(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167526
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ステータのコイル巻線部構造
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20231116BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078789
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山田 観
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB03
5H604QB03
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】コイルに巻線を巻く際に端子に付加される荷重を低減するとともに端子設置部分の構造をコンパクト化する。
【解決手段】コイル8a~8iを備えるステータ5とロータとステータ5に取り付けられるインシュレータ13と、を有するモータユニットにおいて、インシュレータ13は、第1コイル線17あるいは第2コイル線18が巻き付けられるボビン部16と、ボビン部16の径方向外側に設けられ、第1コイル線17、第2コイル線18が接続されるターミナル30~33が設置される筒部15と、を備え、筒部15の上端部には、コイル8a~8iとターミナル30~33との間に、コイル8a~8iへの第1コイル線17あるいは第2コイル線18の巻装時に第1コイル線17あるいは第2コイル線18の荷重を受ける台座部40、50及びガイド部47、56、57が、周方向に並ぶように備えられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻装されたコイルを備えるステータと、前記ステータ内に回転自在に配置されるロータと、前記コイルの絶縁用に前記ステータに取り付けられるインシュレータと、を有する電動モータにおける、前記ステータのコイル巻線部構造であって、
前記インシュレータは、
前記巻線が巻き付けられるコイル巻装部と、
前記コイル巻装部の径方向外側に設けられ、前記巻線が接続される接続端子が設置される筒部と、を備え、
前記筒部には、前記コイルと前記接続端子との間に、前記コイルへの前記巻線の巻装時に前記巻線の荷重を受ける荷重受け部が備えられ、
前記荷重受け部は、
前記筒部の周方向の一部に沿って延びるように前記巻線を載置して保持する台座部と、
前記コイル巻装部と前記台座部との間に備えられ、前記巻線を屈曲させて案内するガイド部と、を有し、
前記接続端子と前記台座部と前記ガイド部とが、前記筒部の軸方向端部に周方向に並んで配置されている
ことを特徴とするステータのコイル巻線部構造。
【請求項2】
前記筒部の周方向の位置において、前記コイル巻装部と前記接続端子との間に、前記コイル巻装部側から順番に前記ガイド部、前記台座部が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のステータのコイル巻線部構造。
【請求項3】
前記台座部及び前記ガイド部は、前記筒部と一体的に構成されており、
前記接続端子は、前記筒部の前記軸方向端部に支持されている
ことを特徴とする請求項2に記載のステータのコイル巻線部構造。
【請求項4】
前記コイルはV相、U相、W相のコイルを夫々有し、
前記巻線は、前記V相及び前記U相の前記コイルを形成する第1コイル線と、前記W相の前記コイルを形成する第2コイル線を有し、
前記接続端子は、前記第1コイル線の一端部、前記第1コイル線の他端部、前記第2コイル線の一端部を個別に係止する3個の端部接続端子と、前記第1コイル線の中間部及び前記第2コイル線の他端部を係止する1個の中間接続端子を有し、
前記3個の端部接続端子と前記中間接続端子は、前記筒部に周方向に異なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項2または3に記載のステータのコイル巻線部構造。
【請求項5】
前記台座部は、
前記3個の端部接続端子及び前記中間接続端子の設置位置に夫々に設けられる
ことを特徴とする請求項4に記載のステータのコイル巻線部構造。
【請求項6】
前記中間接続端子が設置される前記台座部には、前記中間接続端子と前記第1コイル線との接続位置を挟んで周方向の両側に夫々前記ガイド部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載のステータのコイル巻線部構造。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記台座部から前記筒部の軸方向に突出した柱状に形成され、
前記中間接続端子が設置される前記台座部に設けられる2個の前記ガイド部のうち、一方を他方より突出長さを大きくしたことを特徴とする請求項6に記載のステータのコイル巻線部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータ等のアクチュエータに備えられるステータに設けられたコイルの巻線部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータ等の電動回転アクチュエータは、例えばステータと当該ステータに対して回転自在に備えられたロータとを有し、ステータに電磁石となるコイルを備え、ロータに永久磁石を備えた構造が多い。このようにステータとロータを有する電動回転アクチュエータでは、ステータの外側にロータを配置したアウタロータタイプと、ステータの内側にロータを配置したインナロータタイプとがある。
【0003】
例えば特許文献1には、筒状のステータに内方に向けて突出する6個のティースを備え、各ティースに巻線(被覆線)を巻いてコイルを形成し、1つの相毎に複数のコイルを有するインナロータタイプの3相(U相、V相、W相)モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、コイルに巻く巻線の端部をステータの外周部よりも外方に延ばし、ステータの外周部よりも径方向外方に配置した各相の配線の端子(ターミナル)に接続する構成になっている。しかしながら、このように端子がステータの外方に突出して配置された構成であると、モータ全体の外形が大きくなってしまう。
【0006】
また、特許文献1では、巻線の端部を平板状の端子に引っ掛けて接続する構成になっている。しかしながら、モータの作成時にコイルに巻線を巻く際には、例えば巻線機によって巻線にある程度の張力を付加する必要がある。したがって、コイルへの巻き始め及び巻き終わりの際に、巻線を端子に接続するときに、巻線機によって付加された巻線の張力が端子に付加され、端子の変形を招く虞がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、インナロータタイプのステータに設けたコイルに巻線を強く巻きつつ、巻線を接続する端子に付加される荷重を低減するとともに、巻線の支持部の構造をコンパクト化したステータの巻線部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のステータのコイル巻線部構造は、巻線が巻装されたコイルを備えるステータと、前記ステータ内に回転自在に配置されるロータと、前記コイルの絶縁用に前記ステータに取り付けられるインシュレータと、を有する電動モータにおける、前記ステータのコイル巻線部構造であって、前記インシュレータは、前記巻線が巻き付けられるコイル巻装部と、前記コイル巻装部の径方向外側に設けられ、前記巻線が接続される接続端子が設置される筒部と、を備え、前記筒部には、前記コイルと前記接続端子との間に、前記コイルへの前記巻線の巻装時に前記巻線の荷重を受ける荷重受け部が備えられ、前記荷重受け部は、前記筒部の周方向の一部に沿って延びるように前記巻線を載置して保持する台座部と、前記コイル巻装部と前記台座部との間に備えられ、前記巻線を屈曲させて案内するガイド部と、を有し、前記接続端子と前記台座部と前記ガイド部とが、前記筒部の軸方向端部に周方向に並んで配置されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記筒部の周方向の位置において、前記コイル巻装部と前記接続端子との間に、前記コイル巻装部側から順番に前記ガイド部、前記台座部が配置されているとよい。
【0010】
好ましくは、前記台座部及び前記ガイド部は、前記筒部と一体的に構成されており、前記接続端子は、前記筒部の前記軸方向端部に支持されているとよい。
【0011】
好ましくは、前記コイルはV相、U相、W相のコイルを夫々有し、前記巻線は、前記V相及び前記U相の前記コイルを形成する第1コイル線と、前記W相の前記コイルを形成する第2コイル線を有し、前記接続端子は、前記第1コイル線の一端部、前記第1コイル線の他端部、前記第2コイル線の一端部を個別に係止する3個の端部接続端子と、前記第1コイル線の中間部及び前記第2コイル線の他端部を係止する1個の中間接続端子を有し、前記3個の端部接続端子と前記中間接続端子は、前記筒部に周方向に異なる位置に配置されるとよい。
【0012】
好ましくは、前記台座部は、前記3個の端部接続端子及び前記中間接続端子の設置位置に夫々に設けられるとよい。
【0013】
好ましくは、前記中間接続端子が設置される前記台座部には、前記中間接続端子と前記第1コイル線との接続位置を挟んで周方向の両側に夫々前記ガイド部を有するとよい。
【0014】
好ましくは、
前記ガイド部は、前記台座部から前記筒部の軸方向に突出した柱状に形成され、
前記中間接続端子が設置される前記台座部に設けられる2個の前記ガイド部のうち、一方を他方より突出長さを大きくするとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のステータのコイル巻線部構造によれば、インシュレータの筒部には、コイルと接続端子との間に、コイル巻装部への巻装時に巻線の荷重を受ける荷重受け部を備えているので、コイル巻装部への巻装時にコイル線を強く巻くことができるとともに、接続端子に付加される荷重を低減することができる。
特に、荷重受け部は、筒部の周方向の一部に沿って延びるように巻線を載置して保持する台座部と、コイル巻装部と台座部との間に備えられ、巻線を屈曲させて案内するガイド部と、を備えており、接続端子と台座部とガイド部とが筒部の軸方向端部に周方向に並んで配置されているので、荷重受け部をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の巻線部構造を採用した電動ポンプ装置の縦断面図である。
【
図2】モータユニットのステータの構造を示す斜視図である。
【
図3】モータユニットのコイルに巻かれるコイル線の結線図である。
【
図4】V相端部ターミナルの設置部近傍のステータの構造を示す斜視図である。
【
図5】V相端部ターミナル設置部近傍のインシュレータの構造を示す斜視図である。
【
図6】中間ターミナルの設置部近傍のステータの構造を示す斜視図である。
【
図7】中間ターミナル設置部近傍のインシュレータの構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の巻線部構造を採用した電動ポンプ装置1の縦断面図である。
【0019】
電動ポンプ装置1は、ポンプユニット2とモータユニット3とを備えている。
【0020】
ポンプユニット2は、例えばトロコイドポンプであり、入力軸(インナシャフト4)の回転により駆動される。
【0021】
モータユニット3は、ステータ5内に回転自在に設けられたロータ6を有するインナロータタイプのブラシレス電動モータである。
【0022】
ポンプユニット2の入力軸であるインナシャフト4は、モータユニット3の出力軸を兼ねている。
【0023】
なお、以降の説明において、インナシャフト4の軸線方向を上下方向とし、ポンプユニット2の上側にモータユニット3が配置されているものとして説明する。
【0024】
モータユニット3のポンプユニット2とは反対側である上側に、モータユニット3を制御する制御ユニット7が備えられている。制御ユニット7は、モータユニット3の各相のコイル8に入力する電流の制御を行う。
【0025】
図2は、モータユニット3のステータ5の構造を示す斜視図である。
【0026】
図2に示すように、ステータ5は、筒状のヨーク11、ヨークの内周側に備えられたティース本体部12、ヨーク11の内周面に備えられたインシュレータ13を備えている。
【0027】
ティース本体部12は、ヨーク11と一体的に形成され、金属等の磁性体で形成されている。ティース本体部12は、ヨーク11の内周面から内方に向かって突出した柱状の形態であり、ヨーク11の周方向に等間隔をおいて例えば9個備えられている。
【0028】
インシュレータ13は、例えば樹脂で形成され、ヨーク11の内周面に沿って筒状に形成された筒部15と、筒部の内周面から内側に突出してティース本体部12の周囲を覆う9個のボビン部16と、を有している。
【0029】
インシュレータ13の各ボビン部16には、夫々被覆線である巻線(コイル線17、18)が巻装されてコイル8(8a~8i)が形成されている。即ち、筒状のヨーク11の内側には、周方向に40度の等間隔を置いて配置され内部に磁性体のティース本体部12を有する9個のコイル8a~8iが形成されている。
【0030】
コイル8は、V相線が巻かれるコイル8a、8d、8gと、U相線が巻かれるコイル8b、8e、8hと、W相線が巻かれるコイル8c、8f、8iといったように、V相、U相、W相毎に夫々3個ずつある。コイル8は、V相、U相、W相といった順番で周方向に並んで配置されている。
【0031】
ステータ5を製造する際に、コイル線17、18は例えば公知の巻線機によって、ステータ5に設けられたインシュレータ13の各ボビン部16に巻かれる。
【0032】
図3は、モータユニット3のコイル8a~8iに巻かれるコイル線17、18の結線図である。なお、
図3に記載したコイル線17、18における矢印は、当該コイル線17、18の巻く方向を示している。
【0033】
図3に示すように、9個のコイル8a~8iに巻かれるコイル線17、18は、V相及びU相となる第1コイル線17と、W相となる第2コイル線18を有する。
【0034】
なお、以降は、コイル線17、18が巻かれてコイル8となるティース本体部12及びボビン部16をティース20(コイル巻装部)とし、周方向に順番に第1~第9ティース(20a~20i)の番号を付与して、以下のコイル線17、18の結線(ティース20a~20iへの巻線)について説明する。なお、第9ティース20iの第8ティース20hとは反対側の隣に第1ティース20aが設けられる。また、隣合うティース20a~20iの間の空間が夫々スロットとなる。第1ティース20aと第9ティース20iとの間の空間をスロットNo.1、第1ティース20aと第2ティース20bと間をスロットNo.2といったように順番にスロットNo.1~スロットNo.9とする。
【0035】
始めに、スロットNo.1の近傍で第9ティース20i側の周方向位置、かつヨーク11の外周側の位置で、第1コイル線17の一端を図示しない治具により固定する。そして、巻線機から第1コイル線17を引き出し、インシュレータ13の筒部15の上面に固定した後述するV相端部ターミナル30(端部接続端子、接続端子)に係止して電気的に接続し、上方(コイル線端末側)からスロットNo.1に入って第1ティース20aに第1コイル線17を巻き付ける。第1ティース20aに巻きつけた後に第1コイル線17をスロットNo.1から下方(コイル線渡線側)に引き出して、ティース20a~20dの下側を筒部15の壁面に沿って周方向に引き回して、下方からスロットNo.5に入って第4ティース20dに巻き付ける。第4ティース20dへの巻き付け後はスロットNo.4から第1コイル線17を下方に引き出してティース20d~20gの下側を周方向に引き回し、下方からスロットNo.8に入って第7ティース20gに巻き付ける。更に、第7ティース20gを巻き終わった第1コイル線17をスロットNo.8から上方に引き出して、第8ティース20hの近傍でインシュレータ13の筒部15の上面に固定した後述する中間ターミナル31(中間接続端子、接続端子)に係止して電気的に接続する。更に、第1コイル線17を引き出して、同様に第8ティース20h、第5ティース20e、第2ティース20bの順番に1コイル線17を巻き付ける。第2ティース20bを巻き終わった第1コイル線17をスロットNo.2から上方に引き出して、スロットNo.2の近傍で第1ティース20a側の周方向位置であって筒部15の上面に固定した後述するU相端部ターミナル32に(端部接続端子、接続端子)に係止して電気的に接続する。これにより、V相のコイル8a、8d、8gと、U相のコイル8h、8e、8bが形成される。
【0036】
また、スロットNo.3の近傍で第2ティース20b側の周方向位置、かつヨーク11の外周側の位置で、第2コイル線18の一端を図示しない治具により固定する。そして、巻線機から第2コイル線18を引き出し、インシュレータ13の筒部15の上面に固定した後述するW相端部ターミナル33(端部接続端子、接続端子)に係止して電気的に接続し、上方からスロットNo.3に入って第3ティース20cに第2コイル線18を巻き付ける。第3ティース20cに巻きつけた後に第2コイル線18をスロットNo.3から下方に引き出して周方向に引き回し、第6ティース20f、第9ティース20iの順番に第2コイル線18を巻き付ける。更に、第9ティース20iを巻き終わった第2コイル線18を、スロットNo.1から上方に引き出して、中間ターミナル31に係止して電気的に接続する。これにより、W相のコイル8c、8f、8iが形成される。
【0037】
図4は、V相端部ターミナル30設置部近傍のステータ5の構造を示す斜視図である。
図5は、V相端部ターミナル30の設置部近傍のインシュレータ13の構造を示す斜視図である。
【0038】
図4、5に示すように、インシュレータ13の筒部15の上端面には、第1ティース20aの第9ティース20i側の周方向端部から第9ティース20iに掛けて、上方に突出した端部ターミナル用台座部40を備えている。
【0039】
端部ターミナル用台座部40は、例えば周方向の長さが1~2cm程度でありティース20の周方向幅より小さく、かつ径方向の幅がコイル線17の直径より僅かに大きい。端部ターミナル用台座部40の上面41は筒部15の軸線に対して垂直であり、周方向の第1ティース20a側の上端部が円形の面取りが施されている(面取部45)。
【0040】
端部ターミナル用台座部40の第1ティース20a側の上面には、上方に例えば約1~2cm程度突出した円柱状の第1ガイド部47が備えられている。端部ターミナル用台座部40の第1ティース20a側(即ち、面取部45側)の側面と、第1ガイド部47の第1ティース20a側の側面とが周方向に略同一の位置になっている。
【0041】
また、第1ガイド部47の径方向最外側の側面は、端部ターミナル用台座部40の径方向外側端部よりも径方向内側に第1コイル線17の直径分の距離を有している。なお、ここでの径方向とは筒部15の径方向である。
【0042】
端部ターミナル用台座部40の上面41は、コイル8aよりも上方に位置する。
【0043】
端部ターミナル用台座部40の上面41には、V相端部ターミナル30の下端部を挿入する挿入穴42が設けられている。挿入穴42は、第1ガイド部47に隣接して第9ティース20i側(面取部45とは反対側)に配置されている。
【0044】
V相端部ターミナル30は、導電性の金属の平板から形成されており、下端部に挿入穴42に挿入する図示しない突出した挿入部を備えるとともに、上方に延びて上端部がステータ5の上方に配置された制御ユニット7の基板に接続される延長部30aを備えている。また、V相端部ターミナル30を挿入穴42に挿入して、筒部15にV相端部ターミナル30を固定した際に、端部ターミナル用台座部40の第9ティース20i側(面取部45とは反対側)の端面よりも周方向に延びた位置に、第1コイル線17を係止するフック部30bが備えられている。フック部30bは上方が開口した略U字状に形成されている。
【0045】
そして、V相端部ターミナル30をインシュレータ13の筒部15に設置した際に、フック部30bの内底面と端部ターミナル用台座部40の上面41とが略同一の上下位置であるとともに、フック部30bを除くV相端部ターミナル30の外周側の面と、端部ターミナル用台座部40の上面41の外周端との間に、第1コイル線17を載置できる程度の幅を有している。
【0046】
なお、U相端部ターミナル32及びその支持部(端部ターミナル用台座部40)の構造、W相端部ターミナル33及びその支持部の構造は、V相端部ターミナル30及びその支持部の構造と同一形状である。U相端部ターミナル32は第2ティース20bから第1ティース20aに掛けて、W相端部ターミナル33は第3ティース20cから第2ティース20bに掛けて配置され、U相端部ターミナル32の支持部となる端部ターミナル用台座部40、W相端部ターミナル33の支持部となる端部ターミナル用台座部40は、V相端部ターミナル30の支持部である端部ターミナル用台座部40から筒部15の周方向に40度ずつずらして配置されている。
【0047】
図6は、中間ターミナル31設置部近傍のステータ5の構造を示す斜視図である。
図7は、中間ターミナル31設置部近傍のインシュレータ13の構造を示す斜視図である。
【0048】
図6、7に示すように、インシュレータ13の筒部15の上端面には、第8ティース20hに隣接した周方向位置に、上方に突出した中間ターミナル用台座部50を備えている。
【0049】
中間ターミナル用台座部50は、第8ティース20hと略同一の周方向位置及び周方向幅であり、径方向の幅がコイル線17、18の直径より僅かに大きい。中間ターミナル用台座部50の上面51は筒部15の軸線に対して垂直であり、周方向の両側の上端部に夫々円形の面取り(面取部54、55)が施されている。
【0050】
中間ターミナル用台座部50の上面には、上方に突出した円柱状の第2ガイド部56及び第3ガイド部57が備えられている。第2ガイド部56は、中間ターミナル用台座部50の上面51から例えば約1~2cm程度上方に突出している。第3ガイド部57は、中間ターミナル用台座部50の上面51から第2ガイド部56よりも高く、例えば約2~3cm程度上方に突出している。
【0051】
中間ターミナル用台座部50の第7ティース20g側(即ち面取部54側)の側面と、第2ガイド部56の第7ティース20g側の側面とが周方向に略同一の位置になっている。
【0052】
また、中間ターミナル用台座部50の第9ティース20i側(即ち面取部55側)の側面と、第3ガイド部57の第9ティース20i側の側面とが周方向に略同一の位置になっている。
【0053】
また、第2ガイド部56の径方向最外側の側面、及び第3ガイド部57の径方向最外側の側面は、いずれも中間ターミナル用台座部50の径方向外側端部よりも径方向内側にコイル線17、18の直径分の距離を有している。
【0054】
中間ターミナル用台座部50の上面51は、コイル8iや8gよりも上方に位置する。
【0055】
中間ターミナル用台座部50の上面51には、中間ターミナル31の下端部を挿入する挿入穴52が備えられている。挿入穴52は、第2ガイド部56と第3ガイド部57との間に、第3ガイド部57に隣接して配置されている。また、中間ターミナル用台座部50の上面51は、挿入穴52と第2ガイド部56との間が下方に凹んだ凹み部58を有している。
【0056】
中間ターミナル31は、導電性の金属の平板から形成されており、下端部に挿入穴52に挿入する図示しない突出した挿入部を備えている。また、中間ターミナル31の挿入部を挿入穴52に挿入して、筒部15に中間ターミナル31を固定した際に、凹み部58と同一の周方向位置に、コイル線17、18を係止するフック部31bが備えられている。フック部31bは上方が開口した略U字状に形成されており、2本のコイル線17、18が係止可能な上下深さになっている。
【0057】
そして、中間ターミナル31をインシュレータ13の筒部15に設置した際に、フック部31bの内底面と中間ターミナル用台座部50の上面51とが略同一の上下位置であるとともに、フック部31bを除く中間ターミナル31の外周側の面と中間ターミナル用台座部50の上面51の外周端との間には、コイル線17、18の少なくとも1本分を設置できる程度の幅を有している。
【0058】
次に、上記のような構成のステータ5において、各相(V相、U相、W相)のコイル線17、18の巻き始め及び巻き終わりについて詳しく説明する。
【0059】
(V相巻き始め)
始めに、第1ティース20aにV相線となる第1コイル線17を巻き始める場合では、まず上記のように、第1コイル線17の一端を治具により固定して、巻線機から第1コイル線17を引き出し、筒部15に固定したV相端部ターミナル30のフック部30bに上方から通して係止させて電気的に接続し、第1コイル線17を端部ターミナル用台座部40の上面41に載せる。更に第1コイル線17を引き出しながら第1ガイド部47の側面に当てて支点として径方向内側かつ下方のスロットNo.1に向けて引き出し、第1ティース20aに巻き付ける。
【0060】
(V相巻き終わり、U相巻き始め)
第1ティース20aから、第4ティース20d、第7ティース20gの順に巻き終わった第1コイル線17を、第7ティース20gと第8ティース20hとの間のスロットNo.8の上方から筒部15の外方に引いて、第2ガイド部56の第7ティース20g側の側面に当てて支点として第3ガイド部57側に向けて周方向に引き出して、第1コイル線17を中間ターミナル31のフック部31bに係止させて電気的に接続し、中間ターミナル用台座部50の上面51に載せる。これによりV相線が巻き終わる。
【0061】
更に、第1コイル線17を、第3ガイド部57の第9ティース20i側の側面に当てて支点とし径方向内側かつ下方のスロットNo.9に向けて引き出して、第8ティース20hに巻き回す。なお、中間ターミナル31との係止部以降に引き出した第1コイル線17はU相線となる。
【0062】
(U相巻き終わり)
第8ティース20hから第5ティース20e、第2ティース20bの順に第1コイル線17を巻き、第2ティース20bを巻き終えた第1コイル線17を、第1ティース20aと第2ティース20bとの間のスロットNo.2から上方かつ径方向外方に引き出す。そして、第1コイル線17をU相端部ターミナル32が固定される端部ターミナル用台座部40の第1ガイド部47の第2ティース20b側の側面に当てて支点とし、第1ティース20a側に引き出し、U相端部ターミナル32が固定される端部ターミナル用台座部40の上面41に載せる。そして、この第1コイル線17をU相端部ターミナル32のフック部32bに係止させて電気的に接続し、第1コイル線17の端部の余剰分を切断する。なお
図2では、U相端部ターミナル32に対する第1コイル線17の接続箇所、即ち第1コイル線17のU相巻き終わり部分の記載は省略している。
【0063】
(W相巻き始め)
W相線となる第2コイル線18については、W相端部ターミナル33のフック部33bに接続し、第3ティース20cから巻き始めるが、V相線となる第1コイル線17と同様に巻き始めればよい。
【0064】
(W相巻き終わり)
第3ティース20cから、第6ティース20f、第9ティース20iの順に第2コイル線18を巻き、第9ティース20iを巻き終えた第2コイル線18を、第9ティース20iと第1ティース20aとの間のスロットNo.1から上方かつ径方向外方に引き出す。そして、中間ターミナル用台座部50に設けられた第3ガイド部57の第9ティース20i側の側面に当てて支点とし、第2コイル線18を第7ティース20g側に引き出して、中間ターミナル用台座部50の上面51に載せる。それから、この第2コイル線18を中間ターミナル31のフック部31bに係止させて電気的に接続し、第2コイル線18の端部の余剰分を切断する。
【0065】
これにより、中間ターミナル31において、第1コイル線17と第2コイル線18とが電気的に接続される。
【0066】
以上のような構成により、本実施形態のコイル巻線部構造を採用したステータ5を有する電動ポンプ装置1のモータユニット3は、U相、V相、W相に3個ずつ計9個のコイル8(8a~8i)を有している。そして、モータユニット3のステータ5には、コイル8の絶縁用にインシュレータ13を備えている。
【0067】
インシュレータ13には、コイル線17、18が巻き付けられる各ティース20a~20iのボビン部16と、ボビン部16の径方向外側に設けられる筒部15を有している。
【0068】
本実施形態のインシュレータ13の筒部15には、ステータ5を製造する際に各ティース20a~20iにコイル線17、18を巻き付けるときに、コイル線17、18の荷重を受ける台座部(端部ターミナル用台座部40、中間ターミナル用台座部50)及びガイド部(第1ガイド部47、第2ガイド部56、第3ガイド部57)といった荷重受け部を備えている。
【0069】
これにより、各ティース20a~20iに巻き付ける際に、コイル線17、18に大きな張力を付与することが可能になり、巻き付けを強く行うことができる。
【0070】
特に、筒部15の上端に台座部40、50が設けられており、その上面41、51にコイル線17、18を押し付けることで、コイル線17、18を筒部15に沿って周方向に延びるように保持することができる。これにより、筒部15に対して軸方向位置及び周方向位置を規定してコイル線17、18に保持することができる。
【0071】
また、台座部40、50の周方向端部にガイド部47、56、57が設けられているので、台座部40、50と各ティース20a~20iとの間でコイル線17、18を屈曲させて案内するとともに、各ティース20a~20iにコイル線17、18を巻き始める際、あるいは各ティース20a~20iを巻き終わったコイル線17、18を引き出す際に、コイル線17、18をガイド部47、56、57に押し当てて保持することができ、各ティース20a~20iにコイル線17、18を強く巻くことが可能になる。また、コイル線17、18を各ターミナル(V相端部ターミナル30、中間ターミナル31、U相端部ターミナル32、W相端部ターミナル33)に接続する際に、台座部40、50やガイド部47、56、57によってコイル線17、18を保持することで、各ターミナル30~33へ掛かる荷重を抑制し、各ターミナル30~33の保護を図ることができる。
【0072】
そして、台座部40、50とガイド部47、56、57とが、筒部15の上端部に周方向に並んで配置されているので、各ティース20a~20iにコイル線17、18を巻き付ける際にコイル線17、18の荷重を受ける荷重受け部を、コンパクトに構成することができる。また、台座部40、50及びガイド部47、56、57は、筒部15と一体的に構成されているので、部品点数を少なくすることができる。
【0073】
また、台座部40、50に、コイル線17、18に接続する接続端子である各ターミナル30~33が支持され、台座部40、50に隣接して各ターミナル30~33とコイル線17、18との接続部であるフック部30b、31b、32b、33bが配置されており、これらも筒部15の上端部に周方向に並んで配置されているので、各ターミナル30~33の設置部分の構造を筒部15から径方向外側への突出を抑制してコンパクトにすることができる。
【0074】
上記のようにガイド部47、56、57によってコイル線17、18を保持することで、各ターミナル30~33へ掛かる荷重が抑制されるので、各ターミナル30~33を薄板状にすることができ、その設置部分の構造をよりコンパクトにすることができる。
【0075】
本実施形態では、V相及びU相のコイル8a、8b、8d、8e、8g、8hを形成する第1コイル線17と、W相のコイル8c、8f、8iを形成する第2コイル線18を有し、当該コイル線17、18に接続する端子は、第1コイル線17の一端部、第1コイル線17の他端部、第2コイル線18の一端部を個別に係止する3個の端部ターミナル(V相端部ターミナル30、U相端部ターミナル32、W相端部ターミナル33)と、第1コイル線17の中間部及び第2コイル線18の他端部を係止する1個の中間ターミナル31を有し、3個の端部ターミナル30、32、33と中間ターミナル31は、筒部15に周方向に異なる位置に配置される。
【0076】
これにより、計9個のコイル8a~8iを有する3相モータのステータ5を、第1コイル線17及び第2コイル線18を9個のティース20a~20iに巻き付け、3個の端部ターミナル30、32、33及び中間ターミナル31に接続して、筒部15から径方向外方に突出しないように構成することができる。
【0077】
また、台座部40、50は、3個の端部ターミナル30、32、33及び中間ターミナル31の設置位置に夫々に設けられるので、ターミナル30~33毎に接続するコイル線17、18の支持を適切に行えるように構成することができる。
【0078】
特に、中間ターミナル31が設けられる中間ターミナル用台座部50には、中間ターミナル31と第1コイル線17との接続位置であるフック部31bを挟んで周方向の両側に夫々ガイド部(第2ガイド部56、第3ガイド部57)を有するので、第1コイル線17のV相の巻き終わりと、U相の巻き始めの両方で、第1コイル線17に大きく張力を付加して強く巻き付けることが可能になる。
【0079】
また、中間ターミナル31には、始めに第1コイル線17が接続され、その後に第2コイル線18が接続される。中間ターミナル用台座部50に設けられた第2ガイド部56及び第3ガイド部57のうち、第3ガイド部57は第1コイル線17だけでなく第2コイル線18の案内もする。そして、第3ガイド部57を第2ガイド部56よりも突出長さを大きくしたので、第1コイル線17の接続の後に第2コイル線18を容易に第3ガイド部57に引っかけて中間ターミナル31に案内することができる。
【0080】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、U相、V相、W相の各コイル8の個数は各3個以外でもよい。
【0081】
また上記実施形態では、電動ポンプ装置1のモータユニット3のステータ5に本発明を適用したが、電動ポンプ以外の電動モータにも本願発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
3 モータユニット
5 ステータ
6 ロータ
8(8a~8i) コイル
13 インシュレータ
15 筒部
17 第1コイル線(巻線)
18 第2コイル線(巻線)
20(20a~20i) ティース(コイル巻装部)
30 V相端部ターミナル(端部接続端子、接続端子)
31 中間ターミナル(中間接続端子、接続端子)
32 U相端部ターミナル(端部接続端子、接続端子)
33 W相端部ターミナル(端部接続端子、接続端子)
40 端部ターミナル用台座部(台座部、荷重受け部)
47 第1ガイド部(ガイド部、荷重受け部)
50 中間ターミナル用台座部(台座部、荷重受け部)
56 第2ガイド部(ガイド部、荷重受け部)
57 第3ガイド部(ガイド部、荷重受け部)