(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167575
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】合成まくらぎと、合成まくらぎの製造方法
(51)【国際特許分類】
E01B 7/22 20060101AFI20231116BHJP
E01B 3/44 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E01B7/22
E01B3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078861
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 祐也
(72)【発明者】
【氏名】玉川 新悟
(72)【発明者】
【氏名】安田 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 智之
(72)【発明者】
【氏名】増田 光男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎司
(57)【要約】
【課題】レール転換装置を収容する凹部を備えた合成まくらぎを提供する。
【解決手段】合成まくらぎ16は電気絶縁性の繊維で強化された樹脂51からなり、レール転換装置15を収容する凹部25を有している。凹部25は、底面60と、第1の内面61と、第2の内面62とを有している。第1の側壁部71と第2の側壁部72の水平方向に断面は、それぞれ、上面20から底面60に向かって厚さが増加する形状である。底面60と第1の内面61との間に第1の底面円弧部91が形成されている。底面60と第2の内面62との間に第2の底面円弧部92が形成されている。底面円弧部91,92の上下方向に沿う断面の曲率半径は、第1~第4のコーナー部81,82,83,84の曲率半径よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性の繊維によって強化された樹脂からなり、上面および下面と、第1側面および第2側面と、第1端面および第2端面と、前記上面に開口しレール転換装置を収容する凹部と、を備えた合成まくらぎであって、
前記凹部が、
レール転換装置を載置する底面と、
前記第1側面と対応した位置に形成され、前記上面から前記底面に向かって前記第1側面との間の距離が増加する方向に傾斜し、前記第1側面との間に第1の側壁部を規定する第1の内面と、
前記第2側面と対応した位置に形成され、前記上面から前記底面に向かって前記第2側面との間の距離が増加する方向に傾斜し、前記第2側面との間に第2の側壁部を規定する第2の内面と、
前記第1端面に沿う第1の内側端面と、
前記第2端面に沿う第2の内側端面と、
前記第1の内面と前記第1の内側端面との間の隅部に形成された第1のコーナー部と、
前記第1の内面と前記第2の内側端面との間の隅部に形成された第2のコーナー部と、
前記第2の内面と前記第1の内側端面との間の隅部に形成された第3のコーナー部と、
前記第2の内面と前記第2の内側端面との間の隅部に形成された第4のコーナー部と、
前記第1の内面と前記底面との間に形成され、上下方向に沿う断面の曲率半径が前記第1~第4のコーナー部のそれぞれの水平方向の断面の曲率半径よりも大きい第1の底面円弧部と、
前記第2の内面と前記底面との間に形成され、上下方向に沿う断面の曲率半径が前記第1~第4のコーナー部のそれぞれの前記曲率半径よりも大きい第2の底面円弧部と、
を具備したことを特徴とする合成まくらぎ。
【請求項2】
請求項1に記載の合成まくらぎにおいて、
前記第1端面と前記第1の内側端面との間に形成された第1のレール支持部と、
前記第2端面と前記第2の内側端面との間に形成された第2のレール支持部と、
を有した合成まくらぎ。
【請求項3】
請求項2に記載の合成まくらぎにおいて、
前記第1の側壁部および前記第2の側壁部の単位体積あたりの繊維の含有量が、前記第1のレール支持部および前記第2のレール支持部の単位体積あたりの繊維の含有量よりも大きい合成まくらぎ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の合成まくらぎにおいて、
前記第1の底面円弧部の前記曲率半径と前記第2の底面円弧部の前記曲率半径とが、それぞれ10mm以上40mm以下である合成まくらぎ。
【請求項5】
請求項1に記載の合成まくらぎを製造する製造方法であって、
外型の内側に、前記合成まくらぎの前記凹部と対応した形状の中子を配置し、
前記外型と前記中子との間に形成されたキャビティに、前記繊維を含有した硬化前の前記樹脂を供給し、
前記樹脂が硬化したのち、前記中子を前記外型から脱型することにより、前記合成まくらぎを一体成形することを特徴とする合成まくらぎの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の分岐器ポイント部に適した合成まくらぎに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、繊維強化樹脂(FRP)からなる合成まくらぎが知られている。また特許文献2に記載されているように、まくらぎに形成された凹部にレール転換装置を配置することも提案されている。特許文献1,2に記載された合成まくらぎは、マトリックス樹脂としてのポリウレタン系樹脂に多数のガラス繊維を含有させて固めたものである。
【0003】
レール転換装置は、基本レールに対して水平方向に移動可能なトングレールの位置をアクチュエータによって転換することにより、車両の進路を変えるようにしている。分岐器ポイント部に使用される合成まくらぎには、レール自体の重量やレール上を通過する車両の輪重以外に、水平方向の荷重が負荷される可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3872884号公報
【特許文献2】特開2020-94326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載されたように繊維で強化された合成まくらぎは、従来の木製まくらぎやコンクリート製まくらぎに匹敵する物性と曲げ強度が得られている。しかし分岐器ポイント部に使用される合成まくらぎのように、レール転換装置を収容する凹部が形成された合成まくらぎの場合には、凹部まわりの剪断強度や引張り等の応力に関して格別な配慮が必要とされた。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、レール転換装置を収容することができ、しかも剪断強度や引張り等の応力に対する強度が大きい分岐器ポイント部用の合成まくらぎを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態の合成まくらぎは、電気絶縁性の多数の繊維によって強化された樹脂からなり、上面および下面と、第1側面および第2側面と、第1端面および第2端面と、前記上面に開口しレール転換装置を収容する凹部とを備えている。前記凹部は、前記レール転換装置を載置する底面と、第1の内面および第2の内面と、第1の内面に沿う第1の内側端面と、前記第2の内面に沿う第2の内側端面とを含んでいる。
【0008】
前記第1の内面は、前記第1側面と対応した位置に形成され、前記上面から前記底面に向かって前記第1側面との間の距離が増加する方向に傾斜し、前記第1側面との間に第1の側壁部を形成している。前記第2の内面は、前記第2側面と対応した位置に形成され、前記上面から前記底面に向かって前記第2側面との間の距離が増加する方向に傾斜し、前記第2側面との間に第2の側壁部を形成している。
【0009】
さらに前記凹部は、第1のコーナー部と、第2のコーナー部と、第3のコーナー部と、第4のコーナー部と、第1の底面円弧部と、第2の底面円弧部とを含んでいる。前記第1のコーナー部は、前記第1の内面と前記第1の内側端面との間の隅部に形成されている。前記第2のコーナー部は、前記第1の内面と前記第2の内側端面との間の隅部に形成されている。前記第3のコーナー部は、前記第2の内面と前記第1の内側端面との間の隅部に形成されている。前記第4のコーナー部は、前記第2の内面と前記第2の内側端面との間の隅部に形成されている。
【0010】
前記第1の底面円弧部は前記第1の内面と前記底面との間に形成され、上下方向に沿う断面の曲率半径が前記第1~第4のコーナー部のそれぞれの水平方向の断面の曲率半径よりも大きい。前記第2の底面円弧部は前記第2の内面と前記底面との間に形成され、上下方向に沿う断面の曲率半径が前記第1~第4のコーナー部のそれぞれの前記曲率半径よりも大きい。
【0011】
本実施形態の合成まくらぎは、前記第1端面と前記第1の内側端面との間に形成された第1のレール支持部と、前記第2端面と前記第2の内側端面との間に形成された第2のレール支持部とを有している。前記第1の側壁部および前記第2の側壁部の単位体積あたりの繊維の含有量が、前記第1のレール支持部および前記第2のレール支持部の単位体積あたりの繊維の含有量よりも大きくてもよい。前記第1の底面円弧部の前記曲率半径と、前記第2の底面円弧部の前記曲率半径とが、それぞれ10mm以上40mm以下であるとよい。
【0012】
前記合成まくらぎを製造するための製造方法は、外型の内側に前記合成まくらぎの前記凹部と対応した形状の中子を配置する。前記外型と前記中子との間に形成されたキャビティに、前記繊維を含有した硬化前の前記樹脂を供給する。前記樹脂が硬化したのち、前記中子を前記外型から脱型する。
【発明の効果】
【0013】
実施形態に係る合成まくらぎによれば、分岐器ポイント部をコンパクト化するためにレール転換装置を収容する凹部を有していながらも、曲げや引張りおよび座屈等の荷重に対して大きな強度を発揮することができ、しかも電気絶縁性に優れた合成まくらぎを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】1つの実施形態に係る合成まくらぎを備えた分岐器ポイント部の平面図。
【
図2】
図1中のF2-F2線に沿う分岐器ポイント部の断面図。
【
図4】
図3中のF4-F4線に沿う合成まくらぎの断面図。
【
図6】前記合成まくらぎの一部の水平方向に沿う断面図。
【
図7】前記合成まくらぎの一部の上下方向に沿う断面図。
【
図8】
図4中のF8-F8線に沿う合成まくらぎの断面図。
【
図9】合成まくらぎと、床板と、レールの一部を示す斜視図。
【
図10】前記合成まくらぎの底面円弧部の曲率半径と応力との関係を示した図。
【
図11】合成まくらぎの製造に使用する外型と中子とを模式的に表わした平面図。
【
図13】
図12中のF13-F13に沿う中子の断面を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に1つの実施形態に係る合成まくらぎとレール転換装置とを備えた分岐器ポイント部について、
図1から
図10を参照して説明する。
図1は分岐器ポイント部10の一例を示している。
図2は
図1中のF2-F2線に沿う分岐器ポイント部10の断面図である。分岐器ポイント部10は、基本レール11,12と、水平方向に移動可能なトングレール13,14と、レール転換装置15と、合成まくらぎ16などを含んでいる。
【0016】
合成まくらぎ16は扁平なほぼ直方体であり、実質的に水平な方向に延びる上面20と、互いに平行な第1側面21および第2側面22と、第1端面23および第2端面24と、凹部25と、下面26(
図2に示す)とを有している。凹部25は合成まくらぎ16の上面20において開口している。凹部25の第1側面21と第2側面22とは、それぞれ合成まくらぎ16の長さ方向に延びている。第1端面23と第2端面24とは、合成まくらぎ16の長さ方向の両端に形成されている。
図1中の両方向矢印X1は合成まくらぎ16の長さ方向を示している。
図1中の両方向矢印Y1は合成まくらぎ16の幅方向である。
【0017】
基本レール11,12は、合成まくらぎ16の上面20に配置された床板31,32の上に固定機構33,34によって固定されている。トングレール13,14は、床板31,32に設けられた敷板35,36を介して、レール幅方向(
図2に両方向矢印X2で示す)にスライド可能に支持されている。
【0018】
レール転換装置15の一例は、アクチュエータとしての油圧シリンダ機構40と、油圧ポンプ41と、油タンク42と、油圧ポンプ41を駆動する電気モータ43と、制御部44などを含んでいる。油圧シリンダ機構40は、シリンダ本体40aと、ピストンロッド40b,40cとを有している。油圧ポンプ41が発生する油圧によりピストンロッド40b,40cを水平方向に駆動し、トングレール13,14をレール幅方向に移動させるようになっている。
【0019】
図3は合成まくらぎ16の平面図である。
図4は
図3中のF4-F4線に沿う合成まくらぎ16の断面図、
図5は合成まくらぎ16の斜視図である。合成まくらぎ16は、電気絶縁性の多数の繊維50(
図5に一部を模式的に示す)によって強化された電気絶縁性の樹脂51(例えばマトリックス樹脂が硬質発泡ウレタン)からなる。繊維50の一例はガラス繊維であり、主として合成まくらぎ16の長さ方向に連続している。繊維50で強化された合成まくらぎ16は優れた電気絶縁性を有し、しかも曲げ荷重や引張り等の荷重に対して大きな強度を有している。
【0020】
合成まくらぎ16の凹部25は、合成まくらぎ16の上面20に開口している。すなわち合成まくらぎ16の上面20に開口25aを有している。凹部25にレール転換装置15の一部、例えば油圧ポンプ41と、油タンク42と、電気モータ43と、制御部44などが収容されている。凹部25の最下部にレール転換装置15を載置する底面60が形成されている。
【0021】
図3から
図5に示されたように、凹部25は、底面60と、第1の内面61と、第2の内面62と、第1の内側端面63と、第2の内側端面64とを有している。第1の内面61は第1側面21と対応する位置に形成され、第1側面21に沿って合成まくらぎ16の長さ方向に延びている。第2の内面62は第2側面22と対応する位置に形成され、第2側面22に沿って合成まくらぎ16の長さ方向に延びている。第1の内側端面63は第1端面23と対応した位置に形成されている。第2の内側端面64は第2端面24と対応した位置に形成されている。
【0022】
図2と
図4に示されたように、合成まくらぎ16の下面26と凹部25の底面60との間に底壁部70が形成されている。
図3に示されたように、第1側面21と第1の内面61との間に第1の側壁部71が形成されている。第2側面22と第2の内面62との間に第2の側壁部72が形成されている。
【0023】
第1端面23と第1の内側端面63との間に、第1のレール支持部73が形成されている。第2端面24と第2の内側端面64との間に、第2のレール支持部74が形成されている。第1のレール支持部73に第1の床板31が配置されている。第1の床板31は、第1の側壁部71と第2の側壁部72の方向に延びる一対の延長部31a,31bを有している。第2のレール支持部74に第2の床板32が配置されている。第2の床板32は、第1の側壁部71と第2の側壁部72の方向に延びる一対の延長部32a,32bを有している。
【0024】
図3に示されたように合成まくらぎ16を上方から見て、凹部25は、第1のコーナー部81と、第2のコーナー部82と、第3のコーナー部83と、第4のコーナー部84とを有している。第1のコーナー部81は、第1の内面61と第1の内側端面63との間の隅部に形成されている。
図6は第1のコーナー部81の水平方向の断面を拡大して示している。第1のコーナー部81の曲率半径r1(
図3と
図6に示す)は、例えば10mm未満である。
【0025】
第2のコーナー部82は、第1の内面61と第2の内側端面64との間の隅部に形成されている。第3のコーナー部83は、第2の内面62と第1の内側端面63との間の隅部に形成されている。第4のコーナー部84は、第2の内面62と第2の内側端面64との間の隅部に形成されている。
【0026】
第1~第4のコーナー部81,82,83,84のそれぞれの曲率半径r1,r2,r3,r4は、例えば10mm未満である。曲率半径r1,r2,r3,r4が10mmを越えると、その分、凹部25の開口面積(開口25aの面積)が狭くなり、レール転換装置15を挿入する際にレール転換装置15の一部がコーナー部81,82,83,84に触れやすくなる。レール転換装置15の角部などが凹部25の内面に強く当たると、繊維50の一部が切れたり損傷したりして、合成まくらぎ16の強度が低下する原因となる。
【0027】
図7は、合成まくらぎ16の一部(第1の内側端面63付近)の上下方向に沿う断面を示している。底面60と第1の内側端面63と間に、合成まくらぎ16の幅方向に延びる下部コーナー部85が形成されている。
図4に示されたように、底面60と第2の内側端面64と間にも、同様の下部コーナー部86(
図4と
図7に示す)が形成されている。これら下部コーナー部85,86の上下方向の断面の曲率半径r5は、前記コーナー部81~84の曲率半径r1~r4と同等でよい。
【0028】
図8は、
図4中のF8-F8線に沿う合成まくらぎ16の上下方向の断面図である。第1側面21と第2側面22とは、いずれも実質的に垂直である。凹部25の第1の内面61は、上面20から底面60に向かって、第1側面21との間の距離T1(すなわち第1の側壁部71の厚さ)が増加する方向に角度θ1をなして傾斜している。第2の内面62は、上面20から底面60に向かって、第2側面22との間の距離T2(すなわち第2の側壁部72の厚さ)が増加する方向に角度θ2をなして傾斜している。
【0029】
このように側壁部71,72の厚さT1,T2が凹部25の開口25aから底面60に向かって角度θ1、θ2をなして増加するため、側壁部71,72に負荷される曲げ荷重(
図8に両方向P1で示す)と、圧縮方向の荷重(
図8に両方向P2で示す)に対して大きな曲げ強度と座屈強度を発揮できるとともに、凹部25を形成する際に使用する中子110(
図11から
図13に示す)の脱型が容易となる。中子110を用いた合成まくらぎの製造方法については、後に詳しく説明する。
【0030】
図8に示されたように、第1の内面61と底面60との間に、第1の底面円弧部91が形成されている。第1の底面円弧部91の上下方向に沿う断面の曲率半径R1は、第1~第4のコーナー部81,82,83,84のそれぞれの水平方向の断面の曲率半径r1,r2,r3,r4よりも大きい。第1の底面円弧部91の曲率半径R1は10mm以上40mm以下(例えばR1=20mm)である。
【0031】
第2の内面62と底面60との間に、第2の底面円弧部92が形成されている。
図8に示されたように、第2の底面円弧部92の上下方向に沿う断面の曲率半径R2は、第1~第4のコーナー部81,82,83,84のそれぞれの水平方向の断面の曲率半径r1,r2,r3,r4よりも大きい。第2の底面円弧部92の曲率半径R2は10mm以上40mm以下(例えばR2=20mm)である。
【0032】
本発明者達は、合成まくらぎ16の最大引張応力等に関する試験を行った。その試験では、
図9に示されたように、合成まくらぎ16に床板31,32を介してレール11,12が載置された。そして車両の輪重に相当する荷重がレール11,12を介して合成まくらぎ16に負荷された。試験に使用された合成まくらぎ16のサイズは、長さが2100mm、幅400mm、厚さ140mmであった。また凹部25の長さが850mm、幅220mm、深さ110mmであった。
【0033】
試験の結果、最大引張応力が第1の側壁部71と第2の側壁部72に生じた。特に、
図5中に矢印A1,A2,A3,A4,A5で示した箇所、すなわち第1の床板31の延長部31a,31bの先端付近と、第2の床板32の延長部32a,32bの先端付近とに大きな応力が生じた。これに対し第1のレール支持部73および第2のレール支持部74の引張応力は側壁部71,72よりも小さかった。よって、合成まくらぎ16の強度をより大きくするには、
図5に矢印A1,A2,A3,A4,A5で示した箇所を含む第1の側壁部71と第2の側壁部72の繊維含有率(単位体積あたりの繊維50の含有量)を、第1のレール支持部73および第2のレール支持部74の繊維含有率よりも大きくすることが望ましい。
【0034】
図10は側壁部71,72に曲げの荷重を負荷した場合に底面円弧部91,92に生じる応力と曲率半径との関係を示している。曲率半径R1,R2が10mmよりも小さいと応力が急増するため、曲率半径R1,R2を10mm以上とするのがよい。しかし曲率半径R1,R2が40mmよりも大きいと、レール転換装置15を載置する底面60の実質的に平坦な部分の幅W1(
図8に示す)が減少するため、曲率半径R1,R2を40mm以下とするのがよい。
【0035】
なお合成まくらぎを構成するマトリックス樹脂や繊維は必要に応じて材料を適宜変更して実施できることは言うまでもない。合成まくらぎの形状やサイズ等の仕様についても実施形態に限定されるものではなく、分岐器ポイント部の状況に応じて適宜に選定される。また本発明の技術思想は分岐器ポイント部以外の軌道に適用することも可能である。
【0036】
以下に合成まくらぎ16の製造方法について説明する。
図11は、合成まくらぎ16の製造に使用する外型100と中子110(中型とも称す)とを模式的に表わした平面図である。
図12は、
図11中のF12-F12に沿う中子110の断面図である。
図13は、
図12中のF13-F13に沿う中子110の断面を拡大して示す断面図である。
【0037】
合成まくらぎ16は、少なくとも外型100と中子110とを含む成形用の型装置を用いて製造される。外型100は、合成まくらぎ16の外面と対応した形状の内面101を有している。中子110は、合成まくらぎ16の凹部25と対応した形状の外面111を有している。
【0038】
すなわち中子110は、合成まくらぎ16の凹部25の底面60と対応する面120(
図12と13に示す)と、凹部25の第1の内面61に対応する角度θ1´(
図13に示す)の第1の傾斜面121と、第2の内面62に対応する角度θ2´の第2の傾斜面122と、第1の内側端面63に対応する第1の端面123(
図12に示す)と、第2の内側端面64に対応する第2の端面124とを有している。また凹部25の一方の下部コーナー部85(
図4に示す)に対応する断面が弧形の曲面部125と、他方の下部コーナー部86(
図4に示す)に対応する断面が弧形の曲面部126とを有している。
【0039】
図11に示されたように本実施形態の中子110は、合成まくらぎ16の第1のコーナー部81に対応する曲率半径r1´の第1の曲面131と、第2のコーナー部82に対応する曲率半径r2´の第2の曲面132と、第3のコーナー部83に対応する曲率半径r3´の第3の曲面133と、第4のコーナー部84に対応する曲率半径r4´の第4の曲面134とを有している。さらに中子110は、第1の底面円弧部91に対応する曲率半径R1´の第1の円弧面141(
図13に示す)と、第2の底面円弧部92に対応する曲率半径R2´の第2の円弧面142とを有している。
【0040】
本実施形態の製造方法において、中子110は合成まくらぎ16の凹部25を形成するために使用される。外型100の内側に中子110が配置される。これにより外型100の内面101と中子110の外面111との間に、合成まくらぎ16のためのキャビティ150(
図11に示す)が形成される。このキャビティ150に、繊維50を含有した硬化前の樹脂51が供給される。キャビティ150内の樹脂51が硬化したのち、中子110を外型100から脱型する。こうして凹部25を有する合成まくらぎ16が一体成形される。
【0041】
本実施形態の中子110を用いた製造方法によれば、外型100と中子110との間で一体成形された合成まくらぎ16の脱型を容易に行なうことができる。また切削加工によって凹部25を形成していた従来の製造方法と比較して材料の無駄がなく、切削加工を行なう場合と比較して製造コストを減らすことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…分岐器ポイント部、11,12…基本レール、13,14…トングレール、15…レール転換装置、16…合成まくらぎ、20…上面、21…第1側面、22…第2側面、23…第1端面、24…第2端面、25…凹部、26…下面、31,32…床板、50…繊維、60…底面、61…第1の内面、62…第2の内面、63…第1の内側端面、64…第2の内側端面、70…底壁部、71…第1の側壁部、72…第2の側壁部、73…第1のレール支持部、74…第2のレール支持部、81…第1のコーナー部、82…第2のコーナー部、83…第3のコーナー部、84…第4のコーナー部、91…第1の底面円弧部、R1…曲率半径、92…第2の底面円弧部、R2…曲率半径、100…外型、110…中子、111…中子の外面、150…キャビティ。