(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167547
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電力供給システムおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231116BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B41J2/175 161
B41J2/175 175
B41J2/175 119
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078819
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土岐 正▲寛▼
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC19
2C056EC36
2C056EC38
2C056FA10
2C056KC02
2C056KC05
(57)【要約】
【課題】突入電流の発生を防止しつつ、目標とする電力が負荷回路に供給されるまでに要する時間を短縮する。
【解決手段】本開示の一形態によれば、電力供給システムが提供される。この電力供給システムは、印刷装置に設けられる電力供給システムであって、メモリーチップを有し前記印刷装置に装着されるカートリッジに、電力を供給する電力供給システムである。電力供給システムは、前記メモリーチップへの電力の供給を開始する開始時刻において、開始電流値で前記メモリーチップに電力を供給する。その後、電力供給システムは、前記開始時刻からあらかじめ定められた第1時間が経過した後に、前記開始電流値よりも大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第1電圧を超えた後に、前記第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置に設けられる電力供給システムであって、メモリーチップを有し前記印刷装置に装着されるカートリッジに、電力を供給する電力供給システムであり、
前記メモリーチップへの電力の供給を開始する開始時刻において、開始電流値で前記メモリーチップに電力を供給し、
前記開始時刻からあらかじめ定められた第1時間が経過した後に、前記開始電流値よりも大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第1電圧を超えた後に、前記第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する、電力供給システム。
【請求項2】
請求項1記載の電力供給システムであって、
電力線において並列に設けられる複数のスイッチを備え、
前記複数のスイッチのうち、前記開始時刻においてONにされるスイッチの数は、前記開始時刻から前記第1時間が経過した後、または、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に、ONにされるスイッチの数よりも少ない、電力供給システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力供給システムであって、
前記第1電流値による前記メモリーチップへの電力の供給は、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に行われる、電力供給システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給システムであって、
前記開始時刻からあらかじめ定められた第2時間であって前記第1時間より大きい第2時間が経過した後に、前記第1電流値よりも大きい第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第2電圧であって前記第1電圧より大きい第2電圧を超えた後に、前記第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給する、電力供給システム。
【請求項5】
メモリーチップを有し印刷装置に装着されるカートリッジに前記印刷装置から電力を供給する方法であって、
(a)前記メモリーチップへの電力の供給を開始する開始時刻において、開始電流値で前記メモリーチップに電力を供給する工程と、
(b)前記開始時刻からあらかじめ定められた第1時間が経過した後に、前記開始電流値よりも大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、
前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第1電圧を超えた後に、前記第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する工程と、を備える方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、
前記印刷装置は、電力線において並列に設けられる複数のスイッチを備え、
前記複数のスイッチのうち、前記開始時刻においてONにされるスイッチの数は、前記開始時刻から前記第1時間が経過した後、または、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に、ONにされるスイッチの数よりも少ない、方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、
前記工程(b)における前記第1電流値による前記メモリーチップへの電力の供給は、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に行われる、方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、
(c)前記開始時刻からあらかじめ定められた第2時間であって前記第1時間より大きい第2時間が経過した後に、前記第1電流値よりも大きい第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、
前記メモリーチップの前記電源電圧があらかじめ定められた第2電圧であって前記第1電圧より大きい第2電圧を超えた後に、前記第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給する、工程を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力供給システムおよび電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、突入電流による影響を低減する電源供給装置が存在する。特許文献1の電源供給装置においては、FET駆動トランジスターに供給されるゲート信号をパルス幅制御することで、負荷回路に接続されたFETの出力の実質的な電圧を徐々に上げる。その間に、負荷回路内に電荷が蓄えられる。その後、パルス幅制御におけるデューティー比は、100%ONとされる。その結果、負荷回路に対する電力の供給がスムーズに行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術においては、パルス幅制御を行うため、FET駆動トランジスターに供給されるゲート信号をオフにする時間区間が必要とされる。そして、パルス幅制御においては、その制御回路において実現可能なONおよびOFFの最短の時間が存在する。このため、ゲート信号をオフにする時間区間の分だけ、目標とする電力が負荷回路に供給されるまでに要する時間が、長くなる。
【0005】
また、電力線およびグランドには、微小な抵抗が存在する。特許文献1の技術においては、ゲート信号がオンである時間区間においては、最終的な供給電位レベルと同じ電圧が、電力線およびグランドで構成される回路に付与される。その結果、電力の供給が開始された直後には、それらの微小な抵抗により、グランドの電位がわずかに上昇する。このため、他の信号線においては、グランドに対して相対的に電圧がわずかに低下する。すなわち、電力の供給が開始された直後には、他の信号線において、電圧の立下りが生じる。たとえば、プリンターの電源供給装置から、プリンターに設けられているヘッド上のインクカートリッジの負荷回路に電力を供給する場合には、電源供給装置から負荷回路までの電力線およびグランドの距離は、他の回路間の距離に比べて大幅に大きい。このため、その間の抵抗に起因する電力供給開始時の電圧の立下りは、無視できないものとなる。
【0006】
さらに、特許文献1の技術においては、FET駆動トランジスターに供給されるゲート信号をパルス幅制御するためのロジック回路を設ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、電力供給システムが提供される。この電力供給システムは、印刷装置に設けられる電力供給システムであって、メモリーチップを有し前記印刷装置に装着されるカートリッジに、電力を供給する電力供給システムである。電力供給システムは、前記メモリーチップへの電力の供給を開始する開始時刻において、開始電流値で前記メモリーチップに電力を供給する。その後、電力供給システムは、前記開始時刻からあらかじめ定められた第1時間が経過した後に、前記開始電流値よりも大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第1電圧を超えた後に、前記第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】印刷システム1000の概略構成を示す説明図である。
【
図2】インクカートリッジ100の構成を示す斜視図である。
【
図3】印刷装置500の主制御部590とインクカートリッジ100のメモリーチップ130との接続関係を示すブロック図である。
【
図4】印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【
図5】印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の、電源端子1382の電圧を示すグラフGV1を示す図である。
【
図6】第2実施形態において、印刷装置500の主制御部590からメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態において、印刷装置500の主制御部590からメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態において、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の、電源端子1382の電圧を示すグラフGV3を示す図である。
【
図9】第4実施形態において、印刷装置500の主制御部590からメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.ハードウェア構成:
図1は、印刷システム1000の概略構成を示す説明図である。印刷システム1000は、印刷装置500と、複数のインクカートリッジ100と、コンピューター700と、を備えている。
【0010】
印刷装置500は、インクを印刷媒体PAに吐出して印刷を行う。印刷装置500は、具体的には、インクジェットプリンターである。印刷装置500は、複数のインクカートリッジ100を着脱可能に装着される。印刷装置500は、コンピューター700と接続されている。印刷装置500は、副走査送り機構520と、主走査送り機構530と、ヘッド駆動機構540と、操作部570と、バス580、主制御部590と、を備えている。
【0011】
副走査送り機構520は、印刷媒体PAを副走査方向に搬送する。副走査送り機構520は、紙送りモーター522とローラー526とを備えている。紙送りモーター522の回転がローラー526に伝達されることによって印刷媒体PAが副走査方向に搬送される。
【0012】
主走査送り機構530は、ヘッド駆動機構540のキャリッジ543を、ローラー526の軸方向である主走査方向に往復動させる。主走査送り機構530は、キャリッジモーター532と、摺動軸534と、駆動ベルト536と、プーリー538と、を備えている。
【0013】
摺動軸534は、ローラー526の軸と並行に設けられている。摺動軸534は、駆動ベルト536に固定されたキャリッジ543を、摺動可能に保持している。駆動ベルト536は、キャリッジモーター532の出力軸とプーリー538とを接続している。駆動ベルト536は、無端ベルトである。キャリッジモーター532の出力軸の回転運動が、駆動ベルト536を介して、往復動としてキャリッジ543に伝達される。その結果、キャリッジ543は、摺動軸534に沿って主走査方向に往復動される。
【0014】
ヘッド駆動機構540は、インクカートリッジ100からインクを受け取って、インクを印刷媒体PAに吐出する。ヘッド駆動機構540は、キャリッジ543を備えている。
【0015】
キャリッジ543は、インクカートリッジ100を着脱可能に装着されて、インクカートリッジ100から受け取るインクを印刷媒体PAに吐出する。キャリッジ543は、ホルダー544と、印刷ヘッド545と、副制御基板549と、を備える。
【0016】
ホルダー544は、6個のインクカートリッジ100A~100Fを保持することができる。インクカートリッジ100A~100Fには、異なる色または種類のインクが収容されている。本明細書では、インクカートリッジ100A~100Fを区別せずにインクカートリッジに言及する場合には、インクカートリッジ100を表記する。
【0017】
印刷ヘッド545は、ホルダー544に保持されたインクカートリッジ100に接続されて、インクカートリッジ100から受け取るインクを印刷媒体PAに吐出する。副制御基板549は、印刷ヘッド545を制御する。
【0018】
操作部570は、ユーザーによって操作されて、ユーザーからの指示を主制御部590に伝える。
【0019】
主制御部590は、上記の各機構を制御して印刷処理を実現する(
図1の中段左部参照)。主制御部590は、バス580を介して、キャリッジ543の副制御基板549およびインクカートリッジ100のメモリーチップ130と接続されている。主制御部590は、操作部570と接続されている。主制御部590は、有線または無線により、コンピューター700に接続されている。主制御部590は、コンピューター700から印刷ジョブを受信し、受信した印刷ジョブの内容に基づいて、上記の各機構を制御して印刷動作を実行する。
【0020】
図2は、インクカートリッジ100の構成を示す斜視図である。
図2に、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。Z軸正方向は鉛直下方である。
図2においては、X方向とY方向とに平行な水平面に印刷装置500が配置され、かつ、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着された状態のインクカートリッジ100を示している。
【0021】
インクカートリッジ100は、印刷装置500に装着されて、印刷装置500にインクを供給する。インクカートリッジ100の外観形状は略直方体形状である。インクカートリッジ100は、インクを収容する本体101と、メモリー基板120と、を備える。
【0022】
本体101は、インク室150と、インク供給口104とを備える。インク室150は、インクを収容している。インク供給口104は、インク供給路を介してインク室150と連通している。インク供給口104は、インク室150内のインクを、印刷装置500のキャリッジ543に供給する(
図1の上段中央部参照)。インク供給口104の開口104opは、フィルム104fによって封止されている。インクカートリッジ100をキャリッジ543に装着することによって、フィルム104fが破られ、インク供給口104の開口104op外部と連通する。
【0023】
メモリー基板120は、本体101の前壁101wfに設けられている。メモリー基板120は、メモリーチップ130と、複数のメモリー端子290と、を備えている。
【0024】
メモリーチップ130は、メモリー基板120の裏面に設けられている。メモリーチップ130は、処理部と、強誘電体のメモリーセルと、を備える半導体記憶装置である。処理部は、印刷装置500から送信された所定周波数のクロック信号に同期して印刷装置500との間で各種情報を通信する。
【0025】
複数のメモリー端子290は、メモリー基板120表面120faに設けられている。メモリー端子290は、金箔などの導電体で形成されている。複数のメモリー端子290は、メモリー基板120内に設けられた回路を通じて、メモリーチップ130と接続されている。複数のメモリー端子290は、インクカートリッジ100が印刷装置500に装着された状態において、印刷装置500のホルダー544に設けられた端子と接続される。ホルダー544に設けられた端子は、バス580と接続されている。このため、インクカートリッジ100が印刷装置500に装着された状態において、インクカートリッジ100のメモリーチップ130の処理部は、印刷装置500の副制御基板549および主制御部590と接続される。
【0026】
図3は、印刷装置500の主制御部590とインクカートリッジ100のメモリーチップ130との接続関係を模式的に示すブロック図である。印刷装置500の主制御部590は、印刷装置500に装着されるインクカートリッジ100に、電力を供給する。主制御部590は、スイッチング素子群592と、スイッチング素子594,596と、端子群598と、を備えている。端子群598は、電源端子5982と、信号端子5984と、接地端子5986と、を含む。技術の理解を容易にするため、端子群598に含まれる他の端子については、説明および図示を省略する。
【0027】
スイッチング素子群592は、電源に接続されている電力線PLに設けられている(
図3の上段左部参照)。スイッチング素子群592は、電源と電源端子5982の接続をONおよびOFFする。スイッチング素子群592は、16個のスイッチング素子592a~592pから構成される。スイッチング素子592a~592pは、同一の構成を有する。スイッチング素子592a~592pは、電力線PLにおいて並列に設けられている。スイッチング素子592a~592pは、電界効果トランジスター(FET:Field Effect Transistor)である。スイッチング素子592a~592pは、図示しない制御回路により、個別にONおよびOFFされることができる。
図3において、電源電圧をVDDで示す。
【0028】
スイッチング素子594は、電源と信号端子5984との接続を、ONおよびOFFする(
図3の中段左部参照)。スイッチング素子594は、電界効果トランジスターである。信号端子5984は、GPIO(General-Purpose Input/Output)である。
【0029】
スイッチング素子596および接地端子5986は、信号端子5984が接続される電源に対して、信号端子5984と並列に接続されている(
図3の下段左部参照)。スイッチング素子596は、電源と接地端子5986の接続をONおよびOFFする。スイッチング素子596は、電界効果トランジスターである。接地端子5986は、接地されている。
図3において、設置電位をVSSで示す。
【0030】
メモリーチップ130は、端子群138を備えている(
図3の右部参照)。端子群138は、電源端子1382と、信号端子1384と、接地端子1386と、を含む。技術の理解を容易にするため、端子群138に含まれる他の端子については、説明および図示を省略する。
【0031】
電源端子1382は、主制御部590から電力の供給を受ける端子である(
図3の上段右部参照)。電源端子1382は、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着された状態において、電源線LVDDを介して、主制御部590の電源端子5982と接続される。
【0032】
信号端子1384は、主制御部590から信号を受信する端子である(
図3の下段右部参照)。信号端子1384は、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着された状態において、信号線LGPを介して、主制御部590の信号端子5984と接続される。接地端子1386は、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着された状態において、接地線LVSSを介して、主制御部590の接地端子5986と接続される。電源線LVDDと接地線LVSSとの間には、デカップリングコンデンサーC10が接続されている。
【0033】
図4は、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着されて、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の主制御部590の処理を示すフローチャートである。
図4の処理は、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着されたことを契機として、主制御部590により実行される。
【0034】
ステップS10において、主制御部590は、メモリーチップ130への電力の供給を開始する開始時刻t0において、開始電流値i0でメモリーチップ130に電力を供給する。開始電流値i0は、最終的にメモリーチップ130に電力が供給される際の電流値よりも小さい。すなわち、突入電流が生じないように、電流量が制御される。
【0035】
ステップS10において、スイッチング素子592a~592pのうち、開始時刻t0においてONにされるのは、スイッチング素子592aのみである(
図3の上段左部参照)。スイッチング素子592b~592pは、開始時刻t0においてOFFにされる。その結果、スイッチング素子592a~592pのすべてがONにされた場合に比べて、電源線LVDDを流れる電流は制限される(
図3の上段参照)。
【0036】
図4のステップS20において、主制御部590は、開始時刻t0からあらかじめ定められた第1時間Tp1が経過したか否かを判定する。開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した場合は、処理はステップS30に進む。開始時刻t0から第1時間Tp1が経過していない場合は、電源線LVDDにおける電圧の変化に対して十分に短い一定の時間間隔で、ステップS20の処理が繰り返される。その間、スイッチング素子592aがONとされ、スイッチング素子592b~592pをOFFとされた状態が維持される。その結果、電源線LVDDを流れる電流は開始電流値i0である(
図3の上段参照)。
【0037】
図5は、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の、電源端子1382の電圧を示すグラフGV1を示す図である。ステップS20の処理の結果、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過するまでは、電源線LVDDを流れる電流は一定値、開始電流値i0である。その間、開始電流値i0の電流によって、デカップリングコンデンサーC10に電荷が蓄えられる。このため、電源線LVDDの電圧、すなわち、電源端子1382の電圧VDDは、時間に比例して増大する(
図5の下段左部参照)。
図5において、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した時刻をt1で示す。時刻t1における電源電位VDDの値である第1電圧値をV1で示す。
【0038】
図4のステップS30において、主制御部590は、第1電流値i1の電流でメモリーチップ130に電力を供給する。第1電流値i1は、開始電流値i0よりも大きい。第1実施形態においては、具体的には、ステップS30において、スイッチング素子592a~592pのすべてがONにされる。すなわち、複数のスイッチング素子592a~592pのうち、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した後にONにされるスイッチング素子の数は、開始時刻t0においてONにされるスイッチング素子の数よりも多い。複数のスイッチング素子592a~592pのうち、開始時刻t0においてONにされるスイッチング素子の数は、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した後に、ONにされるスイッチング素子の数よりも少ない。第1実施形態のステップS30においては、スイッチング素子592a~592pのすべてを通って、電源線LVDDに電流が供給される。
【0039】
ステップS30の処理の結果、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した後は、電源線LVDDを流れる電流は一定値、第1電流値i1である。その間、第1電流値i1の電流によって、デカップリングコンデンサーC10に電荷が蓄えられる。デカップリングコンデンサーC10の電荷量は、やがて上限に近づくため、デカップリングコンデンサーC10の両端の電圧は徐々に最終的な供給電圧Vpに近づく。すなわち、グランドに対する電源端子1382の電圧が、徐々にVpに近づく(
図5の上段中央部参照)。
【0040】
図5に示すグラフGVcは、比較例において、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の、電源端子1382の電圧を示すグラフである。比較例においては、主制御部590は、開始時刻t0からスイッチング素子592a~592pのすべてをONにして、メモリーチップ130に電力を供給する。その結果、電源端子1382の電圧VDDは、当初、時間に比例して急激に増大し、その後、徐々にVpに近づく。このような態様においては、当初、非常に低い抵抗に対してVpに近い電圧が掛けられるため、非常に大きい電流、すなわち、突入電流が電源線LVDDに流れる。
【0041】
一方、本実施形態においては、電力の供給開始直後は、電流量が開始電流値i0に制限される(
図4のS10参照)。このような処理を行うことにより、メモリーチップ130へ電力を供給する電源線LVDDにおける突入電流の発生を防止できる(
図3の上段参照)。また、本実施形態においては、メモリーチップ130へ電力を供給する際にPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う態様とは異なり、電流量で制御を行っているため、電力を供給しない時間区間を設ける必要がない。このため、電力の供給開始後、短い時間で、最終的に目標とする電力の供給を開始できるように主制御部590を構成できる。さらに、PWM制御を行う態様とは異なり、電力の供給開始直後に、最終的に到達する電圧Vpで電力が供給される時間区間が存在しない。このため、電力の供給開始直後に設置電位VSSが上昇することがなく、信号線LGPにおいて、相対的な電圧の立下りが生じない(
図3の下段参照)。
【0042】
また、PWM制御を実現するためには、カウンターを備えたロジック回路が必要となる。しかし、本実施形態においては、複数のスイッチのON/OFFの制御により電流を制御しているため、そのような回路は必要ない。
【0043】
図4のステップS40においては、終了条件が満たされたか否かが判定される。具体的には、印刷装置500の操作部570を介して、印刷装置500のキャリッジ543からインクカートリッジ100を取り外す処理の開始が指示されたか否かが、判定される。終了条件が満たされていない場合は、処理はステップS30に戻る。終了条件が満たされた場合は、処理はステップS50に進む。
【0044】
図4のステップS50において、主制御部590は、メモリーチップ130への電力の供給を終了する。その後、
図4の処理は終了する。
【0045】
本実施形態における主制御部590を、「電力供給システム」とも呼ぶ。インクカートリッジ100を、「カートリッジ」とも呼ぶ。スイッチング素子592a~592pを、「スイッチ」とも呼ぶ。
【0046】
B.第2実施形態:
第2実施形態の印刷システム1000Bにおいては、主制御部590は、電源端子5982の電圧を検知する機能を有する。また、第2実施形態においては、主制御部590は、
図4の処理において、ステップS20の処理に代えて、ステップS20Bの処理を行う。第2実施形態の印刷システム1000Bの他の点は、第1実施形態の印刷システム1000と同じである。第2実施形態の印刷システム1000Bのハードウェア構成は、
図1~
図3に示す第1実施形態の印刷システム1000と同じであるため、図示を省略する。
【0047】
図6は、第2実施形態の印刷システム1000Bにおいて、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着されて、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【0048】
ステップS20Bにおいて、主制御部590は、メモリーチップ130の電源電圧VDDがあらかじめ定められた第1電圧値V1を超えたか否かを判定する。第1電圧値V1は、最終的な供給電圧Vpよりも低い値である。具体的には、主制御部590は、主制御部590の電源端子5982の電圧が第1電圧値V1を超えた場合に、メモリーチップ130の電源電圧VDDが第1電圧値V1を超えたと判定する(
図3の上段参照)。メモリーチップ130の電源電圧VDDが第1電圧値V1を超えた場合には、処理は、ステップS30に進む。メモリーチップ130の電源電圧VDDが第1電圧値V1を超えていない場合は、一定の時間間隔でステップS20Bの処理が繰り返される。
【0049】
第2実施形態においても、ステップS10において、スイッチング素子592a~592pのうち、開始時刻t0においてONにされるのは、スイッチング素子592aのみである(
図3の上段左部参照)。ステップS30において、スイッチング素子592a~592pのすべてがONにされる。すなわち、第2実施形態においても、スイッチング素子592a~592pのうち、開始時刻t0においてONにされるスイッチング素子の数は、メモリーチップ130の電源電圧VDDが第1電圧値V1を超えた後に、ONにされるスイッチング素子の数よりも少ない。
【0050】
このような態様としても、メモリーチップ130へ電力を供給する電源線LVDDにおける突入電流の発生を防止できる(
図3の上段参照)。また、PWM制御を行う態様に比べて、電力の供給開始後、短い時間で、最終的に目標とする電力の供給を開始できるように主制御部590を構成できる。さらに、PWM制御を行う態様とは異なり、信号線LGPにおいて、電圧の立下りが生じない(
図3の下段参照)。
【0051】
第2実施形態によれば、メモリーチップ130に供給される実際の電源電圧VDDに応じて、電力の供給における電流量を上げることができる(
図6の20B参照)。このため、突入電流の発生を防止しつつ、短い時間で適切に電力を供給できる。
【0052】
C.第3実施形態:
第3実施形態においては、主制御部590は、
図4の処理において、ステップS20の処理に代えて、ステップS20Cの処理を行う。主制御部590は、ステップS30の処理に代えて、ステップS30Cの処理を行う。主制御部590は、ステップS30Cの処理の後、ステップS35Cの処理を行う。第3実施形態の印刷システム1000Cの他の点は、第1実施形態の印刷システム1000と同じである。第3実施形態の印刷システム1000Cのハードウェア構成は、
図1~
図3に示す第1実施形態の印刷システム1000と同じであるため、図示を省略する。
【0053】
図7は、第3実施形態の印刷システム1000Cにおいて、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着されて、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS20Cにおいて、主制御部590は、開始時刻t0からあらかじめ定められた第n時間Tpnが経過したか否かを判定する。nは正の整数である。nは、最初は1である。Tpnは、nが大きいほど、大きい。開始時刻t0から第n時間Tpnが経過した場合は、処理はステップS30Cに進む。開始時刻t0から第n時間Tpnが経過していない場合は、一定の時間間隔でステップS20Cの処理が繰り返される。その間、スイッチング素子592a~592pのOnまたはOFFの状態は維持される。その結果、電源線LVDDを流れる電流は一定である。
【0055】
図8は、第3実施形態において、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の、電源端子1382の電圧を示すグラフGV3を示す図である。1回目のステップS20Cの処理の結果、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過するまでは、電源線LVDDを流れる電流は一定値、開始電流値i0である。その間、開始電流値i0の電流によって、デカップリングコンデンサーC10に電荷が蓄えられる。このため、電源端子1382の電圧VDDは、時間に比例して増大する(
図8の下段左部参照)。
図8において、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した時刻を。t1で示す。第3実施形態における第1時間Tp1は、第3実施形態における第1時間Tp1より小さい(
図5の下段中央部参照)。
【0056】
図7のステップS30Cにおいて、主制御部590は、第n電流値inでメモリーチップ130に電力を供給する。主制御部590は、nを1増大させる。第1電流値i1は、開始電流値i0よりも大きい。第n電流値inは、nが大きいほど大きい。第n電流値inの最大値は、主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に供給し得る電流の最大値である。
【0057】
具体的には、ステップS30Cにおいて、主制御部590は、ステップS10および前回のステップS30Cの処理においてONにしたスイッチング素子の数よりも多い、あらかじめ定められた数のスイッチング素子をONにする。第3実施形態においては、1回目のステップS30Cの処理において、主制御部590は、具体的には、スイッチング素子592a~592pのうち、2個のスイッチング素子592a,592bをONにし、他のスイッチング素子をOFFにする。このため、第3実施形態における第1電流値i1は、第1実施形態における第1電流値i1よりも小さい。
【0058】
ステップS30Cの処理の結果、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した後は、電源線LVDDを流れる電流は一定値、第1電流値i1である。その間、第1電流値i1の電流によって、デカップリングコンデンサーC10に電荷が蓄えられる。このため、電源線LVDDの電圧、すなわち、電源端子1382の電圧VDDは、時間に比例して増大する(
図8の中央部参照)。
図8において、開始時刻t0から第2時間Tp2が経過した時刻をt2で示す。時刻t2における電源電位VDDの値である第2電圧値をV2で示す。
【0059】
図7のステップS35Cにおいて、主制御部590は、nがnmaxに達したか否かを判定する。nmaxは2よりも大きい整数とすることができる。第3実施形態においては、nmaxは3である。nがnmaxに達した場合は、処理はステップS40に進む。nがnmaxに達していない場合は、処理はステップS20Cに戻る。
【0060】
第3実施形態において、ステップS35C、および2回目のS20Cの処理を経て、2回目にステップS30Cの処理が行われる際には、主制御部590は、第2電流値i2でメモリーチップ130に電力を供給する。具体的には、2回目のステップS30Cの処理において、主制御部590は、スイッチング素子592a~592pのすべてをONにする。その結果、開始時刻t0から第2時間Tp2が経過した後には、第2電流値i2でメモリーチップ130に電力が供給される。
【0061】
2回目のステップS30Cの処理が行われると、開始時刻t0から第2時間Tp2が経過した後は、電源線LVDDを流れる電流は一定値、第2電流値i2である。その間、第2電流値i2の電流によって、デカップリングコンデンサーC10に電荷が蓄えられる。デカップリングコンデンサーC10の電荷量は、やがて上限に近づくため、デカップリングコンデンサーC10の両端の電圧は徐々にVpに近づく。すなわち、グランドに対する電源端子1382の電圧が、徐々にVpに近づく(
図8の上段右部参照)。
【0062】
このような処理を行うことにより、電力を供給する際の電流値をよりきめ細かく上げることができる。このため、電力の供給開始後、短い時間で、目標とする電力の供給を開始できるようにシステムを構成できる。
【0063】
図7のステップS40においては、終了条件が満たされたか否かが判定される。ステップS40において行われる判定は、
図4のステップS40において行われる判定と同じである。終了条件が満たされていない場合は、処理はステップS45Cに進む。終了条件が満たされた場合は、処理はステップS50に進む。
【0064】
ステップS45Cにおいては、主制御部590は、直前に実行されたステップS30Cにおける電力の供給の際と同じ電流値で、メモリーチップ130に電力を供給する。その後、処理は、ステップS40に戻る。すなわち、ステップS40において終了条件が満たされるまで、直前に実行されたステップS30Cにおける電力の供給と同じ電流値で、メモリーチップ130に電力が供給される。
【0065】
D.第4実施形態:
第4実施形態においては、主制御部590は、
図7の処理において、ステップS20Cの処理に代えて、ステップS20Dの処理を行う。第4実施形態の印刷システム1000Dの他の点は、第3実施形態の印刷システム1000Cと同じである。第4実施形態の印刷システム1000Dのハードウェア構成は、
図1~
図3に示す第1実施形態の印刷システム1000と同じであるため、図示を省略する。
【0066】
図9は、第4実施形態の印刷システム1000Dにおいて、印刷装置500にインクカートリッジ100が装着されて、印刷装置500の主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に電力が供給される際の処理を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS20Dにおいて、主制御部590は、メモリーチップ130の電源電圧VDDがあらかじめ定められた第n電圧値Vnを超えたか否かを判定する。nは正の整数である。nは、最初は1である。Vnは、nが大きいほど、大きい。Vnの最大値は、主制御部590からインクカートリッジ100のメモリーチップ130に供給される電力の最終的な電圧値Vpより小さい値である。
【0068】
具体的には、主制御部590は、主制御部590の電源端子5982の電圧が第n電圧値Vnを超えた場合に、メモリーチップ130の電源電圧VDDが第n電圧値Vnを超えたと判定する(
図3の上段参照)。メモリーチップ130の電源電圧VDDが第n電圧値Vnを超えた場合には、処理は、ステップS30Cに進む。メモリーチップ130の電源電圧VDDが第n電圧値Vnを超えていない場合は、一定の時間間隔でステップS20Dの処理が繰り返される。その間、スイッチング素子592a~592pのOnまたはOFFの状態は維持される。その結果、電源線LVDDを流れる電流は一定である。
【0069】
図7のステップS30Cにおいて、主制御部590は、第n電流値inでメモリーチップ130に電力を供給する。主制御部590は、nを1増大させる。以下の処理は、第3実施形態と同じである。第4実施形態における第1電圧値V1は、第2実施形態における第1電圧値V1よりも小さい。
【0070】
第2実施形態によれば、実際のメモリーチップ130の電源電圧VDDに応じて、電力の供給における電流量をきめ細かく上げることができる(
図9の20D参照)。このため、突入電流の発生を防止しつつ、短い時間で適切に電力を供給できる。
【0071】
E.他の実施形態:
E1.他の実施形態1:
(1)上記第1実施形態において、スイッチング素子群592は、16個のスイッチング素子592a~592pから構成される(
図3の上段左部参照)。しかし、スイッチの数は、電源線LVDDを介してメモリーチップ130に電力を供給する際に必要とされる電流量に応じて、10個、12個など16個より少ない数とすることもでき、18個、20個など、16個より多い数とすることもできる。
【0072】
(2)上記第3実施形態において、第3実施形態においては、nmaxは3である(
図8参照)。しかし、第3実施形態および第4実施形態において、電流値制御の区分の数を表すnmaxは、4,5など、3以外の数であってもよい。
【0073】
(3)上記実施形態では、インクカートリッジ100がキャリッジ543に装着されるオンキャリッジと呼ばれる構成とした。しかし、印刷装置は、これに限定されるものではない。印刷装置は、インクカートリッジ100がキャリッジ543と異なる他の場所に装着されるオフキャリッジと呼ばれる構成とすることもできる。
【0074】
E2.他の実施形態2:
上記第1実施形態において、印刷装置500の主制御部590は、スイッチング素子592a~592pを備える(
図3の上段左部参照)。そして、複数のスイッチング素子592a~592pのうち、開始時刻t0においてONにされるスイッチング素子の数は、開始時刻t0から第1時間Tp1が経過した後に、ONにされるスイッチング素子の数よりも少ない。しかし、開始電流値でメモリーチップに電力を供給し、その後、より大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する方法は、他の方法であってもよい。たとえば、電力供給システムとしての印刷装置の主制御部が、可変抵抗を備え、電力の供給開始後、可変抵抗の抵抗値を徐々に減少させてもよい。
【0075】
E3.他の実施形態3:
上記第2実施形態において、第1電流値i1によるメモリーチップ130への電力の供給は、メモリーチップ130の電源電圧VDDが第1電圧V1を超えた後に行われる(
図6のS20B参照)。しかし、第1実施形態に示したように、開始時刻t0からあらかじめ定められた第1時間Tp1が経過した後に、開始電流値i0よりも大きい第1電流値i1でメモリーチップ130に電力を供給する対応とすることもできる。
【0076】
E4.他の実施形態4:
上記第2実施形態においては、
図7のステップS20Cの判定が繰り返し行われ、判定結果がYesの場合に、ステップS30Cの処理が行われる。上記第4実施形態においては、
図9のステップS20Dの判定が繰り返し行われ、判定結果がYesの場合に、ステップS30Cの処理が行われる。しかし、最初にステップS20Cの判定が行われ、ステップS35Cの判定結果がNoであった場合には、ステップS20Dの判定が行われてもよい。また、最初にステップS20Dの判定が行われ、ステップS35Cの判定結果がNoであった場合には、ステップS20Cの判定が行われてもよい。すなわち、第n時間Tpn、第n電圧値Vnを適切に定めることにより、2回以上実行される判定において、時間に基づく判定と、電圧に基づく判定のいずれかが、行われることができる。
【0077】
F.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0078】
(1)本開示の一形態によれば、電力供給システムが提供される。この電力供給システムは、印刷装置に設けられる電力供給システムであって、メモリーチップを有し前記印刷装置に装着されるカートリッジに、電力を供給する電力供給システムである。電力供給システムは、前記メモリーチップへの電力の供給を開始する開始時刻において、開始電流値で前記メモリーチップに電力を供給する。その後、電力供給システムは、前記開始時刻からあらかじめ定められた第1時間が経過した後に、前記開始電流値よりも大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第1電圧を超えた後に、前記第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する。
このような態様とすることにより、突入電流の発生を防止できる。また、PWM制御を行う態様とは異なり、電流量で制御を行っているため、電力を供給しない時間区間を設ける必要がない。このため、電力の供給開始後、短い時間で、最終的に目標とする電力の供給を開始できるようにシステムを構成できる。さらに、PWM制御を行う態様とは異なり、電力の供給開始直後に、最終的に目標とする電力が供給される時間区間が存在しない。このため、電力線以外の信号線において、電圧の立下りが生じない。
【0079】
(2)上記形態の電力供給システムにおいて、電力線において並列に設けられる複数のスイッチを備え、前記複数のスイッチのうち、前記開始時刻においてONにされるスイッチの数は、前記開始時刻から前記第1時間が経過した後、または、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に、ONにされるスイッチの数よりも少ない、態様とすることもできる。
【0080】
(3)上記形態の電力供給システムにおいて、前記第1電流値による前記メモリーチップへの電力の供給は、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に行われる、態様とすることもできる。
このような態様とすることにより、実際のメモリーチップの電源電圧に応じて、電力の供給における電流量を上げることができる。このため、突入電流の発生を防止しつつ、短い時間で適切に電力を供給できる。
【0081】
(4)上記形態の電力供給システムにおいて、前記開始時刻からあらかじめ定められた第2時間であって前記第1時間より大きい第2時間が経過した後に、前記第1電流値よりも大きい第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第2電圧であって前記第1電圧より大きい第2電圧を超えた後に、前記第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給する、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、電力を供給する際の電流値をよりきめ細かく上げることができる。このため、電力の供給開始後、短い時間で、目標とする電力の供給を開始できるようにシステムを構成できる。
【0082】
(5)本開示の他の形態によれば、メモリーチップを有し印刷装置に装着されるカートリッジに前記印刷装置から電力を供給する方法が提供される。この方法は、(a)前記メモリーチップへの電力の供給を開始する開始時刻において、開始電流値で前記メモリーチップに電力を供給する工程と、(b)前記開始時刻からあらかじめ定められた第1時間が経過した後に、前記開始電流値よりも大きい第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの電源電圧があらかじめ定められた第1電圧を超えた後に、前記第1電流値で前記メモリーチップに電力を供給する工程と、を備える。
【0083】
(6)上記形態の方法において、前記印刷装置は、電力線において並列に設けられる複数のスイッチを備え、前記複数のスイッチのうち、前記開始時刻においてONにされるスイッチの数は、前記開始時刻から前記第1時間が経過した後、または、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に、ONにされるスイッチの数よりも少ない、態様とすることもできる。
【0084】
(7)上記形態の方法において、前記工程(b)における前記第1電流値による前記メモリーチップへの電力の供給は、前記メモリーチップの前記電源電圧が前記第1電圧を超えた後に行われる、態様とすることもできる。
【0085】
(8)上記形態の方法において、さらに、(c)前記開始時刻からあらかじめ定められた第2時間であって前記第1時間より大きい第2時間が経過した後に、前記第1電流値よりも大きい第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給するか、または、前記メモリーチップの前記電源電圧があらかじめ定められた第2電圧であって前記第1電圧より大きい第2電圧を超えた後に、前記第2電流値で前記メモリーチップに電力を供給する、工程を備える、態様とすることもできる。
【0086】
本開示は、電力供給システムおよび電力供給方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、電力供給システムの制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0087】
100…インクカートリッジ、100A~F…インクカートリッジ、101…本体、101wf…前壁、104…インク供給口、104f…フィルム、104op…開口、120…メモリー基板、120fa…メモリー基板の表面、130…メモリーチップ、138…端子群、150…インク室、290…メモリー端子、500…印刷装置、520…副走査送り機構、522…モーター、526…ローラー、530…主走査送り機構、532…キャリッジモーター、534…摺動軸、536…駆動ベルト、538…プーリー、540…ヘッド駆動機構、543…キャリッジ、544…ホルダー、545…印刷ヘッド、549…副制御基板、570…操作部、580…バス、590…主制御部、592…スイッチング素子群、592a~p…スイッチング素子、594…スイッチング素子、596…スイッチング素子、598…端子群、700…コンピューター、1000…印刷システム、1382…電源端子、1384…信号端子、1386…接地端子、5982…電源端子、5984…信号端子、5986…接地端子、C10…デカップリングコンデンサー、GV1…第1実施形態の電源線の電圧のグラフ、GV3…第2実施形態の電源線の電圧のグラフ、GVc…比較例の電源線の電圧のグラフ、LGP…信号線、LVDD…電源線、LVSS…接地線、PA…印刷媒体、PL…電力線、Tp1…第1時間、Tp2…第2時間、V1…第1電圧値、V2…第2電圧値、VDD…電源電圧、VSS…接地電位、Vp…最終的な供給電圧、t1…開始時刻から第1時間が経過した時刻、t2…開始時刻から第2時間が経過した時刻、t0…開始時刻