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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167511
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】蒸し菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/31 20170101AFI20231116BHJP
   A21D 2/10 20060101ALI20231116BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20231116BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A21D13/31
A21D2/10
A21D2/26
A23G3/34 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078765
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井澤 祐子
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GG02
4B014GG05
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG10
4B014GG11
4B014GG13
4B014GG14
4B014GG17
4B014GK01
4B014GL01
4B014GL02
4B014GL08
4B014GL11
4B014GP14
4B014GQ06
4B014GQ15
4B032DB40
4B032DE06
4B032DG02
4B032DK01
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK33
4B032DK41
4B032DK47
4B032DK48
4B032DK70
4B032DP30
4B032DP50
(57)【要約】
【課題】糖を含み、粘度及び包餡性が高く、食感が良好な蒸し菓子を製造できる蒸し菓子用生地を使用する蒸し菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】具材を包餡した蒸し菓子の製造方法が、卵、糖、小麦粉、及びα化澱粉を含有する蒸し菓子用生地原料を用いて水分が19~27質量%の範囲の蒸し菓子用生地を作製する生地作製工程と、この蒸し菓子用生地に蒸し工程を施すことなく、この蒸し菓子用生地で具材を包餡する包餡工程と、この具材を包餡した蒸し菓子用生地を蒸す蒸し工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を包餡した蒸し菓子の製造方法であって、
卵、糖、小麦粉、及びα化澱粉を含有する蒸し菓子用生地原料を用いて水分が19~27質量%の範囲の蒸し菓子用生地を作製する生地作製工程と、
前記蒸し菓子用生地に蒸し工程を施すことなく、前記蒸し菓子用生地で具材を包餡する包餡工程と、
前記具材を包餡した蒸し菓子用生地を蒸す蒸し工程を含むことを特徴とする蒸し菓子の製造方法。
【請求項2】
前記蒸し菓子用生地原料に対する前記α化澱粉の含有量が0.5~10質量%の範囲である、請求項1に記載された蒸し菓子の製造方法。
【請求項3】
前記蒸し菓子用生地原料は、小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の少なくとも1種を含有し、前記蒸し菓子用生地原料に対する小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の含有量が2~5.5質量%の範囲である、請求項1又は2に記載された蒸し菓子の製造方法。
【請求項4】
前記α化澱粉の含有量に対する、前記小麦由来蛋白質の含有量及び大豆由来蛋白質の含有量の合計が0.5~5の範囲である、請求項3に記載された蒸し菓子の製造方法。
【請求項5】
前記蒸し菓子用生地原料に対する、前記α化澱粉の含有量、前記小麦由来蛋白の含有量、及び大豆由来蛋白の含有量の合計が4.5~10質量%の範囲である、請求項3に記載された蒸し菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸し菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸しケーキ、蒸しパンと呼ばれる蒸し菓子には、卵の起泡力によりホイップさせたケーキ生地を蒸すホイップタイプ、固形脂を多く配合し、油脂をホイップさせて粉を合わせたバターケーキ様の生地を蒸すバターケーキタイプ、糖と卵を多く配合しホイップしない卵蒸しパンタイプなどが挙げられる。これらは低粘度の生地を型に流し込む工程と、それを蒸す工程を経て製造されることが一般的であり、しっとりした食感に特徴がある。
蒸しケーキと蒸しパンにおいて、具材を蒸し菓子用生地で包餡した蒸し菓子を製造するための方法は、粘度が低い蒸し菓子用生地を加熱したものの内部に具材を注入する工程、又は、粘度が低い蒸し菓子用生地を加熱したものの上に具材を絞り、当該具材の上に粘度が低い蒸し菓子用生地を更に絞って全体を加熱する工程を含む。蒸し菓子用生地を加熱する工程を経ることで、蒸し菓子用生地の部分に保形性が付与され、その内部又は上に具材が存在しても、具材が沈まない。しかし前者の場合には、加熱固化した蒸し菓子に具材が割り込む形となり、特に固い具材を注入すると蒸し菓子の形状が不安定となり、場合によっては蒸し菓子が割れることもあった。また後者の場合は包餡の前に加熱の工程が必要となり効率が悪かった。
包餡されたベーカリー製品を製造するために、工業的には全自動包餡機を用いて、未加熱のベーカリー製品用生地を伸展させて具材を内層として包み込む方法が普及している。しかし未加熱の生地を伸展させて具材を包み込むためには、従来の蒸しケーキと蒸しパンの生地は粘度が低いため不可能であり、全自動包餡機で包餡することもできなかった。
一方、饅頭の製造方法は、粘度及び保形性が高い饅頭用生地で具材を包み、次いで蒸す工程を含む。饅頭用生地は蒸しケーキや蒸しパンと比べると糖の含有量が少なく、更に饅頭用生地に含まれる食用油脂は5質量%未満である。したがって、饅頭用生地を蒸して製造される饅頭の皮はパサつきやすく、饅頭が蒸しあがって直ぐに食されるか、饅頭がスチーマーで保存されるか、ないし饅頭の皮のパサつきが目立たないように具材の相対的な量を多くする必要がある。
【0003】
菓子類の経時的な食感の低下を抑制する研究開発が行われてきた。例えば、特許文献1には、特定のα化アセチル化架橋タピオカ澱粉を有効成分とする、蒸しケーキ等の菓子類の食感改良剤が開示されている。特許文献2には、セルロースと、ポリペプチド及び/又は食用多糖類と、加食体と、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、及び起泡性油脂組成物を含有する、蒸しパン等の品質改良剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-176105号公報
【特許文献2】特開平10-304828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、糖を含み、粘度及び包餡性が高く、食感が良好な蒸し菓子を製造できる蒸し菓子用生地を使用する蒸し菓子の製造方法が希求されていたが、そのような蒸し菓子の製造方法は提供されていなかった。本発明が解決しようとする課題は、糖を含み、粘度及び包餡性が高く、食感が良好な蒸し菓子を製造できる蒸し菓子用生地を使用する蒸し菓子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、卵、糖、小麦粉、及びα化澱粉を含有する蒸し菓子用生地の粘度及び包餡性は高く、当該蒸し菓子用生地から食感が良好な蒸し菓子を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0007】
本発明は、具材を包餡した蒸し菓子の製造方法であって、卵、糖、小麦粉、及びα化澱粉を含有する蒸し菓子用生地原料を用いて水分が19~27質量%の範囲の蒸し菓子用生地を作製する生地作製工程と、前記蒸し菓子用生地に蒸し工程を施すことなく、前記蒸し菓子用生地で具材を包餡する包餡工程と、前記具材を包餡した蒸し菓子用生地を蒸す蒸し工程を含むことを特徴とする蒸し菓子の製造方法である。
前記蒸し菓子用生地原料に対する前記α化澱粉の含有量は、好ましくは0.5~10質量%の範囲である。
前記蒸し菓子用生地原料は、好ましくは小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の少なくとも1種を含有し、前記蒸し菓子用生地原料に対する小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の含有量が2~5.5質量%の範囲である。
前記α化澱粉の含有量に対する、前記小麦由来蛋白質の含有量及び大豆由来蛋白質の含有量の合計は、好ましくは0.5~5の範囲である。
前記蒸し菓子用生地原料に対する、前記α化澱粉の含有量、前記小麦由来蛋白の含有量、及び大豆由来蛋白の含有量の合計は、好ましくは4.5~10質量%の範囲である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蒸し菓子の製造方法は、糖を含み、粘度及び包餡性が高く、食感が良好な蒸し菓子を製造できる蒸し菓子用生地を使用する蒸し菓子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について更に詳細に説明する。
本発明の蒸し菓子の製造方法は、卵、糖、小麦粉、及びα化澱粉を含有する蒸し菓子用生地原料を用いて蒸し菓子用生地を作製する生地作製工程を含む。
<卵>
前記卵は、全卵、卵黄、及び卵白の少なくとも1つを含み、好ましくは全卵、卵黄、及び卵白の少なくとも1つである。また、前記卵は割卵、殺菌卵、殺菌凍結卵、乾燥卵を使用することができ、その成分は全卵、卵黄、卵白の少なくとも1つを含む。前記蒸し菓子用生地中の前記卵の含有量は、卵の固形分として好ましくは1~15質量%であり、より好ましくは5~12質量%であり、更に好ましくは6~10質量%である。前記蒸し菓子生地中の前記卵に含まれる卵黄成分の含有量は、卵黄の固形分として、好ましくは0.8~12質量%であり、より好ましくは4~10質量%であり、更に好ましくは5~9質量%である。
本明細書において、前記卵をはじめとする前記蒸し菓子用生地原料が水分を含む場合、前記蒸し菓子用生地は前記卵をはじめとする前記蒸し菓子用生地原料に由来する水分を含む。さらに前記卵をはじめとする前記蒸し菓子用生地原料の含有量は、前記卵をはじめとする前記蒸し菓子用生地原料に由来する水分を含む含有量である。
【0010】
<糖>
前記糖は、グラニュー糖、上白糖、三温糖、中ざら糖、白ざら糖、氷砂糖、液糖等の分みつ糖、黒糖、加工黒糖、和三盆、赤糖等の含みつ糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、及びトレハロースの少なくとも1つを含み、好ましくはこれらの糖の少なくとも1つである。前記蒸し菓子用生地中の前記糖の含有量は好ましくは10~60質量%の範囲であり、より好ましくは20~50質量%の範囲である。
【0011】
<小麦粉>
前記小麦粉は、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、及び全粒粉の少なくとも1つを含み、好ましくはこれらの小麦粉の少なくとも1つである。前記蒸し菓子用生地原料中の前記小麦粉の含有量は好ましくは5~30質量%の範囲であり、より好ましくは10~25質量%の範囲である。
【0012】
<α化澱粉>
前記α化澱粉は、菓子類の原料として使用される澱粉をα化して得られる。当該澱粉として、例えばコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、片栗澱粉、葛澱粉、蕨澱粉、サゴ澱粉等が挙げられる。また、上記澱粉のウルチ種、ワキシー種、ハイアミロース種のような、育種学的又は遺伝子工学的手法で改良された澱粉の少なくとも1種であってもよい。
【0013】
α化される前記澱粉は、加工澱粉であってもよい。当該加工澱粉としては、未加工の生澱粉に酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、酸処理、アルカリ処理等の化学処理を施した変性澱粉と、造粒処理、湿熱処理、温水処理、漂白処理、殺菌処理、油脂加工処理、加熱処理、加圧処理、減圧処理、ミリング処理、粉体衝突処理、摩擦処理、粉砕処理、押出処理等の物理処理を施した変性澱粉を使用できる。あるいはそれらの2種以上の処理を併用して施した変性澱粉も使用できる。
【0014】
α化される前記澱粉として、上記される澱粉の少なくとも1種が使用される。前記α化澱粉は、好ましくはα化エーテル架橋馬鈴薯澱粉、α化コーンスターチ、及びα化エーテル架橋ワキシーコーンスターチの少なくとも1つを含む。前記蒸し菓子用生地原料に対する前記α化澱粉の含有量は、好ましくは0.5~10質量%の範囲であり、より好ましくは1~8質量%の範囲であり、最も好ましくは1~5質量%の範囲である。
α化澱粉を含有させることにより、蒸し菓子用生地に包餡に適した保形性を付与することができる。
【0015】
<水分>
前記蒸し菓子用生地原料を用いて作製される蒸し菓子用生地中の水分の含有量は19~27質量%の範囲である。前記水分の含有量が19質量%未満であると、蒸し菓子用生地の伸展性が低下し、蒸し菓子用生地を蒸して製造される蒸し菓子が割れるおそれがあり、また、くちどけやしっとり感の劣った食感となる恐れがある。また、前記水分の含有量が27質量%を超えると、蒸し菓子用生地の粘度が大きくなり、蒸し菓子用生地で具材を包餡できなくなるおそれがある。蒸し菓子用生地中の水分の含有量は20~25質量%の範囲がより好ましく、22~25質量%の範囲が更に好ましい。
【0016】
<副原料>
本発明の蒸し菓子用生地原料は、卵、糖、小麦粉、及びα化澱粉以外の原料を副原料として含んでいてよい。
前記副原料には、小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白を含有する原料の少なくとも1種を含んでいてよい。小麦由来蛋白を含有する副原料として、例えば麩、活性グルテン等が挙げられる。また、大豆由来蛋白を含有する副原料として、例えば大豆粉、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、豆乳等の原料から所定条件下で抽出した抽出物、豆腐パウダー等が挙げられる。
なお、本発明における小麦由来蛋白には、主原料である小麦粉に含有される小麦蛋白も含まれる。
【0017】
前記蒸し菓子用生地原料に対する小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の含有量は、好ましくは2~5.5質量%の範囲であり、より好ましくは2.6~5.5質量%の範囲である。前記蒸し菓子用生地原料に対する小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の含有量が前記範囲内であることにより、前記蒸し菓子用生地に包餡に適した物性を付与することができるとともに、前記蒸し菓子用生地を加熱して得られる蒸し菓子に、口溶けの良い食感を付与することができる。
【0018】
前記α化澱粉の含有量に対する、前記小麦由来蛋白質及び大豆由来蛋白質の含有量の質量比は、好ましくは0.5~5の範囲であり、より好ましくは0.6~3.5の範囲である。前記蒸し菓子用生地原料に対する小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白の含有量が前記範囲内であり、前記小麦由来蛋白質及び大豆由来蛋白質の含有量の質量比が前記範囲内であると、生地の包餡性を保ちつつも、特に口溶けの優れた蒸し菓子を得ることができる。
【0019】
前記蒸し菓子用生地原料に対する、前記α化澱粉の含有量、前記小麦由来蛋白の含有量、及び大豆由来蛋白の含有量の合計は、好ましくは4.5~10質量%の範囲である。前記蒸し菓子用生地原料に対する、前記α化澱粉の含有量、前記小麦由来蛋白の含有量、及び大豆由来蛋白の含有量の合計が前記範囲内であると、包餡性により優れた蒸し菓子用生地を得ることができる。
【0020】
前記副原料は、食用油脂を含んでいてよい。当該食用油脂は、食品分野で使用される通常の食用油脂である。前記食用油脂として、
菜種油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ごま油、エゴマ油、アマニ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、やし油、パーム核油、パームオレイン等の植物性油脂、ラード、牛脂、鶏油、乳脂、魚油などの動物性油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂が挙げられる。また、前記植物性油脂、動物性油脂及び合成油脂のそれぞれを極度硬化、分別及びエステル交換の少なくとも1種の処理をした加工油脂を使用してもよい。それら油脂類は単独で、又は混合されて用いられる。前記蒸し菓子用生地中の前記食用油脂の含有量は、好ましくは5~25質量%であり、より好ましくは8~22質量%である。
【0021】
前記副原料は、クリーム、速油、ベーキングパウダー、重曹、マーガリン、カゼイン類等の乳製品、増粘安定剤、食塩、塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸などの酸味料、甘味料、着色料、酸化防止剤、小麦由来蛋白及び大豆由来蛋白以外の植物蛋白、香料、アーモンドパウダー等の調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等の少なくとも1つを含有していてもよい。
【0022】
本発明の蒸し菓子の製造方法は、前記蒸し菓子用生地に蒸し工程を施すことなく、前記蒸し菓子用生地で具材を包餡する包餡工程と、前記具材を包餡した蒸し菓子用生地を蒸す蒸し工程とを含む。前記具材を包餡する、当該蒸し工程後の生地の比体積は、好ましくは1.0~3.0ml/g、より好ましくは1.4~2.5ml/g、更に好ましくは1.43~2.22ml/gである。
【0023】
<具材>
包餡される前記具材として、例えば野菜、ハム、チーズ等の固体状食品を細かく砕いたあるいは切ったもの;マヨネーズ、カスタードクリーム等の半固形調味料;アボカドペースト、ポテトベース等の果肉、イモ類の練砕物等を混合したもの(卵フィリング、ツナフィリング、アボカドフィリング等);カレーフィリング、ピザフィリング、小豆餡、カスタードクリーム、ジャム等が挙げられる。
【0024】
<包餡工程>
前記具材を前記蒸し菓子用生地で包餡する方法は、蒸し菓子用生地で具材の周囲が被覆される態様であれば制限されず、公知の方法で適宜行うことができる。例えば蒸し菓子用生地を伸展させて具材を包み込む方法、蒸し菓子用生地の上に具材を載せ、更にその上から蒸し菓子用生地を載せることで具材の周囲を被覆させる方法等を行うことができる。これらを手作業で行うこともできるが、工業的には、例えば市販の全自動包餡機等を使用することもできる。また、前記具材の周囲が被覆される態様とは、必ずしも具材の全周囲が被覆される態様を示さず、具材の周囲の一部が被覆されていない態様も含む。ただし、本発明の効果のひとつは蒸し菓子用生地が具材の重さに耐える粘度を有することであるため、具材の重さにより具材が底面から露出する態様は除かれる、ないし好ましくない。
【0025】
<蒸し工程>
本発明における蒸し工程は、前記具材を前記蒸し菓子用生地で包餡する工程の後に行われる。該蒸し工程は、例えば蒸気で満たされた公知の蒸し器内、あるいは蒸気が噴出するトンネル内に搬入される等による。蒸しあげ時間は5~30分が好ましく、より好ましくは10~20分である。蒸し工程の温度は80~100℃が好ましく、より好ましくは90~100℃である。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに評価、測定ないし算出された。
(1)水分含有量
表1~3に示される各蒸し菓子用生地原料を混合して得られる各蒸し菓子用生地中の水分含有量を、各原料の水分含有量を合算することで求めた。各原料の水分含有量は油分水分測定装置(CEM社製、商品名「TURBO SMART SYSTEM5」)を用いて測定した。
【0028】
(2)包餡性
前記各蒸し菓子用生地75gを、天板油を噴霧した掌に載せ、更にこしあんと菜種油を10:1の比率で混合した餡15gを蒸し菓子用生地に載せた後、手作業で蒸し菓子用生地を伸展させて当該餡を包み込んだ。作業者が包餡作業時に前記各蒸し菓子用生地のべたつかなさ及び伸展性を下記基準に従って評価した。
-べたつかなさの評価基準-
A:ほとんどべたつかない
B:やや手にべたつくが、包餡できる
C:手にべたつき、包餡できない
-伸展性の評価基準-
A:伸展性がよい
B:ややひび割れる
C:かたく、ひび割れる
上記べたつかなさの評価でCであった生地の場合、餡を包み込む作業が困難であったため、グラシンカップに注入した生地の上に餡を載せ、その上に更に生地を載せることで包餡を行った。
【0029】
(3)餡の沈み
前記各蒸し菓子用生地で前記餡を包餡したものを、グラシンカップを敷いたプラスチック製蒸し型に入れ、96~98℃で16分蒸し、包餡蒸し菓子を得た。包餡蒸し菓子を室温で1日保管し、断面を観察し、餡の沈みを以下の評価基準にて評価した。
-餡の沈みの評価基準-
A:餡が蒸し菓子の上下方向の中央からやや下寄りに位置している
B:餡が蒸し菓子の上下方向の底面に近いところに位置している
C:餡が蒸し菓子の底面から出てしまっている
【0030】
(4)比体積
前記蒸し菓子用生地75gを、グラシンカップを敷いたプラスチック製蒸し型に入れ、96~98℃で16分間蒸し、蒸し菓子を得た。蒸し菓子を室温で1日保管したものを体積測定装置(Stable Micro System社製、商品名「Volscan Profiler 600」)を使用して比体積を測定した。
【0031】
(5)食感
5名のパネラーが各蒸し菓子を喫食し、下記基準に従って合議で口溶け、ふんわり感、及びしっとり感を評価した。
-口溶けの評価基準-
A:口溶けが非常に良い
B:口溶けがよい
C:口溶けが悪い
「口溶けがよい」とは、蒸し菓子が咀嚼時に唾液とともにほぐれやすく、速やかに飲み込むことができる状態である。
-ふんわり感の評価基準-
A:非常にふんわりしている
B:ふんわりしている
C:ふんわりしていない
「ふんわりしている」とは、蒸し菓子が、メが開いており、かつ柔らかく軽い食感である。
-しっとり感の評価基準-
A:しっとりしている
B:ややパサつくがしっとりしている
C:パサつく
「しっとりしている」とは、蒸し菓子を口に入れたときに乾いた感じが少なく、唾液をとられない状態である。
【0032】
表1~3に示される各蒸し菓子用生地原料を用いて、以下の製造方法により蒸し菓子用生地を製造した。
グラニュー糖、殺菌卵、練り込みクリーム、醤油を混合し、予めふるい合わせた薄力粉、強力粉、乾燥卵黄、ベーキングパウダー、重曹、各種澱粉、麩、活性グルテン、豆腐パウダーを加え、更に菜種油、マーガリンを加えて混合し蒸し菓子用生地を得た。得られた蒸し菓子用生地は冷蔵で24時間休ませ、蒸し菓子の製造に用いた。

【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】
【0036】
1)月島食品工業株式会社製ミルシア
2)日清製粉株式会社製バイオレット
3)日清製粉株式会社製カメリア
4)沖縄製粉株式会社製焼き麩粉砕物
5)グリコ栄養食品株式会社製A-グルK
6)松谷化学工業株式会社パイングルM
7)株式会社みすずコーポレーション製こうや豆腐パウダー
8)松谷化学工業株式会社製マツノリンP-7
9)松谷化学工業株式会社製マツノリンCM
10)松谷化学工業株式会社製マツノリン880
11)美幌地方農産加工農業協同組合連合会製馬鈴薯澱粉
12)キユーピータマゴ株式会社製乾燥ヨークランCR No.2
13)月島食品工業株式会社製咲味油
14)月島食品工業株式会社製VMマーガリン
15)蒸し菓子用生地がほぼ流動状態であった。
16)蒸し菓子用生地が割れた。
【0037】
α化澱粉を含有しない比較例1及び4の蒸し菓子用生地、並びに蒸し菓子用生地中の水分含有量が多すぎる比較例3の蒸し菓子用生地は具材を包餡できるものではなかった。また、蒸し菓子用生地中の水分含有量が少なすぎる比較例2の蒸し菓子用生地で具材を包餡すると、当該生地に割れが生じた。
【0038】
一方、実施例1~10の蒸し菓子用生地の包餡性は高く、これらの蒸し菓子用生地を使用して製造された蒸し菓子の餡は沈み性も低く、これらの食感は良好であった。