(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167445
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20231116BHJP
H01L 21/283 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L21/283 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078634
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘晃
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB05
4M104BB09
4M104BB14
4M104BB17
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD08
4M104DD16
4M104DD17
4M104DD34
4M104DD68
4M104DD79
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4M104EE06
4M104EE12
4M104EE14
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF08
4M104FF17
4M104GG12
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GK04
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR01
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5F102GS04
5F102GT01
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC19
5F102HC24
(57)【要約】
【課題】リーク電流を抑制できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、第1開口が形成された第1絶縁膜と、前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極と、前記第1絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられ、第1開口が形成された第1絶縁膜と、
前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極と、
前記第1絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、
前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜は窒化膜であり、
前記第2絶縁膜は酸化膜である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2絶縁膜の厚さは、3nm以上である請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜の上面に接する請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
断面視で、前記第2絶縁膜は3nm以上の範囲にわたって前記第1絶縁膜の上面に接する請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられ、第1開口及び第2開口が形成された第1絶縁膜と、
前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極と、
前記第2開口を通じて前記半導体層にショットキー接触するゲート電極と、
前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面を覆い、断面視で、3nm以上の範囲にわたって前記第1絶縁膜の上面に接する第2絶縁膜と、
を有し、
前記第1絶縁膜は窒化膜であり、
前記第2絶縁膜は酸化膜である半導体装置。
【請求項7】
半導体層の上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜に第1開口を形成する工程と、
前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上にゲート電極を形成する工程と、
前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2絶縁膜を形成する工程は、前記オーミック電極の前記側面を酸化する工程を有する請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体層の上に窒化シリコン膜を形成し、窒化シリコン膜に開口を形成し、開口内にオーミック電極を形成する半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体装置の微細化が進められており、微細化に伴ってリーク電流が大きくなるおそれがある。
【0005】
本開示は、リーク電流を抑制できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、第1開口が形成された第1絶縁膜と、前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極と、前記第1絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リーク電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、第1開口が形成された第1絶縁膜と、前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極と、前記第1絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜と、を有する。
【0011】
オーミック電極のゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆う第2絶縁膜が第1絶縁膜に連なるため、オーミック電極は第2絶縁膜によって第1絶縁膜の上面から電気的に絶縁されている。従って、オーミック電極とゲート電極との間での第1絶縁膜の上面を経路とするリーク電流を抑制できる。
【0012】
〔2〕 〔1〕において、前記第1絶縁膜は窒化膜であり、前記第2絶縁膜は酸化膜であってもよい。この場合、第1絶縁膜により半導体層の表面を保護しやすく、また、第2絶縁膜をオーミック電極の酸化により形成できる。
【0013】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記第2絶縁膜の厚さは、3nm以上であってもよい。第2絶縁膜が厚いほど、リーク電流を抑制しやすい。
【0014】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜の上面に接してもよい。この場合、オーミック電極とゲート電極との間の第1絶縁膜の上面を経路とするリーク電流に対して電気抵抗を高くしやすく、リーク電流を抑制しやすい。
【0015】
〔5〕 〔4〕において、断面視で、前記第2絶縁膜は3nm以上の範囲にわたって前記第1絶縁膜の上面に接してもよい。第2絶縁膜が第1絶縁膜の上面に接する範囲が広いほど、リーク電流を抑制しやすい。
【0016】
〔6〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられ、第1開口及び第2開口が形成された第1絶縁膜と、前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極と、前記第2開口を通じて前記半導体層にショットキー接触するゲート電極と、前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面を覆い、断面視で、3nm以上の範囲にわたって前記第1絶縁膜の上面に接する第2絶縁膜と、を有し、前記第1絶縁膜は窒化膜であり、前記第2絶縁膜は酸化膜である。
【0017】
オーミック電極のゲート電極側の側面を覆う第2絶縁膜が、断面視で、3nm以上の範囲にわたって第1絶縁膜の上面に接するため、オーミック電極は第2絶縁膜によって第1絶縁膜の上面から電気的に絶縁されている。従って、オーミック電極とゲート電極との間での第1絶縁膜の上面を経路とするリーク電流を抑制できる。
【0018】
〔7〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体層の上に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜に第1開口を形成する工程と、前記第1開口を通じて前記半導体層にオーミック接触するオーミック電極を形成する工程と、前記第1絶縁膜の上にゲート電極を形成する工程と、前記オーミック電極の前記ゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、前記第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜を形成する工程と、を有する。
【0019】
オーミック電極のゲート電極側の側面の少なくとも一部を覆い、第1絶縁膜に連なる第2絶縁膜が形成されるため、オーミック電極は第2絶縁膜によって第1絶縁膜の上面から電気的に絶縁される。従って、オーミック電極とゲート電極との間での第1絶縁膜の上面を経路とするリーク電流を抑制できる。
【0020】
〔8〕 〔7〕において、前記第2絶縁膜を形成する工程は、前記オーミック電極の前記側面を酸化する工程を有してもよい。この場合、第2絶縁膜を形成しやすい。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0022】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態はGaN系高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)を含む半導体装置に関する。
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態に係る半導体装置1は、基板10と、積層構造体20とを有する。基板10は、例えば(0001)面を有するSiC基板であり、積層構造体20の積層方向は例えば[0001]方向である。積層構造体20は基板10の上に設けられている。積層構造体20は、核生成層12と、チャネル層14と、バリア層16と、キャップ層18とを含む。積層構造体20は半導体層の一例である。
【0024】
核生成層12は基板10の上に形成されている。例えば、核生成層12はAlN層であり、核生成層12の厚さは5nm~20nmである。核生成層12はチャネル層14に対するシード層として機能する。
【0025】
チャネル層14は核生成層12の上にエピタキシャル成長により形成されている。例えば、チャネル層14はアンドープGaN層であり、チャネル層14の厚さは500nmである。チャネル層14は電子走行層として機能する。
【0026】
バリア層16はチャネル層14の上にエピタキシャル成長により形成されている。例えば、バリア層16はAlGaN層、InAlN層又はInAlGaN層であり、バリア層16の厚さは5nm~30nmである。バリア層16のバンドギャップは、チャネル層14のバンドギャップよりも大きい。バリア層16がAlGaN層である場合、バリア層16のAl組成は例えば0.15以上0.35以下である。バリア層16の導電型は、n型又はアンドープである。バリア層16とチャネル層14とは互いに接してもよく、バリア層16とチャネル層14との間に図示しないスペーサ層が介在してもよい。バリア層16とチャネル層14との間には、これらの間の格子定数の違いから歪みが生じる。このため、バリア層16とチャネル層14との界面近傍であってチャネル層14側の領域にピエゾ電荷に由来する二次元電子ガス(2DEG)が生じ、チャネル領域が形成される。バリア層16は電子供給層として機能する。
【0027】
キャップ層18はバリア層16の上にエピタキシャル成長により形成されている。例えば、キャップ層18はGaN層であり、キャップ層18の厚さは5nmである。例えば、キャップ層18の導電型はn型である。
【0028】
半導体装置1はパッシベーション膜26を有する。例えば、パッシベーション膜26は窒化シリコン膜等の窒化膜であり、パッシベーション膜26の厚さは10nm~100nmである。パッシベーション膜26に、ソース開口26S、ドレイン開口26D及びゲート開口26Gが形成されている。ソース開口26S、ドレイン開口26D及びゲート開口26Gにおいてパッシベーション膜26から積層構造体20が露出する。具体的に、ソース開口26S及びドレイン開口26Dにおいては、キャップ層18が除去されてバリア層16が露出する。ゲート開口26Gにおいてはキャップ層18が露出する。パッシベーション膜26は第1絶縁膜の一例である。ソース開口26S及びドレイン開口26Dは第1開口の一例であり、ゲート開口26Gは第2開口の一例である。
【0029】
半導体装置1は、ソース電極22、ドレイン電極24及びゲート電極28を有する。ソース電極22及びドレイン電極24は、基板10の面に沿って順に並んでいる。
【0030】
ソース電極22は、パッシベーション膜26のソース開口26Sを覆っており、ソース開口26Sを介してバリア層16にオーミック接触している。ドレイン電極24は、パッシベーション膜26のドレイン開口26Dを覆っており、ドレイン開口26Dを介してバリア層16にオーミック接触している。ソース電極22及びドレイン電極24は、積層構造体20側から順に設けられたチタン(Ti)層及びアルミニウム(Al)層を熱処理することにより形成されている。ソース電極22及びドレイン電極24はオーミック電極の一例である。
【0031】
ソース電極22は、ソース開口26S内の下側部分221と、下側部分221上の上側部分222とを有する。下側部分221は、ソース開口26Sの側壁面に接する。上側部分222は一対の側面22a及び22bを有しており、平面視で側面22a及び22bはソース開口26Sの側壁面の内側に位置する。側面22a及び22bはパッシベーション膜26の上面26xに略垂直である。従って、上側部分222の断面形状は略矩形状である。
【0032】
ドレイン電極24は、ドレイン開口26D内の下側部分241と、下側部分241上の上側部分242とを有する。下側部分241は、ドレイン開口26Dの側壁面に接する。上側部分242は一対の側面24a及び24bを有しており、平面視で側面24a及び24bはドレイン開口26Dの側壁面の内側に位置する。側面24a及び24bはパッシベーション膜26の上面26xに略垂直である。従って、上側部分242の断面形状は略矩形状である。
【0033】
ゲート電極28は、積層構造体20上においてソース電極22とドレイン電極24との間に設けられている。ゲート電極28は、パッシベーション膜26のゲート開口26Gを覆っており、ゲート開口26Gを介してキャップ層18にショットキー接触している。ゲート電極28は、例えば、積層構造体20側から順に設けられたニッケル(Ni)層、金(Au)層及びタンタル(Ta)層を有する。
【0034】
ソース電極22の側面22aは側面22bよりもゲート電極28及びドレイン電極24側にあり、ドレイン電極24の側面24aは側面24bよりもゲート電極28及びソース電極22側にある。
【0035】
半導体装置1は、絶縁膜32及び34を有する。絶縁膜32はソース電極22の側面22a及び22bを覆う。絶縁膜34はドレイン電極24の側面24a及び24bを覆う。絶縁膜32及び34はパッシベーション膜26に接し、パッシベーション膜26に連なる。絶縁膜32はソース電極22の上面をも覆い、絶縁膜34はドレイン電極24の上面をも覆う。平面視で、絶縁膜32の側面はソース開口26Sの側壁面と同じ位置にあるか、ソース開口26Sの側壁面の内側に位置し、絶縁膜34の側面はドレイン開口26Dの側壁面と同じ位置にあるか、ドレイン開口26Dの内側に位置する。例えば、絶縁膜32及び34は酸化アルミニウム膜等の酸化膜であり、絶縁膜32及び34の厚さは3nm以上20nm以下である。絶縁膜32及び34は第2絶縁膜の一例である。
【0036】
半導体装置1は、絶縁膜30を有する。絶縁膜30はゲート電極28を覆う保護膜であり、絶縁膜30は、Siを含む絶縁性材料からなり、一例ではSiN膜、SiO2膜又はSiON膜である。例えば、絶縁膜30の厚さは200nm~400nmである。
【0037】
次に、第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。
図2~
図10は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0038】
まず、
図2に示すように、基板10上に、有機金属化学気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法を用いて、複数の窒化物半導体層を含む積層構造体20を成長する。具体的には、まず、核生成層12を基板10上に成長する。核生成層12がAlN層である場合、原料ガスは例えばTMA(トリメチルアルミニウム)及びNH
3(アンモニア)であり、成長温度は例えば1100℃である。次に、核生成層12上にチャネル層14を成長する。チャネル層14がGaN層である場合、原料ガスは例えばTMG(トリメチルガリウム)及びNH
3であり、成長温度は例えば1050℃である。続いて、チャネル層14上にバリア層16を成長する。バリア層16がAlGaN層である場合、原料ガスは例えばTMA、TMG及びNH
3であり、成長温度は例えば1050℃である。続いて、バリア層16上にキャップ層18を成長する。キャップ層18がGaN層である場合、原料ガスは例えばTMG及びNH
3であり、成長温度は例えば1050℃である。
【0039】
次に、
図3に示すように、積層構造体20の上面に接するパッシベーション膜26を、減圧CVD法又はプラズマCVD法を用いて成膜する。例えば、減圧CVD法を用いる場合、成膜温度は600℃~850℃とし、成長圧力は例えば10Pa~50Paとする。減圧CVD法により形成されるパッシベーション膜26は、プラズマCVD法により形成される場合と比較して緻密な固い膜となる。減圧CVD法によりパッシベーション膜26の一部(下層部)を形成した後、プラズマCVD法によりパッシベーション膜26の残部(上層部)を形成してもよい。減圧CVD法によりパッシベーション膜26を形成する場合、原料ガスとしては、アンモニアガス及びジクロロシラン(SiH
2Cl
2)を用いる。
【0040】
次に、
図4に示すように、パッシベーション膜26の上に、フォトレジスト52と、フォトレジスト54とをこの順で塗布する。例えば、フォトレジスト54の材料はポリメチルグルタルイミド(PMGI)であり、フォトレジスト54はi線レジストである。次に、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト54にソース用の開口54S及びドレイン用の開口54Dを形成し、フォトレジスト52にソース用の開口52S及びドレイン用の開口52Dを形成する。開口54S及び52Sを通じてパッシベーション膜26の一部が露出し、開口54D及び52Dを通じてパッシベーション膜26の他の一部が露出する。
【0041】
次に、
図5に示すように、フォトレジスト52及び54をマスクとして、反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)によりパッシベーション膜26及び積層構造体20にソース開口26S及びドレイン開口26Dを形成する。例えば、パッシベーション膜26のエッチングにはフッ素(F)を含む反応性ガスが用いられ、積層構造体20のエッチングには塩素(Cl)を含む反応性ガスが用いられる。
【0042】
次に、
図6に示すように、蒸着法により、ソース開口26Sの内側及びドレイン開口26Dの内側に金属層62を形成する。金属層62は、ソース開口26S及びドレイン開口26Dから上方に突出するように形成する。金属層62は、フォトレジスト54の上面、開口54Sの側壁面及び開口54Dの側壁面にも付着する。金属層62は、例えば、基板10側から順に形成されるTi層と、Al層とを含む。例えば、Ti層の厚さは30nmであり、Al層の厚さは300nmである。
【0043】
次に、
図7に示すように、フォトレジスト52及び54を除去する。フォトレジスト54の除去に伴って、金属層62のフォトレジスト54に付着した部分も除去される。その一方で、ソース開口26S及びドレイン開口26Dの内側には、金属層62が残存する。つまり、リフトオフが行われる。この結果、ソース電極22がソース開口26S内に形成され、ドレイン電極24がドレイン開口26D内に形成される。ソース電極22は、ソース開口26S内の下側部分221と、下側部分221上の上側部分222とを有する。ドレイン電極24は、ドレイン開口26D内の下側部分241と、下側部分241上の上側部分242とを有する。上側部分222がソース開口26Sの側壁面と略面一になってもよく、上側部分242がドレイン開口26Dの側壁面と略面一になってもよい。このような形状とするために、フォトレジスト52及び54の形状を調整したり、エッチングによりソース開口26S及びドレイン開口26Dを広げたりしてもよい。
【0044】
次に、
図8に示すように、ソース電極22及びドレイン電極24の表面を酸化することで、絶縁膜32及び34を形成する。ソース電極22及びドレイン電極24の酸化は、例えばプラズマ酸化により行われる。絶縁膜32はソース電極22の側面22a及び22bを覆い、絶縁膜34はドレイン電極24の側面24a及び24bを覆う。絶縁膜32及び34はパッシベーション膜26に接し、パッシベーション膜26に連なる。
【0045】
次に、熱処理によってソース電極22及びドレイン電極24を合金化(アロイ)する。合金化の温度は、例えば600℃とする。この結果、ソース開口26S及びドレイン電極24が積層構造体20にオーミック接触するようになる。
【0046】
次に、
図9に示すように、パッシベーション膜26にゲート開口26Gを形成する。ゲート開口26Gの形成では、ゲート開口26Gに対応する開口を有するレジストマスクをパッシベーション膜26上に形成し、該レジストマスクを介してパッシベーション膜26をエッチングする。例えば、パッシベーション膜26のエッチングにはフッ素を含む反応性ガスが用いられる。その後、レジストマスクを除去する。次に、ゲート開口26Gを通じて積層構造体20にショットキー接触するゲート電極28を形成する。ゲート電極28は、例えば、基板10側から順に形成されるNi層と、Au層と、Ta層とを含む。
【0047】
次に、
図10に示すように、パッシベーション膜26の上にゲート電極28を覆う絶縁膜30を形成する。絶縁膜30は、例えばプラズマCVD法により形成される。
【0048】
その後、必要に応じて配線等を形成する。このようにして、第1実施形態に係る半導体装置1を製造することができる。
【0049】
第1実施形態では、ソース電極22の側面22aの上に絶縁膜32が形成され、ドレイン電極24の側面24aの上に絶縁膜32が形成されており、絶縁膜32及び34がパッシベーション膜26に連なる。このため、ソース電極22及びドレイン電極24は絶縁膜32によってパッシベーション膜26の上面26xから電気的に絶縁されている。また、絶縁膜32及び34が形成される前の状態と比較すると、絶縁膜32の厚さの分だけソース電極22とゲート電極28との間の距離が大きく、絶縁膜34の厚さの分だけドレイン電極24とゲート電極28との間の距離が大きくなっている。従って、ソース電極22とゲート電極28との間でのパッシベーション膜26の上面26xを経路とするリーク電流を抑制できる。同様に、ドレイン電極24とゲート電極28との間でのパッシベーション膜26の上面26xを経路とするリーク電流を抑制できる。
【0050】
また、パッシベーション膜26が窒化膜であるため、パッシベーション膜26により半導体の積層構造体20の表面を保護しやすい。また、絶縁膜32及び34が酸化膜であるため、絶縁膜32及び34をオーミック電極の酸化により形成できる。
【0051】
上述のように、絶縁膜32及び34の厚さは、例えば3nm以上である。アルミニウムの表面には自然酸化膜が形成されるが、自然酸化膜の厚さは高々2nm程度であり、自然酸化膜は絶縁膜とて機能しない。絶縁膜32及び34の厚さは、好ましくは5nm以上であり、更に好ましくは10nm以上である。絶縁膜32及び34が厚いほど、リーク電流を抑制しやすい。絶縁膜32の厚さは、側面22aの上では側面22aに垂直な方向での厚さであり、側面22bの上では側面22bに垂直な方向での厚さである。絶縁膜34の厚さは、側面24aの上では側面24aに垂直な方向での厚さであり、側面24bの上では側面24bに垂直な方向での厚さである。
【0052】
ソース電極22と絶縁膜32との界面及びドレイン電極24と絶縁膜34との界面は、走査透過電子顕微鏡(scanning transmission electron microscope:STEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギ分散型X線分析(energy dispersive X-ray spectroscopy:EDX)により特定できる。本開示では、EDXにより取得されるラインスキャン波形において、各構成層における主要元素の検出波形が交わる位置に界面があるとする。
【0053】
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
図11は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0054】
第1実施形態の変形例に係る半導体装置1Aでは、
図11に示すように、絶縁膜32がソース電極22の側面22a及び22bを覆うが、ソース電極22の上面は絶縁膜32により覆われていない。また、絶縁膜34がドレイン電極24の側面24a及び24bを覆うが、ドレイン電極24の上面は絶縁膜34により覆われていない。ソース電極22の上面及びドレイン電極24の上面は絶縁膜30により覆われている。
【0055】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0056】
この変形例によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
図12は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0058】
図12に示すように、第2実施形態に係る半導体装置2では、ソース電極22の上側部分222の側面22a及び22bがパッシベーション膜26の上面26xに垂直な面から傾斜している。側面22a及び22bは積層構造体20から離れるほど互いに近づく。従って、上側部分222の断面形状は略台形状である。
【0059】
また、ドレイン電極24の上側部分242の側面24a及び24bがパッシベーション膜26の上面26xに垂直な面から傾斜している。側面24a及び24bは積層構造体20から離れるほど互いに近づく。従って、上側部分242の断面形状は略台形状である。
【0060】
絶縁膜32は、ソース電極22の側面22a及び22bを覆うとともに、パッシベーション膜26の上面26xに接する。絶縁膜34は、ドレイン電極24の側面24a及び24bを覆うとともに、パッシベーション膜26の上面26xに接する。絶縁膜32及び34はパッシベーション膜26に連なる。例えば、絶縁膜32及び34は、断面視で3nm以上にわたってパッシベーション膜26の上面26xに接している。
【0061】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0062】
次に、第2実施形態に係る半導体装置2の製造方法について説明する。
図13~
図16は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0063】
まず、第1実施形態と同様にして、ソース開口26S及びドレイン開口26Dの形成までの処理を行う(
図5参照)。次に、
図13に示すように、蒸着法により、ソース開口26Sの内側及びドレイン開口26Dの内側に金属層62を形成する。このとき、金属層62は、ソース開口26Sの内側及びドレイン開口26Dの内側だけでなく、ソース開口26S及びドレイン開口26Dの側方でパッシベーション膜26上に乗り上げるように形成する。第1実施形態と同様に、金属層62は、フォトレジスト54の上面、開口54Sの側壁面及び開口54Dの側壁面にも付着する。
【0064】
次に、
図14に示すように、フォトレジスト52及び54を除去する。この結果、パッシベーション膜26上に乗り上げる部分を含むソース電極22と、パッシベーション膜26上に乗り上げる部分を含むドレイン電極24とが形成される。
【0065】
次に、
図15に示すように、ソース電極22及びドレイン電極24の表面を酸化することで、絶縁膜32及び34を形成する。次に、熱処理によってソース電極22及びドレイン電極24を合金化(アロイ)する。この結果、ソース開口26S及びドレイン電極24が積層構造体20にオーミック接触するようになる。
【0066】
次に、
図16に示すように、第1実施形態と同様にして、パッシベーション膜26にゲート開口26Gを形成し、ゲート電極28を形成し、絶縁膜30を形成する。
【0067】
その後、必要に応じて配線等を形成する。このようにして、第2実施形態に係る半導体装置2を製造することができる。
【0068】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態では、絶縁膜32及び34がパッシベーション膜26の上面26xに接している。このため、パッシベーション膜26の上面26xを経路とするリーク電流を更に抑制できる。更に、金属層62を、ソース開口26Sの内側及びドレイン開口26Dの内側だけでなく、ソース開口26S及びドレイン開口26Dの側方でパッシベーション膜26上に乗り上げるように形成できる。このため、ソース開口26S及びドレイン開口26Dを金属層62により埋め込みやすい。
【0069】
上述のように、絶縁膜32及び34は、断面視で3nm以上にわたってパッシベーション膜26の上面26xに接している。アルミニウムの表面に自然酸化膜が形成されていたとしても、断面視で3nm以上にわたってパッシベーション膜26の上面26xに接するような厚さにはならない。絶縁膜32及び34は、断面視で5nm以上にわたってパッシベーション膜26の上面26xに接していることが好ましく、断面視で10nm以上にわたってパッシベーション膜26の上面26xに接していることが好ましい。絶縁膜32及び34がパッシベーション膜26の上面26xに接する範囲が広いほど、リーク電流を抑制しやすい。
【0070】
なお、第2実施形態では、ソース電極22及びドレイン電極24のパッシベーション膜26の上に乗り上げた部分の全体が酸化されて絶縁膜32及び34が形成されているが、ソース電極22及びドレイン電極24のパッシベーション膜26の上に乗り上げた部分の一部が酸化されてもよい。すなわち、製造された半導体装置2において、ソース電極22の上側部分222の一部がパッシベーション膜26の上にあってもよく、ドレイン電極24の上側部分242の一部がパッシベーション膜26の上にあってもよい。
【0071】
(第2実施形態の第1変形例)
次に、第2実施形態の第1変形例について説明する。
図17は、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0072】
第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置2Aでは、
図17に示すように、絶縁膜32がソース電極22の側面22a及び22bを覆うが、ソース電極22の上面は絶縁膜32により覆われていない。また、絶縁膜34がドレイン電極24の側面24a及び24bを覆うが、ドレイン電極24の上面は絶縁膜34により覆われていない。ソース電極22の上面及びドレイン電極24の上面は絶縁膜30により覆われている。
【0073】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0074】
第1変形例によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
(第2実施形態の第2変形例)
次に、第2実施形態の第2変形例について説明する。
図18は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0076】
第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置2Bでは、
図18に示すように、絶縁膜32がソース電極22の側面22a及び22bの下側の一部分を覆い、側面22a及び22bの残部は絶縁膜32により覆われていない。絶縁膜32はパッシベーション膜26の上面26xに接し、パッシベーション膜26に連なる。また、絶縁膜34がドレイン電極24の側面24a及び24bの下側の一部分を覆い、側面24a及び24bの残部は絶縁膜32により覆われていない。絶縁膜34はパッシベーション膜26の上面26xに接し、パッシベーション膜26に連なる。側面22a及び22bの該残部及び側面22a及び22bの該残部は絶縁膜30により覆われている。
【0077】
他の構成は第2実施形態の第1変形例と同様である。
【0078】
第2変形例によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
(第2実施形態の第3変形例)
次に、第2実施形態の第3変形例について説明する。
図19は、第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0080】
第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置2Cでは、
図19に示すように、ソース電極22の上側部分222の側面22a及び22bがパッシベーション膜26の上面26xに略垂直であり、上側部分222の断面形状は略矩形状である。また、ドレイン電極24の上側部分242の側面24a及び24bがパッシベーション膜26の上面26xに略垂直であり、上側部分242の断面形状は略矩形状である。
【0081】
絶縁膜32はパッシベーション膜26の上面26xに接し、パッシベーション膜26に連なる。また、絶縁膜34はパッシベーション膜26の上面26xに接し、パッシベーション膜26に連なる。
【0082】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0083】
第3変形例によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
(第2実施形態の第4変形例)
次に、第2実施形態の第4変形例について説明する。
図20は、第2実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0085】
第2実施形態の第4変形例に係る半導体装置2Dでは、
図20に示すように、絶縁膜32がソース電極22の側面22a及び22bを覆うが、ソース電極22の上面は絶縁膜32により覆われていない。また、絶縁膜34がドレイン電極24の側面24a及び24bを覆うが、ドレイン電極24の上面は絶縁膜34により覆われていない。ソース電極22の上面及びドレイン電極24の上面は絶縁膜30により覆われている。
【0086】
他の構成は第2実施形態の第3変形例と同様である。
【0087】
第4変形例によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1、1A、2、2A、2B、2C、2D:半導体装置
10:基板
12:核生成層
14:チャネル層
16:バリア層
18:キャップ層
20:積層構造体
22:ソース電極
24:ドレイン電極
22a、24a:側面
22b、24b:側面
26:パッシベーション膜
26D:ドレイン開口
26G:ゲート開口
26S:ソース開口
26x:上面
28:ゲート電極
30、32、34:絶縁膜
52、54:フォトレジスト
52D、52S、54D、54S:開口
62:金属層
221、241:下側部分
222、242:上側部分