(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167538
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/337 20060101AFI20231116BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L29/80 C
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078806
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】森朝 文也
(72)【発明者】
【氏名】松原 未織
(72)【発明者】
【氏名】仙田 悟
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD04
5F102GJ01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102HC01
(57)【要約】
【課題】AlGaN層の電界集中を抑制することで、リーク電流の増加及び耐圧の劣化を抑制し、また電流コラプス現象を抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明は、n型GaN層12と、n型GaN層12上に配置された第1のn型AlGaN層13と、第1のn型AlGaN層13上に配置された第2のn型AlGaN層21と、第1のn型AlGaN層13上に配置され、第2のn型AlGaN層21の一方側に位置するソース電極15と、第1のn型AlGaN層13上に配置され、第2のn型AlGaN層21の他方側に位置するドレイン電極16と、第2のn型AlGaN層21上に配置され、第2のn型AlGaN層21上の中央より前記ソース電極15側に位置するp型AlGaN層22と、p型AlGaN層22上に配置されたゲート電極18と、を有する半導体装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型GaN層と、
前記n型GaN層上に配置された第1のn型AlGaN層と、
前記第1のn型AlGaN層上に配置された第2のn型AlGaN層と、
前記第1のn型AlGaN層上に配置され、前記第2のn型AlGaN層の一方側に位置するソース電極と、
前記第1のn型AlGaN層上に配置され、前記第2のn型AlGaN層の他方側に位置するドレイン電極と、
前記第2のn型AlGaN層上に配置され、前記第2のn型AlGaN層上の中央より前記ソース電極側に位置するp型AlGaN層と、
前記p型AlGaN層上に配置されたゲート電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
n型GaN層と、
前記n型GaN層上に配置されたn型AlGaN層と、
前記n型AlGaN層上に配置された第1のp型AlGaN層と、
前記n型AlGaN層上に配置され、前記第1のp型AlGaN層の一方側に位置するソース電極と、
前記n型AlGaN層上に配置され、前記第1のp型AlGaN層の他方側に位置するドレイン電極と、
前記第1のp型AlGaN層上に配置され、前記第1のp型AlGaN層上の中央より前記ソース電極側に位置する第2のp型AlGaN層と、
前記第2のp型AlGaN層上に配置されたゲート電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2のn型AlGaN層の組成は、AlxGa1-XNであり、xは0.01以上0.25以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1又は3において、
前記第2のn型AlGaN層のAl濃度は、5原子%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記第1のp型AlGaN層の組成は、AlxGa1-xNであり、xは0.01以上0.25以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2又は5において、
前記第1のp型AlGaN層のAl濃度は、5原子%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1、2、3及び5のいずれか一項において、
前記n型GaN層はバッファー層上に配置されており、
前記バッファー層は基板上に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記基板は、Si基板、サファイア基板、SiC基板、GaN基板、AlN基板又はGa2O3基板であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1又は3において、
前記第1のn型AlGaN層、前記第2のn型AlGaN層及び前記p型AlGaN層の各々は、1nm以上60nm以下の範囲内の厚さを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項2又は5において、
前記n型AlGaN層、前記第1のp型AlGaN層及び前記第2のp型AlGaN層の各々は、1nm以上60nm以下の範囲内の厚さを有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置は、HEMT(高電子移動度トランジスタ)としての分極接合GaN系FETである。この分極接合GaN系FETは、Si基板上に形成されたバッファー層と、このバッファー層上に形成された第1のn型GaN層と、この第1のn型GaN層上に形成されたn型AlGaN層と、このn型AlGaN層上に形成された第2のn型GaN層を有している。そのn型AlGaN層上には、第2のn型GaN層の一方側に位置するソース電極及び第2のn型GaN層の他方側に位置するドレイン電極が形成されている。第2のn型GaN層上にはp型GaN層が形成されており、このp型GaN層上にはゲート電極が形成されている。これに関連する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
上記の従来の分極接合GaN系FETでは、バッファー層上に、エピタキシャル成長法により第1のGaN層、AlGaN層、第2のGaN層が順に形成される。このエピタキシャル成長の時に、第1のGaN層、AlGaN層、第2のGaN層にSiやCのような不純物が混入され、これらの層がn型化される。それにより、n型AlGaN層とn型GaN層に電界集中を招き、結果としてリーク電流の増加及び耐圧の劣化を招くことがある。また、これらの層のn型化は、電流コラプスの抑制を阻害することがある。
【0004】
そこで、上記の半導体装置において、n型AlGaN層とn型GaN層の電界集中を抑制し、リーク電流の増加及び耐圧の劣化を抑制すること、また電流コラプス現象を抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の種々の態様は、AlGaN層の電界集中を抑制することで、リーク電流の増加及び耐圧の劣化を抑制し、また電流コラプス現象を抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0008】
[1]n型GaN層と、
前記n型GaN層上に配置された第1のn型AlGaN層と、
前記第1のn型AlGaN層上に配置された第2のn型AlGaN層と、
前記第1のn型AlGaN層上に配置され、前記第2のn型AlGaN層の一方側に位置するソース電極と、
前記第1のn型AlGaN層上に配置され、前記第2のn型AlGaN層の他方側に位置するドレイン電極と、
前記第2のn型AlGaN層上に配置され、前記第2のn型AlGaN層上の中央より前記ソース電極側に位置するp型AlGaN層と、
前記p型AlGaN層上に配置されたゲート電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0009】
[2]n型GaN層と、
前記n型GaN層上に配置されたn型AlGaN層と、
前記n型AlGaN層上に配置された第1のp型AlGaN層と、
前記n型AlGaN層上に配置され、前記第1のp型AlGaN層の一方側に位置するソース電極と、
前記n型AlGaN層上に配置され、前記第1のp型AlGaN層の他方側に位置するドレイン電極と、
前記第1のp型AlGaN層上に配置され、前記第1のp型AlGaN層上の中央より前記ソース電極側に位置する第2のp型AlGaN層と、
前記第2のp型AlGaN層上に配置されたゲート電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0010】
[3]上記[1]において、
前記第2のn型AlGaN層の組成は、AlxGa1-XNであり、xは0.01以上0.25以下であることを特徴とする半導体装置。
【0011】
[4]上記[1]又は[3]において、
前記第2のn型AlGaN層のAl濃度は、5原子%以下であることを特徴とする半導体装置。
【0012】
[5]上記[2]において、
前記第1のp型AlGaN層の組成は、AlxGa1-xNであり、xは0.01以上0.25以下であることを特徴とする半導体装置。
【0013】
[6]上記[2]又は[5]において、
前記第1のp型AlGaN層のAl濃度は、5原子%以下であることを特徴とする半導体装置。
【0014】
[7]上記[1]、[2]、[3]及び[5]のいずれか一項において、
前記n型GaN層はバッファー層上に配置されており、
前記バッファー層は基板上に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【0015】
[8]上記[7]において、
前記基板は、Si基板、サファイア基板、SiC基板、GaN基板、AlN基板又はGa2O3基板であることを特徴とする半導体装置。
【0016】
[9]上記[1]において、
前記第1のn型AlGaN層、前記第2のn型AlGaN層及び前記p型AlGaN層の各々は、1nm以上60nm以下の範囲内の厚さを有することを特徴とする半導体装置。
【0017】
[10]上記[2]又は[5]において、
前記n型AlGaN層、前記第1のp型AlGaN層及び前記第2のp型AlGaN層の各々は、1nm以上60nm以下の範囲内の厚さを有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記[1]の半導体装置によれば、n型GaN層12の上に第1のn型AlGaN層13を積層すると、格子整合する。つまり、下地原子配列に上地原子配列が一致する。また第2のn型AlGaN層21はその下層の第1のn型AlGaN層13とAlGaNという点で同じ材料であるため、第2のn型AlGaN層21がエピタキシャル成長する際に格子整合する。つまり、エピタキシャル成長する際に、格子定数の整合性がよく、歪が生じにくいため、第2のn型AlGa21に表面欠陥や格子欠陥が生じにくい。それにより、トランジスタがオフ時のリーク電流が減少すると考えられる。これとともに、電流コラプス現象である2次元電子ガス(2DEG)の電子がポテンシャル障壁を超えて第1のn型AlGaN層に移動しても、第2のn型AlGaN層の表面欠陥準位に捕獲されることを抑制できる。
【0019】
本発明の上記[2]の半導体装置によれば、第1のp型AlGaN層がp型キャリアを有するため、トランジスタのオフ時のバランスが良くなるので、耐圧の劣化を抑制できる。また、第1のp型AlGaN層はその下層のn型AlGaN層とAlGaNという点で同じ材料であるため、第1のp型AlGaN層がエピタキシャル成長する際に格子整合する。つまり、エピタキシャル成長する際に、格子定数の整合性がよく、歪が生じにくいため、第1のp型AlGaN層に表面欠陥や格子欠陥が生じにくい。それにより、トランジスタがオフ時のリーク電流が減少すると考えられる。これとともに、電流コラプス現象である2次元電子ガス(2DEG)の電子がポテンシャル障壁を超えてn型AlGaN層に移動しても、第1のp型AlGaN層aに内在する欠陥準位に捕獲されることを抑制でき、その結果、電流コラプス現象を抑制できる。
【0020】
本発明の上記[4]の半導体装置によれば、第2のn型AlGaN層のAl濃度は、5原子%以下とすることで、オフ時のドレインソースリークを減らすことができる。
【0021】
本発明の上記[6]の半導体装置によれば、第1のp型AlGaN層のAl濃度を5原子%以下とすることで、オフ時のドレインソースリークを減らすことができる。
【0022】
また、本発明の種々の態様によれば、AlGaN層の電界集中を抑制することで、リーク電流の増加及び耐圧の劣化を抑制し、また電流コラプス現象を抑制できる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一態様に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一態様に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一態様に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。
【0026】
この半導体装置は、n型GaN層12と、n型GaN層12上に配置された第1のn型AlGaN層13と、第1のn型AlGaN層13上に配置された第2のn型AlGaN層21と、第1のn型AlGaN層13上に配置され、第2のn型AlGaN層21の一方側に位置するソース電極15と、第1のn型AlGaN層13上に配置され、第2のn型AlGaN層21の他方側に位置するドレイン電極16と、第2のn型AlGaN層21上に配置され、第2のn型AlGaN層21上の中央よりソース電極15側に位置するp型AlGaN層22と、p型AlGaN層22上に配置されたゲート電極18と、を有する。
【0027】
以下に詳細に説明する。
図1に示す半導体装置はHEMT(高電子移動度トランジスタ)としての分極接合GaN系FET(Field Effect Transistor)である。
分極接合GaN系FETは基板10を有し、この基板10はSi基板、サファイア基板、SiC基板、GaN基板、AlN基板又はGa
2O
3基板であるとよい。基板10の上にはバッファー層11が形成されている。このバッファー層11は、超格子構造(SLS)と呼ばれ、例えばGaN混晶いわゆるAlGaN、InGaN、AlInGaN又はその複数の組み合わせで形成されるとよい。バッファー層11上にはn型GaN層12が配置されている。
【0028】
n型GaN層(n-GaN)12上には第1のn型AlGaN層(n-AlGaN1)13が配置されている。第1のn型AlGaN層13の厚さは1nm以上20nm以下であることが好ましい。
【0029】
第1のn型AlGaN層13上には第2のn型AlGaN層(n-AlGaN2)21が配置されている。第2のn型AlGaN層21の厚さは1nm以上15nm以下であることが好ましい。
【0030】
第1及び第2のn型AlGaN層13、21の各々は、Al原子を含む混合ガスであるTMA(トリメチルアルミニウム:(CH?)?Al)とともにTMG(トリメチルガリウム:Ga(CH3)3)をチャンバー内に導入することで、GaNとなるところをGa原子とAl原子が置換されることで形成される。なお、TMGだけをチャンバー内に導入するとn-GaNが成長する。
【0031】
第1のn型AlGaN層13のピエゾ効果で分極することにより、n型GaN層12と第1のn型AlGaN層13との間の界面の近傍における第1のn型AlGaN層13に正の固定電荷が誘起され、また、第1のn型AlGaN層13と第2のn型AlGaN層21との間の界面の近傍における第1のn型AlGaN層13に負の固定電荷が誘起される。このため、第1のn型AlGaN層13と第2のn型AlGaN層21との間の界面の近傍における第2のn型AlGaN層21に2次元正孔ガス(2DHG)30が形成され、かつ、n型GaN層12と第1のn型AlGaN層13との間の界面の近傍におけるn型GaN層12に2次元電子ガス(2DEG)31が形成される。その2次元電子ガス(2DEG)31がトランジスタのチャネルとなる。
【0032】
第1のn型AlGaN層13上にはソース電極(S)15が配置されており、このソース電極15は第2のn型AlGaN層21の一方側に位置している。
【0033】
また、第1のn型AlGaN層13上にはドレイン電極(D)16が配置されており、このドレイン電極16は第2のn型AlGaN層21の他方側に位置している。なお、ソース電極15及びドレイン電極16は、例えば、Ti膜の上にNi膜、Au膜、Al膜などを積層した積層膜からなるものであるとよい。
【0034】
第2のn型AlGaN層21上にはp型AlGaN層(p-AlGaN2)22が配置されており、p型AlGaN層22は第2のn型AlGaN層21上の中央よりソース電極15側に位置している。p型AlGaN層22の厚さは1nm以上20nm以下であることが好ましい。
【0035】
p型AlGaN層22は、Al原子を含む混合ガスであるTMA(トリメチルアルミニウム:(CH?)?Al)とともにTMG(トリメチルガリウム:Ga(CH3)3)及びCp2Mgガス(シクロペンタジエニルマグネシウムガス:C10H10Mg10)をチャンバー内に導入することで形成される。
【0036】
p型AlGaN層22上にはゲート電極(G)18が配置されており、このゲート電極18は例えばNi膜上に他の金属膜を積層した積層膜からなるものであるとよい。
【0037】
本実施形態によれば、n型GaN層12の上に第1のn型AlGaN層13を積層すると、格子整合する。つまり、下地原子配列に上地原子配列が一致する。また第2のn型AlGaN層21はその下層の第1のn型AlGaN層13とAlGaNという点で同じ材料であるため、第2のn型AlGaN層21がエピタキシャル成長する際に格子整合する。つまり、エピタキシャル成長する際に、格子定数の整合性がよく、歪が生じにくいため、第2のn型AlGaN層21に表面欠陥や格子欠陥が生じにくい。それにより、トランジスタがオフ時のリーク電流が減少すると考えられる。これとともに、電流コラプス現象である2次元電子ガス(2DEG)31の電子がポテンシャル障壁を超えて第1のn型AlGaN層13に移動しても、第2のn型AlGaN層21の表面欠陥準位に捕獲されることを抑制できる。
【0038】
図1に示す第2のn型AlGaN層21の組成は、Al
xGa
1-xNであり、xは0.01以上0.25以下であるとよい。Al組成を1~25%の範囲とする理由は、Al組成が小さいと閾値電圧Vthがプラスの方へシフトするので、ノーマーリオフN-offデバイスとなる一つの要因となる。N-offにする方法としては、Al組成を極力小さくするか、第1のp型AlGaN膜21の膜厚を小さくするか、の大きく2通りの方法がる。ノーマーリオフN-offデバイスとする場合、両者ともに小さくすれば良いというわけではなく、バランスをとることが好ましい。両者を小さくしていくと2DEGの量が減り、第1のn型AlGaN層13とのコンタクトが取りづらくなったり、第1のp型AlGaN膜21の膜厚(結晶)が形成されにくくなると考えられる。「膜厚(結晶)が形成されにくくなる」とは、必要な物性が機能しない膜厚や結晶となってしまうことである。
【0039】
図1に示す第2のn型AlGaN層21のAl濃度は、5原子%以下であることが好ましい。例えば、第2のn型AlGaN層21の組成をAl
0.05Ga
0.95Nにした場合、オフ時のドレインソースリークが減る。ノーマリーオフデバイスでのIDSSの値が小さくなる。
【0040】
第1のn型AlGaN層13、第2のn型AlGaN層21及びp型AlGaN層22の各々は、1nm以上60nm以下の範囲内の厚さを有するとよい。p型AlGaN層22の厚さをこのような範囲とする理由は、(1)p型を形成するのに十分なホール又は電子の量を有するために必要となる厚さであること、(2)電界集中による破壊を防止するのに必要な厚さであること、(3)反りやクラックの発生を抑制できる下地との相関を保つために必要な厚さであること、例えば、下地が薄いのに上地が厚いと反りやクラックが発生するので、そのような反りやクラックの発生を抑制できる下地との相関を保つこと、(4)必要な結晶性を維持するために必要となる厚さであること、等である。
【0041】
第1のn型AlGaN層13のより好ましい厚さは1nm以上25nm以下の範囲内である。第1のn型AlGaN層13の厚さは小さくなるにつれて2DEG量が減少し、閾値電圧Vthがプラスにシフトするので、1nm以上25nm以下の範囲が好ましい。
【0042】
第2のn型AlGaN層21のより好ましい厚さは1nm以上30nm以下の範囲内である。その理由は、第2のn型AlGaN層21は電界集中で壊れない範囲でかつ耐圧が維持できる厚さであればよく、シミュレーション結果より下限値は1nmであれば必要な機能性を有し、製造プロセス的にも作製可能な厚さであること、等である。
【0043】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の一態様に係る半導体装置を模式的に示す断面図であり、
図1と同一部分には同一符号を付す。
【0044】
この半導体装置は、n型GaN層12aと、前記n型GaN層12a上に配置されたn型AlGaN層13と、前記n型AlGaN層13上に配置された第1のp型AlGaN層21aと、前記n型AlGaN層13上に配置され、前記第1のp型AlGaN層21aの一方側に位置するソース電極15と、前記n型AlGaN層13上に配置され、前記第1のp型AlGaN層21aの他方側に位置するドレイン電極16と、前記第1のp型AlGaN層21a上に配置され、前記第1のp型AlGaN層21a上の中央より前記ソース電極15側に位置する第2のp型AlGaN層22と、前記第2のp型AlGaN層22上に配置されたゲート電極18と、を有する。
【0045】
以下に詳細に説明する。
図2に示す半導体装置はHEMT(高電子移動度トランジスタ)としての分極接合GaN系FETである。
分極接合GaN系FETは第1の実施形態と同様の基板10及びバッファー層11を有している。バッファー層11上にはn型GaN層12aが配置されている。
【0046】
n型GaN層(n-GaN)12a上にはn型AlGaN層(n-AlGaN1)13が配置されている。n型AlGaN層13の厚さは1nm以上20nm以下であることが好ましい。
n型AlGaN層13及びn型GaN層12aの各々の形成方法は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
n型AlGaN層13上には第1のp型AlGaN層(p-AlGaN1)21aが配置されている。第1のp型AlGaN層21aの厚さは1nm以上15nm以下であることが好ましい。
【0048】
n型AlGaN層13のピエゾ効果で分極することにより、n型GaN層12aとn型AlGaN層13との間の界面の近傍におけるn型AlGaN層13に正の固定電荷が誘起され、また、n型AlGaN層13と第1のp型AlGaN層21aとの間の界面の近傍におけるn型AlGaN層13に負の固定電荷が誘起される。このため、n型AlGaN層13と第1のp型AlGaN層21aとの間の界面の近傍における第1のp型AlGaN層21aに2次元正孔ガス(2DHG)30が形成され、かつ、n型GaN層12aとn型AlGaN層13との間の界面の近傍におけるn型GaN層12aに2次元電子ガス(2DEG)31が形成される。その2次元電子ガス(2DEG)31がトランジスタのチャネルとなる。
【0049】
n型AlGaN層13上にはソース電極(S)15が配置されており、このソース電極15は第1のp型AlGaN層21aの一方側に位置している。
【0050】
また、n型AlGaN層13上にはドレイン電極(D)16が配置されており、このドレイン電極16は第1のp型AlGaN層21aの他方側に位置している。なお、ソース電極15及びドレイン電極16は、例えば、Ti膜の上にNi膜、Au膜、Al膜などを積層した積層膜からなるものであるとよい。
【0051】
第1のp型AlGaN層21a上には第2のp型AlGaN層(p-AlGa2)22が配置されており、第2のp型AlGaN層22は第1のp型AlGaN層21a上の中央よりソース電極15側に位置している。第2のp型AlGaN層22の厚さは1nm以上20nm以下であることが好ましい。
第1のp型AlGaN層21a及び第2のp型AlGaN層22の各々の形成方法は、第1の実施形態のp型AlGaN層22と同様である。
【0052】
第2のp型AlGaN層22上にはゲート電極(G)18が配置されており、このゲート電極18は例えばNi膜上に他の金属膜を積層した積層膜からなるものであるとよい。
【0053】
本実施形態によれば、第1のp型AlGaN層21aがp型キャリアを有するため、トランジスタのオフ時のバランスが良くなるので、耐圧の劣化を抑制できる。即ち、高耐圧となる。
【0054】
また、第1のp型AlGaN層21aはその下層のn型AlGaN層13とAlGaNという点で同じ材料であるため、第1のp型AlGaN層21aがエピタキシャル成長する際に格子整合する。つまり、エピタキシャル成長する際に、格子定数の整合性がよく、歪が生じにくいため、第1のp型AlGaN層21aに表面欠陥や格子欠陥が生じにくい。それにより、トランジスタがオフ時のリーク電流が減少すると考えられる。これとともに、電流コラプス現象である2次元電子ガス(2DEG)31の電子がポテンシャル障壁を超えてn型AlGaN層13に移動しても、第1のp型AlGaN層21aに内在する欠陥準位に捕獲されることを抑制できる。
【0055】
また、従来技術の分極接合GaN系FETにおける第2のn型GaN層を、本実施形態ではp型キャリアを有する第1のp型AlGaN層21aにすることで、トランジスタがオン状態の時に、高い電圧で加速された2次元電子ガス(2DEG)31の電子がポテンシャル障壁を超えてn型AlGaN層13に移動しても、その電子が第1のp型AlGaN層21aのホールと中和されるため、n型AlGaN層13の下部が負に帯電することを抑制できると考えられる。そのため、n型AlGaN層13の直下の2次元電子ガス(2DEG)31のチャネル内の電子が空乏化されるのを抑制できる。その結果、チャネル抵抗が高くなることを抑制でき、ドレイン電流が減少することを抑制でき、オン抵抗が増加することを抑制でききる。従って、電流コラプス現象を抑制することが可能となる。別言すれば、第1のp型AlGaN層21aは、n型AlGaN層13のピエゾ効果での分極のバランスをとる機能を有するとも考えられる。以上の説明により低損失GaN系FETを実現できる。
【0056】
図2に示す第1のp型AlGaN層21aの組成は、Al
xGa
1-xNであり、xは0.01以上0.25以下であるとよい。Al組成を1~25%の範囲とする理由は、Al組成が小さいと閾値電圧Vthがプラスの方へシフトするので、ノーマーリオフN-offデバイスとなる一つの要因となる。N-offにする方法としては、Al組成を極力小さくするか、第1のp型AlGaN膜21aの膜厚を小さくするか、の大きく2通りの方法がる。ノーマーリオフN-offデバイスとする場合、両者ともに小さくすれば良いというわけではなく、バランスをとることが好ましい。両者を小さくしていくと2DEGの量が減り、n型AlGaN層13とのコンタクトが取りづらくなったり、第1のp型AlGaN膜21aの膜厚(結晶)が形成されにくくなると考えられる。「膜厚(結晶)が形成されにくくなる」とは、必要な物性が機能しない膜厚や結晶となってしまうことである。
【0057】
図2に示す第1のp型AlGaN層21aのAl濃度は、5原子%以下であることが好ましい。例えば、第1のn型AlGaN層21aの組成をAl
0.05Ga
0.95Nにした場合、オフ時のドレインソースリークが減る。ノーマリーオフデバイスでのIDSSの値が小さくなる。
【0058】
n型AlGaN層13、第1のp型AlGaN層21a及び第2のp型AlGaN層22の各々は、1nm以上60nm以下の範囲内の厚さを有するとよい。第1のp型AlGaN層21a及び第2のp型AlGaN層22の各々の厚さをこのような範囲とする理由は、(1)p型を形成するのに十分なホール又は電子の量を有するために必要となる厚さであること、(2)電界集中による破壊を防止するのに必要な厚さであること、(3)反りやクラックの発生を抑制できる下地との相関を保つために必要な厚さであること、例えば、下地が薄いのに上地が厚いと反りやクラックが発生するので、そのような反りやクラックの発生を抑制できる下地との相関を保つこと、(4)必要な結晶性を維持するために必要となる厚さであること、等である。
【0059】
n型AlGaN層13のより好ましい厚さは1nm以上25nm以下である。n型AlGaN層13の厚さは小さくなるにつれて2DEG量が減少し、閾値電圧Vthがプラスにシフトするので、1nm以上25nm以下の範囲が好ましい。
第1のp型AlGaN層21aのより好ましい厚さは1nm以上30nm以下である。
【符号の説明】
【0060】
10 基板
11 バッファー層
12 n型GaN層(n-GaN)
12a n型GaN層12a
13 第1のn型AlGaN層、n型AlGaN層(n-AlGaN1)
15 ソース電極(S)
16 ドレイン電極(D)
18 ゲート電極(G)
21 第2のn型AlGaN層(n-AlGaN2)
21a 第1のp型AlGaN層(p-AlGaN1)
22 p型AlGaN層、第2のp型AlGaN層(p-AlGaN2)