(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167553
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】カーテンウォールの取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/90 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E04B2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078828
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 英一
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002NA04
2E002NB02
2E002PA04
2E002RA03
2E002RB01
2E002TA01
2E002TA03
2E002XA03
(57)【要約】
【課題】裏板が溝部から脱落することをなくし得るカーテンウォールの取付構造を提供すること。
【解決手段】カーテンウォールの取付構造10では、ブラケット4は、上固定片部41と、下固定片部42と、上固定片部41および下固定片部42を連結すると共に、ブラケット4をファスナー2に固定するボルト91が挿通される挿通孔45が形成される連結片部43とを有する。連結片部43は、左右方向に延びる溝部46を形成する。溝部46には、ボルト91と螺合する螺合孔51を有する裏板5が左右方向に移動可能に配置される。取付構造10には、裏板5の溝部46に対する左右方向の所定量以上の移動を規制する規制部材としてのパネル落下防止材6が構成されることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に固定されるファスナーに対してカーテンウォールに固定されるブラケットを取り付けるカーテンウォールの取付構造であって、
前記ブラケットは、前記ファスナーに固定するボルトが挿通される挿通孔が形成される連結片部を有し、
前記連結片部は、左右方向に延びる溝部を形成し、
前記溝部には、前記ボルトと螺合する螺合孔を有する裏板が左右方向に移動可能に配置され、
前記取付構造には、前記裏板の前記溝部に対する左右方向の所定量以上の移動を規制する規制部材が構成される
ことを特徴とするカーテンウォールの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカーテンウォールの取付構造において、
前記カーテンウォールは、枠体および前記枠体内に配置されるパネルを有するカーテンウォールユニットを有し、
前記パネルには、左右方向に延びるパネル落下防止材が取り付けられ、
前記パネル落下防止材は、前記パネルに固定される基端部と、前記連結片部と前記裏板との間で前記ボルトが挿通される固定部とを有し、
前記パネル落下防止材の少なくとも一部は、前記裏板に対して左右方向に対向する位置に配置され、
前記パネル落下防止材が前記規制部材として構成される
ことを特徴とするカーテンウォールの取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載のカーテンウォールの取付構造において、
前記連結片部には、軸部材が前記裏板側に突出して設けられ、
前記裏板には、前記軸部材を間にして左右方向で対向する一対の側面が形成され、
前記規制部材は、前記軸部材で構成される
ことを特徴とするカーテンウォールの取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載のカーテンウォールの取付構造において、
前記ブラケットは、前記溝部の左右方向における開口が形成される一対の側面を有し、
前記一対の側面のうち一方の側面には、第一規制具が取り付けられ、
前記一対の側面のうち他方の側面には、第二規制具が取り付けられ、
前記第一規制具は、その少なくとも一部が前記裏板に対して左右方向に重なる位置に配置され、
前記第二規制具は、その少なくとも一部が前記裏板に対して左右方向に重なる位置に配置され、
前記規制部材は、前記第一規制具および前記第二規制具によって構成される
ことを特徴とするカーテンウォールの取付構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーテンウォールの取付構造において、
前記カーテンウォールは、左右方向に隣り合う二つのカーテンウォールユニットを有し、
一つの前記ファスナーに対して二つのブラケットが取り付けられ、
前記二つのブラケットのうち一方のブラケットは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のブラケットで構成されると共にその前記挿通孔が前記ボルトに対して左右方向の間隔を隔てる形状とされ、
前記一方のブラケットは、前記ファスナーに対して左右方向に移動可能に取り付けられ、
前記二つのブラケットのうち他方のブラケットは、前記ファスナーに対して左右方向に不動に取り付けられる
ことを特徴とするカーテンウォールの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体にカーテンウォールを取り付けるカーテンウォールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物躯体に固定されたファスナーに対して、カーテンウォールを構成する複数のカーテンウォールユニットの縦枠に固定されたブラケットを取り付けるカーテンウォールの取付構造が知られている(特許文献1参照)。ファスナーは、カーテンウォールの見込み方向に沿った板状の固定部と、上下方向に沿った板状の取付部とを有しており、ボルトおよびナットによって固定部が建物躯体に固定されている。ブラケットは、縦枠に固定される固定部と、ファスナーの取付部に対向し且つ連結される対向部と、固定ファスナーの取付部によって下方から支持される支持部とを有している。ブラケットの固定部は、対向部の上側および下側に形成されている。対向部は、ブラケットの固定部に対して取付部側に突出して配置されている。支持部は、ブラケットの固定部の上側部分から取付部側に突出し且つ当該取付部に対して上方に配置されており、この支持部には、当該取付部に当接する上下方向に沿ったボルトが螺合している。
ブラケットの対向部とカーテンウォールユニットの縦枠との間には、左右方向に延びる溝部が形成されており、この溝部には、螺合孔を有する装着部材(裏板)が配置されている。また、ファスナーの取付部には上下方向に沿った長孔が形成されており、ブラケットの対向部には挿通孔が形成されている。この長孔および挿通孔には、ボルトが挿通されており、このボルトが溝部に配置された装着部材の螺合孔に螺合することで、ファスナーにブラケットを取り付けた状態とし、カーテンウォールの取付構造を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のカーテンウォールの取付構造では、ブラケットの溝部が左右方向に延びているので、この溝部に配置される装着部材がボルトと螺合していない状態では、当該装着部材が溝部から左右方向に脱落するおそれがある。このため、ブラケットにおいて挿通孔と装着部材の螺合孔とに結束バンドなどを通して対向部と装着部材を結束することで、装着部材の脱落を抑制することが考えられる。
しかし、この場合、結束バンドを前述した挿通孔および螺合孔に通すので、ボルトを挿通孔に挿通させて装着部材の螺合孔に螺合するためには結束バンドが邪魔となってしまう。このため、ボルトを装着部材に螺合する前の状態で結束バンドを切断して取り除くこととなってしまい、装着部材が溝部から左右方向に脱落するおそれのある状態が生じる。
【0005】
本発明の目的は、裏板が溝部から脱落することをなくし得るカーテンウォールの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカーテンウォールの取付構造は、建物躯体に固定されるファスナーに対してカーテンウォールに固定されるブラケットを取り付けるカーテンウォールの取付構造であって、前記ブラケットは、前記ファスナーに固定するボルトが挿通される挿通孔が形成される連結片部を有し、前記連結片部は、左右方向に延びる溝部を形成し、前記溝部には、前記ボルトと螺合する螺合孔を有する裏板が左右方向に移動可能に配置され、前記取付構造には、前記裏板の前記溝部に対する左右方向の所定量以上の移動を規制する規制部材が構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、裏板が溝部から脱落することをなくし得るカーテンウォールの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に関するカーテンウォールを示す外観姿図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るカーテンウォールの取付構造を示す縦断面図。
【
図3】第1実施形態に係るカーテンウォールの取付構造を拡大して示す縦断面図。
【
図4】第1実施形態に係るカーテンウォールの取付構造を室内側から示す説明図。
【
図5】第1実施形態に係るカーテンウォールの取付構造を示す横断面図。
【
図6】第1実施形態に係るカーテンウォールの取付構造のパネル落下防止材を示す説明図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るカーテンウォールを示す縦断面図。
【
図8】第2実施形態に係るカーテンウォールの取付構造を室内側から示す説明図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るカーテンウォールを示す縦断面図。
【
図10】第2実施形態に係るカーテンウォールの取付構造を室内側から示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図2において、第1実施形態に係るカーテンウォールの取付構造10(以下、取付構造と称する)は、建物躯体1に固定されるファスナー2に対して、建物の外壁面を構成するカーテンウォール3に固定されるブラケット4を取り付ける構成とされている。
建物躯体は、
図2に示すように、床スラブ1A、吊り天井1Bを有している。カーテンウォール3は、
図1に示すように、カーテンウォールユニット30が上下左右に並設されることによって構成されている。カーテンウォールユニット30は、枠体31および枠体31内に配置されるパネル32および耐火ボード33(パネル)を有している。枠体31はアルミ押出形材製の上枠34、下枠35、無目36および左右の縦枠37を枠組みして構成されている。パネル32は、下枠35、無目36および左右の縦枠37で区画される枠内と、上枠34、無目36および左右の縦枠37で区画される枠内とに配置されており、耐火ボード33は、上枠34、無目36および左右の縦枠37で区画される枠内にあるパネル32に対して室内側に配置されている。カーテンウォールユニット30は、その縦枠37にブラケット4が固定されており、ブラケット4およびファスナー2を介して建物躯体1に取り付けられている。
以下の説明において、取付構造10の左右方向をX軸方向とし、取付構造10の上下方向をY軸方向とし、取付構造10の見込み方向をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。なお、建物躯体1は室内側に配置され、カーテンウォール3は室外側に配置される。
【0010】
取付構造10は、
図3から
図5に示すように、ファスナー2、ブラケット4(4A,4B)、裏板5およびパネル落下防止材6(規制部材)で構成されている。ブラケット4は、一つのファスナー2に対して二つ締結されている。一方のブラケット4Aは、X軸方向に隣り合う二つのカーテンウォールユニット30の一方にボルト止めされており、取付状態でファスナー2に対してX軸方向に移動可能な状態となっている。他方のブラケット4Bは、X軸方向に隣り合う二つのカーテンウォールユニット30の他方にボルト止めされており、取付状態でファスナー2に対してX軸方向に不動の状態となっている。
【0011】
ファスナー2は、建物躯体1にボルト止めされる板状の固定部21と、ブラケット4が取り付けられる板状の取付部22とを有している。固定部21は、Z軸方向に沿っており、その室外端部に取付部22が連続して断面略L字状に形成されている。
固定部21には、Z軸方向に沿った長孔23が形成されている。固定部21は、長孔23を挿通するボルト91が建物躯体1に形成されたX軸方向に沿った長孔1Cにも挿通されてナットと螺合することで、建物躯体1にボルト止めされている。なお、長孔23,1Cが形成されているので、固定部21を建物躯体1に固定する固定位置はX,Z軸方向に調整可能である。
取付部22は、固定部21の室外端部から上方に延びて形成されている。取付部22には、Y軸方向に沿った長孔24が形成されており、この長孔24にはファスナー2およびブラケット4を締結するボルト91がY軸方向に位置調整可能に挿通されている。
【0012】
ブラケット4Aは、縦枠37に固定される上固定片部41と、上固定片部41の位置に対して下方の位置で縦枠37に固定される下固定片部42と、上固定片部41および下固定片部42を連結する連結片部43と、取付部22に支持される支持部44とを有している。
上固定片部41および下固定片部42は、Y軸方向に沿って板状に形成されており、ボルト92が挿通される孔がそれぞれ形成されている。ボルト92は、上固定片部41および下固定片部42の孔および縦枠37を挿通し、且つ、縦枠37内に配置された裏板材38に螺合固定されている。これにより、上固定片部41および下固定片部42はボルト92によって縦枠37に固定されている。
連結片部43は、上固定片部41および下固定片部42に対して室内側(建物躯体1側)に突出している。連結片部43には、ボルト91が挿通される挿通孔45が形成されていると共に、その室外側に溝部46が形成されている。挿通孔45は、ボルト91に対してY軸方向の間隔を隔てる横長の楕円形状に形成されている。溝部46は、連結片部43の室内側の面を構成するY軸方向に沿った室外面431と、室外面431の上縁および下縁に連続するZ軸方向に沿った一対の側面432,433とによって形成されている。なお、上固定片部41の下端は、側面432よりも下方に突出しており、下固定片部42の上端は、側面433よりも上方に突出している。この連結片部43は、断面略コ字状に形成されており、溝部46のX軸方向における両端は開口している。
支持部44は、上固定片部41の上端から室内側に突出していると共に後述するボルト93が挿通される孔が形成された支持片部441と、支持片部441に保持される裏板材442と、上方から支持片部441に挿通され且つ裏板材442に螺合するボルト93とを有している。この支持部44は、ボルト93の先端が取付部22の上縁に当接することで、ファスナー2に支持されている。ブラケット4は、ボルト93を回転させることで、ファスナー2に対する上下位置を調整可能となっている。なお、ボルト93には、支持片部441に対して上方の位置に配置されるナット9Aが螺合している。
なお、ブラケット4Bは、ブラケット4Aと概略同様に構成されているが、楕円形状の挿通孔45の代わりに、真円形状の挿通孔45Bが形成されている点でブラケット4Aと構成が相違する。
【0013】
裏板5は、矩形板状に形成されており、ボルト91が螺合する螺合孔51が形成されている。裏板5は、溝部46の上下寸法と同等の上下寸法を有しており、溝部46のX軸方向における幅寸法よりも小さい幅寸法を有しており、溝部46のZ軸方向における見込み寸法よりも小さい見込み寸法を有しており、X軸方向にスライド移動可能に溝部46に配置されている。
【0014】
パネル落下防止材6は、
図6に示すように、X軸方向に延びて板状に形成されており、耐火ボード33にボルト止めされる基端部61と、連結片部43と裏板5との間でボルト91が挿通される固定部62と、基端部61および固定部62を連続する連続部63と、固定部62に連続する先端部64とを有している。
基端部61には、ボルト94が挿通される孔611が形成されている。パネル落下防止材6は、孔611に挿通されたボルト94が耐火ボード33にねじ込まれることによって当該耐火ボード33に取り付けられている。
連続部63は、基端部61に対して室内側に折曲されていると共に固定部62に対して室外側(カーテンウォール3側)に折曲されており、
図5に示すように、少なくとも一部が裏板5に対してX軸方向に対向して配置されている。連続部63の対向部分と取付状態の裏板5とのX軸方向の間隔は、裏板5の幅寸法よりも小さい寸法とされている。このため、裏板5の非取付状態において、裏板5がX軸方向にスライド移動しても連続部63が裏板5に当接することで、裏板5の溝部46に対するX軸方向の重なり代を保つことができ、裏板5が溝部46から連続部63側に脱落することを抑制できる。
固定部62は、連結片部43と裏板5とによってZ軸方向に挟み込まれており、ボルト91が挿通される孔621が形成されている。パネル落下防止材6がブラケット4Aに取り付けられるものである場合には、孔621は挿通孔45の形状に合わせて楕円形状に形成される。また、パネル落下防止材6がブラケット4Bに取り付けられるものである場合には、孔621は挿通孔45Bの形状に合わせて真円形状に形成されてもよいが、前述した楕円形状に形成されていてもよい。パネル落下防止材6は、ボルト91および裏板5の螺合によってファスナー2、ブラケット4、裏板5とともに締結されている。このため、パネル落下防止材6は、耐火ボード33をブラケット4およびファスナー2に連結しており、当該耐火ボード33が枠体31から外れて落下するおそれを低減している。
先端部64は、固定部62に対して室外側に折曲されており、少なくとも一部が裏板5に対してX軸方向に対向する位置に配置されている。裏板5は、X軸方向において先端部64と連続部63との間に配置されている。先端部64と取付状態の裏板5とのX軸方向の間隔は裏板5の幅寸法よりも小さい。このため、裏板5の非取付状態において、裏板5がX軸方向にスライド移動しても先端部64が裏板5に当接することで、裏板5の溝部46に対するX軸方向の重なり代を保つことができ、裏板5が溝部46から先端部64側に脱落することを抑制できる。
このパネル落下防止材6は、前述した連続部63および先端部64を有することで、裏板5の溝部46に対する所定量以上の移動を規制する規制部材として構成される。
【0015】
以上の取付構造10でカーテンウォール3を建物躯体1に取り付ける手順は次の通りである。
まず、ブラケット4の上固定片部41および下固定片部42をカーテンウォールユニットの縦枠37にボルト止めし、且つ、パネル落下防止材6を耐火ボード33にボルト止めする。一方、建物躯体1には、ファスナー2の固定部21をボルト止めする。
次に、カーテンウォールユニット30を建物躯体1に対して所定位置に配置し、ボルト91によってファスナー2の取付部22、ブラケット4の連結片部43、パネル落下防止材6の固定部62および裏板5を締結する。ここで、裏板5は、ブラケット4の傾きによってX軸方向に所定量スライド移動し得るが、裏板5の所定量以上のスライド移動はパネル落下防止材6の連続部63または先端部64が当該裏板5に当接することで規制でき、このため、裏板5が溝部46から脱落することを抑制できる。
また、ブラケット4をファスナー2に取り付けた状態では、支持部44のボルト93が取付部22の上縁に当接し、これにより、ブラケット4は、ファスナー2に支持される。
なお、取付構造10では、ブラケット4Bはファスナー2に対してX軸方向に不動に取り付けられているが、ブラケット4Aはファスナー2に対してX軸方向に移動可能に取り付けられているので、枠体31に生じ得るX軸方向の熱伸びなどに対応して、ブラケット4AがX軸方向に移動することが可能となっている。
【0016】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図7および
図8において、第2実施形態に係るカーテンウォールの取付構造10Bは、第1実施形態に係る取付構造10と概略同様に構成されているが、パネル落下防止材6の先端が折曲して構成されてなく、連結片部43に軸部材としてのネジ7が螺合し且つ室外面431から室外側(裏板5側)に突出して配置されており、裏板5およびパネル落下防止材6には、ネジ7の先端が配置される凹部52が形成されている点で取付構造10とは構成が異なっている。
連結片部43のうちY軸方向に沿った部分における上部には、ザグリ加工が室内側から施されており、ザグリ加工が施された部分からネジ7がZ軸方向に通されている。
裏板5の凹部52は、X軸方向で対向する一対の側面521およびX軸方向に沿った底面522を有すると共にZ軸方向における端部で開口している。側面521はY軸方向に沿っている。一対の側面521のX軸方向の寸法からネジ7の径寸法を差し引いた寸法は、裏板5のX軸方向のスライド移動を許容する距離に対応している。なお、パネル落下防止材6の固定部62にも同様に凹部52が形成されている。
この取付構造10Bでは、ネジ7が規制部材として構成されており、裏板5がX軸方向にスライド移動すると、ネジ7の先端が裏板5の凹部52の側面521に当接するので、裏板5の所定量以上のスライド移動が規制され、裏板5が溝部46から脱落することを抑制できる。
【0017】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図9および
図10において、第3実施形態に係るカーテンウォールの取付構造10Cは、第1実施形態に係る取付構造10と概略同様に構成されているが、パネル落下防止材6の先端が折曲して構成されてなく、ブラケット4のうち溝部46の左右の開口を形成する一対の側面401,402に対して第一規制具8および第二規制具9が取り付けられている点で取付構造10とは構成が異なっている。
第一規制具8は、頭部81および軸部82を有するネジ83と、軸部82に挿通される座金84とを有しており、軸部82が側面401に形成された孔403に螺合することでブラケット4に着脱可能に取り付けられる。孔403は、ブラケット4にカーテンウォール3から力が極力加わらない位置に形成されており、本実施形態では、上固定片部41の下端の位置に形成されている。上固定片部41は、孔403よりも上方の位置で縦枠37にボルト止めされている。座金84は頭部81の径寸法よりも大きい径寸法を有している。
ネジ83の頭部81および座金84は、それぞれの少なくとも一部が裏板5に対してX軸方向に重なる位置に配置されている。
なお、第二規制具9は、第一規制具8と同様に構成されてブラケット4の側面402に取り付けられており、第二規制具9の頭部81および座金84のそれぞれの少なくとも一部が裏板5に対してX軸方向に重なる位置に配置されている。
この取付構造10Cでは、第一規制具8および第二規制具9によって規制部材が構成されており、裏板5がX軸方向にスライド移動すると、第一規制具8および第二規制具9のうち一方の座金84が裏板5に当接するので、裏板5の所定量以上のスライド移動が規制され、裏板5が溝部46から脱落することを抑制できる。
【0018】
[変形例]
第1,2,3実施形態では、一つのファスナー2に対して二つのブラケット4A,4Bが取り付けられているが、ブラケット4A,4Bの一方だけが取り付けられていてもよい、また、ブラケット4A,4Bの双方に楕円形状の挿通孔45を形成してもよく、また、カーテンウォール3のX軸方向の熱伸びなどを考慮しなくてよい場合には、ブラケット4A,4Bの双方に真円形状の挿通孔45Bを形成してもよい。
第2,3実施形態では、パネル落下防止材6が取り付けられているが、この構成を省略してもよい。
第3実施形態では、第一規制具8および第二規制具9は、ネジ83および座金84を有しているが、座金84の構成を省略してもよい。この場合、ネジ83の頭部81がスライド移動する裏板5に対してX軸方向に当接する配置となる。
【0019】
[発明のまとめ]
本発明のカーテンウォールの取付構造は、建物躯体に固定されるファスナーに対してカーテンウォールに固定されるブラケットを取り付けるカーテンウォールの取付構造であって、前記ブラケットは、前記ファスナーに固定するボルトが挿通される挿通孔が形成される連結片部を有し、前記連結片部は、左右方向に延びる溝部を形成し、前記溝部には、前記ボルトと螺合する螺合孔を有する裏板が左右方向に移動可能に配置され、前記取付構造には、前記裏板の前記溝部に対する左右方向の所定量以上の移動を規制する規制部材が構成されることを特徴とする。
本発明のカーテンウォールの取付構造によれば、前述した規制部材を構成するので、ブラケットの挿通孔および裏板の螺合孔に通されてブラケットに裏板を結束する結束バンドのない状態でも、裏板が溝部に配置された状態を維持でき、これにより、裏板が溝部から脱落することをなくし得る。
【0020】
本発明のカーテンウォールの取付構造では、前記カーテンウォールは、枠体および前記枠体内に配置されるパネルを有するカーテンウォールユニットを有し、前記パネルには、左右方向に延びるパネル落下防止材が取り付けられ、前記パネル落下防止材は、前記パネルに固定される基端部と、前記連結片部と前記裏板との間で前記ボルトが挿通される固定部とを有し、前記パネル落下防止材の少なくとも一部は、前記裏板に対して左右方向に対向する位置に配置され、前記パネル落下防止材が前記規制部材として構成されてもよい。
このような構成によれば、例えば裏板が溝部に沿って左右方向に移動しても、この裏板がパネル落下防止材の前述した少なくとも一部に当接することで、裏板の左右方向の移動を規制することができる。また、パネル落下防止材を規制部材として構成するので、パネル落下防止材のほかに規制部材を別途設ける必要がなく、構成を簡略化できる。また、規制部材を構成するために裏板に加工を施す手間を要しない。
【0021】
本発明のカーテンウォールの取付構造では、前記裏板には、左右方向で対向する一対の側面を有すると共に前記連結片部側で開口する凹部が形成され、前記連結片部には、軸部材が前記裏板側に突出して設けられ、前記軸部材は、先端が前記凹部に配置され、前記規制部材は、前記軸部材で構成されてもよい。
このような構成によれば、例えば裏板が溝部に沿って左右方向に移動しても、左右方向において裏板の凹部の側面が連結片部の軸部材に当接することで、裏板の左右方向の移動を規制することができる。
【0022】
本発明のカーテンウォールの取付構造では、前記ブラケットは、前記溝部の左右方向における開口が形成される一対の側面を有し、前記一対の側面のうち一方の側面には、第一規制具が取り付けられ、前記一対の側面のうち他方の側面には、第二規制具が取り付けられ、前記第一規制具は、その少なくとも一部が前記裏板に対して左右方向に重なる位置に配置され、前記第二規制具は、その少なくとも一部が前記裏板に対して左右方向に重なる位置に配置され、前記規制部材は、前記第一規制具および前記第二規制具によって構成されてもよい。
このような構成によれば、例えば裏板が溝部に沿って左右方向に移動しても、左右方向において第一規制具および第二規制具のうち一方が裏板に当接することで、裏板の左右方向の移動を規制することができる。また、規制部材を構成するために裏板に加工を施す手間を要しない。
【0023】
本発明のカーテンウォールの取付構造では、前記カーテンウォールは、左右方向に隣り合う二つのカーテンウォールユニットを有し、一つの前記ファスナーに対して二つのブラケットが取り付けられ、前記二つのブラケットのうち一方のブラケットは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のブラケットで構成されると共にその前記挿通孔が前記ボルトに対して左右方向の間隔を隔てる形状とされ、前記一方のブラケットは、前記ファスナーに対して左右方向に移動可能に取り付けられ、前記二つのブラケットのうち他方のブラケットは、前記ファスナーに対して左右方向に不動に取り付けられてもよい。
このような構成によれば、一方のブラケットの挿通孔がボルトに対して左右方向の間隔を隔てる形状とされており、このボルトが螺合する裏板が前述した溝部に対して左右方向に移動可能に配置されることとなるので、カーテンウォールの熱伸びなどによる建物躯体に対する左右方向の位置ズレが生じても、ブラケットがファスナーに対して変位するので、カーテンウォールの熱伸びなどを許容することができる。このように構成されるカーテンウォールの取付構造においても、一方のブラケットが前述した規制部を有することになるので、前述同様に溝部から裏板が左右方向に脱落することをなくし得る。
【符号の説明】
【0024】
1…建物躯体、10,10B,10C…取付構造、1A…床スラブ、1B…吊り天井、1C,23,24…長孔、2…ファスナー、21…固定部、22…取付部、3…カーテンウォール、30…カーテンウォールユニット、31…枠体、32…パネル、33…耐火ボード(パネル)、34…上枠、35…下枠、36…無目、37…縦枠、38…裏板材、4(4A,4B)…ブラケット、401,402,521…側面、403,611,621…孔、41…上固定片部、42…下固定片部、43…連結片部、431…室外面、432,433…側面、44…支持部、441…支持片部、442…裏板材、45,45B…挿通孔、46…溝部、5…裏板、51…螺合孔、52…凹部、522…底面、6…パネル落下防止材(規制部材)、61…基端部、62…固定部、63…連続部、64…先端部、7…ネジ(軸部材、規制部材)、8…第一規制具(規制部材)、81…頭部、82…軸部、83…ネジ、84…座金、9…第二規制具(規制部材)、91,92,93,94…ボルト、9A…ナット。