(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167508
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】充填剤含有マイクロカラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20231116BHJP
G01N 27/447 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01N30/60 K
G01N27/447 331E
G01N27/447 315K
G01N30/60 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078757
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】521023942
【氏名又は名称】エースバイオアナリシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】志村 清仁
(57)【要約】
【課題】キャピラリー管に接続できる新規の充填剤を含むマイクロカラムを提供すること。
【解決手段】一つの局面において、本開示は、接続構造を提供し、この接続構造は、コネクタまたはマイクロカラムと、複数(例えば、2つ)のキャピラリー管とを備える。一つの実施形態において、接続構造は、マイクロカラム(またはコネクタ)およびキャピラリー管が流体連通するように構成され得る。一つの実施形態において、接続構造は、液密になるように(構造体の内部から外部への液体の流出が防止されるように)構成され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続構造において使用するためのマイクロカラムであって、
前記接続構造は、前記マイクロカラムと、2つのキャピラリー管とを備え、
前記マイクロカラムは、カラム管と、前記カラム管の内部に充填された充填剤と、前記カラム管の内部に前記充填剤の両端に接触して配置される細孔部材とを備え、
前記マイクロカラムは、前記キャピラリー管を受容するための開口部を両端に備える、マイクロカラム。
【請求項2】
前記細孔部材が、多孔性材料を含む、請求項1に記載のマイクロカラム。
【請求項3】
前記細孔部材が、繊維材料を含む、請求項1に記載のマイクロカラム。
【請求項4】
前記細孔部材が、キャピラリー管断片を含む、請求項1に記載のマイクロカラム。
【請求項5】
前記細孔部材が、多孔性材料およびキャピラリー管断片を含み、前記多孔性材料は前記充填剤と接触するように配置される、請求項1に記載のマイクロカラム。
【請求項6】
前記細孔部材が、前記マイクロカラムの長さの40%以下の長さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項7】
前記充填剤が、前記マイクロカラムの長さの5%以上の長さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項8】
前記カラム管の内径が、前記キャピラリー管の外径と実質的に同じである、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項9】
前記充填剤が、粒子状充填剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項10】
前記開口部が、前記カラム管の部分である、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項11】
約1~50mmの長さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項12】
前記カラム管が、フッ素樹脂材料で構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項13】
前記キャピラリー管が、前記カラム管に受容される位置を規定する位置決め手段を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項14】
前記位置決め手段が、前記キャピラリー管の端部が前記細孔部材の端部と接触するような位置を規定する、請求項13に記載のマイクロカラム。
【請求項15】
前記カラム管が内部カラム管を含み、前記カラム管の内径が前記内部カラム管の外径と実質的に同じであり、前記内部カラム管が内部に前記充填剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項16】
前記内部カラム管が内部に前記細孔部材を含む、請求項15に記載のマイクロカラム。
【請求項17】
前記内部カラム管に接触して前記細孔部材が配置される、請求項15に記載のマイクロカラム。
【請求項18】
前記内部カラム管がガラス材料で構成される、請求項15に記載のマイクロカラム。
【請求項19】
前記カラム管が、単一の管で構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項20】
前記カラム管が複数の管で構成され、前記複数の管は前記内部カラム管を介して接続される、請求項15のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項21】
前記マイクロカラムが、前記カラム管を覆う管状部材をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項22】
前記カラム管が、中央の管および両端の管を含む3つの管で構成され、前記中央の管が前記充填剤を含む、請求項21に記載のマイクロカラム。
【請求項23】
前記中央の管の内径が、前記両端の管の内径よりも大きい、請求項22に記載のマイクロカラム。
【請求項24】
前記両端の管が前記細孔部材を含む、請求項22に記載のマイクロカラム。
【請求項25】
前記管状部材が、熱収縮素材で構成されている、請求項21に記載のマイクロカラム。
【請求項26】
前記管状部材が、前記カラム管の端部を部分的に覆っている、請求項21に記載のマイクロカラム。
【請求項27】
前記管状部材に対して外力を付与する力付与手段をさらに備え、
前記力付与手段による外力の付与により、前記管状部材が変形し、前記中央の管と前記管状部材との間の空間を膨張または収縮させるように構成されている、請求項22に記載のマイクロカラム。
【請求項28】
前記力付与手段は圧力制御部材を備え、
前記圧力制御部材は、前記管状部材との間に圧力調整空間が形成されるように、前記管状部材の少なくとも前記中央の管を覆う部分の周囲に配置されている、請求項22に記載のマイクロカラム。
【請求項29】
前記圧力制御部材は、前記圧力調整空間を減圧することにより前記中央の管と前記管状部材との間の空間を膨張させ、前記圧力調整空間を加圧することにより前記中央の管と前記管状部材との間の空間を収縮させるように構成されている、請求項28に記載のマイクロカラム。
【請求項30】
前記中央の管が前記細孔部材を含む、請求項27に記載のマイクロカラム。
【請求項31】
前記管状部材の少なくとも前記中央の管を覆う部分が、可撓性素材で構成されている、請求項27に記載のマイクロカラム。
【請求項32】
前記可撓性素材はシリコーン素材である、請求項31に記載のマイクロカラム。
【請求項33】
前記キャピラリー管の外側表面がコーティングされている、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項34】
請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラムと、
前記キャピラリー管と、
前記キャピラリー管が前記マイクロカラムに受容される位置を規定する位置決め手段と
を含むマイクロカラムキット。
【請求項35】
前記位置決め手段は、前記キャピラリー管に取り付けられたストッパー、または前記キャピラリー管に設けられたインジケータである、請求項34に記載のマイクロカラムキット。
【請求項36】
試料の測定方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラムをキャピラリー管に接続して、接続構造を形成する工程と、
前記接続構造を通して試料を流す工程と、
前記接続構造を通過した試料を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項37】
キャピラリー電気泳動、LC-MS、またはキャピラリー電気泳動-MSによる測定方法である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラムの製造方法であって、
前記カラム管の内部に前記充填剤を充填する工程と、
前記細孔部材を前記カラム管に挿入して前記充填剤と接触させる工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャピラリー電気泳動や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)において使用できるマイクロカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
キャピラリー電気泳動やHPLCなどのキャピラリー管を使用した分析技術において、クロマトグラフィーカラムなど機能性を備えたキャピラリー管、およびバルブやサンプラーに接続して一連の流体連通な流路を形成するための配管用のキャピラリー管など各種キャピラリー管が利用される。例えば、これらのキャピラリー管は、未接続のキャピラリー管の先端にスリーブ部材を取り付けてキャピラリー管の外径を拡張し、キャピラリー管およびスリーブ部材を一緒にフェラル部材(押しネジと一体化されることも多い)に挿入し、これらをユニオンに押し込むことで、一方のキャピラリー管をユニオンに固定し、他方のキャピラリー管も同様にして同じユニオンに固定することで配管を液密に保ったまま接続がなされる。このように、キャピラリー管の接続には複数の部材が使用され、接続部は大きな体積を占めることが多い(特許文献1など)。また、接続部に複数の部材が取り付けられる場合、これらの部材を取り付けるためにキャピラリー管にある程度の長さが要求され、例えば非常に短いクロマトグラフィーカラムなどの機能的キャピラリー管は、そもそも接続が困難であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究した結果、キャピラリー電気泳動や液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)において使用される既存のキャピラリー管に接続できるマイクロカラムを開発した。一つの側面において、本開示のマイクロカラムはキャピラリー管のコネクタである。一つの側面において、本開示のマイクロカラムは、分離などの機能性を備えた小サイズの機能性部材である。本開示は、キャピラリー電気泳動やLC-MSなどのキャピラリー管を使用した分析技術において有用に使用できるマイクロカラムおよびその作製方法を提供する。
【0005】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
接続構造において使用するためのマイクロカラムであって、
前記接続構造は、前記マイクロカラムと、2つのキャピラリー管とを備え、
前記マイクロカラムは、カラム管と、前記カラム管の内部に充填された充填剤と、前記カラム管の内部に前記充填剤の両端に接触して配置される細孔部材とを備え、
前記マイクロカラムは、前記キャピラリー管を受容するための開口部を両端に備える、マイクロカラム。
(項目2)
前記細孔部材が、多孔性材料を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目3)
前記細孔部材が、繊維材料を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目4)
前記細孔部材が、キャピラリー管断片を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目5)
前記細孔部材が、多孔性材料およびキャピラリー管断片を含み、前記多孔性材料は前記充填剤と接触するように配置される、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目6)
前記細孔部材が、前記マイクロカラムの長さの40%以下の長さを有する、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目7)
前記充填剤が、前記マイクロカラムの長さの5%以上の長さを有する、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目8)
前記カラム管の内径が、前記キャピラリー管の外径と実質的に同じである、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目9)
前記充填剤が、粒子状充填剤である、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目10)
前記開口部が、前記カラム管の部分である、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目11)
約1~50mmの長さを有する、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目12)
前記カラム管が、フッ素樹脂材料で構成される、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目13)
前記キャピラリー管が、前記カラム管に受容される位置を規定する位置決め手段を備える、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目14)
前記位置決め手段が、前記キャピラリー管の端部が前記細孔部材の端部と接触するような位置を規定する、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目15)
前記カラム管が内部カラム管を含み、前記カラム管の内径が前記内部カラム管の外径と実質的に同じであり、前記内部カラム管が内部に前記充填剤を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目16)
前記内部カラム管が内部に前記細孔部材を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目17)
前記内部カラム管に接触して前記細孔部材が配置される、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目18)
前記内部カラム管がガラス材料で構成される、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目19)
前記カラム管が、単一の管で構成される、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目20)
前記カラム管が複数の管で構成され、前記複数の管は前記内部カラム管を介して接続される、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目21)
前記マイクロカラムが、前記カラム管を覆う管状部材をさらに備える、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目22)
前記カラム管が、中央の管および両端の管を含む3つの管で構成され、前記中央の管が前記充填剤を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目23)
前記中央の管の内径が、前記両端の管の内径よりも大きい、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目24)
前記両端の管が前記細孔部材を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目25)
前記管状部材が、熱収縮素材で構成されている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目26)
前記管状部材が、前記カラム管の端部を部分的に覆っている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目27)
前記管状部材に対して外力を付与する力付与手段をさらに備え、
前記力付与手段による外力の付与により、前記管状部材が変形し、前記中央の管と前記管状部材との間の空間を膨張または収縮させるように構成されている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目28)
前記力付与手段は圧力制御部材を備え、
前記圧力制御部材は、前記管状部材との間に圧力調整空間が形成されるように、前記管状部材の少なくとも前記中央の管を覆う部分の周囲に配置されている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目29)
前記圧力制御部材は、前記圧力調整空間を減圧することにより前記中央の管と前記管状部材との間の空間を膨張させ、前記圧力調整空間を加圧することにより前記中央の管と前記管状部材との間の空間を収縮させるように構成されている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目30)
前記中央の管が前記細孔部材を含む、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目31)
前記管状部材の少なくとも前記中央の管を覆う部分が、可撓性素材で構成されている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目32)
前記可撓性素材はシリコーン素材である、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目33)
前記キャピラリー管の外側表面がコーティングされている、前述のいずれかのマイクロカラム。
(項目34)
前述のいずれかのマイクロカラムと、
前記キャピラリー管と、
前記キャピラリー管が前記マイクロカラムに受容される位置を規定する位置決め手段と
を含むマイクロカラムキット。
(項目35)
前記位置決め手段は、前記キャピラリー管に取り付けられたストッパー、または前記キャピラリー管に設けられたインジケータである、前述のいずれかのマイクロカラムキット。
(項目36)
試料の測定方法であって、
前述のいずれかのマイクロカラムをキャピラリー管に接続して、接続構造を形成する工程と、
前記接続構造を通して試料を流す工程と、
前記接続構造を通過した試料を測定する工程と
を含む、方法。
(項目37)
キャピラリー電気泳動、LC-MS、またはキャピラリー電気泳動-MSによる測定方法である、前述のいずれかの方法。
(項目38)
前述のいずれかのマイクロカラムの製造方法であって、
前記カラム管の内部に前記充填剤を充填する工程と、
前記細孔部材を前記カラム管に挿入して前記充填剤と接触させる工程と、
を含む、方法。
【0006】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0007】
本開示はマイクロカラムを提供することで、キャピラリー管をコンパクトに接続する、微量試料に適用可能な微小な分離システムを提供する、および/またはキャピラリー管システムのフローの微細な制御を可能にするなどの効果を提供し得る。また、本開示のマイクロカラムは、既存の配管上のキャピラリー管の途中に挿入する様式で(例えば、キャピラリー管の切断点に挿入する様式で)取り付けることができるため、確立した装置構成を変更せずに使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図1B】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図1C】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図1D】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図2】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図3】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図4】
図3のマイクロカラムの動作の概略図である。
【
図5】プロテインGをアフィニティーリガンドとするマイクロカラムを用いた抗体医薬セツキシマブのアフィニティークロマトグラフィーを示す。横軸は時間(分)を示し、縦軸は、蛍光強度(実線)または電気伝導度(点線)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形に用いられる冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0010】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0011】
(定義等)
本明細書において「接続構造」とは、マイクロカラム(またはコネクタ)と、マイクロカラム(またはコネクタ)に接続されるべき構造体(キャピラリー管など)とを合わせた部分を指す。例えばLCシステムの配管の一部に組み込まれている場合など、接続構造が構造体全体に占める割合が小さい場合、接続構造は、マイクロカラム(またはコネクタ)の両端部の間の範囲に存在する構造体部分を指して本明細書において使用されることがある。
【0012】
本明細書において「コネクタ」とは、複数のキャピラリー管を互いに接続することができる構造体(接続されている状態におけるものも含む)を指す。
【0013】
本明細書において「マイクロカラム」とは、少なくともカラム管および充填剤を含み、小さなサイズ(例えば、5cm以下の長さ)を有する管状の構造体を指し、キャピラリー管と接続されて使用され、分離などの機能性を備え得る。本明細書に記載のマイクロカラムを覆う管状部材などの追加の構造体がさらに管状の構造体に取り付けられた場合、管状の構造体に加えてこの追加の構造体も含めた部分をマイクロカラムと呼び得る。一つの実施形態において、コネクタの内部に充填剤を含むことでマイクロカラムになり得る。
【0014】
本明細書において「カラム管」とは、その内部に充填剤を保持することができる筒状または管状の構造体を指す。
【0015】
本明細書において「充填剤」とは、カラム管の内部に保持され、カラム管の内部を通る流体と接触することで流体中の分析物の挙動に影響を及ぼす物質を指す。
【0016】
本明細書において「細孔部材」とは、カラム管の内部に保持され、充填剤と接触して配置される部材を指す。細孔部材には、複数の細孔を有する多孔性材料(フリットとも呼ばれる)、単一の細孔を有するキャピラリー管断片(エンドピースとも呼ばれる)が含まれる。細孔部材により、充填剤の喪失(流出)が防がれ、および/または充填剤の位置が固定され得る。
【0017】
本明細書において「内部カラム管」とは、カラム管の内部に設けられる筒状または管状の構造体を指す。
【0018】
本明細書において「キャピラリー管」とは、小さな内径(代表的には約0.01~約1mm)を有する中空構造の管を指す。キャピラリー電気泳動やHPLCにおいて使用されるキャピラリー管は、熔融シリカ製やガラス製であることが多いが、キャピラリー管の材料は特に限定されない。通常、キャピラリー管は、その末端部分以外は液密である。キャピラリー管は、外側がポリイミドなどでコーティングされている場合もあり、光学的検出の妨害になるなどの場合を除いて、コーティングが付着した状態で使われることが多い。
【0019】
本明細書において管状の構造体について記載する場合、中空の空間が延在する方向に関して「長さ」という用語を使用し、中空の空間が延在する方向に直交する方向に関して「周囲」、「外径」および「内径」という用語を使用し得る。
【0020】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、本開示のマイクロカラム、キャピラリー管など)が提供されるユニットをいう。キットは、好ましくは、提供される部分などをどのように使用するか、あるいは、どのように操作すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。
【0021】
本明細書において、キャピラリー管、カラム管、および細孔部材などの細長の部材についての「長さ」とは、言及される部材の長手方向の長さをいう。
【0022】
本明細書において、用語「約」は、特に別の定義が示されない限り、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。「約」が、温度について使用される場合、示された温度プラスまたはマイナス5℃を指し、「約」が、pHについて使用される場合、示されたpHプラスまたはマイナス0.5を指す。
【0023】
本明細書において、用語「実質的に同じ」は、2つの値が互いにプラスまたはマイナス10%以内の差の範囲内に収まる関係を指す。より好ましくは、実質的に同じ2つの値は、互いにプラスまたはマイナス5%以内の差の範囲内に収まる。
【0024】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0025】
一つの局面において、本開示は、接続構造を提供し、この接続構造は、コネクタまたはマイクロカラムと、複数(例えば、2つ)のキャピラリー管とを備える。一つの実施形態において、接続構造は、マイクロカラム(またはコネクタ)およびキャピラリー管が流体連通するように構成され得る。一つの実施形態において、接続構造は、液密になるように(構造体の内部から外部への液体の流出が防止されるように)構成され得る。一つの実施形態において、本開示の接続構造は、複数のキャピラリー管を接続する機能以外の機能(例えば、分離および流れ制御などの本明細書に記載のマイクロカラムの機能)も発揮し得る。
【0026】
本明細書に記載のキャピラリー管は、市販のものを使用することができ、例えば、キャピラリー電気泳動やHPLC用の配管として市販されている。キャピラリー管は、例えば、約0.05~5mm、約0.05mm、約0.1mm、約0.18mm、約0.2mm、約0.36mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mmなどの外径を有し得る。キャピラリー管は、例えば、約0.01~1mm、約0.01mm、約0.02mm、約0.05mm、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mmなどの内径を有し得る。キャピラリー管は、例えば、熔融シリカ製またはガラス製であり得る。キャピラリー管は、外側がポリイミドなどでコーティングされていてもよい。本開示の接続構造の性能(耐圧性など)は、キャピラリー管自体の物理的強度以外にも、マイクロカラムとキャピラリー管とが接触する界面の相互作用にも依存し得るので、キャピラリー管は、マイクロカラムの素材(テフロン(登録商標)など)に適したコーティング(ポリイミドなど)を有することが有利であり得る。
【0027】
一つの局面において、本開示は、接続構造において使用するためのマイクロカラム(またはコネクタ)、あるいは、マイクロカラム(またはコネクタ)とキャピラリー管との組合せ(例えば、キットとして)を提供する。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラムは、コネクタおよびカラム管を含むかまたはこれらからなる。一つの実施形態において、マイクロカラム(またはコネクタ)は、それぞれ別のキャピラリー管を受容する複数の開口部を備える。マイクロカラム(またはコネクタ)は、同じ外径を有するキャピラリー管を受容してもよいし、異なる外径を有するキャピラリー管を受容してもよく、開口部の大きさはキャピラリー管の外径に応じて調整され得る。
【0028】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、約20mm、約50mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.5~50mm、約1~50mm、約1~20mm、約1~10mmの長さを有し得る。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、接続構造の形成のために必要な部材が少数であり得る(例えば、マイクロカラムとキャピラリー管のみ、またはコネクタとキャピラリー管のみ)ため、接続が容易であり得、また各種部材の取り付けのための幅が小さくて済み得る。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)のキャピラリー管を受容する部分は、キャピラリー管の外径と同じかまたはその約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上の大きさの内径を有し得る。
【0029】
本発明の充填剤は、粒子状充填剤またはモノリス充填剤であり得る。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、粒子状充填剤を含む。典型的には、マイクロカラム中に粒子状充填剤を保持するために、マイクロカラムには細孔部材も含まれ得る。一般的に粒子状充填剤は、モノリス充填剤と比較して高い結合容量を達成し得るため、好ましい。
【0030】
別の実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、モノリス充填剤を含む。モノリス充填剤を用いる場合には、マイクロカラム中に充填剤を保持するための細孔部材は不要であり得るため、好ましい。
【0031】
一つの実施形態において、本開示のカラム管は、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.1~10mm、約0.5~10mm、約0.5~5mmの外径を有し得る。カラム管の周囲にさらなる部材を取り付けない場合、カラム管の外径が接続構造の外径となり得るので、本開示の接続構造は非常に少ないスペースで形成でき、高い柔軟性での配管を可能にし得る。一つの実施形態において、本開示のカラム管は、約0.05mm、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.05~5mm、約0.1~5mm、約0.2~2mmの内径を有し得る。
【0032】
一つの実施形態において、本開示のカラム管は、キャピラリー管を直接受容する開口部を備える。この開口部は、マイクロカラムにおいて外側に位置付けられる開口部であり得る。一つの実施形態において、カラム管の開口部は、キャピラリー管の挿入が容易になるようにキャピラリー管の外径と同じかまたはそれを上回る内径となるように調整されてもよい。例えば、カラム管の開口部をラッパ状に広げてもよい。一つの実施形態において、カラム管(キャピラリー管を受容する部分)は、キャピラリー管の外径と同じであるか、またはキャピラリー管の外径より小さく、かつキャピラリー管の外径の約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上の大きさの内径を有し得る。一つの側面において、マイクロカラムが管状部材を含む場合、カラム管は、管状部材がキャピラリー管を受容できるようにキャピラリー管の外径を調整するための手段であり得る。
【0033】
一つの実施形態において、本開示のカラム管は、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、TEFLON(登録商標)、TEFZEL(登録商標)、DELRIN(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリプロピレン、スルホンポリマー、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリオキシメチレン(POM)などの素材で構成され得る。好ましくは、本開示のカラム管は、TEFLON(登録商標)のような柔軟性および硬さを備えたフッ素樹脂で構成され、キャピラリー管を受容した際に液密となる。
【0034】
一つの実施形態において、充填剤は、カラム管(または内部カラム管)の約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、約20mm、約50mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.5~50mm、約1~50mm、約1~20mm、約1~10mmの長さにわたって充填され得る。一つの実施形態において、充填剤は、マイクロカラムの長さの約3%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約40%以上、約60%以上、または約80%以上の長さにわたって充填され得る。カラム管の長さに応じて保持できる充填剤の体積が増大するため、例えば分離性能の向上などのためにはカラム管をある程度長くするように構成することが有利であり得るが、充填剤の存在する距離が長くなるほどここを通すためにフローの圧力を上昇させる必要があるため、液密な接続構造を維持できる圧力範囲となるようにこの長さを調製することが重要であり得る。
【0035】
充填剤は、粒子状充填剤、モノリス充填剤など、HPLCシステムなどにおいて使用されるカラムの充填剤構造であり得る。本開示のマイクロカラムの長さは短いため、粒子充填剤を充填しても低圧で操作でき、マイクロカラムとキャピラリー管とを接続する際に追加の接続用部材は不要であり得る。また、充填剤は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィーなどにおいて使用されるカラムの充填剤であり得、同様の分離モードを実装できる。アフィニティークロマトグラフィーにおける標的分子/アフィニティーリガンドの組み合わせとして、アビジン及びストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質/ビオチン、マルトース結合タンパク質/マルトース、Gタンパク質/グアニンヌクレオチド、オリゴヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合タンパク質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、抗原分子(エピトープ)/抗体、抗体/プロテインA、抗体/プロテインG、抗体/プロテインL、レクチン/糖、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質/ATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質/エストラジオールなどが挙げられる。
【0036】
一つの実施形態において、細孔部材は、カラム管(または内部カラム管)の内部で充填剤の両端に接触して配置される。細孔部材を取り付けることで充填剤の移動、漏出および/または変形が抑制され得る。一つの実施形態において、細孔部材は、マイクロカラムの長さの約50%以下、約40%以下、約20%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、約4%以下、約2%以下または約1%以下の長さを有する。一つの実施形態において、細孔部材は、多孔性材料(フリットとも呼ばれ得る)、キャピラリー管断片(エンドピースとも呼ばれ得る)またはその両方であり得る。細孔部材が、多孔性材料およびキャピラリー管断片を含む場合、多孔性材料が充填剤に接触して配置され得る。一つの実施形態において、細孔部材は、カラム管(または内部カラム管)に固定されておらず、押圧(キャピラリー管の挿入を含む)により移動し得る状態で存在する。
【0037】
一つの実施形態において、多孔性材料は、繊維材料(綿、石綿、石英繊維など)を含むが、液体が通過できる材料であれば特に限定されない。多孔性材料の過度の圧縮はマイクロカラムの背圧の上昇をもたらし得るので、位置決め手段などによってキャピラリー管による押圧を回避することが好ましい。一つの実施形態において、キャピラリー管断片は、マイクロカラムに接続するキャピラリー管と同じ外径および内径を有するが、異なる外径および内径を有してもよい。キャピラリー管断片が充填剤と直接接触する実施形態において、キャピラリー管断片の内径および充填剤の構造およびサイズは、充填剤がキャピラリー管断片の目詰まりを引き起こさないように選択される。
【0038】
一つの実施形態において、キャピラリー管は、マイクロカラムに受容される位置を規定する位置決め手段を備える。キャピラリー管をマイクロカラムに深く挿入しすぎると、キャピラリー管が細孔部材、充填剤および/または内部カラム管を押し込み、これらの部材のマイクロカラム内における位置を移動させたり、充填剤および/または細孔部材の過度な圧縮を引き起こしたりする。また、挿入が浅すぎると、細孔部材とキャピラリー端の間にデッドボリュームが生じ、カラム性能の実質的な低下を引き起こす。これを回避するために位置決め手段が存在することが好ましい。一つの実施形態において、位置決め手段は、キャピラリー管に取り付けられたフランジ状のストッパー(例えば、キャピラリー管を受容できる内径を有する管状の構造体を短く(例えば、約1mmなど)切り出したものを適正な位置に接着したものなど)、またはキャピラリー管に設けられたインジケータ(例えば、キャピラリー表面に付された線、凹部あるいは凸部など)である。
【0039】
一つの実施形態において、カラム管の内部に内部カラム管が配置される。一つの実施形態において、内部カラム管は、ガラス製であり得るが、特に材料は限定されない。一つの実施形態において、内部カラム管には充填剤が含まれる。内部カラム管はカラム管に保護され得るため、特に強度は求められず、内部カラム管の内径は、カラム管の内径の約95%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%などであり得る。一つの実施形態において、カラム管の内径は、内部カラム管の外径と実質的に同じになるように(例えば、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下の差)構成され得る。カラム管の内径と実質的に同じ外径を有する内部カラム管が存在する場合、内部カラム管の端部のみがカラム管に覆われていれば全体的に液密になり得るため、一つの実施形態において、カラム管は内部カラム管の中央部分を覆っていなくてもよく、すなわち、カラム管は複数の管で構成され、この複数の管が内部カラム管を介して接続された構造であり得る。
【0040】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、カラム管の外側に管状部材を備える。この実施形態において、管状部材により固定されるため、カラム管は、複数の管で構成されていてもよく、例えば、両端の管および中央の管の3つの管で構成されてもよい。一つの実施形態において、中央の管は充填剤を含み、中央の管の内径は大きくなるように構成される。一つの実施形態において、中央の管の内部および/または中央の管に接して細孔部材が配置される。中央の管内部には充填剤が含まれ得るので、充填剤の吸着・分離性能の向上のために、および/または充填剤が存在することによるフローに必要な圧力の増大を抑制するために中央の管の内径を大きくすることが好ましくあり得る。そのため、一つの実施形態において、中央の管の内径はカラム管の両端の管および/またはキャピラリー管の内径より大きくなるように構成され得る。この実施形態において、中央の管の内部にキャピラリー管が挿入されるおそれがある。そのため、一つの実施形態において、キャピラリー管には、カラム管に受容される位置を規定する位置決め手段(上記)が設けられ、中央の管にキャピラリー管が到達しないように構成され、そうすることで細孔部材および充填剤がキャピラリー管によって押し込まれることを防ぐことができる。
【0041】
一つの実施形態において、本開示の管状部材は、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の長さと同じである。一つの実施形態において、カラム管の少なくとも一部は管状部材の端部から飛び出していてもよい。一つの実施形態において、管状部材(変形する場合は非変形時)の内径は、カラム管の外径とほぼ等しくなるように(例えば、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下の差)構成され得る。一つの実施形態において、本開示の管状部材は、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.1~10mm、約0.5~10mm、約0.5~5mmの外径を有し得る。管状部材の周囲にさらなる部材を取り付けない場合、管状部材の外径が接続構造の外径となり得るので、本開示の接続構造は非常に少ないスペースで形成でき、高い柔軟性での配管を可能にし得る。一つの実施形態において、本開示の管状部材は、約0.05mm、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.05~5mm、約0.1~5mm、約0.2~2mmの内径を有し得る。
【0042】
一つの実施形態において、本開示の管状部材は、熱収縮性素材であり得る。熱収縮性素材として、ポリエチレン、酢酸ビニルポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、ポリプロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されず、公知の任意の熱収縮性素材を使用することができる。熱収縮性素材として、例えば、直径1mmの棒状の成形品を150℃で10分間加熱した場合に約90%以下、約80%以下、または約70%以下の長さに収縮するような素材を使用することができる。一つの実施形態において、本開示の管状部材は、可撓性素材であり得る。可撓性素材として、シリコーン素材、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、エラストマーなどが挙げられるが、これらに限定されず、公知の任意の可撓性素材を使用することができる。可撓性素材として、例えば、25℃で約0.02kgf/mm2、約0.05kgf/mm2、約0.1kgf/mm2、約0.2kgf/mm2、約0.4kgf/mm2、約0.6kgf/mm2、約0.8kgf/mm2、約1kgf/mm2、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.02~1kgf/mm2、約0.05~0.6kgf/mm2、約0.1~0.4kgf/mm2の引張弾性率を有する素材を使用することができる。可撓性素材として、例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、メタノールおよび水に対して厚さ1mm、一辺1cmの正方形の成形品を50℃で100時間これらの溶媒に浸漬した場合に約20%以下、約10%以下、または約5%以下の体積増加率を示すような素材が好ましくあり得る。
【0043】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、管状部材に対して外力を付与する力付与手段を(例えば管状部材の周囲に)さらに備え、力付与手段による外力の付与により、管状部材が変形し、中央の管と管状部材との間の空間が膨張または収縮させられる。例えば、中央の管と管状部材との間の空間の膨張または収縮は、マイクロカラムの軸方向に垂直な方向への変形を伴い得る。この実施形態において、少なくとも中央の管の内部に細孔部材が配置される。力付与手段により付与される外力は、機械的な引張力や、管状部材の周囲の圧力操作を介して管状部材内外に発生する圧力差を利用した力などであり得る。例えば、力付与手段は、管状部材に取り付け管状部材を機械的に引張する部材、管状部材の周囲に気密な空間を創出するように管状部材の周囲に取り付けられる部材、この気密な空間(圧力調整空間)内の気圧を増減させる部材(圧力調整空間に連通して接続されたシリンダまたはポンプなど)を備え得る。この実施形態において、管状部材は、シリコーン素材などの上記の可撓性素材であり得る。中央の管と管状部材との間の空間の体積を変化させることで、液密状態を維持したまま中央の管と環状部材の間に新たな流路を形成することができ、これによりキャピラリー管および中央の管の内部および外部のフローの速さと向きを制御する可能性を広げることができる。
【0044】
中央の管と管状部材との間の空間を膨張させると、管状部材と中央の管との間に隙間ができ、この隙間には充填剤が存在しないため抵抗が低く、フローは優先的にこの隙間を流れ得る。例えば、陽極側に置いた固相抽出カラム(中央の管)と等電点電気泳動分離とを直接連結させたシステムにおいては、固相抽出カラムを酸性の陽極液に浸した状態でデバイスの両端に電圧を印加すると、カラム内で陽極方向への電気浸透流が発生し、試料および分離液が等電点電気泳動用キャピラリー内から陽極側に引き出されてしまうという問題が発生するが、上記のフロー制御により、固相抽出カラムからタンパク質を溶離後、電圧を印加する前にカラム管の外側に隙間を発生させると、電気浸透による液の流れがカラムの外側を還流して、下流側の等電点電気泳動用キャピラリーには流れを生じさせないようにすることができる。この実施形態において、中央の管と両端の管との境界部分に流路が形成されることが好ましいので、中央の管の長さは両端の管同士の間の長さより短く構成され、または中央の管に対向する両端の管の端面に溝(例えば、中心から周囲に向かう放射状の溝)を設けることにより、中央の管と両端の管との間に流路が形成され得る。また、中央の管と管状部材との間の空間を収縮させると、管状部材と中央の管との間の隙間は消失し、中央の管外の流路が閉じ、中央の管内に流路が切り替えられるので、この状態を利用してもよい。一つの好ましい実施形態において、中央の管の外壁にスルホン酸基を結合させ、酸性条件下で電気浸透流を陰極方向へ方向付けることもできる。
【0045】
一つの実施形態において、力付与手段は圧力制御部材を備え、圧力制御部材は、管状部材との間に圧力調整空間が形成されるように、少なくとも中央の管を覆う管状部材の部分の周囲に配置され得る。圧力制御部材は、圧力調整空間を減圧することにより中央の管と管状部材との間の空間を膨張させ、圧力調整空間を加圧することにより中央の管と管状部材との間の空間を収縮させ得る。特に、管状部材の中央の管を覆う部分は、可撓性素材で構成され得る。
【0046】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、管状部材の周囲にさらなる部材(例えば管状部材を外部から押圧する部材)を備えない。別の実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、管状部材の周囲にさらなる部材(例えば管状部材を外部から押圧する部材)を備えてもよく、そうすることで液密性能の向上などが期待され得る。この実施形態において、管状部材は、上記の熱収縮性素材であり得る。一つの実施形態において、管状部材は、(熱収縮により)カラム管の端部を部分的に覆うように構成することができ、そうすることでマイクロカラムの耐圧能が向上し得る。例えば、長い管状部材に各種部材を挿入し、管状部材を熱収縮させた後、カラム管の端部から離れた位置で管状部材を切断することで、このような構造が形成され得る。
【0047】
限定を意図するものではないが、理解を容易にするために以下で図面を参照して本開示の具体的な実施形態を説明する。
【0048】
図1A~Dでは、カラム管30に充填剤33を充填し、細孔部材31を挿入してマイクロカラム20を形成し、その後、キャピラリー管22を挿入して接続構造10を形成している。カラム管30がコネクタにあたる。位置決め手段23が存在することで、キャピラリー管22は細孔部材31を押し込まず、充填剤33が保護される。
図1Aは、カラム管30が単一の管で構成される。
図1Bでは、細孔部材が多孔性材料31aおよびキャピラリー管断片31bを含む。
図1Cでは、カラム管に内部カラム管が挿入され、内部カラム管の内部に充填剤および多孔性材料31aが配置され、内部カラム管の外部にキャピラリー管断片31bが配置される。
図1Dでは、カラム管30は2つの管で構成され、内部カラム管がカラム管同士を接続している。
【0049】
図2では、管状部材35(熱収縮素材)にカラム管30(両端の管30aおよび中央の管30b)を挿入し、中央の管30bに充填剤33を充填し、両端の管30aに細孔部材31を挿入し、熱を加えて管状部材35を収縮させてマイクロカラム20を形成し、その後、位置決め手段23を備えたキャピラリー管22を挿入して接続構造10を形成している。管状部材35および両端の管30aがコネクタを構成している。位置決め手段23が存在することで、キャピラリー管22は細孔部材31を押し込まず、充填剤33が保護される。管状部材35の熱収縮により、管状部材35は両端の管30aの端部を部分的に覆っている。
【0050】
図3では、最初に管状部材35(可撓性素材)に両端の管30aおよび中央の管30b(充填剤33および細孔部材31を含む)を挿入してマイクロカラム20を形成する(a)。その後、位置決め手段23を備えたキャピラリー管22を挿入して接続構造10を形成する(b)。次に、管状部材35の周囲に圧力制御部材40、Oリング42および押しネジ41を取り付け、圧力制御手段を備えたマイクロカラム20を形成する(c)。管状部材35および両端の管30aがコネクタを構成している。位置決め手段23が存在することで、キャピラリー管22は、中央の管30bの内部には侵入せず、細孔部材31を押し込まない。圧力制御部材40、Oリング42および押しネジ41が力付与手段を構成する。圧力制御部材40と管状部材35との間には圧力制御空間が形成され、圧力を制御することで可撓性素材の管状部材35を変形させることで中央の管30b周辺の体積が増減する。中央の管30bと両端の管30aとの間にはこれらの管の端部に設けられた放射状の溝により流路が形成される。
【0051】
図3のマイクロカラムの圧力制御による挙動についてさらに
図4を参照する。ここでは、マイクロカラムの下流(図の上部)に等電点電気泳動用キャピラリー管が接続されている場合を想定している。(A)圧力制御空間を加圧している状態において、中央の管30b付近には中央の管30b内を通過する流路のみが形成される。ポンプ等により試料を流すことで中央の管30bの充填剤33に目的物質(タンパク質など)をトラップできる。(B)圧力制御空間を減圧している状態において、中央の管30bを覆う管状部材35が膨張し、管状部材35と中央の管30bとの間に隙間ができ、この隙間と両端の管30aの端面に設けられた放射状の溝とが一緒になって新たな流路を形成する。中央の管30bに陽極液を流した後、電気泳動開始時に減圧し、この状態で電圧を印加すると、中央の管30bで発生する陽極方向への電気浸透流は陽極側の溝から中央の管30bの外側、さらに陰極側の溝を通り中央の管30b内に還流する。このようにして、陰極側にある等電点電気泳動用キャピラリーへの電気浸透流の影響をなくすことができる。この状況をさらに促進するために、中央の管30bの外壁にスルホン酸基を結合し、酸性条件下で陰極方向への電気浸透流を発生させることは望ましい選択であり得る。
【0052】
(製造方法)
一つの局面において、本開示は、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の製造方法を提供する。一つの実施形態において、この製造方法は、カラム管の内部に充填剤を充填する工程を含み得る。一つの実施形態において、カラム管の内部に充填剤を充填する工程は、充填剤が充填された内部カラム管をカラム管に挿入することまたは内部カラム管の内部に充填剤を充填することを含み得る。一つの実施形態において、この製造方法は、細孔部材をカラム管に挿入して充填剤と接触させる工程を含み得る。一つの実施形態において、細孔部材をカラム管に挿入して充填剤と接触させる工程は、充填剤および細孔部材を含む内部カラム管をカラム管に挿入することまたは内部カラム管の内部に細孔部材を挿入することを含み得る。一つの実施形態において、この製造方法は、カラム管に内部カラム管を挿入する工程を含み得る。例えば、充填剤の充填は、カラム管(または内部カラム管)に挿入する2つの細孔部材のうちの一方をまず挿入し、その後充填剤を含む溶液をカラム管(または内部カラム管)に圧入し、最後にもう一方の細孔部材をカラム管(または内部カラム管)に挿入することで実施され得る。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の製造の際には、カラム管、キャピラリー管、内部カラム管、環状部材などの内径/外径を適切に選択して全体的に液密となるように構成することが好ましくあり得る。熱や圧力により管状の構造体の内径/外径はわずかに変化し得るので、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の製造の際には、管状の構造体に熱や圧力を加えてもよい。例えば、環状部材にカラム管を挿入する際、カラム管に内部カラム管を挿入する際に、環状部材やカラム管の開口部を広げる、および/または環状部材やカラム管を加熱することで挿入が容易になり得る。一つの実施形態において、熱収縮素材のカラム管を使用して本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)を製造する場合、マイクロカラム(またはコネクタ)の製造方法は、カラム管を加熱する工程を含み得る。加熱の温度は、例えば、約100℃、約150℃、約200℃、約300℃、約400℃、約500℃、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約100℃~500℃などであり得るが、熱収縮素材の種類によって当業者が適当に設定できる。
【0053】
(用途)
本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、キャピラリー電気泳動やLC-MSなどに使用されるキャピラリー管と接続して使用することができる。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、キャピラリー管との接続の際に締め具などの押圧手段を使用しなくてもよいので、接続が容易であり得る。本開示のマイクロカラムは、充填剤として吸着剤および/または分離剤を含み得るので、特定の物質を分離または単離することができ、種々の分析手段と組み合わせて好適に使用され得る。キャピラリー管との接続の際に締め具などの押圧手段を使用しなくてもよいので、接続が容易であり得る。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラムは、約1MPa以下、約0.5MPa以下、約0.2MPa以下、約0.1MPa以下、約0.05MPa以下、約0.02MPa以下、約0.01MPa以下などの比較的低い圧力がかかる条件で使用され得る。
【0054】
(注記)
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0055】
以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0056】
(実施例1:粒子状充填剤を用いたマイクロカラム)
図1の模式図で示されるマイクロカラムを以下の手順に従って作製した。
【0057】
1.1 粒子状充填剤の充填
テフロン(登録商標)製カラム管(内径0.35mm、外径1.5mm、長さ30mm)の一端から約8mmの位置に細孔部材として綿栓(長さ1mm)を挿入し、カラム管の同じ端に陰圧発生装置に接続した外径0.35mmのキャピラリーを10mm挿入した。キャピラリーの挿入に伴って、綿栓はキャピラリー端に接しつつ、カラム管内を移動した。陰圧発生装置を大気圧マイナス0.5気圧で運転しつつ、カラム管のもう一端を顕微鏡下にアガロースゲル粒子(平均粒径0.034mm)の懸濁液に浸し、所定の量のゲル粒子をカラム管に吸引した。ゲル粒子は綿栓の手前に堆積した。陰圧発生装置の圧力を大気圧にし、もう一つの綿栓を、吸引され堆積したゲル粒子の後端に接するまで挿入した。この綿栓のゲル粒子に接していない端から10mmの位置で、カラム管を切断した。
【0058】
1.2 マイクロカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー
アフィニティーリガンドとしてプロテインGを固定化したアガロースゲル粒子を、上記と同様にテフロン(登録商標)製カラム管(内径0.35mm、外径1.5mm、長さ26mm)に充填した。充填剤部分の長さは4mmで、細孔部材として長さ1mmの綿栓を用いた。細孔部材とカラム管の端との距離は10mmとした。カラムに接続するキャピラリーとして内径0.05mm、外径0.36mm熔融シリカ製キャピラリー(ポリイミド外皮付)(Molex LLC、米国)を用いた。キャピラリーのマイクロカラムに接続する側にはストッパーとして、内径0.4mm、外径1.5mm、長さ1mmのPEEKチューブ(Upchurch Scientific Inc.,米国)をキャピラリーの端から10mmの位置に接着し、上記マイクロカラムにキャピラリーを押し込んだ際に、最適の押し込み深さが得られるようにした。入口側キャピラリーの長さは80mm、出口側キャピラリーの長さは340mmであった。出口側キャピラリーは、マイクロカラムから220mmの位置のポリアミド被覆を除去し、ここに蛍光検出器を置いてキャピラリー内のタンパク質のトリプトファン残基に由来する蛍光(励起光280nm、検出光340nm)を検出した。また、マイクロカラムから180mmの位置に非接触電気伝導度検出器を置いて、電気伝導度の変化を検出した。大気圧+0.5気圧で生理的リン酸緩衝液(PBS、pH7.3)を送液したところ、流速は1.1μL/分であった。他方、マイクロカラムを接続しない状態での流速は1.3μL/分であった。
【0059】
以下の実験(結果を
図5に示す)において、送液は0.5気圧、室温で行った。PBSで平衡化した上記マイクロカラムに、抗体医薬セツキシマブを500ng/μLの濃度でPBSに溶解した溶液を3分間注入した(0~3分、注入した液が検出点に達するのに約1分を要した)。次に、PBSを3分間注入してプロテインGに非結合性の物質を洗い流した(3~6分)。次いで、0.2Mイミノジ酢酸(pH2.25)を3分間流し(6~9分)、その後、PBSを3分間流してカラムを中性条件に戻した(9~12分)。
【0060】
図5のクロマトグラムを見ると、試料添加時(1~3分)およびPBSによるカラム洗浄時(3~6分)においては、タンパク質は検出点においてほとんど検出されなかった。このことは添加したセツキシマブのほとんど全てがプロテインGカラムに強く捕捉されたことを示している(実線)。一方、酸性の0.2Mイミノジ酢酸液を流すと(6~9分)、タンパク質の溶離が認められた。タンパク質ピークの検出に伴って、電気伝導度の低下が見られるが(点線)、これはPBSに比べてイミノジ酢酸液の電気伝導度が低いためであり、カラム内の液がイミノジ酢酸液に置き換わったことがセツキシマブの溶離を引き起こしたことを示している。
【0061】
このように本開示のマイクロカラムは、簡単にシステムに組み込むことができ、小さなスペースで良好な分離を達成することができる。粒子状充填剤を使用した場合、モノリス充填剤を使用する場合よりも容易に高い結合容量が達成可能であるため、マイクロカラムの小型化、流れ抵抗の低減が可能であり得る。また、本開示のマイクロカラムは極めて低流量で分離を達成できるため、質量分析計を検出器とする分析に適している。また、本開示のマイクロカラムは固相抽出とキャピラリー等電点電気泳動の直接結合分析法を用いた生体試料中の特定のタンパク質の等電点バリアント解析においても有効に用いることができる。
【0062】
(実施例2:微小分離用の管状部材を備えたマイクロカラム)
図2の模式図で示されるものと同様のマイクロカラムを以下の手順に従って作製した。ただし、以下は、モノリス充填剤を用いたマイクロカラムの例であるが、粒子状充填剤を用いたマイクロカラムも同様の手順で作製できる。
【0063】
2.1 グリコールモノリス充填カラム管(内径0.8mm)の作製
外径1.6mm、内径0.8mmのガラスキャピラリー管(富士理化工業株式会社、大阪市)内に、グリコールモノリスを形成させた。上記のグリコールモノリス内蔵キャピラリー管を約3mmの長さに切断し、長さ2.0mmになるまで、両端を400番の耐水紙やすりで研磨し、カラム管の中央の管としてグリコールモノリス充填カラム管を完成させた。
【0064】
2.2 マイクロカラムおよび接続構造の作製
カラム管の両端の管として、外径1.6mm、内径0.35mmのテフロン(登録商標)チューブを長さ9.5mmに切断し、熱した針を一方の開口部に押し込むことで、一方の開口部をラッパ状に広げた。内径2.1mm、肉厚0.2mm、長さ30mmの熱収縮チューブ(スミチューブA、住友電気工業株式会社、大阪市)の管状部材に両端の管のうちの一方、カラム管の中央の管、両端の管のうちのもう一方の順に挿入した。このとき、両端の管はラッパ状に口を広げた側を外側に配置した。熱収縮チューブ内で三者を密着させて配置し、全体を100度の気流内に約30秒置くことで、チューブを収縮させた。放冷後、熱収縮チューブの両端を、両端の管の端より約0.5mm長くなるように切断し、マイクロカラムを完成させた。端から10mmの位置にストッパーを固定した外径0.36mmの熔融シリカキャピラリー管(ポリイミド外皮付)(Molex LLC、米国)をマイクロカラムの両側に接続することで、接続構造を完成させた。ストッパーは、外径1.6mm、内径0.4mmのPEEKチューブ(Upchurch Scientific Inc.、米国)を長さ1mmに切断したものにキャピラリー管を通し、瞬間接着剤で固定することで取り付けた。
【0065】
この実施例のように作製されるマイクロカラムの構造は、実施例1で作製したマイクロカラムよりも保持される充填剤を増量可能であるため、より多量の分析物を分離できると考えられ、検出限界を超える量で検出できる分析物の種類が増大し得る。また、中央の管の内径が大きいため、マイクロカラムにかかる圧力を低減でき、より高流量・短時間の分析が可能となり得る。
【0066】
(実施例3:フロー調整機能を備えたマイクロカラム)
図3の模式図で示されるものと同様のマイクロカラムを以下の手順に従って作製した。ただし、以下は、モノリス充填剤を用いたマイクロカラムの例であるが、粒子状充填剤を用いたマイクロカラムも同様の手順で作製できる。
【0067】
3.1 グリコールモノリス充填カラム管の作製
実施例2と同様にカラム管のうちの中央の管としてグリコールモノリス充填カラム管(外径1.6mm、内径0.8mm、長さ2.0mm)を作製した。
【0068】
3.2 マイクロカラムおよび接続構造の作製
カラム管のうちの両端の管として、外径1.6mm、内径0.35mmのテフロン(登録商標)チューブを長さ10mmに切断し、熱した針を一方の開口部に押し込むことで、一方の開口部をラッパ状に広げた。また、もう一方の端面には、中心から放射状に伸びる深さ約0.1mmの溝8本を切削によって設けた。外径2mm、内径1.5mm、長さ22mmのシリコーンチューブ(永柳工業株式会社、東京都)の管状部材に両端の管の一方、カラム管の中央の管、両端の管のもう一方の順に挿入し、マイクロカラムとした。このとき、両端の管はラッパ状に口を広げた側を外側に配置し、シリコーンチューブ内で三者を密着させた。マイクロカラムの両端の管の一方には、端から10mmの位置にストッパー(実施例2と同様)を固定した外径0.36mm、内径0.15mmのキャピラリー管(内壁を親水性ポリマーで被覆し、外壁にポリイミドの被覆をもつ熔融シリカキャピラリー管)を接続し、もう一方の両端の管には、同様のストッパーを持つ外径0.36mm、内径0.05mmの等電点電気泳動用キャピラリー管(内壁を親水性ポリマーで被覆し、外壁にポリイミドの被覆をもつ熔融シリカキャピラリー管)を接続した。中央部の内径が2.7mmである圧力制御部材(PMMA製)(宮本樹脂工業株式会社、福島市)にOリング(NSA3規格、線径1.5mm、内径2.5mm、外径5.5mm)と押しネジ(宮本樹脂工業株式会社、福島市)をセットし、次いでマイクロカラムを挿入し、押しネジを締めてカラムを固定し、等電点電気泳動用キャピラリー管と接続してマイクロカラムの接続構造を完成させた。
【0069】
小サイズのマイクロカラムの装着によりフローの微調整ができ、下流側の等電点電気泳動用キャピラリーにおいて通常発生する電気浸透流の問題に対処できる。
【0070】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。