(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167537
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】レジスト塗布装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231116BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
B05C11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078805
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591132955
【氏名又は名称】株式会社秋田新電元
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】菅原 鉄晴
【テーマコード(参考)】
4F042
5F146
【Fターム(参考)】
4F042AA02
4F042AA06
4F042AB00
4F042EB05
4F042EB09
4F042EB13
4F042EB17
4F042EB23
5F146JA06
(57)【要約】
【課題】糸状のレジストが基板表面に再付着することを防止できるレジスト塗布装置を提供する。
【解決手段】本発明は、基板10を回転自在に保持する保持部11と、前記基板を回転させる回転駆動機構12と、前記保持部に保持された前記基板の上方に配置され、レジスト液を前記基板の表面に供給するノズル14と、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆う第1リング15と、前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置され、且つ前記基板の外周より大きい内径を有し、且つ前記第1リングの内径より小さい外径を有する第2リング16と、を有するレジスト塗布装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転自在に保持する保持部と、
前記基板を回転させる回転駆動機構と、
前記保持部に保持された前記基板の上方に配置され、レジスト液を前記基板の表面に供給するノズルと、
前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆う第1リングと、
前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置され、且つ前記基板の外周より大きい内径を有し、且つ前記第1リングの内径より小さい外径を有する第2リングと、
を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1リングは、前記基板の表面より上方に上端が位置するとともに前記基板の裏面より下方に下端を有する筒状で且つ網目状のリングであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第2リングの形状は、筒状且つ網目状であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記保持部に保持された前記基板の裏面を覆う網目状で且つスカート形状のレジスト付着防止部材を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1リングは、前記基板の表面より上方に上端が位置するとともに前記基板の裏面より下方に下端を有する筒状のリングであり、
前記第2リングの形状は、筒状のリングであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1リングの筒状のリングは、複数の開口部を有しており、
前記第2リングの筒状のリングは、複数の開口部を有していることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項7】
請求項2において、
前記第1リングは、網目状による複数の開口部を有しており、前記複数の開口部の内径は3mm以上20mm以下であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項8】
請求項3において、
前記第2リングは、網目状による複数の開口部を有しており、前記複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項9】
請求項4において、
前記レジスト付着防止部材は、網目状による複数の開口部を有しており、前記複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項10】
請求項1又は2において、
前記保持部に保持された前記基板の裏面を覆うスカート形状のレジスト付着防止部材を有しており、
前記レジスト付着防止部材は、複数の開口部を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項11】
請求項4において、
前記レジスト付着防止部材は、SUS金網にテフロン(登録商標)コートを施したものであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項12】
請求項1又は2において、
前記第1リングは、SUSにテフロン(登録商標)コートしたものであり、
前記第2リングは、SUSにテフロン(登録商標)コートしたものであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項13】
請求項1又は2において、
前記レジスト液にはキシレンが含まれていることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項14】
請求項1又は2において、
前記第1リングは、Alにアルマイト処理されたものであり、
前記第2リングは、Alにアルマイト処理されたものであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項15】
基板を回転自在に保持する保持部と、
前記基板を回転させる回転駆動機構と、
前記保持部に保持された前記基板の上方に配置され、レジスト液を前記基板の表面に供給するノズルと、
第1リング又は第2リングのいずれか一方と、
を有し、
前記第1リングは、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側に位置しており、
前記第2リングは、前記基板の外周より大きい内径を有し、且つ前記第1リングの内径より小さい外径を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記第1リングは、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆っており、
前記第2リングは、前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置されていることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項17】
請求項15において、
前記第1リングは、前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置されており、
前記第2リングは、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆っていることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項において、
平面視において、前記第1リングと前記第2リングとの間に1つ以上の第3リングを有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレジスト塗布装置は、基板であるウェーハ上の中心位置などにレジスト液を供給してウェーハを回転させることで、ウェーハ上の全面にレジスト液を伸展させて塗布膜を形成する。その際に、伸展したレジスト液をウェーハの外周端部から遠心力により外側方向に飛ばされて、その飛ばされた不要なレジスト液をカップ体によって受け留めていた。そのカップ体はウェーハの外周に設置されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、レジスト液を供給する際のウェーハ回転数が3000rpmを超えると、飛ばされたレジストのキシレン成分が揮発することで、レジストが蜘蛛の糸のようにウェーハ上に浮遊し、ウェーハ表面に糸状のレジストが再付着することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の種々の態様は、糸状のレジストが基板表面に再付着することを防止できるレジスト塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0007】
[1]基板を回転自在に保持する保持部と、
前記基板を回転させる回転駆動機構と、
前記保持部に保持された前記基板の上方に配置され、レジスト液を前記基板の表面に供給するノズルと、
前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆う第1リングと、
前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置され、且つ前記基板の外周より大きい内径を有し、且つ前記第1リングの内径より小さい外径を有する第2リングと、
を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【0008】
[2]上記[1]において、
前記第1リングは、前記基板の表面より上方に上端が位置するとともに前記基板の裏面より下方に下端を有する筒状で且つ網目状のリングであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]において、
前記第2リングの形状は、筒状且つ網目状であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0010】
[4]上記[1]から[3]のいずれか一項において、
前記保持部に保持された前記基板の裏面を覆う網目状で且つスカート形状のレジスト付着防止部材を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【0011】
[5]上記[1]において、
前記第1リングは、前記基板の表面より上方に上端が位置するとともに前記基板の裏面より下方に下端を有する筒状のリングであり、
前記第2リングの形状は、筒状のリングであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0012】
[6]上記[5]において、
前記第1リングの筒状のリングは、複数の開口部を有しており、
前記第2リングの筒状のリングは、複数の開口部を有していることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0013】
[7]上記[2]において、
前記第1リングは、網目状による複数の開口部を有しており、前記複数の開口部の内径は3mm以上20mm以下であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0014】
[8]上記[3]において、
前記第2リングは、網目状による複数の開口部を有しており、前記複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0015】
[9]上記[4]において、
前記レジスト付着防止部材は、網目状による複数の開口部を有しており、前記複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0016】
[10]上記[1]から[3]のいずれか一項において、
前記保持部11に保持された前記基板10の裏面を覆うスカート形状のレジスト付着防止部材を有しており、
前記レジスト付着防止部材は、複数の開口部を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【0017】
[11]上記[4]、[9]及び[10]のいずれか一項において、
前記レジスト付着防止部材は、SUS金網にテフロン(登録商標)コートを施したものであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0018】
[12]上記[1]から[11]のいずれか一項において、
前記第1リングは、SUSにテフロン(登録商標)コートしたものであり、
前記第2リングは、SUSにテフロン(登録商標)コートしたものであることを特徴とするレジスト塗布装置。
【0019】
[13]上記[1]から[12]のいずれか一項において、
前記レジスト液にはキシレンが含まれていることを特徴とするレジスト塗布装置。
[14]上記[1]から[13]のいずれか一項において、
前記第1リングは、Alにアルマイト処理されたものであり、
前記第2リングは、Alにアルマイト処理されたものであることを特徴とするレジスト塗布装置。
[15]基板を回転自在に保持する保持部と、
前記基板を回転させる回転駆動機構と、
前記保持部に保持された前記基板の上方に配置され、レジスト液を前記基板の表面に供給するノズルと、
第1リング又は第2リングのいずれか一方と、
を有し、
前記第1リングは、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側に位置しており、
前記第2リングは、前記基板の外周より大きい内径を有し、且つ前記第1リングの内径より小さい外径を有することを特徴とするレジスト塗布装置。
[16]上記[15]において、
前記第1リングは、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆っており、
前記第2リングは、前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置されていることを特徴とするレジスト塗布装置。
[17]上記[15]において、
前記第1リングは、前記保持部に保持された前記基板の表面より上方に配置されており、
前記第2リングは、前記保持部に保持された前記基板の外周の外側を覆っていることを特徴とするレジスト塗布装置。
[18]上記[15]から[17]のいずれか一項において、
平面視において、前記第1リングと前記第2リングとの間に1つ以上の第3リングを有することを特徴とするレジスト塗布装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記[1]のレジスト塗布装置によれば、基板の外周の外側を覆う第1リングと、基板の表面より上方に且つ基板の外周より大きい内径を有する第2リングを配置する。このような二重インナーリング方式により、基板の回転速度が速くなって、飛ばされたレジストの成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは第2リングの内側間及び第1リングと第2リング間に捕獲される。その結果、その浮遊レジストが基板の表面に再付着することを防止できる。
【0021】
本発明の上記[2]のレジスト塗布装置によれば、第1リングは、基板の表面より上方に上端が位置するとともに基板の裏面より下方に下端を有する筒状で且つ網目状のリングである。これにより、回転している基板に供給されたレジスト液が基板の回転による遠心力により基板の外側に飛ばされるので、その飛ばされたレジスト液が筒状の第1リングによってからめとられ、基板へのレジスト液の再付着を防止でき、糸状のレジストが基板表面に再付着することを防止できる。
【0022】
本発明の上記[3]のレジスト塗布装置によれば、第2リングの形状は、筒状且つ網目状である。これにより、基板の回転速度が速くなって、上述したように蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは第2リングの内側間及び第1リングと第2リング間に捕獲されやすくなる。その結果、その浮遊レジストが基板の表面に再付着することを防止できる。
【0023】
本発明の上記[4]のレジスト塗布装置によれば、保持部に保持された基板の裏面を覆う網目状で且つスカート形状のレジスト付着防止部材を有する。これにより、第1リングから飛んでくるレジストが基板の裏面に再付着することを防止できる。
【0024】
また、本発明の種々の態様によれば、糸状のレジストが基板表面に再付着することを防止できるレジスト塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一態様に係るレジスト塗布装置を説明するための内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の一態様に係るレジスト塗布装置を説明するための内部構造を示す斜視図である。
【0028】
図1に示すレジスト塗布装置100は、基板10を回転自在に保持する保持部11と、この基板10を回転させる回転駆動機構12と、レジスト液を前記基板10の表面に供給するノズル14と、前記保持部11に保持された基板10の外周の外側を覆う第1リング15と、その第1リング15の内径より小さい外径を有する第2リング16と、を有している。
上記のノズル14は保持部11に保持された基板10の上方に配置されている。また、第2リング16は、保持部11に保持された基板10の表面より上方に配置されている。また第2リング16は、基板10の外周より大きい内径を有している。
なお、第1リング15及び第2リング16それぞれは、
図1では円形のリングを示しているが、円形に限定されるものではなく、基板10の形状に合わせて円形以外の形状であってもよく、例えば基板が四角形状であれば、四角形のリングを用いてもよい。
【0029】
以下に詳細に説明する。
このレジスト塗布装置100は、基板10を回転自在に保持する保持部11を有している。基板10は、例えば半導体ウェーハである。基板10は保持部11によって水平に保持される。
【0030】
また、レジスト塗布装置は、基板(ウェーハ)10を回転させる回転駆動機構12を有している。この回転駆動機構12は、保持部11に接続された回転軸13を回転させるモータ等の駆動部により構成されているとよい。
【0031】
ウェーハ10は保持部11に保持される。そのウェーハ10の上方にはノズル14が配置されており、そのノズル14はウェーハ10の表面にレジスト液を矢印のように供給するものである。またノズル14は図示せぬレジスト供給機構に接続されており、そのレジスト供給機構によってノズル14にレジストが供給され、そのレジストがノズル14からウェーハ10の表面に供給される。
【0032】
また、レジスト塗布装置100は第1リング(外側インナーリング)15を有している。回転している基板(ウェーハ)10にノズル14からレジスト液が矢印のように供給され、その供給されたレジスト液がウェーハ10の回転による遠心力によってウェーハ10の全面に拡がり塗布される。その際、遠心力により余分なレジスト液が矢印のようにウェーハ10の外側に飛ばされるので、その飛ばされたレジスト液が外側インナーリング15によってからめとられ、ウェーハ10へのレジスト液の再付着を防止する。このような外側インナーリング15は、保持部11に保持されたウェーハ10の外周の外側を覆っている。なお、外側インナーリング15は、筒状且つ網目状を有しているが、リング状であれば、筒状且つ網目状でなくてもよく、単にリング形状であってもよい。つまり、外側インナーリング15は、単なるリング形状を有しているものも含む。
【0033】
また、レジスト塗布装置は第2リング(内側インナーリング)16を有している。内側インナーリング16は、保持部11に保持された基板(ウェーハ)10の表面より若干上方に配置されている。また内側インナーリング16はウェーハ10の外周より大きい内径を有している。また内側インナーリング16は第1リング(外側インナーリング)15の内径より小さい外径を有している。なお、内側インナーリング16は、筒状且つ網目状を有しているが、リング状であれば、筒状且つ網目状でなくてもよく、単にリング形状であってもよい。つまり、内側インナーリング16は、単なるリング形状を有しているものも含む。
またレジスト塗布装置100は、保持部11に保持されたウェーハ10、内側インナーリング16及び外側インナーリング15の外側を取り囲むようにカップ体20を備えている。カップ体20は、回転するウェーハ10にノズル14からレジスト液が供給され、その供給されたレジスト液がウェーハ10の回転による遠心力によって外側に飛散したり、こぼれ落ちた排液を受け止め、その排液をレジスト塗布装置外に排出する機能を有する。
【0034】
本実施形態によれば、ウェーハ10の外周の外側を覆う外側インナーリング15と、ウェーハ10の表面より若干上方に且つウェーハ10の外周より少し大きい内径を有する内側インナーリング16を配置する。このような二重インナーリング方式により、ウェーハ10の回転数が3000rpmを超えて、飛ばされたレジストのキシレン成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは内側インナーリング16の内側間及び外側インナーリング15と内側インナーリング16間に捕獲される。その結果、その浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することを防止できる。
【0035】
また、上記のように再付着を防止することで、従来のレジスト塗布装置に比べてレジストの使用量を大幅に削減できる。その理由は次のとおりである。従来のレジスト塗布装置では、上記のような蜘蛛の糸状の浮遊レジストがウェーハの表面に再付着することを防止する有効な手段を設けていなかった。このような従来のレジスト塗布装置であっても、蜘蛛の糸状の浮遊物がウェーハに再付着することを抑制する必要があるために以下の(1)、(2)の対策をとることが考えられる。
【0036】
(1)基板(ウェーハ)が回転している空間を密閉状態にして気流を発生させない事で、キシレンの揮発を抑制する。
(2)従来のレジスト塗布装置においてノズルから供給されるレジストの供給量を、
図1に示すレジスト塗布装置においてノズル14から供給されるレジストの供給量の1.5倍~2.0倍程度に増やし、ウェーハの外側へ飛ばされるレジスト量を増加させる。このように、レジストの供給量を増やすことで、ウェーハが回転する空間のキシレン濃度が上昇し、揮発を抑制する。
【0037】
しかし、上記の従来のレジスト塗布装置の対策では、レジストの供給量を多くしなければならなかった。
【0038】
これに対し、
図1に示すレジスト塗布装置100では、上記のような蜘蛛の糸状の浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することを防止する有効な手段を設けているため、レジストの供給量を大幅に削減することが可能となった。
【0039】
また、
図1に示すレジスト塗布装置100において、第1リング15は、基板10の表面より上方に上端が位置するとともに基板10の裏面より下方に下端を有する筒状で且つ網目状のリングであるとよい。
【0040】
詳細には、本実施形態のレジスト塗布装置100は、前述したように、筒状で且つ網目状の第1リング(外側インナーリング)15を有している。回転しているウェーハ10に供給されたレジスト液がウェーハ10の回転による遠心力により矢印のようにウェーハ10の外側に飛ばされるので、その飛ばされたレジスト液が筒状の外側インナーリング15によってからめとられ、ウェーハ10へのレジスト液の再付着を防止する。このような外側インナーリング(第1リング)15は、保持部11に保持されたウェーハ10の外周の外側を覆い、且つウェーハ10の表面より上方に上端が位置するとともにウェーハ10の裏面より下方に下端を有する筒状で且つ網目状のリングであるとよい。
【0041】
また、
図1に示すレジスト塗布装置100において、第2リング16の形状は、筒状且つ網目状であるとよい。
【0042】
詳細には、第2リング(内側インナーリング)16の形状は、筒状且つ網目状であることにより、ウェーハ10の回転数が3000rpmを超えて、飛ばされたレジストのキシレン成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは内側インナーリング16の内側間及び外側インナーリング15と内側インナーリング16間に捕獲されやすくなる。その結果、その浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することを防止できる。
【0043】
また、
図1に示すレジスト塗布装置100において、保持部11に保持された基板10の裏面を覆う網目状で且つスカート形状のレジスト付着防止部材17を有するとよい。
【0044】
詳細には、レジスト塗布装置が、保持部11に保持された基板(ウェーハ)10の裏面を覆う網目状で且つスカート形状のレジスト付着防止部材を有することにより、
図1に示す矢印のように第1リング(外側インナーリング)15から飛んでくるレジスト液がウェーハ10の裏面に再付着することを防止できる。従って、ウェーハ10の両面へのレジスト再付着を防止することが可能となる。
【0045】
また、
図1に示すレジスト塗布装置100において、第1リング15は、基板10の表面より上方に上端が位置するとともに基板10の裏面より下方に下端を有する筒状のリングであり、第2リング16の形状は、筒状のリングであってもよい。
【0046】
詳細には、本実施形態のレジスト塗布装置100は、第1リング(外側インナーリング)15が筒状のリングであればよく、
図1に示す網目状でなくてもよい(図示せず)。回転している基板(ウェーハ)10に供給されたレジスト液がウェーハ10の回転による遠心力により矢印のようにウェーハ10の外側に飛ばされるので、その飛ばされたレジスト液が筒状の外側インナーリング15によってからめとられ、ウェーハ10へのレジスト液の再付着を防止する。このような外側インナーリング(第1リング)15は、保持部11に保持されたウェーハ10の外周の外側を覆い、且つ基板(ウェーハ)10の表面より上方に上端が位置するとともにウェーハ10の裏面より下方に下端を有する筒状のリングであってもよい。
【0047】
また、第2リング(内側インナーリング)16の形状は、筒状のリングであり、穴が開いていない壁状になっているリングであってもよい(図示せず)。これにより、ウェーハ10の回転数が3000rpmを超えて、飛ばされたレジストのキシレン成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは内側インナーリング16の内側間及び外側インナーリング15と内側インナーリング16間に捕獲されやすくなる。その結果、その浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することを防止できる。
【0048】
また、上記の第1リング15の筒状のリングは、複数の開口部を有しており、第2リング16の筒状のリングは、複数の開口部を有していてもよい。
【0049】
詳細に説明する。
第1リング(外側インナーリング)15の筒状のリングは、複数の開口部を有していてもよい。その複数の開口部は、例えば金属板に打ち抜き加工によって形成されたものでもよく(図示せず)、その複数の開口部の内径は3mm以上20mm以下であるとよい。
【0050】
また、第2リング(内側インナーリング)16の筒状のリングは、複数の開口部を有していてもよい。その複数の開口部は、例えば金属板に打ち抜き加工によって形成されたものでもよく(図示せず)、その複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であるとよい。
ここでいう内径とは、開口部の最も長い部分の内径を意味する。
【0051】
上記の第1リング15及び第2リング16を備えたレジスト塗布装置によれば、ウェーハ10の回転による遠心力により外側に飛ばされたレジスト液が外側インナーリング15の複数の開口部によってからめとられる効率を向上させることができ、その結果、ウェーハ10へのレジスト液の再付着をより効果的に防止できる。また、外側インナーリング15及び内側インナーリング16それぞれが複数の開口部を有するため、レジストのキシレン成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは内側インナーリング16の内側間及び外側インナーリング15と内側インナーリング16間に捕獲される効率を向上させることができ、その結果、その浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することをより効果的に防止できる。
【0052】
また、本実施形態によるレジスト塗布装置の第1リング15は、網目状による複数の開口部を有しており、複数の開口部の内径は3mm以上20mm以下であるとよい。
【0053】
詳細に説明する。
図1に示すように、第1リング(外側インナーリング)15は、網目状による複数の開口部を有している。この複数の開口部の内径は3mm以上20mm以下であることが好ましい。網目状による複数の開口部は、例えば線径0.8mmのSUS(Stainless Used Steel)線が6.35mmピッチの格子形状を有するものであってもよい。なお、内径とは開口部の最も長い部分の内径を意味するので、開口部が格子形状の場合の内径は対角線の長さをいう。このような内径を有することにより、ウェーハ10の回転による遠心力により外側に飛ばされたレジスト液が網目状の外側インナーリング15によってからめとられる効率を向上させることができ、その結果、ウェーハ10へのレジスト液の再付着をより効果的に防止できる。
【0054】
また、本実施形態によるレジスト塗布装置の第2リング16は、網目状による複数の開口部を有しており、複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であるとよい。
【0055】
詳細に説明する。
図1に示すように、第2リング(内側インナーリング)16は、網目状による複数の開口部を有している。この複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であることが好ましい。網目状による複数の開口部は、例えば線径0.43mmのSUS線が2.54mmピッチの格子形状を有するものであってもよい。なお、内径とは開口部の最も長い部分の内径を意味するので、開口部が格子形状の場合の内径は対角線の長さをいう。このような内径を有することにより、レジストのキシレン成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは内側インナーリング16の内側間及び外側インナーリング15と内側インナーリング16間に捕獲される効率を向上させることができ、その結果、その浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することをより効果的に防止できる。
【0056】
また、本実施形態によるレジスト塗布装置のレジスト付着防止部材17は、網目状による複数の開口部を有しており、複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であるとよい。
【0057】
詳細に説明する。
図1に示すように、レジスト付着防止部材17は、網目状による複数の開口部を有している。この複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であることが好ましい。網目状による複数の開口部は、例えば線径0.43mmのSUS線が2.54mmピッチの格子形状を有するものであってもよい。内径とは開口部の最も長い部分の内径を意味する。これにより、第1リング(外側インナーリング)15から飛んでくるレジストがウェーハ10の裏面に再付着することをより効果的に防止できる。
【0058】
また、本実施形態では、レジスト付着防止部材17は、網目状による複数の開口部を有しているが、複数の開口部を有するものであれば、網目状によるものでなくてもよい。
【0059】
詳細に説明する。
レジスト塗布装置100は、保持部11に保持された基板(ウェーハ)10の裏面を覆うスカート形状のレジスト付着防止部材17を有し、そのレジスト付着防止部材17は、複数の開口部を有する。その複数の開口部は、例えば金属板に打ち抜き加工によって形成されたものでもよく(図示せず)、その複数の開口部の内径は1mm以上10mm以下であるとよい。
【0060】
上述したレジスト付着防止部材17は、SUS金網にテフロン(登録商標)コートを施したものであるとよい。
【0061】
詳細には、レジスト付着防止部材17の材質が、SUS金網にテフロン(登録商標)コートを施したものであることによってレジスト付着防止部材17に付着したレジストを洗浄することが可能となり、そのレジスト付着防止部材17を繰り返し用いることができる。また、このような材質を用いることで、レジストがウェーハ10の裏面に再付着することを効果的に防止できる。
【0062】
上述した第1リング(外側インナーリング)15は、SUSにテフロン(登録商標)コートしたものであるとよい。これにより、ウェーハ10へのレジスト液の再付着を防止できる。また、第2リング(内側インナーリング)16は、SUSにテフロン(登録商標)コートしたものであるとよい。これにより、前述した浮遊レジストがウェーハ10の表面に再付着することを防止できる。
なお、本実施形態では、第1リング15及び第2リング16はSUSにテフロン(登録商標)コートしたものを用いているが、これに限定されず、第1リング及び第2リングは、Alにアルマイト処理されたものを用いてもよい。
【0063】
上述したレジスト液にはキシレンが含まれていることも可能である。
【0064】
本実施形態では、ノズル14からウェーハ10の表面に供給されるレジスト液にはキシレンが含まれている。このレジスト塗布装置は、レジスト液のキシレン成分が揮発することで、レジストが蜘蛛の糸のようにウェーハ10上に浮遊することになり、この浮遊レジストがウェーハ10に再付着するのを防止するものである。ただし、レジスト液にキシレン以外の成分が含まれることで同様の浮遊レジストが発生する場合でも上記のレジスト塗布装置は効果を奏するものである。
【0065】
なお、本実施形態では、上述したようなレジスト塗布装置を説明したが、以下のように変更して実施することも可能である。
変形例1のレジスト塗布装置は、基板10を回転自在に保持する保持部11と、基板10を回転させる回転駆動機構12と、保持部11に保持された基板10の上方に配置され、レジスト液を基板10の表面に供給するノズル14と、第1リング15又は第2リング16のいずれか一方と、を有している。
上記の第1リング15は、保持部11に保持された基板10の外周の外側に位置している。また、上記の第2リング16は、基板10の外周より大きい内径を有し、且つ第1リング15の内径より小さい外径を有している。
上記変形例1によれば、基板10の外周の外側を覆う第1リング15と、基板10の外周より少し大きい内径を有する第2リング16を配置する。このような二重インナーリング方式により、基板10の回転数が3000rpmを超えて、飛ばされたレジストのキシレン成分が揮発することで蜘蛛の糸状の浮遊レジストが発生しても、この浮遊レジストは第2リング16の内側間及び第1リング15と第2リング16間に捕獲される。その結果、その浮遊レジストが基板10の表面に再付着することを防止できる。
また、第1リング15は、保持部11に保持された基板10の外周の外側を覆っているとよい。また、第2リング16は、保持部11に保持された基板10の表面より上方に配置されているとよい。
また、第1リング15は、保持部11に保持された基板10の表面より上方に配置されていてもよい。第2リング16は、保持部11に保持された基板10の外周の外側を覆っていてもよい。
また、平面視において、第1リング15と第2リング16との間に1つ以上の第3リング(図示せず)を有していてもよい。これにより、糸状のレジストを捕獲する空間を細かくし、また空間の数を増やすことができ、浮遊レジストが基板10の表面に再付着することを防止できる。
【符号の説明】
【0066】
10 基板(ウェーハ)
11 保持部
12 回転駆動機構
14 ノズル
15 第1リング
16 第2リング
17 レジスト付着防止部材