(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167571
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】美容器及び美容器の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078856
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】飯村 瑠里子
(72)【発明者】
【氏名】干場 太一
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053FF04
4C053JJ04
4C053JJ13
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】施術感を損なわずに複数の美容効果を与える美容器を提供する。
【解決手段】美容器1は、使用者の顔面に装着されるマスク本体10と、使用者の左右の頬の位置に合わせてマスク本体10に設けられ、各々、使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極21を有する2つの電極群22と、1つの電極群22に含まれる電極21の極性を同一としつつ、電極群22ごとに電極21の極性を異ならせる第1モードと、1つの電極群22に含まれる少なくとも2つの電極21の間で通電させる第2モードとに切り替える制御部35aとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の顔面に装着されるマスク本体と、
前記使用者の左右の頬の位置に合わせて前記マスク本体に設けられ、各々、前記使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極を有する2つの電極群と、
1つの前記電極群に含まれる前記電極の極性を同一としつつ、前記電極群ごとに前記電極の前記極性を異ならせる第1モードと、1つの前記電極群に含まれる少なくとも2つの前記電極の間で通電させる第2モードとに切り替える制御部と、
を備える、美容器。
【請求項2】
前記制御部は、前記使用者の前記肌に対して美容成分を経皮浸透させる施術が行われるときに、前記第1モードを選択する、請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記電極が印加する前記電流の周波数は、100Hz以上、1MHz未満の範囲にある、請求項2に記載の美容器。
【請求項4】
前記制御部は、前記使用者の前記肌に対して筋肉運動を促進させる施術が行われるときに、前記第2モードを選択する、請求項1に記載の美容器。
【請求項5】
前記電極が印加する前記電流の周波数は、1Hz以上、300Hz未満の範囲にある、請求項4に記載の美容器。
【請求項6】
前記電極群における2つ以上の前記電極は、眼輪筋、大小頬骨筋及び上唇挙筋から選択された少なくとも1つの筋肉にまたがる位置に配置される、請求項4又は5に記載の美容器。
【請求項7】
使用者の顔面に装着されるマスク本体に前記使用者の左右の頬の位置に合わせて設けられ、各々、前記使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極を有する2つの電極群を備える美容器の制御方法であって、
1つの前記電極群に含まれる前記電極の極性を同一としつつ、前記電極群ごとに前記電極の前記極性を異ならせる工程と、
1つの前記電極群に含まれる少なくとも2つの前記電極の間で通電させる工程と、
を有する、美容器の制御方法。
【請求項8】
使用者の顔面に装着されるマスク本体部と、
前記使用者の左右の頬の位置に合わせて前記マスク本体部に設けられ、各々、前記使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極を有する2つの電極群部を有し、
さらに、前記2つの電極群部の前記電極の極性を変化させることができる電極極性変化部は、前記2つの電極群部のうち、1つの前記電極群部に含まれる前記電極の極性を同一としかつ前記電極群部ごとに前記電極の極性を異なるように変化させ、前記電極の極性が異なる前記電極群部の間で通電させる第1モードと、1つの前記電極群部に含まれる少なくとも2つの前記電極の間で通電させる第2モードとを切り替えることができるモード切替制御部とを有する美容器。
【請求項9】
前記電極極性変化部は、前記第1モードにおいて、前記電極の極性が異なる前記電極群部の間で通電させる電流の周波数を高くする請求項8に記載の美容器。
【請求項10】
前記電極極性変化部は、前記第1モードにおいて、前記電極の極性が異なる前記電極群部の間で通電させる前記電極の間の距離がより大きい電極同士になるように前記電極を選択することができる請求項8又は9に記載の美容器。
【請求項11】
前記電極極性変化部は、前記第2モードにおいて、不快な刺激を伴わない無痛部位間である無痛部位間部を検出し、さらに、前記無痛部位間部に近い少なくとも2つの前記電極の間で通電させる請求項8に記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、美容器及び美容器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の顔面に装着された状態で、肌に対して美容効果を与える美容器がある。特許文献1は、使用者の左右の頬に合わせ、頬骨筋に対応する部位に第1の周波数の電気刺激を与える電極、又は、咬筋に対応する部位に第2の周波数の電気刺激を与える電極の少なくともいずれかを備えた美容マスクに関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている美容器では、顔の片側での電極間で低周波電流を印加することで、所定の筋肉を刺激する施術が行われる。ここで、例えば、美容効果が得られる顔の範囲を広げるために、このような電気刺激を顔の左右の電極間で与えようとすると、使用者の歯髄等の神経に痛みを生じさせることがある。つまり、この美容器では、美容効果の種類、又は、美容効果が得られる顔の範囲が限定的となる。
【0005】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、施術感を損なわずに複数の美容効果を与える美容器又は美容器の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る美容器は、使用者の顔面に装着されるマスク本体と、使用者の左右の頬の位置に合わせてマスク本体に設けられ、各々、使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極を有する2つの電極群と、1つの電極群に含まれる電極の極性を同一としつつ、電極群ごとに電極の極性を異ならせる第1モードと、1つの電極群に含まれる少なくとも2つの電極の間で通電させる第2モードとに切り替える制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示の第2の態様は、使用者の顔面に装着されるマスク本体に使用者の左右の頬の位置に合わせて設けられ、各々、使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極を有する2つの電極群を備える美容器の制御方法であって、1つの電極群に含まれる電極の極性を同一としつつ、電極群ごとに電極の極性を異ならせる工程と、1つの電極群に含まれる少なくとも2つの電極の間で通電させる工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、施術感を損なわずに複数の美容効果を与える美容器又は美容器の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】マスク本体を顔面装着側から見た美容器の平面図である。
【
図3】マスク本体を顔面装着側から見た美容器の分解図である。
【
図4】第1モードにおける電極の極性設定等を説明する図である。
【
図5A】第2モードの第1例における電極の極性設定等を説明する図である。
【
図5B】第2モードの第2例における電極の極性設定等を説明する図である。
【
図5C】第2モードの第3例における電極の極性設定等を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
図1は、一実施形態に係る美容器1の斜視図である。
図2は、マスク本体10を使用者の顔面に装着される側から見た美容器1の平面図である。
図3は、マスク本体10を使用者の顔面に装着される側から見た美容器1の分解図である。
【0012】
美容器1は、少なくとも一部が使用者の顔面に装着される方式を採用し、電気刺激として顔の肌に対して電流を流すことで美容効果を与える装置である。なお、美容器1のように使用者の顔面に装着される方式を採用する美容器は、装着型美顔器又は美容マスクなどと呼称される場合もある。
【0013】
美容器1は、マスク本体10と、施術構造体20と、コントローラ30とを備える。以下、美容器1の使用者が立ち姿勢又は座り姿勢にあるときに真正面を向いている状態を基準として、マスク本体10における上下は、鉛直方向での上側又は下側に対応するものとする。また、マスク本体10における左右は、使用者の顔面の左頬側又は右頬側に対応するものとする。
【0014】
マスク本体10は、使用者が美容器1を使用するに際して、使用者の顔面に装着される。マスク本体10の材質は、シリコンゴム等の弾性材である。これにより、マスク本体10は、全体として柔軟性を有する弾性体となり、顔面に装着されたときには、内面10aが顔面の形状に追従して変形することで顔面に密着する。内面10aは、マスク本体10において、使用時に顔面と対向する側の面である。また、本実施形態では、マスク本体10は、目、鼻孔、口を除く顔面のほぼすべての領域を被覆し得る形状を有する。
【0015】
まず、マスク本体10は、孔部として、左右一対の第1露出孔11と、第2露出孔12と、第3露出孔13とを有する。第1露出孔11は、マスク本体10の上部に形成され、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の目を外方に露出させる。第2露出孔12は、マスク本体10の第1露出孔11の下方に形成され、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の鼻孔を外方に露出させる。第3露出孔13は、マスク本体10の第2露出孔12の下方に形成され、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の口を外方に露出させる。
【0016】
また、マスク本体10は、顔面を被覆する被覆部として、頬被覆部14と、額被覆部15と、顎被覆部16と、鼻被覆部17とを有する。まず、額被覆部15は、マスク本体10における第1露出孔11よりも上部に位置し、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の額に接触する。顎被覆部16は、マスク本体10における第3露出孔13よりも下部に位置し、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の顎に接触する。鼻被覆部17は、マスク本体10において第2露出孔12が外方に向けて斜め下方に開口するように第2露出孔12の上部に位置し、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の鼻に接触する。そして、頬被覆部14は、第1露出孔11よりも下方、かつ、鼻被覆部17、第2露出孔12、第3露出孔13及び顎被覆部16の左右両側に1つずつ位置し、マスク本体10が顔面に装着された際に使用者の左右いずれかの頬に対向する。
【0017】
また、マスク本体10は、内面10aにおいて頬被覆部14となる部位に、施術構造体20を収容しつつ保持する収容部14aを有する。収容部14aは、マスク本体10の左右両側に1つずつある頬被覆部14にそれぞれ設けられる。マスク本体10には、収容部14aと連通する溝部14bが形成されていてもよい。溝部14bは、施術構造体20に接続されたケーブル33の一部を収容する。
【0018】
更に、マスク本体10は、顔面に装着されるに際して、装着位置を維持させるために頭部に巻き付けられるベルト18を有する。ベルト18は、マスク本体10の左右側方の一方に連設される第1帯状体18aと、マスク本体10の左右側方の他方に連設される第2帯状体18bとを含む。第1帯状体18aは、先端側に第1面ファスナ18cを有する。一方、第2帯状体18bは、先端側に第2面ファスナ18dを有する。使用者は、マスク本体10を顔面に装着させる際に、第1帯状体18a及び第2帯状体18bを側方から頭部に巻き付け、後頭部側で第1面ファスナ18cと第2面ファスナ18dとを係合させる。これにより、ベルト18は、マスク本体10に所望の引っ張り力を与えながらマスク本体10を顔面に装着させることができる。
【0019】
施術構造体20は、電力が供給されることで動作し、使用者の肌に対して施術を行う。本実施形態では、施術構造体20は、2つある。一方の第1施術構造体20aは、左側の頬被覆部14に設けられている収容部14aに取り付けられる。他方の第2施術構造体20bは、右側の頬被覆部14に設けられている収容部14aに取り付けられる。第1施術構造体20aと第2施術構造体20bとは、互いに同一構造で、かつ、互いに対称形である。
【0020】
また、施術構造体20は、マスク本体10に対して着脱自在である。使用者は、施術構造体20を収容部14aから取り外すことで、マスク本体10及び施術構造体20の手入れを個別に行うことができる。但し、施術構造体20は、マスク本体10に対して一体的に設置されるものであってもよい。
【0021】
施術構造体20は、2つ以上の電極21を有する電極群22と、シリコンパッド23と、ハウジング24とを備える。以下、第1施術構造体20aが備える電極群22を第1電極群22aと表記し、第2施術構造体20bが備える電極群22を第2電極群22bと表記する。
【0022】
電極群22は、一例として、第1電極21a、第2電極21b、第3電極21c及び第4電極21dの4つの電極21を含む。電極21は、例えばチタン合金で構成され、使用者の肌と接触する平面部を含む、いわゆるボタン型の形状を有する。なお、電極21の平面形状は、本実施形態では円形であるが、その他の形状であってもよい。
【0023】
各々の電極21は、それぞれ、プラス極にも設定され得るし、マイナス極すなわちGNDにも設定され得る。少なくとも1つの電極21がプラス極に設定され、それ以外の少なくとも1つの電極21がマイナス極に設定されたとき、これらの電極21間には電位差が生じる。そして、電極群22を肌に接触させた状態でこれらの電極21間に通電することで、特定の周波数を有する交流電流が肌に印加される。
【0024】
また、一つの施術構造体20において、複数の電極21は、それぞれ、マスク本体10が顔面に装着されたときに使用者のそれぞれ異なる表情筋に対してまたがるように配置される。本実施形態における4つの電極21は、使用者の眼輪筋、大小頬骨筋、上唇挙筋にまたがるようにそれぞれ配置される。例えば、第1電極21aは、目じりの近傍に配置されてもよい。第2電極21bは、目頭の近傍に配置されてもよい。第3電極21cは、口角の近傍に配置されてもよい。また、第4電極21dは、最も顎に近い位置に配置されてもよい。
【0025】
シリコンパッド23は、施術構造体20において、マスク本体10が顔面に装着されたときに顔面と直接的に対向する部位に設けられる。顔面と対向するシリコンパッド23の表面形状は、マスク本体10の内面10aに沿う略円板状である。シリコンパッド23は、柔軟性を有するため、顔面と接触しても使用者に対して不快感を与えづらい。また、シリコンパッド23は、各々の電極21の配置に合わせて、使用者の顔面と接触する電極21の一部を凸状に露出させる複数の貫通孔23aを有する。
【0026】
ハウジング24は、例えば樹脂製であり、電極群22及びシリコンパッド23を保持する。施術構造体20がマスク本体10の収容部14aに取り付けられるとき、ハウジング24の一部が収容部14aの一部と係合する。
【0027】
コントローラ30は、使用者の操作により、施術構造体20に設けられている電極群22に電力を供給しつつ、施術構造体20の動作を制御する。コントローラ30は、例えば、コントローラ本体31と、キャップ32と、ケーブル33とを備える。
【0028】
コントローラ本体31は、電源供給部としての電池34と、制御部35aを実装する制御基板35と、操作部としてのスイッチボタン36とを備える。電池34は、制御基板35に電気的に接続されている。制御基板35は、一部がコントローラ本体31から外部に露出するコネクタ37に電気的に接続されている。スイッチボタン36は、少なくとも、電源のオン・オフの切り替え、又は、以下で詳説する第1モードと第2モードとの切り替えに際して使用者により操作される。
【0029】
キャップ32は、コントローラ本体31に設けられているコネクタ37を覆いつつ、コントローラ本体31に着脱自在に装着される。キャップ32がコントローラ本体31に装着されているとき、キャップ32の内部に設けられている不図示のコネクタは、コントローラ本体31のコネクタ37に嵌合する。
【0030】
ケーブル33は、施術構造体20に設けられている電極群22とコントローラ30とを電気的に接続する。ケーブル33の一端は、電極群22に接続され、ケーブル33の他端は、キャップ32のコネクタに接続される。電極群22は、ケーブル33を介して、コントローラ本体31に内蔵された電池34及び制御基板35に電気的に接続される。
【0031】
なお、コントローラ30の上記の構成は、一例である。例えば、ケーブル33は、施術構造体20と着脱自在であってもよい。また、電源の切り替え等を行うスイッチ類は、施術構造体20自体に設けられていてもよい。
【0032】
次に、美容器1の作用について説明する。
【0033】
まず、使用者は、キャップ32のコネクタをコントローラ本体31のコネクタ37に嵌合させることで、ケーブル33を介して、コントローラ本体31側の電池34及び制御基板35と、施術構造体20側の各々の電極21とが電気的に接続される。そして、使用者が一対の施術構造体20をマスク本体10に取り付けることで、施術前の美容器1の準備が完了する。
【0034】
次に、使用者は、美容器1を用いて施術する際の動作モード(以下、「施術モード」という。)を選択する。本実施形態では、制御部35aは、第1モードと第2モードとの少なくとも2つの施術モードを実行し得る。
【0035】
第1モードは、使用者の顔の広範囲に電流を流す施術モードである。第1モードでは、第1施術構造体20a側の第1電極群22aと第2施術構造体20b側の第2電極群22bとの間、すなわち、顔の左右間で通電される。
【0036】
図4は、第1モードにおける、各々の電極21の極性の設定と、使用者の肌内での電流の流れ範囲とを説明するための図である。具体的には、
図4では、使用者の顔面に装着される側から見たマスク本体10及び一対の施術構造体20が示されている。その上で、極性がプラス極に設定される電極21上には「+」と表記され、極性がマイナス極に設定される電極21上には「-」と表記されている。また、使用者の肌内での電流の流れ範囲が破線で概略的に表記されている。
【0037】
第1モードでは、制御部35aは、1つの電極群22に含まれる電極21の極性を同一としつつ、電極群22ごとに電極21の極性を異ならせる工程を実行する。
図4に示す例では、第1電極群22aに含まれる4つの電極21は、すべて、プラス極として同極に設定される。一方、第2電極群22bに含まれる4つの電極21は、すべて、マイナス極として同極に設定される。ただし、当該設定は、施術中のあるタイミングでの例示である。第1電極群22aに含まれる各々の電極21と、第2電極群22bに含まれる各々の電極21とは、一定の周期で互いに極性を反転させる矩形パルス波としての電流を印加する。
【0038】
このような第1モードは、例えば、使用者の肌に対して美容成分を経皮浸透させる施術モードとして好適である。ここで、本実施形態において適用し得る経皮浸透技術は、電気反発により浸透流を生成するイオン導入(イオントフォレーシス)であってもよい。イオン導入によれば、微弱電流を用いることで、美容成分としてのグリセリン又はビタミンC等の低分子成分を角質層の深部にまで浸透させることができる。この場合、制御部35aは、各々の電極21が印加する電流の周波数を、100Hz以上、10kHz未満の範囲に設定してもよい。
【0039】
また、本実施形態において適用し得る経皮浸透技術は、電界により脂質膜への小孔を形成するエレクトロポレーションを含むものであってもよい。エレクトロポレーションによれば、微弱電流を用いることで、一時的に皮膚に電気穿孔を形成することができる。この場合、制御部35aは、各々の電極21が印加する電流の周波数を、100Hz以上、1MHz未満の範囲に設定してもよい。そして、エレクトロポレーションに引き続きイオン導入を施すことで、美容成分としてのヒアルロン酸等の高分子成分を、形成された穿孔を通じて角質層の深部にまで浸透させることができる。
【0040】
例えばイオン導入により施術する第1モードが選択される場合、まず、使用者は、自身の顔面を、美容成分を含む化粧水等で湿らせる。次に、使用者は、マスク本体10の内面10aを顔面に接触させた状態で、第1帯状体18a及び第2帯状体18bを側方から後方に引っ張りながら頭部に巻き付け、後頭部側で第1面ファスナ18cと第2面ファスナ18dとを係合させる。これにより、ベルト18はマスク本体10に所望の引っ張り力を与えつつ、マスク本体10が顔面に装着される。そして、使用者は、コントローラ30のスイッチボタン36を操作して、電源をオンとし、引き続き、施術モードを第1モードに設定する。これにより、第1電極群22aと第2電極群22bとの間では、化粧水等を介して顔全体に微弱電流が流れ、第1モードによる施術が開始される。
【0041】
次に、第2モードは、使用者の顔の片側ごとの限定的な部位に電流を流す施術モードである。第2モードでは、第1施術構造体20a側の第1電極群22a内で、及び、第2施術構造体20b側の第2電極群22b内で、それぞれ個別に通電される。
【0042】
図5A~
図5Cは、第2モードにおける、各々の電極21の極性の設定と、使用者の肌内での電流の流れ範囲とを説明するための図である。具体的には、
図5A~
図5Cでは、
図4中のV-V断面に対応し、使用者の顔面に装着される側から見たマスク本体10及び第2施術構造体20bが示されている。その上で、極性がプラス極に設定される電極21上には「+」と表記され、極性がマイナス極に設定される電極21上には「-」と表記されている。また、使用者の肌内での電流の流れ範囲が破線で概略的に表記されている。
【0043】
第2モードでは、制御部35aは、1つの電極群22に含まれる少なくとも2つの電極21の間で通電させる工程を実行する。
図5Aに示す第1例では、第2施術構造体20bに備わる第2電極群22bについて、第1電極21aがプラス極に設定され、第2電極21bがマイナス極に設定される。この場合、電流の流れ範囲は、おおよそ眼輪筋の一部を挟み込む範囲となる。
図5Bに示す第2例では、同様に第2電極群22bについて、第1電極21aがプラス極に設定され、第3電極21cがマイナス極に設定される。この場合、電流の流れ範囲は、おおよそ大小頬骨筋を挟み込む範囲となる。また、
図5Cに示す第3例では、同様に第2電極群22bについて、第2電極21bがプラス極に設定され、第3電極21cがマイナス極に設定される。この場合、電流の流れ範囲は、おおよそ上唇挙筋を挟み込む範囲となる。なお、ここでは第2施術構造体20bに備わる第2電極群22bに着目したが、第1施術構造体20aに備わる第1電極群22aにおいても同様に設定される。
【0044】
このような第2モードは、例えば、使用者の肌に対して筋肉運動を促進させる施術モードとして好適である。ここで、本実施形態において適用し得る筋肉運動を促進させる施術は、電流で神経を興奮させて筋収縮を生じさせるEMS(Electrical Muscle Stimulation)であってもよい。EMSによれば、微弱電流を用いることで、顔の各部の筋肉に刺激を与えて、引き締め効果等を得ることができる。この場合、制御部35aは、適宜選択された電極21が印加する電流の周波数を、1Hz以上、300Hz未満の範囲に設定してもよい。
【0045】
例えばEMSにより施術する第2モードが選択される場合、まず、使用者は、マスク本体10の内面10aを顔面に接触させた状態で、上記説明と同様に、マスク本体10を顔面に装着する。そして、使用者は、コントローラ30のスイッチボタン36を操作して、電源をオンとした後、施術モードを第2モードに設定するとともに、刺激を受けたい顔上の部位を設定する。これにより、第1電極群22a及び第2電極群22bでは、それぞれ、所望の部位に合わせて適切な電極21の組合せ(チャンネル)が選択され、選択された電極21間で、肌を通じて微弱電流が流れ、第2モードによる施術が開始される。
【0046】
なお、実際に使用される電極21とその極性は、電流を流したい範囲、つまり電気刺激を与えたい顔上の部位によって、適宜選択され得る。このとき、プラス極として設定される電極21の数、及び、マイナス極として設定される電極21の数は、各々1つに限定されず、2つ以上であってもよい。また、チャンネル数についても、上記例示した2つに限定されず、3つ以上に設定されてもよい。
【0047】
また、第1モード及び第2モードともに、制御部35aは、使用者によるスイッチボタン36の操作により、施術時間、又は、各々の電極21が印加する電流の周波数等の各種条件を適宜調整してもよい。
【0048】
そして、第1モードによる施術が終了した後、使用者がコントローラ30のスイッチボタン36を操作することで引き続き第2モードによる施術を選択した場合には、制御部35aは、第1モードから第2モードへと施術モードを切り替える。同様に、第2モードによる施術が終了した後、使用者がコントローラ30のスイッチボタン36を操作することで引き続き第1モードによる施術を選択した場合には、制御部35aは、第2モードから第1モードへと施術モードを切り替える。
【0049】
次に、美容器1、及び、美容器1の制御方法の効果について説明する。
【0050】
まず、美容器1は、使用者の顔面に装着されるマスク本体10と、使用者の左右の頬の位置に合わせてマスク本体10に設けられ、各々、使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極21を有する2つの電極群22と、制御部35aとを備える。制御部35aは、1つの電極群22に含まれる電極21の極性を同一としつつ、電極群22ごとに電極21の極性を異ならせる第1モードと、1つの電極群22に含まれる少なくとも2つの電極21の間で通電させる第2モードとに切り替える。
【0051】
また、美容器1の制御方法は、1つの電極群22に含まれる電極21の極性を同一としつつ、電極群22ごとに電極21の極性を異ならせる工程と、1つの電極群22に含まれる少なくとも2つの電極21の間で通電させる工程と、を有する。
【0052】
このような美容器1及び美容器1の制御方法によれば、使用者の顔の広範囲に電流を流す施術モードとしての第1モードと、顔の片側ごとの限定的な部位に電流を流す施術モードとしての第2モードとを、適宜、切り替えつつ実施することができる。したがって、本実施形態によれば、1つの美容器1において、それぞれ異なる美容効果が得られる複数の施術を実施することができる。
【0053】
また、ある条件によっては、一方の施術モードでは適した条件であっても、他方の施術モードでは適した条件ではない場合もあり得る。例えば、電流の周波数で考えると、第2モードでは、いわゆる低周波電流が設定されることが望ましいとしても、同様の低周波電流を第1モードで設定された場合には、使用者の歯髄等の神経に痛みを生じさせることもあり得る。これに対して、本実施形態によれば、第1モードと第2モードとが区別され、かつ、適宜、所望の施術モードに切り替わる。したがって、各々の施術モードにおいてそれぞれ適した周波数を設定することができるので、いずれの施術モードが選択されたとしても、使用者が不快に感じづらい、すなわち、施術感を損ないづらいという利点がある。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、施術感を損なわずに複数の美容効果を与える美容器1及び美容器1の制御方法を提供することができる。
【0055】
また、美容器1では、制御部35aは、使用者の肌に対して美容成分を経皮浸透させる施術が行われるときに、第1モードを選択してもよい。
【0056】
この美容器1によれば、イオン導入等の経皮浸透させる施術に際して、使用者の顔の広範囲に電流を流す施術モードとしての第1モードが採用されるので、より顔全体に美容成分を浸透させやすくすることができる。
【0057】
また、美容器1では、電極21が印加する電流の周波数は、100Hz以上、1MHz未満の範囲にあってもよい。
【0058】
この美容器1によれば、第1モードでは、電極21が、おおよそ高周波電流を印加するにように設定されるため、神経等の望まない部位への刺激をより抑えやすくすることができる。
【0059】
また、美容器1では、制御部35aは、使用者の肌に対して筋肉運動を促進させる施術が行われるときに、第2モードを選択してもよい。
【0060】
この美容器1によれば、EMS等の筋肉運動を促進させる施術に際して、顔の片側ごとの限定的な部位に電流を流す施術モードとしての第2モードが採用されるので、神経等の望まない部位への刺激を避けながら所望の部位を刺激することができる。
【0061】
また、美容器1では、電極21が印加する電流の周波数は、1Hz以上、300Hz未満の範囲にあってもよい。
【0062】
この美容器1によれば、第2モードでは、電極21が、おおよそ低周波電流を印加するにように設定されるため、所望の部位をより刺激することができる。
【0063】
更に、美容器1では、電極群22における2つ以上の電極21は、眼輪筋、大小頬骨筋及び上唇挙筋から選択された少なくとも1つの筋肉にまたがる位置に配置されてもよい。
【0064】
この美容器1によれば、制御部35aは、刺激を与えたい顔上の部位に電流の流れ範囲が合うように、複数の電極21から適切な電極21を選択することができる。
【0065】
更に、本実施形態に係る美容器1は、以下のようにも規定され得る。
【0066】
美容器1は、使用者の顔面に装着されるマスク本体部と、使用者の左右の頬の位置に合わせてマスク本体部に設けられ、各々、使用者の肌に電流を流す2つ以上の電極を有する2つの電極群部を有してもよい。さらに、2つの電極群部の電極の極性を変化させることができる電極極性変化部は、第1モードと第2モードとを切り替えることができるモード切替制御部とを有してもよい。第1モードは、2つの電極群部のうち、1つの電極群部に含まれる電極の極性を同一としかつ電極群部ごとに電極の極性を異なるように変化させ、電極の極性が異なる電極群部の間で通電させる。第2モードは、1つの電極群部に含まれる少なくとも2つの電極の間で通電させる。
【0067】
また、美容器1では、電極極性変化部は、第1モードにおいて、電極の極性が異なる電極群部の間で通電させる電流の周波数を高くしてもよい。
【0068】
また、美容器1では、電極極性変化部は、第1モードにおいて、電極の極性が異なる電極群部の間で通電させる電極の間の距離がより大きい電極同士になるように電極を選択することができてもよい。
【0069】
更に、美容器1では、電極極性変化部は、第2モードにおいて、不快な刺激(痛み)を伴わない無痛部位間である無痛部位間部を検出し、さらに、無痛部位間部に近い少なくとも2つの電極の間で通電させてもよい。
【0070】
ここで、上記のマスク本体部は、マスク本体10に対応し、上記の電極群部は、2つ以上の電極21を有する電極群22に対応する構成要素である。また、上記の電極極性変化部及びモード切替制御部は、制御部35aに含まれ得る構成要素である。
【0071】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0072】
例えば、上記の説明では、各々の電極群22において、第1電極21a、第2電極21b、第3電極21c及び第4電極21dの4つの電極21を含む場合を例示した。しかし、本実施形態では、各々の電極群22において、少なくとも1つのチャンネルを構成し得るプラス極とマイナス極との2つの電極21が含まれればよいため、例えば、3つの電極21が含まれてもよいし、5つ以上の電極21が含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、施術感を損なわずに複数の美容効果を与える美容器に適用可能である。具体的には、家庭用又は業務用の各種の美容器に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 美容器
10 マスク本体
21 電極
21a 第1電極
21b 第2電極
21c 第3電極
21d 第4電極
22 電極群
22a 第1電極群
22b 第2電極群
35a 制御部