(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167478
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】スラブ状部材の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E02D29/05 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078692
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】池田 真
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 和行
(72)【発明者】
【氏名】松野 真樹
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】皆川 春奈
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA05
2D147JC00
(57)【要約】
【課題】ハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築において、作業性の向上や工期の短縮を図る。
【解決手段】プレキャストスラブと現場打ちコンクリートからなり、一対の支持部材に跨って搭載されるハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築方法であって、前記一対の支持部材に前記プレキャストスラブの幅方向端部を搭載する工程と、前記プレキャストスラブの上方に掛け渡した支保工により当該支保工から下方に向かって伸びる吊り下げ材を介して前記プレキャストスラブを吊り下げる工程と、前記プレキャストスラブの上方に鉄筋構造を構築する工程と、前記吊り下げ材の少なくとも一部と前記鉄筋構造を埋設するように前記プレキャストスラブの上部に現場打ちコンクリートを打設し養生する工程と、前記支保工から前記吊り下げ材を分離し、前記支保工を撤去する工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストスラブと現場打ちコンクリートからなり、一対の支持部材に跨って搭載されるハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築方法であって、
前記一対の支持部材に前記プレキャストスラブの幅方向端部を搭載する工程と、
前記プレキャストスラブの上方に掛け渡した支保工により当該支保工から下方に向かって伸びる吊り下げ材を介して前記プレキャストスラブを吊り下げる工程と、
前記プレキャストスラブの上方に鉄筋構造を構築する工程と、
前記吊り下げ材の少なくとも一部と前記鉄筋構造を埋設するように前記プレキャストスラブの上部に現場打ちコンクリートを打設し養生する工程と、
前記支保工から前記吊り下げ材を分離し、前記支保工を撤去する工程と、を含み、
前記スラブ状部材において前記現場打ちコンクリートに埋設された前記吊り下げ材はせん断補強筋として機能することを特徴とする、スラブ状部材の構築方法。
【請求項2】
前記プレキャストスラブは当該プレキャストスラブに埋設された補強材によって補強され、
前記プレキャストスラブを吊り下げる工程においては、前記吊り下げ材の下端を前記補強材又は前記プレキャストスラブに連結させることを特徴とする、請求項1に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項3】
前記吊り下げ材の上端部には雄ネジ加工が施され、前記プレキャストスラブを吊り下げる工程においては、前記支保工と前記吊り下げ材の連結部において前記雄ネジに螺合するナットを締緩することにより前記吊り下げ材を上下させ、前記プレキャストスラブの姿勢を調整することを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項4】
前記吊り下げ材は、前記支保工に連結される上部吊り下げ材と、前記プレキャストスラブと連結される下部吊り下げ材と、が継手によって連結された構造を有し、
前記支保工を撤去する工程においては、前記継手を外すことにより前記下部吊り下げ材を前記支保工から分離させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項5】
前記下部吊り下げ材の上端及び下端に定着具を有することを特徴とする、請求項4に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項6】
前記支持部材は、肩部と、当該肩部から上方に延伸する頂部と、を備え、
前記プレキャストスラブの幅方向端部は前記肩部上に搭載され、
前記支保工は前記一対の支持部材の前記頂部上に掛け渡すように搭載されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項7】
前記支持部材はカルバートの壁であり、前記スラブ状部材は前記カルバートの頂版であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項8】
前記支持部材は柱であり、前記スラブ状部材は梁であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項9】
前記鉄筋構造は、前記プレキャストスラブの幅方向に平行に設置される主鉄筋と、前記主鉄筋と交差する方向に設置される配力筋と、を含み、
前記吊り下げ材は、前記主鉄筋と前記配力筋の一方又は両方に係留されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項10】
前記プレキャストスラブは互いに隣接して複数搭載され、
前記プレキャストスラブには、当該プレキャストスラブの幅方向に延伸する配力筋が、当該配力筋の端部が当該プレキャストスラブから突出するように埋設され、
複数の前記プレキャストスラブにおいて、隣り合う前記プレキャストスラブ同士は前記配力筋同士を継手により連結し、前記現場打ちコンクリートを打設し養生する工程では、隣接する複数のプレキャストスラブ間も含めてコンクリート打設が行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラブ状部材の構築方法。
【請求項11】
前記支持部材はカルバートの壁であり、前記スラブ状部材は前記カルバートの頂版であり、複数の前記プレキャストスラブは、前記カルバートの長さ方向において複数設置されることを特徴とする、請求項10に記載のスラブ状部材の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材を構築する構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造等の鉄筋を有するコンクリート複合構造物においては、現場での省力化・省人化を目的として、プレキャスト部材と現場打ちコンクリート部材とを組み合わせたハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材が用いられる。例えば、2つのコンクリート部材(プレキャストコンクリート部材及び現場打ちコンクリート部材)を組み合わせて構造物の頂版、梁部材、柱部材といった各種構造物を構成する部材が製作される。
【0003】
例えば、特許文献1には、プレキャストコンクリート版やそれを備えた建造物の床版構造が開示されている。特許文献1に開示された発明によれば、トラス構造補強体を構成する上端部材として縦リブを有する鉄骨を採用することで、コスト低減、工期短縮、現場作業性の向上等が図られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、上端部材として縦リブを有する鉄骨を用いているが、この上端部材を強固なものとする必要があるため、部材の大型化や大重量化が懸念される。そのため、作業性やコスト等の面で更なる改良の余地がある。現場打ち部分の鉄筋工は現場作業であり、特に過密配筋の場合には作業性が悪いため、作業性の向上や、鉄筋のユニット化などによる鉄筋工の工期短縮が求められる。本発明者らは、ハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築方法について、更なる作業性の向上や、工期短縮を図ることが可能な技術について鋭意検討を行った。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、ハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築において、作業性の向上や工期の短縮を図ることが可能なスラブ状部材の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、プレキャストスラブと現場打ちコンクリートからなり、一対の支持部材に跨って搭載されるハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築方法であって、前記一対の支持部材に前記プレキャストスラブの幅方向端部を搭載する工程と、前記プレキャストスラブの上方に掛け渡した支保工により当該支保工から下方に向かって伸びる吊り下げ材を介して前記プレキャストスラブを吊り下げる工程と、前記プレキャストスラブの上方に鉄筋構造を構築する工程と、前記吊り下げ材の少なくとも一部と前記鉄筋構造を埋設するように前記プレキャストスラブの上部に現場打ちコンクリートを打設し養生する工程と、前記支保工から前記吊り下げ材を分離し、前記支保工を撤去する工程と、を含み、前記スラブ状部材において前記現場打ちコンクリートに埋設された前記吊り下げ材はせん断補強筋として機能することを特徴とする、スラブ状部材の構築方法が提供される。
【0008】
前記プレキャストスラブは当該プレキャストスラブに埋設された補強材によって補強され、前記プレキャストスラブを吊り下げる工程においては、前記吊り下げ材の下端を前記補強材又は前記プレキャストスラブに連結させても良い。
【0009】
前記吊り下げ材の上端部には雄ネジ加工が施され、前記プレキャストスラブを吊り下げる工程においては、前記支保工と前記吊り下げ材の連結部において前記雄ネジに螺合するナットを締緩することにより前記吊り下げ材を上下させ、前記プレキャストスラブの姿勢を調整しても良い。
【0010】
前記吊り下げ材は、前記支保工に連結される上部吊り下げ材と、前記プレキャストスラブと連結される下部吊り下げ材と、が継手によって連結された構造を有し、
前記支保工を撤去する工程においては、前記継手を外すことにより前記下部吊り下げ材を前記支保工から分離させても良い。
【0011】
前記下部吊り下げ材の上端及び下端に定着具を有しても良い。
【0012】
前記支持部材は、肩部と、当該肩部から上方に延伸する頂部と、を備え、前記プレキャストスラブの幅方向端部は前記肩部上に搭載され、前記支保工は前記一対の支持部材の前記頂部上に掛け渡すように搭載されても良い。
【0013】
前記支持部材はカルバートの壁であり、前記スラブ状部材は前記カルバートの頂版であっても良い。
【0014】
前記支持部材は柱であり、前記スラブ状部材は梁であっても良い。
【0015】
前記鉄筋構造は、前記プレキャストスラブの幅方向に平行に設置される主鉄筋と、前記主鉄筋と交差する方向に設置される配力筋と、を含み、前記吊り下げ材は、前記主鉄筋と前記配力筋の一方又は両方に係留されても良い。
【0016】
前記プレキャストスラブは互いに隣接して複数搭載され、前記プレキャストスラブには、当該プレキャストスラブの幅方向に延伸する配力筋が、当該配力筋の端部が当該プレキャストスラブから突出するように埋設され、複数の前記プレキャストスラブにおいて、隣り合う前記プレキャストスラブ同士は前記配力筋同士を継手により連結し、前記現場打ちコンクリートを打設し養生する工程では、隣接する複数のプレキャストスラブ間も含めてコンクリート打設が行われても良い。
【0017】
前記支持部材はカルバートの壁であり、前記スラブ状部材は前記カルバートの頂版であり、複数の前記プレキャストスラブは、前記カルバートの長さ方向において複数設置されても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築において、作業性の向上や工期の短縮を図ることが可能となる。
【0019】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、又は、本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】吊り下げ材の構成の一例を示す概略説明図である。
【
図11】プレキャストスラブの構成の一例を示す概略説明図である。
【
図12】プレキャストスラブと吊り下げ材との連結に関する概略説明図である。
【
図13】支保工として溝形鋼を用いた場合の概略断面図である。
【
図21】支保工と頂部との間に架台を介して支保工の設置を行う場合の概略図である。
【
図22】吊り下げ材の他の構成例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。なお、本実施形態では、本発明に係るスラブ状部材の構築方法によりカルバートの頂版を構築する場合を例示して説明する。また、本明細書の実施の形態においては、説明のために鉄筋構造や配筋構成について、一部図示を省略する場合や、あるいは、部材内部の鉄筋等を図示する場合がある。
【0022】
以下の説明では、カルバートにおいてその内部空間が延びる方向をカルバートの「長さ方向」とし、内部空間を横切るように長さ方向に直交する方向をカルバートの「幅方向」とし、これら長さ方向及び幅方向に直交する方向を「高さ方向」とする。図面においては、長さ方向を「Y軸」、幅方向を「X軸」、高さ方向を「Z軸」として図示する場合がある。また、後述するプレキャストスラブ20の幅方向とは、上述のカルバートの幅方向と同じ方向を指す。
【0023】
<頂版構造の構成>
図1、
図2は本発明の実施の形態に係るスラブ状部材の構築方法によって構築される頂版構造1の概略説明図であり、
図1は概略平面図、
図2は概略側面断面図を示している。なお、この頂版構造1は、例えばカルバートの側壁を支持部材とし、複数の支持部材に跨って搭載されるスラブ状部材の一例である。ここで、
図2には、説明のため、頂版構造1に加え、支持部材(後述する支持部材10)や、最終的には撤去される場合もある、吊り下げ材を含む支保工(後述する支保工30)等についても図示している。
【0024】
図1、2に示すように、頂版構造1は例えばカルバートの側壁、中壁等である一対の支持部材10(10a、10b)に跨って搭載される。支持部材10は、上面において後述するプレキャストスラブ20を搭載するための肩部12と、肩部12から更に上方に向かって延伸する頂部14と、を含む。頂版構造1は、一対の支持部材10に跨るように、その幅方向(図中X方向)端部が向かい合う肩部12、12に搭載される複数のプレキャストスラブ20を含む。本実施の形態に係る構成では、複数のプレキャストスラブ20がカルバートの長さ方向(図中Y方向)に隣接するように搭載されている。
【0025】
プレキャストスラブ20は、工場などで予め製作された部材(いわゆるプレキャスト部材)であっても良く、補強材27を含むように構成することで補強されても良い。補強材27は特に限定されないが、例えばH形鋼、PC鋼材といった鋼材や鉄筋であっても良い。
【0026】
プレキャストスラブ20の上方において、支持部材10の向かい合う頂部14、14に掛け渡されるように支保工30が設置される。支保工30は例えばH形鋼であっても良い。支保工30には下方に向かって伸びる複数の吊り下げ材33が連結されている。吊り下げ材33としては、異形鉄筋、セパレーター、PC鋼材、総ネジボルトといった種々の鋼材が用いられても良い。
【0027】
支保工30と吊り下げ材33の連結手段は任意であり、例えば、支保工30に孔開け加工を施し、吊り下げ材33の上端に雄ネジ加工を施し、支保工30と吊り下げ材33の連結部において雄ネジ加工とナットを締結させることで連結させても良い。
【0028】
図3は吊り下げ材33の構成の一例を示す概略説明図であり、
図2中の破線部を拡大して図示したものである。一例として、
図3のように、吊り下げ材33は、支保工30に連結される上部吊り下げ材33aと、プレキャストスラブ20と連結される下部吊り下げ材33bと、から構成されても良い。下部吊り下げ材33bの上端には定着具34が備えられても良い。下部吊り下げ材33bの下端にも同様の定着具(
図3では図示せず)が備えられても良い。
図3のように、上部吊り下げ材33aと下部吊り下げ材33bは、ナット35aやPコン35bを含む継手35により連結された構成でも良い。
【0029】
また、支保工30によるプレキャストスラブ20吊り下げ時には、吊り下げ材33の下端と、プレキャストスラブ20あるいは補強材27と、が連結される。その連結手段は任意であり、例えば補強材27に孔開け加工を施し、加工された孔を介して図示しないナットと雄ネジ加工とを螺合させることで連結しても良い。
【0030】
プレキャストスラブ20の上方には鉄筋構造40が構築される。この鉄筋構造40は、プレキャストスラブ20の幅方向に平行に設置される複数の主鉄筋44と、主鉄筋44と交差する方向(例えば直交する方向)に設置される複数の配力筋42と、を含む。ここで、吊り下げ材33の少なくとも一部は、主鉄筋44と配力筋42の一方又は両方に係留されても良い。なお、この鉄筋構造40はオフサイトで予め製作したものでも良い。「オフサイト」とは、据え付け場所とは異なる場所であることを示し、据え付け場所そのものを除外する概念である。即ち、「オフサイトにて製作する」との記載は、例えば、工場や据え付け場所の近傍で製作する場合を含んでいる。
【0031】
プレキャストスラブ20の上方においては、吊り下げ材33の少なくとも一部及び鉄筋構造40を埋設するようにコンクリート打設された現場打ちコンクリート部50が構成される。
図2のように、現場打ちコンクリート部50の構成時には、吊り下げ材33の少なくとも一部及び鉄筋構造40を内部に埋設させ、肩部12の上部に対してもコンクリート打設が行われる。例えばその上面位置が高さ方向で頂部14の上端と一致するようにコンクリート打設が行われても良い。
【0032】
以上、
図1~3を参照して説明したように頂版構造1は構成される。なお、頂版構造1においては、その構築過程において
図2に示した支保工30が用いられ、プレキャストスラブ20が吊り下げられる。但し、最終的な頂版構造1の構築後には、この支保工30は撤去される。支保工30の撤去は、例えば上部吊り下げ材33aと下部吊り下げ材33bの継手35を介した連結を解除することで実施されても良い。
【0033】
<頂版構造の構築方法>
次に、上記説明した頂版構造1の構築方法について説明する。
図4~
図10は本発明の実施の形態に係るスラブ状部材の構築方法を適用して頂版構造1を構築する場合の工程図であり、
図4から
図10までの順に工程が実施される。なお、
図4~
図10の各図面には、説明のため(a)に概略平面図、(b)に概略側面断面図、(c)にA-A断面図を示し、更に、
図5~
図10には(d)にB-B断面図を示している。
【0034】
先ず、
図4に示すように、例えばカルバートの側壁である一対の支持部材10(10a、10b)が構築される。支持部材10は肩部12及び頂部14を含むように構築され、その内部には鉄筋15が埋設されていても良い。なお、支持部材10は工場などで予め製作された部材(いわゆるプレキャスト部材)でも良く、現場打ちにより構築されても良い。
【0035】
そして、
図5に示すように、一対の支持部材10(10a、10b)のそれぞれの肩部12に、プレキャストスラブ20の幅方向端部を搭載することで、プレキャストスラブ20が対向する支持部材10に掛け渡される。例えば、
図5(a)のように、複数のプレキャストスラブ20がカルバート長さ方向に設置されても良く、その際に、補強材27は隣り合う頂部14の間に形成された隙間に配置されるようにプレキャストスラブ20の設置が行われても良い。
【0036】
また、
図5(c)、(d)に示すように、プレキャストスラブ20には、プレキャストスラブ20幅方向に延伸する配力筋28が、その端部が当該プレキャストスラブ20から突出するように埋設されていても良い。そして、複数のプレキャストスラブ20が設置される場合には、隣り合うプレキャストスラブ20同士が配力筋28同士を例えば継手構造によって連結させることで一体的に構成されても良い。継手構造の具体的構成は任意であり、例えばループ継手、機械式継手、ハーフフラップ継手等であっても良い。
【0037】
そして、
図6に示すように、プレキャストスラブ20の上方において、一対の支持部材10(10a、10b)の頂部14同士に掛け渡されるように、支保工30が設置される。その際、支保工30と頂部14との間に、支保工30の高さ調整を行うためのスペーサー31を設置しても良い。
【0038】
そして、
図7に示すように、支保工30から下方に向かって伸びる複数の吊り下げ材33が設置される。吊り下げ材33は、例えばその上端が支保工30に連結され、その下端がプレキャストスラブ20の本体又は補強材27に連結され、これによりプレキャストスラブ20が強固に吊り下げられる。なお、
図7では、吊り下げ材33と補強材27が連結した構成を図示している。
【0039】
支保工30と吊り下げ材33との連結手段は任意である。例えば、吊り下げ材33の上端部に雄ネジ加工を施し、支保工30に孔開け加工を行い、加工された孔を介して図示しないナットと雄ネジ加工とを螺合させることで連結しても良い。また、例えば、
図3を参照して説明した構成において、上部吊り下げ材33aを支保工30に同様の方法で連結させても良い。
【0040】
また、吊り下げ材33とプレキャストスラブ20との連結手段は任意である。例えば、
図3を参照して説明した下部吊り下げ材33bを予めプレキャストスラブ20に埋設しても良い。このように構成された上部吊り下げ材33aと下部吊り下げ材33bを継手35でもって連結させ、プレキャストスラブ20の吊り下げを行っても良い。
【0041】
吊り下げ材33を介した支保工30によるプレキャストスラブ20の吊り下げ時には、支保工30と吊り下げ材33との連結箇所において吊り下げ材33を上下させることで、吊り下げられたプレキャストスラブ20の姿勢を調整しても良い。吊り下げ材33の上下動は、例えば支保工30と吊り下げ材33との連結手段として用いたナットを締緩することにより行っても良い。
【0042】
そして、
図8に示すように、プレキャストスラブ20の上方において鉄筋構造40が構築される。この時、吊り下げ材33の少なくとも一部を、鉄筋構造40を構成する配力筋42と主鉄筋44の一方又は両方に係留しても良い。鉄筋構造40は現場において構築しても良く、あるいはオフサイトで予め製作したものを設置しても良い。
【0043】
そして、
図9に示すように、吊り下げ材33の少なくとも一部及び鉄筋構造40を埋設するようにコンクリートの打設及び養生が行われ、現場打ちコンクリート部50が構成される(図中の破線部参照)。図示のように、現場打ちコンクリート部50の天端高さと、支持部材10の頂部14の上端の高さ一致するようにコンクリートの打設及び養生が行われても良い。
【0044】
そして、
図10に示すように、支保工30と吊り下げ材33の少なくとも一部を分離させ、支保工30の撤去(図中の破線参照)が行われる。支保工30の撤去は、例えば
図3に示す上部吊り下げ材33aと下部吊り下げ材33bを継手35で連結させた構成において、継手35の連結を解除し、ナット35aやPコン35bを撤去して行われても良い。
【0045】
以上、
図4~
図10を参照して説明した構築方法により、プレキャストスラブ20と現場打ちコンクリート部50からなるスラブ状部材としての頂版構造1が構築される。
【0046】
<プレキャストスラブの構成>
プレキャストスラブ20は工場などで予め製作された部材であっても良く、その構成は任意である。即ち、吊り下げ材33の下端(下部吊り下げ材33bの下端)を連結させて吊り下げることが可能であればその構成は限定されるものではない。以下では、プレキャストスラブ20の構成の一例について
図11を参照して説明する。
図11はプレキャストスラブ20の構成の一例を示す概略説明図であり、(a)、(b)ともにその幅方向断面図である。
【0047】
図11(a)に示すように、プレキャストスラブ20の構成の一例として、吊り下げ材33の下端を内部に埋設しても良く、その埋設箇所にプレキャストスラブ20の上方に突出する突起部22を有しても良い。突起部22を設けることで、吊り下げ材33をプレキャストスラブ20に埋設させる際の定着効率や引抜耐力を向上させることができる。また、図示のように、プレキャストスラブ20の内部において、上記配力筋28と直交する方向(長手方向)に延伸する1又は複数の主鉄筋24を埋設しても良い。これによりプレキャストスラブ20自体の強度を向上させることができる。
【0048】
また、
図11(b)に示すように、プレキャストスラブ20の構成の一例として、その下面に鋼板25を設置しても良い。加えて、プレキャストスラブ20に埋設させた吊り下げ材33を鋼板25に接合しても良い。これにより、吊り下げ材33の定着効率向上に加え、プレキャストスラブ20へのひび割れ発生を抑制あるいは許容することができる。
【0049】
なお、プレキャストスラブ20の製作においては、例えばFRC(Fiber Reinforced Concrete:繊維補強コンクリート)を用いても良い。これによりプレキャストスラブ20自体の強度や靭性を高めることができる。例えば、プレキャストスラブ20が補強材27及び上記のFRCによって補強され、コンクリート打設前の施工時荷重に対して十分な曲げ剛性を有している場合には、以下のような施工手順を採ることもできる。即ち、プレキャストスラブ20を設置した後、鉄筋構造40を構築し、その後、支保工30を設置して吊り下げ材33とプレキャストスラブ20の本体又は補強材27とを連結させ、コンクリート打設により現場打ちコンクリート部50を構成させても良い。
【0050】
図4~
図10を参照して上述したような、支保工30が設置された状態で鉄筋構造40を構築する場合には、上方が一部閉鎖された状態で作業が行われる。そのため、構造条件によっては作業効率の低下が懸念される。一方、鉄筋構造40を構築した後に支保工30の設置を行う手順によれば、上方が開放された状態で鉄筋構造40を構築できるため、資材の搬入や鉄筋組立といった作業効率の向上が図られる。
【0051】
<プレキャストスラブと吊り下げ材との連結>
上述した頂版構造1の構築方法においては、
図7を参照して説明した吊り下げ材33を介した支保工30によるプレキャストスラブ20の吊り下げが重要な工程である。吊り下げ時の連結手段やその構成は、吊り下げ材33とプレキャストスラブ20とを確実に連結できるものであれば特に限定されるものではない。ここでは、プレキャストスラブ20と吊り下げ材33との連結手段やその構成の一例について説明する。
【0052】
図12は、プレキャストスラブ20と吊り下げ材33との連結に関する概略説明図であり、連結の構成を模式的に図示したものである。
図12に示すように、プレキャストスラブ20に吊り下げ材33の下端(下部吊り下げ材33bの下端)を連結させる際には種々の構成が考え得る。
【0053】
例えば、吊り下げ材33の下端(下部吊り下げ材33bの下端)に定着具32を有する構成とし、
図12(a)のように定着具32を含めて吊り下げ材33の下端を直接プレキャストスラブ20に埋設させても良い。これにより、吊り下げ材33のプレキャストスラブ20に対する定着効率や引抜耐力を向上させることができる。
【0054】
また、例えば、
図12(b)のようにプレキャストスラブ20にインサート36を埋設し、ネジ加工した吊り下げ材33の下端をインサート36に接続して連結しても良い。
【0055】
また、例えば、
図12(c)のようにプレキャストスラブ20に切欠き37を形成し、下端に定着具32を有する吊り下げ材33を切欠き37に挿入しグラウト38の充填を行うことで連結しても良い。
【0056】
また、例えば、
図12(d)のようにプレキャストスラブ20に鋼管39を設置し、下端に定着具32を有する吊り下げ材33を鋼管39に挿入しグラウト38の充填を行うことで連結しても良い。
【0057】
<支保工の構成>
上述したように、支保工30としては例えばH形鋼が例示され、吊り下げ材33との連結は支保工30に孔開け加工を施し、吊り下げ材33の上端に雄ネジ加工を施し、支保工30と吊り下げ材33の連結部において雄ネジ加工とナットを締結させることで行われる。但し、これに限定されるものではなく、支保工30の構成や吊り下げ材33の上端との連結構成については種々のものが考え得る。
【0058】
図13は支保工30として溝形鋼を用いた場合の概略断面図である。
図13に示すように、支保工30を2本の溝形鋼30a、30bからなる構成とし、2本の溝形鋼30a、30b間に吊り下げ材33を設置し、定着板60及びナット61で吊り下げ材33を接合しても良い。これにより、孔開け加工量の低減が図られる。
【0059】
また、支保工30の設置において、支保工30と頂部14との間に例えばH形鋼等である架台70を介しても良い。
図21は支保工30と頂部14との間に架台70を介して支保工30の設置を行う場合の概略図である。例えば、架台70を隣り合う頂部14に跨るように設置し、隣り合う頂部14の支間中央位置において架台70上に支保工30を設置することで、隣り合う頂部14の設置間隔を大きく設計することができる。
【0060】
<作用効果>
以上説明したスラブ状部材としての頂版構造1の構築方法によれば、支保工30を用いてプレキャストスラブ20を吊り下げる工程において、吊り下げ材33を用い、その吊り下げ材33の少なくとも一部を現場打ちコンクリート部50に埋設させている。これにより、頂版構造1において、吊り下げ材33の少なくとも一部がせん断補強筋として機能する。即ち、プレキャストスラブ20と現場打ちコンクリート部50からなるスラブ状部材としての頂版構造1において十分なせん断耐力が担保される。
【0061】
また、頂版構造1において、吊り下げ材33をせん断補強筋として機能させることにより、別途せん断補強筋を配筋する必要がないため、鉄筋工における作業性の向上や工期短縮が図られる。加えて、鉄筋構造40をオフサイトで予め製作したものとしてユニット化させることで鉄筋の施工作業性が向上する。
【0062】
また、支保工30を用い、吊り下げ材33を介してプレキャストスラブ20を吊り下げる際に、プレキャストスラブ20と吊り下げ材33との連結や、支保工30と吊り下げ材33との連結において、
図11~
図13を参照して説明したような種々の連結構成を用いることで、定着効率や引抜耐力の向上が図られる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上記実施の形態では、上部吊り下げ材33aと下部吊り下げ材33bとの連結手段の一例として継手35を用いた構成について説明したが、連結手段はこれに限られない。即ち、連結手段として、貫通式定着体及び機械式継手により連結を行い、ナット及び発泡スチロールによる箱抜きを用いても良い。また、連結時のがたつきを解消するために、ターンバックルを用いても良い。
【0065】
上記実施の形態では、吊り下げ材33の構成として上部吊り下げ材33aと下部吊り下げ材33bが継手35で連結された構成について
図3に図示したが、吊り下げ材33の構成はこれに限られるものではない。
図22は吊り下げ材33の他の構成例を示す概略説明図であり、(a)は俯瞰図、(b)は側面図である。なお、
図22において上記実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して図示し、説明は省略する場合がある。
【0066】
図22に示すように、吊り下げ材33は、例えば、非金属で形成されるフック状上部吊り下げ材33cと、竹節鉄筋又はねじ節鉄筋で形成されるフック状下部吊り下げ材33dから構成されても良い。これらフック状上部吊り下げ材33cとフック状下部吊り下げ材33dは高さ方向において互いに突き合わせた状態で係止し接続することが可能に構成される。図示のように、フック状上部吊り下げ材33cとフック状下部吊り下げ材33dは鉄筋構造40の配力筋42を介して接続されても良い。
【0067】
頂版構造1を構築するに際し、フック状上部吊り下げ材33cは残置しても良く、あるいは現場打ちコンクリート部50の上面位置において切断しても良い。フック状上部吊り下げ材33cは非金属で形成されるため、防錆処理等は不要である。吊り下げ材33をこのような構成にすることで、フック状下部吊り下げ材33dの撤去や、箱抜きを用いた際の箱埋め処理等が必要なくなり、省力化が図られる。
【0068】
<本発明の他実施形態>
上記実施の形態においては、本発明に係るスラブ状部材の構築方法により構築される頂版構造1を例示して図示説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。具体的には、スラブ状部材として梁を構築する場合にも適用できる。以下、本発明の他実施形態として、本発明に係るスラブ状部材の構築方法を用いて梁を構築する方法について図面を参照して説明する。なお、以下の他実施形態に係る説明において、上記実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して図示し、説明は省略する場合がある。
【0069】
図14~
図20は本発明に係るスラブ状部材の構築方法を適用して梁100を構築する場合の工程図であり、
図14から
図20までの順に工程が実施される。なお、
図14~
図20の各図面には、説明のため(a)に概略平面図、(b)に概略側面断面図、(c)にA-A断面図を示し、更に、
図5~
図10には(d)にB-B断面図を示している。
【0070】
先ず、
図14に示すように、柱部材としての支持部材110(110a、110b、110c、110d)が構築される。支持部材110の配置は梁100の構造に応じて任意に設計される。本形態では平面視において略四角形状である梁100が構築される場合を図示し、その際には支持部材110は四方4箇所に配置される。支持部材110は肩部112と、その上部に設けられる頂部114を含むように構築される。肩部112の周縁部には、上方に向けて突出する鉄筋115が埋設されても良い。なお、支持部材110は工場などで予め製作された部材(いわゆるプレキャスト部材)でも良く、現場打ちにより構築されても良い。
【0071】
そして、
図15に示すように、支持部材110(110a、110b、110c、110d)のそれぞれ向かい合う肩部112に、プレキャストスラブ20の幅方向端部を搭載することで、プレキャストスラブ20が対向する支持部材110に掛け渡される。例えば、
図15(a)のように、4本のプレキャストスラブ20が略四角形状に掛け渡されても良い。ここで、隣り合うプレキャストスラブ20に含まれる補強材27同士は、交差部128において溶接等の手段により接続しても良い。
【0072】
そして、
図16に示すように、プレキャストスラブ20の上方において、支持部材110(110a、110b、110c、110d)の頂部14同士に掛け渡されるように、支保工30が設置される。その際、支保工30と頂部114との間に、支保工30の高さ調整を行うためのスペーサー31を設置しても良い。
【0073】
そして、
図17に示すように、支保工30から下方に向かって伸びる複数の吊り下げ材33が設置される。吊り下げ材33は、例えばその上端が支保工30に連結され、その下端がプレキャストスラブ20の本体又は補強材27に連結され、これによりプレキャストスラブ20が強固に吊り下げられる。なお、
図17では、吊り下げ材33と補強材27が連結した構成を図示している。支保工30と吊り下げ材33との連結手段や、吊り下げ材33とプレキャストスラブ20との連結手段は任意であり、上記実施の形態で説明した構成にて連結が行われても良い。
【0074】
そして、
図18に示すように、プレキャストスラブ20の上方において鉄筋構造40が構築される。この時、上記実施の形態と同様に、吊り下げ材33の少なくとも一部を、鉄筋構造40に係留しても良い。鉄筋構造40は現場において構築しても良く、あるいはオフサイトで予め製作したものを設置しても良い。
【0075】
そして、
図19に示すように、吊り下げ材33の少なくとも一部及び鉄筋構造40を埋設するようにコンクリートの打設及び養生が行われ、現場打ちコンクリート部50が構成される(図中の破線部参照)。図示のように、現場打ちコンクリート部50の天端高さと、頂部114の上端の高さ一致するようにコンクリートの打設及び養生が行われても良い。
【0076】
そして、
図20に示すように、支保工30と吊り下げ材33の少なくとも一部を分離させ、支保工30の撤去(図中の破線参照)が行われる。支保工30の撤去は、上記実施の形態で説明したように、例えば、継手35の連結を解除し、ナット35aやPコン35bを撤去して行われても良い。
【0077】
以上、
図14~
図20を参照して説明した構築方法により、プレキャストスラブ20と現場打ちコンクリート部50からなるスラブ状部材としての梁100が構築される。このように、本発明に係るスラブ状部材の構築方法を梁・柱構造に適用させることで、梁100を構築する際にも、上記実施の形態と同様に作業性の向上や工期の短縮を図ることができる。
【0078】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0079】
なお、以下のような構成も本発明の技術的範囲に属する。
(1)プレキャストスラブと現場打ちコンクリートからなり、一対の支持部材に跨って搭載されるハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材の構築方法であって、前記一対の支持部材に前記プレキャストスラブの幅方向端部を搭載する工程と、前記プレキャストスラブの上方に掛け渡した支保工により当該支保工から下方に向かって伸びる吊り下げ材を介して前記プレキャストスラブを吊り下げる工程と、前記プレキャストスラブの上方に鉄筋構造を構築する工程と、前記吊り下げ材の少なくとも一部と前記鉄筋構造を埋設するように前記プレキャストスラブの上部に現場打ちコンクリートを打設し養生する工程と、前記支保工から前記吊り下げ材を分離し、前記支保工を撤去する工程と、を含み、前記スラブ状部材において前記現場打ちコンクリートに埋設された前記吊り下げ材はせん断補強筋として機能することを特徴とする、スラブ状部材の構築方法。
(2)前記プレキャストスラブは当該プレキャストスラブに埋設された補強材によって補強され、前記プレキャストスラブを吊り下げる工程においては、前記吊り下げ材の下端を前記補強材又は前記プレキャストスラブに連結させることを特徴とする、(1)に記載のスラブ状部材の構築方法。
(3)前記吊り下げ材の上端部には雄ネジ加工が施され、前記プレキャストスラブを吊り下げる工程においては、前記支保工と前記吊り下げ材の連結部において前記雄ネジに螺合するナットを締緩することにより前記吊り下げ材を上下させ、前記プレキャストスラブの姿勢を調整することを特徴とする、(1)又は(2)に記載のスラブ状部材の構築方法。
(4)前記吊り下げ材は、前記支保工に連結される上部吊り下げ材と、前記プレキャストスラブと連結される下部吊り下げ材と、が継手によって連結された構造を有し、前記支保工を撤去する工程においては、前記継手を外すことにより前記下部吊り下げ材を前記支保工から分離させることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか一項に記載のスラブ状部材の構築方法。
(5)前記下部吊り下げ材の上端及び下端に定着具を有することを特徴とする、(4)に記載のスラブ状部材の構築方法。
(6)前記支持部材は、肩部と、当該肩部から上方に延伸する頂部と、を備え、前記プレキャストスラブの幅方向端部は前記肩部上に搭載され、前記支保工は前記一対の支持部材の前記頂部上に掛け渡すように搭載されることを特徴とする、(1)~(5)のいずれか一項に記載のスラブ状部材の構築方法。
(7)前記支持部材はカルバートの壁であり、前記スラブ状部材は前記カルバートの頂版であることを特徴とする、(1)~(6)のいずれか一項に記載のスラブ状部材の構築方法。
(8)前記支持部材は柱であり、前記スラブ状部材は梁であることを特徴とする、(1)~(6)のいずれか一項に記載のスラブ状部材の構築方法。
(9)前記鉄筋構造は、前記プレキャストスラブの幅方向に平行に設置される主鉄筋と、前記主鉄筋と交差する方向に設置される配力筋と、を含み、前記吊り下げ材は、前記主鉄筋と前記配力筋の一方又は両方に係留されることを特徴とする、(1)~(8)のいずれか一項に記載のスラブ状部材の構築方法。
(10)前記プレキャストスラブは互いに隣接して複数搭載され、前記プレキャストスラブには、当該プレキャストスラブの幅方向に延伸する配力筋が、当該配力筋の端部が当該プレキャストスラブから突出するように埋設され、複数の前記プレキャストスラブにおいて、隣り合う前記プレキャストスラブ同士は前記配力筋同士を継手により連結し、前記現場打ちコンクリートを打設し養生する工程では、隣接する複数のプレキャストスラブ間も含めてコンクリート打設が行われることを特徴とする、(1)~(7)のいずれか一項に記載のスラブ状部材の構築方法。
(11)前記支持部材はカルバートの壁であり、前記スラブ状部材は前記カルバートの頂版であり、複数の前記プレキャストスラブは、前記カルバートの長さ方向において複数設置されることを特徴とする、(10)に記載のスラブ状部材の構築方法。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、ハーフプレキャストコンクリート製のスラブ状部材を構築する構築方法に適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1…頂版構造
10…支持部材
12…肩部
14…頂部
15…鉄筋
20…プレキャストスラブ
27…補強材
28…(プレキャストスラブの)配力筋
30…支保工
33…吊り下げ材
34…定着具
35…継手
40…鉄筋構造
42…配力筋
44…主鉄筋
50…現場打ちコンクリート部
100…梁