(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167471
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】単結晶シリコン基板、液体吐出ヘッド及び単結晶シリコン基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20231116BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B41J2/16 507
B41J2/14 613
B41J2/14 301
B41J2/16 301
B41J2/16 517
B41J2/16 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078679
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正寛
(72)【発明者】
【氏名】北原 浩司
(72)【発明者】
【氏名】古谷 昇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 本規
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG29
2C057AG44
2C057AP34
2C057AP35
2C057AP54
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】小型で高解像度の液体吐出ヘッドを製造する。
【解決手段】少なくとも一部が液体の流路を構成する単結晶シリコン基板20であって、単結晶シリコン基板20の基板面20a及び20bに対して傾斜した傾斜側壁21aを有する第1貫通孔21と、流路51を構成するとともに、基板面20a及び20bに対して傾斜側壁21aよりも垂直に近い垂直側壁22aで側壁が構成される第2貫通孔22と、を備え、第1貫通孔21が結晶異方性エッチングで形成され、第2貫通孔22が金属アシスト化学エッチングで形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が液体の流路を構成する単結晶シリコン基板であって、
前記単結晶シリコン基板の基板面に対して傾斜した傾斜側壁を有する第1貫通孔と、
前記流路を構成するとともに、前記基板面に対して前記傾斜側壁よりも垂直に近い垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔と、
を備え、
前記第1貫通孔が結晶異方性エッチングで形成され、前記第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成されることを特徴とする単結晶シリコン基板。
【請求項2】
請求項1に記載の単結晶シリコン基板において、
前記基板面として、前記傾斜側壁が露出する側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記第1面から前記第2面まで貫通し、
前記第2貫通孔の前記第1面側の開口部は、前記第1面に向かうにつれて広がる前記第1面に対する傾斜面が設けられていることを特徴とする単結晶シリコン基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の単結晶シリコン基板と、
圧電素子と前記圧電素子に導通する導通部とが形成される第3面と、少なくとも一部が前記流路を構成するとともに前記第3面とは反対側の第4面と、を有するキャビティー基板と、
を備え、
前記基板面に前記第3面が接合されることで前記第1貫通孔を介して前記導通部の一部が露出されるとともに、前記第4面の前記流路が前記第2貫通孔と連通することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
単結晶シリコン基板の基板面のうちの第1面の第1エッチング対象領域を結晶異方性エッチングすることにより、前記基板面に対して傾斜した傾斜側壁を有する第1貫通孔を形成する工程と、
前記基板面のうちの前記第1面とは反対側の第2面の第2エッチング対象領域に触媒膜を形成する工程と、
前記触媒膜が形成された状態の前記単結晶シリコン基板をエッチング液と接触させて前記第2エッチング対象領域をエッチングして、前記第2面に対して前記傾斜側壁よりも垂直に近い垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔を形成する工程と、
を有することを特徴とする単結晶シリコン基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の単結晶シリコン基板の製造方法において、
前記第1貫通孔を形成する工程では、エッチング液としてアルカリ性水溶液を使用し、
前記第2貫通孔を形成する工程では、前記第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成されることを特徴とする単結晶シリコン基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の単結晶シリコン基板の製造方法において、
前記触媒膜を形成する工程では、前記触媒膜は無電解めっき法または蒸着法により形成されることを特徴とする単結晶シリコン基板の製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の単結晶シリコン基板の製造方法において、
前記第2貫通孔を形成する工程では、前記第2貫通孔を前記第2面から前記第1面まで貫通させ、
前記第2貫通孔の前記第1面側の開口部に、前記第1面に向かうにつれて広がる前記第1面に対する傾斜面を設ける工程を有することを特徴とする単結晶シリコン基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコン基板、液体吐出ヘッド及び単結晶シリコン基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々なシリコン基板が使用されている。このようなシリコン基板は、液体としてのインクを吐出するインクジェットヘッドなど、様々な液体吐出ヘッドに好ましく使用されている。このようなシリコン基板を備える液体吐出ヘッドとして、例えば、特許文献1には、シリコンなどで形成可能な流路基板及び封止基板を備える液滴吐出ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出ヘッドとしては、小型で高解像度のものが好ましい。ここで、特許文献1の液滴吐出ヘッドは、封止基板であるリザーバー形成基板に、圧電素子に導通する配線を配置する貫通孔としての第1開口部と、インクリザーバーである貫通孔と、が設けられている。ここで、第1開口部及びインクリザーバーは共に水酸化カリウムをエッチング液として用いた異方性エッチングにより形成されている。このような方法で貫通孔を形成すると、貫通孔の側面は基板面に対して斜面を形成する。このため、第1貫通孔としての第1開口部の側面は図でも表されるようにリザーバー形成基板の基板面に対し明らかに斜面を形成しているとともに、第2貫通孔としてのインクリザーバーの側面もリザーバー形成基板の基板面に対し斜面を形成しているといえる。しかしながら、第1貫通孔と第2貫通孔とを共に側面が斜面を形成する構成とすると、基板面を広く構成しなければならなくなり、液体吐出ヘッドが大型化するとともにノズル間のピッチが広がり低解像度化する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題を解決するための本発明に係る単結晶シリコン基板は、少なくとも一部が液体の流路を構成する単結晶シリコン基板であって、前記単結晶シリコン基板の基板面に対して傾斜した傾斜側壁を有する第1貫通孔と、前記流路を構成するとともに、前記基板面に対して前記傾斜側壁よりも垂直に近い垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔と、を備え、前記第1貫通孔が結晶異方性エッチングで形成され、前記第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成されることを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するための本発明に係る単結晶シリコン基板の製造方法は、単結晶シリコン基板の基板面のうちの第1面の第1エッチング対象領域を結晶異方性エッチングすることにより、前記基板面に対して傾斜した傾斜側壁を有する第1貫通孔を形成する工程と、単結晶シリコン基板の基板面のうちの前記第1面とは反対側の第2面の第2エッチング対象領域に触媒膜を形成する工程と、前記触媒膜が形成された状態の前記単結晶性シリコン基板をエッチング液と接触させて前記第2エッチング対象領域をエッチングして、前記第2面に対して前記傾斜側壁よりも垂直に近い垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1の液体吐出ヘッドの底面図及びその一部領域Xの拡大図。
【
図4】
図1の液体吐出ヘッドの封止板の製造過程を表す図。
【
図5】
図1の液体吐出ヘッドの封止板の製造方法を表すフローチャート。
【
図6】
図1の液体吐出ヘッド全体の製造方法を表すフローチャート。
【
図7】本発明の実施例2の液体吐出ヘッドの封止板の製造過程を表す図。
【
図8】本発明の実施例3の液体吐出ヘッドの封止板の製造過程を表す図。
【
図9】本発明の実施例4の液体吐出ヘッドの封止板の製造過程を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の単結晶シリコン基板は、少なくとも一部が液体の流路を構成する単結晶シリコン基板であって、前記単結晶シリコン基板の基板面に対して傾斜した傾斜側壁を有する第1貫通孔と、前記流路を構成するとともに、前記基板面に対して前記傾斜側壁よりも垂直に近い垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔と、を備え、前記第1貫通孔が結晶異方性エッチングで形成され、前記第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成されることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、第1貫通孔が結晶異方性エッチングで形成され、第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成される。金属アシスト化学エッチングで貫通孔を形成することにより結晶異方性エッチングで貫通孔を形成する場合よりも垂直に近い側壁の貫通孔とすることができる。このため、基板面に対して略垂直な垂直側壁で第2貫通孔の側壁を構成することができる。したがって、緻密な構造の単結晶シリコン基板を製造することができ、小型で高解像度の液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0010】
本発明に係る第2の態様の単結晶シリコン基板は、第1の態様において、前記基板面として、前記傾斜側壁が露出する側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記第1面から前記第2面まで貫通し、前記第2貫通孔の前記第1面側の開口部は、前記第1面に向かうにつれて広がる前記第1面に対する傾斜面が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第2貫通孔の第1面側の開口部は、第1面に向かうにつれて広がる第1面に対する傾斜面が設けられている。このため、開口部にバリなどが残ることを抑制することができる。また、このような開口部とすることで、例えば、開口部から第2貫通孔に液体を流入する場合において、液体を好適に流入することができる。
【0012】
本発明の第3の態様の液体吐出ヘッドは、前記第1または第2の単結晶シリコン基板と、圧電素子と前記圧電素子に導通する導通部とが形成される第3面と、少なくとも一部が前記流路を構成するとともに前記第3面とは反対側の第4面と、を有するキャビティー基板と、を備え、前記基板面に前記第3面が接合されることで前記第1貫通孔を介して前記導通部の一部が露出されるとともに、前記第4面の前記流路が前記第2貫通孔と連通することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、上記単結晶シリコン基板とキャビティー基板とにより、基板面に第3面が接合されることで第1貫通孔を介して導通部の一部が露出される構成とするとともに、第4面の流路が第2貫通孔と連通する構成とすることで、小型で高解像度の液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0014】
本発明に係る第4の態様の単結晶シリコン基板の製造方法は、単結晶シリコン基板の基板面のうちの第1面の第1エッチング対象領域を結晶異方性エッチングすることにより、前記基板面に対して傾斜した傾斜側壁を有する第1貫通孔を形成する工程と、前記基板面のうちの前記第1面とは反対側の第2面の第2エッチング対象領域に触媒膜を形成する工程と、前記触媒膜が形成された状態の前記単結晶シリコン基板をエッチング液と接触させて前記第2エッチング対象領域をエッチングして、前記第2面に対して前記傾斜側壁よりも垂直に近い垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、第1エッチング対象領域を結晶異方性エッチングすることにより傾斜側壁を有する第1貫通孔を形成し、触媒膜を形成した第2エッチング対象領域をエッチングして垂直側壁で側壁が構成される第2貫通孔を形成する。金属アシスト化学エッチングのような触媒膜を利用して貫通孔を形成することにより結晶異方性エッチングで貫通孔を形成する場合よりも垂直に近い側壁の貫通孔とすることができる。このため、基板面に対して略垂直な垂直側壁で第2貫通孔の側壁を構成することができる。したがって、緻密な構造の単結晶シリコン基板を製造することができ、小型で高解像度の液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0016】
本発明に係る第5の態様の単結晶シリコン基板の製造方法は、第4の態様において、前記第1貫通孔を形成する工程では、エッチング液としてアルカリ性水溶液を使用し、前記第2貫通孔を形成する工程では、前記第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成されることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第1貫通孔を形成する工程ではエッチング液としてアルカリ性水溶液を使用し、第2貫通孔を形成する工程では第2貫通孔が金属アシスト化学エッチングで形成される。このように単結晶シリコン基板を製造することで、簡単かつ高精度に単結晶シリコン基板を製造することができる。
【0018】
本発明に係る第6の態様の単結晶シリコン基板の製造方法は、第5の態様において、前記触媒膜を形成する工程では、前記触媒膜は無電解めっき法または蒸着法により形成されることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、触媒膜は無電解めっき法または蒸着法により形成される。このように単結晶シリコン基板を製造することで、特に簡単かつ高精度に単結晶シリコン基板を製造することができる。
【0020】
本発明に係る第7の態様の単結晶シリコン基板の製造方法は、第4から第6のいずれか1つの態様において、前記第2貫通孔を形成する工程では、前記第2貫通孔を前記第2面から前記第1面まで貫通させ、前記第2貫通孔の前記第1面側の開口部に、前記第1面に向かうにつれて広がる前記第1面に対する傾斜面を設ける工程を有することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第2貫通孔を第2面から第1面まで貫通させ、第2貫通孔の第1面側の開口部に第1面に向かうにつれて広がる第1面に対する傾斜面を設ける。このため、開口部にバリなどが残ることを抑制することができる。また、このような開口部とすることで、例えば、開口部から第2貫通孔に液体を流入する場合において、液体を好適に流入することができる。
【0022】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1の液体吐出ヘッド1について
図1から
図4を参照して詳細に説明する。なお、以下の図においては、液体吐出ヘッド1の構造をわかりやすくするため、一部の部材の簡略化、一部の部材の省略化、一部の部材の縦横比の変更などがなされている。
【0023】
図1で表される本実施例の液体吐出ヘッド1は、移動方向Aに媒体を搬送して、または、停止した媒体に対して移動方向Aに液体吐出ヘッド1自体が移動して、媒体に対して液体としてのインクをノズルNから吐出して画像を形成することが可能なインクジェットヘッドの底面図である。本実施例の液体吐出ヘッド1は、移動方向Aと交差する幅方向Bにおける媒体全体に対応してノズルNが設けられる所謂ラインヘッドである。
【0024】
ラインヘッドの底面であるノズル形成面11に複数のノズルNを配置する場合、幅方向BにノズルNを並べると最もシンプルにノズルNを配置することができる。ただし、そのようにノズルNを配置すると、幅方向Bにおける隣接するノズルN同士のピッチが広くなってしまう。隣接するノズルN同士のピッチが広くなると解像度が低下する。そこで、本実施例の液体吐出ヘッド1は、ノズルNが一直線に並ぶ複数のノズル列12を移動方向Aに対して斜めになるように配置している。
【0025】
図1の領域Xの拡大図で表されるように、本実施例の液体吐出ヘッド1においては、各々のノズル列12の幅方向BにおけるノズルNの間隔はピッチP1となっている。さらに、隣接するノズル列12で同じインクを吐出する構成とし、幅方向Bにおいて隣接するノズル列12同士でノズルNの位置がノズル列12毎にピッチP1の半分ずれて配置される構成としていることで、液体吐出ヘッド1の幅方向BにおけるノズルNの間隔はピッチP1の半分であるピッチP0となっている。本実施例の液体吐出ヘッド1は、このようなノズル列12の配置とすることでピッチP0をとして1200dpi(ドット パー インチ)という解像度となるように高解像度化している。
【0026】
なお、このように移動方向Aに対して斜めになるようにノズル列12の配置とすることに加えて、隣接するノズルN同士の間隔を狭めることでさらに高解像度化することができる。本実施例の液体吐出ヘッド1は、
図2で表される構成とすることで、隣接するノズルN同士の間隔を狭めている。
図2は、概ね移動方向Aに沿う方向において切断した断面図である。本実施例の液体吐出ヘッド1は、不図示のインクカートリッジからノズル列12のうちのノズル列12A及びノズル列12Bの両方に同じインクが供給され、ノズル列12AのノズルNとノズル列12BのノズルNとで同じインクを吐出可能である。また、本実施例の液体吐出ヘッド1は、インクを循環して使用可能な構成となっており、液体吐出ヘッド1の内部でインクは流れ方向Fに流れる。詳細には、ノズル列12A及びノズル列12Bの両方において、インクカートリッジから流れ方向Fに流れてきたインクは、いずれも流路51の一部を形成する、後述する封止板20の第2貫通孔22に対応する流路51A、後述するキャビティー基板30の貫通孔に対応する流路51B、キャビティー基板30と後述する流路基板40とで構成される流路51C、を介して、循環流路51Dに戻る。このように、2つのノズル列12に対して循環流路51Dを共通化していることで、隣接するノズル列12同士の間隔を狭めている。なお、循環流路51Dに戻ったインクは、再度流路51を流れ方向Fに流れ、再利用される。
【0027】
以下に、
図2及び
図3を参照してさらに本実施例の液体吐出ヘッド1の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施例の液体吐出ヘッド1のノズル列12A側の一部を表している。本実施例の液体吐出ヘッド1は、封止板20と、キャビティー基板30と、流路基板40と、を備えている。
【0028】
封止板20は、少なくとも一部が液体の流路51を構成する単結晶シリコン基板である。また、封止板20は、基板面として第1面20a及び該第1面20aとは反対側の面である第2面20bを有し、第1面20a及び第2面20bに対して傾斜した傾斜側壁21aを有する第1貫通孔21を備えている。また、封止板20は、流路51を構成するとともに、第1面20a及び第2面20bに対して傾斜側壁21aよりも垂直に近い垂直側壁22aで側壁が構成される第2貫通孔22を備えている。そして、第2貫通孔22は、流路51の一部であってインクリザーバーの役割をしている。このように、垂直に近い垂直側壁22aで側壁が構成される第2貫通孔22をインクリザーバーの役割とすることで、基板面の広がる面方向に封止板20が大きくなることを抑制でき、液体吐出ヘッド1の小型化が可能になっている。
【0029】
キャビティー基板30は、基板面として第3面30a及び該第3面30aとは反対側の面である第4面30bを有し、第3面30aが第2面20bに接合されることで封止板20に接合されている。本実施例のキャビティー基板30も、封止板20と同様、単結晶シリコン基板であるが、単結晶シリコン基板であることに限定されない。また、第3面30aには電極部31として圧電素子32と圧電素子32に導通する導通部としての電極膜33及び34とが形成され、第4面30bは少なくともその一部が流路51を構成している。なお、電極部31の形成位置に対応する封止板20の領域には、圧電素子収容室23が設けられている。電極膜33は圧電素子収容室23から第1貫通孔21まで進出している。別の観点から説明すると、第1貫通孔21においてTCP(テープ キャリア― パッケージ)がCOF(チップ オン フレックス)実装される。COF実装ではTCPを加熱圧着するために専用のツールを用いるが、COF実装の際に第1面20a側を広く第2面20b側を狭くすることで、面方向に封止板20やキャビティー基板30が大きくなることを抑制でき、液体吐出ヘッド1の小型化が可能になっている。
【0030】
流路基板40は、キャビティー基板30を介して電極部31に対向する位置に圧力室41が設けられ、圧力室41にはインクを吐出方向Dに吐出するノズルNが設けられている。圧力室41は流路51の一部を形成するとともに循環流路51Dに繋がっており、ノズルNから吐出しきれないインクを循環流路51Dに流すことができる。電極部31が通電されると、圧電素子32が変形し、キャビティー基板30が振動することで圧力室41に圧力が加わり、圧力室41内のインクがノズルNから吐出方向Dに吐出する。
【0031】
ここで、本実施例の封止板20においては、第1貫通孔21は結晶異方性エッチングで形成され、第2貫通孔22は金属アシスト化学エッチング(MACE)で形成されている。MACEで貫通孔を形成することにより結晶異方性エッチングで貫通孔を形成する場合よりも垂直に近い側壁の貫通孔とすることができる。このため、基板面である第1面20a及び第2面20bに対して略垂直な垂直側壁22aで第2貫通孔22の側壁を構成することができている。封止板20をこのような構成とすることで、緻密な構造の単結晶シリコン基板を製造することができ、小型で高解像度の液体吐出ヘッド1を製造することができる。また、第1貫通孔21を結晶異方性エッチングで形成し、第2貫通孔22を金属アシスト化学エッチングで形成することで、温室効果ガスを多く用いるドライエッチングを使用せず、オールウェットの状態でエッチングをすることができる。このため、封止板20をこのような構成とすることで、生産性を向上することができるとともに、製造に伴う電力量や温室効果ガスの使用を削減することができる。
【0032】
ここで、基板面に対する垂直側壁22aのなす角度は、90°プラスマイナス2°以下であることが好ましい。封止板20に表面である基板面のミラー指数(面指数)が(100)の単結晶シリコンのウエハを使い、エッチング液組成を工夫することで、垂直なMACEによるエッチングを、例えば封止板20の厚みを400μm程度の範囲で管理し、垂直度を確保することができるためである。
【0033】
また、基板面に対する傾斜側壁21aのなす角度は、45.0°以上54.7°以下であることが好ましい。54.7°は、ミラー指数(面指数)が(100)の封止板20の第1面20aの表面部分とエッチングの進行が最も遅いミラー指数(面指数)が(111)の結晶面とのなす角であり、計算ではCOS-1(1/31/2)の値である。また、45°は、次に安定するミラー指数(面指数)が(110)の結晶面とのなす角となるCOS-1(1/21/2)の値である。なお、該角度を45°とした場合に比べ、該角度を54.7°とした場合の方がエッチング面として安定していて、封止板20の全体のサイズも小さくできる。
【0034】
また、本実施例の液体吐出ヘッド1は、上記のような単結晶シリコン基板である封止板20と、上記のような第3面30aと第4面30bとを有するキャビティー基板30と、を備えている。そして、本実施例の液体吐出ヘッド1は、封止板20の基板面である第2面20bに第3面30aが接合されることで第1貫通孔21を介して導通部の一部が露出されるとともに、第4面30bが一部を構成する流路51が第2貫通孔22と連通するよう構成されている。このように、本実施例の液体吐出ヘッド1は、上記封止板20とキャビティー基板30とにより封止板20の基板面に第3面30aが接合されることで第1貫通孔21を介して導通部の一部が露出される構成とし、第4面30bの流路51が第2貫通孔22と連通する構成としていることで、小型で高解像度となっている。
【0035】
次に、本実施例の封止板20の製造方法について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図5で表されるように、本実施例の封止板20の製造方法においては、最初にステップS10のエッチング準備工程を実行する。ステップS10のエッチング準備工程では、最初に
図4の一番上の図で表される単結晶シリコン基板201に対し、
図4の上から2番目の図で表されるようにSiO
2で表される酸化膜202を形成する。そして、
図4の上から3番目の図で表されるようにフォトリソによりレジスト203でパターン化し、
図4の上から4番目の図で表されるようにMACEの触媒膜となる金による膜であるAu膜204を形成し、
図4の上から5番目の図で表されるようにリフトオフ形成する。なお、本実施例ではAu膜204の形成は図中の下面全体にAuを蒸着させることにより行ったが、Au膜204の形成はこのような方法に限定されない。ここで、
図4の上から5番目の図の状態においては、Au膜204は下面から見ると円盤状をしている。その後、
図4の上から6番目の図で表されるように図中の下面全体にSiO
2で表される酸化膜202を形成し、フォトリソによりレジストでパターン化した後に
図4の上から7番目の図で表されるようにレジストをエッチングにより除去する。ここまでがステップS10のエッチング準備工程に対応する。
【0036】
次に、
図5のステップS20の第1貫通孔形成工程を実行する。具体的には、水酸化カリウム(KOH)を用いたウェットエッチングである結晶異方性エッチングによって、
図4の上から8番目の図で表されるように、第1貫通孔21に対応する貫通孔を形成する。この際、圧電素子収容室23に対応する凹部も併せて形成する。なお、第1貫通孔21に対応する貫通孔に比べて圧電素子収容室23に対応する凹部は浅いので、例えば、
図4の上から7番目の図で表される状態において、圧電素子収容室23に対応する凹部に対応する領域にSiO
2で表される酸化膜202を薄く残しておいてもよい。そして、結晶異方性エッチングによって第1貫通孔21に対応する貫通孔を形成し、その後、圧電素子収容室23に対応する単結晶シリコン基板201の図中の下面の領域の酸化膜202をエッチングしてから結晶異方性エッチングによって圧電素子収容室23に対応する凹部を形成してもよい。
【0037】
次に、
図5のステップS30の第2貫通孔形成工程を実行する。具体的には、フッ化水素と過酸化水素水を混合した溶液フッ化水素水溶液を用いてMACEによって、
図4の上から9番目の図で表されるように、第2貫通孔22に対応する貫通孔を形成する。そして、Au膜204をエッチングすると、
図4の一番下の図で表されるように、本実施例の封止板20が完成する。なお、本実施例では、ステップS20の第1貫通孔形成工程を実行した後にステップS30の第2貫通孔形成工程を実行したが、ステップS10のエッチング準備工程の内容を変えるなどしてステップS30の第2貫通孔形成工程を実行した後にステップS20の第1貫通孔形成工程を実行してもよい。
【0038】
上記のように、単結晶シリコン基板の製造方法としての本実施例の封止板20の製造方法は、単結晶シリコン基板である封止板20の基板面のうちの第1面20aの第1貫通孔21の形成領域に対応する第1エッチング対象領域を結晶異方性エッチングすることにより、基板面に対して傾斜した傾斜側壁21aを有する第1貫通孔21を形成するステップS20の第1貫通孔形成工程を有する。また、
図4の上から4番目及び5番目の図に対応し、基板面のうちの第2面20bの第2貫通孔22の形成領域に対応する第2エッチング対象領域にAuの触媒膜であるAu膜204を形成するステップS10のエッチング準備工程を有する。また、Au膜204が形成された状態の単結晶シリコン基板201をエッチング液であるフッ化水素水溶液と接触させて第2貫通孔22の形成領域に対応する第2エッチング対象領域をエッチングして、第2面20bに対して傾斜側壁21aよりも垂直に近い垂直側壁22aで側壁が構成される第2貫通孔22を形成するステップS30の第2貫通孔形成工程を有する。
【0039】
このように、本実施例の封止板20の製造方法は、第1エッチング対象領域を結晶異方性エッチングすることにより傾斜側壁21aを有する第1貫通孔21を形成し、触媒膜を形成した第2エッチング対象領域をエッチングして垂直側壁22aで側壁が構成される第2貫通孔22を形成する。MACEのような触媒膜を利用して貫通孔を形成することにより結晶異方性エッチングで貫通孔を形成する場合よりも垂直に近い側壁の貫通孔とすることができる。このため、基板面に対して略垂直な垂直側壁22aで第2貫通孔22の側壁を構成することができる。したがって、本実施例の封止板20の製造方法を実行することで、緻密な構造の封止板20を製造することができ、小型で高解像度の液体吐出ヘッド1を製造することができる。
【0040】
ここで、ステップS20の第1貫通孔形成工程ではエッチング液としてアルカリ性水溶液である水酸化カリウム水溶液を使用し、ステップS30の第2貫通孔形成工程では第2貫通孔22がMACEで形成される。このように封止板20を製造することで、簡単かつ高精度に封止板20を製造することができる。なお、エッチング液としてのアルカリ性水溶液としては、例えば、本実施例で用いた水酸化カリウム水溶液のほかに、テトラメチル水酸化アンモニウム(THAM)水溶液、などを好ましく使用できるが、特に限定は無い。水酸化カリウム水溶液は安価なため、例えば、半導体を伴わないシリコン基板加工に用いることができる。一方でTHAM水溶液はNaやK等の可動イオンを含まないため、例えば、半導体を伴うシリコン基板加工への結晶異方性エッチング加工に用いることができる。
【0041】
なお、ステップS10のエッチング準備工程のうちの触媒膜を形成する工程では、その方法に特に限定は無いが、触媒膜は無電解めっき法または蒸着法により形成されることが好ましい。触媒膜を無電解めっき法または蒸着法により形成して封止板20を製造することで、特に簡単かつ高精度に封止板20を製造することができるためである。
【0042】
次に、上記のようにして形成された封止板20を使用して液体吐出ヘッド1の全体を製造する方法について
図6のフローチャートを参照して説明する。最初にステップS110で、封止板20を形成する。封止板20の形成は上記のとおりである。次に、ステップS120でキャビティー基板30を従来の製造方法などを用いて形成し、ステップS130で封止板20とキャビティー基板30とを接合する。なお、ステップS110とステップS120の順番は、逆でもよいし、同時でもよい。
【0043】
その後、ステップS140で、酸化チタン(TiOx)や酸化ハフニウム(HfOx)等のインク保護膜をCVD法(Chemical Vapor Deposition)などにより成膜してインク保護膜を形成する。また、ステップS150で従来の製造方法などを用いて流路基板40を形成するが、ステップS150はステップS140以前に行ってもよい。そして、ステップS160で、流路基板40を封止板20とキャビティー基板30とが接合された基板に接合する。そして、ステップS170でこれをレーザースクライプなどにより割断することでチップ化し、ステップS180で導通部を構成するTCPをCOF実装する。最後に、ステップS190で、ケース部品を装着して液体吐出ヘッド1の製造を完了する。このような方法では、ウエハ状態で液体吐出ヘッド1のチップを組み立てることができるので、品質を安定化させることができるとともに、大量生産が容易になる。
【0044】
[実施例2]
以下に、実施例2の液体吐出ヘッドについて
図7を参照して説明する。
図7は、実施例1の液体吐出ヘッド1における
図4に対応する図である。本実施例の液体吐出ヘッドは、以下で説明する構成以外については、実施例1の液体吐出ヘッド1と同様である。このため、本実施例の液体吐出ヘッドは、下記の説明箇所以外については実施例1の液体吐出ヘッド1と同様の特徴を有している。そこで、
図7では上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0045】
ここで、
図7の一番上の図は、
図4の上から5番目の図に対応する。
図4の一番上から上から4番目までの図に対応する本実施例の工程は、実施例1と同様であるため省略する。ただし、本実施例では、Au膜204は、下面から見ると円環状をしている。
図7の一番上の図の状態から実施例1の場合と同様にMACEを行うと、
図7の上から2番目の図の状態となる。
図7の上から2番目の図は、MACEにより単結晶シリコン基板201に円筒状の穴が形成された状態を表している。その後、Au膜204をエッチングすると
図7の上から3番目の図の状態となる。
【0046】
その後、SiO
2で表される酸化膜202を単結晶シリコン基板201の全体に形成すると
図7の上から4番目の図の状態となる。その後、フォトリソによりレジストでパターン化し、レジストをエッチングにより除去すると、
図7の上から5番目の図の状態となる。ここでは、第2貫通孔22に対応する第1面20a側も酸化膜202が形成されていない状態とする。その後、単結晶シリコン基板201を形成するケイ素(Si)の結晶異方性エッチングを行うと、
図7の上から6番目の図の状態となる。ここでは、第2貫通孔22に対応する第1面20a側にも凹部が形成される。そして、最後に酸化膜202を除去すると、
図7の一番下の図の状態となる。なお、上記において、MACEによるエッチングは酸化膜202によりストップするとともに酸化膜202の除去により第1貫通孔21及び第2貫通孔22が開口し、結晶異方性エッチングは単結晶シリコン基板201のミラー指数(面指数)が(111)の結晶面にてストップする。
【0047】
図7の一番下の図で表されるように、このようにして形成された本実施例の封止板20は、第2貫通孔22の第1面20a側の開口部24は、第1面20aに向かうにつれて広がっている。詳細には、本実施例の封止板20は、基板面として第1面20aと第2面20bとを有し、第1面20aは傾斜側壁21aが露出する側の面である。そして、第1貫通孔21及び第2貫通孔22は第1面20aから第2面20bまで貫通し、第2貫通孔22の第1面20a側の開口部24は、第1面20aに向かうにつれて広がる第1面20aに対する傾斜面24aが設けられている。本実施例の封止板20は、このような構成であるため、開口部24にバリなどが残ることを抑制している。また、このような開口部24とすることで、例えば、開口部24から第2貫通孔22にインクなどの液体を流入する場合において、該液体を好適に流入することができる。なお、「傾斜側壁21aが露出する側」とは、「基板面と垂直な方向から見て傾斜側壁21aが見える側」と表現することもできる。
【0048】
また、本実施例の封止板20を製造する場合、
図5と同様の製造フローとなるが、
図5において、ステップS30の第2貫通孔形成工程では、第2貫通孔22を第2面20bから第1面20aまで貫通させ、第2貫通孔22の第1面20a側の開口部24に、第1面20aに向かうにつれて広がる第1面20aに対する傾斜面24aを設ける工程を有することとなる。ステップS30の第2貫通孔形成工程をこのような工程とすることで、開口部24にバリなどが残ることを抑制することができる。また、このような開口部24とすることで、例えば、開口部24から第2貫通孔22に液体を流入する場合において、液体を好適に流入することができる。
【0049】
[実施例3]
以下に、実施例3の液体吐出ヘッドについて
図8を参照して説明する。
図8は、実施例1の液体吐出ヘッド1における
図4に対応する図である。本実施例の液体吐出ヘッドは、以下で説明する構成以外については、実施例1の液体吐出ヘッド1と同様である。このため、本実施例の液体吐出ヘッドは、下記の説明箇所以外については実施例1の液体吐出ヘッド1と同様の特徴を有している。そこで、
図8では上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0050】
図8の一番上の図は、SiO
2で表される酸化膜202を単結晶シリコン基板201の全体に形成するとともに、フォトリソによりレジストでパターン化してレジストをエッチングにより除去することを繰り返し、
図5のステップS10のエッチング準備工程を終了した状態を表している。
図8の上から2番目の図は、
図8の一番上の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、
図5のステップS20の第1貫通孔形成工程を実行した状態を表している。
図8の上から3番目の図は、
図8の上から2番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、酸化膜202をさらに成膜した状態を表している。
【0051】
図8の上から4番目の図は、
図8の上から3番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、フォトリソによりレジストでパターン化してレジストをエッチングにより除去するとともに、Au膜204を無電解めっきにより成膜した状態を表している。
図8の上から5番目の図は、
図8の上から4番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、
図5のステップS30の第2貫通孔形成工程を実行した状態を表している。そして、
図8の一番下の図は、
図8の上から5番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、Au膜204をエッチングした状態を表している。
図8で表される段階を経て本実施例の封止板20を形成することで、
図7で表される段階を経て形成される実施例2の封止板20と同様な形状の封止板20を製造することができる。
【0052】
[実施例4]
以下に、実施例4の液体吐出ヘッドについて
図9を参照して説明する。
図9は、実施例1の液体吐出ヘッド1における
図4に対応する図である。本実施例の液体吐出ヘッドは、以下で説明する構成以外については、実施例1の液体吐出ヘッド1と同様である。このため、本実施例の液体吐出ヘッドは、下記の説明箇所以外については実施例1の液体吐出ヘッド1と同様の特徴を有している。そこで、
図9では上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0053】
実施例1から実施例3の封止板20は、ステップS30の第2貫通孔形成工程において第2面20b側のみからMACEを行って形成された。本実施例の封止板20は、ステップS30の第2貫通孔形成工程において第2面20b側からだけでなく第1面20a側からもMACEを行って形成されるものであり、
図4で表される段階を経て形成される実施例1の封止板20と同様な形状の封止板20である。
【0054】
図9の一番上の図は、
図5のステップS10のエッチング準備工程を終了した状態であって、第2貫通孔22に対応する領域に第2面20b側だけでなく第1面20a側にもAu膜204が形成され、それ以外の領域にはSiO
2で表される酸化膜202が成膜された状態を表している。
図9の上から2番目の図は、
図9の一番上の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、第1面20a側及び第2面20b側の両方にさらに酸化膜202が成膜された状態を表している。
図9の上から3番目の図は、
図9の上から2番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、フォトリソによりレジストでパターン化してレジストをエッチングにより除去することで、第1面20aの第1貫通孔21に対応する領域の酸化膜202を除去した状態を表している。
【0055】
図9の上から4番目の図は、
図9の上から3番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、
図5のステップS20の第1貫通孔形成工程を実行した状態を表している。
図9の上から5番目の図は、
図9の上から4番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、フォトリソによりレジストでパターン化してレジストをエッチングにより除去することで、第2面20bの圧電素子収容室23に対応する領域の酸化膜202を除去した状態を表している。
図9の上から6番目の図は、
図9の上から5番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、ケイ素のエッチングを実行し、
図5のステップS20の第1貫通孔形成工程をさらに実行した状態を表している。この際、圧電素子収容室23に対応する領域もエッチングされる。
【0056】
図9の上から7番目の図は、
図9の上から6番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、酸化膜202のエッチングを実行した後に
図5のステップS30の第2貫通孔形成工程を実行した状態を表している。ここでは、図中の上下方向からMACEが行われる。そして、
図9の一番下の図は、
図9の上から7番目の図の状態の単結晶シリコン基板201に対して、Au膜204をエッチングした状態を表している。
図9で表される段階を経て本実施例の封止板20を形成することで、
図4で表される段階を経て形成される実施例1の封止板20と同様な形状の封止板20を製造することができる。
【0057】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、上記の封止板20のような単結晶シリコン基板をマイクロポンプなど、液体吐出ヘッド以外に使用することもできる。また、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…液体吐出ヘッド、11…ノズル形成面、12…ノズル列、12A…ノズル列、12B…ノズル列、20…封止板(単結晶シリコン基板)、20a…第1面(基板面)、20b…第2面(基板面)、21…第1貫通孔、21a…傾斜側壁、22…第2貫通孔、22a…垂直側壁、23…圧電素子収容室、24…開口部、24a…傾斜面、30…キャビティー基板、30a…第3面、30b…第4面、31…電極部、32…圧電素子、33…電極膜(導通部)、34…電極膜(導通部)、40…流路基板、41…圧力室、51…流路、51A…流路、51B…流路、51C…流路、51D…循環流路、201…単結晶シリコン基板、202…酸化膜、203…レジスト、204…Au膜(触媒膜)、N…ノズル、P0…ピッチ、P1…ピッチ