IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-半導体装置の製造方法 図2
  • 特開-半導体装置の製造方法 図3
  • 特開-半導体装置の製造方法 図4
  • 特開-半導体装置の製造方法 図5
  • 特開-半導体装置の製造方法 図6
  • 特開-半導体装置の製造方法 図7
  • 特開-半導体装置の製造方法 図8
  • 特開-半導体装置の製造方法 図9
  • 特開-半導体装置の製造方法 図10
  • 特開-半導体装置の製造方法 図11
  • 特開-半導体装置の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167446
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/80 20060101AFI20231116BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L29/80 Z
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078635
(22)【出願日】2022-05-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構における令和2年度ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 大希
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA03
5F102GB01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GK04
5F102GQ01
5F102GR01
5F102GR04
5F102GR07
5F102GS01
5F102GS04
5F102GT01
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC16
5F102HC17
5F102HC19
5F102HC24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スループットの低下を抑制しながらコンタクト抵抗を低減する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基板10の上に電子走行層14を形成する工程、その上に電子供給層16を形成する工程と、その上に保護膜22を形成する工程、その上にZnO膜72をゾルゲル法により形成する工程、その上に犠牲膜74を形成する工程、犠牲膜、ZnO膜、保護膜、電子供給層及び電子走行層に、第1、第2開口30、40を形成する工程、第1酸処理により、ZnO膜の第1、第2開口に露出する第1、第2部分に、第1、第2空隙部34、44と、第1、第2空隙部内で犠牲膜を支える複数の第1、第2支柱部36、46を夫々形成する工程、第1酸処理の後、第1、第2開口の底面30B、40Bの上に第1導電型の不純物を含有するソース領域、ドレイン領域を夫々形成する工程及びZnO膜の全体に第2酸処理を行う工程を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜の上に酸化亜鉛膜をゾルゲル法により形成する工程と、
前記酸化亜鉛膜の上に犠牲膜を形成する工程と、
前記犠牲膜、前記酸化亜鉛膜、前記保護膜、前記電子供給層及び前記電子走行層に、第1開口及び第2開口を形成する工程と、
第1酸処理により、前記酸化亜鉛膜の前記第1開口に露出する第1部分に、第1空隙部と、前記第1空隙部内で前記犠牲膜を支える複数の第1支柱部とを、前記酸化亜鉛膜の前記第2開口に露出する第2部分に、第2空隙部と、前記第2空隙部内で前記犠牲膜を支える複数の第2支柱部とを、それぞれ形成する工程と、
前記第1酸処理の後、前記第1開口の底面の上に第1導電型の不純物を含有するソース領域を、前記第2開口の底面の上に前記第1導電型の不純物を含有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域を形成する工程の後に、前記酸化亜鉛膜の全体に第2酸処理を行う工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記酸化亜鉛膜は、酸化亜鉛の前駆体を含む請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記犠牲膜として酸化アルミニウム膜を形成する請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護膜として窒化珪素膜を形成する請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1酸処理及び前記第2酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いる請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記酸化亜鉛膜の前記第2酸処理の後に残存する部分に2流体洗浄処理を行う工程を有する請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ソース領域及び前記ドレイン領域のそれぞれの前記第1導電型の不純物の濃度は、1×1019cm-3以上である請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に窒化珪素膜を形成する工程と、
前記窒化珪素膜の上に酸化亜鉛膜をゾルゲル法により形成する工程と、
前記酸化亜鉛膜の上に酸化アルミニウム膜を形成する工程と、
前記酸化アルミニウム膜、前記酸化亜鉛膜、前記窒化珪素膜、前記電子供給層及び前記電子走行層に、第1開口及び第2開口を形成する工程と、
第1酸処理により、前記酸化亜鉛膜の前記第1開口に露出する第1部分に、第1空隙部と、前記第1空隙部内で前記酸化アルミニウム膜を支える複数の第1支柱部とを、前記酸化亜鉛膜の前記第2開口に露出する第2部分に、第2空隙部と、前記第2空隙部内で前記酸化アルミニウム膜を支える複数の第2支柱部とを、それぞれ形成する工程と、
前記第1酸処理の後、前記第1開口の底面の上に第1導電型の不純物を含有するソース領域を、前記第2開口の底面の上に前記第1導電型の不純物を含有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域を形成する工程の後に、前記酸化亜鉛膜の全体に第2酸処理を行う工程と、
前記酸化亜鉛膜の前記第2酸処理の後に残存する部分に2流体洗浄処理を行う工程と、
を有し、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域のそれぞれの前記第1導電型の不純物の濃度は、1×1019cm-3以上であり、
前記第1酸処理及び前記第2酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いる半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)に関し、ソース電極及びドレイン電極と2次元電子ガス(two dimensional gas:2DEG)との間の合計の抵抗成分を示すコンタクト抵抗を低減するための方法が提案されている。この方法では、電子供給層及び電子走行層に開口を形成し、開口内にn型不純物を高濃度で含有するGaN(nGaN)層を有機金属気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法又は分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy:MBE)法等により再成長させ、nGaN層の上にソース電極、ドレイン電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9515161号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0176366号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法でnGaN層を形成した場合、スループット(連続的に複数のウエハに成膜を行う場合の単位時間あたりの処理枚数)の低下が顕著である。
【0005】
本開示は、スループットの低下を抑制しながらコンタクト抵抗を低減できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置の製造方法は、基板の上方に電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、前記電子走行層の上方に保護膜を形成する工程と、前記保護膜の上に酸化亜鉛膜をゾルゲル法により形成する工程と、前記酸化亜鉛膜の上に犠牲膜を形成する工程と、前記犠牲膜、前記酸化亜鉛膜、前記保護膜、前記電子供給層及び前記電子走行層に、第1開口及び第2開口を形成する工程と、第1酸処理により、前記酸化亜鉛膜の前記第1開口に露出する第1部分に、第1空隙部と、前記第1空隙部内で前記犠牲膜を支える複数の第1支柱部とを、前記酸化亜鉛膜の前記第2開口に露出する第2部分に、第2空隙部と、前記第2空隙部内で前記犠牲膜を支える複数の第2支柱部とを、それぞれ形成する工程と、前記第1酸処理の後、前記第1開口の底面の上に第1導電型の不純物を含有するソース領域を、前記第2開口の底面の上に前記第1導電型の不純物を含有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、前記ソース領域及び前記ドレイン領域を形成する工程の後に、前記酸化亜鉛膜の全体に第2酸処理を行う工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スループットの低下を抑制しながらコンタクト抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図2図2は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図3図3は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図4図4は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図5図5は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図6図6は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図7図7は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図8図8は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図9図9は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図10図10は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図11図11は、第1参考例を示す断面図である。
図12図12は、第2参考例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置の製造方法は、基板の上方に電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、前記電子走行層の上方に保護膜を形成する工程と、前記保護膜の上に酸化亜鉛膜をゾルゲル法により形成する工程と、前記酸化亜鉛膜の上に犠牲膜を形成する工程と、前記犠牲膜、前記酸化亜鉛膜、前記保護膜、前記電子供給層及び前記電子走行層に、第1開口及び第2開口を形成する工程と、第1酸処理により、前記酸化亜鉛膜の前記第1開口に露出する第1部分に、第1空隙部と、前記第1空隙部内で前記犠牲膜を支える複数の第1支柱部とを、前記酸化亜鉛膜の前記第2開口に露出する第2部分に、第2空隙部と、前記第2空隙部内で前記犠牲膜を支える複数の第2支柱部とを、それぞれ形成する工程と、前記第1酸処理の後、前記第1開口の底面の上に第1導電型の不純物を含有するソース領域を、前記第2開口の底面の上に前記第1導電型の不純物を含有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、前記ソース領域及び前記ドレイン領域を形成する工程の後に、前記酸化亜鉛膜の全体に第2酸処理を行う工程と、を有する。
【0011】
本願発明者は、スループットの低下を抑制すべく、不純物を高濃度で含有する層(以下、高濃度不純物層ということがある)をMOCVD法に代えてスパッタ法等の物理気相成長(physical vapor deposition:PVD)法により形成することについて検討を行った。この結果、スループットを大幅に向上できることが判明した。また、電子走行層及び電子供給層とは別にソース領域及びドレイン領域を形成することで、コンタクト抵抗を低減できる。
【0012】
なお、酸化亜鉛膜を形成せずに犠牲膜を保護膜の上に形成し、ソース領域及びドレイン領域を形成することも考えられる。しかしながら、この場合には、ソース領域及びドレイン領域の形成の際に、ソース領域及びドレイン領域の原料からなる層が犠牲膜の第1開口に露出する側面と、第2開口に露出する側面とにも形成される懸念がある。このため、犠牲膜を除去しようとしても、エッチャントが犠牲膜に到達できず、犠牲膜を除去できない。これに対し、犠牲膜の形成前に酸化亜鉛膜を形成し、酸化亜鉛膜に第1空隙部及び第2空隙部を形成する場合には、第2酸処理の際に酸を酸化亜鉛膜の全体に浸透させることができる。従って、酸化亜鉛膜を適切に除去し、これに付随して犠牲膜と、ソース領域及びドレイン領域の原料からなる層とを除去できる。
【0013】
また、第1支柱部及び第2支柱部が形成されない場合には、犠牲膜の第1空隙部上の部分及び第2空隙部上の部分(以下、これらを庇部ということがある)が、自重により保護膜に向けて撓むことがある。また、ソース領域及びドレイン領域が形成された後では、ソース領域及びドレイン領域からなる原料の層の質量及び犠牲膜の自重により庇部が保護膜に向けて撓みやすくなる。そして、庇部が撓んで保護膜に接触すると、酸化亜鉛膜を適切に除去できず、犠牲膜を除去できない。これに対し、第1支柱部及び第2支柱部を形成する場合には、庇部の撓みを抑制し、第2酸処理の際に酸を酸化亜鉛膜の全体に浸透させることができる。従って、酸化亜鉛膜を適切に除去し、これに付随して犠牲膜と、ソース領域及びドレイン領域の原料からなる層とを除去できる。
【0014】
〔2〕 〔1〕において、前記酸化亜鉛膜は、酸化亜鉛の前駆体を含んでもよい。この場合、第1支柱部及び第2支柱部を形成しながら第1空隙部及び第2空隙部を形成しやすい。
【0015】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記犠牲膜として酸化アルミニウム膜を形成してもよい。この場合、酸化亜鉛膜と犠牲膜との間に大きなエッチング選択比を確保しやすい。
【0016】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記保護膜として窒化珪素膜を形成してもよい。この場合、酸化亜鉛膜と保護膜との間に大きなエッチング選択比を確保しやすい。
【0017】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれかにおいて、前記第1酸処理及び前記第2酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いてもよい。第1酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いることで、第1支柱部及び第2支柱部を形成しながら第1空隙部及び第2空隙部を形成しやすい。また、第2酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いることで、酸化亜鉛膜の大部分を除去しやすい。
【0018】
〔6〕 〔1〕から〔5〕のいずれかにおいて、前記酸化亜鉛膜の前記第2酸処理の後に残存する部分に2流体洗浄処理を行う工程を有してもよい。この場合、酸化亜鉛膜の第2酸処理の後に残存する部分を除去しやすい。
【0019】
〔7〕 〔1〕から〔6〕のいずれかにおいて、前記ソース領域及び前記ドレイン領域のそれぞれの前記第1導電型の不純物の濃度は、1×1019cm-3以上であってもよい。この場合、コンタクト抵抗を低減しやすい。
【0020】
〔8〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置の製造方法は、基板の上方に電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、前記電子走行層の上方に窒化珪素膜を形成する工程と、前記窒化珪素膜の上に酸化亜鉛膜をゾルゲル法により形成する工程と、前記酸化亜鉛膜の上に酸化アルミニウム膜を形成する工程と、前記酸化アルミニウム膜、前記酸化亜鉛膜、前記窒化珪素膜、前記電子供給層及び前記電子走行層に、第1開口及び第2開口を形成する工程と、第1酸処理により、前記酸化亜鉛膜の前記第1開口に露出する第1部分に、第1空隙部と、前記第1空隙部内で前記酸化アルミニウム膜を支える複数の第1支柱部とを、前記酸化亜鉛膜の前記第2開口に露出する第2部分に、第2空隙部と、前記第2空隙部内で前記酸化アルミニウム膜を支える複数の第2支柱部とを、それぞれ形成する工程と、前記第1酸処理の後、前記第1開口の底面の上に第1導電型の不純物を含有するソース領域を、前記第2開口の底面の上に前記第1導電型の不純物を含有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、前記ソース領域及び前記ドレイン領域を形成する工程の後に、前記酸化亜鉛膜の全体に第2酸処理を行う工程と、前記酸化亜鉛膜の前記第2酸処理の後に残存する部分に2流体洗浄処理を行う工程と、を有し、前記ソース領域及び前記ドレイン領域のそれぞれの前記第1導電型の不純物の濃度は、1×1019cm-3以上であり、前記第1酸処理及び前記第2酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いる。この場合、スループットの低下を抑制しながらコンタクト抵抗を低減しやすい。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0022】
本実施形態は、窒化物半導体を主構成材料とするGaN-HEMTを含む半導体装置の製造方法に関する。図1乃至図10は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0023】
まず、図1に示すように、基板10上にバッファ層12、電子走行層14、電子供給層16及びキャップ層18を形成する。基板10は、例えば上面の面方位が(0001)面の炭化珪素(SiC)基板である。バッファ層12は、例えば厚さが5nm以上かつ100nm以下のAlN層である。電子走行層14は、例えば厚さが1000nm程度のアンドープGaN層である。電子供給層16は、例えば厚さ20nm程度のn型AlGaN層である。キャップ層18は、例えば厚さ5nm程度のn型GaN層である。本実施形態で用いられるn型不純物は、例えばシリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)である。バッファ層12、電子走行層14、電子供給層16及びキャップ層18の積層方向は、例えば[0001]方向である。バッファ層12、電子走行層14、電子供給層16及びキャップ層18は、例えばMOCVD法により形成する。電子走行層14の上面の近傍に2DEG52が存在する。
【0024】
次に、図2に示すように、キャップ層18の上に保護膜22を形成する。保護膜22は、例えば窒化珪素(SiN)膜である。保護膜22は、例えば減圧CVD(low pressure chemical vapor deposition:LPCVD)法により形成する。保護膜22の厚さは、例えば10nm以上25nm以下である。
【0025】
次に、保護膜22の上に酸化亜鉛(ZnO)膜72を形成する。ZnO膜72は、ZnOの前駆体を用いてゾルゲル法により形成する。ZnOの前駆体としては、例えば酢酸亜鉛二水和物を用いる。例えば、ZnOの前駆体を含むゾルを保護膜22の表面に塗布し、500℃程度の温度で加熱することにより、ゲル化させる。この時、本実施形態では、ZnOの前駆体が残存するようにZnO膜72を形成する。つまり、ZnO膜72が完全な結晶状態とはならない程度の加熱を行う。ZnO膜72の厚さは、例えば100nm以上400nm以下である。
【0026】
次に、ZnO膜72の上に犠牲膜74を形成する。犠牲膜74は、例えば酸化アルミニウム(Al)膜である。犠牲膜74は、例えば原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法により形成する。犠牲膜74の厚さは、例えば10nm以上40nm以下である。
【0027】
次に、図3に示すように、犠牲膜74、ZnO膜72、保護膜22、キャップ層18、電子供給層16及び電子走行層14に第1開口30及び第2開口40を形成する。第1開口30と第2開口40との間の距離は、例えば1μm~200μm程度とする。第1開口30は底面30Bを有し、第2開口40は底面40Bを有する。第1開口30及び第2開口40の形成では、例えば電子線レジスト(図示せず)をマスクとして、反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)を行う。犠牲膜74、ZnO膜72及び保護膜22のエッチングにはフッ素(F)または塩素(Cl)を含む反応性ガスが用いられてもよい。キャップ層18、電子供給層16及び電子走行層14のエッチングには塩素(Cl)を含む反応性ガスが用いられてもよい。
【0028】
次に、図4に示すように、酸を用いた第1酸処理により、ZnO膜72の第1開口30に露出する第1部分に、第1空隙部34と、複数の第1支柱部36とを、ZnO膜72の第2開口40に露出する第2部分に、第2空隙部44と、複数の第2支柱部46とを、それぞれ形成する。第1支柱部36は第1空隙部34内で犠牲膜74を支え、第2支柱部46は第2空隙部44内で犠牲膜74を支える。第1酸処理は、第1開口30及び第2開口40が並ぶ方向における第1空隙部34及び第2空隙部44の大きさがそれぞれ400nm~600nm程度となる時間で行う。
【0029】
第1酸処理の酸には、例えば希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いる。電子走行層14、電子供給層16、キャップ層18、保護膜22、ZnO膜72及び犠牲膜74が酸に晒されるが、電子走行層14、電子供給層16、キャップ層18、保護膜22及び犠牲膜74はほとんど除去されない。ZnO膜72については、ZnOの前駆体が残存する部分が優先的に除去されるが、ゲル化の熱処理の際に結晶化が進んだ部分は除去されにくい。このため、第1空隙部34及び第2空隙部44が形成されるとともに、複数の第1支柱部36及び複数の第2支柱部46が形成される。第1支柱部36及び第2支柱部46のサイズは特に限定されないが、例えば第1支柱部36及び第2支柱部46は、20nm~100nm程度の円相当径を有する。
【0030】
次に、図5に示すように、第1開口30及び第2開口40内に半導体層60をスパッタ法により形成する。半導体層60は、第1開口30の底面30Bの上と、第2開口40の底面40Bの上とに形成する。半導体層60の形成の際に、照射源としてNラジカルが用いられる。また、スパッタ用のガスとして、例えばAr、Kr又はXeが用いられる。半導体層60は、第1開口30及び第2開口40内で、電子走行層14に格子整合しながら成長する。半導体層60は犠牲膜74の上にも形成される。半導体層60が犠牲膜74の第1開口30に露出する側面と、第2開口40に露出する側面とにも形成されてもよい。犠牲膜74に接する半導体層60は、例えば多結晶となる。半導体層60は、例えばn型GaN層である。半導体層60は、例えばn型不純物を電子供給層16よりも高濃度で含む。半導体層60のn型不純物の濃度は、例えば1×1019cm-3以上である。
【0031】
半導体層60の形成の際には、基板10の温度を半導体層60が成長できる温度に保持する。また、半導体層60は、Si等のn型不純物をドーピングしながら成長させる。半導体層60の形成の際には、半導体層60の形成が完了するまで、基板10の温度を、半導体層60にドーピングされたn型不純物が半導体層60に固溶した状態が維持される温度以上、例えば600℃以上に保持し続けることが好ましい。このような温度制御を行うことで、半導体層60内でのn型不純物の窒素化合物の生成を抑制できる。
【0032】
次に、ZnO膜72の全体に酸を用いた第2酸処理を行う。第2酸処理は、ZnO膜72の全体に酸が浸透する時間で行う。この結果、図6に示すように、第1空隙部34が存在していた部分と第2空隙部44が存在していた部分との間において、ZnO膜72の大部分が除去されるとともに、ゲル化の熱処理の際に結晶化が進んだ部分が残渣76として残存する。また、第1支柱部36及び第2支柱部46も残存する。ZnO膜72の大部分が除去されることで、犠牲膜74も除去され、犠牲膜74の除去に伴って、半導体層60のうち犠牲膜74の上に形成されていた部分も除去される。一方、半導体層60の第1開口30内の部分及び第2開口40内の部分は除去されず、第1開口30内にソース領域32が得られ、第2開口40内にドレイン領域42が得られる。第2酸処理の酸には、第1酸処理の酸と同様に、例えば希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いる。
【0033】
次に、図7に示すように、第1支柱部36、第2支柱部46及び残渣76を除去する。第1支柱部36、第2支柱部46及び残渣76は、例えば高圧純水処理等の2流体洗浄処理により除去することができる。
【0034】
次に、図8に示すように、ソース領域32の上にソース電極38を形成し、ドレイン領域42の上にドレイン電極48を形成する。ソース電極38及びドレイン電極48は、例えば蒸着、リフトオフ及び合金化熱処理により形成できる。ソース電極38及びドレイン電極48は、例えばTa膜と、Al膜とを含む。ソース電極38及びドレイン電極48は、それぞれソース領域32、ドレイン領域42を介して2DEG52にオーミックコンタクトする。
【0035】
次に、図9に示すように、保護膜22に第3開口50を形成する。第3開口50の形成では、例えば電子線レジスト(図示せず)をマスクとして、RIEを行う。保護膜22のエッチングにはFを含む反応性ガスが用いられる。次に、保護膜22の上にゲート電極58を形成する。ゲート電極58は、例えば蒸着及びリフトオフにより形成できる。ゲート電極58は、例えばNi膜と、Au膜とを含む。ゲート電極58は、第3開口50を通じてキャップ層18にショットキー接触する。
【0036】
次に、図10に示すように、ゲート電極58、ソース電極38及びドレイン電極48を覆う絶縁膜24を形成する。絶縁膜24としては、例えば酸化アルミニウム膜又は窒化珪素膜を形成する。酸化アルミニウム膜は、例えばALD法により形成できる。窒化珪素膜は、例えばプラズマCVD法により形成できる。
【0037】
その後、必要に応じて配線等を形成する。このようにして、GaN-HEMTを含む半導体装置100を製造することができる。
【0038】
本実施形態によれば、スパッタ法により半導体層60を形成しているため、MOCVD法により形成する場合と比較して、スループットの低下を抑制できる。MOCVD法は、スパッタ法に比べ、その成膜方法の原理の違いなどから一般的に、成膜時間が長くなるため、スループット(連続的に複数のウエハに成膜を行う場合の単位時間あたりの処理枚数)が低くなると考えられている。また、電子走行層14及び電子供給層16とは別にソース領域32及びドレイン領域42を形成しているため、コンタクト抵抗を低減できる。
【0039】
なお、ZnO膜72を形成せずに犠牲膜74を保護膜22の上に形成し、半導体層60を形成することも考えられる。しかしながら、この場合には、半導体層60の形成の際に、半導体層60が犠牲膜74の第1開口30に露出する側面と、第2開口40に露出する側面とにも形成される懸念がある。このため、酸処理等により犠牲膜74を除去しようとしても、エッチャントが犠牲膜74に到達できず、犠牲膜74を除去できない。図11に、第1参考例として、ZnO膜72を形成せずに犠牲膜74を保護膜22の上に形成した場合に得られる状態を示す。
【0040】
これに対し、本実施形態では、犠牲膜74の形成前にZnO膜72を形成し、ZnO膜72に第1空隙部34及び第2空隙部44を形成しているため、犠牲膜74を除去するためのZnO膜72の第2酸処理の際に、酸をZnO膜72の全体に浸透させることができる。
【0041】
また、第1支柱部36及び第2支柱部46が形成されないような条件で第1空隙部34及び第2空隙部44を形成することも考えられる。しかしながら、この場合には、犠牲膜74の第1空隙部34上の部分及び第2空隙部44上の部分が、自重により保護膜22に向けて撓むことがある。また、半導体層60が形成された後では、半導体層60の質量及び犠牲膜74の自重により庇部が保護膜22に向けて撓みやすくなる。そして、庇部が撓んで保護膜22に接触すると、ZnO膜72の第2酸処理を行おうとしても、酸がZnO膜72に到達できず、ZnO膜72を除去できず、犠牲膜74も除去できない。図12に、第2参考例として、第1支柱部36及び第2支柱部46を形成せずに第1空隙部34及び第2空隙部44を形成した場合に得られる状態を示す。
【0042】
これに対し、本実施形態では、第1支柱部36及び第2支柱部46を形成しているため、庇部の撓みを抑制し、犠牲膜74を除去するためのZnO膜72の第2酸処理の際に、酸をZnO膜72の全体に浸透させることができる。
【0043】
なお、ZnO膜72をゾルゲル法により形成した場合、ZnO膜72中にZnOの前駆体を残存させられるため、第1支柱部36及び第2支柱部46を形成しながら第1空隙部34及び第2空隙部44を形成できる。一方、ZnO膜72をスパッタ法により形成した場合、ZnO膜72がZnOの前駆体を含むことがないため、第1支柱部36及び第2支柱部46を形成しながら第1空隙部34及び第2空隙部44を形成することが困難である。
【0044】
ZnO膜72がZnOの前駆体を含むことで、第1支柱部36及び第2支柱部46を形成しながら第1空隙部34及び第2空隙部44を形成しやすい。
【0045】
犠牲膜74として酸化アルミニウム膜を形成することで、ZnO膜72と犠牲膜74との間に大きなエッチング選択比を確保しやすい。また、保護膜22として窒化珪素膜を形成することで、ZnO膜72と保護膜22との間に大きなエッチング選択比を確保しやすい。
【0046】
第1酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いることで、第1支柱部36及び第2支柱部46を形成しながら第1空隙部34及び第2空隙部44を形成しやすい。第2酸処理に、希釈リン酸、希釈塩酸又は希釈フッ酸を用いることで、ZnO膜72の大部分を除去しやすい。
【0047】
ZnO膜72の残渣76に2流体洗浄処理を行うことで、第1支柱部36、第2支柱部46及び残渣76を除去しやすい。
【0048】
ソース領域32及びドレイン領域42のそれぞれのn型導電型の不純物の濃度は、好ましくは1×1019cm-3以上であり、より好ましくは2×1019cm-3以上であり、更に好ましくは3×1019cm-3以上である。ソース電極38及びドレイン電極48のコンタクト抵抗を低減しやすくするためである。
【0049】
なお、上述のように、半導体層60の形成の際にAr、Kr又はXeが用いられる。このため、ソース領域32及びドレイン領域42中にAr、Kr又はXeが残存していてもよい。通常、MOCVD法で形成した窒化物半導体層にはAr、Kr又はXeが含まれないため、Ar、Kr又はXeが残存しているか否かに基づいて、ソース領域32及びドレイン領域42がスパッタ法により生成されたのか、MOCVD法により形成されたのかを判別できる。
【0050】
ソース領域32及びドレイン領域42中の不純物の濃度は、たとえば二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)法により測定可能である。
【0051】
ソース領域32及びドレイン領域42の材料はGaNに限定されない。半導体層60の材料がAlGaN、AlN、InAlN又はInAlGaN等であってもよい。
【0052】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10:基板
12:バッファ層
14:電子走行層
16:電子供給層
18:キャップ層
22:保護膜
24:絶縁膜
30:第1開口
30B:底面
32:ソース領域
34:第1空隙部
36:第1支柱部
38:ソース電極
40:第2開口
40B:底面
42:ドレイン領域
44:第2空隙部
46:第2支柱部
48:ドレイン電極
50:第3開口
58:ゲート電極
60:半導体層
72:ZnO膜
74:犠牲膜
76:残渣
100:半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12