IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピコテクバイオ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-温度処理装置 図1
  • 特開-温度処理装置 図2
  • 特開-温度処理装置 図3
  • 特開-温度処理装置 図4
  • 特開-温度処理装置 図5
  • 特開-温度処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167527
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】温度処理装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231116BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20231116BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N1/44
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078790
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】519367935
【氏名又は名称】ピコテクバイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 佳則
(72)【発明者】
【氏名】山中 啓一郎
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052DA02
2G052DA08
2G052DA12
2G052EB11
4B029AA07
4B029AA12
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029DG10
4B029FA12
4B029GA02
4B029GA03
4B029GB04
4B029GB10
(57)【要約】
【課題】サンプルの温度を高速で変動させることが可能な温度処理装置を提供する。
【解決手段】熱伝導性材料からなる第1ヒータブロック、前記第1ヒータブロックの側方に前記第1ヒータブロックとの間に間隔をもって配置された熱伝導性材料からなる第2ヒータブロック、及び、前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとを互いに独立して加熱することでそれぞれ異なる温度に制御することが可能な2つのヒータ要素を備えた加熱部と、下端にサンプル収容部を備えたサンプル容器を、前記サンプル収容部が前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとの間に配置された状態となるように保持する容器保持部と、前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとが時間的に交互に前記サンプル収容部に接するように、前記加熱部と前記容器保持部とを水平面内において相対的に回転させる回転機構と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明に係る温度処理装置は、サンプル温度の昇降制御を行うための装置であって、
熱伝導性材料からなる第1ヒータブロック、前記第1ヒータブロックの側方に前記第1ヒータブロックとの間に間隔をもって配置された熱伝導性材料からなる第2ヒータブロック、及び、前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとを互いに独立して加熱することでそれぞれ異なる温度に制御することが可能な2つのヒータ要素を備えた加熱部と、
下端にサンプル収容部を備えたサンプル容器を、前記サンプル収容部が前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとの間に配置された状態となるように保持する容器保持部と、
前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとが時間的に交互に前記サンプル収容部に接するように、前記加熱部と前記容器保持部とを水平面内において相対的に回転させる回転機構と、を備えた温度処理装置。
【請求項2】
前記回転機構は、前記加熱部を水平面内において回転させるように構成されている、請求項1に記載の温度処理装置。
【請求項3】
前記第1ヒータブロック及び前記第2ヒータブロックは、互いに対向する側面を有し、前記側面に前記サンプル容器の前記サンプル収容部の外周面が接触することで前記サンプル収容部を加熱するものである、請求項1又は2に記載の温度処理装置。
【請求項4】
前記2つのヒータ要素のそれぞれは前記第1ヒータブロック及び前記第2ヒータブロックの直下に配置された電熱線である、請求項1から3のいずれか一項に記載の温度処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの温度を変動させる温度処理を行なうための温度処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の遺伝子を増幅させるためにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)がよく用いられ、PCRを行なうための容器も提案されている(特許文献1参照。)。PCRのような処理を高速で実施することが望まれており、そのためには、サンプルの温度を高速で変動させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-118338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような容器を用いた温度処理としては、容器に収容したサンプルの温度を変動させるために、容器を加熱するヒータの出力を一定時間ごとに変化させたり、互いに異なる温度に制御される複数の加熱部を用意しておいて容器を各加熱部へ移動させたりすることが一般的であるが、いずれの手法もサンプルの温度を高速で変動させるには限界がある。
【0005】
また、一般的な容器を加熱して化学反応を行なう場合には容器をアルミブロックのような熱源に設置し、その熱源の温度を調整して行なう場合がある。その場合にはアルミブロック自体の温度昇降制御に時間がかかるため、短時間でのサンプル温度変動制御には限界がある。また、反応を促進する目的の温度までに高温と低温の間の温度にも容器内のサンプルが曝されることによって、化学反応が適切に行なわれない場合があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、サンプルの温度を的確に高速で変動させることが可能な温度処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る温度処理装置は、サンプル温度の昇降制御を行うための装置であって、熱伝導性材料からなる第1ヒータブロック、前記第1ヒータブロックの側方に前記第1ヒータブロックとの間に間隔をもって配置された熱伝導性材料からなる第2ヒータブロック、及び、前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとを互いに独立して加熱することでそれぞれ異なる温度に制御することが可能な2つのヒータ要素を備えた加熱部と、下端にサンプル収容部を備えたサンプル容器を、前記サンプル収容部が前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとの間に配置された状態となるように保持する容器保持部と、前記第1ヒータブロックと前記第2ヒータブロックとが時間的に交互に前記サンプル収容部に接するように、前記加熱部と前記容器保持部とを水平面内において相対的に回転させる回転機構と、を備えている。この上記機構によりサンプル温度の昇降制御をそれぞれ異なる温度に設定された2つのヒータ間への回転移動により、迅速に行うことが可能となる。
【0008】
前記回転機構は、前記加熱部を水平面内において回転させるように構成されていてもよい。
【0009】
また、前記第1ヒータブロック及び前記第2ヒータブロックは互いに対向する側面を有し、前記側面に前記サンプル容器の前記サンプル収容部の外周面が接触することで前記サンプル収容部を加熱するものであってよい。
【0010】
また、前記2つのヒータ要素のそれぞれは前記第1ヒータブロック及び前記第2ヒータブロックの直下に配置された電熱線であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る温度処理装置は、加熱部と容器保持部とを水平面内において相対的に回転させることによって容器保持部に保持されたサンプル容器のサンプル収容部に第1ヒータブロックと第2ヒータブロックとを時間的に交互に接触させ、それによってサンプル容器のサンプル収容部を変動させるようになっているので、サンプルの温度を的確に高速で変動させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】サンプル容器の一例を説明するための垂直断面図である。
図2】(A)は容器本体の図1の垂直断面と直交する垂直断面の図であり、(B)は容器本体を下方から見た図である。
図3】容器本体にキャップを装着した状態での垂直断面図である。
図4】温度処理装置の一実施例をサンプル容器とともに示す垂直断面図である。
図5】温度処理装置のヒータブロックを図4の状態から180度回転させた後の状態を示す垂直断面図である。
図6】実施例の温度処理装置による温度処理の効果の検証データである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る温度処理装置の実施形態について説明する。
【0014】
まず、温度処理装置において使用する温度処理装置1について、図1から図3を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示されているように、サンプル容器1は、容器本体100及びキャップ200を備えている。容器本体100は上面102が開口した容器であり、キャップ200が容器本体100の上部に装着されることによって容器本体100の上面102の開口が封止される。
【0016】
容器本体100の下端には、サンプルを含むサンプル液を収容するための内部空間106を有するサンプル収容部104が設けられている。サンプル収容部104の内部空間106の水平断面の面積は下方へいくにしたがって小さくなっており、内部空間106の垂直断面の形状は略三角形となっている。
【0017】
図2に示されているように、サンプル収容部104は略半円柱形状を有する。内部空間106が上記の形状を有することで、内部空間106における熱対流が起こりやすくなり、サンプル収容部104の外周面から内部空間106へ熱を加えたときの内部空間106内の温度変化が高速でなされるようになる。
【0018】
容器本体100は、サンプル収容部104の上方に、下方へいくにしたがって内径及び外径が小さくなる漏斗状の漏斗部108を備えている。サンプル収容部104は、漏斗部108の下端から下方へ延在し、漏斗部108と中心軸を共有する円柱の一部をなすように設けられている。その漏斗部108内には、固化した試薬層110が固定されている。試薬層110は、例えば摂氏50度以上に加熱されることで液化する。試薬層110は、例えば、サンプル中の遺伝子を増幅させるためのPCR処理を行なうためのPCR試薬の層(上層)とパラフィンの層(下層)を含むものである。下層には上層より比重の小さい液体を充填することで、試薬層110が液化したときに効率よく試薬の入れ替えを促すことができる。
【0019】
容器本体100の外周面には、水平外側方向へ延在するように設けられた羽部112を備えている。羽部112は、サンプル容器1を一定の姿勢で保持するためのものである。なお、羽部112はキャップ200に設けられていてもよい。容器本体100の上部外周面にキャップ200を装着するためのネジ114が設けられている。
【0020】
図1に戻って、キャップ200の中段部に、キャップ200の外周面を囲うように下方へ延びるスカート部206が設けられている。スカート部206の内周面には、容器本体100のネジ114と螺合するネジ208が設けられている。容器本体100のネジ114とキャップ200のネジ208が互いに螺合することで、キャップ200が容器本体100に装着される。
【0021】
図3に示されているように、キャップ200の下部は、キャップ200が容器本体100に装着されたときに容器本体100内に挿入される。キャップ200の下端には、サンプルを保持するための窪みであるサンプル保持部204が設けられており、キャップ200が容器本体100に装着されたときにサンプル保持部204が容器本体100内の試薬層110に達するようになっている。唾液などのサンプルは、キャップ200の下端のサンプル保持部204に保持された状態で容器本体100内に導入され、試薬層110に接する。
【0022】
次に、温度処理装置の一実施例について、図4を参照しながら説明する。
【0023】
温度処理装置300は、ヒータブロック302、304、ヒータ基板306、ヒータ308、310、テーブル312、及び容器保持部314を備えている。ヒータブロック302及び304は、熱伝導性の良好なアルミニウムや真鍮などの金属材料で構成されており、互いに対向して配置されている。ヒータブロック302及び304は互いに対向する側面をもち、それらの側面がサンプル容器1の漏斗部108の外周面、及びサンプル保持部104の外周面と面接触するように曲率をもっている。
【0024】
容器保持部314は、サンプル容器1の羽部112を保持して、サンプル容器1の下端のサンプル収容部104が2つのヒータブロック302と304の間に配置された状態を維持するためのものである。
【0025】
ヒータ基板306にヒータ308及び310が埋設されている。ヒータ基板306はヒータブロック302及び304の下方に配置されており、ヒータブロック302にヒータ308が接触し、ヒータブロック304にヒータ310が接触している。ヒータブロック302はヒータ308によって加熱され、ヒータブロック304はヒータ310によって加熱される。ヒータ308と310は互いに独立して駆動され、それによってヒータブロック302と304が互いに異なる温度に加熱される。ヒータ308及び310の一例は、流れる電流の大きさに応じた熱量を発する電熱線である。ヒータブロック302、304、ヒータ基板306、ヒータ308及び310は、サンプル容器1のサンプル収容部104の加熱を行なうための加熱部を構成する。
【0026】
テーブル312は、ヒータブロック302、304、ヒータ基板306、ヒータ308及び310からなる加熱部を支持している。テーブル312はモータ等によって水平面内において回転するように構成されている。テーブル312は、容器保持部314に保持されたサンプル容器1と加熱部とを水平面内において相対的に回転させる回転機構を構成する。なお、この実施例とは逆に、テーブル312は回転せず、容器保持部314が水平面内において回転することによって容器保持部314に保持されたサンプル容器1と加熱部とを水平面内において相対的に回転させるようになっていてもよい。
【0027】
サンプル容器1及び温度処理装置300を用いたサンプルの温度処理方法の手順の一例について説明する。
【0028】
まず、先端のサンプル保持部204にサンプルを付着させたキャップ200を容器本体100に装着する。そして、サンプル容器1の羽部112を温度処理装置300の容器保持部314に保持させてセットし、サンプル容器1の下部をヒータブロック302及び304に面接触させる。この状態でヒータ308及び310に電流を流し、ヒータブロック302及び304の温度を約50℃にする。これにより、サンプル容器1内の試薬層110が液化する。試薬層110が、試薬の層とパラフィンの層を含んでいる場合、試薬とパラフィンの比重の違いによって、図4に示されているように、サンプルと試薬の混合液であるサンプル液Sの上にパラフィンの層Pが形成され、結果として、サンプル液Sがサンプル収容部104の内部空間106に収容された状態となる。パラフィンの層Pは、この後の温度処理中におけるサンプル液Sの蒸発を防止して温度処理の効率を向上させる機能を果たす。
【0029】
その後、ヒータブロック302を第1の温度、ヒータブロック304の温度を第1の温度とは異なる第2の温度にそれぞれ調節した状態で、例えばヒータブロック302及び304の温度をそれぞれ約55℃、98℃にする。そして、テーブル312を一定時間間隔で180度ずつ回転させ、サンプル収容部104の外周面にヒータブロック302及び304を交互に面接触させる。これにより、サンプル収容部104に収容されたサンプル液Sの温度が一定時間間隔で第1の温度と第2の温度に交互に変化する。図5は、図4の状態からテーブル312を180度回転させた状態を示している。
【0030】
図6は、上記のサンプル容器1及び温度処理装置300を使用してある標的遺伝子のPCR処理を行なった後、PCR後のサンプル液を電気泳動によって分析することにより得られた検証データである。この検証では、温度処理装置300のヒータブロック302と304の一方の温度を110℃、他方の温度を40℃にそれぞれ設定し、30秒間隔でテーブル312を回転させて30分間のPCR処理を実施した。その結果、標的遺伝子の増幅処理が良好になされたことを確認した。
【符号の説明】
【0031】
1 サンプル容器
100 容器本体
102 容器本体の上面
104 サンプル収容部
106 サンプル収容部の内部空間
108 漏斗部
110 試薬層
112 羽部
114 ネジ
116 ストッパ
200 キャップ
202 突起
204 サンプル保持部
206 スカート部
208 ネジ
300 温度処理装置
302,304 ヒータブロック
306 ヒータ基板
308,310 ヒータ
312 テーブル
314 容器保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6