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特開2023-167503鋳造用金型装置、鋳造装置及び鋳物の製造方法
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  • 特開-鋳造用金型装置、鋳造装置及び鋳物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167503
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】鋳造用金型装置、鋳造装置及び鋳物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/06 20060101AFI20231116BHJP
   B22D 18/04 20060101ALI20231116BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B22C9/06 B
B22D18/04 Q
B22D17/22 D
B22D17/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078747
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】仁賀奈 靖人
(72)【発明者】
【氏名】野々村 和政
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 友和
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NB05
(57)【要約】
【課題】鋳造用鋳物をより効果的に冷却できるようにすることを目的とする。
【解決手段】鋳造用金型装置20は、第1型面42と、冷却液が流れる液体通路43、44とを含む第1型40と、第2型面52と、鋳物内の凹みを形成する複数の入子58と、型空間に溶湯を流し込むための3つ以上の湯口59と、冷却気体が流れる気体通路53とを含む第2型50と、を備え、複数の入子58が直線状に並んで配置されると共に、3つ以上の湯口59が、間に入子58を配置した状態で、千鳥状に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1型面と、冷却液が流れる液体通路とを含む第1型と、
第2型面と、鋳物内の凹みを形成する複数の入子と、型空間に溶湯を流し込むための3つ以上の湯口と、冷却気体が流れる気体通路とを含む第2型と、
を備え、
前記複数の入子が直線状に並んで配置されると共に、前記3つ以上の湯口が、間に前記入子を配置した状態で、千鳥状に配置されている、鋳造用金型装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造用金型装置であって、
前記気体通路は、前記複数の湯口によって囲まれる領域で、前記冷却気体を吹付ける冷却気体噴出口を有する、鋳造用金型装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型装置であって、
前記液体通路は、重力方向に対して交差する方向に貫通する貫通液体通路を有する、鋳造用金型装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型装置であって、
前記第1型が鋳抜きピンを含み、
前記液体通路は、前記鋳抜きピン内に冷却液を流すピン用液体通路を有する、鋳造用金型装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型装置であって、
前記液体通路は、互いに独立して冷却液が流れる複数の独立液体通路を有し、
前記複数の独立液体通路のそれぞれに対応するバルブをさらに備える、鋳造用金型装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型装置であって、
前記液体通路に対して冷却液を供給する冷却液供給源と、
前記冷却液供給源と前記液体通路との間に介在するバルブと、
前記バルブが閉じられた状態で、前記液体通路内の空間を吸引して前記液体通路内を真空状態するバキューム装置と、
をさらに備え、
前記真空状態で前記バルブが開いて前記冷却液供給源内の冷却液が前記液体通路内を流れる、鋳造用金型装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型装置であって、
前記液体通路に冷却液が流れるタイミングをコントロールするバルブと、
前記バルブの開閉タイミングを、時間によってコントロールするタイマーと、
をさらに備える鋳造用金型装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型装置の型空間内に溶湯を供給し、
前記型空間内の溶湯を、前記液体通路内を流れる冷却液によって冷却して、前記溶湯を硬化させ、
前記鋳造用金型装置から、溶湯が硬化することによって形成された鋳物を取出す、鋳物の製造方法。
【請求項9】
鋳造型の冷却用の液体通路の入口に接続される入口側供給路に対して冷却液を供給する冷却液供給源と、
前記冷却液供給源と前記入口側供給路の出口との間に介在するバルブと、
前記液体通路の出口に接続される出口側幹流体通路に接続され、前記バルブが閉じられた状態で、前記出口側幹流体通路内の気体を吸引して前記出口側幹流体通路内を真空状態とするバキューム装置と、
を備え、
前記真空状態で前記バルブが開く、鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鋳造用金型装置及び鋳物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鋳造用金型内部に設定された通路に冷却水を供給することによって金型を冷却する鋳造用金型を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-85420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋳物の生産性をより向上させるため、鋳造用鋳物をより効果的に冷却することが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、鋳造用鋳物をより効果的に冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、鋳造用金型装置は、第1型面と、冷却液が流れる液体通路とを含む第1型と、第2型面と、鋳物内の凹みを形成する複数の入子と、型空間に溶湯を流し込むための3つ以上の湯口と、冷却気体が流れる気体通路とを含む第2型と、を備え、前記複数の入子が直線状に並んで配置されると共に、前記3つ以上の湯口が、間に前記入子を配置した状態で、千鳥状に配置されている、鋳造用金型装置である。
【0007】
また、上記課題を解決するため、鋳物の製造方法は、上記鋳造用金型装置の型空間内に溶湯を供給し、前記型空間内の溶湯を、前記液体通路内を流れる冷却液によって冷却して、前記溶湯を硬化させ、前記鋳造用金型装置から、溶湯が硬化することによって形成された鋳物を取出す、鋳物の製造方法である。
【0008】
また、上記課題を解決するため、鋳造装置は、鋳造型の冷却用の液体通路の入口に接続される入口側供給路に対して冷却液を供給する冷却液供給源と、前記冷却液供給源と前記入口側供給路の出口との間に介在するバルブと、前記液体通路の出口に接続される出口側幹流体通路に接続され、前記バルブが閉じられた状態で、前記出口側幹流体通路内の気体を吸引して前記出口側幹流体通路内を真空状態とするバキューム装置とを備え、前記真空状態で前記バルブが開く、鋳造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、鋳造用鋳物をより効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は鋳造用金型装置の全体構成を示す図である。
図2図2は第2型の上層体を示す概略底面図である。
図3図3は第1型を示す概略平面図である。
図4図4図3のIV-IV線概略断面図である。
図5図5は第1冷却液供給装置が鋳造用金型の複数のピン用流体通路に冷却液を供給する構成例を示すブロック図である。
図6図6は金型コントローラがピン用液体通路に対する冷却液の供給制御を行う流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
{実施形態}
<全体構成について>
以下、実施形態に係る鋳造用金型装置、鋳造装置及び鋳物の製造方法について説明する。図1は鋳造用金型装置20の全体構成を示す図である。
【0012】
鋳造用金型装置20は、鋳造によって鋳物10を製造するための装置である。鋳造は、アルミニウム合金等の金属を溶かして溶湯とし、この溶湯を鋳造用金型30に流し込み、溶湯を鋳造用金型30内で所定の形状に凝固させる加工法である。鋳物10は、例えば、低圧鋳造法もしくは重力鋳造法によって製造される。
【0013】
本実施形態において、鋳物10は、内燃機関におけるシリンダーヘッド10である。シリンダーヘッド10は、内燃機関における燃焼室の一端を閉じる天井部12を有する。天井部12に点火プラグを挿入するための点火プラグ装着用穴12hが形成される。以下の説明において、シリンダーヘッド10の燃焼室及び点火プラグ装着用穴12hが重力方向に沿って配置され、かつ、天井部12の下側に燃焼室が配置されることを想定して、重力方向を基準として上又は下が参照される場合がある。
【0014】
上記シリンダーヘッド10のうち天井部12よりも上側には、ウオータージャケットを形成する空間及びカム室を形成する空間が形成されている。これらの空間は、砂中子によって形成されてもよいし、鋳造用金型30の金型面によって形成されてもよい。
【0015】
本実施形態では、シリンダーヘッド10は、複数の燃焼室が直列的に並ぶ直列型内燃機関用のシリンダーヘッドであることが想定されている。このため、シリンダーヘッド10は、一方向に長い直方体状に形成されており、その長手方向に沿って複数の天井部12が間隔をあけて直線的に並んでいる。燃焼室の数、即ち、天井部12の数は2以上の任意の数である。本実施形態では、4つの天井部12が直線的に並ぶ例、即ち、4気筒直列型内燃機関用のシリンダーヘッド10を想定した説明がなされる。シリンダーヘッド10は、V型内燃焼機関又は水平対向型内燃機関用のシリンダーヘッドであってもよい。シリンダーヘッド10には、燃焼室のうちの上部の凹み部分、吸気ポート及び排気ポートが形成される。シリンダーヘッド10にインジェクタ装着用孔が形成されてもよい。
【0016】
鋳造用金型装置20は、鋳造用金型30と、鋳造装置70とを備える。鋳造用金型30は、上記シリンダーヘッド10を成形する金型面を含む部分である。鋳造装置70に鋳造用金型30がセットされる。鋳造装置70は、セットされた鋳造用金型30を利用してシリンダーヘッド10を鋳物成型する装置である。例えば、鋳造装置70は、鋳造用金型30の冷却タイミングをコントロールすることが考えられる。鋳造装置70は、さらに、金型の開閉タイミング及び鋳造用金型30に対する溶湯の供給タイミング等をコントロールしてもよい。
【0017】
鋳造装置70にセットされる鋳造用金型30の全部又は一部が交換可能であってもよい。これにより、鋳造用金型装置20は、交換された鋳造用金型30の金型面を利用して異なる形状のシリンダーヘッド10を鋳造することができる。
【0018】
鋳造用金型30は、第1型40と、第2型50とを備える。第1型40、第2型50及び後述する中間型32は、溶湯の温度に耐え得る素材、例えば、金属によって形成される。
【0019】
第1型40は、第1型面42を有する。第1型面42は、シリンダーヘッド10の外向き面のうち一方側から観察される面を形成する面である。本実施形態では、第1型面42は、シリンダーヘッド10のうち上側を向く外向き面を形成する。第1型面42は、例えば、シリンダーヘッド10の上縁、点火プラグ装着用穴12h、カム室の一部等を形成する。第1型40は、第2型50の上方に位置する。第1型40は、上型と称されてもよい。第1型40は複数の部品の組合せによって構成されてもよい。
【0020】
第2型50は、第2型面52を有する。第2型面52は、シリンダーヘッド10の外向き面のうち、上記第1型40とは反対側の他方側から観察される面を形成する面である。本実施形態では、第1型面42は、シリンダーヘッド10のうち下側を向く外向き面を形成する。第2型面52は、例えば、シリンダーヘッド10の下縁、燃焼室の上部凹み部分等を形成する。シリンダーヘッド10の下縁は、シリンダブロックの上縁に対してガスケット等を介して突合わされる部分である。第2型50は、第1型40よりも下方に位置する。第2型50は、下型と称されてもよい。第2型50は複数の部品の組合せによって構成されてもよい。
【0021】
本実施形態では、鋳造用金型30は、第1型40と第2型50との間に位置する中間型32をさらに備える。中間型32は、第1型40と第2型50との間に配置される。中間型32は、シリンダーヘッド10の横向きの外向き面を形成する型面33を有することが想定される。中間型32がシリンダーヘッド10の周りで複数に分割されており、分割された中間型32のそれぞれがシリンダーヘッド10に対して水平方向に沿って接近離隔移動できることが考えられる。これにより、シリンダーヘッド10の横向きの外向き面が入組んだ形状であっても、鋳物成型し易い。中間型32が存在することは必須ではなく、中間型32に対応する部分が、第1型40又は第2型50と合体していてもよい。
【0022】
なお、第1型面42、第2型面52及び中間型32の少なくとも1つは、砂中子と共に、シリンダーヘッド10の外向き面を形成する場合がある。
【0023】
第2型50に3つ以上の湯口59が形成されている。第2型の下側に中間ストーク60が配置されている。中間ストーク60は、上方に向うに連れて徐々に大きくなる湯だまり空間61を有している。複数の湯口59の下側開口が、中間ストーク60の上側開口に面している。溶湯は、湯だまり空間61内の底側から当該湯だまり空間61内に供給され、湯だまり空間61から複数の湯口59を通って、上記第1型面42、第2型面52及び型面33によって形成される型空間内に供給される。
【0024】
上記第1型40に、冷却液が流れる液体通路43、44が形成されている。型空間内に溶湯が流れ込んだ後、第1型40が液体通路43、44内を流れる冷却液によって冷却される。第2型50に、冷却気体が流れる気体通路53、54が形成されている。型空間内に溶湯が流れ込んだ後、第2型50が53、54内を流れる冷却気体によって冷却される。
【0025】
鋳造装置70は、金型コントローラ72と、第1冷却液供給装置80とを備える。第1冷却液供給装置80は、液体通路44に冷却液を供給し、当該液体通路44に冷却液を流す。金型コントローラ72は、第1冷却液供給装置80をコントロールすることによって、液体通路44を流れる冷却液による、第1型40の冷却タイミングをコントロールする。
【0026】
鋳造装置70は、さらに、第2冷却液供給装置78と、冷却気体供給装置79とを備える。第2冷却液供給装置78は、液体通路44に冷却液を供給する。冷却気体供給装置79は、気体通路53、54に冷却気体を供給する。金型コントローラ72は、第1冷却液供給装置80及び第2冷却液供給装置78と、冷却気体供給装置79とをコントロールすることによって、液体通路43、44を流れる冷却液による第1型40の冷却タイミングと、気体通路53、54を流れる気体による第2型50の冷却タイミングをコントロールする。
【0027】
金型コントローラ72は、金型の開閉タイミング及び鋳造用金型30に対する溶湯の供給タイミング等をコントロールしてもよい。
【0028】
金型コントローラ72は、スイッチ71に接続されていてもよい。スイッチ71は、例えば、鋳造用金型装置20による鋳造開始指令を受付けるスイッチである。スイッチ71に対する開始指令に応じて、金型コントローラ72が鋳造用金型装置20の各部をコントロールするとよい。例えば、金型コントローラ72がタイマー72tを内蔵しており、スイッチ71に対する開始指令に応じてタイマー72tが計時を開始し、タイマー72tによる計時時間が予め定められた時間となったときに、鋳造用金型装置20の各部がコントロールされることが想定される。
【0029】
タイマー72tによる計時機能は、何らかの入力に対して予め設定された時間後にオン信号を出力する構成であれば、如何なる構成によって実現されてもよい。例えば、タイマー72tは、電気回路であるプロセッサ72Pが記憶部に格納されたプログラムを実行することによって実現されてもよいし、スイッチ71に対する開始指令の入力後予め設定された時間後に遅延信号を出力する遅延回路によって実現されてもよい。
【0030】
<第2型について>
第2型50についてより具体的に説明する。図2は第2型50の上層体50Uを示す概略底面図である。図2においてシリンダーヘッド10の外周縁が2点鎖線で示されている。シリンダーヘッド10の外周縁は、中間型32の型面33によって定められることが想定される。
【0031】
図1及び図2に示すように、第2型50は、第2型本体51と、複数の入子58とを含む。
【0032】
第2型本体51は、方形板状に形成される。本実施形態では、第2型本体51は、上層体50Uと下層体50Lとが積層された構成とされている。
【0033】
上層体50Uに複数の入子セット用凹部50Uhが形成されている。本実施形態では、4つの入子セット用凹部50Uhが間隔をあけて直線状に並ぶように形成されている。各入子セット用凹部50Uhは、シリンダーヘッド10における各燃焼室に対応する位置に形成されている。入子セット用凹部50Uhの形状は、燃焼室の形状に応じた形状に形成されている。
【0034】
入子58は、上層体50Uの上面から突出しており、シリンダーヘッド10における凹みを形成する。つまり、シリンダーヘッド10のうち天井部12の下側には、燃焼室の上部空間が広がっており、入子58は当該燃焼室の上部空間を形成する凹みを形成する。当該凹みの内面は、当該燃焼室の上部空間を仕切る上部壁である。入子58の上部には、吸気ポート及び排気ポート等を形成するための部分的な突部が形成されてもよい。
【0035】
複数(本実施形態では4つ)の入子58の下部が上記入子セット用凹部50Uhに収容されることで、複数の入子58が間隔をあけて直線状に並んだ状態に保持される。
【0036】
入子58は、燃焼室の形状に応じた柱状に形成されている。本実施形態では、入子58は、円柱のうち複数の入子58が直線状に並ぶ方向に対して直交する側にある両側部を平面的に切除したような形状に形成されている。入子58は、他の形状、例えば、円柱状に形成されてもよい。入子58は、第2型50の他の部分と同じ材料で一体成形された部分であってもよい。
【0037】
第2型本体51に、型空間に溶湯を流し込むための3つ以上の湯口59が形成されている。3つ以上の湯口59は、間に入子58を配置した状態で、千鳥状に配置されている。千鳥状の配置とは、或る方向に対して左右交互に配置されていることをいう。湯口59の間に入子58が配置されているとは、重力方向に沿うように見た平面視において、2つの湯口59の中心を結ぶ線上に入子58のいずれかの部分が配置されていることをいう。湯口59の中心とは、例えば、当該湯口59の上側開口を平面視した形状における幾何中心である。
【0038】
本実施形態では、第2型50は、4つの入子58を含む。第2型本体51は、4つの湯口59を含む。4つの入子58の中心(例えば、入子58の平面視における幾何中心)が並ぶ直線を入子配置直線Lとする。入子配置直線Lに沿う方向において、4つの湯口59のうちの3つが4つの入子58の各間の位置に位置し、残りの1つの湯口が2つの入子58の一方外側に位置する。より具体的には、4つの湯口59のうちの3つの中心は、4つの入子58の各間から入子配置直線Lに対して直交する方向に外れて位置する。残りの湯口59は、入子配置直線Lに沿った方向において4つの入子58から外れた位置で、当該入子配置直線Lに対して直交する方向に外れて位置する。
【0039】
入子配置直線Lに沿って見て、4つの湯口59のうち最も端の湯口59と1つ飛ばして次の湯口59とは、入子配置直線Lに対して直交する一方側に離れて位置している。入子配置直線Lに沿って見て、4つの湯口59のうち最も端の湯口59に対して隣に位置する湯口59と、当該湯口59から1つ飛ばして次の湯口59とは、入子配置直線Lに対して直交する他方側に離れて位置している。
【0040】
つまり、複数の湯口59は、交互に、入子配置直線Lに対して直交する一方側及び他方側に位置する。よって、入子配置直線Lに沿って見て隣合う2つの湯口59の間にいずれか1つの入子58が位置している。このため、入子配置直線Lに沿う方向において隣合う2つの入子58間に2つの湯口が位置する場合と比較して、湯口59間の距離を大きくすることができる。湯口59間の距離を大きくすることで、型空間に分散した位置で溶湯を円滑に供給し易い。
【0041】
第2型50は、気体通路53を有している。気体通路53は、冷却気体を吹付ける冷却気体噴出口53aを有する。
【0042】
本実施形態では、上層体50Uのうちの下面にY字状溝50Ugが形成されている。ここでは、入子配置直線Lに沿った方向において一端寄りの2つの入子58に対応して1つのY字状溝50Ugが形成され、入子配置直線Lに沿った方向において他端寄りの2つの入子58に対応して1つのY字状溝50Ugが形成されている。
【0043】
Y字状溝50Ugは、上層体50Uの下面に開口する溝である。Y字状溝50Ugのうちの1つの端部は、上層体50Uの一側縁に開口している。Y字状溝50Ugのうちの他の2つの端部は隣合う2つの入子58の中央(例えば平面視における幾何中心)に向って延びている。上層体50Uのうち入子セット用凹部50Uhの底部に上下に貫通する貫通孔50Uaが形成される。入子58の底部にも、当該貫通孔50Uaと連続する穴が形成されていてもよい。
【0044】
Y字状溝50Ug内に2つの冷却気体用管55が配置される。冷却気体用管55の中間部はY字状溝50Ug内に配置されている。冷却気体用管55の基端は上層体50Uの一側縁側開口側に位置している。当該基端側の開口を通じて、外部から冷却気体用管55内に冷却気体が供給される。冷却気体用管55の先端は入子58の中央に向い上記貫通孔50Uaを通って入子58の底部に対向している。冷却気体用管55の内部空間が気体通路53であり、先端側開口が冷却気体噴出口53aである。
【0045】
冷却気体噴出口53aのうちの一部は、複数の湯口59によって囲まれる領域に位置する。本実施形態では、入子配置直線Lに沿って一端から3つ目までの冷却気体噴出口53aが、複数の湯口59によって囲まれる領域(本実施形態では、4つの湯口49によって囲まれる4角形状の領域)で冷却気体を第2型50に吹付ける冷却気体噴出口53a(以下冷却気体噴出口53asと区別する場合がある)である。これらの冷却気体噴出口53aは、複数の湯口59のうちの2つの湯口59の間に位置する噴出口でもある。
【0046】
なお、吹付けられた冷却気体は、Y字状溝50Ugと冷却気体用管55との間を通って外部に流出することができる。上記冷却気体用管55の構成は上記例に限られない。Y字状溝50Ug内に1つのY字状の管が配置されていてもよい。1つの管から複数の管が分岐して上記各吹付対象箇所に向う構成であってもよい。
【0047】
本実施形態では、上層体50Uの外周面から上層体50Uの中央に向う穴50Ubが形成されている。穴50Ubの先端部は、中央寄りの入子58の間に位置している。穴50Ub内に冷却気体用管56が配置される。冷却気体用管56の基端は上層体50Uから露出しており、冷却気体用管56の先端は穴50Ubの先端に対向している。冷却気体用管56の内部空間が気体通路54であり、先端側開口が冷却気体噴出口54aである。冷却気体噴出口54aは、複数の湯口59によって囲まれる領域で、第2型50に冷却気体を吹付ける。
【0048】
すなわち、冷却気体用管56の基端側の開口を通じて、外部から冷却気体用管56内に冷却気体が供給される。冷却気体用管56内に供給された冷却気体は、穴50Ubの先端に吹付けられる。これにより、第2型50の上層体50Uの中間部分が内部から効果的に冷却される。冷却気体用管56から出た冷却気体は、穴50Ubと冷却気体用管56との間を通って外部に流れ出ることができる。
【0049】
湯口59には溶湯が供給されるため、湯口59を中心として型空間におけるシリンダーヘッド10の温度が高くなる可能性がある。このため、シリンダーヘッド10のうち複数の湯口59によって囲まれる部分も温度が高い可能性がある。なお、複数の湯口59によって囲まれる部分とは、当該複数の湯口59を包摂し得る多角形状の領域部分である。湯口59によって囲まれる部分に冷却気体噴出口53as、54aからの気体を吹付けることによって、シリンダーヘッド10のうち温度が高くなり易い部分を中心に効果的に冷却することができ、指向性凝固の実現に貢献し得る。なお、冷却気体噴出口53as、54aの全てが存在することは必須ではなく、例えば、冷却気体噴出口53asだけ設けられてもよいし、冷却気体噴出口54aだけ設けられてもよい。
【0050】
<第1型について>
第1型40についてより具体的に説明する。図3は第1型40を示す概略平面図である。図3においてシリンダーヘッド10の外周縁が2点鎖線で示されている。図4図3のIV-IV線概略断面図である。図4では中間型32と、第2型50の一部とが示されている。
【0051】
上記したように、第1型40は、冷却液が流れる液体通路43、44を有する。
【0052】
液体通路43は、第1型40を、重力方向に対して交差する方向に貫通する貫通液体通路43の一例である。本実施形態では、貫通液体通路43は、第1型40を、重力方向に対して直交する方向に貫通している。より具体的には、第1型40は、複数(本実施形態では、2つ)の貫通液体通路43を有する。
【0053】
貫通液体通路43は、入子配置直線Lに沿って直線状に延びている。貫通液体通路43の両端は、第1型40の外方に突出する継手に繋がっている。貫通液体通路43の一方側開口を通じて貫通液体通路43内に冷却液が供給される。貫通液体通路43内を流れた冷却液は貫通液体通路43の他端側開口を通じて流れ出る。
【0054】
平面視において、貫通液体通路43は、入子配置直線Lに対して直交する方向に離れて位置する。平面視において、貫通液体通路43は、シリンダーヘッド10よりも離れた外方に位置している。
【0055】
貫通液体通路43の数は上記例に限られず、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。貫通液体通路43の延在方向は上記例に限られず、入子配置直線Lに対して斜め又は直交する方向に延在していてもよい。貫通液体通路43は、重力方向に対して斜め方向に延在していてもよい。
【0056】
また、本実施形態において、第1型40は、鋳抜きピン41を有している。鋳抜きピン41は、第1型40から第2型50に向けて突出するピン状部分であり、シリンダーヘッド10に有底穴又は貫通孔を形成する部分である。本実施形態では、第1型40は、各入子58に対応する複数の鋳抜きピン41を有している。鋳抜きピン41は、入子58の中央位置に形成されており、それぞれ点火プラグ装着用穴12hを形成する。鋳抜きピン41は、第1型40の他の部分とは別体に形成された長尺部分であり、当該第1型40の他の部分に装着された部分であってもよい。鋳抜きピン41は、第1型40の他の部分と同じ材料によって一体成形された部分であってもよい。
【0057】
液体通路44は、鋳抜きピン41内に冷却液を流すピン用液体通路44の一例である。
【0058】
すなわち、第1型40の上面から上記鋳抜きピン41の内部に向けて有底穴41hが形成されている。有底穴41hの底は、鋳抜きピン41に達していればよく、鋳抜きピン41の先端に達していても、達していなくてもよい。
【0059】
有底穴41h内に冷却管45が挿入される。冷却管45は、有底穴41h内に冷却液を供給しかつ回収する管である。冷却管45は、内管45aと、外管45b、基端部45cとを有する。基端部45cは2つの継手を有している。基端部45cから内管45aと外管45bとが同一方向に向って延出している。内管45aの外径は、外管45bの内径よりも小さい。内管45aは、外管45b内に配置されており、内管45aと外管45bとの間に冷却液が通過可能な空間が形成されている。
【0060】
内管45aの先端は、外管45bの先端よりも突出している。内管45aの先端は、有底穴41hの底に対向する位置に配置されており、内管45aの先端より噴出する冷却液が有底穴41hの底に流れ込む。外管45bの先端は、有底穴41hの底よりも上方に離れて位置している。有底穴41hの底に流れ込んだ冷却液は、内管45aと有底穴41hとの間を通って外管45bの先端側開口に流れ込み、さらに、内管45aと外管45bとの間を通って基端部45cに流れ込む。上記内管45a内の通路が、ピン用液体通路44である。
【0061】
上記複数の鋳抜きピン41のそれぞれに対応して冷却管45が挿入される。複数の冷却管45のそれぞれのピン用液体通路44は、互いに連通していない。このため、複数のピン用液体通路44は、互いに独立して冷却液が流れる複数の独立液体通路の一例でもある。
【0062】
<冷却液の供給するための構成について>
液体通路43、44に冷却液を供給するための構成例について説明する。図5は第1冷却液供給装置80が鋳造用金型30の複数のピン用液体通路44に冷却液を供給する構成例を示すブロック図である。
【0063】
第1冷却液供給装置80は、冷却水タンク81と、バルブ82と、バキューム装置83とを備える。
【0064】
冷却水タンク81は、冷却液として冷却水を貯めるタンクであり、ピン用液体通路44に対して冷却液を供給する冷却液供給源の一例である。なお、冷却液体は、冷却水であってもよいし、他の液体であってもよい。
【0065】
バルブ82は、冷却水タンク81とピン用液体通路44との間に介在し、冷却水タンク81からピン用液体通路44へ冷却液を供給可能な状態と供給を遮断する状態とで切替えるバルブである。バルブ82は、例えば、オンオフ電気信号によって、開閉制御可能な電磁バルブである。
【0066】
本実施形態では、バルブ82は、複数の独立液体通路であるピン用液体通路44のそれぞれに対応して設けられている。本実施形態では、4つのピン用液体通路44に対応して、4つのバルブ82が設けられる。
【0067】
上記冷却水タンク81と複数のバルブ82とは別々の管89aによって接続されており、複数のバルブ82と複数のピン用液体通路44の入口側の継手とは別々の管89bによって接続されている。このため、冷却液は、冷却水タンク81から複数のピン用液体通路44に対して別々の経路を介して供給され、かつ、別々のバルブ82によって供給状態が切替えられる。なお、管89bは、鋳造型である鋳造用金型30の冷却用のピン用液体通路44の入口に接続される入口側供給路の一例である。
【0068】
バキューム装置83は、液体を吸引するバキュームポンプである。複数のピン用液体通路44の出口側の継手は別々の管89cに接続され、当該別々の管89cは1つの集合管89dにまとめられてバキューム装置83の吸引側の接続口に接続される。バキューム装置83の出口は環流用管89eを介して冷却水タンク81に繋がれている。管89cは、ピン用液体通路44の出口に接続される出口側幹流体通路の一例である。
【0069】
バキューム装置83が吸引動作すると、管89c、89d内の空間が吸引され、管89cに連なる複数のピン用液体通路44内の空間も吸引される。各バルブ82を閉じた状態で、管89c、89d及び複数のピン用液体通路44内の空気が吸引されると、当該管89c、89d内の空間及び各ピン用液体通路44内が真空状態となる。なお、ここでの真空状態とは、大気圧と比較して真空に近い状態になったことをいう。
【0070】
各ピン用液体通路44を真空状態とした後、各バルブ82を開くと、冷却水タンク81内の冷却液が各ピン用液体通路44内に一気に流れ込む。このため、冷却を開始しようとするタイミングで、迅速な冷却が可能となる。バキューム装置83の吸引動作を継続させると、各ピン用液体通路44内の冷却液が管89c、89dから環流用管89eを介して冷却水タンク81に戻される。
【0071】
上記複数のバルブ82を開閉するタイミングは、タイマー72tの個別コントロールによって任意に設定され得る。例えば、各バルブ82に対して、鋳造開始指令の入力タイミングからの経過時間が別々に事前に設定されているとする。タイマー72tが当該鋳造開始指令の入力タイミングから開示を開始し、それぞれ事前に設定された経過時間に達した時点で、金型コントローラ72が各バルブ82に対して開指令を与えることができる。
【0072】
上記構成によって、鋳造用金型30の温度と関わりなく、バキューム装置83による吸引動作継続中に、各バルブ82を開くことができる。また、複数のバルブ82を個別に開閉コントロールすることによって、各鋳抜きピン41の冷却タイミングを個別にずらす等して、各部の冷却タイミングを個別にコントロールすることができる。
【0073】
液体通路43に冷却液を供給する第2冷却液供給装置78も、上記第1冷却液供給装置80と同様構成であってもよい。第1冷却液供給装置80と第2冷却液供給装置78とは同じ装置であり、当該同じ1つの冷却液供給装置から液体通路43、44に冷却液が供給されてもよい。
【0074】
気体通路に冷却気体を供給する冷却気体供給装置79は、送風ファン等、気体を送ることが可能な各種送風装置であってもよい。
【0075】
なお、上記集合管89dに、当該集合管89d内の圧力を検出する圧力計84が設けられてもよい。バルブ82とバキューム装置83との間に気体の漏れ箇所が無い場合、バキューム装置83の吸引動作に伴って圧力計84によって検出される圧力が低下する。バルブ82とバキューム装置83との間に気体の漏れ箇所が存在する場合、集合管89d等の繋がる空間に外部からの空気が流入するため、圧力計84によって検出される圧力が予定値ほど低下しないことが想定される。このため、圧力計84の検出圧力を監視することで、バルブ82とバキューム装置83との間での漏れ箇所の有無が検出される。これにより、冷却液の漏れが有効に抑制される。
【0076】
<冷却液の供給タイミングについて>
図6は金型コントローラ72がピン用液体通路44に対する冷却液の供給制御を行う流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、タイマー72tの機能がプロセッサ72Pを含むコンピュータ実装される場合において、当該プロセッサ72Pが実行するアルゴリズムであると考えてもよい。なお、初期状態では、バルブ82は閉じられている。また、バキューム装置83は吸引動作を継続して行っているとする。
【0077】
ステップS1において鋳造の開始指令の有無が判定される。例えば、スイッチ71に対するオン操作により、鋳造の開始指令有りと判定されると、ステップS2に進む。
【0078】
ステップS2において、鋳物成型のための処理が実行される。例えば、第1型40、第2型50及び中間型32を閉じる処理、当該型閉じ後に型空間内に溶湯を流し込む処理等が実行される。
【0079】
次のステップS3において、予め定められた通水時間の経過の有無が判定される。通水時間の経過の有無は、例えば、型空間内に溶湯を流し込む時刻と関連付けられた初期時刻からの経過時間を、予め定められた吸引開始時間と比較することによってなされる。初期時刻は、型空間内に溶湯を流し込む時刻と関連付けられた時間であればよい。例えば、初期時刻は、型空間内に溶湯を流し込む時間であってもよい。スイッチ71のオン操作後、予め定められた処理後、一定時間経過後に、溶湯が流し込まれるのであれば、初期時刻はスイッチ71のオン操作時刻であってもよい。初期時刻からの経過時間が通水時間を経過していると判定されるまでステップS3の処理が繰返され、通水開始時間を経過したと判定されると、次ステップS4に進む。
【0080】
ステップS4では、バルブ82を開く旨の指令が各バルブ82に与えられる。各ピン用液体通路44内が真空状態となっているため、冷却水タンク81内の冷却液が、管89a、バルブ82及び管89bを介して各ピン用液体通路44内に流れ込む。バキューム装置83の吸引動作が継続することで、各ピン用液体通路44内の冷却液が管89c、89dから環流用管89eを介して冷却水タンク81に戻される。よって、冷却水タンク81内の冷却液が各ピン用液体通路44内に連続的に供給される。これにより、型空間内に流し込まれた溶湯が鋳抜きピン41に触れる箇所を中心に冷却される。
【0081】
バルブ82は、各バルブ82に対して別々の通水開始時間が設定されており、各バルブ82が別々の時間で開かれてもよい。これにより、複数の鋳抜きピン41を別々のタイミングで冷却し始めることができる。
【0082】
なお、型空間内に注入された溶湯は、貫通液体通路43内を流れる冷却液、冷却気体噴出口53aより吹付けられる冷却気体によっても冷却される。これらの冷却液及び冷却気体は、型空間内に溶湯が注入されたと考えられる時間経過後に供給されるとよい。貫通液体通路43に対する冷却液の供給開示タイミングと、ピン用液体通路44に対する冷却液の供給開示タイミングと、気体通路53に対する冷却気体の供給開始タイミングは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
次ステップS5において、鋳物成型の終了の有無が判定される。鋳物成型の終了の有無は、例えば、上記初期時間ではない所定の基準時間からの経過時間が所定時間経過したか否かによって判断されてもよい。また、例えば、鋳物成型の終了の有無は、例えば、上記初期時間からの経過時間が、型空間内の溶湯が固化できる時間として予め定められた時間を経過したか否かを判定することによってなされてもよい。鋳物成型の終了が終了したと判定されると、ステップS6に示すように、冷却終了処理、例えば、各バルブ82が閉じられる処理が実行される。これにより、冷却のための処理が終了する。
【0084】
<実施形態の効果等>
以上のように構成された鋳造用金型装置20によると、第1型40に液体通路43、44が形成され、第2型50に気体通路が形成されている。このため、型空間内の溶湯を素早く冷却できる。型空間内の溶湯を素早く冷却することによって、鋳物10の欠陥を少なくしつつ、素早く鋳物10を製造できる。
【0085】
また、気体の比熱よりも液体の比熱の方が大きいため、冷却気体よりも冷却液によって迅速に冷却を行うことができる。第1型40を第2型50よりも早く冷却することができれば、湯口59に遠い第1型40から湯口59に近い第2型50の順で、指向性凝固を実現できる。これにより、冷却によるヒケを湯口59近くに集中させることができ、この点からも、鋳物10におけるヒケによる欠陥を抑制することができる。
【0086】
また、3つ以上の湯口59が、間に入子58を配置した状態で、千鳥状に配置されているため、第2型50における複数の湯口59は、入子58の配置スペース分隔てられる。このため、入子を入子配置直線に沿って一側に連続して配置する場合と比較して、高温となりやすい湯口59が分散される。これにより、第2型50及び第2型50に近い部分で熱が分散され、型空間内の溶湯の迅速な冷却が可能となる。この点からも、鋳物10の欠陥を抑制しつつ、鋳物10を素早く製造できる。
【0087】
また、直線状に並ぶ複数の入子58に対して、3つ以上の湯口59が千鳥状に配置されるため、複数の入子58及び3つ以上の湯口59を、間隔を隔てて配置できる。
【0088】
また、気体通路53は、複数の湯口59によって囲まれた領域で、冷却気体を吹付ける冷却気体噴出口53as、54aを有するため、第2型50のうち複数の湯口59によって囲まれる領域を素早く冷却し、湯口59の冷却が相対的に遅くなるように、指向性凝固を実現することができる。これにより、ヒケを湯口59近くに集中させることができ、鋳物10におけるヒケによる欠陥を抑制することができる。
【0089】
また、液体通路43、44は、重力方向に対して交差する方向に貫通する貫通液体通路43を有するため、当該貫通液体通路43を流れる冷却液によって第1型40を効果的に冷却することができる。これにより、上記指向性凝固をより効果的に実現できる。
【0090】
また、液体通路43、44は、鋳抜きピン41内に冷却液を流すピン用液体通路44を有するため、型空間内の溶湯を、鋳抜きピン41が通る内部から迅速に冷却することができる。
【0091】
また、液体通路43、44は、互いに独立して冷却液が流れる複数の独立液体通路として複数のピン用液体通路44を有し、複数のピン用液体通路44のそれぞれに対応してバルブ82が設けられている。このため、各バルブ82によって、複数のピン用液体通路44のそれぞれに冷却液が流れるタイミングをコントロールすることによって、好ましい指向性凝固を実現できる。
【0092】
また、鋳造用金型装置20又は鋳造装置70は、バルブ82と、バキューム装置83と備えており、バキューム装置83によってピン用液体通路44を真空状態にした状態で、バルブ82が開いて冷却水タンク81内の冷却液がピン用液体通路44内を流れるようにする。このため、冷却液が一気にピン用液体通路44内に流れ込むことができ、迅速な冷却が可能となる。
【0093】
また、冷却液を圧送する場合、圧送のために圧力によって冷却液が漏れることも想定される。本実施形態では、鋳造用金型30内の通路内を吸引することによって、冷却水タンク81内の冷却液を鋳造用金型30内の通路に導いている。このため、鋳造用金型30内の通路に、冷却液による高圧が作用することが抑制され、液漏が生じ難い。
【0094】
仮に鋳造用金型30内の通路に漏れがあった場合、吸引時に検出される気体の圧力が小さくなるため、当該漏れが事前に発見される。また、仮に、冷却水が鋳造用金型30内の通路に吸引されたとしても、漏れ箇所の吸引は継続するため、当該漏れ箇所からの漏れが抑制される。
【0095】
また、バルブ82の開閉タイミングを、タイマー72tの計時時間によってコントロールするため、鋳造用金型30の熱物性に拘らず、安定した鋳造が可能となる。例えば、仮に、鋳造用金型30内のいずれかの箇所の温度を測定し、当該温度によってバルブ82の開閉タイミングをコントロールすることを考える。この場合でも、溶湯の熱を直接測定することは難しいので、鋳造用金型30内のいずれかの箇所の温度を測定することとなる。しかしながら、鋳造用金型30内のいずれかの箇所の温度は、溶湯の温度を正確に反映しているとはいえない場合がある。例えば、連続的して鋳物10を複数製造する作業を想定すると、初回製造時には鋳造用金型30の熱は低く、鋳造を繰返すにつれて鋳造用金型30の全体的な温度が高くなってくる。このため、鋳物10の製造回数が増えるに従って、鋳造用金型30の温度が高く検出されることが想定され、バルブ82の開閉タイミングが徐々にずれてくることが想定される。
【0096】
これに対して、時間によってバルブ82をコントロールすることによって、鋳造用金型30の温度に影響されず、安定した鋳造が可能となる。しかも、複数のバルブ82を、時間によって個別にコントロールすることによって、相対的に高温となる箇所を迅速非冷却し、相対的に低温となる箇所が冷えすぎないように理想的な冷却が可能となる。
【0097】
上記のように、バルブ82及びバキューム装置83を備える鋳造装置70が、バキューム装置83の吸引動作によって管89dを真空状態とした状態で、バルブ82を開く構成は、液体通路を有する各種鋳造用金型に適用可能である。このため、鋳造装置70に装着される鋳造用金型は、上記入子58及び湯口59を有する鋳造用金型30でなくてもよい。もちろん、その場合の鋳造用金型は、シリンダーヘッド10を製造するための金型で無くてもよい。
【0098】
また、本実施形態に係る鋳物10の製造方法によると、型空間内の溶湯を、液体通路43、44内を流れる冷却液によって冷却して、溶湯を硬化させ、鋳造用金型装置20から、溶湯が硬化することによって形成された鋳物10を取出すため、液体通路43、44内を流れる冷却液によって鋳物10をより効果的に冷却できる。
【0099】
<変形例>
製造対象である鋳物がシリンダーヘッド10であることは必須ではない。鋳物は、内燃機関の他の部分、例えば、シリンダブロックであってもよい。鋳物は、内燃機関の構成部品ではない、他の物であってもよい。
【0100】
なお、第1型40及び第2型50の位置関係は上記実施形態の例に限られない。例えば、第1型が第2型の下に配置されてもよい。また、第1型と第2型とが水平方向又は斜め方向において対向し合う位置関係とされてもよい。
【0101】
入子58の数、湯口59の数、及び複数の入子58に対する湯口59の位置関係は上記例に限られない。例えば、入子58は、2つ、3つ、又は5以上であってもよい。湯口59は、3つ又は5つ以上であってもよい。入子配置直線Lに沿った方向において隣合う湯口間に、2つの入子以上が存在していてもよい。すなわち、入子が並ぶ方向である入子配置直線の両側に位置する複数の湯口が、当該入子配置直線に沿った方向においてずれて交互に配置されていればよい。
【0102】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0103】
<付記>
本開示は下記の各態様を開示する。
【0104】
第1の態様は、第1型面と、冷却液が流れる液体通路とを含む第1型と、第2型面と、鋳物内の凹みを形成する複数の入子と、型空間に溶湯を流し込むための3つ以上の湯口と、冷却気体が流れる気体通路とを含む第2型と、を備え、前記複数の入子が直線状に並んで配置されると共に、前記3つ以上の湯口が、間に前記入子を配置した状態で、千鳥状に配置されている、鋳造用金型装置である。
【0105】
この鋳造用金型装置によると、第1型に液体通路が形成され、第2型に気体通路が形成されている。冷却気体よりも冷却液によって迅速に冷却を行うことができる。これにより、第1型から第2型の順で、指向性凝固を実現できる。また、第2型における複数の湯口は、入子の配置スペース分隔てられる。このため、高温となりやすい湯口が分散され、迅速な冷却が可能となる。これらにより、指向性凝固を実現しつつ、鋳造用鋳物をより効果的に冷却できる。
【0106】
また、直線状に並ぶ複数の入子に対して、前記3つ以上の湯口が千鳥状に配置されるため、複数の入子及び3つ以上の湯口を、相互に間隔を隔てて配置できる。
【0107】
第2の態様は、第1の態様に係る鋳造用金型装置であって、前記気体通路は、前記複数の湯口によって囲まれる領域で、前記冷却気体を吹付ける冷却気体噴出口を有していてもよい。
【0108】
これにより、第2型のうち複数の湯口によって囲まれる領域部分を早めに冷却し、湯口の冷却が遅くなるように、指向性凝固を実現することができる。
【0109】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る鋳造用金型装置であって、前記液体通路は、重力方向に対して交差する方向に貫通する貫通液体通路を有していてもよい。
【0110】
これにより、貫通液体通路を流れる冷却液によって第1型を効果的に冷却することができる。
【0111】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る鋳造用金型装置であって、前記第1型が鋳抜きピンを含み、前記液体通路は、前記鋳抜きピン内に冷却液を流すピン用液体通路を有していてもよい。
【0112】
これにより、鋳抜きピンが通る箇所を迅速に冷却することができる。
【0113】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る鋳造用金型装置であって、前記液体通路は、互いに独立して冷却液が流れる複数の独立液体通路を有し、前記複数の独立液体通路のそれぞれに対応するバルブをさらに備えてもよい。
【0114】
これにより、数の独立液体通路のそれぞれに対応するバルブによって、複数の独立液体通路のそれぞれに冷却液が流れるタイミングをコントロールすることによって、好ましい指向性凝固を実現できる。
【0115】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る鋳造用金型装置であって、前記液体通路に対して冷却液を供給する冷却液供給源と、前記冷却液供給源と前記液体通路との間に介在するバルブと、前記バルブが閉じられた状態で、前記液体通路内の空間を吸引して前記液体通路内を真空状態するバキューム装置と、をさらに備え、前記真空状態で前記バルブが開いて前記冷却液供給源内の冷却液が前記液体通路内を流れてもよい。
【0116】
この場合、冷却液が一気に液体通路内に流れ込むため、迅速な冷却が可能である。
【0117】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る鋳造用金型装置であって、前記液体通路に冷却液が流れるタイミングをコントロールするバルブと、前記バルブの開閉タイミングを、時間によってコントロールするタイマーと、をさらに備えてもよい。
【0118】
この場合、バルブの開閉タイミングを時間によってコントロールするため、型自体の熱物性に拘らず、安定した鋳造が可能となる。
【0119】
第8の態様に係る鋳物の製造方法は、第1から第7のいずれか1つの鋳造用金型装置の型空間内に溶湯を供給し、前記型空間内の溶湯を、前記液体通路内を流れる冷却液によって冷却して、前記溶湯を硬化させ、前記鋳造用金型装置から、溶湯が硬化することによって形成された鋳物を取出す。
【0120】
これにより、液体通路内を流れる冷却液によって鋳造用鋳物をより効果的に冷却できる。
【0121】
第9の態様に係る鋳造装置は、鋳造型の冷却用の液体通路の入口に接続される入口側供給路に対して冷却液を供給する冷却液供給源と、前記冷却液供給源と前記入口側供給路の出口との間に介在するバルブと、前記液体通路の出口に接続される出口側幹流体通路に接続され、前記バルブが閉じられた状態で、前記出口側幹流体通路内の気体を吸引して前記出口側幹流体通路内を真空状態とするバキューム装置と、を備え、前記真空状態で前記バルブが開く、鋳造装置である。
【0122】
このように、出口側幹流体通路が真空状態とされることで、冷却通路も真空状態となる。この状態でバルブを開くことで、冷却液が一気に液体通路内に流れ込むため、鋳造用鋳物をより効果的に冷却できる。
【0123】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0124】
10 シリンダーヘッド(鋳物)
20 鋳造用金型装置
30 鋳造用金型
40 第1型
41 鋳抜きピン
42 第1型面
43 貫通液体通路(液体通路)
44 ピン用液体通路(液体通路)
50 第2型
52 第2型面
53、54 気体通路
53a、53as、54a 冷却気体噴出口
55、56 冷却気体用管
58 入子
59 湯口
70 鋳造装置
72 金型コントローラ
72t タイマー
80 第1冷却液供給装置
81 冷却水タンク(冷却液供給源)
82 バルブ
83 バキューム装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6