(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167448
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】動作計測装置および動作計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078637
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小椋 優
(72)【発明者】
【氏名】遠山 悠
(72)【発明者】
【氏名】重藤 千隼
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高西 淳夫
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA09
2F065AA37
2F065BB15
2F065CC16
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF67
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065MM02
2F065MM26
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】動体の動作を精度良く確実に計測することが可能な動作計測装置および動作計測方法を提供する。
【解決手段】動作計測対象物の所定部位に関して推定された絶対的な位置および方向の情報である第1推定情報と、所定部位における慣性力を計測することにより推定された所定部位の位置および方向の情報である第2推定情報とに基づいて動作計測対象物の所定部位の位置および方向を所定時間間隔で決定するモジュール情報処理部231~235と、決定された情報の遷移に基づいて、動作計測対象物の動作を計測する動作計測部236とを備える。モジュール情報処理部231~235は、第1推定情報と第2推定情報とのうちいずれか一方に基づいて動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定しているときに、該当する推定情報の変化量が所定値以上になると、他方の推定情報に基づいて動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作計測対象物の所定部位に関して推定された絶対的な位置および方向の情報である第1推定情報を所定時間間隔で取得する絶対位置情報処理部と、
前記所定部位における慣性力を計測することにより推定された前記所定部位の位置および方向の情報である第2推定情報を所定時間間隔で取得する慣性情報処理部と、
前記第1推定情報または前記第2推定情報に基づいて、前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を所定時間間隔で決定する決定部と、
前記決定部で決定された情報の遷移に基づいて、前記動作計測対象物の動作を計測する動作計測部と、を備え、
前記決定部は、前記第1推定情報と前記第2推定情報とのうちいずれか一方に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定しているときに、該当する推定情報の変化量が所定値以上になると、他方の推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替える、動作計測装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記他方の推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替えた後、切り替え前に処理対象としていた推定情報の変化量が所定値未満になると、前記切り替え前に処理対象としていた推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように戻す、請求項1に記載の動作計測装置。
【請求項3】
前記所定部位は複数部位であって、
前記決定部は、前記複数部位それぞれの位置および方向を決定し、
前記動作計測部は、前記決定部で決定された部位ごとの情報の遷移に基づいて、前記動作計測対象物の動作を計測する、請求項1または2に記載の動作計測装置。
【請求項4】
前記動作計測部で計測された前記動作計測対象物の動作を示す動画情報を生成する動画情報生成部をさらに備える、請求項1または2に記載の動作計測装置。
【請求項5】
動作計測対象物の所定部位に関して推定された絶対的な位置および方向の情報である第1推定情報を所定時間間隔で取得し、
前記所定部位における慣性力を計測することにより推定された前記所定部位の位置および方向の情報である第2推定情報を所定時間間隔で取得し、
前記第1推定情報または前記第2推定情報に基づいて、前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を所定時間間隔で決定し、
前記第1推定情報と前記第2推定情報とのうちいずれか一方に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定しているときに、該当する推定情報の変化量が所定値以上になると、他方の推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替え、
決定した情報の遷移に基づいて、前記動作計測対象物の動作を計測する動作計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動作計測装置および動作計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の所定動作により達成される技能の中には、その動作の習得に長期間を要するものがある。このような技能のための動作の習得を効率的に行うために、当該技能の熟練者の動作を定量的に計測し、初心者が当該動作を習得する際に、計測した熟練者の動作情報を用いることが考えられる。
【0003】
人間の動作を定量的に計測するための技術として、光学式モーションキャプチャを用いた技術や、慣性計測装置を用いた技術がある。光学式モーションキャプチャは、関節などの人間の動作の特徴となる部位にマーカを設置して、カメラ装置でこれらのマーカの位置と動きを記録することで、人間の動作を計測する技術である。また慣性計測装置を用いた技術は、計測対象の人間に設置したジャイロセンサや加速度センサによる計測情報を用いて、人間の動作を計測する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような動作の習得に長期間を要する技能の一つに、溶接作業のための技能がある。溶接作業のための技能では例えば、作業員が溶接ホルダを持って上腕から上半身を所定の姿勢で動かす動作を行う。
【0006】
このような溶接作業では作業中に非常に強い溶接光が発生するため、光学式モーションキャプチャにより作業者の動作を計測しようとすると、カメラ装置でマーカの位置を取得できずに計測不能になる場合があるという問題があった。また、溶接作業では熱や電磁波も発生するため、慣性計測装置を用いて、作業者の動作を計測することが困難であるという問題があった。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、動体の動作を精度良く確実に計測することが可能な、動作計測装置および動作計測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る動作計測装置は、動作計測対象物の所定部位に関して推定された絶対的な位置および方向の情報である第1推定情報を所定時間間隔で取得する絶対位置情報処理部と、前記所定部位における慣性力を計測することにより推定された前記所定部位の位置および方向の情報である第2推定情報を所定時間間隔で取得する慣性情報処理部と、前記第1推定情報または前記第2推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を所定時間間隔で決定する決定部と、前記決定部で決定された情報の遷移に基づいて、前記動作計測対象物の動作を計測する動作計測部と、を備え、前記決定部は、前記第1推定情報と前記第2推定情報とのうちいずれか一方に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定しているときに、該当する推定情報の変化量が所定値以上になると、他方の推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替える。
【0009】
また前記決定部は、前記他方の推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替えた後、切り替え前に処理対象としていた推定情報の変化量が所定値未満になると、前記切り替え前に処理対象としていた推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように戻してもよい。
【0010】
また前記所定部位は複数部位であって、前記決定部は、前記複数部位それぞれの位置および方向を決定し、前記動作計測部は、前記決定部で決定された部位ごとの情報の遷移に基づいて、前記動作計測対象物の動作を計測してもよい。
【0011】
また前記動作計測装置は、動作計測部で計測された前記動作計測対象物の動作を示す動画情報を生成する動画情報生成部をさらに備えていてもよい。
【0012】
また本開示に係る動作計測方法は、動作計測対象物の所定部位に関して推定された絶対的な位置および方向の情報である第1推定情報を所定時間間隔で取得し、前記所定部位における慣性力を計測することにより推定された前記所定部位の位置および方向の情報である第2推定情報を所定時間間隔で取得し、前記第1推定情報または前記第2推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を所定時間間隔で決定し、前記第1推定情報と前記第2推定情報とのうちいずれか一方に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定しているときに、該当する推定情報の変化量が所定値以上になると、他方の推定情報に基づいて前記動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替え、決定した情報の遷移に基づいて、前記動作計測対象物の動作を計測する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の動作計測装置および動作計測方法によれば、動体の動作を精度良く確実に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る動作計測装置を用いた動作計測システムの構成を示す全体図である。
【
図2】一実施形態に係る動作計測装置に接続された第1~第5センサモジュールの構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る動作計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る動作計測装置内の第1~第5モジュール情報処理部の構成を示すブロック図である。
【
図5】一実施形態に係る動作計測装置内の第1~第5モジュール情報処理部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施形態では、本開示による動作計測装置により、溶接作業を行う作業員Xおよび作業員Xが把持するトーチTの動作を計測する場合について説明する。
【0016】
〈一実施形態による動作計測装置を用いた動作計測システムの構成〉
一実施形態による動作計測装置を用いた動作計測システムの構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態による動作計測システム1は、第1センサモジュール10-1、第2センサモジュール10-2、第3センサモジュール10-3、第4センサモジュール10-4、および第5センサモジュール10-5(以下、「第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5」と記載する)の5個のセンサモジュールと、これらの第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5に有線通信および無線通信可能に接続された動作計測装置20とを備える。
【0017】
第1センサモジュール10-1は、例えば動作計測対象である作業員Xの背中に設置される。第2センサモジュール10-2は、作業員Xの上腕に設置される。第3センサモジュール10-3は、作業員Xの前腕に設置される。第4センサモジュール10-4は、作業員Xの手首に設置される。第5センサモジュール10-5は、作業員Xが把持するトーチTに設置される。
【0018】
図2は、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5の構成を示すブロック図である。第1センサモジュール10-1は、カメラ装置11-1と、モジュール有線通信部12-1と、IMU(Inertial Measurement Unit)センサ13-1と、モジュール無線通信部14-1とを有する。
【0019】
第1センサモジュール10-1の構成について説明する。カメラ装置11-1は例えばWebカメラで構成され、動作計測処理中に作業員Xの周囲を撮影する。モジュール有線通信部12-1は、動作計測装置20との有線通信を行う。IMUセンサ13-1は、慣性力を示す角速度を所定時間間隔で計測するジャイロセンサ131-1と、慣性力を示す加速度を所定時間間隔で計測する加速度センサ132-1とを有する。モジュール無線通信部14-1は、動作計測装置20との無線通信を行う。
【0020】
第2センサモジュール10-2~第5センサモジュール10-5は、第1センサモジュール10-1と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0021】
図3は、動作計測装置20の構成を示すブロック図である。動作計測装置20は、計測装置有線通信部21と、計測装置無線通信部22と、CPU23と、GUI(Graphical User Interface)情報記憶部24と、表示部25とを有する。
【0022】
計測装置有線通信部21は、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5との有線通信を行う。計測装置無線通信部22は、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5との無線通信を行う。
【0023】
CPU23は、第1モジュール情報処理部231と、第2モジュール情報処理部232と、第3モジュール情報処理部233と、第4モジュール情報処理部234と、第5モジュール情報処理部235と、動作計測部236と、動画情報生成部としてのGUI情報生成部237とを有する。
【0024】
第1モジュール情報処理部231、第2モジュール情報処理部232、第3モジュール情報処理部233、第4モジュール情報処理部234、および第5モジュール情報処理部235(以下、「第1モジュール情報処理部231~第5モジュール情報処理部235」と記載する)は、同一の構成を有する。
図4は、第1モジュール情報処理部231~第5モジュール情報処理部235の構成を示すブロック図である。
【0025】
第1モジュール情報処理部231は、撮像情報取得部231aと、絶対位置情報処理部としての絶対位置推定部231bと、慣性情報取得部231cと、慣性情報処理部231dと、決定部231eとを有する。第1モジュール情報処理部231は、第1センサモジュール10-1で取得された情報を処理する。
【0026】
撮像情報取得部231aは、第1センサモジュール10-1のカメラ装置11-1で撮影された撮像情報を、計測装置有線通信部21を介して取得する。絶対位置推定部231bは、撮像情報取得部231aで取得した撮像情報を解析することで、VisualSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて所定時間間隔で、第1センサモジュール10-1の絶対的な位置および方向を推定する。絶対位置推定部231bは、推定した第1センサモジュール10-1の絶対的な位置および方向の情報を、第1推定情報として取得する。
【0027】
慣性情報取得部231cは、第1センサモジュール10-1のジャイロセンサ131-1で計測された角速度の情報および加速度センサ132-1で計測された加速度の情報を、計測装置無線通信部22を介して慣性情報として取得する。
【0028】
慣性情報処理部231dは、慣性情報取得部231cにより取得した慣性情報に基づいて、第1センサモジュール10-1の位置および向きを所定時間間隔で推定する。慣性情報処理部231dは、推定した第1センサモジュール10-1の位置および向きの情報を、第2推定情報として取得する。また慣性情報処理部231dは、所定時間間隔で、絶対位置推定部231bが第1センサモジュール10-1の位置および方向を推定するために認識している座標系の情報に基づいて、慣性情報処理部231dが認識している座標系の情報を補正する。
【0029】
決定部231eは、絶対位置推定部231bで推定された第1推定情報または慣性情報処理部231dで推定された第2推定情報に基づいて、拡張カルマンフィルタを用いて第1センサモジュール10-1の位置または方向を所定時間間隔で決定する。
【0030】
その際、決定部231eは、第1推定情報と第2推定情報とのうちいずれか一方に基づいて第1センサモジュール10-1の位置および方向を決定しているときに、該当する推定情報の変化量が所定値以上になったか否かを監視する。そして決定部231eは、該当する推定情報の変化量が所定値以上になると、他方の推定情報に基づいて第1センサモジュール10-1の位置および方向を決定するように切り替える。本実施形態においては、決定部231eは、第1推定情報に基づいて第1センサモジュール10-1の位置および方向を決定しているときに第1推定情報の変化量が所定値以上になると、第2推定情報に基づいて決定するように切り替える。
【0031】
第2モジュール情報処理部232は第1モジュール情報処理部231と同様の構成を有し、第2センサモジュール10-2で取得された情報を処理する。第3モジュール情報処理部233は第1モジュール情報処理部231と同様の構成を有し、第3センサモジュール10-3で取得された情報を処理する。第4モジュール情報処理部234は第1モジュール情報処理部231と同様の構成を有し、第4センサモジュール10-4で取得された情報を処理する。第5モジュール情報処理部235は第1モジュール情報処理部231と同様の構成を有し、第5センサモジュール10-5で取得された情報を処理する。
【0032】
動作計測部236は、第1モジュール情報処理部231~第5モジュール情報処理部235で決定された情報の遷移に基づいて、作業員Xの動作を計測する。GUI情報生成部237は、動作計測部236で計測された作業員Xの動作を動画情報で示したGUI情報を生成する。
【0033】
GUI情報記憶部24は、GUI情報生成部237で生成されたGUI情報を記憶する。表示部25は、GUI情報記憶部24に記憶されたGUI情報を表示する。
【0034】
〈一実施形態による動作計測システムの動作〉
次に、本実施形態による動作計測システム1の動作について説明する。まず、第1センサモジュール10-1が作業員Xの背中に設置され、第2センサモジュール10-2が作業員Xの上腕に設置され、第3センサモジュール10-3が作業員Xの前腕に設置され、第4センサモジュール10-4が作業員Xの手首に設置され、第5センサモジュール10-5が、作業員Xが把持するトーチTに設置され、動作計測装置20で計測処理を開始する操作が行われると、動作計測システム1が、作業員Xによる溶接作業の動作計測処理を開始する。
【0035】
動作計測処理が開始すると、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5内のカメラ装置11-1~11-5が、作業員Xの周囲の撮影を開始する。カメラ装置11-1~11-5で撮影された撮像情報は、順次、モジュール有線通信部12-1~12-5を介して動作計測装置20に送信される。
【0036】
また、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5それぞれのIMUセンサ13-1~13-5のジャイロセンサ131-1~131-5が角速度を所定時間間隔で計測する。また、IMUセンサ13-1~13-5の加速度センサ132-1~132-5が加速度を所定時間間隔で計測する。ジャイロセンサ131-1~131-5で計測された角速度の情報およびIMUセンサ13-1~13-5で計測された加速度の情報は、順次、モジュール無線通信部14-1~14-5を介して動作計測装置20に送信される。
【0037】
動作計測装置20では、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5から送信された撮像情報が、計測装置有線通信部21を介してCPU23で取得される。また、第1センサモジュール10-1~第5センサモジュール10-5から送信された角速度の情報および加速度の情報が、計測装置無線通信部22を介してCPU23で取得される。
【0038】
CPU23では、第1センサモジュール10-1から送信された撮像情報を第1モジュール情報処理部231の撮像情報取得部231aが取得し、角速度の情報および加速度の情報を、慣性情報取得部231cが慣性情報として取得する。
【0039】
また、第2センサモジュール10-2から送信された撮像情報を第2モジュール情報処理部232の撮像情報取得部232aが取得し、角速度の情報および加速度の情報を、慣性情報取得部232cが慣性情報として取得する。
【0040】
また、第3センサモジュール10-3から送信された撮像情報を第3モジュール情報処理部233の撮像情報取得部233aが取得し、角速度の情報および加速度の情報を、慣性情報取得部233cが慣性情報として取得する。
【0041】
また、第4センサモジュール10-4から送信された撮像情報を第4モジュール情報処理部234の撮像情報取得部234aが取得し、角速度の情報および加速度の情報を、慣性情報取得部234cが慣性情報として取得する。
【0042】
また、第5センサモジュール10-5から送信された撮像情報を第5モジュール情報処理部235の撮像情報取得部235aが取得し、角速度の情報および加速度の情報を、慣性情報取得部235cが慣性情報として取得する。
【0043】
第1センサモジュール10-1から送信された情報を取得した第1モジュール情報処理部231が実行する処理について説明する。まず、絶対位置推定部231bが、撮像情報取得部231aで取得した撮像情報を解析することで、VisualSLAM技術を用いて、第1センサモジュール10-1の絶対的な位置および方向を所定時間間隔で推定する。絶対位置推定部231bは、推定した第1センサモジュール10-1の絶対的な位置および方向の情報を、第1推定情報として取得する。
【0044】
また、慣性情報処理部231dは、動作計測処理の開始時点の絶対的な位置および方向を絶対位置推定部231bから取得する。そして慣性情報処理部231dは、慣性情報取得部231cで取得した慣性情報に基づいて動作計測処理の開始時点の絶対的な位置および方向からの相対的な移動量を検出することで、第1センサモジュール10-1の位置および向きを所定時間間隔で推定する。慣性情報処理部231dは、推定した第1センサモジュール10-1の位置および向きの情報を、第2推定情報として取得する。
【0045】
また慣性情報処理部231dは所定時間間隔で、絶対位置推定部231bが第1センサモジュール10-1の位置および方向を推定するために認識している座標系の情報に基づいて、慣性情報処理部231dが認識している座標系の情報を補正する。
【0046】
次に、決定部231eが拡張カルマンフィルタを用いて所定時間間隔で、絶対位置推定部231bで推定された情報と、慣性情報処理部231dで推定された情報とから第1センサモジュール10-1の位置および方向を決定する。
【0047】
決定部231eが所定時間間隔で実行する、第1センサモジュール10-1の位置および方向の決定処理について説明する。決定部231eは、決定処理に用いる情報として、予め下記式(1)および(2)を設定する。
【0048】
【数1】
上記式(1)、(2)において、kは時刻を示す。x
1…x
n は第1センサモジュール10-1の位置または方向の状態値を示す。nは、第1センサモジュール10-1の状態を示す要素の数であり、本実施形態ではクォータニオンに対応してn=4である。z
1…z
mは観測値を示し、絶対位置推定部231bで推定された第1推定情報は観測値z
1…z
4であり、および慣性情報処理部231dで推定された第2推定情報は観測値z
5…z
8である。F
kは、前回の状態値x
1…x
4から現在の状態値x
1…x
4を求めるための単位行列である。H
kは、状態値x
1…x
4から観測値z
1…z
4,または観測値z
5…z
8を求めるための行列である。v
kは、観測値のノイズ値を示す。w
k-1は、次の処理ステップへ移る際の不確実性や擾乱のレベルを示す。w
k-1は0でもよいが、作業者Xが同じ姿勢を保持した際の各センサモジュールのぶれ幅の値などから試験的に求めてもよい。
【0049】
決定部231eは、上記式(1)により算出される第1センサモジュール10-1の位置または方向の状態値x1…x4と、上記式(2)により算出される観測値z1…z4または観測値z5…z8とを合成して、第1センサモジュール10-1の位置または方向の決定値を算出する。決定部231eは、状態値x1…x4と、観測値z1…z4または観測値z5…z8との2つの値のうち、どちらをどれだけ反映させるかを示すカルマンゲインを予め設定しておく。そして決定部231eは、設定したカルマンゲインに基づいて、第1センサモジュール10-1の位置または方向の決定値を算出する。
【0050】
第1センサモジュール10-1の位置または方向の決定値を算出すると、決定部231eは、観測値の不確かさを推定する。決定部231eは、推定した観測値の不確かさと、第1センサモジュール10-1の位置または方向の決定値とから次回の決定処理における決定値の不確かさを予測し、これに基づいてカルマンゲインを更新する。具体的には、観測値の不確かさが小さければ、上記式(2)により算出される観測値z1…z4または観測値z5…z8の反映度合いが大きくなるようにカルマンゲインを更新する。また、観測値の不確かさが大きければ、上記式(1)により算出される状態値x1…x4の反映度合いが大きくなるようにカルマンゲインを更新する。
【0051】
このようにして所定時間間隔で決定処理を実行する際に、決定部231eが実行するカルマンゲインの更新処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
決定処理の開始時には、決定部231eは、絶対位置推定部231bで推定された精度が高い第1推定情報が決定処理対象となるように、カルマンゲインを設定する(S1)。具体的には決定部231eは、上記式(2)のHk行列で、状態値x1…x4に1を乗算するように設定し、vkの値を適切な計測誤差レベルに設定する。また、第1推定情報による観測値z1…z4に対するvkの値を、第2推定情報による観測値z5…z8に対するvkの値よりも下げる。このように設定することにより観測値z5…z8の不確かさが小さくなり、第2推定情報よりも第1推定情報が優位になるようにカルマンゲインが設定される。決定部231eは、設定されたカルマンゲインに基づいて、決定処理を開始する。
【0053】
決定処理の実行中に、溶接作業により強い溶接光や火花が発生すると、絶対位置推定部231bにおいて適正な第1推定情報が取得できなくなり、決定部231eが、前回の処理からの決定値の変化量が所定値以上であると判定する(S2の「YES」)。
【0054】
決定部231eは、前回の処理からの決定値の変化量が所定値以上であると判定すると、慣性情報処理部231dで推定された第2推定情報が決定処理対象となるように、カルマンゲインの設定を更新する(S3)。具体的には決定部231eは、上記式(2)のHk行列で、状態値x1…x4に0を乗算するように設定し、vkの値を極度に大きく設定する。このように設定することにより、観測値z1…z4および観測値z5…z8の不確かさが大きくなり、慣性情報処理部231dで推定された値が優位になるようにカルマンゲインの設定が更新される。
【0055】
その後、決定部231eは、切り替え前に処理対象としていた第1推定情報の変化量が所定値未満になったか否かを監視する(S4)。溶接光や火花が発生する作業が終わり、撮像情報取得部231aで取得する撮像情報の変化が小さくなると、決定部231eが、前回の処理からの第1推定情報の変化量が所定値未満になったと判定する(S4の「YES」)。
【0056】
決定部231eは、前回の処理からの第1推定情報の変化量が所定値未満になったと判定すると、第1推定情報が優位になるように、カルマンゲインの設定を戻す(S5)。以上で、決定部231eが実行するカルマンゲインの更新処理の説明を終了する。
【0057】
同様にして、第2モジュール情報処理部232において第2センサモジュール10-2の位置および方向が決定され、第3モジュール情報処理部233において第3センサモジュール10-3の位置および方向が決定され、第4モジュール情報処理部234において第4センサモジュール10-4の位置および方向が決定され、第5モジュール情報処理部235において第5センサモジュール10-5の位置および方向が決定される。
【0058】
次に、動作計測部236が、第1モジュール情報処理部231~第5モジュール情報処理部235で決定された情報の遷移に基づいて、作業員Xの動作を計測する。具体的には、モジュール情報処理部ごとに決定された位置および方向の情報の遷移を、それぞれ作業員Xの背中、上腕、前腕、手首、およびトーチTの動作として計測する。次に、GUI情報生成部237が、動作計測部236で計測された作業員Xの動作を動画情報で示したGUI情報を生成する。生成されたGUI情報は、GUI情報記憶部に記憶される。そして表示部25が、GUI情報記憶部24に記憶されたGUI情報を表示する。
【0059】
以上の実施形態によれば動作計測装置は、計測対象の作業者Xの所定部位に関して、撮像情報から推定した精度の高い位置および方向の情報である第1推定情報と、慣性情報から推定した位置および方向の情報である第2推定情報を取得する。そして動作計測装置は、精度の高い第1推定情報をなるべく用いつつ、溶接作業中に強い溶接光や火花が発生して第1推定情報を適正に推定できなくなったときには第2推定情報を用いるように切り替える。これにより操作計測装置は、精度良く且つ安定して、作業者Xの動作を計測することができる。
【0060】
また動作計測装置は、処理対象とする推定情報を切り替えた後、切り替え前に処理対象としていた推定情報の変化量が所定値未満になると、切り替え前に処理対象としていた推定情報が処理対象になるように設定を戻す。これにより動作計測装置は、処理対象の推定情報の切り替え後の適切な時期に、処理対象の推定情報を初期状態に戻して精度の良い動作計測処理を実行することができる。
【0061】
また動作計測装置は、複数のセンサモジュールを用いて計測対象の作業者Xの複数部位それぞれに関する第1推定情報および第2推定情報を取得し、これらを用いて作業者X動作の動作を計測する。これにより動作計測装置は、作業者Xの体の複数部位の動作を計測し、複雑な動作に関しても精度良く計測することができる。
【0062】
また、動作計測装置は、計測された作業者Xの動作を示す動画情報を生成して表示させることで、作業者Xの動作状況を可視化することができる。これにより、熟練者である作業者の動作状況を示す動画情報と、初心者である作業者の動作状況を示す動画情報とを生成し、これらを比較することで、初心者である作業者が熟練者である作業者と同様の動作を習得するためのツールとして用いることができる。
【0063】
また、上述した実施形態では、溶接作業を行う作業者Xの動作を計測対象とする場合について説明したがこれには限定されず、スポーツを行う人の動作、舞踊を行う人の動作、または楽器を演奏する人の動作等を計測対象としてもよい。
【0064】
スポーツを行う人の動作を計測する場合には、動きが高速であるために、処理に長時間を要する撮像情報の解析による動作計測処理を継続的に行うことが困難な場合がある。そのような場合には、上述した動作計測装置の決定部が、通常時は慣性情報により推定する第2推定情報に基づいて動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定する。そして決定部は、第2推定情報の変化量が所定値以上になり適正な推定処理が不可能になると、撮像情報により推定する第1推定情報に基づいて動作計測対象物の所定部位の位置および方向を決定するように切り替えるようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、絶対位置推定部が、カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで、計測対象のセンサモジュールの位置および方向を推定する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、センサモジュールに測距センサを設置し、この測距センサで計測された作業者Xの周囲の物体の複数箇所までの距離情報に基づいて、センサモジュールの位置および方向を推定してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 動作計測システム
10-1~10-5 センサモジュール
11-1~11-5 カメラ装置
12-1~12-5 モジュール有線通信部
13-1~13-5 IMUセンサ
14-1~14-5 モジュール無線通信部
20 動作計測装置
21 計測装置有線通信部
22 計測装置無線通信部
23 CPU
24 GUI情報記憶部
25 表示部
131-1~131-5 ジャイロセンサ
132-1~132-5 加速度センサ
231~235 モジュール情報処理部
231a~235a 撮像情報取得部
231b~235b 絶対位置推定部
231c~235c 慣性情報取得部
231d~235d 慣性情報処理部
231e~235e 決定部232
236 動作計測部
237 GUI情報生成部