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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167549
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20231116BHJP
   B60K 28/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F02D29/02 K
B60K28/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078822
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正倫
【テーマコード(参考)】
3D037
3G093
【Fターム(参考)】
3D037FA24
3D037FB01
3G093AA01
3G093BA07
3G093BA09
3G093CA01
3G093CB05
3G093CB06
3G093DA06
3G093DB05
3G093EA02
(57)【要約】
【課題】駆動源の始動操作を行った人が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)となる可能性が高い車両用制御装置を提供する。
【解決手段】車両用制御システム1では、運転席ドア80Dの開操作が行われた際に車室外運弁席エリア83に存在するキーを検出し(ステップS1のYES、ステップ2)、IGスイッチオン操作がされた場合に(ステップS3のYES)、車室外運転席エリア83に存在したキーが車室内に存在すれば(ステップS4、ステップS5のYES)、当該キーの種別(加速抑制有効キー、加速抑制無効キー)を判定して(ステップS6)、判定結果に応じて急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)を設定する(ステップS7、S8)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速が所定の上限車速以内に収まるように当該車両の加速を抑制する加速抑制機能を有する車両用制御装置であって、
駆動源を始動する始動操作が行われた際に、前記車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に前記車両の車室外における運転席に対する所定のエリアに存在した所定の携帯機が、前記加速抑制機能を有効にする加速抑制機能有効携帯機であるか無効にする加速抑制機能無効携帯機であるかを判定する判定処理と、前記所定の携帯機が前記加速抑制機能有効携帯機である場合に、前記加速抑制機能を有効な状態になるように設定し、前記加速抑制機能無効携帯機である場合に、前記加速抑制機能を無効な状態になるように設定する設定処理とを含む加速抑制機能状態制御処理を行う加速抑制機能状態制御手段
を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記所定の携帯機が前記始動操作が行われた際に前記車両の車室内に存在するか否かを判定する車室内存在判定手段をさらに備え、
前記加速抑制機能状態制御手段は、
前記加速抑制機能状態制御処理において、
前記所定の携帯機が、前記始動操作が行われた際に、前記車両の車室内に存在する場合、前記判定処理および前記設定処理を行い、
前記所定の携帯機が、前記始動操作が行われた際に、前記車両の車室内に存在しない場合、前記判定処理および前記設定処理を行わず、前記加速抑制機能の状態を前回設定した状態に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に、前記所定のエリアに存在する前記所定の携帯機の識別情報を保持する識別情報保持手段をさらに備え、
前記車室内存在判定手段は、前記識別情報保持手段により保持されている前記所定の携帯機の識別情報を用いて、前記所定の携帯機が、前記始動操作が行われた際に前記車室内に存在するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の加速を抑制する加速抑制機能を有する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が停止中又は低速走行中(前方、後方)に、ペダルの踏み間違いなどでアクセルペダルが速く強く踏み込まれたと車両用制御装置が判断したとき、車両用制御装置は車両の駆動源の駆動力(例えば、エンジン出力)を抑制する機能(以下、「急アクセル時加速抑制機能」と記載する。)がある。急アクセル時加速抑制機能では、まず、車両が停止中又は低速走行中(前方、後方)にアクセルペダルが速く強く踏み込まれた場合、第1加速抑制制御を行う状態に遷移し、第1加速抑制制御中はスロットル全閉相当まで駆動力を抑制することで、車両の急加速を防ぐ。次に、第1加速抑制制御中も一定時間アクセルペダルが踏み続けられた場合、又は、第1加速抑制制御作動後すぐにアクセルペダルを速く強く踏み直された場合、第2加速抑制制御を行う状態に遷移し、第2加速抑制制御中は所定の上限車速まで緩やかに加速するように駆動源の駆動力を抑制する。第2加速抑制制御における所定の上限車速までの加速では、駆動源の要求駆動力をフィードバック制御により導出し、導出した要求駆動力に対して変化量の許容上限であるガード値を設定することで緩やかな加速を実現している。このようにすることで、車両を加速させようとして意図的にアクセルペダルを速く強く踏み込んだ運転者が、車両が加速しない故に強い違和感を覚える可能性を低減できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-102951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、急アクセル時加速抑制機能を備える車両では、車両のドアをロックしたり(車両のドアのロックを施錠したり)、車両のドアをアンロックしたり(車両のドアのロックを解錠したり)するキーとして、急アクセル時加速抑制機能を有効な状態にするキー(以下、「加速抑制機能有効キー」と記載する。)と、急アクセル時加速抑制機能を無効な状態にするキー(以下、「加速抑制機能無効キー」と記載する。)との2種類がある。急アクセル時加速抑制機能は、加速抑制機能有効キーを用いて車両のドアがアンロックされ、イグニッション(IG)スイッチがオンにされた場合、急アクセル時加速抑制機能は有効な状態となる。一方、加速抑制機能無効キーを用いて車両のドアがアンロックされ、IGスイッチがオンにされた場合、急アクセル時加速抑制機能は無効な状態となる。
【0005】
例えば、車両をガレージに保管し保管に際して車両のドアをロックしないなど、車両を降車した運転手が車両のドアをロックせずに車両から離れた場合、運転者(今回の運転者と前回の運転者が異なる場合がある。)が車両に搭乗する際には車両のドアはアンロックされた状態にある。このような場合、運転手がキーを用いて車両のドアをアンロックする操作を行うことなく車両に乗車してIGスイッチをオンにした場合、直近に車両のドアをアンロックする際に用いられたキーの種類によって急アクセル時加速抑制機能の状態が設定される。このため、IGスイッチをオンにした運転手が所持するキーの種類(加速抑制機能有効キー、加速抑制機能無効キー)と、急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)との対応が一致しない可能性がある。例えば、運転手が所持するキーが加速抑制機能無効キーであり、急アクセル時加速抑制機能が有効な状態に設定される場合が生じ、加速抑制機能無効キーを所持してIGスイッチをオンにした運転者は急アクセル時加速抑制機能を利用しない意図があると思われるが、運転者の意図に反して急アクセル時加速抑制機能が有効な状態となって作動してしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、駆動源の始動操作を行った人が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)となる可能性が高い車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用制御装置は、車両の車速が所定の上限車速以内に収まるように当該車両の加速を抑制する加速抑制機能を有する車両用制御装置であって、駆動源を始動する始動操作が行われた際に、前記車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に前記車両の車室外における運転席に対する所定のエリアに存在した所定の携帯機が、前記加速抑制機能を有効にする加速抑制機能有効携帯機であるか無効にする加速抑制機能無効携帯機であるかを判定する判定処理と、前記所定の携帯機が前記加速抑制機能有効携帯機である場合に、前記加速抑制機能を有効な状態になるように設定し、前記加速抑制機能無効携帯機である場合に、前記加速抑制機能を無効な状態になるように設定する設定処理とを含む加速抑制機能状態制御処理を行う加速抑制機能状態制御手段を備えることを特徴としている。
【0008】
車両のドアをロックしない車両の使われ方がされる場合でも運転者が車両の車内に乗り込む際には運転席のドアを開く開操作が行われる。また、車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に車両の車室外における運転席に対する所定のエリアに存在する所定の携帯機は車両の運転者が所持する携帯機である可能性が高い。この構成によれば、駆動源の始動操作が行われた際に車両の運転者が所持する携帯機である可能性が高い所定の携帯機の種類を判定して加速抑制機能を有効な状態にするか無効な状態にするかを制御できるため、駆動源の始動操作を行った運転者が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性を高くすることができる。
【0009】
また、前記所定の携帯機が前記始動操作が行われた際に前記車両の車室内に存在するか否かを判定する車室内存在判定手段をさらに備え、前記加速抑制機能状態制御手段は、前記加速抑制機能状態制御処理において、前記所定の携帯機が、前記始動操作が行われた際に、前記車両の車室内に存在する場合、前記判定処理および前記設定処理を行い、前記所定の携帯機が、前記始動操作が行われた際に、前記車両の車室内に存在しない場合、前記判定処理および前記設定処理を行わず、前記加速抑制機能の状態を前回設定した状態に設定するとしてもよい。
【0010】
運転席のドアの開操作が行われた際に、車両の車室外における運転席に対する所定のエリアに存在する携帯機を所持する人が車両を運転する可能性が高いが、例えば運転席のドアを開けるのを手伝っただけで車両を運転しない場合などがあり、車両の車室外における運転席に対する所定のエリアに存在する携帯機を所持する人が車両を運転しない可能性もある。これによれば、車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に車両の車室外における運転席に対する所定のエリアに存在した所定の携帯機が、駆動源の始動操作が行われた際に、車室内にある場合(第1のケース)、運転席のドアの開操作が行われた際に所定のエリアに存在した携帯機の所持者が車両を運転する可能性がより高くなる。このため、第1のケースの場合、所定の携帯機を利用して加速抑制機能の状態を設定することにより、駆動源の始動操作を行った運転者が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性をより一層高くすることができる。また、車両の運転席のドアの開操作が行われた際に所定のエリアに存在した所定の携帯機が、駆動源の始動操作が行われた際に、車室内に存在しない場合(第2のケース)、駆動源の始動操作を行った運転者は所定の携帯機を所持していないことになる。このため、駆動源の始動操作を行った運転者が所持していない所定の携帯機で加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)を制御することを防止できる。
【0011】
また、前記車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に、前記所定のエリアに存在する前記所定の携帯機の識別情報を保持する識別情報保持手段をさらに備え、前記車室内存在判定手段は、前記識別情報保持手段により保持されている前記所定の携帯機の識別情報を用いて、前記所定の携帯機が、前記始動操作が行われた際に前記車室内に存在するか否かを判定するとしてもよい。
【0012】
これによれば、車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に、所定のエリアに存在する所定の携帯機の識別情報を保持しておくことにより、駆動源の始動操作が行われた際に、例えば車室内に複数の携帯機があっても、所定の携帯機が車室内に存在するかを判断でき、駆動源の始動操作を行った運転者が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動源の始動操作が行われた際に車両の運転者が所持する携帯機である可能性が高い所定の携帯機の種類を判定して加速抑制機能を有効な状態にするか無効な状態にするかを制御できるため、駆動源の始動操作を行った運転者が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用制御システムを搭載する車両の構成を示すブロック図である。
図2図1の車両用制御システムにおいて利用される運転席対応車室外エリアを説明するための説明図である。
図3図1の車両制御システムにおいて行われる急アクセル時加速抑制機能状態制御処理の処理フローを示すフローチャートである。
図4図1の車両用制御システムにおいて行われる急アクセル時加速抑制制御処理の処理フローを示すフローチャートである。
図5図4の急アクセル時加速抑制制御処理の具体例を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
1.車両用制御システムを搭載した車両の構成
本発明の一実施形態に係る車両用制御システム5を搭載した車両1の構成について図1を参照して説明する。
【0017】
本実施形態では、車両1は所謂右ハンドル車であり、車両1には、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を備える車両用制御システム5が搭載されている。本実施形態の車両用制御システム5は、車両1の停止中又は低速走行中(前方、後方)に、ペダルの踏み間違いなどでアクセルペダルが速く強く踏み込まれたと車両用制御システム5が判断したとき、車両用制御システム5は車両1の駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力(エンジン出力)を抑制する機能(急アクセル時加速抑制機能)を備える。また、本実施形態では、車両1のドアをロックしたり(車両1のドアのロックを施錠したり)、車両1のドアをアンロックしたり(車両1のドアのロックを解錠したり)する際に、例えば無線通信機能を備えたキー(本発明の「携帯機」に相当)が利用され、キーとして、急アクセル時加速抑制機能(本発明の「加速抑制機能」に相当)を有効な状態にするキー(加速抑制機能有効キー:本発明の「加速抑制機能有効携帯機」に相当)と、急アクセル時加速抑制機能を無効な状態にするキー(加速抑制機能無効キー:本発明の「加速抑制機能無効携帯機」に相当)との2種類がある。
【0018】
車両1には、図2に示すように、運転席にまたは運転席から乗降するためのドア(運転席ドア)80D、助手席にまたは助手席から乗降するためのドア80P、運転席の後方の後席の右側にまたは当該右側から乗降するためのドア80RR、運転席の後方の後席の左側にまたは当該左側から乗降するドア80RLが備えられており、各ドア80D,80P,80RR,80RLにはドアの開閉(ドアが開いている開状態、ドアが閉まっている閉状態)を検知するカーテシスイッチ81D,81P,81RR,81RLが設けられている。なお、図1には、省略しているが、カーテシスイッチ81D,81P,81RR,81RLは図1のボディECU40に接続されている。
【0019】
また、車両1には、図2に示すように、車両1の外側であって右サイドミラーの近傍にアンテナ82Aが配設され、車両1の外側であって左サイドミラーの近傍にアンテナ82Bが配設され、車両1の車室内であってインストルメントパネルの車両横方向での略中央にアンテナ82Cが配設され、車両1の車室内であって後席の車両横方向での略中央にアンテナ82Dが配設されている。なお、図1には、省略しているが、アンテナ82A,82B,82C,82Dは図1のボディECU40に接続されている。
【0020】
ここで、本実施形態では、アンテナ82A,82Bから微弱な電波を放射し、この電波が到達したキーは当該キーのキー識別情報を含む信号波を放射し、この信号波はアンテナ82A,82Bに到達し、信号波に対して信号処理を行うことで、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得する。
【0021】
アンテナ82A,82Bとキーとの距離によって、キーを検出して当該キーのキー識別情報を得ることができる場合と、キーを検出できずに当該キーのキー識別情報を得ることができない場合とがある。
【0022】
また、キーを検出して当該キーのキー識別情報を得ることができる場合において、キーがアンテナ82Bよりもアンテナ82Aの方に近いときには、アンテナ82Aにおける信号波のRSSI(Received Signal Strength Indicator)の方がアンテナ82Bにおける信号波のRSSIよりも大きくなる。
【0023】
また、車室内のキーの場合、当該キーとアンテナ82Aまたはアンテナ82Bとの間には運転席ドア80Dや運転席用の窓ガラスなどの車両1の構成部品または助手席用のドア80Pや助手席用の窓ガラスなどの車両1の構成部品があって電波が遮蔽されるため、アンテナ82A,82Bから放射される微弱な電波では、キーを検出して当該キーのキー識別情報を得にくい。本実施形態では、車室内のキーは、アンテナ82A,82Bを利用して検出されず、当該キーのキー識別情報は得られないものとし、車室内をアンテナ82A,82Bを利用してキーを検出して当該キーのキー識別情報を得ることができるエリアでないとして取り扱う。
【0024】
したがって、本実施形態では、アンテナ82A,82Bを利用してキーを検出して当該キーのキー識別情報を取得でき、アンテナ82Aにおける信号波のRSSIの方がアンテナ82Bにおける信号波のRSSIより大きくなる、キーが存在するエリアを、車両1の車室外における運転席に対する所定のエリア(以下、「車室外運転席エリア」と記載する。:本発明の「車両の車室外における運転席に対する所定のエリア」に相当)83とする。
【0025】
なお、車室外運転席エリア83内のキーは、アンテナ82Aにおける当該キーからの信号波のRSSIが、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得できるRSSIよりも大きい閾値を超えるものとすることで、図2の車室外運転席エリア83よりも運転席に近い狭い範囲とすることが可能であり、このように車室外運転席エリアを設定するようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、アンテナ82C,82Dから微弱な電波を放射し、この電波が到達したキーは当該キーのキー識別情報を含む信号波を放射し、この信号波はアンテナ82C,82Dに到達し、信号波に対して信号処理を行うことで、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得する。
【0027】
ただし、車室外のキーの場合、当該キーとアンテナ82C,82Dとの間にはドア80D,80P,80RR,80RLなどや窓ガラスなどの車両1の構成部品があって電波が遮蔽されるため、アンテナ82C,82Dから放射される微弱な電波では、キーを検出して当該キーのキー識別情報を得にくい。本実施形態では、車室外のキーは、アンテナ82C,82Dを利用して検出されず、当該キーのキー識別情報は得られないものとし、車室外をアンテナ82C,82Dを利用してキーを検出して当該キーのキー識別情報を得ることができるエリアでないとして取り扱う。
【0028】
従って、アンテナ82C,82Dを利用してキーを検出して当該キーのキー識別情報を得ることができるエリアは車室内であり、アンテナ82C,82Dを利用してキーを検出して当該キーのキー識別情報を得ることができたキーは、車室内のキーとする。
【0029】
車両用制御システム5は、図1に示すように、ステレオカメラECU10、EFI-ECU20、VSC-ECU30、ボディECU40、及び、メータECU50を備える。また、車両1には、バス60が敷設されており、ECU10,20,30,40,50夫々はバス60に接続されて互いにCAN(Controller Area Network)通信を行う。
【0030】
ボディECU40は、各種制御及び各種演算などを行うCPU41、各種プログラムや各種データを記憶するメモリ42、及び、バス60を介して他のECUなどと通信する通信ユニット(不図示)などを有し、車両1のドア、ウインカーなどの車載電装品の動作を制御するためのECUである。ボディECU40には、イグニッション(IG)スイッチ84が接続されおり、図1には図示していないが、上述したように、カーテシスイッチ81D,81P,81RR,81RLや、アンテナ82A,82B,82C,82Dが接続されている。IGスイッチ84がオンにされると、駆動ユニット(エンジン)70などが駆動される。本実施形態では、ボディECU40は、例えば、ドアロック解除に用いられたキー(加速抑制機能有効キー、加速抑制機能無効キー)のキー識別情報を取得してステレオカメラECU10などへ送信する。
【0031】
本実施形態では、メモリ42には、例えば、予め、キー毎に、キーのキー識別情報と、当該キーの種類(加速抑制機能有効キー、加速抑制機能無効キー)を示す加速抑制機能有効・無効キー情報とを対応付けて記憶されている。また、メモリ42には、急アクセル時加速抑制機能状態(有効な状態、無効な状態)を示す急アクセル時加速抑制機能状態情報が記憶されている。また、メモリ42には、後述する車室外運転席エリア内キー検出処理で見つかった車室外運転席エリア83内のキーのキー識別情報(以下、適宜、「車室外運転席エリア内キー識別情報」と記載する。)が記憶される。また、メモリ42には、後述する車室内キー検出処理で見つかった車室内のキーのキー識別情報(以下、適宜、「車室内キー識別情報」と記載する。)が記憶される。
【0032】
本実施形態では、CPU41は、例えば、急アクセル時加速抑制機能を有効な状態または無効な状態のいずれかに制御する急アクセル時加速抑制機能状態制御処理を行う。なお、急アクセル時加速抑制機能状態制御処理が本発明の「加速抑制機能状態制御処理」に相当し、CPU41の急アクセル時加速抑制機能状態制御処理を行う部分が本発明の「加速抑制機能状態制御手段」に相当する。
【0033】
急アクセル時加速抑制機能状態制御処理では、CPU41は、運転席ドア80Dを開ける操作(以下、「運転席ドア開操作」と記載する。本発明の「車両の運転席のドアを開く開操作」に相当)が行われたか否かを判定する。本実施形態では、カーテシスイッチ81Dが、運転席ドア80Dが閉まっている状態に対応するスイッチ状態から、運転席ドア80Dが開いている状態に対応するスイッチ状態に変化した場合に、運転席ドア開操作が行われたと判定する。
【0034】
CPU41は、運転席ドア開操作が行われた際、車室外運転席エリア83内に存在するキーを検出して検出したキーのキー識別情報(車室外運転席エリア内キー識別情報)をメモリ42に記憶する車室外運転席エリア内キー検出処理を行う。なお、CPU41の車室外運転席エリア内キー検出処理を行う部分が本発明の「識別情報保持手段」に相当する。
【0035】
ここで、アンテナ82A,82Bから微弱な電波を周期的に放射し、この電波が到達したキーは当該キーのキー識別情報を含む信号波を放射し、この信号波はアンテナ82A,82Bに到達し、信号波に対して信号処理を行うことで、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得する。本実施形態では、運転席ドアの開操作が行われたと判定された場合に、アンテナ82A,82Bを利用して、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得し、アンテナ82Aにおける信号波のRSSIの方がアンテナ82Bにおける信号波のRSSIより大きいときには、検出したキーが車室外運転席エリア83内に存在するキーであると判断して、検出したキーのキー識別情報(車室外運転席エリア内キー識別情報)をメモリ42に記憶する。
【0036】
車室外運転席エリア内キー検出処理に続いて、CPU41は、IGスイッチ84をオンにする操作(以下、「IGスイッチオン操作」と記載する。本発明の「駆動源を始動する始動操作」に相当)が行われたか否かを判定する。
【0037】
CPU41は、IGスイッチオン操作が行われた際、車室内に存在するキーを検出して検出したキーのキー識別情報(車室内キー識別情報)をメモリ42に記憶する車室内キー検出処理を行う。この車室内キー検出処理では、車室内で1個のキーが見つかる場合や、2個以上のキーが見つかる場合があり、メモリ42には1つの車室内キー識別情報が記憶される場合や、2つ以上の車室内キー識別情報が記憶される場合がある。
【0038】
ここで、アンテナ82C,82Dから微弱な電波を放射し、この電波が到達したキーは当該キーのキー識別情報を含む信号波を放射し、この信号波はアンテナ82A,82Bに到達し、信号波に対して信号処理を行うことで、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得する。本実施形態では、IGスイッチオン操作が行われたと判定された場合に、アンテナ82C,82Dを利用して、キーを検出して当該キーのキー識別情報を取得し、検出したキーが車室内に存在するキーであると判断して、検出したキーのキー識別情報(車室内キー識別情報)をメモリ42に記憶する。
【0039】
車室内キー検出処理に続いて、CPU41は、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在するかを判定する車室内存在判定処理を行う。本実施形態では、車室内キー検出処理においてメモリ42に記憶した車室内キー識別情報の中に、車室外運転席エリア内キー検出処理においてメモリ42に記憶した車室外運転席エリア内キー識別情報に一致するものがある場合に、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在すると判定する。なお、CPU41の車室内存在判定処理を行う部分が本発明の「車室内存在判定手段」に相当する。
【0040】
CPU41は、車室内存在判定処理の判定の結果、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在する場合、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキー(当該キーはIGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在する)が加速抑制機能有効キーであるか加速抑制機能無効キーであるかを判定する加速抑制機能有効・無効キー判定処理を行う。本実施形態における加速抑制機能有効・無効キー判定処理では、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキー(当該キーはIGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在する)のキー識別情報(メモリ42に記憶されている車室外運転席エリア内キー識別情報)に対応して、メモリ42に記憶されている加速抑制機能有効・無効キー情報が加速抑制機能有効キーを示す情報である場合に、加速抑制機能有効キーであると判定し、加速抑制機能無効キーを示す情報である場合に、加速抑制機能無効キーであると判定する。なお、加速抑制機能有効・無効キー判定処理は、本発明の「判定処理」に相当する。
【0041】
CPU41は、加速抑制機能有効・無効キー判定処理の判定の結果に基づいて、急アクセル時加速抑制機能を有効な状態または無効な状態に設定し、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容を、急アクセル時加速抑制機能が有効な状態であることを示す情報または無効な状態であることを示す情報に設定する急アクセル時加速抑制機能有効・無効設定処理を行う。本実施形態では、CPU41は、加速抑制機能有効キーである場合には急アクセル時加速抑制機能を有効な状態に設定し、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容を、急アクセル時加速抑制機能が有効であることを示す内容に設定し、急アクセル時加速抑制機能が有効であることを示す急アクセル時加速抑制機能有効通知情報をステレオカメラECU10へ送信する。また、加速抑制機能無効キーである場合には急アクセル時加速抑制機能を無効な状態に設定し、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容を、急アクセル時加速抑制機能が無効であることを示す内容に設定する。なお、急アクセル時加速抑制機能有効・無効設定処理は、本発明の「設定処理」に相当する。
【0042】
CPU41は、車室内存在判定処理の判定の結果、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在しない場合、加速抑制機能の状態を前回設定した状態に設定する。本実施形態では、CPU41は、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容が、急アクセル時加速抑制機能が有効な状態である場合、急アクセル時加速抑制機能を有効な状態に設定し、急アクセル時加速抑制機能が有効であることを示す急アクセル時加速抑制機能有効通知情報をステレオカメラECU10へ送信する。メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容が、急アクセル時加速抑制機能が無効な状態である場合、急アクセル時加速抑制機能を無効な状態に設定する。なお、これらの場合、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容の更新処理を行っても行わなくてもよい。
【0043】
メータECU50は、車両1のメータパネル(不図示)の各部を制御するためのECUである。メータパネルには、車速やエンジン回転数を表示する計器類の他、各種の情報を表示するための液晶ディスプレイなどの表示器が設けられている。本実施形態では、メータECU50は、例えば、急アクセル時加速抑制機能が有効な状態にあることの報知、急アクセル時加速抑制の作動の許可中の急アクセルペダル操作に対する警告の報知を行う。
【0044】
VSC-ECU30は、車両1の横滑りの防止制御をするためのECUである。本実施形態では、VSC-ECU30は、例えば、VSC-ECU30に接続された車速センサ(不図示)により検知された車両1の車速をステレオカメラECU10とEFI-ECU20などへ送信する。
【0045】
ステレオカメラECU10は、各種制御及び各種演算などを行うCPU11、各種プログラムや各種データを記憶するメモリ12、及び、バス60を介して他のECUなどと通信する通信ユニット(不図示)などを有し、ステレオカメラが撮影した画像に基づいて障害物(例えば先行車)と車両1との相対速度や車間距離などの算出を行うためのECUである。
【0046】
CPU11は、ボディECU40から急アクセル時加速抑制機能が有効であることを示す急アクセル時加速抑制機能有効通知情報を受信した場合(急アクセル時加速抑制機能を有効な状態に設定された場合)、メータECU50に対して急アクセル時加速抑制機能が有効な状態にあることの報知要求を行う。これにより、メータECU50は急アクセル時加速抑制機能が有効な状態にあることの報知を行う。
【0047】
また、CPU11は、ボディECU40から急アクセル時加速抑制機能が有効であることを示す急アクセル時加速抑制機能有効通知情報を受信した場合(急アクセル時加速抑制機能を有効な状態に設定された場合)、急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動を許可するか禁止するかを判定する急アクセル時加速抑制作動許可判定を定期的に行い、判定結果を例えばEFI-ECU20へ送信する。急アクセル時加速抑制作動許可判定では、CPU11は、(1)シフトポジションがP(パーキング:駐車、エンジン始動)及びN(ニュートラル:動力が伝わらない状態)以外のシフトポジションであること、且つ、(2)車速が30km/h以下であること、且つ、(3)ブレーキ作動中でない又はブレーキOFF後2秒以内でないのいずれかであること、且つ、(4)ウインカーが作動中でない又はウインカーOFF後2秒以内でないのいずれかであること、且つ、(5)急な上り坂でない(上り坂の傾斜角が予め定められた傾斜角よりも大きくない)こと、の全ての条件((1)~(5)の夫々を、以下では、適宜、「急アクセル時加速抑制作動許可条件」と記載する。)を満たすかを判定し、いずれか一つでも満たさない場合には急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制(第1加速抑制制御、第2加速抑制制御)の作動を禁止し、全てを満たす場合に急アクセル時加速抑制の作動を許可する。CPU11は、急アクセル時加速抑制作動許可判定の判定結果に基づく急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動の許可/禁止の情報をEFI-ECU20へ送信する。なお、本実施形態では、P及びN以外のシフトポジションとして、D(ドライブ:通常走行)、S(スポーツ:スポーティな走行、坂道や山間地などの走行)、R(リバース:後退)のシフトポジションがある。
【0048】
また、CPU11は、急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動の許可中にアクセルペダルの急踏みありの判定基準となるアクセル操作判定閾値(アクセルペダルの踏込み速度の閾値、アクセルペダルの踏込み量の閾値)、及び、急アクセル時加速抑制機能における第2加速抑制制御の作動中の上限車速をEFI-ECU20へ送信する。アクセル操作判定閾値(アクセルペダルの踏込み速度の閾値、アクセルペダルの踏込み量の閾値)や上限車速は前進時や後進時に応じて予め定められており、例えば、アクセルペダルの踏込み速度の閾値は400%/secであり、アクセルペダルの踏込み量の閾値は90%であり、上限車速は30km/hである。
【0049】
また、CPU11は、EFI-ECU20から急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動の許可中のアクセルペダルの急踏みありとの情報を受け取ると、メータECU50に対して急アクセル時加速抑制の作動の許可中の急アクセルペダル操作に対する警告の報知要求を行う。これにより、メータECU50は急アクセル時加速抑制の作動の許可中の急アクセルペダル操作に対する警告の報知を行う。
【0050】
EFI-ECU20は、各種制御及び各種演算などを行うCPU21、各種プログラムや各種データを記憶するメモリ22、及び、バス60を介して他のECUなどと通信する通信ユニット(不図示)などを有し、駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力(エンジン出力)を算出して算出したユニット駆動力(エンジン出力)を出力するために駆動ユニット(エンジン)70の燃料噴射量、吸入空気量などを制御するためのECUである。
【0051】
本実施形態では、EFI-ECU20のCPU21は、例えば、ステレオカメラECU10による急アクセル時加速抑制作動許可判定で急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動が許可された場合、急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動状態になる。
【0052】
CPU21は、急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動状態になると、アクセルペダルが早く強く踏み込まれたか否か(アクセルペダル急踏みありか否か)を判定する。当該判定では、CPU21は、アクセルペダルの踏み込み速度がアクセルペダルの踏込み速度の閾値を超え、且つ、アクセルペダルの踏込み量がアクセルペダルの踏込み量の閾値を超えているかを判定する。そして、CPU21は、アクセルペダルの踏み込み速度がアクセルペダルの踏込み速度の閾値を超え、且つ、アクセルペダルの踏込み量がアクセルペダルの踏込み量の閾値を超えていると判定した場合にアクセルペダル急踏みありと判定し、それ以外の場合はアクセルペダル急踏みなしと判定する。
【0053】
CPU21は、アクセルペダル急踏みありと判定した場合、第1加速抑制制御を行う状態に遷移して第1加速抑制制御を行う。第1加速抑制制御では、CPU21はスロットル全閉相当までユニット駆動力(駆動源の駆動力)を抑制する。第1加速抑制制御では、車両1はとろとろと動く程度である。
【0054】
CPU21は、第1加速抑制制御中に、アクセルペダルリリース後の第1所定時間(例えば、1.5秒)内にアクセルペダルが再度早く強く踏み込まれたか(再度のアクセルペダル急踏みありか)、又は、アクセルペダルの踏込みが第2所定時間(例えば、5秒)継続しているか否かを判定する。アクセルペダルリリースの判定は、アクセルペダルの踏込み量が所定の閾値(例えば、10%)以下になったか否かにより行われ、アクセルペダルの踏込み量が当該所定の閾値以下になった場合にアクセルペダルがリリースされたと判定される。
【0055】
CPU21は、アクセルペダルリリース後の第1所定時間(例えば、1.5秒)内に再度のアクセルペダル急踏みあり、又は、アクセルペダルの踏込みが第2所定時間継続していると判定した場合、運転者に加速の意図があるとみなして、第1加速抑制制御を行う状態から第2加速抑制制御を行う状態に遷移して第2加速抑制制御を行う。
【0056】
ここで、第2加速抑制制御での加速抑制の度合い(ユニット駆動力の抑制の度合い)は第1加速抑制制御での加速抑制の度合い(ユニット駆動力の抑制の度合い)よりも小さく、第2加速抑制制御では、車両1を緩やかな加速で上限車速(例えば、30km/h)まで加速する。
【0057】
第2加速抑制制御では、駆動ユニット(エンジン)70の要求ユニット駆動力をフィードバック制御により導出し、導出した要求ユニット駆動力に対して変化量の許容上限であるガード値を設定して変化量ガードを適用することで加速抑制の度合いを調節する。
【0058】
ここで、第2加速抑制制御の一例について説明する。この一例では、駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力を制御するために、ユニット駆動力に関わるアクセル開度率を制御する。当該制御は所定周期(例えば、0.125msec(ミリ秒))で繰り返し行われる。
【0059】
EFI-ECU20のCPU21は、フィードバック制御により、時間T(N)に、要求ユニット駆動力マップに基づいて、アクセル操作量に対応した要求ユニット駆動力(目標ユニット駆動力)を設定し、駆動ユニット(エンジン)70で発生するユニット駆動力が要求ユニット駆動力(目標ユニット駆動力)に近づくようにアクセル開度率を制御する。要求ユニット駆動力マップは、アクセル操作量が大きいほど、要求ユニット駆動力が大きくなるように、アクセル操作量と要求ユニット駆動力とを対応付けたデータである。なお、上記のフィードバック制御は一例であって、例えば、PID制御と呼ばれる制御を利用したフィードバック制御であってもよい。
【0060】
時間T(N)において、CPU21は、前回の時間T(N-ΔT)(ΔTは1周期の時間長であり、例えば、0.125msec(ミリ秒))で駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力の出力に用いたアクセル開度率に、アクセル開度率の変化量の許容上限であるガード値を加算し、加算値を時間T(N)でのアクセル開度率の上限値とする。CPU21は、フィードバック制御により導出したアクセル開度率に対して時間T(N)でのアクセル開度率の上限値以下に収まるように変化量ガードを適用し、時間T(N)で駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力の出力に用いるアクセル開度率を決定する。フィードバック制御により導出したアクセル開度率がアクセル開度率の上限値を上回るような場合には、駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力の出力に用いるアクセル開度率をアクセル開度率の上限値とする。この決定したアクセル開度率を用いて駆動ユニット(エンジン)70のユニット駆動力の出力を制御する。
【0061】
なお、急アクセル時加速抑制制御は、前進時及び後進時の夫々において行われる。前進時におけるガード値と、後進時におけるガード値とは、同じ値に設定してもよく、異なる値に設定してもよい。
【0062】
2.急アクセル時加速抑制状態制御処理
ボディECU40のCPU41において行われる急アクセル時加速抑制機能状態制御処理の処理フローについて図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0063】
急アクセル時加速抑制状態制御処理では、まず、CPU41は、運転席ドアの開操作が行われたか否かを判定する(ステップS1)。運転席ドアの開操作が行われていないと判定された場合には(ステップS1のNO)、ステップS1の処理に戻り、一方、運転席ドアの開操作が行われたと判定された場合には(ステップS1のYES)、ステップS2の処理に進む。
【0064】
CPU41は、運転席ドア開操作が行われた際、車室外運転席エリア83内に存在するキーを検出して検出したキーのキー識別情報(車室外運転席エリア内キー識別情報)をメモリ42に記憶する車室外運転席エリア内キー検出処理を行い(ステップS2)、ステップS3の処理に進む。
【0065】
CPU41は、IGスイッチオン操作が行われたか否かを判定する(ステップS3)。IGスイッチオン操作が行われていないと判定された場合(ステップS3のNO)、ステップS3の処理に戻り、一方、IGスイッチオン操作が行われたと判定された場合には(S3:YES)、ステップS4の処理に進む。
【0066】
CPU41は、Gスイッチオン操作が行われた際、車室内に存在するキーを検出して検出したキーのキー識別情報(車室内キー識別情報)をメモリ42に記憶する車室内キー検出処理を行い(ステップS4)、ステップS5の処理に進む。ここで、IGスイッチオン操作が行われた際に車室内には複数のキーが存在する場合があり、この場合には複数のキーそれぞれの識別情報(車室内キー識別情報)がメモリ42に記憶されることになる。
【0067】
CPU41は、ステップS2の車室外運転席エリア内キー検出処理においてメモリ42に記憶された車室外運転席エリア内キー識別情報と、ステップS4の車室内キー検出処理においてメモリ42に記憶された車室内キー識別情報とに基づいて、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在するかを判定する車室内存在判定処理を行う(ステップS5)。存在すると判定された場合(ステップS5のYES)、ステップS6の処理に進み、一方、存在しないと判定された場合(ステップS5のNO)、ステップS9の処理に進む。
【0068】
CPU41は、ステップS2の車室外運転席エリア内キー検出処理においてメモリ42に記憶された車室外運転席エリア内キー識別情報(車室内キー識別情報でもある)に対応付けてメモリ42に記憶されている加速抑制機能有効・無効キー情報に基づいて、運転席ドア開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキー(当該キーはIGスイッチオン操作が行われた際に車室内に存在する)が加速抑制機能有効キーであるか加速抑制機能無効キーであるかを判定する加速抑制機能有効・無効キー判定処理を行う(ステップS6)。加速抑制機能有効キーであると判定された場合(ステップS6のYES)、ステップS7の処理に進み、加速抑制機能有効キーでない、つまり、加速抑制機能無効キーであると判定された場合(ステップS6のNO)、ステップS8の処理に進む。
【0069】
ステップS7において、CPU41は、急アクセル時加速抑制機能を有効な状態になるように制御するとともに、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容を、急アクセル時加速抑制機能が有効な状態であることを示す情報に設定し(ステップS7)、図3の急アクセル時加速抑制状態制御処理を終了する。
【0070】
ステップS8において、CPU41は、急アクセル時加速抑制機能を無効な状態になるように制御するとともに、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報の内容を、急アクセル時加速抑制機能が無効な状態であることを示す情報に設定し(ステップS8)、図3の急アクセル時加速抑制状態制御処理を終了する。
【0071】
ステップS9において、CPU41は、急アクセル時加速抑制機能を、メモリ42に記憶されている急アクセル時加速抑制機能状態情報(有効な状態、無効な状態)の内容となるように、つまり、前回のIGスイッチオン操作が行われた際に制御した急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)となるように、制御して(ステップS9)、図3の急アクセル時加速抑制状態制御処理を終了する。
【0072】
3.急アクセル時加速抑制制御処理
3.1.急アクセル時加速抑制制御処理の処理フロー
EFI-ECU20のCPU21において行われる急アクセル時加速抑制制御処理の処理フローについて図4を参照しつつ詳細に説明する。図4の急アクセル時加速抑制制御処理の処理フローは、図3の急アクセル時加速抑制状態制御処理で急アクセル時加速抑制機能が有効な状態にされ、ステレオカメラECU10のCPU11により急アクセル時加速抑制作動許可判定で急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動が許可されてEFI-ECU20が急アクセル時加速抑制機能による急アクセル時加速抑制の作動状態になった場合に行われる処理フローである。
【0073】
急アクセル時加速抑制制御処理では、まず、CPU21は、アクセルペダルが早く強く踏み込まれたか否か(アクセルペダル急踏みありか否か)を判定する(ステップS51)。アクセルペダル急踏みなしと判定された場合(ステップS51のNO)、図4の加速抑制制御処理を終了する。一方、アクセルペダル急踏みありと判定された場合(ステップ5S1のYES)、ステップS52の処理に進む。
【0074】
CPU21は、第1加速抑制制御を行う状態に遷移して第1加速抑制制御を行う(ステップS52)。
【0075】
CPU21は、アクセルペダルリリース後の第1所定時間内にアクセルペダルが再度早く強く踏み込まれたか(再度のアクセルペダル急踏みありか)、又は、アクセルペダルの踏み込みが第2所定時間継続しているかを判定する(ステップS53)。アクセルペダルリリース後の第1所定時間内に再度のアクセルペダル急踏みあり、又は、アクセルペダルの踏み込みが第2所定時間継続していると判定された場合(ステップS53のYES)、ステップS4の処理に進む。一方、アクセルペダルの踏み込みが第2所定時間継続せず、アクセルペダルリリース後の第1所定時間内に再度のアクセルペダル急踏みがなかったと判定された場合(ステップS53のNO)、第1加速抑制制御を終了して図4の急アクセル時加速抑制制御処理を終了する。
【0076】
ステップS3のYESの場合、CPU21は、第1加速抑制制御を行う状態から第2加速抑制制御を行う状態に遷移し、第2加速抑制制御を行う(ステップS54)。第2加速抑制制御は第1加速抑制制御に比べて加速抑制の度合いが小さい。
【0077】
CPU21は、アクセルペダルがリリースされてアクセルペダルのリリース状態が第3所定時間(例えば、1.5秒)継続したか否かを判定する(ステップS55)。アクセルペダルがリリースされてアクセルペダルのリリース状態が第3所定時間継続していないと判定された場合(ステップS55のNO)、ステップS54の処理に戻り、第2加速抑制制御を継続する。一方、アクセルペダルがリリースされてアクセルペダルのリリース状態が第3所定時間継続したと判定された場合(ステップS55のYES)、第2加速抑制制御を終了して図4の急アクセル時加速抑制制御処理を終了する。
【0078】
3.2.急アクセル時加速抑制制御処理の具体例
図4の急アクセル時加速抑制制御処理の具体例について図5を参照しつつ詳細に説明する。図5は、図4の急アクセル時加速抑制制御処理の具体例を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
【0079】
図5の急アクセル時加速抑制制御処理の具体例では、急アクセル時加速抑制機能状態制御処理で急アクセル時加速抑制機能が有効な状態になっている。
【0080】
時間T1までに、シフトポジションがP又はNからD又はSになり、ストップランプSWがONからOFFになる。
【0081】
ステレオカメラECU10のCPU11は、急アクセル時加速抑制作動許可判定を行う。CPU11は、時間T1において、上記の急アクセル時加速抑制作動許可条件の全てを満たしたと判定し、急アクセル時加速抑制機能の作動を禁止から許可にする。
【0082】
運転者はアクセルペダルを踏み込み、アクセルペダルの踏込み量が増加する。この運転者によるアクセルペダルの踏込み量の増加に伴い、ユニット駆動力が増大し、車速も大きくなっていく。
【0083】
EFI-ECU20のCPU21は、アクセルペダルが早く強く踏み込まれたか否か(アクセルペダル急踏みありか否か)を判定する。CPU21は、時間T2において、アクセルペダル急踏みありと判定する。アクセルペダル急踏みありとの判定により、CPU21は、第1加速抑制制御を行う状態に遷移し(第1加速抑制制御の作動外から作動に変化し)、第1加速抑制制御を行う。CPU21の第1加速抑制制御によりユニット駆動力は略0に抑制される。また、ユニット駆動力が略0に抑制されることにより、車速が小さくなっていく。
【0084】
CPU21は、アクセルペダルリリース後の第1所定時間内にアクセルペダルが再度早く強く踏み込まれたか(再度のアクセルペダル急踏みありか)、又は、アクセルペダルの踏み込みが第2所定時間継続しているかを判定する。CPU21は、時間T3において、アクセルペダルの踏み込みが第2所定時間継続していると判定し、第1加速抑制制御を行う状態から第2加速抑制制御を行う状態に遷移し(第1加速抑制制御の作動から作動外に変化し、第2加速抑制制御の作動外から作動に変化し)、第2加速抑制制御を行う。
【0085】
第2加速抑制制御では、CPU21は、フィードバック制御により導出したユニット駆動力に対して所定時間当たりの変化量の許容上限であるガード値を設定して、ユニット駆動力を抑制する。
【0086】
CPU21は、アクセルペダルがリリースされてアクセルペダルのリリース状態が第3所定時間継続したか否かを判定する。CPU21は、時間T4に、アクセルペダルのリリース状態が第3所定時間継続したと判定し、第2加速抑制制御の状態を終了する(第2加速抑制制御の作動から作動外に変化する)。これにより、時間T4以降、アクセルペダルの踏込みにより急アクセル時加速抑制機能の上限車速を超える車速がでるようになる。
【0087】
3.効果
車両1のドアをロックしない車両の使われ方がされる場合でも運転者が車両1の車内に乗り込む際には運転席ドア80Dを開く開操作が行われる。また、車両1の運転席ドア80Dを開く開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在するキーは車両1の運転者が所持するキーである可能性が高い。
【0088】
以上の実施形態によれば、IGスイッチオン操作が行われた際に車両1の運転者が所持するキーである可能性が高い車両1の運転席ドア80Dを開く開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在するキーの種類を判定して急アクセル時加速抑制機能を有効な状態にするか無効な状態にするかを制御できるため、IGスイッチオン操作を行った運転者が意図する急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性を高くすることができる。
【0089】
運転席ドア80Dの開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在するキーを所持する人が車両1を運転する可能性が高いが、例えば運転席ドア80Dを開けるのを手伝っただけで車両1を運転しない場合などがあり、車室外運転席エリア83に存在するキーを所持する人が車両1を運転しない可能性もある。
【0090】
これによれば、車両の運転席のドアを開く開操作が行われた際に、所定のエリアに存在する所定の携帯機の識別情報を保持しておくことにより、駆動源の始動操作が行われた際に、例えば車室内に複数の携帯機があっても、所定の携帯機が車室内に存在するかを判断でき、駆動源の始動操作を行った運転者が意図する加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性を高くすることができる。
【0091】
上記の実施形態によれば、運転席ドア80Dを開く開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオン操作が行われた際に、車室内にある場合(第1のケース)、運転席ドア80Dの開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在した携帯機の所持者が車両1を運転する可能性がより高くなる。このため、第1のケースの場合、運転席ドア80Dの開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーを利用して急アクセル時加速抑制機能の状態を設定することにより、IGスイッチオン操作を行った運転者が意図する急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性をより一層高くすることができる。また、車両1の運転席ドア80Dの開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが、IGスイッチオンが行われた際に、車室内に存在しない場合(第2のケース)、IGスイッチオン操作を行った運転者は車両1の運転席ドア80Dの開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーを所持していないことになる。このため、第2のケースの場合、IGスイッチオン操作を行った運転者が所持していないキーで急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)を制御することを防止できる。
【0092】
また、IGスイッチオン操作が行われた際に、例えば車室内に複数のキーがあっても、運転席ドア80Dを開く開操作が行われた際に車室外運転席エリア83に存在したキーが車室内に存在するかを判断でき、IGスイッチオン操作を行った運転者が意図する急アクセル時加速抑制機能の状態(有効な状態、無効な状態)になる可能性を高くすることができる。
【0093】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、エンジン車を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハイブリッド車や電気自動車などであってもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、ペダル式のアクセルを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えばグリップ式のアクセルなどであってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、急アクセル時加速抑制機能における第1加速抑制制御及び第2加速抑制制御では、加速抑制のための対象をユニット駆動力(エンジン出力)として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、加速抑制のための対象をブレーキ力とし、加速抑制の度合いを大きくする場合、ブレーキ力を大きくするようにしてもよい。
【0097】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0098】
本発明は、車両の加速を抑制する加速抑制機能を有する車両用制御装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1:車両
5:車両用制御システム
10:ステレオカメラECU
20:EFI-ECU
30:VSC-ECU
40:ボディECU
50:メータECU
図1
図2
図3
図4
図5