗布される液体の厚さは厚くなり、この距離が大きくなると被塗布部101に塗布される液体の厚さは薄くなる。したがって、均一な塗布をするためには、スプレーガン10の噴射ノズル11の先端から被塗布部101までの距離の許容される範囲について予め適切な距離を定めておき、この適切な距離に保った状態で塗装を行うことが非常に重要である。すなわち、この適切な距離は、均一な塗装が可能となる所定の範囲の距離であり、全く変動のない完全に一定の距離である必要はない。また、均一な塗装は、全くばらつきのない完全に均一であることに限定されず、塗装の目的に応じた所定の許容範囲の均一な塗装であってもよい。
【0022】
塗装装置1において、スプレーガン10には、距離計20が装着されている。距離計20は、被塗布部101にレーザー光線を照射して被塗布部101までの距離を測定する距離測定手段21と、距離測定手段21により測定された距離を表示する表示手段25と、を備えている。
【0023】
したがって、塗装装置1は、表示手段25により被塗布部101までの距離を確認しながら塗布作業を行うことができるため、容易に被塗布部101とスプレーガン10の噴射ノズル11の先端の距離(ガン距離)を適切な距離に保った状態で塗装することができ、このようにすることで、より均一な塗装をすることができる。
【0024】
表示手段25には、距離測定手段21により測定された測定結果、すなわち、測定された距離が表示される。このため、予め許容される距離の範囲を定めておき、表示手段25により許容される距離の範囲内になるようにしてスプレーガン10を移動して塗布作業を行うことで、許容される距離の範囲に保つことが明確かつ容易にできる。
【0025】
図2に示す距離計20において、距離測定手段21は、測定用のレーザー光線を発光する発光部22と、発光部22から発光され、被塗布部101に照射されて反射するレーザー光線を受光する受光部23を備えるようにしてもよい。そして、距離測定手段21は、発光部22から発光された測定用のレーザー光線が被塗布部101に照射され、被塗布部101により反射されたレーザー光線を受光部23が受光することで、受光部23による発光と受光部23による受光に関連する時間やレーザー光線の位相などを測定し、これらを用いて、距離測定手段21から被塗布部101までの距離を算出するようにしてもよい。
【0026】
表示手段25は、例えば、液晶ディスプレイでもよく、有機ELディスプレイでもよい。また、表示手段25は、距離測定手段21により測定された被塗布部101までの距離をリアルタイムで表示するようにしてもよい。この場合、被塗布部101に対するスプレーガン10の相対位置が変わることで、発光部22から発光するレーザー光線の照射位置が変わり、測定する距離も変わるため、表示手段25は、常に更新された測定結果、すなわち、その時点における被塗布部101までの距離を表示する。
【0027】
図2、
図3に示すように、距離計20は、装着手段30によってスプレーガン10に装着されるようにしてもよい。そして、
図3に示すように、ネジ31によって距離計20を装着手段30に固定するようにしてもよい。
【0028】
装着手段30は、
図1に示すように、液体を被塗布部101に向けて噴射するように配置されたスプレーガン10に、表示手段25及び被塗布部101を略同時に視認可能となる配置に距離計20を装着するようにしてもよい。
【0029】
このようにすることで、被塗布部101において液体を塗布する箇所までの距離を表示手段25で視認しながら、略同時に、被塗布部101において液体を塗布する箇所を視認することができる。すなわち、被塗布部101において液体を塗布する箇所と、表示手段25において被塗布部101までの距離の両方を視界に入れ、それらを確認しながら塗布作業を行うことができる。したがって、容易に被塗布部101までの距離を適切な距離に保ちながら、正確に目標とする位置に向けて塗布作業を行うことができる。
【0030】
距離計20において、距離測定手段21の発光部22、受光部23や表示手段25の配置は様々である。したがって、距離計20において、発光部22が測定用のレーザー光線を発光する方向と表示手段25の配置の関係も様々である。
【0031】
図2に示す例では、距離測定手段21の発光部22、受光部23と表示手段25が、距離計20において異なる面に配置されている。この場合に、
図1に示すように、液体を被塗布部101に向けて噴射するように配置されたスプレーガン10に、表示手段25及び被塗布部101を略同時に視認可能となる配置に距離計20を装着すると、表示手段25は、被塗布部101、すなわち、スプレーガン10の噴射ノズル11と反対方向に向けた配置となる。そうすると、距離測定手段21の発光部22、受光部23は、
図2に示す例では、上方向を向くため、この状態では被塗布部101までの距離を測定することができない。
【0032】
このような場合に、塗装装置1は、装着手段30によりスプレーガン10に装着された距離計20の距離測定手段21の発光部22から照射されるレーザー光線を屈折させて被塗布部101に照射する屈折手段40を有するようにしてもよい。このようにすることで、距離計20において発光部22が測定用のレーザー光線を発光する方向と表示手段25の配置の関係が様々であっても、表示手段25及び被塗布部101を略同時に視認可能となる配置において、屈折手段40の作用により、発光部22から発光された測定用のレーザー光線を屈折させて被塗布部101に照射し、被塗布部101までの距離を測定できるようになる。この際、被塗布部101に照射されて反射したレーザー光線を、同様に、屈折手段40により屈折させて受光部23で受光することで、被塗布部101までの距離が測定されるようにしてもよい。
【0033】
屈折手段40は、例えば、
図3に示すように、鏡であってもよく、あるいは、プリズムなどであってもよく、これらを組み合わせた構成にしてもよい。また、屈折手段40は、
図3に示すように、装着手段30に設けられた取付部33に取り付けるようにしてもよい。
【0034】
なお、スプレーガン10を挟んで一方の側に距離計20を配置し、他方の側に液体ボトルを配置するようにしてもよい。例えば、
図2に示すように、スプレーガン10及びスプレーガン10に装着された距離計20において、比較的大きな重量を占める液体ボトル15を右側に配置し、距離計20を液体ボトル15の反対側である左側に配置するようにしてもよい。これにより、左右の重量のバランスが良くなり、スプレーガン10の操作がし易くなる。
【0035】
図4は、本発明の実施形態に係る屈折手段40の配置を示す概略図である。
図4を用いて、屈折手段40とスプレーガン10の配置と作用について説明する。
【0036】
図4において、スプレーガン10の噴射ノズル11の先端と被塗物100の被塗布部101の距離はeである。また、距離計20の距離測定手段21の発光部22から照射されるレーザー光線(2点鎖線)を屈折手段40により屈折させて、被塗布部101に照射する。この場合の距離測定手段21の発光部22及び受光部23と被塗布部101の距離は、
図4において水平方向の距離はf、垂直方向の距離はgである。
【0037】
そして、距離測定手段21により測定される被塗布部101までの距離と噴射ノズル11の先端から被塗布部101までの距離が等しくなる配置に、装着手段30が距離計20をスプレーガン10に装着するようにしてもよい。すなわち、
図4において、e=f+gとなるようにしてもよい。
【0038】
このようにすることで、距離計20の距離測定手段21により測定された距離を噴射ノズル11の先端から被塗布部101までの実際の距離と等しくして、この距離を距離計20の表示手段25に表示することがきる。すなわち、噴射ノズル11の先端から被塗布部101までの実際の距離を距離計20の表示手段25で確認しながら液体の塗布作業を行うことができるため、より明瞭、容易かつ正確に被塗布部101とスプレーガン10の噴射ノズル11の先端の距離(ガン距離)を予め定めた所定の範囲において一定に保った状態、すなわち、適切な距離に保った状態、で塗装することができ、より均一な塗装をすることができる。
【0039】
図5は、本発明の実施形態に係るマークMの配置を示す概略図である。
図5を用いて、マークMの配置とマークMを利用した塗布作業の概要について説明する。
【0040】
図5において、被塗物100の被塗布部101には、マーク表示手段50が表示する縦ラインLが一直線に重なるようにし、更に、7本の横ラインであるマークM1からマークM7が一定距離の間隔mで配置されている。
【0041】
スプレーガン10の噴射ノズル11から液体を噴射して被塗布部101に形成される液体の塗布パターンPの上下方向の長さを高さaとする。この塗布パターンPの横方向の中心を被塗布部101の左端に合わせ塗布パターンPの下端をマークM2に合わせた塗布パターンP1を被塗布部101の一方の端である左端から他方の端である右端に向けて順次連続的に移動して塗布していく。そして、塗布パターンPの横方向の中心が被塗布部101の右端になる位置の塗布パターンP2まで塗布すると、被塗布部101には、上下方向の長さが高さaであり、下端がマークM2に合致した塗布膜A1(
図5において、上下を破線で挟まれた部分)が形成される。以下において、塗布パターンP1から塗布パターンP2までのように、一定方向(
図5に示す例では、水平方向)に連続的に移動して塗布する作業を連続塗布作業とする。
【0042】
次に、横方向の中心が被塗布部101の右端にあり、下端をマークM2に合わせた塗布パターンP2から、下端をマークM3に合わせた塗布パターンP3に移動する。以下において、塗布パターンP2から塗布パターンP3へのように、ある連続塗布作業から次の連続塗布作業に移動して連続塗布作業を切り替える作業を切り替え作業とする。なお、この切り替え作業では、液体の塗布は停止してもよい。
【0043】
そして、塗布パターンP3を被塗布部101の右端から左端に向けて順次移動して塗布していき、横方向の中心が被塗布部101の左端になる位置の塗布パターンP4まで塗布する連続塗布作業を行うと、被塗布部101には、上下方向の長さが高さaであり、下端がマークM3に合致した塗布膜A2(
図5において、上下を2点鎖線で挟まれた部分)が形成される。
【0044】
このような塗布作業を、
図5において、塗布パターンPの下端をマークM1に合わせた塗布作業からマークM7に合わせた塗布作業までを繰り返すことで、被塗布部101を順次塗布するものである。
【0045】
すなわち、マーク表示手段50により被塗布部101に一定距離の間隔mでマークMを表示し、このマークMを基準にし、このマークMに合わせて塗布パターンPが塗布されるように、スプレーガン10の噴射ノズル11を、被塗布部101の一端から他端まで
図5において水平方向に移動しながら連続塗布作業を行う。そして、被塗布部101の他端において、あるマークMに塗布パターンPの下端を合わせて噴射する位置から次のマークMに塗布パターンPの下端を合わせて噴射する位置にスプレーガン10の噴射ノズル11を移動する切り替え作業を行う。そして、再び、スプレーガン10の噴射ノズル11を、被塗布部101の他端から一端まで
図5において水平方向に移動しながら連続塗布作業を行う。このように、連続塗布作業と切り替え作業を順次繰り返して、塗布作業を行う。
【0046】
このように被塗布部101に一定距離の間隔で表示されるマークMをマーク表示手段50で表示し、このマークMを基準にしてスプレーガン10の噴射ノズル11を移動することで、塗布パターンPの大きさや形状に合わせて噴射ノズル11を所定の距離単位で、所定の距離ずつ移動することができる。そして、切り替え作業において、スプレーガン10の噴射ノズル11が
図5において垂直方向に移動するピッチ(ガンピッチ)を容易に一定に保つことができるため、塗布ムラが抑制され、容易に被塗布部101をより均一に塗装することができる。
【0047】
被塗布部101に表示された7本の横ラインであるマークM1からマークM7は、一定距離の間隔mで配置されている。
図5に示す例では、高さaは、間隔mより差分bだけ大きくなっている。すなわち、高さa=間隔m+差分bになっている。
【0048】
そして、下端がマークM2に合致した塗布膜A1は、マークM2より間隔mだけ上に表示されたマークM1より、更に、差分bだけ上側にはみ出した状態になる。
【0049】
同様に、下端がマークM3に合致した塗布膜A2は、マークM3より間隔mだけ上に表示されたマークM2より、更に、差分bだけ上側にはみ出した状態になる。
【0050】
したがって、下端がマークM2に合致した塗布膜A1と下端がマークM3に合致した塗布膜A2により、液体が重ねて塗布された塗布膜Bが形成される。このように塗布パターンPの高さaをマークMの間隔mより差分bだけ大きくして液体が重ねて塗布される塗布膜Bを設けることで、液体が塗布されない塗布漏れや塗布パターンPの外縁における塗布ムラの発生を抑制することができる。
【0051】
また、例えば、塗布膜A1を塗布する場合に、
図5において水平方向の連続塗布作業において、塗布パターンP1から塗布パターンP2まで同じ速度で移動することで、塗装ムラの発生を抑制し、より均一な塗装にすることができる。このため、塗装装置1は、一定時間の間隔で繰り返し発信され、スプレーガン10の噴射ノズル11を所定の速度で移動するための基準となる報知をする図示しない報知手段を有するようにしてもよい。そして、一定時間の間隔で発信されるこの報知に合わせて、例えば、塗布パターンP1から塗布パターンP2に、被塗布部101への液体の噴霧の方向を移動して連続塗布作業を行うことで、同じ速度での移動が可能となり、より均一な塗装にすることができる。
【0052】
図5において、被塗布部101の幅Wを所定の同じ速度で移動するために、幅Wを移動するのに適した報知の所定回数を予め定めておく。そして、その所定回数の報知が発信されるのに合わせて、塗布パターンP1から塗布パターンP2に移動するように連続塗布作業を行う。このようにすることで、スプレーガン10の噴射ノズル11が
図5における水平方向に移動する速度(ガン速)を容易に一定に保つことができ、一定の速度で移動しながら連続塗布作業を行うことができるため、塗布ムラを抑制し、容易に被塗布部101をより均一に塗装することができる。
【0053】
図5に示す例では、マークMは、上下方向に一定距離の間隔mで横ラインが表示されているが、更に、横方向に一定距離の間隔で表示される縦ラインを加えて格子状のマークMにしてもよい。そして、例えば、1回の報知で経過する時間に縦ラインの1つの間隔を移動するように報知を発信する一定時間の間隔と縦ラインの一定距離の間隔を合わせておくことで、より容易に同じ速度でスプレーガン10の噴射ノズル11を横方向に移動する連続塗装作業ができるようになる。
【0054】
なお、上記の一定時間の間隔で発信されスプレーガン10の噴射ノズル11を所定の速度で移動するための基準となる報知は、例えば、音による報知であってもよく、光による報知であってもよく、振り子のように動作する物による報知であってもよく、音や光や動作する物などの組み合わせによる報知であってもよい。また、光による報知は、一定時間の間隔で発信されて照射され、被塗布部101に投影されるようにしてもよい。音による報知や動作する物による報知は、例えば、メトロノームであってもよい。
【0055】
次に、本発明の実施形態に係る塗装方法について説明する。
【0056】
本発明の実施形態に係る塗装方法は、被塗布部101に液体を噴射して塗布する塗装方法であって、液体を噴射する噴射ノズル11を備えるスプレーガン10により液体を噴射する噴射工程と、被塗布部101までの距離を測定する距離計20が備える距離測定手段21により被塗布部101にレーザー光線を照射して被塗布部101までの距離を測定する距離測定工程と、距離測定工程により測定された距離を距離計20が備える表示手段25に表示する表示工程と、を有する塗装方法である。
【0057】
本発明の実施形態に係る塗装方法は、更に、液体を被塗布部101に向けて噴射するように配置されたスプレーガン10に、表示手段25及び被塗布部101を略同時に視認可能となる配置に距離計20を装着する装着工程と、装着工程でスプレーガン10に装着された距離計20の距離測定手段21から照射されるレーザー光線を屈折させて被塗布部101に照射する屈折工程と、を有するようにしてもよい。
【0058】
本発明の実施形態に係る塗装方法は、更に、装着工程が、距離測定手段21により測定される被塗布部101までの距離と噴射ノズル11の先端から被塗布部101までの距離が等しくなる配置に距離計20をスプレーガン10に装着するようにしてもよい。
【0059】
本発明の実施形態に係る塗装方法は、更に、被塗布部101に一定距離の間隔で表示され噴射ノズル11を所定の距離単位で移動するための基準となるマークMを表示するマーク表示工程を有するようにしてもよい。
【0060】
本発明の実施形態に係る塗装方法は、更に、一定時間の間隔で発信され噴射ノズル11を所定の速度で移動するための基準となる報知をする報知工程を有するようにしてもよい。
【0061】
本発明の実施形態に係る塗装方法は、更に、噴射工程が、液体である光触媒を噴射するようにしてもよい。
【0062】
以上説明したように、本開示によれば、容易に被塗布部101とスプレーガン10の距離を適切な距離に保った状態で塗装することができ、より均一な塗装をすることができる塗装装置1及び塗装方法を提供することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る塗装装置1及び塗装方法によれば、被塗布部101とスプレーガン10の噴射ノズル11の先端の距離(ガン距離)を容易に適切な距離に保つことができ、スプレーガン10の噴射ノズル11が
図5における水平方向に移動する速度(ガン速)及びスプレーガン10の噴射ノズル11が
図5における垂直方向に移動するピッチ(ガンピッチ)を容易に一定に保つことができ、このようにすることで、容易に被塗布部101に、より均一な塗装をすることができる。
【0064】
なお、以上の説明において「一定」は、所定の誤差を含む範囲での「一定」であってもよく、「全く変動のない完全に一定」に限定されるものではない。
【0065】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を実施しても良い。
【0066】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0067】
1 塗装装置
10 スプレーガン
11 噴射ノズル
12 空気キャップ
12a 空気穴12a
14 噴射レバー
15 液体ボトル
16 空気ニップル
20 距離計
21 距離測定手段
22 発光部
23 受光部
25 表示手段
30 装着手段
31 ネジ
33 取付部
40 屈折手段
50 マーク表示手段
55 スタンド
56 ポール
100 被塗物
101 被塗布部
M マーク